IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図1
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図2
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図3
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図4
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図5
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図6
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図7
  • 特許-工作機械及び工作機械の制御方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】工作機械及び工作機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/4155 20060101AFI20240109BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G05B19/4155 M
G05B19/18 C
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019203201
(22)【出願日】2019-11-08
(65)【公開番号】P2021077083
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 信博
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀貢
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-278743(JP,A)
【文献】特開平04-233007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18 - 19/46
B23Q 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを加工するための第1工具を送る第1工具駆動部と、
ワークを加工するための第2工具を送る第2工具駆動部と、
前記第1工具駆動部及び前記第2工具駆動部の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記第1工具駆動部に対する前記第1工具の送り位置及び前記第1工具の送り速度に関する第1指令と、前記第2工具駆動部に対する前記第2工具の送り位置及び前記第2工具の送り速度に関する第2指令とを含む1つのブロックである動作指令を受け付ける指令受付部と、
前記指令受付部で受け付けた前記動作指令から前記第1指令と前記第2指令とをそれぞれ識別する指令識別部と、
前記指令識別部により識別された前記第1指令を前記第1工具駆動部に出力する第1指令出力部と、
前記指令識別部より識別された前記第2指令を前記第2工具駆動部に出力する第2指令出力部と、を備え
前記動作指令は、前記第1工具による前記ワークに対する加工動作と、前記第2工具による前記ワークに対する加工動作とを含む、工作機械。
【請求項2】
ワークを保持する主軸をさらに備え、
前記第1工具駆動部及び前記第2工具駆動部のそれぞれは、前記主軸に保持されたワークの異なる位置に対してそれぞれ前記第1工具及び前記第2工具を送る、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記第1工具駆動部による前記第1工具の送り位置と、前記第2工具駆動部による前記第2工具の送り位置とが異なる、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1工具駆動部による前記第1工具の送り速度と、前記第2工具駆動部による前記第2工具の送り速度とが異なる、請求項2又は請求項3に記載の工作機械。
【請求項5】
ワークを加工するための第1工具を送る第1工具駆動部と、ワークを加工するための第2工具を送る第2工具駆動部とを備える工作機械の制御方法であって、
前記第1工具駆動部に対する前記第1工具の送り位置及び前記第1工具の送り速度に関する第1指令と、前記第2工具駆動部に対する前記第2工具の送り位置及び前記第2工具の送り速度に関する第2指令とを含む1つのブロックである動作指令を受け付けることと、
前記動作指令から前記第1指令と前記第2指令とをそれぞれ識別することと、
前記第1指令を前記第1工具駆動部に出力することと、
前記第2指令を前記第2工具駆動部に出力することと、を含み、
前記動作指令は、前記第1工具による前記ワークに対する加工動作と、前記第2工具による前記ワークに対する加工動作とを含む、工作機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械及び工作機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤等の工作機械では、工具を所定の方向に送ることによりワークを加工している。この工作機械において、2つの工具を用いてワークを加工するために、2つの工具をそれぞれ独立した工具駆動部により送ることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の工作機械では、工具の移動に関して数値制御を行っており、動作プログラム(加工プログラム)の各動作指令(各ブロック)において、工具の送り位置及び送り速度についての指示値を含む構成が開示されている。