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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/30 20160101AFI20240109BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H02K11/30
H02K5/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019187920
(22)【出願日】2019-10-11
(65)【公開番号】P2021065017
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕人
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/158966(WO,A1)
【文献】特開2016-201904(JP,A)
【文献】特開2018-074647(JP,A)
【文献】国際公開第2019/070067(WO,A1)
【文献】特開2017-189033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/00- 11/40
H02K 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
素子群が実装されている第1基板と、
前記第1基板と互いに板厚方向において対向して配置されているとともに、前記第1基板に実装されている素子群よりも発熱量が大きい素子群が実装されている第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板との間に配置されているとともに、前記第1基板に実装されている素子群及び前記第2基板に実装されている素子群からの放熱を促すための第1ヒートシンクと、
前記第2基板における前記第1ヒートシンクと反対側に配置されているとともに、前記第2基板に実装されている素子群からの放熱を促すための第2ヒートシンクとを備え
前記第2基板に実装されている前記素子群は、前記モータに電流を供給する機能を有するスイッチング素子を含むパワー素子群であり、
前記スイッチング素子は、前記第2基板における前記第2ヒートシンク側の面に実装されており、
前記第1基板に実装されている前記素子群は、前記スイッチング素子の動作を制御するマイコンを含む制御素子群であり、
前記マイコンは、前記第1基板における前記第1ヒートシンク側の面に実装されているモータ装置。
【請求項2】
前記第1基板及び前記第1ヒートシンクは、放熱材を介在して熱接触するように構成され、
前記第1ヒートシンク及び前記第2基板は、放熱材を介在して熱接触するように構成され、
前記第2基板及び前記第2ヒートシンクは、放熱材を介在して熱接触するように構成されている請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記モータを収容する有底筒状のモータハウジングを備え、
前記第2ヒートシンクは、前記モータハウジングの開口を閉塞するとともに前記モータハウジングの内壁面に固定されていて、
前記第2ヒートシンクは、前記モータハウジングとの固定部位を介して前記モータハウジングと熱接触するように構成されている請求項1または2に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記モータを収容するモータハウジングを備え、
前記第1ヒートシンクは、前記モータハウジングに固定されていて、
前記第1ヒートシンクは、前記モータハウジングとの固定部位を介して前記モータハウジングと熱接触するように構成されている請求項1~のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記第1ヒートシンクは、前記第1基板及び前記第2基板に対向する本体部と、前記本体部と接続されるとともに前記本体部の周囲を取り囲みつつ当該モータ装置の外部に露出しているハウジング部とを有している請求項またはに記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータと、当該モータの駆動を制御する制御装置とが一体化されてなるモータ装置が開示されている。制御装置は、モータの駆動を制御するための素子群が実装された第1基板及び第2基板を有している。第1基板及び第2基板は、互いの板厚方向において対向している。第1基板と第2基板との間には、第1基板及び第2基板からの放熱を促すためのヒートシンクが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-189034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
