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特許7413711用紙トレイ、用紙搬送装置、および画像形成装置
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  • 特許-用紙トレイ、用紙搬送装置、および画像形成装置 図1
  • 特許-用紙トレイ、用紙搬送装置、および画像形成装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】用紙トレイ、用紙搬送装置、および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 1/26 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
B65H1/26 310Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019188295
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021062950
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 拓善
(72)【発明者】
【氏名】後藤 康伸
(72)【発明者】
【氏名】小泉 峻彦
(72)【発明者】
【氏名】大石 竜我
(72)【発明者】
【氏名】中田 菜摘
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-035129(JP,A)
【文献】特開2010-173838(JP,A)
【文献】特開2014-043338(JP,A)
【文献】実開昭60-165333(JP,U)
【文献】特開2002-179282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0074720(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0002221(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108698413(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 1/00-3/68
B65H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に対し前後方向に移動可能であって、該筐体からの前方への引き出し、および後方への押し込みによる、該筐体内の、下に隙間を形成した位置への収納が可能な、用紙を収容する用紙収容部と、
前記用紙収容部に固定され、該用紙収容部の引き出し時に該用紙収容部と一体に移動して、前記隙間に入り込んだ用紙を前方に移動させる用紙移動部とを有し、
前記用紙移動部が、前記用紙収容部が前記筐体内に収納された状態にあるときには圧縮を免れ、該用紙収容部が引き出されるときに前記隙間を挟んで前記用紙収容部に対向する対向面に触れて圧縮される弾性体であることを特徴とする用紙トレイ。
【請求項2】
前記用紙移動部が、前記隙間内の、該隙間に入り込む用紙よりも後方の位置に固定され、該用紙収容部の引き出し時に、該隙間に入り込んだ用紙を前方に押すことを特徴とする請求項1に記載の用紙トレイ。
【請求項3】
前記用紙移動部が、前記用紙収容部の引き出し時に、前記隙間に入り込んだ用紙を前方に、該用紙の一部が前記筐体から突き出る突出位置まで押し出すことを特徴とする請求項2に記載の用紙トレイ。
【請求項4】
前記用紙移動部が、前記用紙収容部の引き出し時に前記突出位置まで押し出した用紙を、該用紙収容部の収納時には該突出位置に留めることを特徴とする請求項3に記載の用紙トレイ。
【請求項5】
前記弾性体が、前記隙間の用紙が入り込む領域の前記前後方向に交わる左右方向全長に亘って延びた形状を有することを特徴とする請求項に記載の用紙トレイ。
【請求項6】
筐体と、
請求項1からのうちのいずれか1項に記載の用紙トレイと、