工作機械における数値制御では、例えば、1つのブロックである動作指令にX方向及びZ方向などの2つの送り位置(2つの座標値)を含んでいると、2つの送り位置を合成した座標値(X、Z)に向けて工具を直線で移動させるように、直線補間を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5132842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した工作機械のように、2つの工具をそれぞれ移動させる場合、1つの動作プログラム(1つのブロックである動作指令)により2つの工具駆動部を動作させれば制御が容易となる。しかしながら、1つのブロックである動作指令に2つの工具に対する2つの送り位置を含ませると、上記のように2つの送り位置に基づいて直線補間されてしまい、2つの工具による加工を同時に開始させかつ同時に終了させるように制御される。その結果、2つの工具のそれぞれにおいて、ワークを加工する際の適した送り速度(適した加工条件)から外れてしまう場合がある。
【0005】
本発明は、1つのブロックである動作指令における工具駆動部ごとの個別の送り位置及び送り速度に基づいて、2つの工具をそれぞれ適した速度で送りつつワークを加工することが可能な工作機械及び工作機械の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に係る工作機械は、ワークを加工するための第1工具を送る第1工具駆動部と、ワークを加工するための第2工具を送る第2工具駆動部と、第1工具駆動部及び第2工具駆動部の動作を制御する制御装置と、を備え、制御装置は、第1工具駆動部に対する第1工具の送り位置及び第1工具の送り速度に関する第1指令と、第2工具駆動部に対する第2工具の送り位置及び第2工具の送り速度に関する第2指令とを含む1つのブロックである動作指令を受け付ける指令受付部と、指令受付部で受け付けた動作指令から第1指令と第2指令とをそれぞれ識別する指令識別部と、指令識別部により識別された第1指令を第1工具駆動部に出力する第1指令出力部と、指令識別部より識別された第2指令を第2工具駆動部に出力する第2指令出力部と、を備え、動作指令は、第1工具によるワークに対する加工動作と、第2工具によるワークに対する加工動作とを含む。
【0007】
また、ワークを保持する主軸をさらに備え、第1工具駆動部及び第2工具駆動部のそれぞれは、主軸に保持されたワークの異なる位置に対してそれぞれ第1工具及び第2工具を送るようにしてもよい。また、第1工具駆動部による第1工具の送り位置と、第2工具駆動部による第2工具の送り位置とが異なってもよい。また、第1工具駆動部による第1工具の送り速度と、第2工具駆動部による第2工具の送り速度とが異なってもよい。
【0008】
本発明の態様に係る工作機械の制御方法は、ワークを加工するための第1工具を送る第1工具駆動部と、ワークを加工するための第2工具を送る第2工具駆動部とを備える工作機械の制御方法であって、外部から、第1工具駆動部に対する第1工具の送り位置及び第1工具の送り速度に関する第1指令と、第2工具駆動部に対する第2工具の送り位置及び第2工具の送り速度に関する第2指令とを含む1つのブロックである動作指令を受け付けることと、動作指令から第1指令と前記第2指令とをそれぞれ識別することと、第1指令を第1工具駆動部に出力することと、第2指令を第2工具駆動部に出力することと、を含み、動作指令は、第1工具によるワークに対する加工動作と、第2工具によるワークに対する加工動作とを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様に係る工作機械及び工作機械の制御方法によれば、第1指令と第2指令とを含む1つのブロックである動作指令を受け付けた場合、動作指令から第1指令と第2指令とをそれぞれ識別して第1指令を第1工具駆動部に出力し、第2指令を第2工具駆動部に出力する。その結果、第1工具駆動部は、第1指令に基づいた第1工具の送り位置及び第1工具の送り速度により第1工具を送ってワークを加工する。また、第2工具駆動部は、第2指令に基づいた第2工具の送り位置及び第2工具の送り速度により第2工具を送ってワークを加工する。このように、ワークを加工する際に、第1工具駆動部と第2工具駆動部とをそれぞれ第1指令、第2指令に基づいた個別の送り位置、送り速度により第1工具及び第2工具を送ってワークを加工するので、2つの第1工具及び第2工具をそれぞれ適した送り速度で送りつつワークを加工することができる。
【0010】
また、ワークを保持する主軸をさらに備え、第1工具駆動部及び第2工具駆動部のそれぞれは、主軸に保持されたワークの異なる位置に対してそれぞれ第1工具及び第2工具を送る形態では、2つの第1工具及び第2工具がワークの異なる位置を加工するので、ワークの加工効率を向上させることができる。また、第1工具駆動部による第1工具の送り位置と、第2工具駆動部による第2工具の送り位置とが異なる形態では、2つの第1工具及び第2工具によってワークの異なる位置を精度よく加工することができる。また、第1工具駆動部による第1工具の送り速度と、第2工具駆動部による第2工具の送り速度とが異なる形態では、2つの第1工具及び第2工具における適した送り速度が異なる場合に、2つの第1工具及び第2工具をそれぞれ適した送り速度で送りつつワークを加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態に係る旋盤の一例を示す概略構成図である。
図2図1に示す旋盤の制御に用いられる動作指令の一例を示す図である。
図3】制御装置の機能ブロック構成の一例を示す図である。
図4】制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る旋盤において、動作プログラムの具体例を示す図である。
図6】比較例に係る旋盤において、動作プログラムを示す図である。
図7】第2実施形態に係る旋盤の一例を示す概略構成図である。