第1基板及び第2基板に対する素子群の実装の仕方によっては、各基板間での発熱量の大小が異なることがある。この場合、発熱量が相対的に大きい基板については、発熱量が相対的に小さい基板よりも放熱を積極的に促す必要がある。本発明の目的は、発熱量の大小が異なる基板からの放熱を効率的に促すことによって、モータ装置の放熱性能をより高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するモータ装置は、モータと、素子群が実装されている第1基板と、前記第1基板と互いに板厚方向において対向して配置されているとともに、前記第1基板に実装されている素子群よりも発熱量が大きい素子群が実装されている第2基板と、前記第1基板と前記第2基板との間に配置されているとともに、前記第1基板に実装されている素子群及び前記第2基板に実装されている素子群からの放熱を促すための第1ヒートシンクと、前記第2基板における前記第1ヒートシンクと反対側に配置されているとともに、前記第2基板に実装されている素子群からの放熱を促すための第2ヒートシンクとを備える。
【0006】
上記構成では、第1基板は、板厚方向における一方の面が第1ヒートシンクと対向する。第1基板に実装されている素子群は、板厚方向における一方の面から第1ヒートシンクへ放熱が促される。また、第2基板は、板厚方向における一方の面が第1ヒートシンクと対向するとともに、板厚方向における他方の面が第2ヒートシンクと対向する。第1基板よりも実装されている素子群からの発熱量が大きい第2基板に実装されている素子群は、板厚方向における一方の面から第1ヒートシンクへ放熱が促されるとともに、板厚方向における他方の面から第2ヒートシンクへ放熱が促される。これにより、第2基板については、板厚方向における両側から放熱できる分、第2基板からの放熱を第1基板からの放熱よりも積極的に促すことができる。したがって、モータ装置の放熱性能を高めることができる。
【0007】
上記のモータ装置は、前記第1基板及び前記第1ヒートシンクは、放熱材を介在して熱接触するように構成され、前記第1ヒートシンク及び前記第2基板は、放熱材を介在して熱接触するように構成され、前記第2基板及び前記第2ヒートシンクは、放熱材を介在して熱接触するように構成されていることが好ましい。
【0008】
上記構成では、各基板のそれぞれ対向するヒートシンクに対する放熱経路の好適な確保を可能としている。これにより、各基板からの放熱を効果的に促すことができる。
上記のモータ装置は、前記第2基板に実装されている前記素子群は、前記モータに電流を供給する機能を有するスイッチング素子を含むパワー素子群であり、前記第1基板に実装されている前記素子群は、前記スイッチング素子の動作を制御するマイコンを含む制御素子群であることが好ましい。
【0009】
スイッチング素子の発熱量とマイコンの発熱量とを比較すると、スイッチング素子の発熱量の方が大きいことは一般的に知られている。つまり、パワー素子群の発熱量は、制御素子群の発熱量よりも大きくなる。この場合、モータ装置について上記各構成を採用したものとすることは好適である。
【0010】
上記のモータ装置は、前記モータを収容する有底筒状のモータハウジングを備え、前記第2ヒートシンクは、前記モータハウジングの開口を閉塞するとともに前記モータハウジングの内壁面に固定されていて、前記第2ヒートシンクは、前記モータハウジングとの固定部位を介して前記モータハウジングと熱接触するように構成されていることが好ましい。
【0011】
第2基板に実装されている素子群から第2ヒートシンクへ伝達された熱は、第2ヒートシンクと熱接触するモータハウジングへと伝達される。これにより、モータハウジングに到った熱を、モータ装置の外部へと放出することができる。
【0012】
上記のモータ装置は、前記モータを収容するモータハウジングを備え、前記第1ヒートシンクは、前記モータハウジングに固定されていて、前記第1ヒートシンクは、前記モータハウジングとの固定部位を介して前記モータハウジングと熱接触するように構成されていることが好ましい。
【0013】
第1基板に実装されている素子群及び第2基板に実装されている素子群から第1ヒートシンクへ伝達された熱は、第1ヒートシンクと熱接触するモータハウジングへと伝達される。これにより、モータハウジングに到った熱を、モータ装置の外部へと放出することができる。
