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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】発光装置及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240109BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20240109BHJP
   H01S 5/183 20060101ALI20240109BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/89
H01S5/183
H01S5/026 610
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2019070390
(22)【出願日】2019-04-02
(65)【公開番号】P2020170761
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-02-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】皆見 健史
(72)【発明者】
【氏名】大野 健一
(72)【発明者】
【氏名】稲田 智志
(72)【発明者】
【氏名】村田 道昭
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107884066(CN,A)
【文献】特開2016-200808(JP,A)
【文献】特開2013-093571(JP,A)
【文献】特開2019-027783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
H01S 5/00- 5/50
H01L 31/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光素子チップと、
前記第1の発光素子チップよりも光出力が大きく、当該第1の発光素子チップと独立して駆動するよう構成され、当該第1の発光素子チップと横並びで配置された第2の発光素子チップと、
前記第1の発光素子チップの出射経路上に設けられた第1の領域と、前記第2の発光素子チップの出射経路上に設けられた第2の領域とを有し、当該第1の領域の拡散角よりも当該第2の領域の拡散角の方が大きい光拡散部材と、
前記第1の発光素子チップから出射され被測定物で反射された第1の反射光、及び前記第2の発光素子チップから出射され当該被測定物で反射された第2の反射光を受光する第2の受光部と、
前記第1の反射光が、前記被測定物が予め定めた距離内に存在することを示す光である場合、前記第2の発光素子チップから光を出射するように当該第2の発光素子チップを制御する制御部と、
を有する発光装置。
【請求項2】
前記第1の領域は前記第1の発光素子チップから出射された光の拡がり角を増加させないように構成されている請求項に記載の発光装置。
【請求項3】
前記第1の領域に対応する前記光拡散部材の面は平面である請求項に記載の発光装置。
【請求項4】
前記第1の領域には、前記第1の発光素子チップから出射された光の拡がり角を狭める光学素子が設けられている請求項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記第1の領域は、前記光拡散部材に設けられた貫通孔である請求項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記第1の領域は、前記第2の領域で囲われている請求項1乃至のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記第1の発光素子チップは、第1の発光素子を含み、前記第2の発光素子チップは、第2の発光素子を含み、
前記第2の発光素子から出射されて前記第2の領域に向かう光の拡がり角よりも前記第1の発光素子から出射されて前記第1の領域に向かう光の拡がり角の方が狭い請求項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1の発光素子は、シングルモードの光を出射するレーザ素子である請求項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記第1の発光素子は、発振波長をλとした場合に、5λ~20λの共振器長を有する長共振器構造の垂直共振器面発光レーザ素子である請求項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記第2の発光素子は、マルチモードの光を出射するレーザ素子である請求項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記第2の発光素子チップの出射面から前記光拡散部材までの距離よりも、前記第1の発光素子チップの出射面から当該光拡散部材までの距離の方が近い請求項に記載の発光装置。
【請求項12】
前記第1の領域は前記第2の発光素子チップを構成する前記第2の発光素子の半値全幅の領域と重複しない位置に設けられている請求項に記載の発光装置。
【請求項13】
前記第1の発光素子チップは1つ以上の前記第1の発光素子を含み、
前記第2の発光素子チップは複数の前記第2の発光素子を含み、
前記第2の発光素子同士の配置間隔よりも、前記第1の発光素子と当該第2の発光素子との配置間隔の方が広い請求項に記載の発光装置。
【請求項14】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、各々垂直共振器面発光レーザ素子であり、
前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個から出射される光出力が、前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個から出射される光出力よりも小さくなるように駆動される請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、各々垂直共振器面発光レーザ素子であり、
前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の電力変換効率が前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の電力変換効率より低くなる光出力で駆動される請求項13に記載の発光装置。
【請求項16】
前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個の光出力が1mW~4mWの範囲となるように駆動される請求項14又は15に記載の発光装置。
【請求項17】
前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個の光出力が4mW~8mWの範囲となるように駆動される請求項14乃至16のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項18】
前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の数が1個~50個である請求項14乃至17のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項19】
前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の数が100個~1000個である請求項14乃至18のいずれか1項に記載の発光装置。
【請求項20】
前記第1の発光素子チップ及び前記第2の発光素子チップを囲う側壁を備え、
前記第1の発光素子チップ及び前記第2の発光素子チップは、前記側壁で支えられた前記光拡散部材で覆われている請求項に記載の発光装置。
【請求項21】
前記第2の発光素子チップから出射され前記光拡散部材の前記第2の領域で反射した反射光を受光する第1の受光部を有し、
前記第2の発光素子チップは、第1の側面と、当該第1の側面と対向する第2の側面と、互いに対向して設けられ、当該第1の側面及び当該第2の側面を接続する第3の側面と、第4の側面とを有し、
前記第1の受光部は、前記第1の側面側に配置され、前記第1の発光素子チップは前記第2の側面側に配置されている請求項に記載の発光装置。
【請求項22】
前記第2の発光素子チップに接続され、当該第2の発光素子チップに電力を供給する複数の配線を有し、
複数の前記配線は、前記第3の側面側及び前記第4の側面側に設けられている請求項21に記載の発光装置。
【請求項23】
前記第2の受光部は、前記第1の発光素子チップから光が出射されてから当該第2の受光部で受光されるまでの時間に相当する信号、及び前記第2の発光素子チップから光が出射されてから当該第2の受光部で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する請求項に記載の発光装置。
【請求項24】
請求項1乃至23のいずれか1項に記載の発光装置と、
前記発光装置が備える複数の第2の発光素子チップから出射され被測定物で反射され、当該発光装置が備える第2の受光部が受光した第2の反射光に基づき、当該被測定物の三次元形状を特定する形状特定部と、
を備える情報処理装置。
【請求項25】
前記形状特定部での特定結果に基づき、自装置の使用に関する認証処理を行う認証処理部と、
を備える請求項24に記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、光学装置及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光源と、所定の平面上において互いに隣接して配置される複数のレンズを有すると共に、光源が出射する光を拡散する拡散板と、拡散板によって拡散された光が被写体で反射した反射光を受光する撮像素子と、を備え、複数のレンズは、拡散された光における干渉縞の周期が三画素以下となるように配置された撮像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-54769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、発光素子チップから出射された光を光拡散部材を介して被測定物に拡散照射することで被測定物の三次元形状を測定する構成が知られている。この場合、省エネ等の観点から、被測定物が予め定めた距離内にあるか否かを検知する近接検知用の発光素子チップと、近接検知用の発光素子チップよりも高い光出力の光を光拡散部材を介して被測定物に拡散照射する三次元測定用の発光素子チップとを備える構成が考えられる。
ここで、近接検知用の発光素子チップと三次元測定用の発光素子チップとを共通の光拡散部材で覆うと、光拡散部材によって近接検知用の光が三次元測定用の光と同様に拡散され、被測定物の照射面で光密度が低下し、近接検知が困難になる場合があった。
【0005】
