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特許7413694積層セラミックコンデンサ用塗工膜形成装置および電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ用塗工膜形成装置および電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 9/14 20060101AFI20240109BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20240109BHJP
   B05C 5/02 20060101ALI20240109BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20240109BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20240109BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B05C9/14
B05C11/00
B05C5/02
H01G4/30 517
H01G4/30 311F
B05D1/36 Z
B05D3/02 A
B05D3/02 B
B05D3/02 Z
B05D7/00 H
B28B1/30 101
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019175710
(22)【出願日】2019-09-26
(65)【公開番号】P2021049512
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100130638
【弁理士】
【氏名又は名称】野末 貴弘
(74)【代理人】
【氏名又は名称】西澤 均
(72)【発明者】
【氏名】光野 佳代
(72)【発明者】
【氏名】早川 和久
(72)【発明者】
【氏名】中川 剛
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-195985(JP,A)
【文献】特開2010-034144(JP,A)
【文献】特開2002-043164(JP,A)
【文献】特開2005-093993(JP,A)
【文献】特開2003-340358(JP,A)
【文献】特開2008-029916(JP,A)
【文献】米国特許第04687540(US,A)
【文献】特開2007-147298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 7/00-21/00
B05D 1/00-7/26
B28B 1/30-1/42
H01G 4/00-4/224
4/255-4/40
13/00-13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層セラミックコンデンサの誘電体層を構成することとなるセラミックグリーンシートを形成するための積層セラミックコンデンサ用塗工膜形成装置であって、
基材の温度を制御する基材温度制御部と、
前記基材の上に塗工される塗工液の温度を制御する塗工液温度制御部と、
温度が制御された前記基材の上に、温度が制御された前記塗工液を吐出する塗工液吐出部と、
前記基材の上に塗工された前記塗工液を乾燥させて塗工膜とする乾燥部と、
を備え、
前記塗工液温度制御部は、前記基材の温度よりも高くなるように前記塗工液の温度を制御し、
前記塗工液は、セラミック粉体と樹脂成分と溶媒とを含むセラミックスラリーであり、
前記塗工膜は、前記セラミックグリーンシートであることを特徴とする、積層セラミックコンデンサ用塗工膜形成装置。
【請求項2】
前記基材温度制御部は、温度制御をしない場合と比べて、前記基材の温度が高くなるように前記基材の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミックコンデンサ用塗工膜形成装置。
【請求項3】
前記基材の温度を測定する基材温度測定部と、
前記塗工液の温度を測定する塗工液温度測定部と、
をさらに備え、
前記基材温度制御部は、前記基材温度測定部によって測定された前記基材の温度に基づいて、前記基材の温度を制御し、
前記塗工液温度制御部は、前記塗工液温度測定部によって測定された前記塗工液の温度に基づいて、前記塗工液の温度を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ用塗工膜形成装置。
【請求項4】
前記塗工液が吐出される位置に前記基材を供給する基材供給部をさらに備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の積層セラミックコンデンサ用塗工膜形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工液を吐出して塗工膜を形成する装置、および、塗工液を塗工する工程を含む電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の上に塗工液を吐出して乾燥させることによって塗工膜を形成する装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、積層セラミックコンデンサのような積層セラミック電子部品に用いられるセラミックグリーンシートの製造装置であって、基材であるキャリアフィルムの上に、塗工液であるセラミックスラリーを塗工して乾燥させることにより、塗工膜であるセラミックグリーンシートを製造することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-273714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、塗工液を乾燥させて、セラミックグリーンシートなどの塗工膜を製造する際の製造効率を向上させるための1つの方法として、乾燥時間を短縮する方法がある。