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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】複合紙製容器及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/74 20060101AFI20240109BHJP
   B65D 3/00 20060101ALI20240109BHJP
   B65D 3/06 20060101ALI20240109BHJP
   B65D 3/28 20060101ALI20240109BHJP
   B65D 25/48 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B65D5/74 020A
B65D3/00 B
B65D3/06 B
B65D3/28 Z
B65D25/48
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019162732
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021041934
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003768
【氏名又は名称】東洋製罐グループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(72)【発明者】
【氏名】東 利房
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】実公平06-035941(JP,Y2)
【文献】特開2006-069557(JP,A)
【文献】特開2011-121628(JP,A)
【文献】特開2015-061795(JP,A)
【文献】登録実用新案第3153084(JP,U)
【文献】特開2010-069658(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/74
B65D 3/00- 3/30
B65D 25/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも底部及び側壁部を有する紙製容器本体と、樹脂製部材とから成る複合紙製容器であって、
前記紙製容器本体は、内面に熱可塑性樹脂から成る層を有し、
前記樹脂製部材は、紙製容器本体との接合面となる台座、該台座から容器外方に延びる注出筒、及び前記台座から容器内方に延びる環状嵌合部とから成るスパウトであり、
前記台座が容器本体と疑似接着状態であり、
前記環状嵌合部が、前記紙製容器本体の端部を被覆し且つ内面の熱可塑性樹脂から成る層と強接着状態であり、
前記注出筒の外面には、螺子部が形成されており、
前記樹脂製部材は、前記紙製容器本体の少なくとも一部で剥離可能に接合されており、該接合界面において、紙製容器本体の表面凹部に樹脂製部材を構成する樹脂が充填されていることを特徴とする複合紙製容器。
【請求項2】
前記注出筒と前記環状嵌合部は、同一の内径及び外径を有する請求項1記載の複合紙製容器。
【請求項3】
前記環状嵌合部のスパウト軸方向の高さが、前記紙製容器本体の側壁部の厚みと同じである請求項1又は2記載の複合紙製容器。
【請求項4】
前記紙製容器本体における前記台座との接合面が0.5μm以上の表面粗さ(Ra)を有する請求項1~の何れかに記載の複合紙製容器。
【請求項5】
請求項1~の何れかに記載の複合紙製容器の製造方法であって、
前記紙製容器本体を射出金型に導入し、熱可塑性樹脂を射出することにより、該熱可塑性樹脂から成る樹脂製部材の成形と紙製容器本体の接合を行うことを特徴とする複合紙製容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙製容器本体及び樹脂製部材とから成る複合紙製容器に関するものであり、より詳細には、樹脂製部材を容易に紙製容器本体から分離可能な紙製複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境保全の傾向から紙製容器の需要が高まっており、紙製容器においても、ガラスや金属、或いはプラスチックから成る容器のように、再密封(リシール)機能を有することが望まれており、再密封するための機構が取り付けられた紙製容器も種々提案されている。
