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特許7413658運動支援システム、運動支援装置、運動支援方法及び運動支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】運動支援システム、運動支援装置、運動支援方法及び運動支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20240109BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20240109BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A63B69/00 C
A63B71/06 J
A61B5/16 130
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019080634
(22)【出願日】2019-04-22
(65)【公開番号】P2020175003
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 利彦
【審査官】上田 泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-070598(JP,A)
【文献】国際公開第2013/161072(WO,A1)
【文献】特開2016-195788(JP,A)
【文献】特開2013-244053(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250396(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0042540(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0374567(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0011210(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0279946(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0015495(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/00
A63B 71/06
A61B 5/16
A63B 24/00
A61B 5/22
G16H 20/30
G16H 50/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得する動作センサ装置と、
現在のトレーニングレベルのトレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得する睡眠センサ装置と、
前記睡眠センサ装置が取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する解析装置と、
次回のトレーニングに向けて、前記解析装置が設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する提示装置と、
を備え、
前記レム睡眠の長さに関する情報は、レム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであり、
前記解析装置は、前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、前記次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定する
ことを特徴とする運動支援システム。
【請求項2】
前記提示装置は、トレーニング前に前記トレーニング内容をユーザに提示することを特徴とする請求項1に記載の運動支援システム。
【請求項3】
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得する動作センサ部と、
現在のトレーニングレベルのトレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得する睡眠センサ部と、
前記睡眠センサ部が取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する解析部と、
次回のトレーニングに向けて、前記解析部が設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する提示部と、
を備え、
前記レム睡眠の長さに関する情報は、レム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであり、
前記解析部は、前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、前記次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定する
ことを特徴とする運動支援装置。
【請求項4】
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得し、
現在のトレーニングレベルのトレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得し、
取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであるレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定し、
次回のトレーニングに向けて、設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する
ことを特徴とする運動支援方法。
【請求項5】
コンピュータに、
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得させ、
現在のトレーニングレベルのトレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得させ、
取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであるレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定させ、
次回のトレーニングに向けて、設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示させる、