【0014】
上記のモータ装置において、前記第1ヒートシンクは、前記第1基板及び前記第2基板に対向する本体部と、前記本体部と接続されるとともに前記本体部の周囲を取り囲みつつ当該モータ装置の外部に露出しているハウジング部とを有していることが好ましい。
【0015】
第1ヒートシンクのハウジング部に到った熱を、モータ装置の外部へと放出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のモータ装置によれば、放熱性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】モータ装置の斜視図。
図2】モータ装置の分解斜視図。
図3図1のIII-III線に沿って切断したモータ装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
モータ装置の一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2に示すように、モータ装置1は、モータ2と、第1基板としての制御基板3と、第2基板としてのパワー基板4と、モータハウジング5と、第1ヒートシンク6と、第2ヒートシンク7と、情報授受部8とを備えている。モータ装置1は、例えば車両の電動パワーステアリング装置に搭載されるものである。パワー基板4には、素子群として、モータ2へ供給する電流を制御するパワー素子群4bが実装されている。制御基板3には、素子群として、モータ2の駆動を制御する制御素子群3bが実装されている。パワー基板4は、板厚方向において制御基板3と対向して配置されているとともに、制御基板3よりもモータ2に近い側に配置されている。モータハウジング5は、モータ2を収容している。第1ヒートシンク6は、制御基板3とパワー基板4との間に配置されている。第2ヒートシンク7は、パワー基板4とモータ2との間に配置されている。第2ヒートシンク7は、モータハウジング5に固定されている。第1ヒートシンク6は、モータハウジング5に固定されている。情報授受部8は、外部機器との間で情報を授受するために設けられている。なお、以下では、説明の便宜上、モータ2の回転軸2aの軸方向Xを基準として、情報授受部8側を第1軸方向、モータ2側を第2軸方向という。軸方向Xは、モータ2の回転軸2aの延びる方向である。
【0019】
図2及び図3に示すように、モータハウジング5は、有底筒状体をなしている。モータハウジング5は、第1軸方向側に開口している。第2ヒートシンク7は、モータハウジング5の開口を閉塞している。モータハウジング5、第1ヒートシンク6、第2ヒートシンク7、及び情報授受部8により、モータ2、制御基板3、及びパワー基板4を収容するハウジングが構成されている。モータハウジング5、第1ヒートシンク6、及び第2ヒートシンク7は、例えばアルミニウム等の熱伝導率が高い金属によって構成されている。
【0020】
モータ2の構成について説明する。
図3に示すように、モータ2は、モータハウジング5内に固定されたステータ21と、ステータ21の内周に回転可能に配置されたロータ22とを有している。
【0021】
ステータ21は、モータハウジング5の筒状部の内壁面に固定された円筒状のステータコア23、及びステータコア23に巻回されたモータコイル24を有している。モータコイル24の接続端子24aは、バスバー25を介してパワー基板4に接続されている。
【0022】
ロータ22は、回転軸2aと一体回転可能に固定された円筒状のロータコア26、及びロータコア26の外周に固定された複数の永久磁石27を備えている。永久磁石27は、その磁極がロータコア26の周方向において、N極及びS極が交互に入れ替わるように配置されている。
【0023】
モータハウジング5の底部の中央には、軸方向Xに貫通した第1凹部5aが形成されている。第1凹部5aは、軸方向Xから見たとき円形状に形成されている。モータハウジング5に形成された第1凹部5aには、第1軸受28が設けられている。第1軸受28は、第1凹部5aの内周面と回転軸2aの外周面との間に設けられている。第1軸受28は、モータハウジング5の第1凹部5aに対して回転軸2aの第2軸方向側の端部を回転可能に支持する。モータハウジング5の開口端部は、外壁面において略四角形状をなしているとともに、内壁面において略円形状をなしている。
【0024】
