(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/66 20060101AFI20240109BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240109BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240109BHJP
C08K 5/37 20060101ALI20240109BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240109BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240109BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240109BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240109BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20240109BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08G59/66
C08L63/00 Z
C08K3/013
C08K5/37
C08K3/36
H01L23/30 R
H05K1/03 610L
H05K3/28 G
H05K3/46 B
H05K3/46 T
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2019147966
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 成
(72)【発明者】
【氏名】阪内 啓之
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/181737(WO,A1)
【文献】特開2009-269984(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141347(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/084292(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/080241(WO,A1)
【文献】特開2014-031461(JP,A)
【文献】特開2007-197578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08G 59/00-59/72
H01L 23/29-23/31
H05K 1/00-1/18
H05K 3/00-3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含む樹脂組成物であって、
(A)成分が、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含み、
(B)成分が、シリカを含み、
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、70質量%以上であり、
(D)成分が、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及び金属系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
イミダゾール系硬化促進剤の分子量が、1,000以下である、樹脂組成物。
【請求項2】
(D)成分が、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及びウレア系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
示差走査熱量測定に基づく反応開始温度が、70℃以上である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度が、130℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、80質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分が、炭化水素型チオール系硬化剤、エーテル型チオール系硬化剤、チオエーテル型チオール系硬化剤、アミン型チオール系硬化剤、アルコール型チオール系硬化剤、アルキルイソシアヌレート型チオール系硬化剤、及びアルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
(C)成分が、25℃において液状のチオール系硬化剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含む樹脂組成物であって、
(A)成分が、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含み、
(B)成分が、シリカを含み、
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、70質量%以上であり、
(D)成分が、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及び金属系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
イミダゾール系硬化促進剤の分子量が、1,000以下であり、
示差走査熱量測定に基づく反応開始温度が、70℃以上であり、
示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度が、130℃以下である樹脂組成物。
【請求項9】
樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が、80℃以上である請求項1~8の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
回路基板の絶縁層を形成するための請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
半導体チップパッケージの半導体チップを封止するための請求項1~9の何れか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項14】
支持体と、上記支持体上に設けられた請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
【請求項15】
請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む回路基板。
【請求項16】
請求項15に記載の回路基板と、当該回路基板に搭載された半導体チップと、を含む半導体チップパッケージ。
【請求項17】
半導体チップと、当該半導体チップを封止する請求項1~12の何れか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、を含む半導体チップパッケージ。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物に関する。さらに、本発明は、当該樹脂組成物を用いて得られる硬化物、樹脂シート、回路基板、半導体チップパッケージ、及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォン、タブレット型デバイスといった小型の高機能電子機器の需要が増大しており、それに伴い、これら小型の電子機器に用いられる半導体チップパッケージ用の封止材も更なる高機能化が求められている。このような封止材として、樹脂組成物を硬化して形成されるもの等が知られている(特許文献1)。
【0003】
また、これまでに、チオール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂組成物が知られている(特許文献2及び3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-008312号公報
【文献】特開2013-129775号公報
【文献】特開2013-253194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
とりわけ近年、半導体チップパッケージに用いる封止材としては、製造効率向上のため、低温で封止成型できる材料が求められている。また、パッケージの信頼性の観点から封止材には高い銅密着性も求められる。したがって、本発明の課題は、低温成型性及び銅密着性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題を達成すべく、本発明者らは鋭意検討した結果、チオール系硬化剤を含み且つ所定の条件を満たす樹脂組成物を用いることにより、低温成型性及び銅密着性に優れた硬化物を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の内容を含む。
[1] (A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含む樹脂組成物であって、
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、70質量%以上であり、
(D)成分が、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及び金属系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む樹脂組成物。
[2] (D)成分が、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及びウレア系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3] 示差走査熱量測定に基づく反応開始温度が、70℃以上である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4] 示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度が、130℃以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5] (A)成分が、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6] (B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、80質量%以上である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7] (C)成分が、炭化水素型チオール系硬化剤、エーテル型チオール系硬化剤、チオエーテル型チオール系硬化剤、アミン型チオール系硬化剤、アルコール型チオール系硬化剤、アルキルイソシアヌレート型チオール系硬化剤、及びアルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8] (C)成分が、25℃において液状のチオール系硬化剤を含む、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9] イミダゾール系硬化促進剤の分子量が、1,000以下である、上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10] (A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含む樹脂組成物であって、
(B)成分の含有量が、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、70質量%以上であり、
示差走査熱量測定に基づく反応開始温度が、70℃以上であり、
示差走査熱量測定に基づく反応ピーク温度が、130℃以下である樹脂組成物。
[11] 樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度(Tg)が、80℃以上である上記[1]~[10]の何れかに記載の樹脂組成物。
[12] 半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための上記[1]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物。
[13] 回路基板の絶縁層を形成するための上記[1]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物。
[14] 半導体チップパッケージの半導体チップを封止するための上記[1]~[11]の何れかに記載の樹脂組成物。
[15] 上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物。
[16] 支持体と、上記支持体上に設けられた上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物を含む樹脂組成物層と、を有する樹脂シート。
[17] 上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む回路基板。