前記用紙収容部から、前記前後方向に交わる左右方向第1の向きに用紙を取り出して上方に搬送する第1の搬送路と、該第1の搬送路を通って上方に搬送されてきた用紙を左右方向第2の向きに搬送する第2の搬送路と、該第2の搬送路を通って該第2の向きに搬送されてきた用紙を前記筐体外部に送り出す送出し路と、該第2の搬送路を通って該第2の向きに搬送されてきた用紙の搬送経路が前記送出し路との間で切り換えられて該用紙が送り込まれ、該用紙を下方に搬送しさらに上方に搬送する、前記隙間に繋がる第3の搬送路と、該第3の搬送路を通って下方に搬送され、さらに上方に搬送されてきた用紙を、前記第2の搬送路の下側を通って前記第1の向きに搬送して前記第2の搬送路に用紙を送り込む第4の搬送路とを有する用紙搬送路を形成して用紙を搬送する用紙搬送部とを備えたことを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項7】
前記用紙搬送部が、互いの間を開放可能に用紙を挟持して、前記第2の搬送路を搬送されてきた用紙を下方に搬送して前記第3の搬送路内に送り込み、さらに該第3の搬送路に送り込んだ用紙を上方に搬送して前記第4の搬送路に送り込む一対の用紙駆動部を備えたことを特徴とする請求項に記載の用紙搬送装置。
【請求項8】
前記用紙収容部が前記筐体内に収納された状態にあるときには前記弾性体が圧縮を免れ、該用紙収容部が引き出されるときに該弾性体が前記対面に触れて圧縮されるように、前記対面が高低差を有することを特徴とする請求項に記載の用紙搬送装置。
【請求項9】
請求項に記載の用紙搬送装置を備え、前記第2の搬送路を搬送されている用紙上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙トレイ、用紙搬送装置、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用紙を収容する用紙トレイを備え、その用紙トレイから用紙を取り出してその用紙の両面に画像を形成する画像形成装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、用紙の両面に画像を形成する画像形成装置において、用紙搬送路の清掃機構の工夫が提案されている。
【0004】
また、特許文献2には、用紙の両面に画像を形成する画像形成装置において、用紙トレイの下に入り込んだ用紙を、用紙トレイの引出しあるいは開閉カバーの動きに連動するリンク機構を含む押出部により押し出す構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-241012号公報
【文献】特開2004-035129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、用紙トレイの下に入り込んだ用紙を取り出すための、上掲の特許文献2に提案されたリンク機構による押出しよりも簡単な構造を備えた用紙トレイ、用紙搬送装置、および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
筐体に対し前後方向に移動可能であって、該筐体からの前方への引き出し、および後方への押し込みによる、該筐体内の、下に隙間を形成した位置への収納が可能な、用紙を収容する用紙収容部と、
前記用紙収容部に固定され、該用紙収容部の引き出し時に該用紙収容部と一体に移動して、前記隙間に入り込んだ用紙を前方に移動させる用紙移動部とを有し、
前記用紙移動部が、前記用紙収容部が前記筐体内に収納された状態にあるときには圧縮を免れ、該用紙収容部が引き出されるときに前記隙間を挟んで前記用紙収容部に対向する対向面に触れて圧縮される弾性体であることを特徴とする用紙トレイである。
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記用紙移動部が、前記隙間内の、該隙間に入り込む用紙よりも後方の位置に固定され、該用紙収容部の引き出し時に、該隙間に入り込んだ用紙を前方に押すことを特徴とする請求項1に記載の用紙トレイである。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記用紙移動部が、前記用紙収容部の引き出し時に、前記隙間に入り込んだ用紙を前方に、該用紙の一部が前記筐体から突き出る突出位置まで押し出すことを特徴とする請求項2に記載の用紙トレイである。