第2ヒートシンク7は、モータハウジング5の開口を閉塞している。第2ヒートシンク7の外壁形状は、モータハウジング5の開口端部の内壁面と同形状の略円形状をなしている。第2ヒートシンク7は、モータ2及びパワー基板4に実装されているパワー素子群4bからの放熱を促すために設けられている。第2ヒートシンク7の中央には、第2凹部7aが形成されている。第2凹部7aは、軸方向Xから見たとき円形状に形成されている。第2凹部7aの中央は、軸方向Xに貫通している。第2ヒートシンク7に形成された第2凹部7aには、第2軸受29が設けられている。第2軸受29は、第2ヒートシンク7の第2凹部7aに対して回転軸2aの第1軸方向側の端部を回転可能に支持する。これにより、回転軸2aは、第1軸受28及び第2軸受29を介してモータハウジング5及び第2ヒートシンク7の内壁面に対して回転可能に支持されている。図2に示すように、第2ヒートシンク7は、ねじ90によって、モータハウジング5に対して固定されている。
【0025】
図2に示すように、第1ヒートシンク6は、本体部6aと、本体部6aの軸方向Xと直交する方向における周囲を取り囲むハウジング部6bとを有している。ハウジング部6bの外壁形状は、モータハウジング5の開口端部と同形状の略四角形状をなしている。ハウジング部6bは、軸方向Xと直交する方向において、本体部6aと対向するように設けられている。ハウジング部6bの外壁面は、モータ装置1の外部に露出している。第1ヒートシンク6は、制御基板3に実装されている制御素子群3b及びパワー基板4に実装されているパワー素子群4bからの放熱を促すために設けられている。本体部6aは、ハウジング部6bの内壁面における対向する2つの面を繋ぐように形成されている。本体部6aは、パワー基板4に実装されているパワー素子群4bのうち後述のコンデンサ42との干渉を避ける形状をなしている。一方、本体部6aは、パワー基板4に実装されているパワー素子群4bのうち後述のスイッチング素子41及び制御基板3に実装されている制御素子群3bのうち後述のマイコン31に対して、軸方向Xにおいて対向する形状をなしている。図1に示すように、第1ヒートシンク6は、ねじ91によって、モータハウジング5に対して固定されている。
【0026】
第2ヒートシンク7は、第1ヒートシンク6よりも熱容量が大きい。本実施形態では、第2ヒートシンク7及び第1ヒートシンク6は、同一種類の金属材料によって構成されているとともに、第2ヒートシンク7の方が第1ヒートシンク6よりも総質量が大きいことから、第2ヒートシンク7は第1ヒートシンク6よりも熱容量が大きい。第2ヒートシンク7の方が第1ヒートシンク6よりも総質量が大きいのは、第1ヒートシンク6はコンデンサ42との干渉を避けるべく中空形状になっている部分が多いことや、第2ヒートシンク7の方が第1ヒートシンク6よりも肉厚の部分が多いためである。
【0027】
図2及び図3に示すように、情報授受部8は、制御基板3及びパワー基板4の板厚方向に延びている複数の筒状部81と、筒状部81から軸方向Xと直交する方向に延びている蓋部82とを有している。各筒状部81は、外部機器から延びる配線が接続可能に形成されている。制御基板3が情報授受部8に固定された状態で、各筒状部81内のターミナルから延びる接続端子は、制御基板3における所定位置に接続されている。外部機器としては、例えばモータ2、制御基板3、及びパワー基板4に対して電力を供給する車載電源が接続されている。蓋部82は、モータハウジング5の開口端部や第1ヒートシンク6と同形状の略四角形状をなしている。複数の筒状部81は、蓋部82における外縁部寄りに配置されている。すなわち、蓋部82における中央部分には、筒状部81は配置されていない。情報授受部8は、ねじ92によって、第1ヒートシンク6に対して固定されている。
【0028】
制御基板3及びパワー基板4は、軸方向Xにおいて並んで配置されている。制御基板3は、その板厚方向においてパワー基板4と対向して配置されている。すなわち、制御基板3の板厚方向及びパワー基板4の板厚方向は、軸方向Xと一致している。制御基板3は、ねじ94によって、情報授受部8に対して固定されている。また、パワー基板4は、ねじ93によって、第1ヒートシンク6に対して固定されている。
【0029】
制御基板3は、プリント基板である基板部3aと、基板部3aに実装されている複数の制御素子からなる制御素子群3bとを有している。これらの制御素子群3bは、モータ2の駆動を制御するための素子群である。制御素子群3bには、モータ2に供給する駆動電流の目標値の演算を行うためのマイコン31が含まれている。また、制御素子群3bには、マイコン31の他に、プリドライバ32や電源回路IC33等の素子が含まれている。マイコン31は、後述のスイッチング素子41の動作を制御する。プリドライバ32は、インバータを構成するスイッチング素子41を駆動するため素子である。電源回路IC33は、車載電源からマイコン31への電力の供給あるいは電力の遮断を切り替えるための素子である。マイコン31は、基板部3aにおける情報授受部8と反対側の面に実装されている。プリドライバ32及び電源回路IC33は、基板部3aにおける情報授受部8側の面に実装されている。