紙製容器にプラスチックから別途成形された螺子部を接合することも提案されており、例えば下記特許文献1には、紙を主体とし、その両面にプラスチック層とその片面にバリア層として珪素酸化物蒸着フィルムと、この蒸着面にプラスチック層を設けてなる積層素材を用いて、胴部および底板からなり、内面が蒸着面のプラスチック層になるようにカップ状に成形し、その胴部の頂部開口部周囲、胴部の重合部、胴部と底板との結合部にプラスチックの保護材を設けた紙容器であって、前記胴部の頂部開口部周囲の保護材外壁にネジ部を設けたことを特徴とするネジ機能付紙容器が提案されている。
【0003】
また下記特許文献2には、紙製カップ容器であって、紙製カップ容器本体、密封シール、密閉蓋部からなり、該紙製カップ容器本体は、円形の底部と、側面を形成する円筒形の胴部とからなり、該円筒形胴部の上部は、円形のカップリムが紙製カップ容器本体の開口部を形成しており、該密封シールは、その周縁部において紙製カップ容器本体の開口部のカップリムに接合して、紙製カップ容器本体を密封し、該密閉蓋部は、密閉蓋とプラスチックリングからなり、密閉蓋は紙製カップ容器の開口部とカップリムとを覆って配置され、該プラスチックリングは、紙製カップ容器本体の開口部の外側でカップリムより下方に配置されて、胴部外側を周回する形状で接合されており、該密閉蓋の内周と、該プラスチックリングの外周とは、それぞれ螺子構造を有して、紙製カップ容器本体の開口部のカップリムの下方で螺合することができることを特徴とする、紙製カップ容器が提案されており、前記プラスチックリングがインサートインジェクションによりカップ胴部外側に接合されることが記載されている。
【0004】
上記特許文献1におけるプラスチックの保護材及び特許文献2のプラスチックリングは、紙製容器に設けられた樹脂層と強固に接合されているため、紙製容器から容易に取り外せるものではなく、分別廃棄の点で未だ十分満足するものではなかった。
紙製容器とプラスチック部材の分別廃棄を容易にすることも提案されており、例えば、下記特許文献3には、口栓が融着している紙容器の表側の胴部の面から開口部をまたぐように、トップ面にかけて折り曲げ可能ラインが形成され、注出筒を手でもぎ取ることができることができる紙容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3134776号公報
【文献】特開2019-1494号公報
【文献】特許第6508908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献3に記載れた紙容器においては、プラスチック製の口栓の注出筒のみを取り除くだけであり、紙容器にはプラスチック製の台座部分が依然として存在し、紙製容器とプラスチック部材を完全に分離するものではない。従って、台座部分を紙容器から取り外すためには、結局鋏やカッター等を使用せざるを得ず、プラスチック部材と紙容器とを容易に分離することができない。
従って本発明の目的は、樹脂製部材を有する複合紙製容器において、廃棄時に樹脂製部材を容易且つ確実に分離することが可能な複合紙製容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、少なくとも底部及び側壁部を有する紙製容器本体と、樹脂製部材とから成る複合紙製容器であって、前記紙製容器本体は、内面に熱可塑性樹脂から成る層を有し、前記樹脂製部材は、紙製容器本体との接合面となる台座、該台座から容器外方に延びる注出筒、及び前記台座から容器内方に延びる環状嵌合部とから成るスパウトであり、前記台座が容器本体と疑似接着状態であり、前記環状嵌合部が、前記紙製容器本体の端部を被覆し且つ内面の熱可塑性樹脂から成る層と強接着状態であり、前記注出筒の外面には、螺子部が形成されており、前記樹脂製部材は、前記紙製容器本体の少なくとも一部で剥離可能に接合されており、該接合界面において、紙製容器本体の表面凹部に樹脂製部材を構成する樹脂が充填されていることを特徴とする複合紙製容器が提供される。
本発明の複合紙製容器においては、
1.前記注出筒と前記環状嵌合部は、同一の内径及び外径を有すること、
2.前記環状嵌合部のスパウト軸方向の高さが、前記紙製容器本体の側壁部の厚みと同じであること、
3.前記紙製容器本体における前記台座との接合面が0.5μm以上の表面粗さ(Ra)を有すること、
が好適である。