例えば、熱風によって塗工液を乾燥させる場合において、熱風の温度や風速を上げることによって、乾燥時間を短縮する方法が考えられるが、その場合には乾燥させるための設備が大型化する。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであり、既存の乾燥設備を用いた場合でも、塗工液の乾燥時間を短縮することが可能な塗工膜形成装置、および、塗工液を塗工する工程を含む電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗工膜形成装置は、
基材の温度を制御する基材温度制御部と、
前記基材の上に塗工される塗工液の温度を制御する塗工液温度制御部と、
温度が制御された前記基材の上に、温度が制御された前記塗工液を吐出する塗工液吐出部と、
前記基材の上に塗工された前記塗工液を乾燥させて塗工膜とする乾燥部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電子部品の製造方法は、
基材の温度を制御する工程と、
非導電体材料を含む塗工液の温度を制御する工程と、
温度が制御された前記基材の表面に、温度が制御された前記塗工液を塗工して乾燥させることにより、非導電体材料層を形成する工程と、
前記非導電体材料層の表面に内部電極材料層を形成する工程と、
前記内部電極材料層が形成された前記非導電体材料層を複数積層することによって、積層体を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の別の態様による電子部品の製造方法は、
基材の温度を制御する工程と、
非導電体材料を含む塗工液の温度を制御する工程と、
温度が制御された前記基材の表面に内部電極材料層を形成する工程と、
前記内部電極材料層が形成された前記基材の表面であって、前記内部電極材料層が形成されていない領域に、温度が制御された前記塗工液を塗工して乾燥させることにより、非導電体材料層を形成する工程と、
形成された前記内部電極材料層および前記非導電体材料層を1層として、複数層を積層することにより、積層体を形成する工程と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の塗工膜形成装置および電子部品の製造方法によれば、基材と塗工液の温度を制御することにより、既存の乾燥設備を用いた場合でも、基材の上に塗工される塗工液の乾燥時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態における塗工膜形成装置の構成を模式的に示す図である。
図2】一実施の形態における電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図3図2に示すフローチャートの工程とは別の工程を含む電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
図4】一実施の形態における電子部品の製造方法によって製造された電子部品の一例である積層セラミックコンデンサの斜視図である。
図5図4に示す積層セラミックコンデンサのV-V線に沿った断面図である。
図6図4に示す積層セラミックコンデンサのVI-VI線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を示して、本発明の特徴を具体的に説明する。
【0013】
図1は、一実施の形態における塗工膜形成装置10の構成を模式的に示す図である。一実施の形態における塗工膜形成装置10は、基材供給部11と、塗工液吐出部12と、基材温度制御部13と、塗工液温度制御部14と、乾燥部15とを備える。
【0014】
基材供給部11は、後述する塗工液が吐出される位置に基材1を供給する。本実施形態において、基材供給部11は、巻出ロールであって、ロール状に巻かれている基材1を供給する。基材1の材質は任意であり、例えば、PETフィルム、PENフィルム、PPフィルムなどのポリエステル系樹脂フィルムや金属などを用いることができる。なお、基材1の表面に、塗工膜を剥がしやすくするための離型層を設けるようにしてもよい。
【0015】
基材1の形状は、任意の形状とすることができる。基材1が軟質の材料からなる場合の形状は、例えば、長尺状、短冊状、または、ベルト状である。また、基材1が硬質の材料からなる場合の形状は、例えば、板状、ロール状、または、ドラム状である。
【0016】
基材温度制御部13は、基材1の温度を制御する。温度を制御する基材1の位置は、後述する塗工液が吐出される位置に近いことが好ましい。具体的には、基材温度制御部13は、加熱、放熱、および、冷却のうちの少なくとも1つを行うことによって、基材1の温度を制御する。なお、基材1の温度制御は、基材1に対して直接的に行ってもよいし、基材1と接する他の部材を介して間接的に行ってもよい。
【0017】