【0030】
パワー基板4は、プリント基板である基板部4aと、基板部4aに実装されている複数のパワー素子からなるパワー素子群4bとを有している。これらのパワー素子群4bは、モータ2に駆動電流を供給するための素子群である。パワー素子群4bには、インバータを構成するスイッチング素子41やコンデンサ42が含まれている。パワー素子群4bには、スイッチング素子41やコンデンサ42の他に、例えば図示しないシャント抵抗等の素子が含まれている。スイッチング素子41は、基板部4aにおける第2ヒートシンク7側の面に実装されている。また、コンデンサ42は、基板部4aにおける第1ヒートシンク6側の面に実装されている。
【0031】
基板部4aには、パワー素子群4bの他に、磁気センサ43も実装されている。磁気センサ43は、基板部4aにおける第2ヒートシンク7側の面に実装されている。回転軸2aにおけるパワー基板4と対向している端部には、磁石44が取り付けられている。磁気センサ43は、回転軸2aの軸方向Xにおいて、磁石44と隙間を介して対向している。磁気センサ43は、磁石44の回転に伴い変化する磁界に応じた電気信号を生成する。この電気信号は、モータ2の回転軸2aの回転角度の演算に用いられる。
【0032】
制御基板3とパワー基板4との間は、複数の接続端子50によって接続されている。制御基板3とパワー基板4とは、複数の接続端子50を介して情報を授受している。接続端子50を介して授受する情報としては、具体的には、スイッチング素子41のオンオフを切り替えるための制御信号や磁気センサ43によって生成される電気信号が挙げられる。
【0033】
制御素子群3bの中でも制御基板3からの発熱量を支配的に占めている素子は、マイコン31である。また、パワー素子群4bの中でもパワー基板4からの発熱量を支配的に占めている素子は、スイッチング素子41である。これらの素子を比較したとき、スイッチング素子41には、マイコン31と比べて大電流が流れることから発熱量が大きい。これに起因して、パワー素子群4bからの全体の発熱量は制御素子群3bからの全体の発熱量よりも大きい。このため、パワー素子群4bが実装されているパワー基板4は、制御素子群3bが実装されている制御基板3よりも、素子群からの発熱量が大きい基板である。
【0034】
このように構成されたモータ装置1においては、パワー基板4から駆動電流がモータコイル24に対して供給されると、ステータ21に回転磁界が発生し、その回転磁界に基づいてロータ22が回転する。
【0035】
モータ装置1の放熱構造について説明する。
制御基板3と第1ヒートシンク6との軸方向Xにおける間には、制御基板3から第1ヒートシンク6への熱伝導性を高めるために、制御基板3と第1ヒートシンク6とを熱接触させる第1放熱材101が介在されている。第1放熱材101は、例えばシリコン等の熱伝導率が高い材料によって構成される流動性の放熱グリスである。第1放熱材101は、制御素子群3bのうち少なくともマイコン31が基板部3aに実装されている部分と軸方向Xにおいて重なる領域に介在されている。制御基板3は、第1放熱経路によって放熱される。第1放熱経路は、マイコン31から生じた熱が、制御基板3から第1放熱材101を介して第1ヒートシンク6へ伝達され、第1ヒートシンク6からモータハウジング5へ伝達される放熱経路である。
【0036】
パワー基板4と第1ヒートシンク6との軸方向Xにおける間には、パワー基板4から第1ヒートシンク6への熱伝導性を高めるために、パワー基板4と第1ヒートシンク6とを熱接触させる第2放熱材102が介在されている。第2放熱材102は、例えばシリコン等の熱伝導率が高い材料によって構成される流動性の放熱グリスである。第2放熱材102は、パワー素子群4bのうち少なくともスイッチング素子41が基板部4aに実装されている部分と軸方向Xにおいて重なる領域に介在されている。パワー基板4は、第2放熱経路によって放熱される。第2放熱経路は、スイッチング素子41から生じた熱が、パワー基板4から第2放熱材102を介して第1ヒートシンク6へ伝達され、第1ヒートシンク6からモータハウジング5へ伝達される放熱経路である。
【0037】