【0010】
請求項4に係る発明は、
前記用紙移動部が、前記用紙収容部の引き出し時に前記突出位置まで押し出した用紙を、該用紙収容部の収納時には該突出位置に留めることを特徴とする請求項3に記載の用紙トレイである。
【0012】
請求項に係る発明は、
前記弾性体が、前記隙間の用紙が入り込む領域の前記前後方向に交わる左右方向全長に亘って延びた形状を有することを特徴とする請求項5に記載の用紙トレイである。
【0013】
請求項に係る発明は、
筐体と、
請求項1からのうちのいずれか1項に記載の用紙トレイと、
前記用紙収容部から、前記前後方向に交わる左右方向第1の向きに用紙を取り出して上方に搬送する第1の搬送路と、該第1の搬送路を通って上方に搬送されてきた用紙を左右方向第2の向きに搬送する第2の搬送路と、該第2の搬送路を通って該第2の向きに搬送されてきた用紙を前記筐体外部に送り出す送出し路と、該第2の搬送路を通って該第2の向きに搬送されてきた用紙の搬送経路が前記送出し路との間で切り換えられて該用紙が送り込まれ、該用紙を下方に搬送しさらに上方に搬送する、前記隙間に繋がる第3の搬送路と、該第3の搬送路を通って下方に搬送され、さらに上方に搬送されてきた用紙を、前記第2の搬送路の下側を通って前記第1の向きに搬送して前記第2の搬送路に用紙を送り込む第4の搬送路とを有する用紙搬送路を形成して用紙を搬送する用紙搬送部とを備えたことを特徴とする用紙搬送装置である。
【0014】
請求項に係る発明は、
前記用紙搬送部が、互いの間を開放可能に用紙を挟持して、前記第2の搬送路を搬送されてきた用紙を下方に搬送して前記第3の搬送路内に送り込み、さらに該第3の搬送路に送り込んだ用紙を上方に搬送して前記第4の搬送路に送り込む一対の用紙駆動部を備えたことを特徴とする請求項に記載の用紙搬送装置である。
【0015】
請求項に係る発明は、
記用紙収容部が前記筐体内に収納された状態にあるときには前記弾性体が圧縮を免れ、該用紙収容部が引き出されるときに該弾性体が前記対面に触れて圧縮されるように、前記対面が高低差を有することを特徴とする請求項に記載の用紙搬送装置である。
【0016】
請求項に係る発明は、
請求項に記載の用紙搬送装置を備え、前記第2の搬送路を搬送されている用紙上に画像を形成することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1および請求項2の用紙トレイ、請求項の用紙搬送装置、並びに、請求項の画像形成装置によれば、リンク機構を備えるよりも簡易な構造で用紙トレイの下に入り込んだ用紙を前方に移動させることができる。
また、請求項1および請求項2の用紙トレイ、請求項6の用紙搬送装置、並びに、請求項9の画像形成装置によれば、弾性体が常に圧縮されている場合と比べ、弾性体の劣化が抑えられる。
さらに、請求項1および請求項2の用紙トレイ、請求項6の用紙搬送装置、並びに、請求項9の画像形成装置によれば、用紙収容部が引き出されるときにも弾性体が対向面に触れない場合、あるいは圧縮されない場合と比べ、用紙が予め定められた位置まで押し出されないおそれが低減する。
【0019】
請求項3の用紙トレイによれば、用紙移動部が、用紙を筐体内に留まる位置まで押し出す場合と比べ、用紙を容易に取り出すことができる。
【0020】
請求項4の用紙トレイによれば、突出位置まで押し出した用紙が、用紙収容部の収納時に筐体内に向かって移動する構造と比べ、用紙を容易に取り出すことができる。
【0022】
請求項の用紙トレイによれば、弾性体が左右方向全長に亘っては延びていない場合と比べ、紙粉等が取り除かれやすい。
【0023】
請求項7の用紙搬送装置によれば、一対の用紙駆動部が常に閉じた状態にある場合と比べ単位時間当たりの用紙搬送枚数を増加させ、かつ、互いの間を開放可能に用紙を挟持する機構を備えたことにより増加するおそれのある、用紙が用紙トレイの下に入り込むという危険にも対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態としての画像形成装置の模式図である。