ことを特徴とする運動支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動支援システム、運動支援装置、運動支援方法及び運動支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ランニングや水泳、サイクリング、ゴルフ等のスポーツにおいて技能を習得したり向上させたりするためには、通常、ユーザの体力レベル等にあわせて初歩的なレベルから少しずつトレーニングのレベルを上げていくように練習が行われる。
そして、例えば特許文献1では、ユーザの年齢や体重、身長等の個人情報等から目標値を設定し、トレーニング装置が提示したトレーニングメニューに基づくトレーニング実績における累積運動時間等に基づいて目標値を高めに設定し直したり低めに設定し直すように補正し、補正後の目標値に基づいて新たなトレーニングメニューを作成することで、ユーザに、無理なく意欲を失わせることなくトレーニングを行わせるトレーニング装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開8-52244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スポーツにおいて技能を習得したり向上させたりするためには、上記のように、ユーザに、無理なく、トレーニングに対する意欲を失わせることなくトレーニングを行わせることも必要であるが、トレーニングで習得した技能を着実に身につけていく(定着させていく)ことも大切である。
そして、例えばコーチ等の指導の下でトレーニングを行う場合、トレーニングした技能が身についているか否かはコーチ等が客観的に見て判断することができるが、トレーニングを単独で(すなわちコーチ等の指導がない状態で)行っている場合、技能が身についているか否かはトレーニングを行っている本人にはなかなか判断できない場合が多い。
【0005】
そのため、ある技能が身についていないのによりレベルが高いトレーニングを行ってしまい、そのレベルが高いトレーニングを行うことができずに技能が思うように向上しなかったり、あるいは無理にレベルの高いトレーニングを行って怪我をしたり故障を生じたりする可能性がある。
また、ある技能が既に身についているにもかかわらず、まだその技能が身についていないと考えてしまい、技能のレベルアップを効率的に行えない場合もある。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、効率的にスポーツのトレーニングを行うことが可能な運動支援システム、運動支援装置、運動支援方法及び運動支援プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するため、本発明に係る運動支援システムは、
現在のトレーニングレベルのトレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得する動作センサ装置と、
トレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得する睡眠センサ装置と、
前記睡眠センサ装置が取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する解析装置と、
次回のトレーニングに向けて、前記解析装置が設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する提示装置と、
を備え、
前記レム睡眠の長さに関する情報は、レム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであり、
前記解析装置は、前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、前記次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る運動支援装置は、
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得する動作センサ部と、
現在のトレーニングレベルのトレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得する睡眠センサ部と、
前記睡眠センサ部が取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する解析部と、
次回のトレーニングに向けて、前記解析部が設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する提示部と、
を備え、
前記レム睡眠の長さに関する情報は、レム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであり、
前記解析部は、前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、前記次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る運動支援方法は、
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得し、
現在のトレーニングレベルのトレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得し、
取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであるレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定し、
次回のトレーニングに向けて、設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する
ことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る運動支援プログラムは、
コンピュータに、
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得させ、
現在のトレーニングレベルのトレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得させ、
取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間と、ユーザが睡眠していた期間の長さである睡眠時間に対する前記レム睡眠時間の割合として算出されるレム睡眠割合との少なくとも一つであるレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記レム睡眠時間レム睡眠時間に関する閾値以上の場合、又は、前記レム睡眠割合レム睡眠割合に関する閾値以上の場合には、次回のトレーニングのレベルを前記現在のトレーニングレベルから上げて設定させ、