[18] 上記[17]に記載の回路基板と、当該回路基板に搭載された半導体チップと、を含む半導体チップパッケージ。
[19] 半導体チップと、当該半導体チップを封止する上記[1]~[14]の何れかに記載の樹脂組成物の硬化物と、を含む半導体チップパッケージ。
[20] 上記[18]又は[19]に記載の半導体チップパッケージを備える半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温成型性及び銅密着性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。とりわけ、垂直方向への引っ張り対する銅密着性に優れた硬化物を得ることができる樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は、下記実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施され得る。
【0010】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含み、(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、70質量%以上であり、さらに、下記の第一の実施形態又は第二の実施形態のいずれかに該当する。
【0011】
第一の実施形態においては、(D)成分が、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及び金属系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。第二の実施形態では、示差走査熱量測定に基づく樹脂組成物の反応開始温度が70℃以上、反応ピーク温度が130℃以下であり、反応開始温度及び反応ピーク温度が上記の範囲である限りにおいて(D)成分は、限定されない。示差走査熱量測定に基づく反応開始温度及び反応ピーク温度は、当業者であれば樹脂組成物の成分及びその含有量を調整することによって容易に調整することができることが知られている。
【0012】
このような樹脂組成物の硬化物は、低温成型性及び銅密着性に優れる。とりわけ、垂直方向への引っ張り対する銅密着性に優れる。また、このような樹脂組成物の硬化物は、好ましくは、保存安定性及び/又は耐熱性に優れ得る。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、及び(D)硬化促進剤の他に、さらに(E)その他の添加剤、及び(F)有機溶剤を含んでいてもよい。以下、樹脂組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0014】
<(A)エポキシ樹脂>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂とは、エポキシ基を有する樹脂を意味する。
【0015】
(A)エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、イソシアヌラート型エポキシ樹脂等が挙げられる。(A)エポキシ樹脂は、硬化物の耐熱性及び銅密着性をより向上させる観点から、グリシジルアミン型エポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂は、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。(A)エポキシ樹脂の不揮発成分100質量%に対して、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。
【0017】
エポキシ樹脂には、温度20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ということがある。)と、温度20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ということがある。)とがある。本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは固体状エポキシ樹脂のみを含んでいてもよく、或いは液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよいが、液状エポキシ樹脂のみを含むことが好ましい。
【0018】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0019】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましい。
【0020】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「828EL」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」、「604」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「ED-523T」(グリシロール型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-3950L」、「EP-3980S」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);ADEKA社製の「EP-4088S」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」、日本曹達社製の「JP-100」、「JP-200」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0022】
固体状エポキシ樹脂としては、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0023】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7700」(キシレン構造含有ノボラック型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」;三菱ケミカル社製の「YL7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは、1種類単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(A)エポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは50g/eq.~5,000g/eq.、より好ましくは50g/eq.~2,000g/eq.、さらに好ましくは80g/eq.~1,000g/eq.、さらにより好ましくは80g/eq.~500g/eq.である。エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量である。このエポキシ当量は、JIS K7236に従って測定することができる。
【0025】
(A)エポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100~5,000、より好ましくは200~3,000、さらに好ましくは250~1,500である。樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレン換算の値として測定できる。
【0026】
(A)エポキシ樹脂の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の(B)成分以外の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上である。(A)エポキシ樹脂の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、特に好ましくは80質量%以下である。
【0027】
<(B)無機充填材>
本発明の樹脂組成物は、(B)無機充填材を含有する。
【0028】
(B)無機充填材の材料は特に限定されないが、例えば、シリカ、アルミナ、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウム等が挙げられ、シリカ及びアルミナが特に好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカ等が挙げられる。またシリカとしては球形シリカが好ましい。(B)無機充填材は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
(B)無機充填材の市販品としては、例えば、電化化学工業社製の「UFP-30」;新日鉄住金マテリアルズ社製の「SP60-05」、「SP507-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;デンカ社製の「UFP-30」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;デンカ社製の「DAW-03」、「FB-105FD」などが挙げられる。
【0030】
(B)無機充填材の平均粒径は、特に限定されるものではないが、好ましくは40μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下、さらにより好ましくは15μm以下、特に好ましくは10μm以下である。無機充填材の平均粒径の下限は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1μm以上、さらにより好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上である。無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出した。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」等が挙げられる。
【0031】
(B)無機充填材の比表面積は、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01m2/g以上、より好ましくは0.1m2/g以上、特に好ましくは0.2m2/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは50m2/g以下、より好ましくは20m2/g以下、10m2/g以下又は5m2/g以下である。無機充填材の比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製Macsorb HM-1210)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することで得られる。
【0032】
(B)無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、アルコキシシラン化合物、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤などの1種以上の表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM5783」等が挙げられる。
【0033】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量%は、0.2質量%~5質量%の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量%~3質量%で表面処理されていることが好ましく、0.3質量%~2質量%で表面処理されていることが好ましい。
【0034】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m2以上が好ましく、0.1mg/m2以上がより好ましく、0.2mg/m2以上がさらに好ましい。一方、樹脂組成物の溶融粘度やシート形態での溶融粘度の上昇を防止する観点から、1.0mg/m2以下が好ましく、0.8mg/m2以下がより好ましく、0.5mg/m2以下がさらに好ましい。
【0035】
(B)無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いて無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」等を使用することができる。
【0036】
(B)無機充填材の含有量は、樹脂組成物中の全ての不揮発成分を100質量%とした場合、70質量%以上であり、好ましくは75質量%以上であり、耐熱性をより向上させる観点から、より好ましくは80質量%以上、特に好ましくは83質量%以上である。(B)無機充填材の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、例えば、98質量%以下、95質量%以下、90質量%以下、85質量%以下等とし得る。
【0037】
<(C)チオール系硬化剤>
本発明の樹脂組成物は、(C)チオール系硬化剤を含有する。
【0038】
(C)チオール系硬化剤とは、(A)エポキシ樹脂を硬化させることができるチオール化合物を意味し、通常、2官能以上のチオール化合物であり、架橋密度をより向上させる観点から、3官能以上のチオール化合物であることが好ましい。また、このようなチオール化合物は、1級及び/又は2級チオール化合物であることが好ましく、反応性を高める観点から、1級チオール化合物であることがより好ましい。