図2】筐体の底板と用紙トレイとの間の隙間に用紙が潜り込んだ状態を示した模式図である。
図3図2と同様、筐体の底板と用紙トレイとの位置関係を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態としての画像形成装置の模式図である。この画像形成装置には、本発明の一実施形態としての用紙トレイおよび本発明の一実施形態としての用紙搬送装置が含まれている。
【0028】
この図1に示す画像形成装置10には、筐体11内に4つの用紙トレイ20が備えられている。これらの用紙トレイ20は、筐体11からの、この図1の紙面に垂直な前方への引き出し、および後方への押し込みによる筐体11内への収納が可能である。そして、各用紙トレイ20には、各々の種類の用紙が、積み重ねられた状態に収容される。この画像形成装置10では、これらの用紙トレイ20のうちの指定された用紙トレイ20から、その用紙トレイ20に収容されている用紙が取り出されて搬送され、その取り出された用紙上に画像が形成され、その画像が形成された用紙が排紙トレイ12上に排出される。用紙搬送については、後述する。
【0029】
この画像形成装置10の筐体11内の上部には、4つの画像形成エンジン30Y,30M,30C,30Kが配備されている。各画像形成エンジン30Y,30M,30C,30Kでは、それぞれY(イエロー),M(マゼンタ),C(サイアン),K(黒)の各色のトナーによるトナー像が形成される。
【0030】
これらの画像形成エンジン30Y,30M,30C,30Kの直下には、中間転写ベルト31が配置されている。この中間転写ベルト31は、複数のロール32a,32b,2cに巻き架けられて矢印Aの向きに循環移動する。そして、各画像形成エンジン30Y,30M,30C,30Kで形成された各色のトナー像は、一次転写器33Y,33M,33C,33Kの作用により、中間転写ベルト31上に順次に重なるように転写される。この中間転写ベルト31上に転写されたトナー像は、中間転写ベルト31の循環移動に伴って搬送され、二次転写器34の作用により、タイミングを合わせて搬送されてきた用紙上に転写される。用紙上に転写されたトナー像は、定着器35による加熱および加圧を受けてその用紙上に定着される。そして、定着トナー像からなる画像が形成された用紙は、最終的には、排紙トレイ12上に排出される。
【0031】
また、この画像形成装置10には、制御部40が備えられている。この制御部40は、各画像形成エンジン30Y,30M,30C,30Kによるトナー像の形成、中間転写ベルト31上への転写、用紙上への転写、用紙搬送等、この画像形成装置10の動作の全体の制御を担っている。
【0032】
次に、用紙搬送経路について説明する。この用紙搬送経路上には搬送ロール等からなる多数の搬送部材や用紙の進路を切り換えるゲート等が備えられているが、この図1には、本実施形態の特徴点の説明に必要となる3か所の搬送ロール51,52,53のみ示されている。
【0033】
画像形成にあたっては、いずれかの用紙トレイ20から図1の左側に向かって矢印Bの向きに用紙が取り出されて、矢印Cの向きに上方に搬送される。用紙トレイ20のうちの最下段の用紙トレイ21は、本発明にいう用紙収容部の一例に相当する。また、用紙が矢印Bの向きに取り出されて矢印Cの向きに上方に搬送される搬送路は、本発明にいう第1の搬送路の一例に相当する。
【0034】
また、矢印Cの向きに上方に搬送されてきた用紙は、矢印Bの向きとは逆向きの矢印Dの向きに搬送される。この矢印Dの向きへ搬送路は、本発明にいう第2の搬送路の一例に相当する。この矢印Dの向きへの第2の搬送路を搬送されている用紙上に画像が形成される。
【0035】
そして、二次転写器34の作用によりトナー像の転写を受け、さらに定着器35の作用により定着トナー像からなる画像が形成された用紙は、用紙の両面に画像を形成する両面プリントモードの場合を除き、矢印Eの向きに搬送され、排紙トレイ12上に排出される。この矢印Eの向きへの搬送路は、本発明にいう送出し路の一例に相当する。
【0036】