図8】第2実施形態に係る旋盤において、動作プログラムの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこの形態に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きく又は強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品とは形状又は大きさが異なっている場合がある。また、図面における旋盤(工作機械)100、100Aは、要部について示している。各図においては、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系において、Z方向は、水平面に沿った主軸10の回転軸11の方向をZ方向と表記し、水平面に直交する鉛直方向をX方向と表記する。また、図示を省略しているが、水平面に沿う方向であってZ方向と直交する方向をY方向とする。X方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の方向と反対の方向が-方向であるとして説明する。
【0013】
[第1実施形態]
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る旋盤100の一例を示す概略構成図である。旋盤(工作機械)100は、図1に示すように、主軸10と、刃物台20と、制御装置50と、を備える。主軸10は、旋盤100に備える不図示の軸受に、水平軸方向(Z方向)に沿った回転軸11周りに回転可能に支持されている。主軸10は、旋盤100に備える不図示のモータによって、回転軸11周りに回転駆動される。主軸10には、ワーク1を保持するための不図示の主軸チャックが設けられている。主軸チャックは、例えば、三つの爪部が回転軸11周りに配置され、各爪部が回転軸11を中心とする放射方向に進退可能に設けられている。主軸10は、主軸チャックにより保持した状態で回転駆動することにより、ワーク1を回転軸11周りに回転させる。
【0014】
刃物台20は、第1刃物台21と、第2刃物台22と、第1工具駆動部23と、第2工具駆動部24と、を備えている。第1刃物台21は、主軸10に保持されたワーク1を加工する第1工具41を保持する。第1工具41は、第1刃物台21に備える不図示のホルダによって第1刃物台21の所定位置に着脱可能に保持される。第1刃物台21は、例えば、タレット状刃物台又はくし歯状刃物台など、複数の第1工具41を保持可能な形態であってもよい。この場合、複数の第1工具41のうちワーク1の加工に用いられる第1工具41が選択されて用いられる。
【0015】
第1工具駆動部23は、主軸10に保持されたワーク1に対して、X方向に第1刃物台21を送る。第1刃物台21がX方向に送られることにより、主軸10に保持されて回転するワーク1は、第1工具41によってX方向に加工される。第1工具駆動部23は、例えば、電動モータ及びボールねじ機構を用いた構成等が用いられる。本実施形態において、第1工具駆動部23は、第1刃物台21をX方向に送っているが、この形態に限定されず、例えば、第1刃物台21をX方向、Y方向(X方向とZ方向とに直交する方向)、Z方向のそれぞれの方向、及びこれらの方向を合成した方向に送るような形態であってもよい。
【0016】
第2刃物台22は、主軸10に保持されたワーク1を加工する第2工具42を保持する。第2工具42は、第2刃物台22に備える不図示のホルダによって第2刃物台22の所定位置に着脱可能に保持される。第2刃物台22は、例えば、タレット状刃物台又はくし歯状刃物台など、複数の第2工具42を保持可能な形態であってもよい。この場合、複数の第2工具42のうちワーク1の加工に用いられる第2工具42が選択されて用いられる。
【0017】
第2工具駆動部24は、主軸10に保持されたワーク1に対して、Z方向に第2刃物台22を送る。第2刃物台22がZ方向に送られることにより、主軸10に保持されて回転するワーク1は、第2工具42によってZ方向に加工される。第2工具駆動部24は、例えば、電動モータ及びボールねじ機構を用いた構成等が用いられる。本実施形態において、第2工具駆動部24は、第2刃物台22をZ方向に送っているが、この形態に限定されず、例えば、第2刃物台22をX方向、Y方向、Z方向のそれぞれの方向、及びこれらの方向を合成した方向に送るような形態であってもよい。
【0018】
第1刃物台21と第2刃物台22とは、旋盤100において異なる位置に設けられている。従って、第1刃物台21の第1工具41と、第2刃物台22の第2工具42とは、ワーク1の異なる位置に対して加工を行う。また、第1工具41と第2工具42とは、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24のそれぞれによって異なる方向(X方向、Z方向)に移動しつつワーク1を加工する。すなわち、第1工具駆動部23による第1工具41の送り位置(座標値)と、第2工具駆動部24による第2工具42の送り位置(座標値)とは、互いに異なっている。なお、ワーク1への加工は、主軸10を回転軸11周りに回転させて行うことに限定されない。ワーク1を主軸10に保持させて回転させずに第1工具41等により加工する形態であってもよい。この場合、第1工具41等としては、例えば、ドリル、タップ、エンドミル、フライスなどの回転工具が用いられる。
【0019】