次回のトレーニングに向けて、設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示させる、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率的にスポーツのトレーニングを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】運動支援システムの全体構成を表す図である。
図2】動作センサ装置や睡眠センサ装置の機能構成を表すブロック図である。
図3】サーバが複数のデータベースを備えることを表す図である。
図4】レム睡眠時間に関する閾値やレム睡眠割合に関する閾値のリストの例を表す図である。
図5】携帯情報端末で実行される各処理を説明するフローチャートである。
図6】携帯情報端末に表示された(A)トレーニングのメニューの例、(B)トレーニングのレベルの例を表す図である。
図7】睡眠図の例を表す図であり、レム睡眠の期間等を説明する図である。
図8】運動支援装置の構成を表すブロック図である。
図9】睡眠時間に関する閾値等の例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る運動支援システム、運動支援装置、運動支援方法及び運動支援プログラムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。また、以下では、ランニングのトレーニングを行う場合を例示して説明するが、本発明の適用対象はランニングの場合に限らず、前述したように水泳やサイクリング、ゴルフ等のスポーツ全般を対象とし、そのトレーニングを行う場合に適用することができる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る運動支援システムの全体構成を表す図である。
図1に示すように、運動支援システム1は、動作センサ装置10と、睡眠センサ装置20と、サーバ30と、携帯情報端末40とを備えている。そして、本実施形態では、携帯情報端末40が、後述する解析装置や提示装置として機能するように構成されている。
【0015】
動作センサ装置10は、例えばトレーニング時にユーザAの腰等に装着することが可能なウェアラブルセンサ等で構成されている。
そして、動作センサ装置10は、当該装置を装着したユーザAの動き等を逐次検知可能な各種のセンサが内蔵されており、トレーニング中のユーザAの動作状態に関する動作データ(例えば上下、左右、前後の各方向の加速度、体の向き、ピッチ、走行距離など)を取得するようになっている。そして、取得した動作データを携帯情報端末40(この場合は提示装置としての携帯情報端末40)に送信するようになっている。
【0016】
睡眠センサ装置20は、睡眠時に、手首等に装着することが可能なスマートリストバンドや、耳に装着するイヤホン型のヒアラブル端末等で構成されている。なお、睡眠時以外に着用していてもよい。
そして、睡眠センサ装置20は、当該装置を装着したユーザAの動きや脈拍等を逐次検知可能な各種のセンサが内蔵されており、トレーニングが終了した後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データ(例えば体動、脈拍等)を取得するようになっている。そして、取得した睡眠データを携帯情報端末40(この場合は提示装置としての携帯情報端末40)に送信するようになっている。
【0017】
図2は、動作センサ装置10や睡眠センサ装置20の機能構成を表すブロック図である。
図2に示すように、動作センサ装置10や睡眠センサ装置20は、制御部11、21と、記憶部12、22と、各種センサ13、23と、通信部14、24と、操作部15、25と、電源部16、26とを備えている。なお、この他に、表示画面やスピーカ等の他の機能部を備えていてもよい。
【0018】
制御部11、21は、CPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等で構成されている。制御部11、21をGPU(Graphics Processing Unit)やGPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)等で構成することも可能である。
そして、制御部11、21は、ROMや後述する記憶部12、22に記憶されているシステムプログラムや各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、動作センサ装置10や睡眠センサ装置20の各部の動作を制御するようになっている。
【0019】
記憶部12、22は、不揮発性の半導体メモリやハードディスク等により構成されている。
そして、記憶部12、22は、制御部11、21で実行される各種プログラムやプログラムにより処理の実行に必要なパラメータ等を記憶するとともに、各種センサ13、23が計測した各種データ(すなわち前述した動作データや睡眠データ)を一時的に記憶するようになっている。
【0020】
各種センサ13、23としては、動作センサ装置10では、動作データを取得するために必要な活動量センサやジャイロセンサ等が搭載されており、睡眠センサ装置20では、睡眠データを取得するために必要な脈拍センサや活動量センサ等が搭載されている。
この他、加速度センサやGPS(Global Positioning System)センサ等の他のセンサ類が搭載されていてもよい。
【0021】
通信部14、24は、動作センサ装置10や睡眠センサ装置20が取得した動作データや睡眠データを携帯情報端末40に送信するためのものであり、Bluetooth(登録商標)等の無線規格に基づいて通信を行うようになっている。
なお、通信部14、24で携帯情報端末40等からの通信を受信することができるように構成することも可能である。
【0022】
操作部15、25は、スイッチやボタン等の入力手段で構成されており、動作センサ装置10や睡眠センサ装置20を起動させたり、起動を停止させたり、あるいは必要な情報を動作センサ装置10や睡眠センサ装置20に入力することができるようになっている。表示画面にタッチパネルが設けられる場合にはそれも操作部15、25に含まれる。
電源部16、26は、図示しないバッテリ等の内部電源から動作センサ装置10や睡眠センサ装置20の各部に必要な電力を供給するようになっており、内部電源が充電式の場合にはその充電も行うようになっている。
【0023】
サーバ30(図1参照)は、例えばクラウド上のサーバ等で構成されている。