本発明は、第1の発光素子チップと、第1の発光素子チップよりも光出力が大きく、第1の発光素子チップと独立して駆動するよう構成された第2の発光素子チップとを備え、第1の発光素子チップ及び第2の発光素子チップの出射経路上に光拡散部材が設けられた構成において、第1の発光素子チップから出射された光が、光拡散部材によって第2の発光素子チップから出射された光と同じ拡散角で拡散する場合と比較し、第1の発光素子チップから出射された光の、照射面での光密度の低下が抑制される発光装置などを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に記載の発明は、第1の発光素子チップと、前記第1の発光素子チップよりも光出力が大きく、当該第1の発光素子チップと独立して駆動するよう構成され、当該第1の発光素子チップと横並びで配置された第2の発光素子チップと、前記第1の発光素子チップの出射経路上に設けられた第1の領域と、前記第2の発光素子チップの出射経路上に設けられた第2の領域とを有し、当該第1の領域の拡散角よりも当該第2の領域の拡散角の方が大きい光拡散部材と、前記第1の発光素子チップから出射され被測定物で反射された第1の反射光、及び前記第2の発光素子チップから出射され当該被測定物で反射された第2の反射光を受光する第2の受光部と、前記第1の反射光が、前記被測定物が予め定めた距離内に存在することを示す光である場合、前記第2の発光素子チップから光を出射するように当該第2の発光素子チップを制御する制御部と、を有する発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の領域は前記第1の発光素子チップから出射された光の拡がり角を増加させないように構成されている請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の領域に対応する前記光拡散部材の面は平面である請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の領域には、前記第1の発光素子チップから出射された光の拡がり角を狭める光学素子が設けられている請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の領域は、前記光拡散部材に設けられた貫通孔である請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の領域は、前記第2の領域で囲われている請求項1乃至のいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の発光素子チップは、第1の発光素子を含み、前記第2の発光素子チップは、第2の発光素子を含み、前記第2の発光素子から出射されて前記第2の領域に向かう光の拡がり角よりも前記第1の発光素子から出射されて前記第1の領域に向かう光の拡がり角の方が狭い請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の発光素子は、シングルモードの光を出射するレーザ素子である請求項に記載の発光装置である。
請求項に記載の発明は、前記第1の発光素子は、発振波長をλとした場合に、5λ~20λの共振器長を有する長共振器構造の垂直共振器面発光レーザ素子である請求項に記載の発光装置である。
請求項10に記載の発明は、前記第2の発光素子は、マルチモードの光を出射するレーザ素子である請求項に記載の発光装置である。
請求項11に記載の発明は、前記第2の発光素子チップの出射面から前記光拡散部材までの距離よりも、前記第1の発光素子チップの出射面から当該光拡散部材までの距離の方が近い請求項に記載の発光装置である。
請求項12に記載の発明は、前記第1の領域は前記第2の発光素子チップを構成する前記第2の発光素子の半値全幅の領域と重複しない位置に設けられている請求項に記載の発光装置である。
請求項13に記載の発明は、前記第1の発光素子チップは1つ以上の前記第1の発光素子を含み、前記第2の発光素子チップは複数の前記第2の発光素子を含み、前記第2の発光素子同士の配置間隔よりも、前記第1の発光素子と当該第2の発光素子との配置間隔の方が広い請求項に記載の発光装置である。
請求項14に記載の発明は、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、各々垂直共振器面発光レーザ素子であり、前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個から出射される光出力が、前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個から出射される光出力よりも小さくなるように駆動される請求項13に記載の発光装置である。
請求項15に記載の発明は、前記第1の発光素子及び前記第2の発光素子は、各々垂直共振器面発光レーザ素子であり、前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の電力変換効率が前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の電力変換効率より低くなる光出力で駆動される請求項13に記載の発光装置である。
請求項16に記載の発明は、前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個の光出力が1mW~4mWの範囲となるように駆動される請求項14又は15に記載の発光装置である。
請求項17に記載の発明は、前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子1個の光出力が4mW~8mWの範囲となるように駆動される請求項14乃至16のいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項18に記載の発明は、前記第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の数が1個~50個である請求項14乃至17のいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項19に記載の発明は、前記第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の数が100個~1000個である請求項14乃至18のいずれか1項に記載の発光装置である。
請求項20に記載の発明は、前記第1の発光素子チップ及び前記第2の発光素子チップを囲う側壁を備え、前記第1の発光素子チップ及び前記第2の発光素子チップは、前記側壁で支えられた前記光拡散部材で覆われている請求項に記載の発光装置である。
請求項21に記載の発明は、前記第2の発光素子チップから出射され前記光拡散部材の前記第2の領域で反射した反射光を受光する第1の受光部を有し、前記第2の発光素子チップは、第1の側面と、当該第1の側面と対向する第2の側面と、互いに対向して設けられ、当該第1の側面及び当該第2の側面を接続する第3の側面と、第4の側面とを有し、前記第1の受光部は、前記第1の側面側に配置され、前記第1の発光素子チップは前記第2の側面側に配置されている請求項に記載の発光装置である。
請求項22に記載の発明は、前記第2の発光素子チップに接続され、当該第2の発光素子チップに電力を供給する複数の配線を有し、複数の前記配線は、前記第3の側面側及び前記第4の側面側に設けられている請求項21に記載の発光装置である。
請求項23に記載の発明は、前記第2の受光部は、前記第1の発光素子チップから光が出射されてから当該第2の受光部で受光されるまでの時間に相当する信号、及び前記第2の発光素子チップから光が出射されてから当該第2の受光部で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する請求項に記載の発光装置である。
請求項24に記載の発明は、請求項1乃至23のいずれか1項に記載の発光装置と、前記発光装置が備える複数の第2の発光素子チップから出射され被測定物で反射され、当該発光装置が備える第2の受光部が受光した第2の反射光に基づき、当該被測定物の三次元形状を特定する形状特定部と、を備える情報処理装置である。
請求項25に記載の発明は、前記形状特定部での特定結果に基づき、自装置の使用に関する認証処理を行う認証処理部と、を備える請求項24に記載の情報処理装置である。
【発明の効果】
【0007】
請求項に記載の発明によれば、被測定物が予め定めた距離内に存在しない場合に、第2の発光素子チップから光が出射されない。
請求項に記載の発明によれば、第1の発光素子チップから出射された光の拡がり角が増加する場合と比較し、第1の発光素子チップから出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項に記載の発明によれば、光を拡散させる形状を有する場合と比較し、第1の発光素子チップから出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項に記載の発明によれば、拡がり角を狭めない場合と比較し、第1の発光素子チップから出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項に記載の発明によれば、第1の領域が光を拡散させる形状を有する場合と比較し、第1の発光素子チップから出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項に記載の発明によれば、第1の領域が第2の領域で囲われていない場合と比較し、第2の発光素子チップから出射された光が第2の領域で拡散されずに第1の領域から外部に出射されることが抑制される。
請求項に記載の発明によれば、第1の領域に向かう光の拡がり角の方が広い場合と比較し、第1の発光素子チップから出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項に記載の発明によれば、マルチモードの光を出射するレーザ素子で構成されている場合と比較し、照射面での光密度の低下を抑制しやすい。
請求項に記載の発明によれば、共振器長がλと一致する通常のシングルモード垂直共振器面発光レーザ素子で構成する場合と比較し、拡がり角が狭くなる。
請求項10に記載の発明によれば、シングルモードの光を出射するレーザ素子で構成する場合と比較し、高い光出力を得やすい。
請求項11に記載の発明によれば、第1の発光素子チップの出射面から光拡散部材までの距離が遠い場合と比較し、第1の領域の面積を小さくしやすい。
請求項12に記載の発明によれば、重複する領域に設けられている場合と比較し、第2の発光素子チップから出射されて第1の領域を透過する光が低減される。
請求項13に記載の発明によれば、第2の発光素子同士の配置間隔と、第1の発光素子と第2の発光素子との間隔とが同じ場合と比較し、第2の発光素子チップから出射された光が第2の領域で拡散されずに第1の領域から外部に出射されることが抑制される。
請求項14に記載の発明によれば、第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の光出力を第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の光出力と一致させる場合と比較し、第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子から出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項15に記載の発明によれば、第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の電力変換効率を第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の電力変換効率と一致させる場合と比較し、第1の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子から出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項16に記載の発明によれば、4mWを超える領域で駆動される場合と比較し、拡がり角の狭い光が照射される。
請求項17に記載の発明によれば、4mW未満の領域で駆動される場合と比較し、第2の発光素子である垂直共振器面発光レーザ素子の電力変換効率が向上する。
請求項18に記載の発明によれば、近接検知に適した発光素子チップを有する発光装置が提供される。
請求項19に記載の発明によれば、TOF方式の三次元測定に適した発光素子チップを有する発光装置が提供される。
請求項20に記載の発明によれば、第1の発光素子チップ及び第2の発光素子チップを側壁と光拡散部材で覆った構成であっても、第1の発光素子チップから出射された光の拡散角が第2の発光素子チップから出射された光と同じ拡散角で拡散する場合と比較し、第1の発光素子チップから出射された光の照射面での光密度の低下が抑制される。