制御装置50は、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24の動作を制御する。制御装置50は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、記憶装置、通信装置等を備えており、各種情報の処理を行うコンピュータ装置である。制御装置50は、例えば、各種の情報(データ)の処理、情報の記憶、情報の入出力、情報の通信(送受信)等を行う。制御装置50は、例えば、外部から受け付ける動作プログラム60に含まれる動作指令70に基づいて、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24の動作を制御する。動作プログラム60は、例えば、オペレータによって制御装置50に入力されてもよいし、他の制御装置から通信等により制御装置50に送られてもよい。すなわち、動作プログラム60は、他の装置から(外部から)制御装置50に送られてもよいし、制御装置50の内部(例えば、後述するプログラム記憶部32など)に予め記憶されていてもよい。
【0020】
図2は、旋盤100の制御に用いられる動作指令の一例を示す図である。動作プログラム60は、動作指令70を複数備えることにより構成されている。図2では、動作プログラム60における1つのブロックである動作指令70を示している。このブロックは、例えば制御装置50により同時に処理される単位である。制御装置50は、動作プログラム60に含まれる複数の動作指令70に基づいた動作を、動作プログラム60により示された動作指令70の順番で第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24に対して実行させる。
【0021】
図2に示すように、1つのブロックである動作指令70は、第1工具駆動部23に対する第1工具41の送り位置、及び第1工具41の送り速度に関する第1指令70aと、第2工具駆動部24に対する第2工具42の送り位置、及び第2工具42の送り速度に関する第2指令70bとを含んでいる。なお、以下の説明で用いる「原点」は、ワーク基準における原点である。ワーク基準の原点は、例えば、ワーク1において主軸10と反対側の端面と回転軸11との交点に設定される。なお、各ブロックの末尾に示されている「;」(セミコロン)は、1つのブロックの終わりを示している。
【0022】
第1指令70aは、第1工具駆動部23における第1工具41の送り方向(X方向)を表す識別子「X」と、原点を基準としたX方向における第1工具41の送り位置として送り先の座標値「△△△(△は数字)」と、第1工具駆動部23における第1工具41の送り速度を表す識別子「F」と、第1工具41の送り速度を示す数値「○○○(○は数字、単位はmm/分)」とを含む。第2指令70bは、第2工具駆動部24における第2工具42の送り方向(Z方向)を表す識別子「Z」と、原点を基準としたZ方向における第2工具42の送り位置として送り先の座標値「□□□(□は数字)」と、第2工具駆動部24における第2工具42の送り速度を表す識別子「FF」と、第2工具42の送り速度を示す数値「***(*は数字、単位はmm/分)」とを含む。
【0023】
なお、この動作指令70(第1指令70a及び第2指令70b)は、送り位置として送り先の座標値を用いているが、この形態に限定されない。例えば、送り位置として送り先までの送り量を用いる形態であってもよい。この場合、第1指令70aにおける「△△△(△は数字)」は、送り量(単位はmm)であり、第2指令70bにおける「□□□(□は数字)」は、送り量(単位はmm)である。
【0024】
1つのブロックである動作指令70は、第1指令70a、第2指令70bの順に記述されている。動作プログラム60は、上記したような動作指令70を複数備えている。なお、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24のいずれか一方を動作させる場合、すなわち、第1工具41及び第2工具42のいずれか一方によりワーク1を加工させる場合、動作指令70には、第1指令70a及び第2指令70bのいずれか一方が記述される。
【0025】
図3は、制御装置50の機能ブロック構成の一例を示す図である。図3に示すように、制御装置50は、プログラム入力部31と、プログラム記憶部32と、指令読み出し部33と、指令受付部34と、指令識別部35と、第1指令出力部36と、第2指令出力部37と、を備える。プログラム入力部31は、外部に設けられた不図示の上位コントローラ、CADシステム、プログラム作成装置等から、動作プログラム60が入力される。プログラム入力部31に対する動作プログラム60の入力は、無線LAN(Local Area Network)、有線LAN等のネットワークを介して行ってもよいし、例えばCD-ROM、USBメモリ等をはじめとする各種の記憶媒体を介して行ってもよい。
【0026】
プログラム記憶部32は、プログラム入力部31に入力された動作プログラム60を記憶する。指令読み出し部33は、プログラム記憶部32に記憶された動作プログラム60から、動作プログラム60を構成する動作指令70を1つずつ読み出し、読み出した1つのブロックである動作指令70を指令受付部34に送る。指令受付部34は、指令読み出し部33から送られた動作指令70を受け付ける。指令受付部34は、受け付けた動作指令70を、指令識別部35に送る。
【0027】
指令識別部35は、指令受付部34により受け付けた動作指令70から、第1指令70aと第2指令70bとをそれぞれ識別する。第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24の双方を同時に動作させる場合、動作指令70には、第1指令70aと第2指令70bとが含まれている。また、第1工具駆動部23のみを動作させる場合、動作指令70には、第1指令70aを含んでいるが、第2指令70bは含んでいない。第2工具駆動部24のみを動作させる場合、動作指令70には、第2指令70bを含んでいるが、第1指令70aを含んでいない。
【0028】
指令識別部35は、動作指令70から、第1工具駆動部23における第1工具41の送り方向を表す識別子「X」と、第1工具駆動部23における第1工具41の送り速度を表す識別子「F」とが含まれている部分を、第1指令70aであると識別して抽出する。また、指令識別部35は、動作指令70から、第2工具駆動部24における第2工具42の送り方向を表す識別子「Z」と、第2工具駆動部24における第2工具42の送り速度を表す識別子「FF」とが含まれている部分を、第2指令70bであると識別して抽出する。
