(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】複合紙製容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 3/06 20060101AFI20240109BHJP
B65D 3/00 20060101ALI20240109BHJP
B65D 3/28 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B65D3/06 B
B65D3/00 B
B65D3/28 Z
(21)【出願番号】P 2019162731
(22)【出願日】2019-09-06
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195200(JP,A)
【文献】特開2007-297064(JP,A)
【文献】実開昭59-136416(JP,U)
【文献】特開2019-001494(JP,A)
【文献】特開2015-214368(JP,A)
【文献】実開昭60-084508(JP,U)
【文献】登録実用新案第3153084(JP,U)
【文献】特開2010-069658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/00- 3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底部及び側壁部を有する紙製容器本体と、樹脂製の環状部材から成る複合紙製容器であって、
前記環状部材が、前記紙製容器本体の開口端面及び側壁部の外面の上部を被覆しており、
前記紙製容器本体が、紙を主体とする多層構造であり、該多層構造の最外層が、前記環状部材に対し非接着性又は弱接着性を示す材料から成り、前記多層構造の最内層が、前記環状部材に対し接着性又は弱接着性を示す熱可塑性樹脂から成り、
前記紙製容器本体と、前記環状部材が分離可能であることを特徴とする複合紙製容器。
【請求項2】
前記環状部材には、前記紙製容器本体の開口部を覆う蓋部材との係合のための係合部が形成されている請求項1記載の複合紙製容器。
【請求項3】
前記係合部が、周方向に延びる凹溝又は凸状の螺子部である請求項2記載の複合紙製容器。
【請求項4】
前記多層構造の最外層が、紙基材である請求項1~3の何れかに記載の複合紙製容器。
【請求項5】
前記環状部材が、環状壁と該環状壁の半径方向内方に突出する突出部を有する請求項1~4のいずれかに記載の複合紙製容器。
【請求項6】
前記突出部の幅が、前記紙製容器本体の側壁部の厚みと同じである請求項
5記載の複合紙製容器。
【請求項7】
前記紙製容器本体の側壁部が、開口部に向かって径が増加するテーパ状である請求項1~6の何れかに記載の複合紙製容器。
【請求項8】
請求項1~
7の何れかに記載の複合紙製容器の製造方法であって、
前記紙製容器本体を射出金型に導入し、熱可塑性樹脂を射出することにより、環状部材の成形と、該環状部材を前記紙製容器本体の開口端面及び側壁部の外面の上部と接合することを特徴とする複合紙製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器本体及び該紙製容器本体の開口端部に設置される環状部材から成る複合紙製容器に関するものであり、より詳細には、紙製容器に再密封機能を付与するために設ける樹脂製の環状部材を容易に紙製容器から分離可能な紙製複合容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境保全の傾向から紙製容器の需要が高まっており、紙製容器においても、ガラスや金属、或いはプラスチックから成る容器のように、再密封(リシール)機能を有することが望まれており、再密封するための機構が取り付けられた紙製容器も種々提案されている。
紙製容器にプラスチックから別途成形された螺子部を接合することも提案されており、例えば下記特許文献1には、紙を主体とし、その両面にプラスチック層とその片面にバリア層として珪素酸化物蒸着フィルムと、この蒸着面にプラスチック層を設けてなる積層素材を用いて、胴部および底板からなり、内面が蒸着面のプラスチック層になるようにカップ状に成形し、その胴部の頂部開口部周囲、胴部の重合部、胴部と底板との結合部にプラスチックの保護材を設けた紙容器であって、前記胴部の頂部開口部周囲の保護材外壁にネジ部を設けたことを特徴とするネジ機能付紙容器が提案されている。
【0003】