請求項21に記載の発明によれば、第2の発光素子チップ、第1の発光素子チップ、第1の受光部の順で並べて配置する場合と比較し、第1の受光部を第2の発光素子チップに近接させて配置しやすい。
請求項22に記載の発明によれば、一方の側面側から電力を供給する場合と比較し、大電力を供給しやすい。
請求項23に記載の発明によれば、近接検知と三次元測定との両方を行える発光装置が提供される。
請求項24に記載の発明によれば、三次元形状を測定できる情報処理装置が提供される。
請求項25に記載の発明によれば、三次元形状に基づく認証処理を搭載した情報処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態が適用される情報処理装置の一例を示す図である。
図2】情報処理装置の構成を説明するブロック図である。
図3】本実施の形態が適用される光学装置の平面図及び断面図の一例である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のIIIB-IIIB線での断面図である。
図4】近接検知用チップ及び3D形状測定用チップの構成を説明する図である。
図5】近接検知用チップにおける1個のVCSELの断面構造を説明する図である。
図6】3D形状測定用チップにおける1個のVCSELの断面構造を説明する図である。
図7】一般的なVCSELの光出力と電力変換効率との関係を説明する図である。
図8】拡散板の構成の一例を説明する図である。(a)は、平面図、(b)は、(a)のVIIIB-VIIIB線での断面図である。
図9】拡散板の変形例を示す図である。(a)は、拡散板の第1の変形例、(b)は、拡散板の第2の変形例である。
図10】3Dセンサを説明する図である。
図11】情報処理装置の使用に関する認証処理を行うためのフローチャートである。
図12】ローサイド駆動を説明する図である。
図13】発光装置における近接検知用チップ、3D形状測定用チップ及び光量監視用受光素子の配置について説明する図である。(a)は、本実施の形態として説明した配置、(b)は、配置についての第1の変形例、(c)は、配置についての第2の変形例、(d)は、配置についての第3の変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
情報処理装置は、その情報処理装置にアクセスしたユーザがアクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであることが認証された場合にのみ、自装置である情報処理装置の使用を許可するようになっていることが多い。これまで、パスワード、指紋、虹彩などにより、ユーザを認証する方法が用いられてきた。最近では、さらにセキュリティ性の高い認証方法が求められている。この方法として、ユーザの顔の形状など、三次元像による認証が行われるようになっている。
ここでは、情報処理装置は、一例として携帯型情報処理端末であるとして説明し、三次元像として捉えられた顔の形状を認識することで、ユーザを認証するとして説明する。なお、情報処理装置は、携帯型情報処理端末以外のパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置に適用しうる。
さらに、本実施の形態で説明する構成、機能、方法等は、顔の形状の認識以外に、物体の三次元形状の認識にも適用しうる。すなわち、顔以外の物体を被測定物として、その形状の認識にも適用してもよい。また、被測定物までの距離は問わない。
【0010】
(情報処理装置1)
図1は、本実施の形態が適用される情報処理装置1の一例を示す図である。前述したように、情報処理装置1は、一例として携帯型情報処理端末である。
情報処理装置1は、ユーザインターフェイス部(以下では、UI部と表記する。)2と三次元像を取得する光学装置3とを備えている。UI部2は、例えばユーザに対して情報を表示する表示デバイスとユーザの操作により情報処理に対する指示が入力される入力デバイスとが一体化されて構成されている。表示デバイスは、例えば液晶ディスプレイや有機ELディスプレイであり、入力デバイスは、例えばタッチパネルである。
【0011】
光学装置3は、発光装置4と、三次元センサ(以下では、3Dセンサと表記する。)6とを備えている。発光装置4は、三次元像を取得するために被測定物、ここで説明する例では顔に向けて光を出射する。3Dセンサ6は、発光装置4が出射した光が顔で反射されて戻ってきた光を取得する。ここでは、光の飛行時間による、いわゆるTOF(Time of Flight)法に基づいて、顔の三次元像を取得するとする。以下では、顔を被測定物とする場合であっても、被測定物と表記する。
【0012】
なお、情報処理装置1は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして構成されている。なお、ROMには、不揮発性の書き換え可能なメモリ、例えばフラッシュメモリを含む。そして、ROMに蓄積されたプログラムや定数が、RAMに展開されて、CPUが実行することによって、情報処理装置1が動作し、各種の情報処理が実行される。
【0013】
図2は、情報処理装置1の構成を説明するブロック図である。
情報処理装置1は、上記した光学装置3と、光学装置制御部8と、システム制御部9とを備えている。光学装置3は、前述したように発光装置4と3Dセンサ6を備えている。光学装置制御部8は、光学装置3を制御する。そして、光学装置制御部8は、形状特定部81を含む。システム制御部9は、情報処理装置1全体をシステムとして制御する。そして、システム制御部9は、認証処理部91を含む。そして、システム制御部9には、UI部2、スピーカ92、二次元(2D)カメラ93などが接続されている。なお、3Dセンサ6は、第2の受光部の一例、光学装置制御部8が制御部の一例である。
以下、順に説明する。
【0014】
光学装置3は、前述したように発光装置4と、3Dセンサ6を備えている。発光装置4は、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20と、拡散板30と、光量監視用受光素子(図2では、PDと表記する。)40と、第1の駆動部50Aと、第2の駆動部50Bとを備えている。なお、近接検知用チップ10は、第1の発光素子チップの一例、3D形状測定用チップ20は、第2の発光素子チップの一例、拡散板30は、光拡散部材の一例であり、光量監視用受光素子40は、第1の受光部の一例である。
【0015】
発光装置4における第1の駆動部50Aは、近接検知用チップ10を駆動し、第2の駆動部50Bは、3D形状測定用チップ20を駆動する。例えば、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20は、数10MHz~数100MHzのパルス光(以下では、出射光パルスと表記する。)を出射するように駆動される。
そして、光学装置3は、後述するように、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20から被測定物に向けて照射された光が被測定物からの反射光を3Dセンサ6が受光するように構成されている。
【0016】
3Dセンサ6は、複数の受光領域61(後述する図10参照。)を備えている。3Dセンサ6は、近接検知用チップ10から出射された光が出射されてから被測定物で反射され3Dセンサ6で受光されるまでの時間に相当する信号、及び3D形状測定用チップ20から出射された光が出射されてから被測定物で反射され3Dセンサ6で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する。なお、3Dセンサ6は、集光用のレンズを備えてもよい。
近接検知用チップ10から出射されて被測定物で反射した光は、第1の反射光の一例であり、3D形状測定用チップ20から出射されて被測定物で反射した光は、第2の反射光の一例である。
【0017】
光学装置制御部8の形状特定部81は、3Dセンサ6から受光領域61毎に得られるデジタル値を取得し、受光領域61毎に被測定物までの距離を算出して、被測定物の3D形状を特定する。
システム制御部9の認証処理部91は、形状特定部81が特定した特定結果である被測定物の3D形状がROMなどに予め蓄積された3D形状である場合に、情報処理装置1の使用に関する認証処理を行う。なお、情報処理装置1の使用に関する認証処理とは、一例として、自装置である情報処理装置1の使用を許可するか否かの処理である。例えば、被測定物である顔の3D形状が、ROM等の記憶部材に記憶された顔形状に一致する場合は、情報処理装置1が提供する各種アプリケーション等を含む情報処理装置1の使用が許可される。
上記の形状特定部81及び認証処理部91は、一例として、プログラムによって構成される。また、ASICやFPGA等の集積回路で構成されてもよい。さらには、プログラム等のソフトウエアと集積回路とで構成されてもよい。
【0018】
図2においては、光学装置3、光学装置制御部8及びシステム制御部9をそれぞれ分けて示したが、システム制御部9が光学装置制御部8を含んでもよい。また、光学装置制御部8が光学装置3に含まれてもよい。さらに、光学装置3、光学装置制御部8及びシステム制御部9が一体に構成されてもよい。
【0019】
(光学装置3の全体構成)
次に、光学装置3について、詳細に説明する。
図3は、本実施の形態が適用される光学装置3の平面図及び断面図の一例である。図3(a)は、平面図、図3(b)は、図3(a)のIIIB-IIIB線での断面図である。ここで、図3(a)において、紙面の横方向をx方向、紙面の上方向をy方向とする。x方向及びy方向に反時計回りで直交する方向をz方向とする。
【0020】
図3(a)に示すように、光学装置3は、回路基板7上のx方向に、発光装置4と、3Dセンサ6とが配置されている。回路基板7は、絶縁性材料で構成された板状の部材を基材とし、導電性材料で構成された導体パタンが設けられている。絶縁性材料は、例えばセラミック、エポキシ樹脂などで構成されている。そして、回路基板7上には、導電性材料で構成された導体パタンが設けられている。なお、導電性材料は、例えば銅(Cu)、銀(Ag)などの金属又はこれらの金属を含む導電性ペーストである。回路基板7は、導体パタンが表面に設けられた単層基板であってもよく、導体パタンが複数層設けられた多層基板であってもよい。また、発光装置4と3Dセンサ6とは、それぞれが別の回路基板上に配置されていてもよい。
【0021】
そして、発光装置4は、一例であるが、回路基板7上の+x方向に、光量監視用受光素子40と、3D形状測定用チップ20と、近接検知用チップ10と、第1の駆動部50A及び第2の駆動部50Bとが順に配置されている。
【0022】
近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20は、それぞれを平面視した場合の形状、つまり平面形状が四角形で、同じ方向(図3(b)におけるz方向)に光を出射する。なお、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20は、それぞれの平面形状は四角形でなくてもよい。ここで、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20とは、回路基板7上に直接搭載されてもよいし、酸化アルミニウムや窒化アルミ等の放熱用基材を間に介して、回路基板7上に搭載されてもよい。以下では、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20は、回路基板7上に直接搭載されているとして説明する。ここで、平面視とは、図3(a)において、z方向から見ることをいう。以下同様である。
【0023】
