(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム及びそれを用いた包装体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240109BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/32 103
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2019051013
(22)【出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2018056330
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐山 和也
(72)【発明者】
【氏名】今井 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉井 智哉
【審査官】増田 亮子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-319592(JP,A)
【文献】特開2004-122747(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170330(WO,A1)
【文献】特開2009-051135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイソタクチックのプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体
、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、またはプロピレン・ペンテン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂を80重量%以上含有する樹脂組成物からなる基層(A)と前記基層(A)の一方の面のみに、融点が120~130℃の範囲であるプロピレン・ブテン-1共重合体を90重量%以上含有する樹脂組成物からなるシール層(B)を有し、
以下の条件a)、b)、及びc)を満たす二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
a)シール層(B)の厚みが1μm以下である。
b)シール層(B)に防曇剤を0.3重量%以上1.0重量%以下含む。
c)シール層(B)の厚みがフィルム全層に対して1.5%以上、4%以下である。
【請求項2】
前記基層(A)のシール層(B)側の反対面に、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体
、プロピレン・エチレン共重合体からなる群から選択される少なくと
も1種の樹脂を主体とする樹脂組成物からなる、表面層(C)を有する請求項1に記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項3】
前記表面層(C)の厚みがフィルム全層に対して1.5%以上、4%以下である請求項
2に記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム及びそれを用いた包装体に関し、特に、ヒートシール性及び防曇効果を有することで、野菜、果実、草花など高い鮮度が要求される植物類からなる生鮮品(以下、本明細書ではこれらを青果物と称する)を包装するのに適した二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム及びそれを用いた包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは光学的性質、機械的性質、包装適性などに優れていることから食品包装及び繊維包装などの包装分野に広く使用されている。
特に、防曇フィルムは野菜などの青果物包装に広く使用されている。
【0003】
特に、青果物包装においては、昨今の農業人口の低下から農作業の省力化が求められており、自動包装方式が普及してきている。青果物の自動包装方式としてはいわゆるピロー包装方式が採用されており、ヒートシールによる製袋工程と、内容物の充填工程を同時に行う事が出来る。
【0004】
自動包装方式に適用できるものとして、結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とする2軸延伸フィルム状物からなる外層に、外層の持つ融点よりも10~90℃低い融点を持つプロピレン-エチレン-ブテン共重合体を溶融押し出し積層した積層フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
自動包装方式に適し、ヒートシール強度にも優れたものとして、ポリプロピレン系樹脂を主体とした基層と、プロピレン・ブテン-1共重合体及びプロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体を用いたポリオレフィン系樹脂を主体とするヒートシール層とを有する2層以上の積層体からなる包装用フィルムが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3104166号公報
【文献】特許第4385443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、上記特許文献の包装フィルムが自動包装方式に使用されている。しかしながら、自動包装化されておらず、製袋と充填を別途実施する青果物もいまだ多数あり、この場合は溶断シール方式で製袋を実施していることが多い。しかしながら、上記特許文献の包装フィルムは、自動包装方式には適するものの、自動包装後のヒートシール強度や溶断シール方式でのヒートシール強度の両方において満足できるものではなかった。
【0008】
しかし、青果物包装用フィルムを、ピロー包装などの自動包装方と溶断シール包装の両方に使用可能であれば、農家やコンバーターなどの消費者にとっては、それぞれの方式に合わせて種類の異なる包装用フィルムを購入する必要がなくなるなど、在庫管理などの面で大いにメリットがある。
【0009】
本発明は、自動包装方式に適し、かつ自動包装後のヒートシール強度や溶断シール方式でのヒートシール強度の両方において満足できる二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は以下の構成によりなる。
1.
ポリプロピレン系樹脂を主体とする樹脂組成物からなる基層(A)と前記基層(A)の一方の面のみに、プロピレン・ブテン-1共重合体を主体とする樹脂組成物からなるシール層(B)を有し、以下の条件a)及びb)を満たす二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
a)シール層(B)の厚みが1μm以下である。
b)シール層(B)に防曇剤を0.3重量%以上1.0重量%以下含む。
2.
前記プロピレン・ブテン-1共重合体の融点が120~130℃の範囲である前記1.に記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
3.