本発明によればまた、上記複合紙製容器の製造方法であって、前記紙製容器本体を射出金型に導入し、熱可塑性樹脂を射出することにより、該熱可塑性樹脂から成る樹脂製部材の成形と紙製容器本体の接合を行うことを特徴とする複合紙製容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の複合紙製容器においては、樹脂製部材の成形及び紙製容器本体との一体化を、樹脂製部材を構成する熱可塑性樹脂を溶融状態で行い、紙製容器本体を構成する紙基材に含浸させて固化することにより、紙基材の表面の凹凸や、或いは紙基材の種類によっては紙を構成する繊維間の空隙(凹部)に、熱可塑性樹脂が充填された状態となり、紙基材のかかる凹部に存在する熱可塑性樹脂がアンカー効果を発現する。そのため、樹脂製部材と複合紙製容器の接合面は互いに非接着性であるにもかかわらず、容易に分離できない状態(疑似接着状態)となり、複合紙製容器を使用している間は、樹脂製部材は紙製容器本体から分離することなく一体性が確保されている。その一方、複合紙製容器を廃棄する際には、樹脂製部材と紙製容器本体は本来非接着であることから、これらを分離する方向に外力を加えることにより、容易に分離することが可能であり、分別廃棄することが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の複合紙製容器の一例を示す断面図である。
図2図1のX部分を拡大して示す断面図である。
図3】本発明の複合紙製容器の他の一例を示す部分断面図である。
図4図3のY部分を拡大して示す断面図である。
図5】実施例1で成形した複合紙容器の開口端部付近の断面写真である。
図6図5のX部分を拡大して示す断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(複合紙製容器)
本発明の複合紙製容器を添付図面図1及び図1のX部分を拡大して示す図2に基づき説明する。
図1に示すように、本発明の一例の複合紙製容器1は、紙製容器本体2、及び紙製容器本体2の開口部に位置し、紙製容器本体2を外側からタガ締めするように位置する別体の環状部材10とから成っている。
紙製容器本体2は、底部3及び側壁部4から成り、側壁部4の上方が開口部5として形成されているカップ型紙容器である。紙製容器本体は、図2から明らかなように、紙基材2a及び耐湿性を有する熱可塑性樹脂から成る内層2bを有する多層構造を有している。
環状部材10は、環状壁11及び環状壁11の上端から半径方向内方に突出する突出部12から成っている。図1から明らかなように、環状壁11は、前述した紙製容器本体2の側壁部4の上方、すなわち開口部5付近の外面と接触する内径を有しており、突出部12は、紙製容器本体2の開口部5の先端面(開口端面)6と接触するように形成されている。また環状壁11の外面には、係合部として凸状の螺子条14が形成されており、蓋部材(図示せず)と係合して、容器のリシール性が確保されている。
紙製容器本体の側壁部を外側からタガ締めするように覆うと共に、開口端面を剛性を有する環状部材が覆うことにより、剛性に乏しい紙製容器本体の開口部を補強することができる。また開口部に限らず、紙製容器本体外面の一部を樹脂製部材により覆い補強することにより、剛性を持たせることが可能となる。すなわち、内容品の残量が減少すると自立性が難しくなる容器形態や、変形しやすい容器形態において、剛性を持たせることで、利便性や外観を保つことができる。
【0011】
上述したとおり、紙製容器本体2と環状部材10は、紙製容器2の紙基材2aと、環状部材10の熱可塑性樹脂から成る環状壁11の内面が接触しており、これらは互いに非接着性の材料で形成されている。前述したとおり、本発明の複合紙製容器においては、溶融状態にある熱可塑性樹脂を紙製容器本体が予め設置された金型内に射出するインサート成形により、環状部材の成形と紙製容器本体との一体化を同時に行っている。これにより、溶融状態にある熱可塑性樹脂が紙製容器本体の紙基材2aの紙を構成する繊維間に含浸し、冷却固化された熱可塑性樹脂は紙基材表面の凹部7内に充填された状態となって、アンカー効果を発現する。また環状部材は冷却により収縮して紙製容器本体を外側からタガ締めする。その結果、両者は隙間なく一体化され、一時的に接着した状態(疑似接着状態)となる。その一方、両者は互いに非接着性の材料で形成されていることから、両者を分離するための外力が作用すれば容易に剥離する。
【0012】
また紙製容器本体2は、内容物を収納する内面に耐湿性を有する熱可塑性樹脂から成る内層2bを有していることが好ましい。この内層2bは、紙製容器本体の先端面6の半径方向内側において、環状部材10の突出部12と接着性(弱接着~強接着)を有しており、かかる接着部分13と上述した紙製容器本体2の側壁部4の外面と環状部材10の環状側壁11の内面との疑似接着状態とが相俟って、環状部材10は紙製容器本体2にしっかりと固定された状態になっている。