【0039】
(C)チオール系硬化剤としては、例えば、炭化水素型チオール系硬化剤、エーテル型チオール系硬化剤、チオエーテル型チオール系硬化剤、アミン型チオール系硬化剤、アルコール型チオール系硬化剤、カルボン酸エステル型チオール系硬化剤、アルキルイソシアヌレート型チオール系硬化剤、カルボン酸エステルイソシアヌレート型チオール系硬化剤、アルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤等が挙げられる。中でも、耐熱性をより向上させる観点から、カルボン酸エステル構造を含まないチオール系硬化剤、即ち、炭化水素型チオール系硬化剤、エーテル型チオール系硬化剤、チオエーテル型チオール系硬化剤、アミン型チオール系硬化剤、アルコール型チオール系硬化剤、アルキルイソシアヌレート型チオール系硬化剤、アルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤が好ましく、エーテル型チオール系硬化剤、アルキルイソシアヌレート型チオール系硬化剤が特に好ましい。
【0040】
炭化水素型チオール系硬化剤とは、炭化水素の同一又は異なる非芳香族炭素原子に結合する2個以上の水素原子がメルカプト基で置換された化合物を意味し、例えば、1,4-ブタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,10-デカンジチオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジチオール、1,4-シクロヘキサンジチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、p-キシレン-α,α’-ジチオール等の2官能の炭化水素型チオール系硬化剤;2-メルカプトメチル-1,3-プロパンジチオール、2-エチル-2-(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール、2-メルカプトメチル-1,4-ブタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール等の3官能の炭化水素型チオール系硬化剤;テトラキス(メルカプトメチル)メタン、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジチオール等の4官能の炭化水素型チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0041】
エーテル型チオール系硬化剤とは、炭化水素の同一又は異なる非芳香族炭素原子に結合する2個以上の水素原子がメルカプト基で置換され、且つ分子内の1箇所以上のCH2(第2級炭素)がOに置き換わった化合物を意味し、例えば、3,6-ジオキサ-1,8-オクタンジチオール、3,4-ジメトキシブタン-1,2-ジチオール、2,3-ジメルカプトプロピルメチルエーテル、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル等の2官能のエーテル型チオール系硬化剤;(2-メルカプトエチル)(2,3-ジメルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトエチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトブチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(4-メルカプトブチル)エーテル、グリセリントリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、グリセリントリス(4-メルカプトブチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトプロピル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチル)エーテル、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチル)エーテル、グリセリントリス(2-メルカプトプロピル)エーテル、グリセリントリス(3-メルカプトブチル)エーテル等の3官能のエーテル型チオール系硬化剤;ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトエチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトブチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチル)エーテル等の4官能のエーテル型チオール系硬化剤;ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピル)エーテル等の5官能以上の多官能のエーテル型チオール系硬化剤が挙げられる。
【0042】
チオエーテル型チオール系硬化剤とは、炭化水素の同一又は異なる非芳香族炭素原子に結合する2個以上の水素原子がメルカプト基で置換され、且つ分子内の1箇所以上のCH2(第2級炭素)がSに置き換わった化合物を意味し、さらに分子内の1箇所以上のCH2(第2級炭素)がOに置き換わっていてもよく、例えば、3,6-ジチア-1,8-オクタンジチオール等の2官能のチオエーテル型チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0043】
アミン型チオール系硬化剤とは、炭化水素の同一又は異なる非芳香族炭素原子に結合する2個以上の水素原子がメルカプト基で置換され、且つ分子内の1箇所以上のCH2(第2級炭素)及び/又はCH(第3級炭素)がNH及び/又はNに置き換わった化合物を意味し、さらに分子内の1箇所以上のCH2(第2級炭素)がO及び/又はSに置き換わっていてもよく、例えば、ビス[4-(3-フェノキシ-2-メルカプトプロピルアミノ)フェニル]メタン、ビス{4-[3-(4-メチルフェノキシ)-2-メルカプトプロピルアミノ]フェニル}メタン、1,4-ビス(3-フェノキシ-2-メルカプトプロピルアミノ)ベンゼン等の2官能のアミン型チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0044】
アルコール型チオール系硬化剤とは、炭化水素の同一又は異なる非芳香族炭素原子に結合する2個以上の水素原子がメルカプト基、1個以上の水素原子がヒドロキシ基で置換された化合物を意味し、さらに分子内の1箇所以上のCH2(第2級炭素)がO及び/又はSに、1箇所以上のCH2(第2級炭素)及び/又はCH(第3級炭素)がNH及び/又はNに置き換わっていてもよく、例えば、1,3-ジメルカプト-2-プロパノール、2,3-ジメルカプト-1-プロパノール、2,2-ビス(メルカプトメチル)-1,3-プロパンジオール等の2官能のアルコール型チオール系硬化剤;ペンタエリスリトールトリス(3-メルカプトプロピル)エーテル、3-メルカプト-2,2-ビス(メルカプトメチル)-1-プロパノール等の3官能のアルコール型チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0045】
カルボン酸エステル型チオール系硬化剤とは、炭化水素の同一又は異なる非芳香族炭素原子に結合する2個以上の水素原子がメルカプト基で置換され、且つ分子内の少なくとも1箇所以上のCH2(第2級炭素)がC(=O)-Oに置き換わった化合物を意味し、さらに分子内の1箇所以上のCH2(第2級炭素)がO及び/又はSに、1箇所以上のCH2(第2級炭素)及び/又はCH(第3級炭素)がNH及び/又はNに置き換わっていてもよく、例えば、コハク酸ビス(2-メルカプトエチル)、フタル酸ビス(2-メルカプトエチル)、フタル酸ビス(3-メルカプトプロピル)、フタル酸ビス(4-メルカプトブチル)、エチレングリコールビス(メルカプトアセタート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(4-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(メルカプトアセタート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(4-メルカプトブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトプロピオネート)、1,8-オクタンジオールビス(4-メルカプトブチレート)、フタル酸ビス(1-メルカプトエチル)、フタル酸ビス(2-メルカプトプロピル)、フタル酸ビス(3-メルカプトブチル)、エチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、プロピレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、プロピレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトブチレート)、テトラエチレングリコールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)、1,8-オクタンジオールビス(2-メルカプトプロピオネート)、1,8-オクタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)等の2官能のカルボン酸エステル型チオール系硬化剤;チオリンゴ酸ビス(2-メルカプトエチル)、トリメチロールプロパントリス(メルカプトアセタート)、トリメチロールエタントリス(メルカプトアセタート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(4-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(4-メルカプトブチレート)、グリセリントリス(3-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(4-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、グリセリントリス(2-メルカプトプロピオネート)、グリセリントリス(3-メルカプトブチレート)等の3官能のカルボン酸エステル型チオール系硬化剤;2,3-ジメルカプトコハク酸ビス(2-メルカプトエチル)、ペンタエリスリトールテトラキス(メルカプトアセタート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(4-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)等の4官能のカルボン酸エステル型チオール系硬化剤;ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2-メルカプトプロピオネート)等の5官能以上の多官能のカルボン酸エステル型チオール系硬化剤が挙げられる。
【0046】
アルキルイソシアヌレート型チオール系硬化剤とは、イソシアヌル酸(すなわち1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン)の1、3、5位の窒素原子それぞれにアルキル基が結合し且つ2個以上のメルカプト基を有する化合物を意味し、例えば、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、トリス(2-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、トリス(2-メルカプトエチル)イソシアヌレート等の3官能のアルキルイソシアヌレート型チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0047】
カルボン酸エステルイソシアヌレート型チオール系硬化剤とは、イソシアヌル酸の1、3、5位それぞれにアルキル基が結合し、2個以上のメルカプト基を有し、且つ前記アルキル基の少なくとも1箇所以上のCH2(第2級炭素)がC(=O)-Oに置き換わった化合物を意味し、例えば、トリス[2-(3-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(4-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(2-メルカプトプロピオニルオキシ)エチル]イソシアヌレート、トリス[2-(3-メルカプトブチリルオキシ)エチル]イソシアヌレート等の3官能のカルボン酸エステルイソシアヌレート型チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0048】
アルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤とは、グリコールウリル(すなわちテトラヒドロイミダゾ[4,5-d]イミダゾール-2,5(1H,3H)-ジオン)の1、3、4、6、3a、6a位のうち少なくとも1箇所にアルキル基が結合し且つ2個以上のメルカプト基を有する化合物を意味し、例えば、1,3-ビス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3-ビス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、1,4-ビス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,4-ビス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル、1,6-ビス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,6-ビス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル等の2官能のアルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤;1,3,4-トリス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4-トリス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル等の3官能のアルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤;1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(3-メルカプトプロピル)グリコールウリル等の4官能のアルキルグリコールウリル型チオール系硬化剤等が挙げられる。
【0049】
(C)チオール系硬化剤は、好ましくは、25℃において液状のチオール系硬化剤を含む。
【0050】
(C)チオール系硬化剤の分子量は、特に限定されるものではないが、好ましくは200以上、より好ましくは250以上、さらに好ましくは300以上、特に好ましくは350以上である。(C)チオール系硬化剤の分子量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは1,500以下、より好ましくは1,000以下、さらに好ましくは800以下、特に好ましくは700以下である。
【0051】
(C)チオール系硬化剤のチオール当量は、特に限定されるものではないが、好ましくは50~1,000g/eq.、より好ましくは50~500g/eq.、さらに好ましくは50~300g/eq.、特に好ましくは50~200g/eq.である。チオール当量は、チオール基1当量あたりのチオール系硬化剤の質量である。
【0052】
(C)チオール系硬化剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の(B)成分以外の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、特に好ましくは20質量%以上である。(C)チオール系硬化剤の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
【0053】
<(D)硬化促進剤>
本発明の樹脂組成物は、(D)硬化促進剤を含有する。(D)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂の硬化を促進する機能を有する。
【0054】
第一の実施形態では、(D)硬化促進剤は、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及び金属系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、好ましくは、リン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及びウレア系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。
【0055】
リン系硬化促進剤としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムラウレート、ビス(テトラブチルホスホニウム)ピロメリテート、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート、テトラブチルホスホニウム2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート、ジ-tert-ブチルメチルホスホニウムテトラフェニルボレート等の脂肪族ホスホニウム塩;メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、プロピルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラp―トリルボレート、トリフェニルエチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(3-メチルフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリス(2-メトキシフェニル)エチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート等の芳香族ホスホニウム塩;トリフェニルホスフィン・トリフェニルボラン等の芳香族ホスフィン・ボラン複合体;トリフェニルホスフィン・p-ベンゾキノン付加反応物等の芳香族ホスフィン・キノン付加反応物;トリブチルホスフィン、トリ-tert-ブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、ジ-tert-ブチル(2-ブテニル)ホスフィン、ジ-tert-ブチル(3-メチル-2-ブテニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン等の脂肪族ホスフィン;ジブチルフェニルホスフィン、ジ-tert-ブチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ブチルジフェニルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィン、トリ-m-トリルホスフィン、トリ-p-トリルホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン、ジフェニル-2-ピリジルホスフィン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)アセチレン、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)ジフェニルエーテル等の芳香族ホスフィン等が挙げられる。
【0056】
ウレア系硬化促進剤としては、例えば、1,1-ジメチル尿素;1,1,3-トリメチル尿素、3-エチル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロヘキシル-1,1-ジメチル尿素、3-シクロオクチル-1,1-ジメチル尿素等の脂肪族ジメチルウレア;3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(4-クロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(2-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジメチルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-イソプロピルフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-メトキシフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-(4-ニトロフェニル)-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-メトキシフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,1-ジメチル尿素、N,N-(1,4-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)、N,N-(4-メチル-1,3-フェニレン)ビス(N’,N’-ジメチル尿素)〔トルエンビスジメチルウレア〕等の芳香族ジメチルウレア等が挙げられる。
【0057】
グアニジン系硬化促進剤としては、例えば、ジシアンジアミド、1-メチルグアニジン、1-エチルグアニジン、1-シクロヘキシルグアニジン、1-フェニルグアニジン、1-(o-トリル)グアニジン、ジメチルグアニジン、ジフェニルグアニジン、トリメチルグアニジン、テトラメチルグアニジン、ペンタメチルグアニジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、1-メチルビグアニド、1-エチルビグアニド、1-n-ブチルビグアニド、1-n-オクタデシルビグアニド、1,1-ジメチルビグアニド、1,1-ジエチルビグアニド、1-シクロヘキシルビグアニド、1-アリルビグアニド、1-フェニルビグアニド、1-(o-トリル)ビグアニド等が挙げられる。
【0058】
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3-ジヒドロ-1H-ピロロ[1,2-a]ベンズイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等のイミダゾール化合物及びイミダゾール化合物とエポキシ樹脂とのアダクト体が挙げられる。
【0059】
イミダゾール系硬化促進剤の分子量は、特に限定されるものではないが、作業性(流動性)を向上させ、加熱成型時の溶け残りを抑制させる観点から、好ましくは1,000以下、より好ましくは600以下、さらに好ましくは400以下、特に好ましくは300以下である。
【0060】
金属系硬化促進剤としては、例えば、コバルト、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、マンガン、スズ等の金属の、有機金属錯体又は有機金属塩が挙げられる。有機金属錯体の具体例としては、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート等の有機コバルト錯体、銅(II)アセチルアセトナート等の有機銅錯体、亜鉛(II)アセチルアセトナート等の有機亜鉛錯体、鉄(III)アセチルアセトナート等の有機鉄錯体、ニッケル(II)アセチルアセトナート等の有機ニッケル錯体、マンガン(II)アセチルアセトナート等の有機マンガン錯体等が挙げられる。有機金属塩としては、例えば、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸スズ、ステアリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0061】
第二の実施形態では、(D)硬化促進剤は、示差走査熱量測定に基づく反応開始温度が70℃以上、反応ピーク温度が130℃以下となる樹脂組成物が得られる限りにおいて限定されないが、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、金属系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、また、アミン系硬化促進剤を含んでいてもよい。
【0062】
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられる。
【0063】
(D)硬化促進剤の含有量は、特に限定されるものではないが、樹脂組成物中の(B)成分以外の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上である。(D)硬化促進剤の含有量の上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは4質量%以下、特に好ましくは3質量%以下である。
【0064】
<(E)その他の添加剤>
本発明の樹脂組成物は、不揮発性成分として、さらに任意の添加剤を含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤等のチオール系硬化剤以外の硬化剤;ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子等の有機充填材;フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂;有機銅化合物、有機亜鉛化合物、有機コバルト化合物等の有機金属化合物;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオディングリーン、ジアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤;ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の重合禁止剤;シロキサン等のレベリング剤;ベントン、モンモリロナイト等の増粘剤;シリコーン系消泡剤、アクリル系消泡剤、フッ素系消泡剤、ビニル樹脂系消泡剤の消泡剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;尿素シラン等の接着性向上剤;シランカップリング剤、トリアゾール系密着性付与剤、テトラゾール系密着性付与剤、トリアジン系密着性付与剤等の密着性付与剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等の酸化防止剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤;フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等の界面活性剤;リン系難燃剤(例えばリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸化合物、赤リン)、窒素系難燃剤(例えば硫酸メラミン)、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(例えば三酸化アンチモン)等の難燃剤等; ホウ酸エステル化合物、チタン酸エステル化合物、アルミネート化合物、ジルコネート化合物、イソシアネート化合物、カルボン酸、酸無水物及びメルカプト有機酸等の安定剤が挙げられる。添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。(E)その他の添加剤の含有量は当業者であれば適宜設定できる。