近接検知用チップ10を駆動する第1の駆動部50Aと3D形状測定用チップ20を駆動する第2の駆動部50Bとは、回路基板7上において、y方向に横並びで配置されている。そして、第1の駆動部50Aの定格出力は、第2の駆動部50Bの定格出力よりも小さく設定されている。このため、第1の駆動部50Aは、第2の駆動部50Bより外形サイズも小さい。第2の駆動部50Bは大電流で3D形状測定用チップ20を駆動する必要があるため、3D形状測定用チップ20との距離が短くなるよう第1の駆動部50Aよりも優先的に配置されている。すなわち、第2の駆動部50Bは、3D形状測定用チップ20と接続する配線が広いパタン幅となるように配置されている。一方、第1の駆動部50Aは、第2の駆動部50Bから横にずれた位置、つまり第2の駆動部50Bのy方向側に配置されている。
【0024】
近接検知用チップ10は、回路基板7上において、3D形状測定用チップ20と第2の駆動部50Bとの間に配置されている。また、光量監視用受光素子40は、回路基板7上において、3D形状測定用チップ20に近接した位置、つまり、3D形状測定用チップ20に対して、第2の駆動部50Bが配置される位置とは反対側に配置されている。このように、近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20、及び光量監視用受光素子40を近接させて配置することで、これらの部品を共通の拡散板30で覆いやすくなる。逆に、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20とが距離を隔てて配置される場合において、共通の拡散板30で覆うようにするとサイズの大きな拡散板30が必要となる。
【0025】
図3(a)に示すように、拡散板30は、平面形状が一例として長方形である。なお、拡散板30は、平面形状が長方形でなくてもよい。そして、図3(b)に示すように、拡散板30は、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20の光出射方向側に側壁33で支えられて、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20から予め定められた距離に設けられている。そして、拡散板30は、光量監視用受光素子40、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20を覆うように設けられている。なお、側壁33は、光量監視用受光素子40、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20を囲むように設けられている。側壁33は、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20が出射する光を吸収する部材で構成されていると、側壁33を介して近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20が出射する光が外部に放射されることが抑制される。また、拡散板30と側壁33とで近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20などを封止することで、防塵、防湿等がはかられる。本実施の形態では、近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20、及び光量監視用受光素子40を近接して配置することで、小さなサイズの側壁33で囲いやすくなる。逆に、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20とが距離を隔てて配置される場合において、共通の側壁33で囲うようにするとサイズの大きな側壁33が必要となる。また、小さなサイズの側壁33を2個準備し、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20とを別々に囲う構成も考えられるが、部品が二倍に増えてしまう。また、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20との間には側壁33は設けられていない。よって、側壁33を間に設ける構成と比較し、小型化が図られている。
【0026】
光量監視用受光素子40は、例えば、受光量に応じた電気信号を出力する、シリコンなどで構成されたフォトダイオード(PD)である。
光量監視用受光素子40は、3D形状測定用チップ20から出射され、拡散板30の裏面、つまり-z方向側の面で反射した光が受光されるようになっている。なお、光量監視用受光素子40は、近接検知用チップ10から出射し、拡散板30の裏面で反射された光を受光してもよい。
【0027】
3D形状測定用チップ20は、光量監視用受光素子40の受光した光量(受光量)に基づいて、第2の駆動部50Bを介して、光学装置制御部8により、予め定められた光出力を維持するように制御される。
【0028】
また、光量監視用受光素子40の受光量が極端に低下した場合には、拡散板30が外れたり、破損したりして、3D形状測定用チップ20が出射する光が直接外部に照射されているおそれがある。このような場合には、光学装置制御部8を介して、第2の駆動部50Bにより、3D形状測定用チップ20の光出力が抑制される。例えば、3D形状測定用チップ20からの光の照射が停止される。
【0029】
発光装置4において、第1の駆動部50Aは、近接検知用チップ10を駆動して、被測定物の近接を検知するための光を出射させる。第2の駆動部50Bは、3D形状測定用チップ20を駆動して、被測定物の3D形状の測定のための光を出射させる。そして、光量監視用受光素子40は、3D形状測定用チップ20が出射する光の内、拡散板30で反射した光を受光し、3D形状測定用チップ20の光出力をモニタする。そして、光量監視用受光素子40でモニタされた3D形状測定用チップ20の光出力に基づいて、第2の駆動部50Bを介して、3D形状測定用チップ20の光出力が制御される。なお、光量監視用受光素子40は、3D形状測定用チップ20と同様に、近接検知用チップ10の光出力をモニタしてもよい。
【0030】
(近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20の構成)
図4は、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20の構成を説明する図である。近接検知用チップ10は、垂直共振器面発光レーザ素子VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)-Aを含んで構成されている。一方、3D形状測定用チップ20は、垂直共振器面発光レーザ素子VCSEL-Bを含んで構成されている。以下では、垂直共振器面発光レーザ素子VCSEL-AをVCSEL-Aと表記し、垂直共振器面発光レーザ素子VCSEL-BをVCSEL-Bと表記する。なお、VCSEL-AとVCSEL-Bとを区別しないときは、VCSELと表記する。VCSEL-Aは、第1の発光素子の一例、VCSEL-Bは、第2の発光素子の一例である。
【0031】
VCSELは、基板上に積層された下部多層膜反射鏡と上部多層膜反射鏡との間に発光領域となる活性領域を設け、基板と垂直方向にレーザ光を出射させる発光素子であることから、2次元に配列したアレイ化が容易である。ここでは、近接検知用チップ10は、1個以上のVCSEL-Aを含み、3D形状測定用チップ20は、複数のVCSEL-Bを含んでいるとする。
【0032】
近接検知用チップ10のVCSEL-Aは、被測定物が情報処理装置1に近接しているか否かを検知するための光を出射する。一方、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bは、被測定物の3D形状を測定するための光を出射する。顔認証を例とする場合、測定距離は10cm程度から1m程度である。そして、被測定物の3D形状を測定する範囲(以下では、測定範囲又は照射範囲と表記し、この範囲を照射面と表記する。)は、1m角程度である。
【0033】
この場合、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの数は、1個~50個であり、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの数は、100個~1000個である。つまり、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの数は、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの数に比べて多い。後述するように、近接検知用チップ10の複数のVCSEL-Aは、互いに並列に接続されて、並列に駆動される。また、3D形状測定用チップ20の複数のVCSEL-Bも同様に、互いに並列に接続されて、並列に駆動される。なお、上記のVCSELの数は一例であり、測定距離や測定範囲に応じて設定すればよい。図4に示す近接検知用チップ10は、一例として、4個のVCSEL-Aを含んで構成されている。
【0034】
近接検知用チップ10は、測定範囲の全面に光を照射することを要せず、測定範囲に被測定物が近接したか否かが検知されればよい。よって、近接検知用チップ10は、測定範囲内の一部に対して光が照射されればよい。このため、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの数は、少なくてもよい。そして、近接検知用チップ10は、被測定物が情報処理装置1に近接したか否かを検知するために、情報処理装置1の使用要求が有る場合、予め定められた周期で測定範囲に光を照射する。よって、近接検知用チップ10は、低消費電力であることが求められる。
【0035】
一方、3D形状測定用チップ20は、測定範囲に被測定物が近接したことが検知された場合に、測定範囲の全面に光を照射する。そして、3Dセンサ6が測定範囲から受光した反射光から、3D形状が特定される。このため、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bは、出射光量が大きいことが求められる。そして、測定範囲の全面を均一に照射するために、多数のVCSEL-Bを含んでいる。なお、3D形状測定用チップ20は、3D形状を測定する場合のみ光を出射するので、消費電力が高くても許容される。
【0036】
(近接検知用チップ10のVCSEL-A)
次に、近接検知用チップ10のVCSEL-Aを説明する。
近接検知用チップ10は、被測定物が近接しているか否かを検知するために光を照射するものである。よって、近接検知用チップ10のVCSEL-Aは、測定範囲の全面に光を照射する必要はなく、出射光の拡がり角が小さく、距離に対する光密度の低下が少ないことが求められる。出射光の拡がり角が大きいと、同じ光出力の場合、出射光の拡がり角が小さい場合と比較し、被測定物へ照射される光密度が低下する。これにより、3Dセンサ6で受光する反射光が弱くなり、反射光の検知が困難となりえる。
なお、光密度とは、照度をいう。
【0037】
ここでは、一例として、近接検知用チップ10のVCSEL-Aとして、単一横モード、つまりシングルモードで発振するシングルモードVCSELを用いる。シングルモードVCSELは、多重横モード、つまりマルチモードで発振するマルチモードVCSELと比べて、出射光の拡がり角が小さい。このため、光出力が同じでも、シングルモードVCSELの方が、マルチモードVCSELに比べて、照射面での光密度が大きい。なお、出射光の拡がり角とは、VCSELから出射する光の半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)をいう(図8(b)のθ1、θ2参照。)。なお、単一横モードとは、拡がり角をパラメータとした出射光の強度プロファイルが単峰性、つまり強度ピークが1つである特性を有するものを言う。例えば、単峰性が維持される範囲において複数の横モードを含んでもよい。
【0038】
シングルモードVCSELとして、長共振器構造のVCSELを用いて構成してもよい。