その一方、紙製容器本体2と環状部材10の接着部分13は、紙製容器本体の開口端面6の内面側部分のごく一部分であることから、接着部分13が強接着状態であったとしても、環状部材10を分離するために環状部材の側壁部4の下端に上方或いは斜め上方の外力を加えることにより、環状部材10は容易に紙製容器本体2から分離することが可能になる。そのため、内容物を使用後、紙製容器本体から熱可塑性樹脂から成る環状部材を完全に取り除くことができ、容易に分別廃棄することができる。
更に図示していないが、紙容器本体に剥離の起点となる位置にミシン目やスリットなどの弱化部を設けたり、環状壁の下端に指かかりのための突起部設ける、使用者が押込み部を視認できるように表示を設ける等、とすることにより、環状部材の分離がより容易になる。前記弱化部は、下記容器本体から開口端面6にかけて形成してもよい。紙製容器本体の押込み部を押し込んだときに、剥離の起点が形成されると同時に弱化部が破断し、紙製容器本体と環状部材10の間に隙間が確保されるので、環状部材10の分離がさらに容易になる。
【0013】
図3は、本発明の複合紙製容器の他の態様するための部分断面図であり、図4は、図3のY部分を拡大して示す部分断面図である。
図3に示す本発明の複合紙製容器は、紙製容器本体がゲーブルトップ型の紙容器20であり、樹脂製部材がスパウト30から成るものである。
全体を20で表す紙製容器本体は、底部21、側壁部22及び側壁部22の上方に位置する屋根型の斜面23から成っており、斜面23には、スパウトを装着するための開口24が形成されている。この紙製容器本体においても、図4から明らかなように、紙基材22a及び耐湿性を有する熱可塑性樹脂から成る内層22bを有する積層体から成形されている。
全体を1で表すスパウトは、紙製容器本体の斜面23との接合面となる台座31と、この台座31から容器外方に垂直に延びる注出筒32と、容器内方に延びる環状の嵌合部33とから成っており、注出筒32と環状嵌合部33は同一の内径及び外径を有しており、環状嵌合部33の外径は、紙製容器本体の開口24の口径と合致する。また注出筒32の外面には、係合部として凸状の螺子条14が形成されており、蓋部材(図示せず)と係合して、容器のリシール性が確保されている。
【0014】
図4から明らかなように、紙製容器本体20とスパウト30は、紙製容器本体20の紙基材22aとスパウト30の台座31が接触しており、これらは互いに非接着性の材料で形成されているが、図2について説明したとおり、スパウトの成形の際に、溶融状態にある熱可塑性樹脂が紙製容器本体の紙基材22aを構成する繊維間に含浸し、冷却固化された熱可塑性樹脂は紙基材表面の凹部25内に充填された状態となって、アンカー効果を発現する。その結果、両者は隙間なく一体化され、疑似接着状態を発現することが可能となる。その一方、両者は互いに非接着性の材料で形成されていることから、両者を分離するための外力が作用すれば容易に剥離する。
【0015】
また紙製容器本体20は、内容物を収納する内面に耐湿性を有する熱可塑性樹脂から成る内層22bを有しており、この内層22bとスパウト30の環状嵌合部33が接着性(弱接着~強接着)を有しており、かかる接着部分35と上述した紙製容器本体20の紙基材22aとスパウト30の台座31との疑似接着状態とが相俟って、スパウト30は紙製容器本体2にしっかりと固定された状態になっている。また紙製容器本体の端部を被覆しているため、紙基材22aの端部が露出することがない。
その一方、紙製容器本体20とスパウト30の接着部分35は、紙製容器本体の開口端面26の内面側部分のごく一部分であることから、接着部分35が強接着状態であったとしても、スパウト30の注出筒32の半径方向の外力を加えることにより、スパウト30の台座31が容易に紙製容器本体20の斜面23と剥離して、スパウト全体を紙製容器本体から容易に取り除くことが可能となる。
【0016】
本発明において、樹脂製部材には、紙製容器本体の開口部を覆う蓋部材との係合のための係合部が形成されていることが好適である。すなわち、紙製容器本体は薄肉で剛性に乏しいことから、それ自体に蓋部材との係合のための係合部を形成することができないが、紙製容器本体に取り付けられる樹脂製部材は、熱可塑性樹脂から成る剛性のある部材であることから、例えば図1に示す環状部材においては環状壁の外面に、図3に示すスパウトでは注出筒の外面に、周方向に延びる凹溝或いは凸条の係合部や、図に示したように凸状の螺子条14から成る係合部等を形成することができる。しかもこれらの係合部は樹脂製部材の成形と同時に容易に形成することができる。これにより紙製容器においても、蓋部材のスカート部内面に、周方向に延びる凸条或いは凹溝係合部を有する蓋や螺子蓋を組み合わせることが可能となり、紙製容器にリシール性を付与することが可能になる。