この画像形成装置10には、手差しトレイ13が備えられていて、この手差しトレイ13から用紙を送り込むことも可能である。この手差しトレイ13から用紙を送り込むときは、この手差しトレイ13上に用紙を載せる。この手差しトレイ13上の用紙は、矢印Fの向きに引き込まれて、矢印Dの向きに進む。その後の用紙の搬送路については、用紙トレイ20から取り出された用紙の搬送路と同一である。
【0037】
用紙の両面に画像を形成する両面プリントモードの場合、用紙は、以下の搬送路を通るように搬送される。
【0038】
先ずは、用紙のおもて面に画像が形成される。用紙のおもて面に画像を形成するにあたっては、上記と同様に、いずれかの用紙トレイ20から図1の左側に向かって矢印Bの向きに用紙が取り出されて、矢印Cの向きに上方に搬送され、さらに矢印Dの向きに搬送される。そして、矢印Dの向きに搬送された用紙のおもて面にトナー像の転写を受け、さらに、そのおもて面に、定着トナー像からなる画像が形成される。
【0039】
このおもて面に画像が形成された用紙は、矢印Eの向きへの搬送に代わり、矢印Gの向きに進み、搬送ロール51により矢印Hの向きに下方に搬送され、搬送ロール52により、矢印Iの向きにさらに下方に送り込まれる。
【0040】
搬送ロール52は正逆回転可能な搬送ロールであり、矢印Iの向きに下方に送り込んだ用紙の上端が未だ搬送ロール52よりも上方にあるときに逆転を開始する。ここで、今回の画像形成に用いている用紙の搬送方向の長さによって、その用紙が短いときは、逆転を開始する時点における用紙は、下方に垂れ下がった姿勢となっている。
【0041】
搬送ロール52の、筐体11の底板111からの高さよりも長い用紙の場合は、以下の姿勢となる。
【0042】
筐体11内に収容された状態にある、複数の用紙トレイ20のうちの最下段の用紙トレイ21と、筐体11の底板111との間には隙間Sが形成されている。そして、搬送ロール52から下に延びる搬送路は、その隙間Sに繋がっている。このため、搬送方向の長さの長い用紙は、矢印Iの向き下方に搬送され、さらに、その用紙の先端部は隙間Sに入り込んで矢印Jの向きに搬送される。ここで、底板111の上面は、本発明にいう対抗面の一例に相当する。
【0043】
搬送ロール52は、下方に送り込んだ用紙の上端が未だ搬送ロール52よりも上方にあるときに逆転を開始する。すると、用紙の長さが長いときはその用紙の下方の先端部分は矢印Kの向きに搬送されさらに矢印Lの向きに上方に搬送される。すると、その用紙は、今度は矢印Mの向きに搬送され、さらに搬送ロール53により、矢印Dの向きへの搬送路の下側を通って矢印Dの向きとは逆向きの矢印Nの向きに搬送される。ここで、矢印Iの向きに下向きに搬送され、さらに矢印Lの向きに上向きに搬送される搬送路は、本発明にいう第3の搬送路の一例に相当する。また、矢印Nの向きに搬送される搬送路は、本発明にいう第4の搬送路の一例に相当する。本実施形態の、上記の第1~第4の搬送路に相当する用紙搬送路を形成して用紙を搬送する構造は、本発明にいう用紙搬送部の一例に相当する。
【0044】
矢印Nの向きに搬送された用紙は、矢印Oの向きに搬送されて矢印Dの向きの搬送路に合流する。このとき、用紙はおもて面とうら面とが逆向きとなっており、矢印Dの向きに進む間に、今度はその用紙のうら面にトナー像が転写される。うら面に転写されたトナー像は、定着器35でその用紙のうら面上に定着される。これにより、用紙のおもて面とうら面との両面に画像が形成される。両面に画像が形成された用紙は、今度は矢印Eの向きに進み、排紙トレイ12上に排出される。
【0045】
ここで、両面プリントモードにおいて、その用紙のおもて面に画像が形成されて矢印G,H,Iの向きに進み、シーケンス上の何らかのトラブル、例えば、搬送ロール52の逆転への移行が少し遅れたこと、あるいはユーザの用紙セットミスで実際の用紙が指定した用紙よりも長さの短い用紙だった場合などを原因として、用紙の上端が搬送ロール52を抜けて矢印Iの向きに落下した場合を考える。
【0046】