基材1の加熱は、例えば、基材1に対して、熱風を照射、マイクロ波を照射、赤外線を照射、遠赤外線を照射、および、電熱線により加熱のうちの少なくとも1つの方法により行うことができる。基材1の放熱は、例えば、放熱フィンや中空ローラに基材1を接触させる方法によって行うことができる。基材1の冷却は、例えば、水冷や空冷など、水や空気などの冷却媒体を利用する方法や、熱交換による方法、ペルチェ素子などの熱電素子を用いる方法により行うことができる。ただし、基材1の温度を制御する方法が上記の例示した方法に限定されることはない。
【0018】
ここで、図1に示すように、塗工膜形成装置10は、基材1の温度を測定する基材温度測定部16をさらに備えていてもよい。図1において、基材温度測定部16は、基材温度制御部13による温度制御後の基材1の温度を測定する位置に設けられている。基材温度測定部16は、塗工液が吐出される位置にできるだけ近い位置の基材1の温度を測定することが好ましい。基材温度制御部13は、基材温度測定部16によって測定された基材1の温度に基づいて、基材1の温度を目標温度に一致させるフィードバック制御を行うことができる。
【0019】
ただし、基材温度測定部16は、基材温度制御部13による温度制御前の基材1の温度を測定する位置に設けられていてもよい。その場合、基材温度制御部13は、基材温度測定部16によって測定された基材1の温度に基づいて、基材1の温度を目標温度に一致させるフィードフォワード制御を行うことができる。
【0020】
基材1の目標温度は、塗工液の融点より高く、かつ、沸点より低い温度範囲内の温度、例えば、0℃以上60℃以下とする。基材1の目標温度を塗工液の融点より高くするのは、融点以下とすると、塗工液に含まれる溶媒が氷結し、その後の乾燥工程において乾燥しにくくなるからである。また、基材1の目標温度を塗工液の沸点より低くするのは、沸点以上とすると、塗工液が沸騰して塗工液に含まれる粒子の配列が乱れ、塗工膜の表面が粗くなるからである。
【0021】
また、基材1の目標温度を、周囲環境温度より低い温度、特に0℃未満に設定すると、基材1の表面において空気中の水分が結露して、乾燥時間の増大や塗工液の塗れ広がり性の悪化などが生じ、塗工膜の表面が粗くなる。
【0022】
上述した理由から、基材1の目標温度は、塗工液の融点より高く、かつ、沸点より低い温度範囲内であって、周囲環境温度より高い温度、すなわち、温度制御をしない場合と比べて、基材1の温度が高くなる温度に設定することが好ましい。
【0023】
特に、染料や顔料の粒子が溶媒に分散したスラリーを塗工液として用いる場合、溶媒の揮発の進行度合いと、スラリー中の粒子が基材1に沈着する進行度合いとの関係により、塗工膜の表面粗さなどが影響を受ける。しかしながら、基材1の温度を制御することによって、上述した溶媒の揮発の進行度合いと、スラリー中の粒子が基材1に沈着する進行度合いとの関係を制御することができ、塗工膜の表面が粗くならないように制御することができる。
【0024】
また、塗工膜が薄い場合には、塗工液を塗工した直後の初期乾燥が急激すぎて、乾燥状態の制御が困難になる場合があるが、基材1の温度を比較的低く制御することにより、初期乾燥を緩やかにすることが可能となる。
【0025】
なお、塗工膜の表面粗さや、その他の性状に幅方向の分布がある場合、基材1の目標温度を幅方向で異なるように制御してもよい。幅方向とは、基材1の進行方向と直交する方向である。
【0026】
また、塗工膜の表面粗さや厚みなどを光沢計や膜厚計などで測定し、その測定結果に応じて、基材1の目標温度を設定し直すようなフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0027】
塗工液吐出部12は、基材温度制御部13によって温度が制御された基材1の上に、後述する塗工液温度制御部14によって温度が制御された塗工液を吐出する。塗工液吐出部12は、例えば、塗工液タンクおよび塗工ヘッドを備えた塗工装置である。そのような塗工装置として、例えば、オンロールダイコータ、減圧ダイコータ、オフロールダイコータ、スリットコータ、カーテンコータ、引き上げコータ、ナイフコータ、キャストコータ、リバースロールコータ、ブレードコータ、BLコータなどを用いることができる。塗工液吐出部12は、インクジェット印刷のように塗工液を間接的に塗工するものではなく、塗工液を連続的に塗工するものが好ましい。塗工液の塗工速度は、例えば、2m/分以上500m/分以下である。
【0028】
塗工液は、基材1の上に塗工して乾燥すると塗工膜が形成できるものであれば、組成に制限はない。乾燥後に塗工膜として残る成分は、例えば、塗工液に含まれる染料および顔料のうちの少なくとも1つである。本実施形態における塗工膜形成装置10は、染料および顔料のうちの少なくとも1つが溶媒に分散したスラリーを基材1の上に塗工して乾燥させることによって、シートを成形する際に特に好適に用いることができる。塗工液の粘度は、例えば、10Pa・s以上200Pa・s以下である。
【0029】
塗工液は、例えば、非導電体またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含む非導体スラリーである。非導電体スラリーは、分散剤やバインダとなる樹脂成分をさらに含んでいてもよい。非導電体スラリーは、例えば、セラミック粉体と樹脂成分と溶媒とを含むセラミックスラリーである。基材1の上にセラミックスラリーを塗工して乾燥させることにより、塗工膜であるセラミックグリーンシートを得ることができる。セラミックグリーンシートは、積層セラミックコンデンサなどの積層セラミック電子部品の製造に用いられる。
【0030】