そして、本実施形態では、サーバ30は、図3に示すように、トレーニングリスト用のデータベース31と、睡眠解析用のデータベース32と、ランニングフォーム解析用のデータベース33とを備えている。
【0024】
本実施形態では、後述するように、トレーニングの目的に応じてトレーニングに種々のメニューが用意されている。例えばトレーニングの目的がランニングである場合、メニューとして、例えば、ジョギング、5km完走、10km完走、ハーフマラソン、フルマラソン(サブ6、サブ5、サブ4)等を設定することができる(後述する図6(A)参照)。
そして、本実施形態では、さらにトレーニングのメニューごとに異なるレベルのトレーニング内容がそれぞれ設定されている。
【0025】
例えば、トレーニングのメニューが「ジョギング」の場合に、トレーニング内容は、レベル1「後ろに蹴る」、レベル2「腰を高く走る」、レベル3「左右のブレをなくす」、レベル4「前に乗り込む」、レベル5「足の付く位置を重心の真下にする」等のように設定される(後述する図6(B)参照)。
なお、各メニューで各レベルのトレーニング内容が同じ内容である必要はなく、メニューに応じて各レベルのトレーニング内容が設定される。また、レベルの個数はメニューごとに同数であってもよく異なっていてもよい。
【0026】
そして、サーバ30のトレーニングリスト用のデータベース31には、トレーニングの各メニューの各レベルのトレーニング内容ごとに、トレーニング内容を解説する映像データや音声データ等が格納されている。
そして、サーバ30は、携帯情報端末40からトレーニングのメニューの情報とレベルの情報が送信されてくると、トレーニングリスト用のデータベース31からそのメニューとレベルに対応するトレーニング内容の映像データや音声データ等を読み出して当該携帯情報端末40に送信するようになっている。
【0027】
また、サーバ30の睡眠解析用のデータベース32には、後述する睡眠解析用のデータが格納されており、サーバ30は、携帯情報端末40から睡眠解析用のデータの送信要求を受信すると、睡眠解析用のデータベース32から睡眠解析用のデータを読み出して当該携帯情報端末40に送信するようになっている。
睡眠解析用のデータベース32は、睡眠解析用のデータとして、例えば、図4に示すようなレム睡眠時間に関する閾値Trem_thやレム睡眠割合に関する閾値Rrem_thのリストを有しており、サーバ30は、携帯情報端末40からの送信要求に付加されているユーザAの性別や年齢の情報に基づいて、その性別や年代に対応するレム睡眠時間に関する閾値Trem_thとレム睡眠割合に関する閾値Trem_thを読み出して送信する。なお、レム睡眠時間やレム睡眠割合については後で説明する。
【0028】
また、サーバ30のランニングフォーム解析用のデータベース33には、ランニングフォーム解析用のデータが格納されている。
そして、サーバ30は、携帯情報端末40からランニングフォーム解析用のデータの送信要求を受信すると、ランニングフォーム解析用のデータベース33からランニングフォーム解析用のデータを読み出して当該携帯情報端末40に送信するようになっている。
【0029】
なお、動作センサ装置10が取得したユーザAの動作データをサーバ30に送信したり、後述するようにユーザAの動作状態に対する評価結果等をサーバ30に送信し、サーバ30が送信されてきた動作データや評価結果等を保存する等して、サーバ30でユーザAのトレーニング状況を継続的に管理するように構成することも可能である。
【0030】
携帯情報端末40(図1参照)は、ユーザAが携帯可能な情報処理装置であり、例えばスマートフォン等で構成されている。
本実施形態では、後述する図6(A)に示すように、ユーザAは携帯情報端末40を操作してトレーニングのメニューを選択することができるようになっている。
【0031】
また、携帯情報端末40は、ユーザAに、メニューの各レベルに応じたトレーニング内容を提示することができるように構成されている。
本実施形態では、画面上に音声付きの映像を表示する形でトレーニング内容を提示(この場合は表示)するようになっているが、例えば提示装置をイヤホン型等の装置として構成することも可能であり、その場合、トレーニング内容が音声でユーザAに提示(この場合は音声再生)される。
【0032】
また、携帯情報端末40は、睡眠センサ装置20が取得した睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した睡眠の長さに関する情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定するようになっている。
そして、携帯情報端末40は、次回のトレーニングに向けて、設定したレベルに応じたトレーニング内容をユーザAに提示するようになっている。
【0033】
このように、本実施形態では、携帯情報端末40が、睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出して次回のトレーニングのレベルを設定する解析装置や、次回のトレーニングに向けて、解析装置が設定したレベルに応じたトレーニング内容をユーザAに提示する提示装置として機能するようになっている。
なお、解析装置や提示装置を携帯情報端末40とは別体の装置として構成することも可能である
【0034】
次に、図5を参照して、携帯情報端末40で実行される各処理について説明する。図5は、携帯情報端末40で実行される各処理を説明するフローチャートである。
【0035】
図5に示すように、携帯情報端末40は、プログラムが起動すると(ステップS1)、携帯情報端末40に予め登録されているユーザAの性別や年齢の情報を付加して送信要求をサーバ30に送信し、サーバ30から送信されてきたその性別や年代に対応するレム睡眠時間に関する閾値Trem_thとレム睡眠割合に関する閾値Rrem_th(図4参照)を入手して設定する(ステップS2)。
なお、この段階で、ユーザAに性別や年齢等を入力させたり、パスワードを入力させる等して個人認証を行うように構成することも可能である。また、プログラムが起動するごとにサーバ30からレム睡眠時間等に関する閾値を入手する代わりに、例えば、一旦入手した閾値を、ユーザAの年代が変わるまで携帯情報端末40内に保存しておき、ユーザAの年代が変わった時点でサーバAから閾値を入手するように構成することも可能である。
【0036】
続いて、携帯情報端末40は、トレーニングのメニューやレベルを設定する(ステップS3)。
本実施形態では、携帯情報端末40は、例えば図6(A)に示すように、表示画面41上にトレーニングのメニューの一覧を表示してユーザAにトレーニングのメニューを選択させるようになっており、ユーザAによりトレーニングのメニューが選択されると、選択されたメニューを設定するようになっている。すなわち、選択されたメニューのメニュー番号Mを記憶するようになっている。