長共振器構造のVCSELは、共振器長が発振波長λである一般的なλ共振器構造のVCSEL内の活性領域と一方の多層膜反射鏡との間に、数λ~数10λ分のスペーサ層を導入して共振器長を長くすることで高次横モードの損失を増加させ、これにより、一般的なλ共振器構造のVCSELの酸化アパーチャ径よりも大きい酸化アパーチャ径でシングルモード発振を可能にする。典型的なλ共振器構造のVCSELでは、縦モード間隔(フリースペクトルレンジと呼ばれることがある。)が大きいため、単一縦モードで安定的な動作を得ることができる。これに対し、長共振器構造のVCSELの場合には、共振器長が長くなることで縦モード間隔が狭くなり、共振器内に複数の縦モードである定在波が存在し、その結果、縦モード間のスイッチングが起こり易くなる。このため、長共振器構造のVCSELでは、縦モード間のスイッチングを抑制することが要求される。
そして、長共振器構造のVCSELは、一般的なλ共振器構造のシングルモードVCSELと比較し、更に拡がり角を狭く設定しやすい。
【0039】
図5は、近接検知用チップ10における1個のVCSEL-Aの断面構造を説明する図である。VCSEL-Aは、長共振器構造のVCSELである。
VCSEL-Aは、n型のGaAsの基板100上に、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型の下部分布ブラック型反射鏡(DBR:Distributed Bragg Reflector)102、下部DBR102上に形成された、共振器長を延長する共振器延長領域104、共振器延長領域104上に形成されたn型のキャリアブロック層105、キャリアブロック層105上に形成された、上部スペーサ層及び下部スペーサ層に挟まれた量子井戸層を含む活性領域106、活性領域106上に形成されたAl組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたp型の上部DBR108を積層して構成されている。
【0040】
n型の下部DBR102は、Al0.9Ga0.1As層とGaAs層とのペアの複数層積層体で、各層の厚さはλ/4n(但し、λは発振波長、nは媒質の屈折率)であり、これらを交互に40周期で積層してある。n型不純物であるシリコンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。
【0041】
共振器延長領域104は、一連のエピタキシャル成長により形成されたモノリシックな層である。従って、共振器延長領域104は、GaAs基板と格子定数が一致し、又は整合するような、AlGaAs、GaAs又はAlAsから構成される。ここでは、940nm帯のレーザ光を出射させるため、共振器延長領域104は、光吸収を生じさせないAlGaAsから構成される。共振器延長領域104の膜厚は、2μm~5μm程度、発振波長λの5λ~20λに設定される。このため、キャリアの移動距離が長くなる。よって、共振器延長領域104は、キャリア移動度が大きいn型であることが望ましく、それゆえn型の下部DBR102と活性領域106との間に挿入される。このような共振器延長領域104は、空洞延長領域又はキャビティスペースと呼ばれることがある。
【0042】
好ましくは、共振器延長領域104と活性領域106との間に、例えばAl0.9Ga0.1Asからなるバンドギャップの大きいキャリアブロック層105が形成される。キャリアブロック層105の挿入により、活性領域106からのキャリアリークが防止され、発光効率が改善される。後述するように、共振器延長領域104には、レーザ光の発振強度を幾分減衰させるような光学的損失を与える層120が挿入されるので、キャリアブロック層105は、こうした損失を補填する役割を担う。例えば、キャリアブロック層105の膜厚は、λ/4mn(但し、λは発振波長、mは整数、nは媒質の屈折率)である。
【0043】
活性領域106は、下部スペーサ層と、量子井戸活性層と、上部スペーサ層とが積層されて構成されている。例えば、下部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層であり、量子井戸活性層は、アンドープのInGaAs量子井戸層及びアンドープのGaAs障壁層であり、上部スペーサ層は、アンドープのAl0.6Ga0.4As層である。
【0044】
p型の上部DBR108は、p型のAl0.9Ga0.1As層とGaAs層との積層体で、各層の厚さはλ/4nであり、これらを交互に29周期積層してある。p型不純物であるカーボンをドーピングした後のキャリア濃度は、例えば、3×1018cm-3である。好ましくは、上部DBR108の最上層には、p型GaAsからなるコンタクト層が形成され、上部DBR108の最下層もしくはその内部に、p型AlAsの電流狭窄層110が形成される。
【0045】
上部DBR108から下部DBR102に至るまで積層された半導体層をエッチングすることにより、基板100上に円柱状のメサM1が形成され、電流狭窄層110は、メサM1の側面に露出される。電流狭窄層110には、メサM1の側面から選択的に酸化された酸化領域110Aと酸化領域110Aによって囲まれた導電領域110Bが形成される。導電領域110Bが、酸化アパーチャである。酸化工程において、AlAs層はAlGaAs層よりも酸化速度が速く、酸化領域110Aは、メサM1の側面から内部に向けてほぼ一定の速度で酸化されるため、導電領域110Bの基板と平行な平面形状は、メサM1の外形を反映した形状、すなわち円形状となり、その中心は、メサM1の一点鎖線で示す軸方向とほぼ一致する。長共振器構造のVCSEL-Aでは、単一横モードを得るための導電領域110Bの径を、通常のλ共振器構造のVCSELよりも大きくすることができ、例えば、導電領域110Bの径を7μm~8μm程度まで大きくしうる。
【0046】
メサM1の最上層には、Ti/Auなどを積層した金属製の環状のp側電極112が形成される。p側電極112は、上部DBR108のコンタクト層にオーミック接触する。環状のp側電極112の内側は、レーザ光が外部へ出射される光出射口112Aとなる。つまり、メサM1の軸方向が光軸になる。さらに、基板100の裏面には、n側電極としてカソード電極114が形成される。なお、光出射口112Aを含む上部DBR108の表面が出射面である。
【0047】
そして、p側電極112と後述するアノード電極118とが接続される部分及び光出射口112Aを除いて、メサM1の表面を覆うように、絶縁層116が設けられる。そして、光出射口112Aを除いて、アノード電極118がp側電極112とオーミック接触するように設けられる。なお、アノード電極118は、複数のVCSEL-Aのそれぞれの光出射口112Aを除いて設けられる。つまり、近接検知用チップ10に含まれる複数のVCSEL-Aは、それぞれのp側電極112がアノード電極118で並列接続される。
【0048】
長共振器構造のVCSELでは、共振器長で規定される反射帯域内に複数の縦モードが存在しうるため、縦モード間のスイッチング又はポッピングを抑制する必要がある。ここでは、必要な縦モードの発振波長帯を940nmとし、それ以外の縦モードの発振波長帯へのスイッチングを抑制するべく、共振器延長領域104内に不要な縦モードの定在波に対して光学的損失を与える層120が設けられている。つまり、光学的損失を与える層120は、必要な縦モードの定在波の節の位置に導入されている。光学的損失を与える層120は、共振器延長領域104を構成する半導体層と同じAl組成の半導体材料から構成され、例えば、Al0.3Ga0.7Asから構成されている。光学的損失を与える層120は、好ましくは、共振器延長領域104を構成する半導体層よりも不純物のドーピング濃度が高く、例えば、共振器延長領域104を構成するAlGaAsの不純物濃度が1×1017cm-3であるとき、光学的損失を与える層120は、1×1018cm-3の不純物濃度を有し、他の半導体層よりも1桁程度、不純物濃度が高くなるように構成される。不純物濃度が高くなると、キャリアによる光の吸収が大きくなり、損失が与えられる。光学的損失を与える層120の膜厚は、必要な縦モードへの損失が大きくならないように選択され、好ましくは、定在波の節に位置する電流狭窄層110と同程度の膜厚(10nm~30nmくらい)である。
【0049】
光学的損失を与える層120は、必要な縦モードの定在波に対しては節に位置するように挿入される。定在波の節は、強度が弱いので、光学的損失を与える層120が必要な縦モードに与える損失の影響は小さい。他方、不要な縦モードの定在波に対しては、光学的損失を与える層120は、節以外の腹に位置する。定在波の腹は、節よりも強度が大きくなるため、光学的損失を与える層120が不要な縦モードに与える損失は大きくなる。こうして、必要な縦モードへの損失を小さくしつつ、不要な縦モードへの損失を大きくすることで、選択的に不要な縦モードが共振されないようにし、縦モードホッピングが抑制される。
【0050】
光学的損失を与える層120は、共振器延長領域104の必要な縦モードの定在波の各節の位置に必ずしも設けることを要せず、単一の層であってもよい。この場合、定在波の強度は、活性領域106に近いほど大きくなるので、活性領域106から近い節の位置に光学的損失を与える層120を形成すればよい。また、縦モード間のスイッチング又はポッピングが許容されるのであれば、光学的損失を与える層120を設けなくてもよい。
【0051】
(3D形状測定用チップ20のVCSEL-B)
次に、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bについて説明する。
ここでは、3D形状測定用チップ20は、被測定物の3D形状を特定するために光を照射するものである。よって、予め定められた測定範囲に対して、予め定められた光密度を照射するものである。よって、ここでは、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bは、シングルモードVCSELよりも高出力化しやすいマルチモードVCSELで構成されるものがよい。
【0052】
図6は、3D形状測定用チップ20における1個のVCSEL-Bの断面構造を説明する図である。このVCSEL-Bは、前述した一般的なλ共振器構造のVCSELである。つまり、VCSEL-Bは、前述したVCSEL-Aにおける共振器延長領域104を備えない。
【0053】
VCSEL-Bは、n型のGaAs基板200上に、Al組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたn型の下部DBR202、下部DBR202上に形成された、上部スペーサ層及び下部スペーサ層に挟まれた量子井戸層を含む活性領域206、活性領域206上に形成されたAl組成の異なるAlGaAs層を交互に重ねたp型の上部DBR208を積層して構成されている。なお、上部DBR208の最下層もしくはその内部には、p型AlAsの電流狭窄層210が形成される。
【0054】
下部DBR202、活性領域206、上部DBR208、電流狭窄層210は、前述したVCSEL-Aの下部DBR102、活性領域106、上部DBR108、電流狭窄層110と同じであるので説明を省略する。
【0055】
上部DBR208から下部DBR202に至るまで積層された半導体層をエッチングすることにより、基板200上に円柱状のメサM2が形成され、電流狭窄層210は、メサM2の側面に露出される。電流狭窄層210には、メサM2の側面から選択的に酸化された酸化領域210Aと酸化領域210Aによって囲まれた導電領域210Bが形成される。導電領域210Bが酸化アパーチャである。導電領域210Bの基板と平行な平面形状は、メサM2の外形を反映した形状、すなわち円形状となり、その中心は、メサM2の一点鎖線で示す軸方向とほぼ一致する。
【0056】