非導体スラリーに含まれる粒子は、例えば、チタン、アルミニウム、バリウム、鉛、ジルコニウム、珪素、イットリウム等の金属からなる酸化物、炭酸バリウム、チタン酸バリウム、Pb(Mg1/3Nb2/3)O、Pb(Sm1/2Nb1/2)O、Pb(Zn1/3Nb2/3)O、PbThO、PbZrO、CaTi、SrZrO、BaTiO、BaTi、CaOなどである。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
非導体スラリー中の固形分濃度は、例えば、10vol%以上27vol%以下であり、固形成分のうちの粒子の体積濃度(PVC:Pigment Volume Concentration)は、例えば、65%以上95%以下である。
【0032】
非導体スラリーに含まれる樹脂成分としては、バインダ樹脂や可塑剤などが含まれる。バインダ樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂系、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールなどの水性高分子などを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチルなどのフタル酸エステルを用いることができる。
【0033】
非導体スラリーに含まれる溶媒としては、トルエン、エタノール、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、γ-ブチロラクトンなどを用いることができる。これらは単体で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
なお、非導体スラリーには、必要に応じて、分散剤、帯電防止剤、界面活性剤などが添加されていてもよい。
【0035】
塗工液温度制御部14は、塗工液吐出部12から吐出される塗工液の温度を制御する。例えば、塗工液吐出部12が塗工液タンクを備えている場合において、塗工液温度制御部14は、塗工液タンク内の塗工液の温度を制御してもよいし、塗工液タンクに供給される塗工液の温度を制御してもよい。塗工液温度制御部14は、加熱、放熱、および、冷却のうちの少なくとも1つを行うことによって、塗工液吐出部12から吐出される塗工液の温度を制御する。
【0036】
塗工液の加熱は、例えば、塗工液に対して、熱風を照射、マイクロ波を照射、赤外線を照射、遠赤外線を照射、および、電熱線により加熱のうちの少なくとも1つの方法により行うことができる。塗工液の放熱は、例えば、塗工液を放熱フィンに接触させる方法や、塗工液を中空ローラに接触させる方法によって行うことができる。塗工液の冷却は、例えば、水冷や空冷など、水や空気などの冷却媒体を利用した方法や、熱交換による方法、ペルチェ素子などの熱電素子を用いた方法により行うことができる。ただし、塗工液の温度を制御する方法が上記の例示した方法に限定されることはない。
【0037】
ここで、図1に示すように、塗工膜形成装置10は、塗工液の温度を測定する塗工液温度測定部17をさらに備えていてもよい。塗工液温度測定部17は、例えば、熱電対および放射温度計のうちの少なくとも1つであって、塗工液温度制御部14によって温度が制御された塗工液の温度を測定する。温度測定対象である塗工液は、基材1の上に塗工される直前の塗工液であることが好ましい。塗工液温度制御部14は、塗工液温度測定部17によって測定された塗工液の温度に基づいて、塗工液の温度を目標温度に一致させるフィードバック制御を行うことができる。
【0038】
ただし、塗工液温度測定部17は、塗工液温度制御部14による温度制御前の塗工液の温度を測定してもよい。その場合、塗工液温度制御部14は、塗工液温度測定部17によって測定された塗工液の温度に基づいて、塗工液の温度を目標温度に一致させるフィードフォワード制御を行うことができる。
【0039】
塗工液の目標温度は、塗工液の融点より高く、かつ、沸点より低い温度範囲内の温度、例えば、20℃以上80℃以下とする。塗工液の目標温度を塗工液の融点より高くするのは、融点以下とすると、塗工液に含まれる溶媒が氷結して塗工するのが難しくなるからである。また、塗工液の目標温度を塗工液の沸点より低くするのは、沸点以上とすると、塗工液が沸騰して塗工液に含まれる粒子の配列が乱れ、塗工膜の表面が粗くなるからである。
【0040】
また、塗工液の目標温度を、周囲環境温度より低い温度、特に0℃未満に設定すると、塗工液吐出部12の表面において空気中の水分が結露して塗工液に混入し、乾燥時間の増大や塗れ広がり性の悪化などが生じ、塗工膜の表面が粗くなる。
【0041】
上述した理由から、塗工液の目標温度は、塗工液の融点より高く、かつ、沸点より低い温度範囲内であって、周囲環境温度より高い温度、すなわち、温度制御をしない場合と比べて、塗工液の温度が高くなる温度に設定することが好ましい。
【0042】
温度制御の一例として、塗工液の目標温度を、基材1の目標温度に近づけることにより、基材1の上に塗工された塗工液の温度が基材1の温度と同じになるまでの時間を短くすることができる。
【0043】
ここで、基材1の目標温度と塗工液の目標温度を設定する際に、一方の目標温度に基づいて、他方の目標温度を設定してもよい。例えば、基材1の目標温度に対して、0℃以上60℃以下の範囲内の所定温度だけ高い温度を、塗工液の目標温度としてもよい。
【0044】
また、基材1の目標温度と塗工液の目標温度のうちの一方の目標温度を、基材1の測定温度と塗工液の測定温度との温度差に基づいて設定するようにしてもよい。例えば、塗工液の測定温度と基材1の測定温度との温度差に基づいて、塗工液の目標温度を設定することができる。