前記プロピレン・ブテン-1共重合体、又は複数のプロピレン・ブテン-1共重合体の含有量が50重量%以上の範囲である前記1.又は2.に記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
4.
前記シール層(B)の厚みがフィルム全層に対して1.5%以上、4%以下である前記1.~3.のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
5.
基層(A)が、アイソタクチックのプロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、またはプロピレン・ペンテン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種のポリプロピレン系樹脂を主体とする前記1.~4.のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
6.
前記基層(A)のシール層(B)側の反対面に、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン共重合体からなる群から選択される少なくともの1種の樹脂を主体とする樹脂組成物からなる、表面層(C)を有する前記1.~5.のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
7.
前記プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン共重合体からなる群から選択される少なくともの1種の樹脂融点が130~140℃の範囲である6.に記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
8.
前記表面層(C)の厚みがフィルム全層に対して1.5%以上、4%以下である前記1.~7.のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルム。
9.
前記1.~8.のいずれかに記載の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを含む包装体。
【発明の効果】
【0011】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、自動包装方式に適し、かつ自動包装後のヒートシール強度や溶断シール方式でのヒートシール強度の両方において満足できることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムはポリプロピレン系樹脂を主体とする樹脂組成物からなる基層(A)と前記基層(A)の片面にプロピレン・ブテン-1共重合体を主体とする樹脂組成物からなるシール層(B)を有する。
【0013】
(基層(A))
本発明において、基層(A)はポリプロピレン系樹脂を主体とする樹脂組成物からなる。ここでいうポリプロピレン系樹脂とはn-へプタン不溶性のアイソタクチックのプロピレン単独重合体及びプロピレンを70モル%以上含有するプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂よりなることが好ましい。 n-ヘプタン不溶性とは、ポリプロピレンの結晶性を指標すると同時に食品包装用として使用する際の安全性を示すものであり、本発明では、昭和57年2月厚生省告示第20号によるn-ヘプタン不溶性(25℃、60分抽出した際の溶出分が150ppm以下〔使用温度が100℃を超えるものは30ppm以下〕)に適合するものを使用することが好ましい態様である。
このようなポリプロピレン系樹脂は基材層(A)を構成する樹脂組成物に対し80重量%以上含むことが好ましく、90重量%以上がより好ましい。
【0014】
アイソタクチックのプロピレン単独重合体と、プロピレンを70モル%以上含有するプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体を混合して使用する場合は、基材層(A)に使用される樹脂組成物全体に対して、プロピレンを70モル%以上含有するプロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体の含有量を20重量%以下とすることが望ましい。より好ましくは10重量%以下である。
基材層(A)に使用される樹脂組成物全体に対して、アイソタクチックのプロピレン単独重合体の含有量を80重量%以上とすることが望ましい。より好ましくは90重量%以上である。
【0015】
プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体のα-オレフィン共重合成分としては、炭素数が2~8のα-オレフィン、例えば、エチレン、ブテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、4-メチル-1-ペンテンなどが好ましい。ここで共重合体とは、プロピレンに上記に例示されるα-オレフィンを1種又は2種以上重合して得られたランダム又はブロック共重合体であることが好ましく、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、またはプロピレン・ペンテン共重合体であることが好ましい。