メサM2の最上層には、Ti/Auなどを積層した金属製の環状のp側電極212が形成され、p側電極212は、上部DBR208のコンタクト層にオーミック接続される。p側電極212には、中心がメサM2の軸方向と一致する円形状の光出射口212Aが形成され、光出射口212Aからレーザ光が外部へ出射される。つまり、メサM2の軸方向が光軸になる。さらに、基板200の裏面には、n側電極としてのカソード電極214が形成される。なお、光出射口212Aを含む上部DBR208の表面が出射面である。
【0057】
そして、p側電極212と後述するアノード電極218とが接続される部分及び光出射口212Aを除いて、メサM2の表面を覆うように、絶縁層216が設けられる。そして、光出射口212Aを除いて、アノード電極218がp側電極212とオーミック接触するように設けられる。なお、アノード電極218は、複数のVCSEL-Bのそれぞれの光出射口212Aを除いて設けられる。つまり、3D形状測定用チップ20を構成する複数のVCSEL-Bは、各々のp側電極212がアノード電極218で並列接続される。
【0058】
図7は、一般的なVCSELの光出力と電力変換効率との関係を説明する図である。
一般的に、VCSELは、1個の光出力が4mW~8mWの光出力において電力変換効率が最大となる。しかし、電力変換効率が最大となる範囲においては、光出力がそれより小さい範囲で使用する場合と比較し、拡がり角が大きくなってしまい、照射面での光密度が光出力の増加に比例してはあがらない。
ここでは、近接検知用チップ10のVCSEL-Aは、電力変換効率が落ちる光出力の範囲となるように駆動されるのがよい。つまり、あえて電力変換効率が最大となりうる範囲よりも低い光出力で発光させることで、狭い拡がり角で発光させるようにする。なお、照射面において、光密度が不足する場合には、VCSEL-A1個あたりの光出力を増やすのではなく、VCSEL-Aの数を増やすことで、狭い拡がり角を保ちつつ光密度が高められる。なお、一例として、VCSEL-Aの1個の光出力は、1mW~4mWに設定されている。そして、近接検知用チップ10におけるVCSEL-Aの数は、例えば、前述したように1個~50個である。なお、図4に示した構成では、前述のとおり、電力変換効率が最大となりうる範囲(4mW~8mW)を避けつつ光密度を高めるため、近接検知用チップ10を複数のVCSEL-Aを含むように構成している。
【0059】
一方、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bでは、電力変換効率が最大となりうる光出力の範囲となるように駆動されることがよい。なお、一例として、VCSEL-Bの1個の光出力は、4mW~8mWに設定されている。そして、3D形状測定用チップ20におけるVCSEL-Bの数は、例えば、前述したように100個~1000個である。
【0060】
(拡散板30の構成)
次に、拡散板30について説明する。
図8は、拡散板30の構成の一例を説明する図である。図8(a)は、平面図、図8(b)は、(a)のVIIIB-VIIIB線での断面図である。
拡散板30は、図3(a)、(b)に示したように、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20が光を出射する側に設けられ、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20が各々出射する光を拡散させる。すなわち、拡散板30は、拡散板30に入射する光の拡がり角を更に広げる機能を有する。
【0061】
拡散板30は、図8(a)に示すように、第1の領域30Aと第2の領域30Bとを備えている。言い換えれば、第1の領域30Aと第2の領域30Bとが一体となった部材として構成されている。第1の領域30Aは、近接検知用チップ10のVCSEL-Aからの光の出射経路上に設けられ、第2の領域30Bは、3D形状測定用チップ20からの光の出射経路上に設けられている。つまり、図3(a)に示したように、発光装置4を表面から眺めた(平面視した)場合、拡散板30の第1の領域30Aは、近接検知用チップ10が配置される位置に対向して設けられ、拡散板30の第2の領域30Bは、3D形状測定用チップ20に対向して設けられている。近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20とを共通の拡散板30で覆う場合、近接検知用チップ10からの光も拡散板30で拡散されると、近接検知が困難となる。そこで、共通の拡散板30を使用するために、上記のとおり、拡散板30において第1の領域30Aと第2の領域30Bとを備えている。なお、本実施の形態では、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20とが近接して配置されている。近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20との距離が離れすぎると、共通(一体)の拡散板30を採用すると必要以上に大きな拡散板が必要となってしまうためである。以上から、本実施の形態では、第1の領域30Aと第2の領域30Bとが一体となった小型の拡散板30を採用している。
【0062】
そして、拡散板30の第2の領域30Bは、第1の領域30Aに比べ、拡散角が大きく設定されている。例えば、図8(b)に示すように、拡散板30は、両面が平行で平坦なガラス基材31の一方の表面に光を拡散させるための凹凸が形成された樹脂層32を備えている。ただし、第1の領域30Aと第2の領域30Bとは、凹凸の形状が異なっており、拡散角が第2の領域30Bの方が大きくなるように設定されている。なお、拡散角とは、拡散板30を透過した光の拡がり角である。
【0063】
ここでは、第1の領域30Aには、凹凸が設けられておらず、光が拡散しないように構成されている。第2の領域30Bにおいて凹凸を設ける樹脂層32を、第1の領域30Aでは凹凸を設けず平坦にするとか、両面が平行で平坦なガラス基材31の表面をむき出しにする。ここで、第1の領域30Aは完全な平坦である必要はなく、第2の領域30Bと比較し、拡散角が小さくなる範囲であれば凹凸形状が設けられていてもよい。また、拡散板30の第1の領域30Aは、光が通過する貫通孔であってもよい。貫通孔であれば、第1の領域30Aが平坦である場合と同様に光が拡散しない。
【0064】
そして、図8(b)に示すように、近接検知用チップ10のVCSEL-Aを、拡散板30の第1の領域30Aに対向する位置に配置する。一方、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bを、拡散板30の第2の領域30Bに対向する位置に配置する。VCSEL-Aの出射光の拡がり角をθ1とし、VCSEL-Bの出射光の拡がり角をθ2とする。なお、θ1は、θ2に比べて小さい(θ1<θ2)。
【0065】
すると、VCSEL-Aから出射した光が凹凸の設けられていない第1の領域30Aを透過する場合には、拡散を生じず、出射光の拡がり角θ1がそのまま拡散角αになって透過する。
一方、VCSEL-Bから出射した光が凹凸の設けられた第2の領域30Bを透過する場合には、拡散を生じて、出射光の拡がり角θ2より大きい拡散角βの光が拡散板30から出射する。
なお、拡がり角θ1、θ2及び拡散角α、βは、半値全幅(FWHM)である。
【0066】
以上説明したように、拡散板30は、第1の領域30Aの拡散角が第2の領域30Bの拡散角より小さいように構成されている。このようにすることで、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bからの出射光は、第2の領域30Bでさらに拡散されて外部に出射される。これにより、VCSEL-Bからの出射光が、第2の領域30Bで拡散されずに外部に出射される場合と比較し、より広い照射面において、より均一性を有する照射パタンが得られる。なお、第2の領域30Bは、第2の領域30Bの全体において一様な拡散角を有するように構成してもよく、第2の領域30B内の位置に応じて拡散角が異なるように構成してもよい。また、第2の領域30Bは、VCSEL-Bの光軸と拡散後の光の中心軸とが一致するように構成してもよく、VCSEL-Bの光軸に対して拡散後の光の中心軸を意図的にずらして照射面積が拡大するように構成してもよい。
【0067】
なお、第1の領域30Aは、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの出射光の拡がり角θ1を狭めるような光学素子を備えていてもよい。このような光学素子は、例えば第1の領域30Aを凸レンズ状にすることで得られる。ここで、拡がり角を狭めるとは、入射光を集光させる場合だけでなく、入射光を平行光としたり、拡散はするものの、その拡散の程度を狭めたりするものを含む。
【0068】
第1の領域30Aの大きさは、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの数、出射光の拡がり角θ、出射光の強度などを考慮して決めればよい。一例として、顔認証に使用する場合には、近接検知用チップ10は、例えばVCSEL-Aが1個~50個の範囲で構成される場合、第1の領域30Aは横幅及び縦幅が50μm~500μmの範囲とすればよい。また、図8(a)では、第1の領域30Aの平面視した場合の表面形状を円形としたが、正方形、長方形、多角形やこれらを複合した形状であってよい。また、第1の領域30Aの横幅及び縦幅、すなわち、第1の領域30Aの大きさは、近接検知用チップ10の光出力に基づいて設定してもよい。例えば、近接検知用チップ10から出射される光の半値全幅の領域よりも大きく、0.1%強度の領域よりも小さい範囲に設定してもよい。また、VCSEL-AとVCSEL-Bとをより近接させたい場合には、1%強度の領域よりも小さい範囲、又は、5%強度の領域よりも小さい範囲に設定してもよい。
【0069】
そして、第1の領域30Aと第2の領域30Bとを含む拡散板30の大きさは、例えば、横幅及び縦幅が1mm~10mm、厚みは0.1mm~1mmとすればよい。なお、拡散板30は、近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20及び光量監視用受光素子40を平面視した状態において覆っていればよい。また、拡散板30を平面視した形状が長方形である例を示したが、多角形や円形など、他の形状であってもよい。そして、以上のような大きさ及び形状であれば、特に、携帯型情報処理端末の顔認証や、数m程度までの比較的近距離の測定に適した光拡散部材が提供される。
【0070】
(拡散板30、近接検知用チップ10のVCSEL-A及び3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの位置関係)
図8(b)により、近接検知用チップ10のVCSEL-A及び3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの位置関係を説明する。ここで、互いに隣接する近接検知用チップ10のVCSEL-Aと3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bとの配置の間隔をp1、近接検知用チップ10のVCSEL-A間の間隔をp2、3D形状測定用チップ20のVCSEL-B間の間隔をp3とする。
【0071】
このとき、図8(b)から分かるように、VCSEL-Bが近接検知用チップ10に近づきすぎる、つまり間隔p1が小さくなると、VCSEL-Bから出射される光強度の大きい光が拡散板30の第1の領域30Aを通過し、拡散されない又は拡散が弱い状態で外部に出射されやすくなる。このため、隣接するVCSEL-AとVCSEL-Bとの間に十分な距離を設けることがよい。例えば、拡散板30の第1の領域30Aに隣接する3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bは、出射光の拡がり角θ2の範囲が拡散板30の第1の領域30Aと重複しないように配置されることがよい。このようにすることで、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの出射光の拡がり角θ2の範囲が、拡散板30の第1の領域30Aと重複する場合と比較し、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bから出射されて拡散板30の第1の領域30Aを通過する光量が低減される。