また下記特許文献2には、紙製カップ容器であって、紙製カップ容器本体、密封シール、密閉蓋部からなり、該紙製カップ容器本体は、円形の底部と、側面を形成する円筒形の胴部とからなり、該円筒形胴部の上部は、円形のカップリムが紙製カップ容器本体の開口部を形成しており、該密封シールは、その周縁部において紙製カップ容器本体の開口部のカップリムに接合して、紙製カップ容器本体を密封し、該密閉蓋部は、密閉蓋とプラスチックリングからなり、密閉蓋は紙製カップ容器の開口部とカップリムとを覆って配置され、該プラスチックリングは、紙製カップ容器本体の開口部の外側でカップリムより下方に配置されて、胴部外側を周回する形状で接合されており、該密閉蓋の内周と、該プラスチックリングの外周とは、それぞれ螺子構造を有して、紙製カップ容器本体の開口部のカップリムの下方で螺合することができることを特徴とする、紙製カップ容器が提案されており、前記プラスチックリングがインサートインジェクションによりカップ胴部外側に接合されることが記載されている。
【0004】
上記特許文献1におけるプラスチックの保護材及び特許文献2のプラスチックリングは、紙製容器に設けられた樹脂層と強固に接合されているため、紙製容器から容易に取り外せるものではなく、分別廃棄の点で未だ十分満足するものではなかった。
紙製容器とプラスチック部材の分別廃棄を容易にすることも提案されており、例えば、下記特許文献3には、口栓が融着している紙容器の表側の胴部の面から開口部をまたぐように、トップ面にかけて折り曲げ可能ラインが形成され、注出筒を手でもぎ取ることができることができる紙容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3134776号公報
【文献】特開2019-1494号公報
【文献】特許第6508908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献3に記載された紙容器においては、プラスチック製の口栓の注出筒のみを取り除くだけであり、紙容器にはプラスチック製の台座部分が依然として存在し、紙製容器とプラスチック部材を確実に分離するものではない。
従って本発明の目的は、樹脂製の環状部材を有する複合紙製容器において、接着剤を用いることなく、使用時には環状部材は紙製容器本体にしっかりと接合され、廃棄時には環状部材を容易且つ完全に分離することが可能な複合紙製容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも底部及び側壁部を有する紙製容器本体と、樹脂製の環状部材から成る複合紙製容器であって、前記環状部材が、前記紙製容器本体の開口端面及び側壁部の外面の上部を被覆しており、前記紙製容器本体が、紙を主体とする多層構造であり、該多層構造の最外層が、前記環状部材に対し非接着性又は弱接着性を示す材料から成り、前記多層構造の最内層が、前記環状部材に対し接着性又は弱接着性を示す熱可塑性樹脂から成り、前記紙製容器本体と、前記環状部材が分離可能であることを特徴とする複合紙製容器が提供される。
【0008】
本発明の複合紙製容器においては、
1.前記環状部材には、前記紙製容器本体の開口部を覆う蓋部材との係合のための係合部が形成されていること、
2.前記係合部が、周方向に延びる凹溝又は凸状の螺子部であること、
3.前記多層構造の最外層が、紙基材であること、
4.前記環状部材が、環状壁と該環状壁の半径方向内方に突出する突出部を有すること、
5.前記突出部の幅が、前記紙製容器本体の側壁部の厚みと同じであること、
6.前記紙製容器本体の側壁部が、開口部に向かって径が増加するテーパ状であること、
が好適である。
【0009】
本発明によればまた、上記複合紙製容器の製造方法であって、前記紙製容器本体を射出金型に導入し、熱可塑性樹脂を射出することにより、環状部材の成形と、該環状部材を前記紙製容器本体の開口端面及び側壁部の外面の上部と接合することを特徴とする複合紙製容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複合紙製容器は、容器の使用時においては環状部材が紙製容器本体にしっかりと接合して、環状部材は紙製容器本体から分離することなく一体となって、蓋部材との係合や紙製容器本体の強度を向上させることが可能である。その一方、容器を廃棄する際には、環状部材を紙製容器本体と完全に分離することが可能であり、素材の異なる部材を容易に分別廃棄できる。
また環状部材は、紙製容器本体の開口部付近に形成されていることにより、蓋部材との螺子係合などの係合部を形成することが可能であり、紙製容器にリシール機能を付与することが可能である。
更に本発明の複合紙製容器の製造方法によれば、環状部材の成形と、環状部材と紙製容器本体を上述した疑似接着状態となるように一体化することを同時に行うことが可能であり、上述した作用効果を有する本発明の複合紙製容器を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の複合容器の一例を示す断面図である。
【
図3】
図2に示したX部分の他の例を示す拡大断面図である。
【
図4】実施例1で成形した複合紙容器の開口端部付近の断面写真である。
【
図5】
図4のX部分を拡大して示す断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(複合紙製容器)