基材層(A)に使用されるポリプロピレン系樹脂の融点は156℃以上であることが好ましい。融点は後述する実施例に記載の方法で測定される。融点が156℃未満であると、自動包装加工におけるフィルムの搬送をよりスムーズにすることができず、得られた製袋品にしわもより入りやすい。
また、メルトフロ-レ-ト(MFR)は0.1~100g/10min、好ましくは0.5~20g/10min、さらに好ましくは、1.0~10g/10minの範囲を例示できる。
【0016】
基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂を主体とする樹脂組成物中には防曇剤を添加するのが好ましい。本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの防曇性発現のメカニズムとしては、基層(A)を形成する樹脂組成物中に防曇剤を添加することで、フィルム製造時及びフィルム形成後の保管時に、防曇剤がシール層(B)へ順次移行し、シール層(B)の表面に防曇剤が存在するようになり、当該フィルム表面が防曇性を有する状態になる。収穫後も生理作用を持続することが特徴である青果物を包装対象としたときに、その効果を発揮することができる。
そして、流通過程で長期的に優れた防曇性を持続させるためには、包装体は冷凍保存よりもむしろ室温雰囲気での保存が望まれるところから、保存、流通時の気温変化を考慮して、5~30℃の間で温度変化を繰り返す経過中継続して防曇性を示すような防曇剤を選定することが好ましい。
【0017】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの基層(A)を構成するポリプロピレン系樹脂を主体とする樹脂組成物中に添加する防曇剤としては、例えば、多価アルコ-ルの脂肪酸エステル類、高級脂肪酸のアミン類、高級脂肪酸のアマイド類、高級脂肪酸のアミンやアマイドのエチレンオキサイド付加物などを典型的なものとして挙げることができる。かかる防曇剤の基層(A)及びシール層(B)を含むフィルム中での存在量は全層換算で0.1~10重量%、特に0.2~5重量%が好ましい。
【0018】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。
【0019】
(シール層(B))
シール層(B)を構成する樹脂組成物は、プロピレン・ブテン-1共重合体を主体とする。プロピレン・ブテン-1共重合体を主体とすることで、シール層同志の混合が進みやすいため、界面ができにくくなり、ヒートシール到達強度を発現することができる。
また、プロピレン・ブテン-1共重合体は共重合成分が少なく、基層(A)との界面での剥離が発生しにくい。そのため、シール層の厚みを薄くしても、十分なヒートシール到達強度が得られる。
プロピレン・ブテン-1共重合体として、複数のプロピレン・ブテン-1共重合体を使用することができるが、単一種のプロピレン・ブテン-1共重合体であることが好ましい。
これらのプロピレン・ブテン-1共重合体の融点の温度は120~130℃の範囲であるのが好ましい。融点が130℃以下であると防曇剤を含んでもヒートシール立ちが上り温度が高くなり過ぎにくく、融点が120℃以上であるとヒートシール立ちが上り温度が低くなり過ぎにくい。
シール層を構成する樹脂組成物中のプロピレン・ブテン-1共重合体の含有量は90量%以上であることがヒートシール到達強度向上する以上である上で好ましく、95重量%以上であることがより好ましい。
【0020】
シール到達強度の観点からシール層(B)には、プロピレン・ブテン-1共重合体を主体とする樹脂組成物を使用しているが、ヒートシール立ち上がり温度を115~125℃にするには、防曇剤をシール層中に0.3重量%以上となるようにして、ヒートシール立ち上がり温度が低くなりすぎないようにすることが重要である。防曇剤量が0.3重量%未満ではヒートシール立ち上がり温度が低下する。好ましくは0.3~0.8重量%であり、より好ましくは0.45~0.7重量%である。
このとき、青果物を包装し、スーパーなどで陳列、または流通する際に、内容物の生理作用により内部が曇る事を防止することができる。
【0021】
(シール層の厚み)
シール層(B)の厚みは1μm以下である必要がある。1μmを超えると溶断シール方式で製袋したときの溶断シール強度が不十分となる。また、シール層(B)の厚みがフィルム全層に対して1.5%以上であることが自動包装後のヒートシール強度の点で、4%以下であることが溶断シール強度の点で好ましい。溶断シール強度には溶断シール時のポリ溜りと呼ばれる融着樹脂部分の大きさが影響も大きい。
シール層(B)は基材層(A)の一方の面のみに設ける必要があり、基材層(A)の両側の面に設けると自動包装工程においてシールバーにフィルムが粘着して包装不良が発生しやすい。
【0022】
(フィルム厚み)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムのフィルム厚みは、その用途や使用方法によって異なるが、包装フィルムとしてのポリプロピレン系フィルムは一般的に10~100μm程度であり、機械的強度や透明性の点において、より好ましくは、15~50μm程度であり、特に好ましくは15~40μm程度である。
【0023】
(表面層(C))