【0065】
<(F)有機溶剤>
本発明の樹脂組成物は、上述した不揮発性成分以外に、揮発性成分として、さらに任意の有機溶剤を含有する場合がある。(F)有機溶剤としては、不揮発性成分の少なくとも一部を溶解可能なものである限り、公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されるものではない。(F)有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤;テトラヒドロピラン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル等のエーテル系溶剤;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等のアルコール系溶剤;酢酸2-エトキシエチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチルジグリコールアセテート、γ-ブチロラクトン、メトキシプロピオン酸メチル等のエーテルエステル系溶剤;乳酸メチル、乳酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル等のエステルアルコール系溶剤;2-メトキシプロパノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)等のエーテルアルコール系溶剤;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶剤;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤等を挙げることができる。(F)有機溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0066】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、例えば、任意の反応容器に(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、(D)硬化促進剤、必要に応じて(E)その他の添加剤、及び必要に応じて(F)有機溶剤を、任意の順で及び/又は一部若しくは全部同時に加えて混合することによって、製造することができる。また、各成分を加えて混合する過程で、温度を適宜設定することができ、一時的に又は終始にわたって、加熱及び/又は冷却してもよい。また、各成分を加えて混合する過程において、撹拌又は振盪を行ってもよい。また、加えて混合する際に又はその後に、樹脂組成物を、例えば、ミキサーなどの撹拌装置を用いて撹拌し、均一に分散させてもよい。
【0067】
<樹脂組成物の特性>
本発明の樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂、(B)無機充填剤、(C)チオール系硬化剤、及び(D)硬化促進剤を含み、(B)成分の含有量は、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%としたときに、70質量%以上であり、下記の第一の実施形態又は第二の実施形態のいずれかに該当することから、低温成型性及び銅密着性に優れた硬化物を得ることができる。とりわけ、垂直方向への引っ張り対する銅密着性に優れた硬化物を得ることができる。また、本発明の樹脂組成物の硬化物は、好ましくは、保存安定性及び/又は耐熱性に優れ得る。
【0068】
第一の実施形態においては、(D)成分は、リン系硬化促進剤、ウレア系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、及び金属系硬化促進剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。当該実施形態において、示差走査熱量測定(DSC)に基づく樹脂組成物の反応開始温度は、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは65℃以上、特に好ましくは70℃以上である。また、示差走査熱量測定に基づく樹脂組成物の反応ピーク温度は、より優れた低温成型性を達成する観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは140℃以下、特に好ましくは130℃以下である。
【0069】
第二の実施形態では、示差走査熱量測定に基づく樹脂組成物の反応開始温度が70℃以上、反応ピーク温度が130℃以下であり、当該条件を満たす限りにおいて(D)成分は、限定されない。
【0070】
ここで、示差走査熱量測定に基づく反応開始温度は、5℃/分の昇温速度、25℃~280℃の温度範囲で示差走査熱量測定を行った場合に得られる示差走査熱量曲線(DSC曲線)の変曲点における接線とベースラインとの交点の温度を意味する。反応ピーク温度は、最も低温側に位置するピークトップを示す温度である。
【0071】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、保存安定性に優れ得るため、例えば、温度25℃/湿度60%の環境下で、好ましくは12時間以上、より好ましくは24時間以上、特に好ましくは48時間以上静置しても流動性を示し得る。
【0072】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、低温成型性に優れるため、好ましくは140℃未満、より好ましくは130℃未満、さらに好ましくは120℃未満、特に好ましくは110℃未満のモールド温度での圧縮成型(圧力:6MPa、キュアタイム:5分)により、タック性のない硬化物が得られ得る。
【0073】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、耐熱性に優れ得るため、例えば、ガラス転移温度(Tg)が、好ましくは60℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは100℃以上であり得る。ここにおけるガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に基づき、昇温速度5℃/分、測定温度範囲25℃~280℃で示差走査熱量測定を行った場合における、DSC曲線が階段状変化を示す部分の中間点である。
【0074】
本発明の樹脂組成物の硬化物は、銅密着性に優れるため、例えば、銅箔シャイニー面上に圧縮成型(圧力:6MPa、キュアタイム:5分)し、その後、130℃で90分加熱して硬化させた場合の硬化物の垂直引っ張り試験(試験スピード0.1Kg/sec)で測定した接着強度が、好ましくは85Kgf/cm2以上、より好ましくは90Kgf/cm2以上、さらに好ましくは95Kgf/cm2以上、特に好ましくは100Kgf/cm2以上となり得る。
【0075】
<樹脂組成物の用途>
本発明の樹脂組成物の硬化物は、上述した利点により、とりわけ半導体の封止層及び絶縁層に有用である。よって、この樹脂組成物は、半導体封止用又は絶縁層用の樹脂組成物として用いることができる。
【0076】
例えば、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの絶縁層を形成するための樹脂組成物(半導体チップパッケージの絶縁層用の樹脂組成物)、及び、回路基板(プリント配線板を含む。)の絶縁層を形成するための樹脂組成物(回路基板の絶縁層用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0077】
また、例えば、本発明の樹脂組成物は、半導体チップパッケージの半導体チップを封止するための樹脂組成物(半導体チップ封止用の樹脂組成物)として、好適に使用することができる。
【0078】
本発明の樹脂組成物の硬化物で形成された封止層又は絶縁層を適用できる半導体チップパッケージとしては、例えば、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージ、Fan-out型WLP(Wafer Level Package)、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP(Panel Level Package)、Fan-in型PLPが挙げられる。
【0079】
また、本発明の樹脂組成物は、アンダーフィル材として用いてもよく、例えば、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUF(Molding Under Filling)の材料として用いてもよい。
【0080】
さらに、本発明の樹脂組成物は、樹脂シート、プリプレグ等のシート状積層材料、ソルダーレジスト等のための樹脂インク等の液状材料、ダイボンディング材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等、樹脂組成物が用いられる広範な用途に使用できる。
【0081】
<樹脂シート>
本発明の樹脂シートは、支持体と、該支持体上に設けられた樹脂組成物層と、を有する。樹脂組成物層は、本発明の樹脂組成物を含む層であり、通常は、樹脂組成物で形成されている。
【0082】
樹脂組成物層の厚みは、薄型化の観点から、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。樹脂組成物層の厚みの下限は、好ましくは1μm以上、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上でありうる。
【0083】
また、樹脂組成物層を硬化させて得られる硬化物の厚みは、好ましくは600μm以下、より好ましくは500μm以下である。硬化物の厚みの下限は、好ましくは1μm以上、5μm以上、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは50μm以上、特に好ましくは100μm以上である。
【0084】
支持体としては、例えば、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔、離型紙が挙げられ、プラスチック材料からなるフィルム、金属箔が好ましい。
【0085】
支持体としてプラスチック材料からなるフィルムを使用する場合、プラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート(以下「PEN」と略称することがある。)等のポリエステル;ポリカーボネート(以下「PC」と略称することがある。);ポリメチルメタクリレート(以下「PMMA」と略称することがある。)等のアクリルポリマー;環状ポリオレフィン;トリアセチルセルロース(以下「TAC」と略称することがある。);ポリエーテルサルファイド(以下「PES」と略称することがある。);ポリエーテルケトン;ポリイミド;等が挙げられる。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく、安価なポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0086】
支持体として金属箔を使用する場合、金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられる。中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の単金属からなる箔を用いてもよく、銅と他の金属(例えば、スズ、クロム、銀、マグネシウム、ニッケル、ジルコニウム、ケイ素、チタン等)との合金からなる箔を用いてもよい。
【0087】
支持体は、樹脂組成物層と接合する面に、マット処理、コロナ処理、帯電防止処理等の処理が施されていてもよい。
【0088】
また、支持体としては、樹脂組成物層と接合する面に離型層を有する離型層付き支持体を使用してもよい。離型層付き支持体の離型層に使用する離型剤としては、例えば、アルキド樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、及びシリコーン樹脂からなる群から選択される1種以上の離型剤が挙げられる。離型剤の市販品としては、例えば、アルキド樹脂系離型剤である、リンテック社製の「SK-1」、「AL-5」、「AL-7」等が挙げられる。また、離型層付き支持体としては、例えば、東レ社製の「ルミラーT60」;帝人社製の「ピューレックス」;ユニチカ社製の「ユニピール」;等が挙げられる。