本発明の複合紙製容器を添付図面
図1及び
図1のX部分を拡大して示す
図2に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一例の複合紙製容器1は、紙製容器本体2、及び紙製容器本体2の開口部近傍で、紙製容器本体を外側からタガ締めするように位置する、紙製容器本体2とは別体の環状部材10とから成っている。
紙製容器本体2は、底部3及び側壁部4から成り、側壁部4の上方が開口部5として形成されている。紙製容器本体は、
図2から明らかなように、紙基材2a及び耐湿性を有する熱可塑性樹脂から成る内層2bを有する多層構造を有している。
環状部材10は、環状壁11及び環状壁11の上端から半径方向内方に突出する突出部12から成っている。
図1から明らかなように、環状壁11は、前述した紙製容器本体2の側壁部4の上方、すなわち開口部5付近の外面と接触する内径を有しており、突出部12は、紙製容器本体2の開口部5の先端面(開口端面)6と接触するように形成されている。
紙製容器本体の側壁部上方外面及び開口端面を、剛性を有する環状部材が覆うことにより、剛性が乏しい紙製容器本体の開口部を補強することができる。
【0013】
上述したとおり、紙製容器本体2と環状部材10は、紙製容器2の紙基材2aと、環状部材10の熱可塑性樹脂から成る環状壁11の内面が接触しており、これらは互いに非接着性の材料で形成されている。後述するように、本発明においては、溶融状態にある熱可塑性樹脂を紙製容器本体が予め設置された金型内に射出するインサート成形により、環状部材の成形と紙製容器本体との一体化を同時に行うことが好ましく、これにより、溶融状態にある熱可塑性樹脂が紙製容器本体の紙基材2aの表面の凹凸に嵌合、或いは紙の繊維間の空隙に含浸し、冷却固化されると、溶融状態にある熱可塑性樹脂は紙製容器本体を外側からタガ締めするように収縮し、両者は隙間なく一体化され、一時的に接着した状態(疑似接着状態)となる。その一方、両者は互いに非接着性の材料で形成されていることから、両者を分離するための外力が作用すれば容易に剥離する。
また紙製容器本体2は、内容物を収納する内面に耐湿性を有する熱可塑性樹脂から成る内層2bを有していることが好ましい。この内層2bは、紙製容器本体の先端面6の半径方向内側において、環状部材10の突出部12と接着性(弱接着~強接着)を有しており、かかる接着部分13と上述した紙製容器本体2の側壁部4の外面と環状部材10の環状側壁11の内面との疑似接着状態とが相俟って、環状部材10は紙製容器本体2にしっかりと固定された状態になる。
その一方、紙製容器本体2と環状部材10においては、接着部分13は、紙製容器本体の先端面6の内面側部分のごく一部分であることから、接着部分13が強接着状態であったとしても、環状部材10を分離するために環状部材の側壁部4の下端に上方或いは斜め上方の外力を加えることにより、環状部材10は容易に紙製容器本体2から分離することが可能になる。そのため、内容物を使用後、紙製容器本体から熱可塑性樹脂から成る環状部材を完全に取り除くことができ、容易に分別廃棄することができる。
【0014】
図3は、本発明の複合紙製容器の別の態様を説明するための図であり、この態様においては、紙製容器本体2が、紙基材2aと、耐湿性熱可塑性樹脂から成る内層2bと、更に紙基材2aの外面側に、紙製容器本体を構成する紙基材2aと環状部材10と弱接着性を有する材料から成る外層2cを有する多層構造から成っている。紙製容器本体2の外層2cが環状部材10と弱接着性を有する材料から成ることにより、環状部材10を容易に紙製容器本体2から分離することができる。また前述したとおり、紙製容器本体2が設置された金型内に外層2を構成する溶融状態にある熱可塑性樹脂を射出し、冷却固化し収縮することにより、環状部材10は紙製容器本体側壁部4をタガ締めし、環状部材の環状壁11内面と外層2cは隙間なく一体化される。また紙製容器本体の内面2bと環状部材10の突出部12が接着部分13により固定されている。従って、
図3に示す態様においても、
図2に示した態様と同様に、外力が作用されない限り、環状部材が紙製容器本体から分離されることがないと共に、廃棄の際には環状部材10の側壁部11の下端を上方又は斜め上方に引き上げることにより紙製容器本体2と容易に分離することができる。
更に図示してはいないが、紙容器本体に剥離の起点となる位置にミシン目やスリットなどの弱化部を設けたり、環状壁の下端に指かかりのための突起部を設ける、或いは使用者が押込み部の視認ができるように表示を設ける等、とすることにより、環状部材の分離がより容易になる。前記弱化部は、紙製容器本体外面から開口端面6にかけて形成してもよい。紙製容器本体の押込み部を押し込んだときに、剥離の起点が形成されると同時に弱化部が破断し、紙製容器本体外面と環状部材10の間に隙間が確保されるので、環状部材10の分離がさらに容易になる。