本発明において、 基層(A)のシール層(B)側の反対面にポリプロピレン系樹脂を主体とする樹脂組成物からなる、表面層(C)を有することができる。
表面層(C)は、プロピレン・エチレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・ブテン-1共重合体、プロピレン・エチレン共重合体からなる群から選択される少なくともの1種の樹脂を主体とすることができる。これらの内1種の樹脂を使用するのが、シール層同志の混合が進みやすく、界面ができにくくなりやすく、ヒートシール到達強度を発現しやすい。
表面層(C)のヒートシール立ち上がり温度が130℃以上140℃以下であるのが好ましい。表面層(C)のヒートシール立ち上がり温度とは、本発明のフィルムの表面層(C)の面同士を向かい合わせ、ヒートシール圧力1kg/cm2、時間は1秒でヒートシールしたときの、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度である。表面層(C)のヒートシール立ち上がり温度が130℃以上の場合、ピロー包装のヒートシール時に表面層(C)がシールバ-に融着しにくく、製袋しやすい。また140℃以下の場合、ピロー包装時に背貼り部分が包装体外装部と融着しやすく見栄えが良い、また包装体を重ねた際に背貼り部分が引っかからず、シールが剥がれる不具合が発生しない。
【0024】
表面層(C)を設ける場合は、表面層(C)の厚みは1μm以下であるのが好ましい。1μmを超えると溶断シール強度が不十分となる。また、表面層(C)の厚みがフィルム全層に対して1.5%以上であることが自動包装後のヒートシール強度の点で、4%以下であることが溶断シール方式で製袋したときの溶断シール強度の点で好ましい。
【0025】
表面層(C)の表面には防曇性を有するのが好ましい。これは青果物を包装し、スーパーなどで陳列する際に、結露などにより表面が曇ると見栄えが良くなる。
【0026】
また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、滑り性や帯電防止性などの品質向上のための各種添加剤、例えば、生産性の向上のためにワックス、金属石鹸などの潤滑剤、可塑剤、加工助剤やポリプロピレン系フィルムに通常添加される公知の熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤などを配合することも可能である。またフィルムの耐ブロッキング性や滑り性を確保するための、無機質あるいは有機質の微細粒子を配合することも可能である。
【0027】
無機質微細粒子としては、二酸化珪素、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、カオリン、雲母、ゼオライトなどが挙げられ、これらの形状は、球状、楕円状、円錐状、不定形と種類を問うものではなく、その粒子径もフィルムの用途、使用法により所望のものを使用配合することができる。
また、有機質の微細粒子としては、アクリル、アクリル酸メチル、スチレン-ブタジエンなどの架橋体粒子を使用することができ、形状、大きさに関しては無機質微細粒子と同様にさまざまなものを使用することが可能である。また、これら無機質あるいは有機質の微細粒子表面に各種の表面処理を施すことも可能であり、また、これらは単独で使用し得るほか、2種以上を併用することも可能である。以上は後述のシール層(B)にも適合する。
【0028】
(二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムの製膜方法)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、例えば、積層数に見合う押出し機を用いてTダイ法又はインフレーション法等で溶融積層した後、冷却ロール法、水冷法又は空冷法で冷却して積層フィルムとし、逐次2軸延伸法、同時2軸延伸法、チューブ延伸法等で延伸する方法を例示することができる。
ここで、逐次2軸延伸法にて製造する際の条件を例示すると、T型のダイスより溶融押出しした樹脂をキャスティング機にて冷却固化させて、原反シートを作成する。この際、溶融キャスティングするロール温度は、樹脂の結晶化を抑え、透明性を向上させる目的で15℃から40℃の間に設定する事が好ましい。
次に、延伸に適した温度まで原反シートを加熱後、延伸ロール間の速度差を利用してシートの流れ方向に延伸する、この際の延伸倍率は、延伸のムラがなく安定して製造する事を考えると3倍から6倍の間に設定することが好ましい。次に、縦延伸したシートの両耳部をテンタークリップで把持し、熱風で延伸に適した温度まで加熱しながらシートの流れと直角方向に、順次拡げながら延伸する。この際の横延伸倍率は、厚み変動と生産性を考慮して7倍から10倍の間に設定することが好ましい。
【0029】
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、印刷性、ラミネート性等を向上させるために表面処理を行うことができる。表面処理の方法としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理、酸処理等が例示でき、特に制限はない。連続処理が可能であり、このフィルムの製造過程の巻き取り工程前に容易に実施できるコロナ放電処理、プラズマ処理、火炎処理を行うのが好ましい。
【0030】