【0045】
なお、塗工膜の表面粗さや厚みなどを光沢計や膜厚計などで測定し、その測定結果に応じて、塗工液の目標温度を設定し直すようなフィードバック制御を行うようにしてもよい。
【0046】
乾燥部15は、基材1の上に塗工された塗工液を乾燥させることによって、塗工膜を得る。乾燥部15として、既存の乾燥設備を用いることが可能である。塗工液の乾燥は、例えば、熱風を照射、マイクロ波を照射、赤外線を照射、遠赤外線を照射、塗工液の周囲環境の減圧、および、電熱線により加熱のうちの少なくとも1つの方法により行うことができる。熱風を照射する場合の熱風の温度は、例えば、40℃以上150℃以下である。なお、塗工液の乾燥を複数回に分けて行うとともに、各乾燥工程における温度等の乾燥条件が異なるようにしてもよい。
【0047】
ここで、基材1の温度と塗工液の温度を制御したときの乾燥時間の低減効果と、塗工膜の光沢について調べた結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
ここでは、温度制御の有無および目標温度に応じて、条件1~条件5の異なる条件で塗工液を塗工して乾燥させたときの乾燥時間と、塗工膜の光沢を調べた。塗工膜の光沢は、光沢計で塗工膜の複数箇所の光沢を測定し、その平均値に基づいて評価した。表1では、基材1の温度制御の有無、基材1の目標温度、塗工液の温度制御の有無、塗工液の目標温度、乾燥時間の低減効果、および、塗工膜の光沢の高低をそれぞれ示している。
【0050】
乾燥時間の低減効果は、基材1および塗工液の温度制御を行っていない条件5の条件で塗工液を塗工したときの乾燥時間を基準として、乾燥時間が短くなった場合を「○」、「○」の場合よりもさらに乾燥時間が短くなった場合を「◎」とした。塗工膜の光沢についても、条件5を基準として、光沢が悪くなった場合を「×」、良くなった場合を「◎」とした。なお、塗工膜の表面が粗いと、塗工膜の光沢は低くなる。したがって、塗工膜の光沢が高いほど、塗工膜の表面が平坦であることを意味する。
【0051】
表1に示すように、基材1および塗工液の温度制御を行う条件1~条件4の条件で塗工膜を形成すると、基材1および塗工液の温度制御を行っていない条件5の条件で塗工膜を形成した場合と比べて、塗工液の乾燥時間が短くなった。なお、条件5における基材1の温度および塗工液の温度は常温である。
【0052】
特に、基材1の目標温度を常温より高くし、かつ、塗工液の目標温度を基材1の目標温度より高くした条件2の条件で塗工膜を形成した場合には、条件1、条件3および条件4の条件で塗工膜を形成した場合と比べて、乾燥時間がさらに短くなった。
【0053】
また、基材1の目標温度が常温より高く、かつ、塗工液の目標温度が基材1の目標温度よりも高い条件2、および、基材1の目標温度が常温より低く、かつ、塗工液の目標温度が基材1の目標温度よりも高い条件4の条件で塗工膜を形成した場合、条件1、条件3および条件5の条件で塗工膜を形成した場合と比べて、塗工膜の光沢が高くなった。
【0054】
表1に示すように、基材1の温度を制御する基材温度制御部13、および、塗工液の温度を制御する塗工液温度制御部14を備える塗工膜形成装置10で塗工膜を形成することにより、基材1の温度および塗工液の温度を制御しない場合と比べて、塗工液の乾燥時間を短縮することができる。したがって、本実施の形態における塗工膜形成装置10では、既存の乾燥設備を用いた場合でも、塗工液の乾燥時間を短縮することができ、塗工膜および塗工膜を含む電子部品の製造効率を向上させることができる。
【0055】
なお、塗工液の塗工速度が速い場合や、薄い塗工膜を形成するような場合には特に、塗工された塗工液の温度は、基材1の温度の影響を受ける。本実施の形態における塗工膜形成装置10では、塗工液の温度だけでなく、基材1の温度も制御することにより、塗工液の乾燥時間を効果的に短縮することができる。
【0056】
ここで、基材1の温度および塗工液の温度を制御しない条件5の条件で塗工膜を形成し、その後の乾燥工程で、例えば、熱風を照射する際の風温を上げて乾燥時間を短くしようとすると、得られる塗工膜の表面が粗くなる。しかしながら、塗工液の目標温度を基材1の目標温度より高い温度に設定(条件2および条件4)して、塗工液の温度が基材1の温度よりも高くなるように制御することにより、塗工液の乾燥時間を短縮しつつ、塗工膜の表面が粗くなることを抑制することができる。これは、塗工液の温度を上げることにより、塗工液の飽和蒸気圧が高くなって乾燥時間が短くなるとともに、塗工液の粘度と表面張力が小さくなって、塗工液中の粒子が表面に均一に配列されやすくなるからである。
【0057】
また、塗工液の温度を基材1の温度より高くすることにより、塗工液の温度が基材1の温度に近づこうとする乾燥の初期段階で、塗工膜の上面から多くの溶媒が揮発する。このため、乾燥初期での温度差による対流が抑制された状態で、塗工膜が形成され始め、塗工膜の表面が粗くなることが抑制される。したがって、塗工液温度制御部14は、基材1の温度よりも高くなるように塗工液の温度を制御することが好ましい。
【0058】
特に、基材1の目標温度を常温より高い温度に設定し、かつ、塗工液の目標温度を基材1の目標温度より高い温度に設定(条件2)することにより、塗工液の乾燥時間をさらに短縮しつつ、塗工膜の表面が粗くなることを抑制することができる。すなわち、基材温度制御部13は、温度制御をしない場合と比べて、基材1の温度が高くなるようにし、かつ、塗工液温度制御部14は、基材1の温度よりも高くなるように塗工液の温度を制御することがより好ましい。