【0029】
なお、指令識別部35は、1つのブロックである動作指令70において、左側の記述を第1指令70aと識別し、第1指令70aに続く記述を第2指令70bと識別してもよい。また、1つのブロックである動作指令70において、第1指令70aの記述と第2指令70bの記述との間に特定の記述(例えば「//」、「・」、「*」、「-」などの記号、「S」などの特定の文字)を加え、指令識別部35が特定の記述に基づいて、特定の記述よりも前の記述を第1指令70aと識別し、特定の記述よりも後の記述を第2指令70bと識別してもよい。
【0030】
指令識別部35は、動作指令70から抽出した第1指令70aを、第1指令出力部36に送る。また、指令識別部35は、動作指令70から抽出した第2指令70bを、第2指令出力部37に送る。第1指令出力部36は、指令識別部35から送られた第1指令70aを第1工具駆動部23に出力する。第2指令出力部37は、指令識別部35から送られた第2指令70bを第2工具駆動部24に出力する。
【0031】
図4は、制御装置50の動作の一例を示すフローチャートである。まず、不図示のワーク搬送装置等によりワーク1が主軸10に搬送され、不図示の主軸チャックによりワーク1が主軸10に保持される。また、ワーク1の加工に先立って、動作プログラム60が制御装置50に入力される。制御装置50のプログラム入力部31は、外部から入力された動作プログラム60を受け付け、プログラム記憶部32に記憶させる。
【0032】
旋盤100において、ワーク1の加工が開始されると、図4に示すように、ステップS1において、制御装置50の指令読み出し部33は、プログラム記憶部32に記憶された動作プログラム60から、動作プログラム60を構成する各動作指令70を1つずつ読み出す。指令読み出し部33は、読み出した動作指令70を、指令受付部34に送る。続いて、ステップS2において、制御装置50の指令受付部34は、指令読み出し部33から送られた1つのブロックである動作指令70を受け付ける。指令受付部34は、受け付けた動作指令70を、指令識別部35に送る。
【0033】
続いて、ステップS3において、制御装置50の指令識別部35は、指令受付部34で受け付けた動作指令70から、第1指令70aと第2指令70bとをそれぞれ識別する。また、指令識別部35は、動作指令70から第1指令70aを抽出し、動作指令70から第2指令70bを抽出する。指令識別部35は、動作指令70から抽出した第1指令70aを、第1指令出力部36に送る。指令識別部35は、動作指令70から抽出した第2指令70bを、第2指令出力部37に送る。
【0034】
続いて、ステップS4において、制御装置50の第1指令出力部36は、指令識別部35により抽出された第1指令70aを第1工具駆動部23に出力する。また、ステップS5において、制御装置50の第2指令出力部37は、指令識別部35より抽出された第2指令70bを第2工具駆動部24に出力する。
【0035】
第1指令70aの出力を受けた第1工具駆動部23は、第1指令70aに基づいて、第1工具41を、第1指令70aに含まれる第1工具41の送り方向(X方向)に沿って、送り位置である送り先の座標値「△△△」まで、送り速度「○○○」mm/分で移動させる。この第1工具41の送り(移動)により第1指令70aに基づいたワーク1の所定位置が加工される。また、第2指令70bの出力を受けた第2工具駆動部24は、第2指令70bに基づいて、第2工具42を、第2指令70bに含まれる第2工具42の送り方向(Z方向)に沿って、送り位置である送り先の座標値「□□□」まで、送り速度「***」mm/分で移動させる。この第2工具42の送り(移動)により第2指令70bに基づいたワーク1の所定位置が加工される。
【0036】
続いて、ステップS6において、制御装置50は、動作プログラム60の最終の動作指令70まで処理を終えたか否かを判定する。最終の動作指令70まで処理を終えていない場合(ステップS6のNo)、ステップS1に戻り、指令読み出し部33は、動作プログラム60の次の動作指令70を読み出し、指令受付部34に送る。すなわち、ステップS1からステップS6までの処理を順次実行する。
【0037】
ステップS6において、制御装置50が、動作プログラム60の最終ブロックまで処理を終えたと判定した場合(ステップS6のYes)、制御装置50は、処理を終了する。なお、制御装置50は、例えば、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24に対して、第1工具41及び第2工具42を、それぞれの初期位置(ワーク1から退避した位置)に戻すように制御してもよい。第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24は、この制御によって、第1工具41及び第2工具42をそれぞれワーク1から退避した退避位置に移動させる。このようにして、旋盤100によるワーク1の加工が終了する。
【0038】
(具体例)
図5に、上記した動作プログラム60の具体例を示す。図5に示す動作プログラム60は、1つのブロックである動作指令70を複数有している。図5に示す動作プログラム60を制御装置50に入力すると、制御装置50は、各動作指令70(1)~70(5)のそれぞれに対して、上記したようなステップS1からステップS6の処理を順次実行する。まず、動作プログラム60の第1の動作指令70(1)では、「X0.0Z0.0」と記述されている。この第1の動作指令70(1)は、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24によって、第1工具41及び第2工具42(第1刃物台21及び第2刃物台22)が、それぞれ所定の加工開始位置(座標値「X」=「0.0」、Z=「0.0」)に配置されていることを示している。