(フィルム特性)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、以下の特性を有することが好ましい。
【0031】
(ヒートシール立ち上がり温度)
本発明において、シール層(B)は、プロピレン・ブテン-1共重合体よりなるポリプロピレン系樹脂を主体とし、シール層(B)のヒートシール立ち上がり温度が115℃以上125℃以下であるのが好ましい。表面層(B)のヒートシール立ち上がり温度とは、本発明のフィルムの表面層(B)の面同士を向かい合わせ、ヒートシール圧力1kg/cm2、時間は1秒でヒートシールしたときの、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度である。
シール層(B)のヒートシール立ち上がり温度が125℃以下であると、ヒートシール温度が低くても十分な強度を保持してヒートシールしやすく、自動包装する際に高速で運転しやすく、することができ、また、シール部の密封性に優れ、このため防曇性を有することと相まって生鮮品の鮮度が保持され、内容物の見栄えもよく、包装体の取扱い性が優れやすい。
さらに、シール層(B)のヒートシール立ち上がり温度が125℃以下の場合は、ポリプロピレン系樹脂を主体とする基層(A)との融点差が大きくなり、ヒートシールバーの温度を高くしなくても自動包装の運転速度を十分上げやすく、また、ヒートシール強度を上げるために設定温度を高くしないでいいので、ヒートシール時に積層フィルム全体が収縮しにくくなり、ヒートシール部にしわが生じにくく、ヒートシール部の密封不良の原因となりにくい。シール層(B)のヒートシール立ち上がり温度が115℃以上の場合、溶断シール方式で製袋したときの溶断シール強度が低下しにくく、自動包装方式と溶断シール方式の兼用が容易になる。
【0032】
(ヒートシール到達強度)
本発明においては、シール層(B)のヒートシール到達強度は3.5N/15mm以上であるのが好ましい。3.5N/15mm以上では自動包装体として、内容物の脱落を防止するためには十分である。
【0033】
(防曇性)
本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた防曇性の評価がランク3以上であることが好ましい。より好ましくはランク2以上である、さらに好ましくはランク1である。
【0034】
(防曇性むら)
本発明のポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた防曇むらの評価がランク3以上であることが好ましい。より好ましくはランク2以上である、さらに好ましくはランク1である。
【0035】
(自動包装適性)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた自動包装適性の評価が○又は△であることが好ましい。より好ましくは○である。
【0036】
(溶断シール強度)
本発明の二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、後述する測定方法で得られた溶断シール強度が 25N/15mm以上であることが好ましい。より好ましくは27N/15mm以上である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明の具体例を実施例によってさらに説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、本明細書中における特性は下記の方法により評価をおこなった。
【0038】
(1)樹脂の融点
示差走査型熱量計(パーキン・エルマー社製、「DSC-8500」)を用い、試料5mgを窒素雰囲気下で10℃/分で230℃まで昇温させ5分保持した後に、-10℃/分で30℃まで降温させ5分保持した後に10℃/分で230℃まで昇温させることにより得られた融解吸熱カーブの最も高温側に観測されるピークのピークトップから融点を求めた。
(2)層厚み
自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを1cm×1cmのサイズに切り出し、UV硬化性樹脂に包埋し、UVを5分間照射し固化させた。その後、ミクロトームにて断面試料を作製し、微分干渉顕微鏡にて観察し、フィルム全層、シール層(B)、及び表面層(C)の厚みを測定した。サンプルは5点測定し、平均値を算出した。
【0039】
(3)ヒートシール立ち上がり温度
自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムのシール層(B)同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、ヒートシール圧力1kg/cm2、時間は1秒で、80℃から5℃ずつ高くした温度でヒートシールしたときの、ヒートシール強度が1N/15mmとなる温度を云い、5cm×20cmのフィルムのヒートシール層面同士を向かい合わせ、5℃ピッチで温度設定したヒートシールバー(シール面1cm×3cm)5個で同時にヒートシールして、その中央部を15mmの幅にカットし、引張試験機の上下チャックに取付け、引張速度200mm/minで引張った際のそれぞれの強度を測定し、ヒートシール強度を算出した(単位はN/15mm)。横軸に温度、縦軸にヒートシール強度をとった線形グラフを描き、ヒートシール強度が1N/15mmを超える温度をヒートシール立ち上がり温度とした。