【0059】
<電子部品の製造方法>
続いて、基材の上に塗工液を塗工する工程を含む電子部品の製造方法について説明する。
【0060】
図2は、一実施の形態における電子部品の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0061】
ステップS1では、基材の温度を制御する。
【0062】
ステップS2では、非導電材料を含む塗工液の温度を制御する。
【0063】
上述したように、塗工液の温度が基材の温度より高くなるように、基材の温度および塗工液の温度を制御することが好ましい。また、温度制御をしない場合と比べて、温度が高くなるように基材の温度を制御し、かつ、基材の温度よりも高くなるように塗工液の温度を制御することがより好ましい。
【0064】
なお、ステップS1で塗工液の温度を制御した後、ステップS2で基材の温度を制御してもよいし、塗工液の温度の制御と基材の温度の制御を同時に行ってもよい。
【0065】
ステップS3では、温度が制御された基材の表面に、温度が制御された塗工液を塗工して乾燥させることにより、塗工膜である非導電体材料層を形成する。塗工液は、例えば、セラミックスラリーであり、形成される非導電体材料層は、例えば、セラミックグリーンシートである。
【0066】
なお、形成する非導電体材料層は、複数の電子部品を一度に製造できる大きさのものでもよいし、1つの電子部品に対応した大きさのものでもよい。
【0067】
また、必要に応じて、非導電体材料層にビア孔を形成し、ビア孔にビアの材料を充填してもよい。ただし、後述する内部電極材料層を形成する際に、内部電極材料でビア孔を充填する場合、ここでは、ビアの材料の充填を省略することができる。ビアの材料として、例えば、金属またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含むペーストまたはインクを用いることができる。このペーストまたはインクは、さらに分散剤やバインダとなる樹脂成分を含んでいてもよい。ビアの材料中の固形分濃度は、例えば、9vol%以上20.5vol%以下であり、固形成分のうちの粒子の体積濃度(PVC)は、例えば、70%以上95%以下である。
【0068】
ステップS4では、非導電体材料層の表面に内部電極材料を供給することによって、内部電極材料層を形成する。内部電極材料として、例えば、金属またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含むペーストまたはインクを用いることができる。金属として、例えば、Ni、Cu、Fe、Ti、Ag、Au、Pd、Pt、Snなどを用いることができる。金属の平均粒径は、例えば、10nm以上500nm以下である。
【0069】
内部電極材料中の固形分濃度は、例えば、9vol%以上20.5vol%以下であり、固形成分のうちの粒子の体積濃度(PVC)は、例えば、70%以上95%以下である。また、内部電極材料の粘度は、例えば、5mPa・s以上50Pa・s以下である。
【0070】
非導電体材料層の表面への内部電極材料の供給は、例えば、スクリーン印刷、凹版印刷、凸版印刷、インクジェット印刷など、任意の印刷方法により行うことができる。凹版印刷や凸版印刷をオフセット印刷により行ってもよい。また、同一または異なる印刷方法による複数回の印刷によって、内部電極材料層を形成してもよい。非導電体材料層の表面に供給された内部電極材料を乾燥させる工程を設けてもよい。内部電極材料の乾燥は、例えば、熱風を照射、基材1を加熱、周囲環境の減圧、および、超音波を照射のうちの少なくとも1つの方法により行うことができる。内部電極材料を乾燥させる際の温度は、例えば、20℃以上98℃以下である。
【0071】
ステップS5では、支持体の上に、内部電極材料層が形成された非導電体材料層を複数積層することによって、積層体を形成する。積層体を形成する際、必要に応じて、内部電極材料層が形成されていない非導電体材料層も積層する。内部電極材料層が形成された非導電体材料層と、内部電極材料層が形成されていない非導電体材料層の積層は、任意の枚数および任意の順序で行うことにより、所望の積層体を得る。
【0072】
ここで、非導電体材料層を積層する際、基材から剥離してから積層してもよいし、非導電体材料層を支持体または他の非導電体材料層の上に積層した後、基材を剥離するようにしてもよい。基材の剥離時の速度は、例えば、1mm/s以上300mm/s以下であり、剥離時の温度は、例えば、20℃以上85℃以下である。なお、一番下に位置する非導電体材料層と接している基材は剥離せずに、支持体として用いるようにしてもよい。
【0073】
支持体は、任意の材質および形状のものを用いることが可能であり、例えば、長尺状または短冊状の樹脂フィルムや、板状、ロール状、ドラム状、または、ベルト状の金属やセラミックなどを用いることができる。
【0074】
必要に応じて、支持体の表面に、接着機能、粘着機能、保護機能、離型機能のうちの少なくとも1つの機能を有する機能層を設けてもよい。機能層の材料として、例えば、ゴム系、アクリル系、ビニルアルキルエーテル系、シリコーン系、フッ素系、ポリエステル系、ポリアミド系、ウレタン系、および、スチレン-ジエンブロック共重合体系のうちの少なくとも1つを用いることができる。機能層の厚みは、例えば、0.05μm以上100μm以下である。
【0075】