【0037】
そして、以下では、携帯情報端末40は、ユーザAにより選択されたトレーニングのメニューを一旦設定すると、トレーニングが進む中でメニューをよりレベルアップされた技能が要求されるメニューに自動的に更新していくように構成されているが(具体的には後述するようにメニュー番号Mをインクリメントする処理(ステップS11)を行うように構成されているが)、ユーザAが任意のタイミングでトレーニングのメニューを選択することができるように構成することも可能である。
【0038】
また、本実施形態では、携帯情報端末40は、トレーニングのメニューを設定すると、当該メニューにおけるトレーニングのレベルを1に自動的に設定するように構成されているが(すなわちレベル値Lが1に自動的に設定されるが)、例えば図6(B)に示すように、表示画面41上に、当該トレーニングのメニューにおける各レベルのトレーニング内容の一覧を表示してユーザAが選択することができるように構成することも可能である(すなわちユーザAが自らレベル値Lを選択できるように構成することも可能である。)。
【0039】
携帯情報端末40は、ステップS3でトレーニングのメニューやレベルを設定すると、続いて、サーバ30に、設定したトレーニングのメニューの情報(メニュー番号M)とレベルの情報(レベル値L)を送信し、サーバ30から送信されてきたメニューやレベルに対応するトレーニング内容の映像データや音声データ等に基づいて、表示画面41上に、音声付きの映像を再生させてトレーニング内容をユーザAに提示してガイダンスを行う(ステップS4)。
ユーザAは、このガイダンスに従ってトレーニングを行う。
【0040】
続いて、携帯情報端末40は、動作センサ装置10から送信されてくる動作データに基づいてユーザAの動作状態を把握し、ユーザAがトレーニングを実施したか否かを判断する(ステップS5)。
なお、その際、携帯情報端末40は、サーバ30からランニングフォーム解析用のデータベース33に格納されているランニングフォーム解析用のデータを送信させ、それに基づいて、ユーザAの動作状態が設定されたレベルで要求される動作状態の条件を満たしているかを判断するなどしてユーザAの動作状態を評価したり、あるいはユーザAに改善すべき内容(例えばもっと強く後ろに蹴る等)を知らせるなどしてユーザAを支援するように構成することも可能である。
【0041】
そして、携帯情報端末40は、ユーザAがトレーニングを実施したと判断すると(ステップS5;YES)、動作センサ装置10から送信されてきた動作データをサーバ30に送信して記憶させる。
【0042】
続いて、携帯情報端末40は、睡眠センサ装置20から送信されてきた睡眠データに基づいて、ユーザAが睡眠をとったか否かを判断し(ステップS6)、ユーザAが睡眠をとったと判断すると(ステップS6;YES)、睡眠センサ装置20が取得した睡眠データを解析する。
なお、ユーザAが睡眠しているか覚醒しているかは、睡眠センサ装置20に搭載されている活動量センサの値からユーザAの体動(体動の有無を含む。)を割り出すことにより把握することができる。また、本実施形態では、上記のようにユーザAが睡眠をとったか否かを携帯情報端末40が判断するように構成されているが、例えば、ユーザAが睡眠した後、覚醒した時点で睡眠センサ装置20から携帯情報端末40に睡眠データを送信するように構成することも可能である。
【0043】
一方、睡眠センサ装置20に搭載されている脈拍センサの値からユーザAの睡眠状態がレム睡眠であるか否かを判断することができる。
すなわち、人の心拍数は、睡眠が深くなるにつれて減少し、ノンレム睡眠時には脈拍が少なくなり規則的になるのに対し、睡眠が浅くなりレム睡眠の状態になると、レム睡眠の間脈拍が増加して不規則になる。そのため、この脈拍の増減や規則性(不規則性)を見ることで、ユーザAの睡眠状態がレム睡眠であるか否かを判断することができる。
【0044】
そこで、携帯情報端末40は、これを利用して、睡眠センサ装置20が取得した睡眠データ(活動量、脈拍)を解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出する。本実施形態では、このレム睡眠の長さに関する情報として、レム睡眠時間やレム睡眠割合を算出するようになっている(解析装置としての機能)。
以下、レム睡眠時間やレム睡眠割合の算出のしかたを例示して具体的に説明する。
【0045】
例えば、睡眠センサ装置20から送信されてきた睡眠データのうち活動量センサの値に基づいてユーザAが睡眠していた期間を割り出すとともに、その期間の長さを睡眠時間Tsとして算出する。
また、睡眠センサ装置20から送信されてきた睡眠データのうち、その期間の脈拍センサの値の増減や規則性(不規則性)に基づいてユーザAの睡眠の深さを割り出して睡眠図(ヒプノグラム)を作成すると、例えば図7に示すようなものになる。睡眠段階がRの期間が、睡眠が浅いレム睡眠の期間に相当する。なお、睡眠段階N1~N4はノンレム睡眠の深さを表している。
【0046】
そして、レム睡眠の長さに関する情報として、レム睡眠の期間の合計、すなわち図7におけるT1~T4の合計を、レム睡眠時間Tremとして算出することができる。
Trem=T1+T2+T3+T4 …(1)
なお、睡眠時間Ts中にレム睡眠が出現する回数は4回とは限らず、レム睡眠が出現した回数分だけレム睡眠の期間を合計する。
【0047】
また、レム睡眠の長さに関する情報として、レム睡眠割合Rremを算出することもできる。
レム睡眠割合Rrem(%)は、レム睡眠時間Tremの睡眠時間Tsに対する割合として算出される。
Rrem=100×Trem/Ts …(2)
すなわち、前述したレム睡眠時間Tremは、いわばレム睡眠の絶対的な長さに相当するものであり、レム睡眠の量を表す値である。また、上記のレム睡眠割合Rremは、いわばレム睡眠の相対的な長さに相当するものであり、睡眠の質(すなわち睡眠におけるレム睡眠の割合の多さ)を表す値である。
【0048】
本実施形態では、携帯情報端末40は、睡眠センサ装置20が取得した睡眠データを解析して図7に示したような睡眠図を作成し、レム睡眠の長さに関する情報として、レム睡眠時間Tremとレム睡眠割合Rremを算出するようになっている(ステップS7)。
なお、レム睡眠の長さに関する情報として、レム睡眠時間Tremとレム睡眠割合Rremのいずれか一方のみを算出するように構成することも可能である。また、例えば、レム睡眠の各期間T1~T4のうち最長の期間の長さ等をレム睡眠の長さに関する情報とするように構成することも可能である。
【0049】
そして、携帯情報端末40は、算出したレム睡眠の長さに関する情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定するようになっている。