【0089】
支持体の厚さは、5μm~75μmの範囲が好ましく、10μm~60μmの範囲がより好ましい。なお、離型層付き支持体を使用する場合、離型層付き支持体全体の厚さが上記範囲であることが好ましい。
【0090】
樹脂シートは、例えば、樹脂組成物を、ダイコーター等の塗布装置を用いて支持体上に塗布して、製造することができる。また、必要に応じて、樹脂組成物を有機溶剤に溶解して樹脂ワニスを調製し、この樹脂ワニスを塗布して樹脂シートを製造してもよい。有機溶剤を用いることにより、粘度を調整して、塗布性を向上させることができる。有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いた場合、通常は、塗布後に樹脂組成物又は樹脂ワニスを乾燥させて、樹脂組成物層を形成する。
【0091】
乾燥は、加熱、熱風吹きつけ等の公知の方法により実施してよい。乾燥条件は、樹脂組成物層中の有機溶剤の含有量が、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥させる。樹脂組成物又は樹脂ワニス中の有機溶剤の沸点によっても異なるが、例えば30質量%~60質量%の有機溶剤を含む樹脂組成物又は樹脂ワニスを用いる場合、50℃~150℃で3分~10分間乾燥させることにより、樹脂組成物層を形成することができる。
【0092】
樹脂シートは、必要に応じて、支持体及び樹脂組成物層以外の任意の層を含んでいてもよい。例えば、樹脂シートにおいて、樹脂組成物層の支持体と接合していない面(即ち、支持体とは反対側の面)には、支持体に準じた保護フィルムが設けられていてもよい。保護フィルムの厚さは、例えば、1μm~40μmである。保護フィルムにより、樹脂組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。樹脂シートが保護フィルムを有する場合、保護フィルムを剥がすことによって樹脂シートは使用可能となる。また、樹脂シートは、ロール状に巻きとって保存することが可能である。
【0093】
樹脂シートは、半導体チップパッケージの製造において絶縁層を形成するため(半導体チップパッケージの絶縁用樹脂シート)に好適に使用できる。例えば、樹脂シートは、回路基板の絶縁層を形成するため(回路基板の絶縁層用樹脂シート)に使用できる。このような基板を使ったパッケージの例としては、FC-CSP、MIS-BGAパッケージ、ETS-BGAパッケージが挙げられる。
【0094】
また、樹脂シートは、半導体チップを封止するため(半導体チップ封止用樹脂シート)に好適に使用することができる。適用可能な半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLP、Fan-in型WLP、Fan-out型PLP、Fan-in型PLP等が挙げられる。
【0095】
また、樹脂シートを、半導体チップを基板に接続した後に用いるMUFの材料に用いてもよい。
【0096】
さらに、樹脂シートは高い絶縁信頼性が要求される他の広範な用途に使用できる。例えば、樹脂シートは、プリント配線板等の回路基板の絶縁層を形成するために好適に使用することができる。
【0097】
<回路基板>
本発明の回路基板は、本発明の樹脂組成物の硬化物により形成された絶縁層を含む。この回路基板は、例えば、下記の工程(1)及び工程(2)を含む製造方法によって、製造できる。
(1)基材上に、樹脂組成物層を形成する工程。
(2)樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する工程。
【0098】
工程(1)では、基材を用意する。基材としては、例えば、ガラスエポキシ基板、金属基板(ステンレスや冷間圧延鋼板(SPCC)など)、ポリエステル基板、ポリイミド基板、BTレジン基板、熱硬化型ポリフェニレンエーテル基板等の基板が挙げられる。また、基材は、当該基材の一部として表面に銅箔等の金属層を有していてもよい。例えば、両方の表面に剥離可能な第一金属層及び第二金属層を有する基材を用いてもよい。このような基材を用いる場合、通常、回路配線として機能できる配線層としての導体層が、第二金属層の第一金属層とは反対側の面に形成される。このような金属層を有する基材としては、例えば、三井金属鉱業社製のキャリア銅箔付極薄銅箔「Micro Thin」が挙げられる。
【0099】
また、基材の一方又は両方の表面には、導体層が形成されていてもよい。以下の説明では、基材と、この基材表面に形成された導体層とを含む部材を、適宜「配線層付基材」ということがある。導体層に含まれる導体材料としては、例えば、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む材料が挙げられる。導体材料としては、単金属を用いてもよく、合金を用いてもよい。合金としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例えば、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)が挙げられる。中でも、導体層形成の汎用性、コスト、パターニングの容易性の観点から、単金属としてのクロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅;及び、合金としてのニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金;が好ましい。その中でも、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属;及び、ニッケル・クロム合金;がより好ましく、銅の単金属が特に好ましい。
【0100】
導体層は、例えば配線層として機能させるために、パターン加工されていてもよい。この際、導体層のライン(回路幅)/スペース(回路間の幅)比は、特に制限されないが、好ましくは20/20μm以下(即ちピッチが40μm以下)、より好ましくは10/10μm以下、さらに好ましくは5/5μm以下、よりさらに好ましくは1/1μm以下、特に好ましくは0.5/0.5μm以上である。ピッチは、導体層の全体にわたって同一である必要はない。導体層の最小ピッチは、例えば、40μm以下、36μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0101】
導体層の厚さは、回路基板のデザインによるが、好ましくは3μm~35μm、より好ましくは5μm~30μm、さらに好ましくは10μm~20μm、特に好ましくは15μm~20μmである。
【0102】
導体層は、例えば、基材上にドライフィルム(感光性レジストフィルム)を積層する工程、フォトマスクを用いてドライフィルムに対して所定の条件で露光及び現像を行ってパターンを形成してパターンドライフィルムを得る工程、現像したパターンドライフィルムをめっきマスクとして電解めっき法等のメッキ法によって導体層を形成する工程、及び、パターンドライフィルムを剥離する工程を含む方法によって、形成できる。ドライフィルムとしては、フォトレジスト組成物からなる感光性のドライフィルムを用いることができ、例えば、ノボラック樹脂、アクリル樹脂等の樹脂で形成されたドライフィルムを用いることができる。基材とドライフィルムとの積層条件は、後述する基材と樹脂シートとの積層の条件と同様でありうる。ドライフィルムの剥離は、例えば、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ性の剥離液を使用して実施することができる。
【0103】
基材を用意した後で、基材上に、樹脂組成物層を形成する。基材の表面に導体層が形成されている場合、樹脂組成物層の形成は、導体層が樹脂組成物層に埋め込まれるように行うことが好ましい。
【0104】
樹脂組成物層の形成は、例えば、樹脂シートと基材とを積層することによって行われる。この積層は、例えば、支持体側から樹脂シートを基材に加熱圧着することにより、基材に樹脂組成物層を貼り合わせることで、行うことができる。樹脂シートを基材に加熱圧着する部材(以下、「加熱圧着部材」ということがある。)としては、例えば、加熱された金属板(SUS鏡板等)又は金属ロール(SUSロール等)等が挙げられる。なお、加熱圧着部材を樹脂シートに直接プレスするのではなく、基材の表面凹凸に樹脂シートが十分に追随するよう、耐熱ゴム等の弾性材を介してプレスするのが好ましい。
【0105】
基材と樹脂シートとの積層は、例えば、真空ラミネート法により実施してよい。真空ラミネート法において、加熱圧着温度は、好ましくは60℃~160℃、より好ましくは80℃~140℃の範囲である。加熱圧着圧力は、好ましくは0.098MPa~1.77MPa、より好ましくは0.29MPa~1.47MPaの範囲である。加熱圧着時間は、好ましくは20秒間~400秒間、より好ましくは30秒間~300秒間の範囲である。積層は、好ましくは圧力13hPa以下の減圧条件下で実施する。
【0106】
積層の後に、常圧下(大気圧下)、例えば、加熱圧着部材を支持体側からプレスすることにより、積層された樹脂シートの平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理のプレス条件は、上記積層の加熱圧着条件と同様の条件とすることができる。なお、積層と平滑化処理は、真空ラミネーターを用いて連続的に行ってもよい。
【0107】
また、樹脂組成物層の形成は、例えば、圧縮成型法によって行うことができる。成型条件は、後述する半導体チップパッケージの封止層を形成する工程における樹脂組成物層の形成方法と同様な条件を採用してもよい。
【0108】
基材上に樹脂組成物層を形成した後、樹脂組成物層を熱硬化して、絶縁層を形成する。樹脂組成物層の熱硬化条件は、樹脂組成物の種類によっても異なるが、硬化温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは150℃~220℃の範囲、より好ましくは170℃~200℃の範囲)、硬化時間は5分間~120分間の範囲(好ましくは10分間~100分間、より好ましくは15分間~90分間)である。
【0109】
樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。例えば、樹脂組成物層を熱硬化させるのに先立ち、通常50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上110℃以下、より好ましくは70℃以上100℃以下)の温度にて、樹脂組成物層を、通常5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間)、予備加熱してもよい。
【0110】
以上のようにして、絶縁層を有する回路基板を製造できる。また、回路基板の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。
例えば、樹脂シートを用いて回路基板を製造した場合、回路基板の製造方法は、樹脂シートの支持体を剥離する工程を含んでいてもよい。支持体は、樹脂組成物層の熱硬化の前に剥離してもよく、樹脂組成物層の熱硬化の後に剥離してもよい。
【0111】
回路基板の製造方法は、例えば、絶縁層を形成した後で、その絶縁層の表面を研磨する工程を含んでいてもよい。研磨方法は特に限定されない。例えば、平面研削盤を用いて絶縁層の表面を研磨することができる。
【0112】
回路基板の製造方法は、例えば、導体層を層間接続する工程(3)、例えば、絶縁層に穴あけをする工程を含んでいてもよい。これにより絶縁層にビアホール、スルーホール等のホールを形成することができる。ビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。ビアホールの寸法や形状は回路基板の出デザインに応じて適宜決定してよい。なお、工程(3)は、絶縁層の研磨又は研削によって層間接続を行ってもよい。
【0113】
ビアホールの形成後、ビアホール内のスミアを除去する工程を行うことが好ましい。この工程は、デスミア工程と呼ばれることがある。例えば、絶縁層上への導体層の形成をめっき工程により行う場合には、ビアホールに対して、湿式のデスミア処理を行ってもよい。また、絶縁層上への導体層の形成をスパッタ工程により行う場合には、プラズマ処理工程などのドライデスミア工程を行ってもよい。さらに、デスミア工程によって、絶縁層に粗化処理が施されてもよい。
【0114】
また、絶縁層上に導体層を形成する前に、絶縁層に対して、粗化処理を行ってもよい。この粗化処理によれば、通常、ビアホール内を含めた絶縁層の表面が粗化される。粗化処理としては、乾式及び湿式のいずれの粗化処理を行ってもよい。乾式の粗化処理の例としては、プラズマ処理等が挙げられる。また、湿式の粗化処理の例としては、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、及び、中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。
【0115】
ビアホールを形成後、絶縁層上に導体層を形成してもよい。ビアホールが形成された位置に導体層を形成することで、新たに形成された導体層と基材表面の導体層とが導通して、層間接続が行われる。導体層の形成方法は、例えば、めっき法、スパッタ法、蒸着法などが挙げられ、中でもめっき法が好ましい。好適な実施形態では、セミアディティブ法、フルアディティブ法等の適切な方法によって絶縁層の表面にめっきして、所望の配線パターンを有する導体層を形成する。また、樹脂シートにおける支持体が金属箔である場合、サブトラクティブ法により、所望の配線パターンを有する導体層を形成することができる。形成される導体層の材料は、単金属でもよく、合金でもよい。また、この導体層は、単層構造を有していてもよく、異なる種類の材料の層を2層以上含む複層構造を有していてもよい。