機能層が接着機能および粘着機能のうちの少なくとも1つの機能を有している場合、加熱、紫外線の照射、または、液体への浸漬などの方法で機能層を変質または溶融させることにより、機能層が有する接着機能または粘着機能を喪失、低減、または、増加させることができるように構成されていてもよい。接着機能または粘着機能を喪失または低減させることにより、積層体を支持体から剥離しやすくなる。また、接着機能または粘着機能を増加させることにより、積層体に大きな力が加わった場合に、積層体が支持体に固定された状態を維持することが可能となる。
【0076】
非導電体材料層の積層は、例えば、積層ヘッドの保持面で非導電体材料層を保持し、他の非導電体材料の上、または、支持体の上に載置することによって行う。このとき、載置した非導電体材料層を積層ヘッドで圧着するようにしてもよいし、積層ヘッドによる載置後に、圧着板を用いて非導電体材料層を圧着するようにしてもよい。圧着時の圧力は、例えば、最大で1MPa以上200MPa以下であり、圧着時の温度は、例えば、60℃以上90℃以下とすることができる。
【0077】
この後、必要に応じて、積層体をプレスする。プレス方法としては、例えば、静水圧プレスや、加熱剛体板を用いた剛体プレス等が挙げられる。プレス時の圧力は、例えば、最大で1MPa以上200MPa以下であり、プレス時の温度は、例えば、25℃以上200℃以下である。
【0078】
また、積層体が複数の電子部品を一度に製造できる大きさのものである場合には、個々の電子部品に対応した大きさとなるように分割する。分割は、ダイシング、押し切り、引き切りなど、任意の方法により行うことができる。
【0079】
ここで、積層体に、前駆体からなる粒子が含まれる場合、積層体を焼成することによって、所望の状態とするようにしてもよい。焼成温度は、例えば、800℃以上1200℃以下である。バインダなどの樹脂成分が積層体に含まれる場合、焼成によってその樹脂成分は消失または低減するが、別に脱脂工程を設けるようにしてもよい。
【0080】
この後、必要に応じて、積層体に外部電極を形成する。外部電極を形成するための材料は、金属またはその前駆体からなる粒子と溶媒とを含むペーストまたはインクを用いることができる。このペーストまたはインクは、さらに分散剤やバインダとなる樹脂成分を含んでいてもよい。外部電極材料中の固形分濃度は、例えば、9vol%以上20.5vol%以下であり、固形成分のうちの粒子の体積濃度(PVC)は、例えば、70%以上95%以下である。形成する外部電極の厚みは、例えば、0.1μm以上20μm以下である。
【0081】
外部電極の形成は、外部電極材料の印刷、外部電極材料への積層体の浸漬、および、めっき処理のうちの少なくとも1つによって行うことができる。めっき処理は、湿式めっきにより行ってもよいし、乾式めっきにより行ってもよい。必要に応じて、外部電極材料が供給された積層体を焼成する。
【0082】
なお、脱脂工程、焼成工程、および、外部電極形成工程のうちの少なくとも2つの工程を行う場合、その順番は問わない。脱脂工程と焼成工程を行う場合、通常、脱脂工程の後に焼成工程を行う。外部電極形成工程は、脱脂工程や焼成工程の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
【0083】
<電子部品の別の製造方法>
上述した製造方法とは別の製造方法を、図3に示すフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すフローチャートと同じ処理を行う工程については、同じステップ番号を付して詳しい説明は省略する。
【0084】
図3に示すフローチャートにおいて、ステップS1における基材の温度制御、および、ステップS2における塗工液の温度制御が行われた後のステップS11では、温度が制御された基材の表面に、内部電極材料を供給することによって、内部電極材料層を形成する。
【0085】
ステップS12では、内部電極材料層が形成された基材の表面であって、内部電極材料層が形成されていない領域に、温度が制御された塗工液を塗工して乾燥させることにより、非導電体材料層を形成する。すなわち、基材の表面に形成されている内部電極材料層と隣接して、非導電体材料層を形成する。
【0086】
ステップS13では、支持体の上に、ステップS12で形成された内部電極材料層および非導電体材料層を1層として、複数層を積層することにより、積層体を形成する。積層体を形成する際、必要に応じて、内部電極材料層が形成されていない非導電体材料層も積層する。隣接して形成されている内部電極材料層および非導電体材料層と、内部電極材料層が形成されていない非導電体材料層の積層は、任意の枚数および任意の順序で行うことにより、所望の積層体を得る。
【0087】
積層体を作製した後の処理については、図2に示すフローチャートのステップS5における工程の後の処理と同じである。
【0088】
<電子部品の構造>
図4は、一実施の形態における電子部品の製造方法によって製造された電子部品の一例である積層セラミックコンデンサ20の斜視図である。図5は、図4に示す積層セラミックコンデンサ20のV-V線に沿った断面図である。図6は、図4に示す積層セラミックコンデンサ20のVI-VI線に沿った断面図である。
【0089】
図4図6に示すように、積層セラミックコンデンサ20は、全体として直方体形状を有する電子部品であり、セラミック素体21と、一対の外部電極24a、24bとを有している。一対の外部電極24a、24bは、図4に示すように、対向するように配置されている。
【0090】