【0040】
(4)ヒートシール到達強度
自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムのシール層(B)同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、ヒートシール圧力1kg/cm2、時間は1秒で、135℃でヒートシールし、その中央部を15mmの幅にカットし、引張試験機の上下チャックに取付け、引張速度200mm/minで引張った際のヒートシール強度から算出した(単位はN/15mm)。
【0041】
(5)防曇性
1)500ccの上部開口容器に50℃の温水を300cc入れる。
2)フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
3)5℃の冷室中に放置する。
4)容器内温水が完全に雰囲気温度まで冷却された状態で、フィルム面の露付着状況を5段階で評価した。
・評価1級:全面露なし(付着面積0)
・評価2級:多少の露付着(付着面積1/4まで)
・評価3級:約1/2の露付着(付着面積2/4まで)
・評価4級:ほとんど露付着(付着面積3/4まで)
・評価5級:全面露付着(付着面積3/4以上)
【0042】
(6)防曇むら
1)500ccの上部開口容器に50℃の温水を300cc入れる。
2)フィルムの防曇性測定面を内側にしてフィルムで容器開口部を密閉する。
3)20℃で20秒間放置する。
4)フィルム面の露付着状況を5段階で評価した。
・評価1級:全面露なし(付着面積0)
・評価2級:多少の露付着(付着面積1/4まで)
・評価3級:約1/2の露付着(付着面積2/4まで)
・評価4級:ほとんど露付着(付着面積3/4まで)
・評価5級:全面露付着(付着面積3/4以上)
【0043】
(7)自動包装適性
自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムのヒートシール層同士を向かい合わせて重ね、熱傾斜試験機(東洋精機社製)を用いて、ヒートシール圧力1kg/cm2、時間は1秒でヒートシールした。
その際のシールバーへの表面層(C)の融着有無と、ヒートシール立ち上がり温度から以下の基準で評価した。
○: シールバーへの融着なし・立ち上がり温度115℃以上125℃以下
△: シールバーへの融着なし・立ち上がり温度115℃未満または125℃より高い
×: シールバーへの融着あり
【0044】
(8)溶断シール強度
溶断シール機(共栄印刷機械材料(株)製:PP500型)を用いて、自動包装可能なポリプロピレン系樹脂多層フィルムの溶断シール袋を作成した。
条件:溶断刃;刃先角度60°
シール温度;370℃
ショット数;120袋/分
上記溶断シール袋の溶断シール部を15mm幅にカットし、緩みを除いた状態で両端を引張試験機の把持部に把持(つかみ間隔:200mm)して、引張速度200mm/分で引張り、シール部が破断したときの強度から溶断シール強度(N/15mm)を算出した。測定回数は5回実施し平均した。20N/15mm以上で、溶断シール適性良好と判断した。
【0045】
(実施例1)
(1)使用樹脂
下記製造例で使用した各層を構成する樹脂は次の通りである。
[PP-1]: プロピレン単独重合体:住友化学工業(株)製「FS2011DG3」,MFR:2.5g/10分,融点:158℃,
[PP-2]: プロピレン・エチレン・ブテンランダム共重合体:住友化学工業(株)製「FSX66E8」,エチレン含有量:2.5モル%,ブテン含有量:7モル%,MFR:3.1g/10分,融点:133℃,
[PP-3]: プロピレン・ブテン-1共重合体:住友化学工業(株)製「SPX78J1」,ブテン含有量:25モル%,MFR:8.5g/10分,融点:128℃
【0046】
(2)基層(A)樹脂構成
[PP-1]に、防曇剤としてグリセリンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、TB-123)を0.16重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミン(松本油脂製薬(株)、TB-12)を0.2重量%、ポリオキシエチレン(2)ステアリルアミンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、エレックス334)を0.6重量%添加したものを[PP-4]として、基層(A)形成樹脂として100重量%使用した。
【0047】
(4)シール層(B)樹脂構成
[PP-3]に、防曇剤としてグリセリンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、TB-123)を0.50重量%添加したものを[PP-6]として、シール層(B)形成用樹脂として使用した。
【0048】
(3)表面層(C)樹脂構成
[PP-2]に、有機ポリマー微粒子(CS30:住友化学工業(株):粒子径 3.5μm)1.5重量%、防曇剤としてグリセリンモノステアレート(松本油脂製薬(株)、TB-123)を0.45重量%添加したものを樹脂温度240℃になるようにして溶融混合しペレット状にした。
この原料を[PP-5]として、表面層(C)形成用樹脂として100重量%使用した。