【0015】
本発明において、環状部材の側壁部外面には、紙製容器本体の開口部を覆う蓋部材との係合のための係合部が形成されていることが好適である。すなわち、紙製容器本体は薄肉で剛性に乏しいことから、それ自体に蓋部材との係合のための係合部を形成することは困難であるが、紙製容器本体に取り付けられる環状部材は、熱可塑性樹脂から成る剛性のある部材であることから、側壁部外面に周方向に延びる凹溝或いは凸条の係合部や、
図2及び
図3に示したように凸状の螺子条14から成る係合部等を形成することができ、しかもこれらの係合部は環状部材の成形と同時に容易に形成することができる。これにより紙製容器においても、蓋部材のスカート部内面に、周方向に延びる凸条或いは凹溝の係合部を有する蓋や螺子蓋を組み合わせることが可能となり、紙製容器にリシール性を付与することが可能になる。
また蓋部材として、可撓性を有するシート状の蓋部材を使用する場合には、環状部材10の突出部11の上面にシート状の蓋部材を接合することができ、紙製容器本体にフランジを形成することなく、蓋部材を確実に固定することが可能となる。
【0016】
[紙製容器本体]
本発明の紙製複合容器に用いられる紙製容器本体は、紙を主体とする材料から成り、紙製容器の用途にもよるが、液体を含有する内容物を収納する場合には、少なくとも容器内面となる側に耐湿性の熱可塑性樹脂から成る内層を有する積層体から成ることが好ましい。また容器内面にこのような耐湿性熱可塑性樹脂から成る内層を有することにより、前述したように、環状部材との間に接着部分を形成することが可能となり、環状部材と紙製容器本体の疑似接着状態をより強固な状態にすることができる。
また前述したとおり、容器外面となる側に、紙製容器を構成する紙基材及び環状部材に対して弱接着性となる材料から成る層を有する積層体であってもよい。
【0017】
前記紙基材としては、コートボール、カード紙、アイボリー紙、マニラボール等の板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、クラフト紙、上質紙等の公知の紙基材を用いることができる。また、紙基材の坪量は、紙製容器の形態に応じて適宜決定できるが、200g/m2~350g/m2の範囲にあることが好適である。
また前記内層を構成する耐湿性を有する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂等を使用することができ、特にオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。オレフィン系樹脂としては、低-、中-、高-密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体などエチレン系重合体、ホモポリプロピレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体などのプロピレン系重合体を例示することができる。
更に、前記外層を構成する熱可塑性樹脂としては、後述する環状部材を構成する熱可塑性樹脂の種類によって適宜選択することができるが、環状部材を構成する熱可塑性樹脂と異なる種類の熱可塑性樹脂を使用することにより、弱接着とすることができる。具体的には、例えば、内層及び環状部材がポリエチレンから成る場合には、外層をポリエチレンとポリプロピレンのブレンド物から構成することにより、弱接着状態とすることができる。或いは紙製容器本体の内層及び外層をポリエチレンから形成し、環状部材をポリエチレンとポリプロピレンのブレンド物から形成することにより、すべての接合面が弱接着状態となり、環状部材を紙製容器から容易に分離することが可能となる。
また本発明の紙製容器本体においては、上述した内外層のみならず、例えば、紙基材と上記内層又は上記外層の間に、接着樹脂層、金属箔等の他の層を有していてもよい。
【0018】
本発明の複合容器において、紙製容器本体の形状は、少なくとも底部及び側壁部を有し、側壁部の上端が開口部となる形態である限り、特に限定されず、水平断面が円形、三角形、多角形等種々の形状を取ることができ、また柱状以外にも円錐台等の形状であってもよい。
紙製容器本体は、側壁部に貼り合せのためのオーバーラップ部が形成されていてもよく、環状部材が形成されることにより、オーバーラップ部の段差の影響を軽減することができ、蓋部材とのスムーズな係合が可能になる。
【0019】
[環状部材]
本発明の複合紙製容器に用いる環状部材は、紙製容器本体の開口端面及び側壁部外面を被覆し得る限り、種々の形態をとることができ、例えば、図に示した具体例のように、環状壁と環状壁の上端から半径方向内方に突出する突出部を有する態様の他、環状壁の上端から半径方向外方に突出するフランジ部が更に形成されている態様等を採用することもできる。