ここでは、一対の外部電極24a、24bが対向する方向を積層セラミックコンデンサ20の長さ方向Lと定義し、後述する誘電体層22と内部電極23a、23bとが積層されている方向を積層方向Tと定義し、長さ方向Lおよび積層方向Tのいずれの方向にも直交する方向を幅方向Wと定義する。長さ方向L、積層方向T、および、幅方向Wのうちの任意の2つの方向は、互いに直交する方向である。
【0091】
セラミック素体21は、長さ方向Lに相対する第1の端面25aおよび第2の端面25bと、積層方向Tに相対する第1の主面26aおよび第2の主面26bと、幅方向Wに相対する第1の側面27aおよび第2の側面27bとを有する。
【0092】
セラミック素体21は、角部および稜線部に丸みを帯びていることが好ましい。ここで、角部は、セラミック素体21の3面が交わる部分であり、稜線部は、セラミック素体21の2面が交わる部分である。
【0093】
図5および図6に示すように、セラミック素体21は、積層された複数の誘電体層22と複数の内部電極23a、23bとを含む。内部電極23a、23bには、第1の内部電極23aと第2の内部電極23bとが含まれている。より詳細には、セラミック素体21は、第1の内部電極23aと第2の内部電極23bとが積層方向Tにおいて、誘電体層22を介して交互に複数積層された構造を有する。
【0094】
誘電体層22は、図5および図6に示すように、積層方向Tの最も外側に位置する内部電極23a、23bよりも積層方向Tの外側に位置する外層誘電体層221と、積層方向Tに隣り合う2つの内部電極23a、23bの間に位置する内層誘電体層222とを含む。誘電体層22は、上述した非導電体材料層であるセラミックグリーンシートが焼成されることによって形成される層である。
【0095】
第1の内部電極23aおよび第2の内部電極23bは、上述した内部電極材料層が焼成されることによって得られる。第1の内部電極23aは、セラミック素体21の第1の端面25aに引き出されている。また、第2の内部電極23bは、セラミック素体21の第2の端面25bに引き出されている。
【0096】
第1の外部電極24aは、セラミック素体21の第1の端面25aの全体に形成されているとともに、第1の端面25aから、第1の主面26a、第2の主面26b、第1の側面27a、および第2の側面27bに回り込むように形成されている。第1の外部電極24aは、第1の内部電極23aと電気的に接続されている。
【0097】
第2の外部電極24bは、セラミック素体21の第2の端面25bの全体に形成されているとともに、第2の端面25bから、第1の主面26a、第2の主面26b、第1の側面27a、および第2の側面27bに回り込むように形成されている。第2の外部電極24bは、第2の内部電極23bと電気的に接続されている。
【0098】
ここで、一実施の形態における電子部品の製造方法によって、積層セラミックコンデンサや積層セラミックモジュール基板のような積層セラミック電子部品を製造した場合、耐圧に優れた積層セラミック電子部品を得ることができた。これは、塗工膜である非導電体材料層の表面が粗くなることが抑制されることにより、焼成後に得られる誘電体層の厚みバラツキが低減して、局所的に厚みが薄くなることが抑制され、耐圧の低下や信頼性の悪化につながる要因を低減することができたためと考えられる。
【0099】
また、一実施の形態における電子部品の製造方法によって、積層セラミックインダクタまたは積層セラミックモジュール基板のインダクタ部分を製造した場合、非導電体材料層は磁性体層となり、内部電極材料層は、インダクタの配線として形成することができる。この場合、高周波におけるQ値、L値偏差、および、定格電流などの特性が向上した。これは、磁性体層となる非導電体材料層の表面が粗くなることが抑制されることにより、高周波で通電した場合に電流が集中する配線の表皮面のうち、非導電体材料層との接触面の凹凸を低減することができ、高周波特性や信頼性を悪化させるような配線の抵抗値の上昇が抑制されるためであると考えられる。
【0100】
また、一実施の形態における電子部品の製造方法によって、上述した積層セラミックコンデンサや積層セラミックインダクタ以外の電子部品を製造した場合、高周波特性が向上した電子部品が得られた。これは、非導電体材料層の表面が粗くなることが抑制されることによって、高周波で通電した場合に電流が集中する配線の表皮面のうち、非導電体材料層との接触面の凹凸を低減することができ、高周波特性や信頼性を悪化させるような配線の抵抗値の上昇が抑制されるためであると考えられる。なお、配線は、非導電体材料層の表面に形成された内部電極材料層である。
【0101】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0102】
上述した塗工膜形成装置10は、塗工液が吐出される位置に基材1を供給する基材供給部11を備えているが、塗工膜形成装置が基材を備えており、基材供給部を備えていない構成とされていてもよい。その場合の基材の温度と塗工液の温度を制御したときの乾燥時間の低減効果と、塗工膜の光沢は、表1に示す結果と同じ結果が得られる。
【符号の説明】
【0103】
10 塗工膜形成装置
11 基材供給部
12 塗工液吐出部
13 基材温度制御部
14 塗工液温度制御部
15 乾燥部
16 基材温度測定部
17 塗工液温度測定部
20 積層セラミックコンデンサ
21 セラミック素体
22 誘電体層
23a 第1の内部電極
23b 第2の内部電極
24a 第1の外部電極
24b 第2の外部電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6