具体的には、携帯情報端末40は、算出したレム睡眠時間Tremが、前述したサーバ30から入手したレム睡眠時間に関する閾値Trem_th以上であり、かつ、算出したレム睡眠割合Rremがレム睡眠割合に関する閾値Rrem_th以上であれば(ステップS8;YES)、前述したレベル値Lをインクリメントする(ステップS9)。
【0050】
睡眠中は脳で記憶の整理が行われ、トレーニングしたスポーツ(この場合はランニング)の技能は、手続き記憶(非陳述記憶等ともいう。)としてレム睡眠時に記憶される。
そのため、本発明では、トレーニングを行った後でユーザAが睡眠時にレム睡眠を十分にとったか否かを判断し、レム睡眠を十分にとった場合に、トレーニングしたスポーツの技能がユーザAの身についたと判断するようになっている。
【0051】
そして、本実施形態では、トレーニング後の睡眠時にユーザAがレム睡眠を十分にとったか否かの判断基準として、上記のように、レム睡眠時間Tremがレム睡眠時間に関する閾値Trem_th以上であることと、レム睡眠割合Rremがレム睡眠割合に関する閾値Rrem_th以上であることの両方を満たすことを条件としている。
すなわち、レム睡眠の期間の合計(レム睡眠時間)が十分に長く、かつ、睡眠時間全体に対するレム睡眠時間の割合が十分に大きい場合に、トレーニング後の睡眠時にユーザAがレム睡眠を十分にとったと判断するように構成されている。
【0052】
なお、トレーニング後の睡眠時にユーザAがレム睡眠を十分にとったか否かの判断基準として、レム睡眠時間Tremがレム睡眠時間に関する閾値Trem_th以上であることと、レム睡眠割合Rremがレム睡眠割合に関する閾値Rrem_th以上であることのいずれか一方を満たすことを条件とするように構成することも可能である。
また、本実施形態では、レム睡眠の長さに関する情報として、上記のようにレム睡眠時間Tremやレム睡眠割合Rremに着目したが、この他にも、例えば、レム睡眠の各期間(図7中のT1~T4参照)のうち最も長い期間の長さ等に着目して、トレーニング後の睡眠時にユーザAがレム睡眠を十分にとったか否かの判断を行うように構成することも可能である。
【0053】
さらに、一般的に人は、ノンレム睡眠(90分)とレム睡眠(90分)のサイクルを4回、即ち約6時間の睡眠を取ると十分な睡眠を取ったと言われており、トレーニング後の睡眠時にユーザAがレム睡眠を十分にとったか否かの判断として、レム睡眠の回数が睡眠時間6時間で4回となっていることと、レム睡眠になるタイミングが90分周期となっていること、の両方、或は、いずれか一方を満たすことを条件とするように構成することも可能である。
なお、上記の90分周期は個人差があり、個人に合わせて適宜変更してもよい。
【0054】
携帯情報端末40は、上記のように、ステップS8の条件を満たした場合に(ステップS8;YES)、レベル値Lをインクリメントする(ステップS9)。
このようにして、携帯情報端末40は、算出したレム睡眠の長さに関する情報に基づいて次回のトレーニングのレベル(この場合はレベル2)を設定するようになっている(解析装置としての機能)。
【0055】
例えば、上記のステップS3の処理でレベル値L=1と設定されている場合は、ステップS9でレベル値Lがインクリメントされると、レベル値Lが2になる。
メニュー「1.ジョギング」が選択された場合の図6(B)の例で言うと、ステップS3の処理でレベル1「後ろに蹴る」が設定されている場合は、ステップS9でレベル値Lがインクリメントされると、レベル2「腰を高く走る」に移行することになる。
【0056】
そして、この場合、メニュー「1.ジョギング」にはさらにレベル3~5(図6(B)参照)があるため、上記のようにトレーニングのレベルがレベル1からレベル2に移行してもトレーニングのメニュー「1.ジョギング」が完了したとは言えない。
そのため、この場合は、携帯情報端末40は、メニュー(この場合は「1.ジョギング」)は完了していないと判断して(ステップS10;NO)、ステップS3の処理に戻り、メニュー番号M(上記の例ではM=1)とレベル値L(上記の例ではL=2)を設定して、次回のトレーニングに向けてトレーニングのメニューやレベルを設定する(ステップS3)。
【0057】
そして、携帯情報端末40は、続くステップS4の処理では、次回のトレーニングが行われる際に、設定したレベルに応じたトレーニング内容をユーザAに提示するようになっている(提示装置としての機能)。
【0058】
一方、携帯情報端末40は、上記のステップS8の判断処理で、条件が満たされていないと判断すると(ステップS8;NO)、レベル値Lをインクリメントしない。すなわち、本実施形態では、レム睡眠時間Tremとレム睡眠割合Rremのうち少なくとも一方が閾値Trem_th、Rrem_thに達していない場合には、レム睡眠が十分ではなく、トレーニングしたスポーツの技能がユーザAの身についていないと見なされて、レベル値Lが変更されずに維持される。
このように、本実施形態では、算出したレム睡眠の長さに関する情報に基づいて、睡眠の長さに関する情報が所定の条件を満たさない場合はレベル値Lを変更しないようにして、次回のトレーニングのレベル(この場合はレベル1)を設定するようになっている(解析装置としての機能)。
【0059】
そして、この場合も、トレーニングのメニュー「1.ジョギング」が完了したとは言えないため(ステップS10;NO)、携帯情報端末40は、ステップS3の処理に戻り、メニュー番号M(上記の例ではM=1)とレベル値L(上記の例ではL=1)を設定して、次回のトレーニングに向けてトレーニングのメニューやレベルを設定する(ステップS3)。なお、この場合は、結局、トレーニングのメニューやレベルは変更されないことになる。
そして、携帯情報端末40は、続くステップS4の処理では、次回のトレーニングが行われる際に、設定したレベルに応じたトレーニング内容(この場合は前回のトレーニングの際に提示したものと同じトレーニング内容)をユーザAに提示する(提示装置としての機能)。
【0060】
また、携帯情報端末40は、上記のステップS9の処理でレベル値Lをインクリメントした際に、レベル値Lが当該メニューにおける最大のレベル値を超えた場合に、当該メニューが完了したと判断するようになっている(ステップS10;YES)。
具体的には、例えば、メニュー「1.ジョギング」(最大のレベル値Lは5(図6(B)参照))が選択されている場合に、上記のステップS9でレベル値Lをインクリメントしてレベル値Lが6になった場合、レベル値Lが当該メニューにおける最大のレベル値の5を超えるため、携帯情報端末40はメニュー「1.ジョギング」が完了したと判断する。
【0061】
この場合、携帯情報端末40は、続いて、メニュー番号Mをインクリメントする(ステップS11)。