環状壁の外面には、前述したとおり、螺子部等の係合部を有することが好ましく、これにより蓋部材との確実な係合が可能となり、紙製容器にリシール機能を付与することが可能となる。また図に示した具体例では、係合部として環状部材の環状壁に凸状の螺子条が形成されていたが、これに限定されず、蓋部材に凸状の螺子条が形成され、環状壁に凹状の螺子溝が形成されていてもよい、また係合部は螺子係合に限定されず、環状壁及び蓋部材のそれぞれに径方向に突出する環状突部が形成されこれらが上下方向に係合する係合部であってもよいし、或いは周方向に係合するラチェット状の係合部であってもよい。
【0020】
環状部材は、紙製容器本体に分離可能に接合し得る限り種々の材料から成形することができるが、本発明においては、環状部材の成形と環状部材と紙製容器本体との一体化を同時に行うことが可能なインサート成形によることとが特に好適であることから、インサート成形に対応可能な熱可塑性樹脂から成ることが望ましい。環状部材を形成し得る熱可塑性樹脂は、紙製容器本体の内層との関係から前述したとおりである。
環状部材の環状壁の高さは、特に制限はないが、5~15mmの範囲にあることが好適である。上記範囲よりも小さい場合には、係合部の形成が困難になったり、或いは紙製容器本体と環状部材の環状壁の疑似接着状態を発現可能な接合面積が小さく、環状部材が意図外に紙製容器本体から分離されてしまうおそれがある。その一方上記範囲よりも大きい場合には、経済性に劣るだけでなく、廃棄時の分離が困難になるおそれもある。また環状部材の突出部の幅は、紙製容器本体の側壁部の厚みとほぼ同じであることが好適であるが、環状部材の取り外しが可能である限り、紙製容器本体の内面側に多少延びていてもよい。
【0021】
(複合紙製容器の製造方法)
本発明の複合紙製容器は、それぞれ別に成形された環状部材及び紙製容器本体を、互いに容易に分離し得る弱接着性を発現可能な接着性樹脂を介して接合して製造することもできるが、好適には、環状部材の成形と、環状部材の紙製容器本体への一体化を同時に行うインサート成形により製造することが好ましい。これにより溶融状態にある熱可塑性樹脂が紙基材の繊維間の空隙に含浸し、冷却固化し収縮することにより、環状部材が紙製容器本体を外側からタガ締めして両者を隙間なく一体化でき、接着剤を用いることなく所望の疑似接着状態を容易に発現できる。
すなわち、予め別工程で成形された紙製容器本体を射出金型内に導入して、紙製容器本体の側壁部外面及び側壁部上端面(開口端面)と金型で、環状部材を形成するためのキャビティが形成される。このキャビティ内に環状部材を形成する溶融状態にある熱可塑性樹脂を供給することにより、環状部材の成形と環状部材の紙製容器本体との一体化が同時に行われ、本発明の複合紙製容器が成形できる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
一般的にオフィス用として市販されているカール部外径72mm、ハイト80mm、内容量205mlの内面ポリエチレンラミネートされた紙コップのカール部分をハサミで切って取り除き、射出金型にインサートし、型締め力45tonで型締めを行い、射出温度180℃、射出速度8mm/sec、 射出圧力10MPaにて溶融樹脂を射出して環状部材を成形し、複合紙製容器とした。なお環状部材は直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー製ネオゼックス 45200)から成る。成形した複合紙製容器を、開口端部付近の断面写真である
図4及び
図4のX部分を拡大して示す
図5において説明する。
図4に示すように、紙基材2aの内面側には熱可塑性樹脂から成る内層2bが存在しており、外面側には環状部材10環状壁11が存在している。
図5から明らかなように環状部材10の環状壁11と紙基材2aの界面は凹凸のある状態となっており、アンカー効果の発現が推察される。
成形した複合紙製容器における紙コップの環状部材のすぐ下の部分を押込み、紙コップと環状部材の剥離起点を作成した後、徐々に周方向に剥がしていくことにより、完全に紙コップから環状部材を分離できた。なお環状部材を容器の軸方向に引っ張ったり、周方向にねじるだけでは紙コップからは分離できなかった。一度分離した環状部材は、成形収縮により縮径しているため、紙コップの元の位置には嵌らなかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、係合部を形成可能な熱可塑性樹脂から成る環状部材を紙製容器本体に接合することにより、紙製容器にリシール性を付与することが可能であると共に、廃棄時には、熱可塑性樹脂から成る環状部材を紙製容器本体から容易に取り除くことが可能であり、分別廃棄性が要求される包装容器に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0024】
1 複合容器、2 紙製容器本体、3 底部、4 側壁部、5 開口部、6 開口端面、10 環状部材、11 環状壁、12 突出部、13 接着部分、14 螺子条。