【0072】
例えば、互いに隣接する近接検知用チップ10のVCSEL-Aと3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bとの配置の間隔p1は、3D形状測定用チップ20のVCSEL-B間の間隔p3より大きくすることがよい。
【0073】
また、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの出射光の拡がり角θ1は、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの出射光の拡がり角θ2に比較し、小さく設定されている。しかし、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの光出射口112A(図5参照)から拡散板30までを距離g1とし、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの光出射口212Aから拡散板30までを距離g2とした場合、距離g1を距離g2より小さく(g1<g2)すれば、つまり、近接検知用チップ10のVCSEL-Aの光出射口112Aを、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの光出射口212Aより、拡散板30に近くすれば、図8(b)に示すように、近接検知用チップ10のVCSEL-Aからの出射光は、拡散板30の第1の領域30Aが小さい場合であっても、第1の領域30Aを透過して被測定物に照射されやすい。
【0074】
このようにすると、拡散板30の第1の領域30Aの面積を小さくしやすい。そして、第1の領域30Aの面積が小さいほど、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bから出射されて第1の領域30Aを通過する光量がより低減されるため、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bを、近接検知用チップ10に対してより近接して配置しうる。つまり、互いに隣接する近接検知用チップ10のVCSEL-Aと、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bとの間に生じる、VCSEL-Bを配置できない領域(デッドスペース)が削減され、拡散板30や側壁33のサイズが小さくなる。
【0075】
さらに、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bは、近接検知用チップ10のVCSEL-Aより光出力が大きいため、温度が上昇しやすい。よって、3D形状測定用チップ20のVCSEL-B間の間隔p3は、近接検知用チップ10のVCSEL-A間の間隔p2より広くすれば(p3>p2)、温度上昇が抑制される。一方、近接検知用チップ10のVCSEL-Aは3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bよりも光出力が小さいため、温度が上昇しにくい。よって、近接検知用チップ10のVCSEL-A間の距離である間隔p2を、3D形状測定用チップ20のVCSEL-B間の距離である間隔p3よりも小さくすれば、近接検知用チップ10の占有面積を低減しやすい。
【0076】
さらに、図8(a)に示すように、拡散板30の第1の領域30Aが第2の領域30Bにより四方が囲まれた状態とすることがよい。このようにすることで、後述する図9(a)や図9(b)と比較し、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bから出射する光が、拡散板30の第1の領域を通過することが抑制される。
【0077】
次に、拡散板30の変形例を説明する。
図9は、拡散板30の変形例を示す図である。図9(a)は、拡散板30の第1の変形例、図9(b)は、拡散板30の第2の変形例である。
図9(a)に示す拡散板30の第1の変形例では、拡散板30の第1の領域30Aの平面形状を+x方向に延びたスリット状にした。このようにすることで、±x方向の配置に対するマージンが広がる。この場合であっても、第1の領域は、第2の領域で囲まれているので、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bから出射する光が、拡散板30の第1の領域を通過することが抑制される。
【0078】
一方、図9(b)に示す拡散板30の第2の変形例では、拡散板30の第1の領域30Aが拡散板30の右側端部(+x方向側)に設けられている。このようにすると、第1の領域は、第2の領域で囲まれていないので、拡散板30の第1の変形例と比較し、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bから出射する光のうち、拡散板30の第1の領域30Aを通過する光量が増加する。しかしながら、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bの光出力が小さい場合や、平面視において、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bと第1の領域30Aとの距離が離れている場合など、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bから出射する光が第1の領域30Aを通過することが許容される前提の構成においては、拡散板30の第2の変形例を採用してもよい。3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bから出射する光が、拡散板30の第1の領域を通過することが抑制される。
ここでは、第1の領域が第2の領域で囲まれているとは、平面視した状態において、少なくとも2方向以上に第2の領域30Bが存在する状態をいう。
【0079】
(3Dセンサ6の構成)
図10は、3Dセンサ6を説明する図である。
3Dセンサ6は、複数の受光領域61がマトリクス(格子)状に配列されて構成されている。3Dセンサ6は、発光装置4からの出射光パルスに対する被測定物からの反射光である受光パルスを受光し、受光されるまでの時間に対応する電荷を受光領域61毎に蓄積する。一例として、3Dセンサ6は、各受光領域61が2つのゲートとそれらに対応した電荷蓄積部を備えたCMOS構造のデバイスとして構成されている。そして、2つのゲートに交互にパルスを加えることによって、発生した光電子を2つの電荷蓄積部の何れかに高速に転送し、出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じた電荷を蓄積するように構成されている。そして、ADコンバータを介して、受光領域61毎の出射光パルスと受光パルスとの位相差に応じた電荷に対応するデジタル値が信号として出力される。すなわち、3Dセンサ6は、近接検知用チップ10から光が出射されてから3Dセンサ6で受光されるまでの時間に相当する信号、及び3D形状測定用チップ20から光が出射されてから3Dセンサ6で受光されるまでの時間に相当する信号を出力する。
【0080】
(情報処理装置1における認証処理のフローチャート)
図11は、情報処理装置1の使用に関する認証処理を行うためのフローチャートである。
ここでは、情報処理装置1は、少なくとも、電源がオフのオフ状態と、情報処理装置1の一部分のみに電源が供給されている待機状態と、待機状態よりも多くの部分、例えば、情報処理装置1全体に電源が供給されている動作状態とを備えているとする。
【0081】
まず、情報処理装置1の使用要求が有るか否かが判断される(ステップ110。図11ではS110と表記する。他も同様である。)。使用要求が有る場合とは、オフ状態において電源がオンされた場合や、待機状態において情報処理装置1を使用するため操作がユーザによって行われた場合等をいう。また、待機状態において電話やメール等が着信した場合も使用要求が有る場合の一例である。すなわち、動作状態に移行する信号をシステム制御部9が受け付けた場合が該当する。
ステップ110において、否定(NO)の判断がされた場合、つまりオフ状態や待機状態が継続している場合には、ステップ110が繰り返される。
【0082】
一方、ステップ110において、肯定(YES)の判断がされた場合、つまり動作状態に移行した場合には、近接検知用チップ10から光が被測定物に対して照射され、3Dセンサ6により被測定物からの反射光が受光される(ステップ120)。なお、ステップ110における使用要求の有無とは無関係に、待機状態において、近接検知用チップ10から光を照射し続けてもよい。
【0083】
次に、被測定物が近接しているか否かが判断される(ステップ130)。なお、近接しているとは、予め定められた距離内に被測定物があることをいう。ステップ130において、否定(NO)の判断がされた場合、つまり被測定物が近接していない場合には、ステップ120に戻る。
一方、ステップ130において、肯定(YES)の判断がされた場合、つまり被測定物が近接している場合には、3D形状測定用チップ20から光が照射され、被測定物からの反射光が3Dセンサ6により受光される(ステップ140)。このとき、近接検知用チップ10からの光の照射を停止してもよく、光の照射を継続してもよい。近接検知用チップ10からの照射を継続すれば、照射を継続しない場合と比較し、照射面での照射パタンがより均一になりやすい。
【0084】
そして、3Dセンサ6が受光した光量に基づいて、光学装置制御部8の形状特定部81により被測定物の3D形状が特定される(ステップ150)。
【0085】
次に、認証処理部91により特定された特定結果である3D形状が予め定められた形状であるか否かが判断される(ステップ160)。ステップ160において、肯定(YES)の判断がされた場合、つまり特定された3D形状が予め蓄積された形状である場合には、情報処理装置1の使用が許可される(ステップ170)。一方、ステップ160において、否定(NO)の判断がされた場合、つまり特定された3D形状がROMなどに予め蓄積された形状でない場合には、自装置である情報処理装置1の使用が許可されず、ステップ120に戻る。なお、3D形状だけでなく、2Dカメラ93で取得した2次元画像等の他の情報を加味して、自装置である情報処理装置1の使用の許可を判断してもよい。
【0086】
以上説明したように、本実施の形態における情報処理装置1は、近接検知用チップ10と3D形状測定用チップ20とを備えている。これは、近接検知用チップ10からの光の照射により、被測定物が情報処理装置1に近接しているか否かを判断し、被測定物が近接している場合に3D形状測定用チップ20から3D測定用の光を照射する。すなわち、被測定物が近接していないにもかかわらず、3D形状測定用チップ20が発光することが抑制される。このとき、近接検知用チップ10の光出力を3D形状測定用チップ20の光出力に比べて小さくすることにより、消費電力が抑制される。つまり、情報処理装置1が携帯型情報処理端末である場合には、電池の充電量の低下が抑制される。
【0087】
(近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20と回路基板7との接続関係)
次に、図4により、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20と回路基板7に設けられた導体パタンとの接続関係を説明する。
回路基板7上には、導体パタンとして、近接検知用チップ10用のカソードパタン71、アノードパタン72、3D形状測定用チップ20用のカソードパタン73、アノードパタン74A、74Bが設けられている。