図6(A)の例で言えば、トレーニングのメニューが「1.ジョギング」から「2.5km完走」に自動的に移行する。なお、ユーザAが自らトレーニングのメニューを選択したり変更したりすることができるように構成することが可能であることは前述した通りである。
【0062】
そして、携帯情報端末40は、ステップS3の処理に戻り、メニュー番号M(上記の例ではM=2)を設定する。また、トレーニングのメニューが新たなメニューになるため、新たなメニューのトレーニングを最も低いレベルから始めるためにレベル値Lを1に設定する。
携帯情報端末40は、このようにして、次回のトレーニングに向けてトレーニングのメニュー(メニュー番号M=2)やレベル(レベル値L=1)を設定する(ステップS3)。
そして、携帯情報端末40は、続くステップS4の処理では、次回のトレーニングが行われる際に、設定したメニューやレベルに応じたトレーニング内容をユーザAに提示する。
【0063】
以上のように、本実施形態によれば、動作センサ装置10はトレーニング中のユーザAの動作状態に関する動作データを取得し、睡眠センサ装置20は、トレーニング後の睡眠時におけるユーザAの睡眠状態に関する睡眠データ(体動や脈拍)を取得して、解析装置(携帯情報端末40)に送信する。解析装置(携帯情報端末40)は、睡眠センサ装置20が取得した睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報(レム睡眠時間Tremやレム睡眠割合Rrem)を算出し、算出した情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する(すなわちレベル値Lをインクリメントしたり変更せずに維持したりする。)。そして、提示装置(携帯情報端末40)が、次回のトレーニングに向けて、解析装置が設定したレベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する。
【0064】
そのため、ユーザAが睡眠時にレム睡眠を十分にとり、トレーニングしたスポーツ(上記の場合はランニング)の技能が身についた場合には、トレーニングのレベルを上げ、次回のトレーニングに向けてそのレベルに応じたトレーニング内容をユーザAに提示することで、ユーザAにより高いレベルのトレーニングを行わせることが可能となり、スポーツのトレーニングにおいて技能を確実に向上させることが可能となる。
【0065】
また、ユーザAの睡眠時のレム睡眠が十分ではなく、トレーニングしたスポーツの技能が身についていない場合には、トレーニングのレベルを上げずに維持し、次回のトレーニングに向けてそのレベルに応じたトレーニング内容をユーザAに提示する(この場合は前回のトレーニングの際に提示したものと同じトレーニング内容を提示する)ことで、ユーザAに当該レベルのトレーニングを再度行わせることが可能となり、スポーツのトレーニングにおいて技能を確実に習得させることが可能となる。
【0066】
ところで、上記の実施形態に係る運動支援システム1を、1つの装置(運動支援装置)として構成することも可能である。
この場合、運動支援装置100は、図8に示すように、トレーニング中のユーザAの動作状態に関する動作データを取得する動作センサ部101(上記の動作センサ装置10に相当)と、トレーニング後の睡眠時におけるユーザAの睡眠状態に関する睡眠データを取得する睡眠センサ部102(上記の睡眠センサ装置20に相当)と、睡眠センサ部102が取得した睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出したレム睡眠の長さに関する情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する解析部103(上記の解析装置(携帯情報端末40)に相当)と、次回のトレーニングに向けて、解析部103が設定したレベルに応じたトレーニング内容をユーザAに提示する提示部104(上記の提示装置(携帯情報端末40)に相当)と、を備えるように構成される。
【0067】
運動支援装置100は、例えば、手首等に装着することが可能なスマートリストバンドや、耳に装着するイヤホン型のヒアラブル端末等の、ウェアラブル端末として構成することが可能である。
そして、このように、上記の実施形態に係る運動支援システム1を1つの運動支援装置100として構成しても、運動支援装置100を、上記の運動支援システム1と全く同様に機能させることが可能となり、その優れた作用効果を的確に発揮させることが可能となる。
【0068】
なお、図8に示すように、運動支援装置100が、上記の運動支援システム1における各データベース31~33に相当するデータベース105を有するように構成することが可能である。また、上記の運動支援システム1と同様に、例えばクラウド上のサーバ30に各データベース31~33を備えさせておき、運動支援装置100とサーバ30との間で通信を行って各データベース31~33から必要な情報等を入手するように構成することも可能である。
【0069】
なお、以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能であることは言うまでもない。
【0070】
例えば、上記の実施形態に係る運動支援システム1や運動支援装置100では、解析装置や解析部が算出したレム睡眠の長さに関する情報が所定の条件を満たすと、即座にトレーニングのレベルを向上させる場合について説明した。
すなわち、図5のフローチャートに示したように、例えばレム睡眠時間Tremやレム睡眠割合RremがステップS8の条件を満たすと、次のステップS9で直ちにレベル値Lをインクリメントする場合を示した。
【0071】
しかし、このように構成する代わりに、例えば、ユーザAがトレーニングを行い、睡眠時のレム睡眠の長さに関する情報が所定の条件を満たす、ということを所定回数繰り返した場合に、トレーニングのレベルを上げる(レベル値Lをインクリメントする)ように構成してもよい。
このように構成すれば、ユーザAに、スポーツのトレーニングにおいて技能を確実に習得させることが可能となり、技能を確実に習得させたうえで技能をさらに向上させていくことが可能となる。
【0072】
また、上記の実施形態に係る運動支援システム1や運動支援装置100では、解析装置や解析部が算出したレム睡眠の長さに関する情報が所定の条件を満たしていない場合には、トレーニングのレベルを向上させない場合について説明した。
すなわち、図5のフローチャートに示したように、例えばレム睡眠時間Tremやレム睡眠割合RremがステップS8の条件を満たさないと、次のステップS9はスキップされるため、レベル値Lはインクリメントされない。そのため、レム睡眠の長さに関する情報が所定の条件を満たさない限り、ユーザAは同じレベルのトレーニングを行わされることになる。