パワー基板4と第2ヒートシンク7との軸方向Xにおける間には、パワー基板4から第2ヒートシンク7への熱伝導性を高めるために、パワー基板4と第2ヒートシンク7とを熱接触させる第3放熱材103が介在されている。第3放熱材103は、例えばシリコン等の熱伝導率が高い材料によって構成される流動性の放熱グリスである。第3放熱材103は、パワー素子群4bのうち少なくともスイッチング素子41が基板部4aに実装されている部分と軸方向Xにおいて重なる領域に介在されている。制御基板3よりも発熱量が大きい基板であるパワー基板4は、第2放熱経路に加えて、第3放熱経路によっても放熱される。第3放熱経路は、スイッチング素子41から生じた熱が、パワー基板4から第3放熱材103を介して第2ヒートシンク7へ伝達され、第2ヒートシンク7からモータハウジング5へ伝達される放熱経路である。なお、これらの熱は、第1ヒートシンク6やモータハウジング5に到ると、モータ装置1の外部へと放出される。
【0038】
本実施形態の作用を説明する。
制御基板3は、板厚方向における第2軸方向側の面が第1ヒートシンク6と対向する。制御基板3に実装されている制御素子群3bは、板厚方向における第2軸方向側の面から第1ヒートシンク6へ放熱が促される。また、パワー基板4は、板厚方向における第1軸方向側の面が第1ヒートシンク6と対向するとともに、板厚方向における第2軸方向側の面が第2ヒートシンク7と対向する。制御基板3に実装されている制御素子群3bよりも実装されている発熱量が大きいパワー基板4に実装されているパワー素子群4bは、板厚方向における第1軸方向側の面から第1ヒートシンク6へ放熱が促されるとともに、板厚方における第2軸方向側の面から第2ヒートシンク7へ放熱が促される。これにより、パワー基板4については、板厚方向における両側から放熱できる分、パワー基板4からの放熱を制御基板3からの放熱よりも積極的に促すことができる。
【0039】
本実施形態の効果を説明する。
(1)パワー基板4からの放熱を制御基板3からの放熱よりも積極的に促すことができることから、モータ装置1の放熱性能を高めることができる。
【0040】
(2)各基板のそれぞれ対向するヒートシンクに対する放熱経路の好適な確保を可能としている。これにより、各基板からの放熱を効果的に促すことができる。
(3)スイッチング素子41の発熱量とマイコン31の発熱量とを比較すると、スイッチング素子41の発熱量の方が大きいことは一般的に知られている。つまり、パワー素子群4bの発熱量は、制御素子群3bの発熱量よりも大きくなる。この場合、モータ装置1について上記各構成を採用したものとすることは好適である。
【0041】
(4)パワー基板4に実装されているパワー素子群4bから第2ヒートシンク7へ伝達された熱は、第2ヒートシンク7と熱接触するモータハウジング5へ伝達される。これにより、モータハウジング5の外壁面に到った熱を、モータ装置1の外部へ放出することができる。
【0042】
(5)制御基板3に実装されている制御素子群3b及びパワー基板4に実装されているパワー素子群4bから第1ヒートシンク6へ伝達された熱は、第1ヒートシンク6と熱接触するモータハウジング5へ伝達される。これにより、モータハウジング5の外壁面に到った熱を、モータ装置1の外部へ放出することができる。
【0043】
(6)第1ヒートシンク6のハウジング部6bの外壁面に到った熱を、モータ装置1の外部へ放出することができる。
(7)制御基板3はパワー基板4よりも発熱量が小さいことから、制御基板3から第1ヒートシンク6へ伝達される熱量は相対的に小さい。このため、第1ヒートシンク6は、放熱性能に余裕ができやすい。このような第1ヒートシンク6に対してパワー基板4からも放熱できるように第2放熱経路を作ることで、パワー基板4からの放熱をさらに促すことができる。
【0044】
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・第1放熱材101、第2放熱材102、及び第3放熱材103は、例えばシリコン等の熱伝導率が高い材料によって構成される流動性の放熱グリスに限らず、固体性の放熱グリスであってもよいし、熱伝導性を高める放熱シートであってもよい。
【0045】
・第1ヒートシンク6に対しては近接して配置されるものの、第2ヒートシンク7に対しては離間して配置される基板は、制御基板3に限らず、例えば2つの基板のうち素子群からの発熱量が相対的に小さい基板であればよい。素子群からの発熱量が相対的に小さい基板については、素子群全体で発熱量が相対的に小さければよいことから、制御素子のみが実装される基板に限らず、制御素子に加えてパワー素子が実装される基板であってもよい。また、第1ヒートシンク6と第2ヒートシンク7との間に配置される基板は、パワー基板4に限らず、例えば2つの基板のうち素子群からの発熱量が相対的に大きい基板であればよい。素子群からの発熱量が相対的に大きい基板については、素子群全体で発熱量が相対的に大きければよいことから、パワー素子のみが実装される基板に限らず、パワー素子に加えて制御素子が実装される基板であってもよい。