【0088】
前述したように、近接検知用チップ10は、裏面にカソード電極114が設けられ、表面にアノード電極118が設けられている(図5参照)。なお、アノード電極118は、4個のVCSEL-Aのp側電極112を接続するとともに、後述するボンディングワイヤ76が接続されるパッド部118Aを備えている。
同様に、3D形状測定用チップ20は、裏面にカソード電極214が設けられ、表面にアノード電極218が設けられている(図6参照)。なお、アノード電極218は、マトリクス状に配置されたVCSEL-Bのアノード電極218を接続するように形成されるとともに、±y方向側に延長され、後述するボンディングワイヤ75A、75Bが接続されるパッド部218A、218Bを備えている。
【0089】
近接検知用チップ10用のカソードパタン71は、近接検知用チップ10の裏面に設けられたカソード電極114が接続されるように、近接検知用チップ10より広い面積で形成されている。そして、近接検知用チップ10は、裏面に設けられたカソード電極114と、回路基板7上の近接検知用チップ10用のカソードパタン71とが、導電性接着剤にて接着されている。そして、近接検知用チップ10のアノード電極118のパッド部118Aは、ボンディングワイヤ76にて、回路基板7上のアノードパタン72と接続されている。
【0090】
同様に、3D形状測定用チップ20用のカソードパタン73は、3D形状測定用チップ20の裏面に設けられたカソード電極214が接続されるように、3D形状測定用チップ20より広い面積で形成されている。そして、3D形状測定用チップ20用のカソードパタン73上に、3D形状測定用チップ20が導電性接着剤などにより接着されている。
3D形状測定用チップ20用のアノードパタン74A、74Bは、3D形状測定用チップ20の表面に設けられたアノード電極218(図6参照)の対向する二辺(±y方向側)と対向するように設けられている。そして、アノードパタン74A、74Bと3D形状測定用チップ20のアノード電極218のパッド部218A、218Bとが、それぞれボンディングワイヤ75A、75Bで接続されている。なお、ボンディングワイヤ75A、75Bは、各々複数設けられているが、そのうちの1つに符号を付している。
【0091】
(駆動方法)
近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20をより高速に駆動させたい場合は、ともにローサイド駆動すればよい。ローサイド駆動とは、VCSELなどの駆動対象に対して、電流経路の下流側にMOSトランジスタ等の駆動部が位置する構成を言う。逆に、上流側に駆動部が位置する構成をハイサイド駆動と言う。本実施の形態においては、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20の両方をローサイド駆動とするために、両者のカソードを分離して、独立して駆動している。
【0092】
図12は、ローサイド駆動を説明する図である。図12では、近接検知用チップ10のVCSEL-Aと、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bと、第1の駆動部50Aと第2の駆動部50Bと、光学装置制御部8との関係を示す。第1の駆動部50A及び第2の駆動部50Bは、MOSトランジスタを介して接地されている。つまり、MOSトランジスタがオン/オフされることにより、VCSELのカソード側がオンオフされることでローサイド駆動される。
なお、図12では、近接検知用チップ10のVCSEL-Aと3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bとは、アノード側も分離されている。
【0093】
(発光装置4における近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20及び光量監視用受光素子40の配置)
図13は、発光装置4における近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20及び光量監視用受光素子40の配置について説明する図である。図13(a)は、本実施の形態として説明した配置、図13(b)は、配置についての第1の変形例、図13(c)は、配置についての第2の変形例、図13(d)は、配置についての第3の変形例である。ここでは、近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20、光量監視用受光素子40及びボンディングワイヤを示し、他の記載を省略する。なお、平面形状が四角形である3D形状測定用チップ20における-x方向の側面を側面21A、+x方向の側面を側面21B、+y方向の側面を側面21C、-y方向の側面を側面21Dとする。ここでは、側面21Aと側面21Bとが対向し、側面21Cと側面21Dとが側面21Aと側面21Bとを接続して対向する。側面21Aは、第1の側面の一例、側面21Bは、第2の側面の一例、側面21Cは、第3の側面の一例、側面21Dは、第4の側面の一例である。
【0094】
図13(a)に示す本実施の形態として説明した配置(図3(a)参照)では、光量監視用受光素子40は、3D形状測定用チップ20の-x方向の側面21A側に設けられている。そして、近接検知用チップ10は、3D形状測定用チップ20の+x方向の側面21B側に設けられている。3D形状測定用チップ20のアノード電極218(図6参照)と回路基板7上に設けられたアノードパタン74A、74B(図4参照)とを接続するボンディングワイヤ75A、75Bは、3D形状測定用チップ20の±y方向の側面21C、21D側に対向するように設けられている。ボンディングワイヤ75A、75Bは、第2の発光素子チップに電力を供給する配線の一例である。
【0095】
このようにすることで、3D形状測定用チップ20の±y方向から対称に3D形状測定用チップ20の各VCSEL-Bに電流が供給される。よって、後述する図13(d)に示す第3の比較例に比べて、3D形状測定用チップ20の各VCSEL-Bに、より均等に電流が供給されやすい。
【0096】
そして、光量監視用受光素子40が配置された3D形状測定用チップ20の-x方向の側面21A側には、ボンディングワイヤが設けられていない。よって、光量監視用受光素子40を3D形状測定用チップ20に近接して配置しやすい。このため、光量監視用受光素子40は、後述する図13(c)に示す第2の比較例と比較して、3D形状測定用チップ20からの出射光の内、拡散板30に反射した光を受光しやすい。
【0097】
図13(b)に示す配置についての第1の変形例では、光量監視用受光素子40が3D形状測定用チップ20の+x方向の側面21B側であって、近接検知用チップ10の外側に配置されている。つまり、3D形状測定用チップ20と光量監視用受光素子40との距離が、図13(a)に示した本実施の形態における配置と比較し、遠くなっている。このため、3D形状測定用チップ20からの出射光の内、拡散板30に反射した光の受光量が低下する。すなわち、拡散板30に反射した光を受光しにくくなっている。よって、検知精度が低下するおそれがある。
【0098】
図13(c)に示す配置についての第2の変形例では、光量監視用受光素子40が3D形状測定用チップ20の+x方向の側面21B側であって、3D形状測定用チップ20と近接検知用チップ10との間に配置されている。よって、光量監視用受光素子40を3D形状測定用チップ20に近接して配置しやすい。このため、前述の図13(a)と同様に、3D形状測定用チップ20の各VCSEL-Bに、より均等に電流が供給されやすく、かつ、光量監視用受光素子40は、3D形状測定用チップ20からの出射光の内、拡散板30に反射した光を受光しやすい。
【0099】
図13(d)に示す配置についての第3の変形例では、図13(a)におけるボンディングワイヤ75Aを設けていない。その代わりに、3D形状測定用チップ20の-x方向の側面21A側の回路基板7上に別途アノードパタンを設けるとともに、3D形状測定用チップ20のアノード電極218と回路基板7上に別途設けられたアノードパタンとを接続するためのボンディングワイヤ75Cを設けている。なお、ボンディングワイヤ75Cは、複数設けられているが、そのうちの1つに符号を付している。
【0100】
そして、近接検知用チップ10が3D形状測定用チップ20の-y方向の側面21D側に設けられ、光量監視用受光素子40が3D形状測定用チップ20の+x方向の側面21B側に設けられている。このようにすると、3D形状測定用チップ20と光量監視用受光素子40とが近接して配置される。しかし、3D形状測定用チップ20のVCSEL-Bには、+y方向の側面21C側と-x方向の側面21A側との二辺から電流が供給されるため、3D形状測定用チップ20の各VCSEL-Bへ電流を均一に流しにくい。よって、第3の変形例は、電流が均一に流れにくくても影響が少ない仕様において、使用されるのがよい。
【0101】
以上において説明した構成においては、発光装置4と3Dセンサ6とを共通の回路基板7上に配置したが、それぞれ異なる回路基板上に配置してもよい。また、発光装置4において、少なくとも、近接検知用チップ10、3D形状測定用チップ20、拡散板30、及び側壁33を、回路基板7とは異なる基板上に設け、これらを1つの発光部品(モジュール)として、第1の駆動部50A、第2の駆動部50B、及び3Dセンサ6等が搭載される回路基板7と接続可能な構成としてもよい。一例として、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20を覆う拡散板30、側壁33、及び基板によって、発光部品の最大外形が規定される構成としてもよい。このような構成とすれば、この発光部品には第1の駆動部50A、第2の駆動部50B、及び3Dセンサ6等が搭載されていないので、小型の部品として提供及び流通される。また、近接検知用チップ10及び3D形状測定用チップ20が、拡散板30、側壁33、及び基板によって囲われることで封止されるので、封止されていない場合と比較し、防塵、防湿等がはかられる。なお、この発光部品に、光量監視用受光素子40を含めてもよいし、含めなくてもよい。
【0102】
また以上の構成における近接検知用チップ10は、必ずしも3D形状測定用チップ20との組み合わせで使用される必要はない。例えば、近接検知用チップ10は、3D形状を測定するか否かにかかわらず、距離測定用の発光素子チップとして単体で提供されてもよい。すなわち、互いに並列に接続された複数の長共振器構造の垂直共振型面発光レーザ素子アレイ単体として提供されてもよい。このような構成において、電力変換効率が最大となりうる範囲(例えば、4mW~8mW)よりも低い範囲で駆動することで、1つの面発光レーザ素子のみを電力変換効率が最大となりうる範囲で駆動させる場合と比較し、拡がり角の増加を抑制しつつ光密度が高められる。よって、特に、受光部の視野範囲が狭く、照射面での受光部の視野範囲よりも広い範囲が照射される構成において、よりSN比の高い受光がなされる。
【0103】
また以上の構成における近接検知用チップ10は、距離測定用の発光素子チップだけでなく、拡がり角の増加を抑制しつつ光密度を高めたい他の用途に適用してもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…情報処理装置、2…ユーザインターフェイス(UI)部、3…光学装置、4…発光装置、6…3Dセンサ、7…回路基板、8…光学装置制御部、9…システム制御部、10…近接検知用チップ、20…3D形状測定用チップ、30…拡散板、40…光量監視用受光素子、50A…第1の駆動部、50B…第2の駆動部、61…受光領域、81…形状特定部、91…認証処理部、VCSEL、VCSEL-A、VCSEL-B…垂直共振器面発光レーザ素子
図1
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図13