【0039】
次に、動作プログラム60の第2の動作指令70(2)では、図4のステップS3により、識別子「X」及び識別子「F」が含まれているので、指令識別部35は、第2の動作指令70(2)が第1指令70a2であると識別する。すなわち、第2の動作指令70(2)は、第1指令70a2に相当する。なお、第2の動作指令70(2)には識別子「Z」及び識別子「FF」が含まれていないので、指令識別部35は、第2の動作指令70(2)から第2指令70bを抽出しない。
【0040】
この第1指令70a2は、第1指令出力部36により第1工具駆動部23に出力される。第1工具駆動部23は、第1指令70aに基づいて、第1の動作指令70(1)を実行した後の第1工具41のX方向の座標値「0.0」から、X方向の送り位置である座標値「10.0」まで、送り速度「120」mm/分で第1工具41を送る。この第1工具41の移動により、ワーク1の加工対象部分が加工される。
【0041】
続いて、動作プログラム60の第3の動作指令70(3)では、図4のステップS3により、識別子「Z」と識別子「FF」とが含まれているので、指令識別部35は、第3の動作指令70(3)が第2指令70b3であると識別する。すなわち、第3の動作指令70(3)は、第2指令70b3に相当する。なお、第3の動作指令70(3)には識別子「X」及び識別子「F」が含まれていないので、指令識別部35は、第3の動作指令70(3)から第1指令70aを抽出しない。
【0042】
この第2指令70b3は、第2指令出力部37により第2工具駆動部24に出力される。第2工具駆動部24は、第2指令70bに基づいて、第1の動作指令70(1)を実行した後の第2工具42のZ方向の座標値「0.0」から、Z方向の送り位置である座標値「15.0」まで、送り速度「300」mm/分で第2工具42を送る。この第2工具42の移動により、ワーク1の加工対象部分が加工される。なお、上記した第3の動作指令70(3)では、識別子「FF」を用いているが、第2の動作指令70(2)と同様に識別子「F」が用いられてもよい。すなわち、動作指令70が、第1指令70a又は第2指令70bのいずれか一方である場合は、送り速度を示す識別子を共通化してもよい。第3の動作指令70(3)は、図5に示す形態に代えて、「Z15F300」と記述されてもよい。指令識別部35は、第2の動作指令70(2)に識別子「X」が含まれていることにより第1指令70a2であると識別し、第3の動作指令70(3)に識別子「Z」が含まれていることにより第2指令70b3であると識別して、識別子「F」に続く送り速度で第1工具駆動部23又は第2工具駆動部24をそれぞれ制御する。
【0043】
続いて、動作プログラム60の第4の動作指令70(4)では、図4のステップS3により、指令識別部35は、第4の動作指令70(4)において、識別子「X」と識別子「F」とが含まれている部分を第1指令70a4であると識別する。また、指令識別部35は、第4の動作指令70(4)において、識別子「Z」と識別子「FF」とが含まれている部分を第2指令70b4であると識別する。1つのブロックである第4の動作指令70(4)は、第1指令70a4と第2指令70b4とを含んでいる。なお、指令識別部35は、第4の動作指令70(4)において、最初の記述部分を第1指令70a4と識別し、後の記述部分又は第1指令70a4に続く記述部分を第2指令70b4と識別してもよい。指令識別部35により抽出された第1指令70a4は、第1指令出力部36により第1工具駆動部23に出力される。また、指令識別部35により抽出された第2指令70b4は、第2指令出力部37により第2工具駆動部24に出力される。
【0044】
第1工具駆動部23は、第1指令70a4に基づいて、第2の動作指令70(2)を実行した後の第1工具41のX方向の座標値「10.0」から、X方向の送り位置である座標値「20.0」まで、送り速度「300」mm/分で第1工具41を送る。同時に、第2工具駆動部24は、第2指令70b4に基づいて、第3の動作指令70(3)を実行した後の第2工具42のZ方向の座標値「15.0」から、Z方向の送り位置である座標値「25.0」まで、送り速度「240」mm/分で第2工具42を送る。この第1工具41及び第2工具42のそれぞれの移動により、ワーク1の加工対象部分がそれぞれ加工される。
【0045】
なお、第4の動作指令70(4)において、第1工具41の送り開始(加工開始)のタイミングと、第2工具42の送り開始(加工開始)のタイミングとは同時又はほぼ同時である。ただし、この第4の動作指令70(4)において、第1工具41の送り終了(加工終了)のタイミングと、第2工具42の送り終了(加工終了)のタイミングとは異なっている。なお、第1工具41の送り終了のタイミングと、第2工具42の送り終了のタイミングとが同時又はほぼ同時となるような動作指令70であってもよい。また、上記した第4の動作指令70(4)では、識別子「F」と「FF」とを用いて第1指令70a4の送り速度と、第2指令70b4の送り速度とを示しているが、この形態に限定されない。例えば、第4の動作指令70(4)は、第1指令70a4と第2指令70b4との間に仕切りを示す特定の記述(識別子)「//」、「・」、「*」、「-」など、指令識別部35が読み取り可能な(識別可能な)記述を加えることにより、第1指令70a4と第2指令70b4との送り速度を示す記号「F」を共通化する形態であってもよい。すなわち、第4の動作指令70(4)は、図5に示す形態に代えて、例えば「X20F300//Z25F240」、「X20F300*Z25F240」と表記してもよい。
【0046】