【0116】
ここで、絶縁層上に導体層を形成する実施形態の例を、詳細に説明する。絶縁層の表面に、無電解めっきにより、めっきシード層を形成する。次いで、形成されためっきシード層上に、所望の配線パターンに対応して、めっきシード層の一部を露出させるマスクパターンを形成する。露出しためっきシード層上に、電解めっきにより電解めっき層を形成した後、マスクパターンを除去する。その後、不要なめっきシード層をエッチング等の処理により除去して、所望の配線パターンを有する導体層を形成できる。なお、導体層を形成する際、マスクパターンの形成に用いるドライフィルムは、上記ドライフィルムと同様である。
【0117】
回路基板の製造方法は、基材を除去する工程(4)を含んでいてもよい。基材を除去することにより、絶縁層と、この絶縁層に埋め込まれた導体層とを有する回路基板が得られる。この工程(4)は、例えば、剥離可能な金属層を有する基材を用いた場合に、行うことができる。
【0118】
<半導体チップパッケージ>
本発明の第一実施形態に係る半導体チップパッケージは、上述した回路基板と、この回路基板に搭載された半導体チップとを含む。この半導体チップパッケージは、回路基板に半導体チップを接合することにより、製造することができる。
【0119】
回路基板と半導体チップとの接合条件は、半導体チップの端子電極と回路基板の回路配線とが導体接続できる任意の条件を採用できる。例えば、半導体チップのフリップチップ実装において使用される条件を採用できる。また、例えば、半導体チップと回路基板との間に、絶縁性の接着剤を介して接合してもよい。
【0120】
接合方法の例としては、半導体チップを回路基板に圧着する方法が挙げられる。圧着条件としては、圧着温度は通常120℃~240℃の範囲(好ましくは130℃~200℃の範囲、より好ましくは140℃~180℃の範囲)、圧着時間は通常1秒間~60秒間の範囲(好ましくは5秒間~30秒間)である。
【0121】
また、接合方法の他の例としては、半導体チップを回路基板にリフローして接合する方法が挙げられる。リフロー条件は、120℃~300℃の範囲としてもよい。
【0122】
半導体チップを回路基板に接合した後、半導体チップをモールドアンダーフィル材で充填してもよい。このモールドアンダーフィル材として、上述した樹脂組成物を用いてもよく、また、上述した樹脂シートを用いてもよい。
【0123】
本発明の第二実施形態に係る半導体チップパッケージは、半導体チップと、この半導体チップを封止する前記樹脂組成物の硬化物とを含む。このような半導体チップパッケージでは、通常、樹脂組成物の硬化物は封止層として機能する。第二実施形態に係る半導体チップパッケージとしては、例えば、Fan-out型WLPが挙げられる。
【0124】
このような半導体チップパッケージの製造方法は、
(A)基材に仮固定フィルムを積層する工程、
(B)半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程、
(C)半導体チップ上に封止層を形成する工程、
(D)基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程、
(E)半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程、
(F)再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程、並びに、
(G)再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程、
を含む。また、前記の半導体チップパッケージの製造方法は、
(H)複数の半導体チップパッケージを、個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程
を含んでいてもよい。
【0125】
(工程(A))
工程(A)は、基材に仮固定フィルムを積層する工程である。基材と仮固定フィルムとの積層条件は、回路基板の製造方法における基材と樹脂シートとの積層条件と同様でありうる。
【0126】
基材としては、例えば、シリコンウェハ;ガラスウェハ;ガラス基板;銅、チタン、ステンレス、冷間圧延鋼板(SPCC)等の金属基板;FR-4基板等の、ガラス繊維にエポキシ樹脂等をしみこませ熱硬化処理した基板;BT樹脂等のビスマレイミドトリアジン樹脂からなる基板;などが挙げられる。
【0127】
仮固定フィルムは、半導体チップから剥離でき、且つ、半導体チップを仮固定することができる任意の材料を用いうる。市販品としては、日東電工社製「リヴァアルファ」等が挙げられる。
【0128】
(工程(B))
工程(B)は、半導体チップを、仮固定フィルム上に仮固定する工程である。半導体チップの仮固定は、例えば、フリップチップボンダー、ダイボンダー等の装置を用いて行うことができる。半導体チップの配置のレイアウト及び配置数は、仮固定フィルムの形状、大きさ、目的とする半導体チップパッケージの生産数等に応じて適切に設定できる。例えば、複数行で、かつ複数列のマトリックス状に半導体チップを整列させて、仮固定してもよい。
【0129】
(工程(C))
工程(C)は、半導体チップ上に封止層を形成する工程である。封止層は、上述した樹脂組成物の硬化物によって形成する。封止層は、通常、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成する工程と、この樹脂組成物層を熱硬化させて封止層を形成する工程とを含む方法で形成する。
【0130】
樹脂組成物層の形成は、圧縮成型法によって行うことが好ましい。圧縮成型法では、通常、半導体チップ及び樹脂組成物を型に配置し、その型内で樹脂組成物に圧力及び必要に応じて熱を加えて、半導体チップを覆う樹脂組成物層を形成する。
【0131】
圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしうる。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。また、前記のように仮固定フィルム上に仮固定された半導体チップに、樹脂組成物を塗布する。樹脂組成物を塗布された半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に、下型に取り付ける。その後、上型と下型とを型締めして、樹脂組成物に熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0132】
また、圧縮成型法の具体的な操作は、例えば、下記のようにしてもよい。圧縮成型用の型として、上型及び下型を用意する。下型に、樹脂組成物を載せる。また、上型に、半導体チップを、基材及び仮固定フィルムと一緒に取り付ける。その後、下型に載った樹脂組成物が上型に取り付けられた半導体チップに接するように上型と下型とを型締めし、熱及び圧力を加えて、圧縮成型を行う。
【0133】
成型条件は、樹脂組成物の組成により異なり、良好な封止が達成されるように適切な条件を採用できる。例えば、成型時の型の温度は、好ましくは70℃以上、より好ましくは80℃以上、特に好ましくは90℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、成型時に加える圧力は、好ましくは1MPa以上、より好ましくは3MPa以上、特に好ましくは5MPa以上であり、好ましくは50MPa以下、より好ましくは30MPa以下、特に好ましくは20MPa以下である。キュアタイムは、好ましくは1分以上、より好ましくは2分以上、特に好ましくは3分以上であり、好ましくは60分以下、より好ましくは30分以下、特に好ましくは20分以下である。通常、樹脂組成物層の形成後、型は取り外される。型の取り外しは、樹脂組成物層の熱硬化前に行ってもよく、熱硬化後に行ってもよい。
【0134】
樹脂組成物層の形成は、樹脂シートと半導体チップとを積層することによって行ってもよい。例えば、樹脂シートの樹脂組成物層と半導体チップとを加熱圧着することにより、半導体チップ上に樹脂組成物層を形成することができる。樹脂シートと半導体チップとの積層は、通常、基材の代わりに半導体チップを用いて、回路基板の製造方法における樹脂シートと基材との積層と同様にして行うことができる。
【0135】
半導体チップ上に樹脂組成物層を形成した後で、この樹脂組成物層を熱硬化させて、半導体チップを覆う封止層を得る。これにより、樹脂組成物の硬化物による半導体チップの封止が行われる。樹脂組成物層の熱硬化条件は、回路基板の製造方法における樹脂組成物層の熱硬化条件と同じ条件を採用してもよい。さらに、樹脂組成物層を熱硬化させる前に、樹脂組成物層に対して、硬化温度よりも低い温度で加熱する予備加熱処理を施してもよい。この予備加熱処理の処理条件は、回路基板の製造方法における予備加熱処理と同じ条件を採用してもよい。
【0136】
(工程(D))
工程(D)は、基材及び仮固定フィルムを半導体チップから剥離する工程である。剥離方法は、仮固定フィルムの材質に応じた適切な方法を採用することが望ましい。剥離方法としては、例えば、仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法が挙げられる。また、剥離方法としては、例えば、基材を通して仮固定フィルムに紫外線を照射して、仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法が挙げられる。
【0137】
仮固定フィルムを加熱、発泡又は膨張させて剥離する方法において、加熱条件は、通常、100℃~250℃で1秒間~90秒間又は5分間~15分間である。また、紫外線を照射して仮固定フィルムの粘着力を低下させて剥離する方法において、紫外線の照射量は、通常、10mJ/cm2~1000mJ/cm2である。
【0138】
(工程(E))
工程(E)は、半導体チップの基材及び仮固定フィルムを剥離した面に、絶縁層としての再配線形成層を形成する工程である。
【0139】
再配線形成層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、この熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0140】
再配線形成層を形成した後、半導体チップと再配線層とを層間接続するために、再配線形成層にビアホールを形成してもよい。
【0141】
再配線形成層の材料が感光性樹脂である場合のビアホールの形成方法では、通常、再配線形成層の表面に、マスクパターンを通して活性エネルギー線を照射して、照射部の再配線形成層を光硬化させる。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、X線等が挙げられ、特に紫外線が好ましい。紫外線の照射量及び照射時間は、感光性樹脂に応じて適切に設定できる。露光方法としては、例えば、マスクパターンを再配線形成層に密着させて露光する接触露光法、マスクパターンを再配線形成層に密着させずに平行光線を使用して露光する非接触露光法、などが挙げられる。
【0142】
再配線形成層を光硬化させた後で、再配線形成層を現像し、未露光部を除去して、ビアホールを形成する。現像は、ウェット現像、ドライ現像のいずれを行ってもよい。現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング方式、スクラッピング方式等が挙げられ、解像性の観点から、パドル方式が好適である。
【0143】
再配線形成層の材料が熱硬化性樹脂である場合のビアホールの形成方法としては、例えば、レーザー照射、エッチング、メカニカルドリリング等が挙げられる。中でも、レーザー照射が好ましい。レーザー照射は、炭酸ガスレーザー、UV-YAGレーザー、エキシマレーザー等の光源を用いる適切なレーザー加工機を用いて行うことができる。
【0144】
ビアホールの形状は、特に限定されないが、一般的には円形(略円形)とされる。ビアホールのトップ径は、好ましくは50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。ここで、ビアホールのトップ径とは、再配線形成層の表面でのビアホールの開口の直径をいう。
【0145】
(工程(F))
工程(F)は、再配線形成層上に、導体層としての再配線層を形成する工程である。再配線形成層上に再配線層を形成する方法は、回路基板の製造方法における絶縁層上への導体層の形成方法と同様でありうる。また、工程(E)及び工程(F)を繰り返し行い、再配線層及び再配線形成層を交互に積み上げて(ビルドアップ)もよい。
【0146】
(工程(G))
工程(G)は、再配線層上にソルダーレジスト層を形成する工程である。ソルダーレジスト層の材料は、絶縁性を有する任意の材料を用いることができる。中でも、半導体チップパッケージの製造のしやすさの観点から、感光性樹脂及び熱硬化性樹脂が好ましい。また、熱硬化性樹脂として、本発明の樹脂組成物を用いてもよい。
【0147】
また、工程(G)では、必要に応じて、バンプを形成するバンピング加工を行ってもよい。バンピング加工は、半田ボール、半田めっきなどの方法で行うことができる。また、バンピング加工におけるビアホールの形成は、工程(E)と同様に行うことができる。