【0046】
・制御基板3と第1ヒートシンク6との軸方向Xにおける間には第1放熱材101が介在されたが、制御基板3と第1ヒートシンク6とを直接接触させてもよいし、空気を介して熱接触させてもよい。パワー基板4と第1ヒートシンク6との軸方向Xにおける間には第2放熱材102が介在されたが、パワー基板4と第1ヒートシンク6とを直接接触させてもよいし、空気を介して熱接触させてもよい。パワー基板4と第2ヒートシンク7との軸方向Xにおける間には第3放熱材103が介在されたが、パワー基板4と第2ヒートシンク7とを直接接触させてもよいし、空気を介して熱接触させてもよい。
【0047】
・第2ヒートシンク7の熱容量は第1ヒートシンク6の熱容量より小さくてもよいし、同じであってもよい。
・第2ヒートシンク7と第1ヒートシンク6とを別種類の材料によって構成してもよい。また、第2ヒートシンク7の総質量は第1ヒートシンク6の総質量よりも小さくてもよいし、同じであってもよい。
【0048】
・制御基板3は、ねじ92によって情報授受部8に対して固定されたが、これに限らない。例えば、制御基板3は、ねじによって第1ヒートシンク6に対して固定されてもよいし、ねじによって第2ヒートシンク7に対して固定されてもよい。また、パワー基板4は、ねじ93によって第1ヒートシンク6に対して固定されたが、これに限らない。例えば、パワー基板4は、ねじによって第2ヒートシンク7に対して固定されてもよいし、ねじによって情報授受部8に対して固定されてもよい。なお、制御基板3及びパワー基板4の固定態様は、ねじに限らない。
【0049】
・第2ヒートシンク7は、パワー基板4とモータ2との間に配置されていたが、これに限らず、パワー基板4における第1ヒートシンク6と反対側に配置されていればよい。例えば、パワー基板4は、第1ヒートシンク6と第2ヒートシンク7との間に配置され、制御基板3は、第1ヒートシンク6とモータ2との間に配置されるようにしてもよい。
【0050】
・第2ヒートシンク7は、モータハウジング5に固定されていたが、これに限らない。第2ヒートシンク7の固定先は適宜変更可能であって、例えば第2ヒートシンク7は第1ヒートシンク6に固定されてもよい。
【0051】
・第1ヒートシンク6は、モータハウジング5に固定されていたが、これに限らない。第1ヒートシンク6の固定先は適宜変更可能であって、例えば第1ヒートシンク6は第2ヒートシンク7に固定されていてもよい。
【0052】
・第1ヒートシンク6は、本体部6aの周囲を取り囲むハウジング部6bを有していたが、有していなくてもよい。例えば、第1ヒートシンク6はモータハウジング5によって本体部6aの周囲を取り囲むことによって、第1ヒートシンク6がモータ装置1の外面に露出しないようにしてもよい。
【0053】
・制御基板3に実装されている制御素子群3bは1系統だけ設けられてもよいし、2系統以上が冗長的に設けられてもよい。また、パワー基板4に実装されているパワー素子群4bは1系統だけ設けられてもよいし、2系統以上が冗長的に設けられてもよい。
【0054】
・モータ装置1の形状は、適宜変更可能である。
・モータ装置1は、車両の電動パワーステアリング装置に搭載されるものに限らず、例えば車両の車輪を転舵させる転舵ユニットに搭載されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…モータ装置、2…モータ、2a…回転軸、3…制御基板、3a…基板部、3b…制御素子群、4…パワー基板、4a…基板部、4b…パワー素子群、5…モータハウジング、5a…第1凹部、6…第1ヒートシンク、6a…本体部、6b…ハウジング部、7…第2ヒートシンク、7a…第2凹部、8…情報授受部、21…ステータ、22…ロータ、23…ステータコア、24…モータコイル、24a…接続端子、25…バスバー、26…ロータコア、27…永久磁石、28…第1軸受、29…第2軸受、31…マイコン、32…プリドライバ、33…電源回路IC、41…スイッチング素子、42…コンデンサ、43…磁気センサ、44…磁石、50…接続端子、81…筒状部、82…蓋部、90~94…ねじ、101…第1放熱材、102…第2放熱材、103…第3放熱材、X…軸方向。
図1
図2
図3