ここで、搬送ロール51により用紙が矢印Hの向きに搬送され、さらにその搬送が搬送ロール52に受け継がれて、その搬送ロール52により矢印Iの向きに搬送され、その搬送ロール52が逆転して用紙が矢印Lの向きに搬送され、さらに矢印Mの向きに搬送されて、その用紙の搬送が搬送ロール53に受け継がれる。ここで、長さの長い用紙を使用していると、その用紙の搬送が搬送ロール53に受け継がれても、その用紙の後端が未だ搬送ロール52を抜けるよりも前に、搬送ロール51により搬送されている次の用紙の先端が搬送ロール52に達する場合があり得る。この実施形態の場合は、搬送ロール52は、互いの間を開放可能に用紙を挟持する2本のロールで構成されている。すなわち、2本のロールが間が開いた時には、その2本のロールの間を用紙が自由に通過することができる。先の用紙の後端が搬送ロール52を抜けた段階では次の用紙は未だ搬送ロール51に搬送されていて、搬送ロール52は、先の用紙の後端が搬送ロール52を抜けた段階で閉状態となり、後の用紙の、矢印Iの向きへの搬送を搬送ロール51から受け継ぐ。本実施形態の場合、このようなシーケンスを採用することにより、画像形成の生産性を向上させている。ただし、その一方で、搬送ロール52が開閉することから、用紙が搬送ロール52を抜けて落下する危険性が増加するおそれがある。
【0047】
この落下した用紙の長さが比較的長い場合は、用紙トレイ21の下の隙間に潜り込むのはその用紙の一部のみあって、その用紙の上方の部分は上下に延びる搬送路内に残っている。この筐体11の、その上下に延びる搬送路のそった壁面には、扉14が設置されているため、この扉14を開いてその落下した用紙を取り出すことができる。しかし、そのときに使用していた用紙が、例えばはがきサイズなど、長さの短い用紙だったときは、その用紙が全長に亘って用紙トレイ21の下の隙間Sに潜り込んでしまうことがあり得る。
【0048】
その隙間Sに潜り込んだ用紙をそのままにしておくと、その潜り込んだ用紙に次の用紙が当接して、その用紙にしわや折り曲げを生じさせたり搬送不良を生じさせたりするおそれがあるため、用紙が潜り込んだときは、その用紙を取り除いておく必要がある。ユーザが用紙トレイ52を筐体から引き出して、さらに筐体から取り外すことができる構造の場合は、用紙が潜り込んだことにユーザが気づけばその用紙を取り出すことができる。ただし、その用紙トレイ21に大きな用紙が多数枚積層されていた場合は、その用紙トレイ21を取り外すことはユーザにとって大きな負担となり、危険も伴う。このため、本実施形態の場合、用紙トレイ21は、ユーザには取り外すことはできない構造となっている。また、筐体11の底は、防火等の安全上の要請から底板111で塞いでおく必要がある。そこで、本実施形態の場合、用紙トレイ21の底板211に、ガスケットとして使用される、スポンジ様の弾性体60を貼り付け、隙間Sに潜り込んだ用紙があるときは、用紙トレイ21を筐体11から引き出したときに、その用紙をその弾性体60で押し出す構造を採用している。
【0049】
図2は、筐体の底板と用紙トレイとの間の隙間に用紙が潜り込んだ状態を示した模式図である。ここで、図2(A)は、用紙トレイを引き出す前の図、図2(B)は、用紙トレイを引き出した状態の図である。用紙トレイ21は、図2(A)に示す矢印Xの向きに引き出される。すなわち、矢印Xの向きが、図1の紙面に垂直な前方である。
【0050】
筐体11(図1参照)の底板111の床面の高さは、奥側(図2の右側)の一部111aが低くなっていて、それよりも前側の部分とは高低差を有する。そしてその間は斜面111bで繋がれている。そして、用紙トレイ21の底板211の奥の部分には、弾性体60が張り付けられている。この弾性体60は、本発明にいう用紙移動部の一例に相当する。また、用紙トレイ21は、本発明にいう用紙収容部の一例に相当する。
【0051】
筐体11内に収容されている状態における用紙トレイ21の奥の部分は、筐体11の底板111の低くなっている部分111aの上方にある。この弾性体60は、隙間Sの高さよりも厚いが、底板111の低くなっている部分111aと用紙トレイ21の底板211との間隔よりは薄く、したがって、用紙トレイ21が筐体11に収容されている状態では、弾性体60は、筐体11の底板111には接していない。
【0052】