【0073】
しかし、これでは、ユーザAがトレーニングに対する興味ややる気を失ってしまい、トレーニングを行わなくなる可能性がある。
そのため、例えば、レム睡眠の長さに関する情報が所定の条件を満たさない状態が所定回数繰り返された場合は、レベル値Lをインクリメントして次のレベルのトレーニングを行わせるように構成してもよい。
【0074】
また、あるメニューのトレーニングを行う際に、トレーニングを行うごとに当該メニュー内でトレーニングのレベルを変えるように構成する。そして、あるレベルのトレーニングを行った後の睡眠時のレム睡眠の長さに関する情報が所定の条件を満たした場合には、そのレベルのトレーニングは習得されたものとして当該レベルを当該メニュー内でトレーニングのレベルを変える選択肢から外していくように構成してもよい。
【0075】
この場合、当該メニュー内の全てのレベルが選択肢から外された時点(当該メニュー内の各レベルのトレーニングを行った後の睡眠時のレム睡眠の長さに関する情報が全て所定の条件を満たした時点)で、当該メニューが完了したことになる。
そして、このように構成すれば、ユーザAがトレーニングを行うごとにトレーニング内容が変わるため、同じトレーニング内容が連続して提示されるためユーザAがトレーニングに対する興味ややる気を失ってしまいトレーニングを行わなくなることを防止することができ、ユーザAに確実にトレーニングを行わせることが可能となり、ユーザAに、スポーツのトレーニングにおいて技能を習得させたり技能を向上させることが可能となる。
【0076】
一方、上記の実施形態に係る運動支援システム1や運動支援装置100では、レム睡眠時間Tremやレム睡眠割合Rremがそれぞれ閾値Trem_th、Rrem_th以上であるか否かを判断する場合について説明したが、この他にも、例えば図9に示すように、睡眠時間Ts(図7参照)についても閾値Ts_thを設定し、睡眠時間Tsが睡眠時間Tsに関する閾値Ts_th以上であるか否かも判断するように構成してもよい。
睡眠を十分とれていないと、集中力を欠くなどして、トレーニングしても技能が十分に身につかない場合がある。そのため、上記のように構成することで、ユーザAが十分に睡眠をとった状態でトレーニングを行ったか否かをチェックすることが可能となり、その状態でトレーニングを行った場合にトレーニングのレベルを上げることで、ユーザAに、スポーツのトレーニングにおいて技能を確実に習得させ、技能をさらに向上させることが可能となる。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲をその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0078】
[付記]
<請求項1>
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得する動作センサ装置と、
トレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得する睡眠センサ装置と、
前記睡眠センサ装置が取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する解析装置と、
次回のトレーニングに向けて、前記解析装置が設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する提示装置と、
を備えることを特徴とする運動支援システム。
<請求項2>
前記提示装置は、トレーニング前に前記トレーニング内容をユーザに提示することを特徴とする請求項1に記載の運動支援システム。
<請求項3>
前記レム睡眠の長さに関する情報は、レム睡眠の期間の合計として算出されるレム睡眠時間であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の運動支援システム。
<請求項4>
前記レム睡眠の長さに関する情報は、レム睡眠の期間の合計の、睡眠時間に対する割合として算出されるレム睡眠割合であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の運動支援システム。
<請求項5>
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得する動作センサ部と、
トレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得する睡眠センサ部と、
前記睡眠センサ部が取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定する解析部と、
次回のトレーニングに向けて、前記解析部が設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する提示部と、
を備えることを特徴とする運動支援装置。
<請求項6>
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得し、
トレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得し、
取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定し、
次回のトレーニングに向けて、設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示する、
ことを特徴とする運動支援方法。
<請求項7>
コンピュータに、
トレーニング中のユーザの動作状態に関する動作データを取得させ、
トレーニング後の睡眠時におけるユーザの睡眠状態に関する睡眠データを取得させ、
取得した前記睡眠データを解析してレム睡眠の長さに関する情報を算出し、算出した前記情報に基づいて次回のトレーニングのレベルを設定させ、
次回のトレーニングに向けて、設定した前記レベルに応じたトレーニング内容をユーザに提示させる、
ことを特徴とする運動支援プログラム。
【符号の説明】
【0079】
1 運動支援システム
10 動作センサ装置
20 睡眠センサ装置
40 携帯情報端末(解析装置、提示装置)
100 運動支援装置
101 動作センサ部
102 睡眠センサ部
103 解析部
104 提示部
A ユーザ
L レベル値(トレーニングのレベル)
M メニュー番号(トレーニングのレベル)
Rrem レム睡眠割合(レム睡眠の長さに関する情報、レム睡眠割合)
T1~T4 レム睡眠の期間
Trem レム睡眠時間(レム睡眠の長さに関する情報、レム睡眠時間)
Ts 睡眠時間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9