また蓋部材として、可撓性を有するシート状の蓋部材を使用する場合には、環状部材10の突出部11の上面にシート状の蓋部材を接合することができ、紙製容器本体にフランジを形成することなく、蓋部材を確実に固定することが可能となる。
【0017】
[紙製容器本体]
本発明の紙製複合容器に用いられる紙製容器本体は、紙を主体とする材料から成り、少なくとも樹脂製部材と接合する面に、樹脂製部材を構成する溶融状態にある熱可塑性樹脂が含浸し、樹脂製部材を構成する熱可塑性樹脂が充填され得る凹部を有することが重要である。すなわち、紙製容器本体に用いる紙基材の種類にもよるが、紙を構成する複数の繊維間には空隙が形成され、この空隙が紙製容器本体の接合表面に凹部として存在し、この凹部に熱可塑性樹脂が充填されることによってアンカー効果が発現される。
このような凹部の程度は用いる紙基材の種類、繊維の目の粗さ等によって異なるが、表面粗さ(Ra)で表して0.5μm以上、特に1.0μm以上の範囲にあることが好適である。なお紙で使用されるベック平滑度で示すと、表面粗さ(Ra)とは一概には一致しないが60秒以下であることが好適である。
また紙製容器本体は、紙製容器の用途にもよるが、液体を含有する内容物を収納する場合には、少なくとも容器内面となる側に耐湿性の熱可塑性樹脂から成る内層を有する積層体であることが好ましい。また容器内面にこのような耐湿性熱可塑性樹脂から成る内層を有することにより、前述したように、樹脂製部材との間に接着部分を形成することが可能となり、樹脂製部材を強固に紙製容器に固定することも可能となる。
更に紙製容器本体の樹脂製部材の接合箇所は、凹部のある紙基材であることが望ましいが、それ以外の箇所では、容器外面にも容器内面と同様の熱可塑性樹脂から成る層を形成することもできる。また樹脂製部材と弱接着の樹脂外層を紙製容器本体外面全面に形成することもできる。
【0018】
前記紙基材としては、コートボール、カード紙、アイボリー紙、マニラボール等の板紙、ミルクカートン原紙、カップ原紙、クラフト紙、上質紙等の公知の紙基材を用いることができる。また、紙基材の坪量は、紙製容器の形態に応じて適宜決定できるが、200g/m~350g/mの範囲にあることが好適である。
また前記内層を構成する耐湿性を有する熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂等を使用することができ、特にオレフィン系樹脂を好適に使用することができる。オレフィン系樹脂としては、低-、中-、高-密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体などエチレン系重合体、ホモポリプロピレン、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体などのプロピレン系重合体を例示することができる。
【0019】
更に、前記外層を構成する熱可塑性樹脂としては、後述する樹脂製部材を構成する熱可塑性樹脂の種類によって適宜選択することができるが、樹脂製部材を構成する熱可塑性樹脂と異なる種類の熱可塑性樹脂を使用することにより、弱接着とすることができる。具体的には、例えば、内層及び環状部材がポリエチレンから成る場合には、外層をポリエチレンとポリプロピレンのブレンド物から構成することにより、弱接着状態とすることができる。或いは紙製容器本体の内層及び外層をポリエチレンから形成し、環状部材をポリエチレンとポリプロピレンのブレンド物から形成することにより、すべての接合面が弱接着状態となり、環状部材を紙製容器から容易に分離することが可能となる。
また本発明の紙製容器本体においては、上述した内外層のみならず、例えば、紙基材と上記内層又は上記外層の間に、接着樹脂層、金属箔等の他の層を有していてもよい。
【0020】
本発明の複合紙製容器において、紙製容器本体の形状は、少なくとも底部及び側壁部を有すればよく、図1に示したように、側壁部の上端が開口部となるカップ型の他、水平断面が円形、三角形、多角形等種々の形状を取ることができ、また柱状以外にも円錐台等の形状であってもよい。また図3に示すように、開口部が孔として紙製容器本体に形成されているものであってもよい。
紙製容器本体は、側壁部に貼り合せのためのオーバーラップ部が形成されていてもよく、図1に示したような環状部材が形成されることにより、オーバーラップ部の段差の影響を軽減することができ、蓋部材とのスムーズな係合が可能になる。
【0021】
[樹脂製部材]
本発明の複合紙製容器に用いる樹脂製部材は、図1に示したように紙製容器本体の開口端面及び側壁部外面を被覆して、紙製容器本体の開口部を補強して係合部やフランジ部を形成し得る環状部材の他、図3に示したように紙製容器本体の開口に嵌合して取り付けられるスパウト、或いは紙製容器本体に形成された孔を覆うように閉塞して、ストロー等の差し込み口となる部材等、種々の形態をとることができる。