ここで、図2(A)に示すように、隙間Sに用紙Pが入り込む。そこで、図2(B)に示すように、用紙トレイ21を矢印Xで示す前方に引き出す。すると、弾性体60は、斜面111bを通過する間に筐体11の底板111に接して弾性的に縮み、用紙Pを、筐体11から前方(図2の左側)に突き出た突出位置まで押し出す。そして、用紙トレイ21を再び筐体内に押し込むと、弾性体60は、用紙トレイ21と一緒に、用紙Pをその突出位置に留めたまま、用紙トレイ21と一緒に、筐体11内の後方の位置に戻る。そこで、突出位置にあって筐体11から食み出た状態にある用紙をつまんで、その用紙を筐体11から取り出すことができる。
【0053】
ここで、この構造の場合、用紙トレイ21が筐体11内に収容されている状態では、弾性体60は圧縮されていない。したがって、弾性体が常に圧縮されている場合と比べ、弾性体の劣化が抑えられる。また、この弾性体60は、用紙トレイ21が筐体11から引き出されるときには、筐体11の底板111に押されて圧縮される。これにより、弾性体60が筐体11の底板111に触れない場合、あるいは圧縮されない場合と比べ、用紙が予め定められた位置まで押し出されないおそれが低減する。
【0054】
また、この弾性体60は、図1に示すように、用紙トレイ21の、図1の左右方向の全幅に亘って延びている。この用紙トレイ21の全幅は、隙間Sの、用紙Pが入り込む領域の、図1の左右方向全長でもある。本実施形態では、このように延びた形状の弾性体60を採用していることから、1つには、どんなに短い用紙が隙間Sのどの位置に入り込んでも、弾性体60で押して取り出すことができる。また、もう1つには、以下に示す付随的な作用を得ることができる。
【0055】
図3は、図2と同様、筐体の底板と用紙トレイとの位置関係を示した模式図である。ここで、ここで、図3(A)は、用紙トレイを引き出す前の図、図3(B)は、用紙トレイを引き出した状態の図である。図2と同様、用紙トレイ21は、図3(A)に示す矢印Xの向きに引き出される。
【0056】
隙間Sは、用紙搬送路の一部として使用される。しかも最下部にある。このため、この隙間Sには、紙粉等の塵埃dが溜まりやすい。図3(B)に示すように用紙トレイ21を引き出すと、塵埃dは前方に押され、掃除のしやすい状態となる。この塵埃dを時折取り除くことにより、その塵埃dが用紙に付着して用紙を汚すおそれが低減する。
【0057】
なお、本実施形態では、本発明にいう用紙移動部の一例として、圧縮可能な弾性体60を採用しているが、本発明にいう用紙移動部は圧縮可能な弾性体60の限られるものではなく、例えば、筐体11の底板111に接する、PET等からなるフイルム、あるいは金属板等であってもよい。
【0058】
また、ここでは、底板111の上面を、本発明にいう対抗面としているが、本発明にいう対抗面は底板111の上面とは限らない。例えば底板111の上に、この画像形成装置10を構成している何らかの部材あるいは装置が配置されていて、用紙トレイ21が、その部材あるいは装置の上に、その部材あるいは装置との間に隙間をもって収容されている場合は、その部材あるいは装置の上面が対抗面であってもよい。
【0059】
また、ここでは、電子写真方式を採用して画像を形成する画像形成装置10およびその画像形成装置に組み込まれた用紙搬送装置を例に挙げて説明したが、本発明の画像形成装置は、電子写真方式以外の、例えばインクジェット方式等、電子写真方式以外の方式を採用して画像を形成する画像形成装置であってもよく、本発明の用紙搬送装置は、電子写真方式以外の方式を採用して画像を形成する画像形成装置組み込まれた用紙搬送装置であってもよい。さらには、本発明の用紙搬送装置は、画像形成装置以外の、用紙を反転する必要のある装置に組み込まれる用紙搬送装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
10 画像形成装置
11 筐体
111 筐体の底板
111a 底板の奥の部分
111b 底板の斜面
12 排紙トレイ
14 扉
20 用紙トレイ
21 最下段の用紙トレイ
211 最下段の用紙トレイの底板
51,52,53 搬送ロール
60 弾性体
d 塵埃
P 用紙
S 隙間
図1
図2
図3