【0049】
3台の溶融押出機を用い、第1の押出機より基層(A)を280℃の樹脂温度で溶融押出しし、第2の押出機により表面層(C)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、第3の押出機よりシール層(B)形成樹脂を250℃の樹脂温度にて溶融押出しし、チルロール接触面から表面層(C)/基層(A)/シール層(B)の順番に、Tダイ内にて厚み比が表面層(C)/基層(A)/シール層(B)=0.6/18.7/0.7になるように積層して押出し、30℃の冷却ロールにて冷却固化し未延伸シートを得た。引き続き、130℃に加熱された金属ロール間で、周速差を利用して縦方向に4.5倍延伸し、さらにテンター延伸機に導入し、横方向に9.5倍の延伸を行った。テンター延伸機の予熱部温度は168℃、延伸部温度は155℃であった。
【0050】
さらに、テンター延伸機の後半では、熱固定を163℃にて実施した後、表面層(C)表面に春日電機社製のコロナ放電処理機によるコロナ放電処理を実施し、次いで、シール層(B)に同様にコロナ放電処理を実施し、フィルムワインダーにより巻き取って自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムを得た。最終的なフィルム厚みは20μmであり、シール層(B)のフィルム全体に対する厚み比は3.5%であった。
得られた多層フィルムは本発明の要件を満足するものであり、低温での十分なヒートシール強度と到達強度を有し、自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2)
基層(A)の厚みを増加させることで、フィルム厚みを25μmとしてシール層(B)の厚み比率を2.8%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0052】
(実施例3)
基層(A)の厚みを増加させることで、フィルム厚みを30μmとしてシール層(B)の厚み比率を2.3%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0053】
(実施例4)
基層(A)の厚みを増加させることで、フィルム厚みを40μmとしてシール層(B)の厚み比率を1.8%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0054】
(実施例5)
表面層(C)を設けず、基層(A)の厚みを増加させることで、フィルム厚みを40μmとしてシール層(B)の厚み比率を1.8%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、実施例1と同様に自動包装適性、溶断シール適性を両立するものとなった。また防曇性も青果物包装に問題の無いレベルとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0055】
(比較例1)
シール層(B)の[PP-6]添加量を40重量%、[PP-3]の添加量を60重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、防曇ムラがあり防曇性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0056】
(比較例2)
基材層の厚みを38.2μm、シール層(B)の厚みを1.2μmとした以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、防曇ムラがあり防曇性に劣り、溶断シール強度にも劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0057】
(比較例3)
シール層(B)の[PP-6]添加量を10重量%、[PP-3]の添加量を70重量%、[PP-2]の添加量を20重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、防曇ムラがあり防曇性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0058】
(比較例4)
基材層の厚みを28.7μm、シール層(B)の[PP-6]添加量を10重量%、[PP-3]の添加量を70重量%、[PP-2]の添加量を20重量%とした以外は、実施例2と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、防曇ムラがあり防曇性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0059】
(比較例5)
シール層(B)の[PP-6]添加量を10重量%、[PP-3]の添加量を70重量%、[PP-2]の添加量を20重量%とした以外は、実施例4と同様にして積層フィルムを得た。得られた積層フィルムは、防曇ムラがあり防曇性に劣るものとなった。フィルム組成と物性結果を表1に示す。
【0060】
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の自動包装可能な二軸配向ポリプロピレン系樹脂フィルムは、シール厚みと組成を最適化することで、従来よりも安価に良好なピロー包装適性を付与することが出来、また防曇性も有する事から、特に青果物の包装用途に好適である。