このように、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24によって、第1工具41及び第2工具42をそれぞれ異なる送り位置(送り方向)に、異なる送り速度で送ることによりワーク1をそれぞれ加工することが可能となる。なお、第4の動作指令70(4)では、第1指令70a4における送り速度と、第2指令70b4における送り速度とを異ならせているが、第1指令70a4における送り速度と、第2指令70b4における送り速度とが同一であってもよい。
【0047】
続いて、動作プログラム60の第5の動作指令70(5)では、図4のステップS3により、識別子「Z」と識別子「FF」とが含まれているので、指令識別部35は、第5の動作指令70(5)が第2指令70b5であると識別する。すなわち、第5の動作指令70(5)は、第2指令70b5に相当する。なお、第5の動作指令70(5)には識別子「X」及び識別子「F」が含まれていないので、指令識別部35は、第5の動作指令70(5)から第1指令70aを抽出しない。
【0048】
この第2指令70b5は、第2指令出力部37により第2工具駆動部24に出力される。第2工具駆動部24は、第2指令70b5に基づいて、第4の動作指令70(4)を実行した後の第2工具42のZ方向の座標値「25.0」から、Z方向の送り位置である座標値「35.0」まで、送り速度「150」mm/分で第2工具42を送る。この第2工具42の移動により、ワーク1の加工対象部分が加工される。
【0049】
なお、第5の動作指令70(5)を実行させた後、制御装置50は、図4のステップS6に示すように、動作プログラム60の最終の動作指令(第5の動作指令70(5))まで処理を終えたと判定し、動作プログラム60に関する処理を終了する。なお、制御装置50は、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24に対して、第1工具41及び第2工具42を、それぞれの初期位置(ワーク1から退避した位置)、又は上記した加工開始位置に戻すように制御してもよい。
【0050】
(比較例)
次に、比較のため、従来の旋盤(工作機械)における制御について説明する。従来の旋盤では、複数の送り位置に工具を送る場合、X方向とZ方向とを直線補完した送り方向における送り速度が設定される。図6は、従来の旋盤で用いられる動作プログラムの例を示す図である。図6に示す動作プログラム60xと、上記した図5に示す動作プログラム60とは、第4の動作指令70x4の記述が異なる。従来の旋盤の制御装置は、動作プログラム60xの第1から第3及び第5の動作指令70x1~70x3、70x5では、上記した本実施形態の制御装置50と同様の制御を行う。
【0051】
従来の旋盤で用いられる動作プログラム60xでは、第4の動作指令70x4のように、第1工具41の送り位置である送り先の座標値と、第2工具42の送り位置である送り先の座標値と、1つの送り速度「F○○○(○は数値、単位はmm/分)」で記述される。この送り速度は、第1工具41のX方向への送り位置と、第2工具42のZ方向への送り位置とを直線補完した後の方向における送り速度である。従って、第1工具駆動部23により第1工具41をX方向に移動させる移動速度の値ではなく、第2工具駆動部24により第2工具42をZ方向に移動させる移動速度の値ではない。
【0052】
従来の旋盤の制御装置では、動作プログラム60xの第4の動作指令70x4に基づいて、第1工具駆動部23がX方向の座標値「10.0」から送り位置である座標値「20.0」まで第1工具41を送り、第2工具駆動部24をZ方向の座標値「15.0」から送り位置である座標値「25.0」まで第2工具42を送る。ただし、第4の動作指令70x4で記述された送り速度F「424.2」mm/分は、X方向及びZ方向の送り位置の座標値に関して直線補完した方向における速度である。
【0053】
従来の旋盤の制御装置は、直線補完した距離を送り速度F「424.2」mm/分で第1工具41及び第2工具42を送るように、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24を制御する。その結果、第1工具駆動部23による第1工具41の送り開始のタイミングと、第2工具駆動部24による第2工具42の送り開始のタイミングとが同時であり、かつ、第1工具駆動部23による第1工具41の送り終了のタイミングと、第2工具駆動部24による第2工具42の送り終了のタイミングとが同時となる。従って、第1工具41を送る距離と、第2工具42を送る距離とが異なると、第1工具駆動部23により第1工具41を送る速度と、第2工具駆動部24により第2工具42を送る速度とが異なることになる。
【0054】
つまり、第4の動作指令70x4で送り速度Fを設定したとしても、直線補完した方向における送り速度が設定されるので、第1工具41及び第2工具42の双方に対して所望する送り速度で送ることができないことになる。このように、この比較例に係る旋盤では、第1工具41及び第2工具42の双方について、それぞれワーク1の加工に適した送り速度で送ることができない。
【0055】
以上の説明のように、本実施形態によれば、第1工具駆動部23に対する第1工具41の送り位置及び送り速度に関する第1指令70aと、第2工具駆動部24に対する第2工具42の送り位置及び送り速度に関する第2指令70bとを含む1つのブロックである動作指令70を受け付けた場合、動作指令70に含まれる第1指令70aに基づいて第1工具41を送り、ワーク1を加工させ、動作指令70に含まれる第2指令70bに基づいて第2工具42を送り、ワーク1を加工させる。このように、ワーク1を加工するに際して、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24により、第1指令70a、第2指令70bに基づいた個別の送り速度で第1工具41及び第2工具42を送ってワーク1を加工することができる。従って、第1工具駆動部23及び第2工具駆動部24により、第1工具41及び第2工具42をそれぞれ適した送り速度(適した加工条件)で送ることができ、ワーク1を精度よく加工することができる。