樹脂製部材は、紙製容器本体の少なくとも一部に接合されていればよく、例えば図1に示した具体例では、側壁部の上部にのみ環状部材が形成されていたが、側壁部の大部分を覆うように形成してもよい。
また樹脂製部材は、図1及び図3に示したように、螺子部等の係合部を有することが好ましく、これにより、蓋部材との確実な係合が可能となり、紙製容器にリシール機能を付与することが可能となる。また図に示した具体例では、係合部として凸状の螺子条が形成されていたが、これに限定されず、蓋部材に凸状の螺子条が形成され、環状壁に凹状の螺子溝が形成されていてもよい、また係合部は螺子係合に限定されず、環状壁及び蓋部材のそれぞれに径方向に突出する環状突部が形成されこれらが上下方向に係合する係合部であってもよいし、或いは周方向に係合するラチェット状の係合部であってもよい。
樹脂製部材は、インサート成形により成形及び紙製容器本体との一体化が可能な熱可塑性樹脂から成ることが特に好適である。樹脂製部材を形成し得る熱可塑性樹脂は、紙製容器本体の内層との関係から上述したとおりである。
【0022】
(複合紙製容器の製造方法)
本発明の複合紙製容器は、それぞれ別に成形された樹脂製部材及び紙製容器本体を、樹脂製部材の成形と、樹脂製部材の紙製容器本体への一体化を同時に行うインサート成形により製造することが好ましい。すなわち、溶融状態にある熱可塑性樹脂が、紙製容器本体が設置された金型内に射出されることにより、溶融樹脂は射出による圧力をかけられているので、紙基材の繊維間の空隙に容易に含浸する。繊維間に含浸した溶融熱可塑性樹脂が冷却固化されると、樹脂製部材の紙基材との接合面においては、樹脂製部材は表面凹部に充填された状態となり、隙間なく一体化されることから、所望の疑似接着状態を発現できる。また樹脂製部材が、図1に示したような紙製容器本体の外側に位置する環状部材である場合には、溶融熱可塑性樹脂が冷却することにより収縮し、紙製容器本体を外側からタガ締めすることから、環状部材と紙製容器本体の疑似接着状態はより強固となる。
【実施例
【0023】
(実施例1)
一般的にオフィス用として市販されているカール部外径72mm、ハイト80mm、内容量205mlの内面ポリエチレンラミネートされた紙コップのカール部分をハサミで切って取り除き、射出金型にインサートし、型締め力45tonで型締めを行い、射出温度180℃、射出速度8mm/sec、 射出圧力10MPaにて溶融樹脂を射出して環状部材を成形し、複合紙製容器とした。なお環状部材は直鎖状低密度ポリエチレン(プライムポリマー製ネオゼックス 45200)から成る。成形した複合紙製容器を、開口端部付近の断面写真である図5及び図5のX部分を拡大して示す図6において説明する。図5に示すように、紙基材2aの内面側には熱可塑性樹脂から成る内層2bが存在しており、外面側には環状部材10環状壁11が存在している。図6から明らかなように環状部材10の環状壁11と紙基材2aの界面は凹凸のある状態となっており、アンカー効果の発現が推察される。
成形した複合紙製容器における紙コップの環状部材のすぐ下の部分を押込み、紙コップと環状部材の剥離起点を作成した後、徐々に周方向に剥がしていくことにより、完全に紙コップから環状部材を分離できた。なお環状部材を容器の軸方向に引っ張ったり、周方向にねじるだけでは紙コップからは分離できなかった。一度分離した環状部材は、成形収縮により縮径しているため、紙コップの元の位置には嵌らなかった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、係合部を形成可能な樹脂製部材を紙製容器本体に接合することにより、紙製容器にリシール性を付与することが可能であると共に、廃棄時には、熱可塑性樹脂から成る環状部材を紙製容器本体から容易に取り除くことが可能であり、分別廃棄性が要求される包装容器に好適に利用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 複合紙製容器、2 紙製容器本体、3 底部、4 側壁部、5 開口部、6 開口端面、7凹部、10 環状部材、11 環状壁、12 突出部、13 接着部分、14 螺子条、20 紙製容器本体、21 底部、22 側壁部、23 斜面、24 開口、25 凹部、26 開口端面、30 スパウト、31 台座、32 注出筒、33 環状嵌合部、34 螺子条、35 接着部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6