【0148】
(工程(H))
半導体チップパッケージの製造方法は、工程(A)~(G)以外に、工程(H)を含んでいてもよい。工程(H)は、複数の半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングし、個片化する工程である。半導体チップパッケージを個々の半導体チップパッケージにダイシングする方法は特に限定されない。
【0149】
<半導体装置>
半導体装置は、半導体チップパッケージを備える。半導体装置としては、例えば、電気製品(例えば、コンピューター、携帯電話、スマートフォン、タブレット型デバイス、ウェラブルデバイス、デジタルカメラ、医療機器、及びテレビ等)及び乗物(例えば、自動二輪車、自動車、電車、船舶及び航空機等)等に供される各種半導体装置が挙げられる。
【実施例】
【0150】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0151】
<実施例1>
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3950L」、エポキシ当量95g/eq.)10部、チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)10部、球形シリカ(平均粒径6.0μm、最大カット径20μm、比表面積4.8m2/g、KBM573(信越化学工業社製、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で処理されたもの)100部、ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0152】
<実施例2>
ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部の代わりに、リン系硬化促進剤(北興化学社製「TPP」、トリフェニルホスフィン)0.2部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0153】
<実施例3>
ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部の代わりに、リン系硬化促進剤(北興化学社製「TBP-3S」、テトラブチルホスホニウムハイドロジェンヘキサヒドロフタレート)0.36部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0154】
<実施例4>
ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部の代わりに、リン系硬化促進剤(北興化学社製「TBP-3PC」、テトラブチルホスホニウム-2,6-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノラート)0.46部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0155】
<実施例5>
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3950L」、エポキシ当量95g/eq.)6部、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「604」、エポキシ当量120g/eq.)3部、リシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3980S」、エポキシ当量115g/eq.)1部、チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)10部、球形シリカ(平均粒径6.0μm、最大カット径20μm、比表面積4.8m2/g、KBM573(信越化学工業社製、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で処理されたもの)100部、ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0156】
<実施例6>
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3950L」、エポキシ当量95g/eq.)6部、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「828EL」、エポキシ当量189g/eq.)10部、チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)5部、球形シリカ(平均粒径6.0μm、最大カット径20μm、比表面積4.8m2/g、KBM573(信越化学工業社製、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で処理されたもの)80部、ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0157】
<実施例7>
チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)の使用量を10部から8部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0158】
<実施例8>
チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)の使用量を10部から6部に変更したこと、球形シリカ(平均粒径6.0μm、最大カット径20μm、比表面積4.8m2/g、KBM573(信越化学工業社製、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で処理されたもの)の使用量を100部から90部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0159】
<実施例9>
チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)の使用量を10部から4部に変更したこと、球形シリカ(平均粒径6.0μm、最大カット径20μm、比表面積4.8m2/g、KBM573(信越化学工業社製、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で処理されたもの)の使用量を100部から80部に変更したこと、ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)の使用料を0.4部から0.2部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0160】
<実施例10>
チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)10部の代わりに、チオール系硬化剤(SC有機化学社製「PEMP」、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、チオール当量122g/eq.)10部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0161】
<実施例11>
チオール系硬化剤(味の素ファインテクノ社製「TMPIC」、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、チオール当量117g/eq.)10部の代わりに、チオール系硬化剤(SC有機化学社製ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピル)エーテル、チオール当量119g/eq.)4部を使用したこと以外は、実施例9と同様にして樹脂組成物を得た。
【0162】
<実施例12>
ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部の代わりに、イミダゾール系硬化促進剤(四国化成工業社製「2MZA-PW」、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-S-トリアジン)0.2部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0163】
<比較例1>
ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部の代わりに、アミン系硬化促進剤(サンアプロ社製「SA-102」、DBU塩)0.22部を使用したこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物を得た。
【0164】
<比較例2>
グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ADEKA社製「EP3950L」、エポキシ当量95g/eq.)10部、酸無水物硬化剤(新日本理化社製「HNA-100」、酸無水物当量179g/eq.)15部、球形シリカ(平均粒径6.0μm、最大カット径20μm、比表面積4.8m2/g、KBM573(信越化学工業社製、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)で処理されたもの)130部、ウレア系硬化促進剤(サンアプロ社製「U-CAT3512T」、芳香族ジメチルウレア)0.4部を、ミキサーを用いて均一に分散して、樹脂組成物を得た。
【0165】
<試験例1:示差走査熱量測定(DSC)>
実施例および比較例で製造した樹脂組成物を試料容器に10mg量り取った。試料容器にふたをし、示差走査熱量測定装置に装着して5℃/分の昇温速度で25℃~280℃の範囲で測定を行い、時間軸の示差走査熱量曲線(DSC曲線)を得た。得られたDSC曲線の変曲点における接線とベースラインとの交点の温度を硬化開始温度とした。また、最も低温側に位置するピークトップを示す温度を反応ピーク温度とした。
【0166】
<試験例2:保存安定性の評価>
実施例および比較例で製造した樹脂組成物を約5g、プラスチックの容器に密閉して温度25℃/湿度60%の恒温室に所定の時間放置した後、開封してスパチュラで攪拌することで流動性を確認した。12時間未満で攪拌不能となったものを「×」、12時間以上24時間未満で攪拌不能となったものを「△」、24時間以上48時間未満で攪拌不能となったものを「〇」、48時間以上経過しても流動性を示したものを「◎」とした。
【0167】
<試験例3:低温成型性の評価>
12インチSUS板上に、実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、コンプレッションモールド装置(圧力:6MPa、キュアタイム:5分)を用いて圧縮成型して、厚さ300μmの樹脂組成物を得た。モールド温度110℃未満でタック性のない硬化物が得られたものを「◎」、モールド温度110℃以上120℃未満でタック性のない硬化物が得られたものを「〇」、モールド温度120℃でタック性のない硬化物が得られなかったものを「×」とした。
【0168】
<試験例4:耐熱性の評価>
試験例3で得られた樹脂組成物をさらに130℃で2時間加熱し、樹脂組成物を完全硬化させた。得られた硬化物のガラス転移温度(Tg)を示差走査熱量計(DSC)を用いて、窒素雰囲気下で測定した。昇温速度は5℃/分とし、測定温度範囲は25℃から280℃とした。JIS K 7121に記載の方法に基づき、DSC曲線が階段状変化を示す部分の中間点を硬化物のTg(放置前Tg)とした。Tgが100℃以上のものを「◎」、80℃以上100℃未満のものを「〇」、60℃以上80℃未満のものを「△」、60℃未満のものを「×」とした。
【0169】
<試験例5:銅密着性の評価>
実施例及び比較例で製造した樹脂組成物を、銅箔のシャイニー面に乗せた状態でコンプレッションモールド装置(圧力:6MPa、キュアタイム:5分)を用いて、12インチSUS板上に圧縮成型し、厚さ300μmの銅箔付き樹脂組成物を形成した。なお、モールド温度は下記表1に記載の条件を採用した。その後130℃で2時間加熱して樹脂組成物を熱硬化させた。なお、比較例2についてはコンプレッションモールドのキュアタイムを15分とし、その後180℃で90分加熱して樹脂組成物を硬化させた。得られた銅箔付きの樹脂組成物の硬化物を1cm角に切断し、得られた銅箔付き硬化物板の銅箔マット面に対して垂直にφ5.8mmの接着剤付きstud pinを立て、さらに同硬化物板の硬化物側に接着剤付きバッキングプレートを重ねた状態で150℃で60分加熱し、stud pin、銅箔付き硬化物板およびバッキングプレートを接着した試験片を作成した。得られた試験片をQUAD GROUP社製垂直引張型試験機ROMULUSを使用して、試験スピード0.1Kg/secで垂直引っ張り試験の測定を行った。5個の試験片について測定を行い、平均値を算出した。接着強度が100Kgf/cm2以上であったものを「〇」、100Kgf/cm2未満であったものを「×」とした。
【0170】
実施例及び比較例の樹脂組成物の不揮発成分及びその使用量、並びに試験例の評価結果を下記表1に示す。
【0171】
【0172】
以上の結果より、樹脂組成物の成分としてチオール系硬化剤を使用し、さらに特定の硬化促進剤を使用するか或いは反応開始温度を70℃以上且つ反応ピーク温度を130℃以下とした場合に、低温成形性及び銅密着性に優れることがわかった。