【0056】
上記した実施形態において、制御装置50のプログラム入力部31、プログラム記憶部32、指令読み出し部33、指令受付部34、指令識別部35、第1指令出力部36、及び第2指令出力部37は、プログラムがコンピュータに読み込まれることにより、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段として実現されてもよい。
【0057】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。上記した第1実施形態では、ワーク1に対し、第1工具41をX方向に移動させ、第2工具42をZ方向に移動させる形態について説明したが、この形態に限定されない。図7は、第2の実施形態に係る旋盤(工作機械)100Aの一例を示す概略構成図である。なお、図7において、上記した実施形態と同一の構成については同一の符号を付して、その説明を省略又は簡略化する。また、以下の説明では、区別のためXa方向とXb方向とを用いている。Xa方向及びXb方向は、いずれも第1実施形態のX方向と平行な方向である。図7に示すように、旋盤100Aは、主軸10と、刃物台20Aと、制御装置50と、を備える。
【0058】
刃物台20Aは、第1刃物台21Aと、第2刃物台22Aと、第1工具駆動部23Aと、第2工具駆動部24Aと、を備えている。第1刃物台21Aは、主軸10に保持されたワーク1を加工する第1工具41Aを保持する。第1工具41Aは、第1刃物台21Aに備える不図示のホルダによって第1刃物台21Aの所定位置に着脱可能に保持される。第1刃物台21Aは、例えば、タレット状刃物台又はくし歯状刃物台など、複数の第1工具41Aを保持可能な形態であってもよい。この場合、複数の第1工具41Aのうちワーク1の加工に用いられる第1工具41Aが選択されて用いられる。
【0059】
第1工具駆動部23Aは、主軸2に保持されたワーク1に対して、Xa方向に第1刃物台21Aを送る。第1刃物台21AがXa方向に送られることにより、主軸10に保持されて回転するワーク1は、第1工具41AによってXa方向に加工される。第1工具駆動部23Aは、例えば、電動モータ及びボールねじ機構を用いた構成等が用いられる。本実施形態において、第1工具駆動部23Aは、第1刃物台21AをXa方向に送っているが、この形態に限定されず、例えば、第1刃物台21AをXa方向、Y方向(Xa方向とZ方向とに直交する方向)、Z方向のそれぞれの方向、及びこれらの方向を合成した方向に送るような形態であってもよい。
【0060】
第2刃物台22Aは、主軸10に保持されたワーク1を加工する第2工具42Aを保持する。第2工具42Aは、第2刃物台22Aに備える不図示のホルダによって第2刃物台22Aの所定位置に着脱可能に保持される。第2刃物台22Aは、例えば、タレット状刃物台又はくし歯状刃物台など、複数の第2工具42Aを保持可能な形態であってもよい。この場合、複数の第2工具42Aのうちワーク1の加工に用いられる第2工具42Aが選択されて用いられる。
【0061】
第2工具駆動部24Aは、主軸2に保持されたワーク1に対して、Xb方向に第2刃物台22Aを送る。第2刃物台22AがXb方向に送られることにより、主軸10に保持されて回転するワーク1は、第2工具42AによってXb方向に加工される。第2工具駆動部24Aは、例えば、電動モータ及びボールねじ機構を用いた構成等が用いられる。本実施形態において、第2工具駆動部24Aは、第2刃物台22AをXb方向に送っているが、この形態に限定されず、例えば、第2刃物台22AをXb方向、Y方向(Xb方向とZ方向とに直交する方向)、Z方向のそれぞれの方向、及びこれらの方向を合成した方向に送るような形態であってもよい。
【0062】
第1刃物台21Aと第2刃物台22Aとは、旋盤100Aにおいて異なる位置に設けられている。従って、第1刃物台21Aの第1工具41Aと、第2刃物台22Aの第2工具42Aとは、ワーク1の異なる位置に対して加工を行う。また、第1工具41Aと第2工具42Aとは、第1工具駆動部23A及び第2工具駆動部24Aの同一のX方向(Xa方向、Xb方向)に移動しつつワーク1を加工する。ただし、第1工具駆動部23Aによる第1工具41Aの送り位置(座標値)と、第2工具駆動部24Aによる第2工具42Aの送り位置(座標値)とは、互いに異なっている。
【0063】
図8は、旋盤100Aの制御に用いられる動作指令の一例を示す図である。動作プログラム60Aは、第1実施形態の動作プログラム60と同様に、動作指令70を複数備えることにより構成されている。図8では、動作プログラム60Aにおける1つのブロックである動作指令70を示している。旋盤100Aの制御装置50は、動作プログラム60Aに含まれる複数の動作指令70に基づいた動作を、動作プログラム60Aにより示された動作指令70の順番で第1工具駆動部23A及び第2工具駆動部24Aに対して実行させる。
【0064】
図8に示すように、1つのブロックである動作指令70は、第1工具駆動部23Aに対する第1工具41Aの送り位置、及び第1工具41Aの送り速度に関する第1指令70cと、第2工具駆動部24Aに対する第2工具42Aの送り位置、及び第2工具42Aの送り速度に関する第2指令70dとを含んでいる。
【0065】
第1指令70cは、第1工具駆動部23Aにおける第1工具41Aの送り方向(Xa方向)を表す識別子「Xa」と、原点を基準としたXa方向における第1工具41Aの送り位置として送り先の座標値「△△△(△は数字)」と、第1工具駆動部23Aにおける第1工具41Aの送り速度を表す識別子「F」と、第1工具41Aの送り速度を示す数値「○○○(○は数字、単位はmm/分)」とを含む。第2指令70dは、第2工具駆動部24Aにおける第2工具42Aの送り方向(Xb方向)を表す識別子「Xb」と、原点を基準としたXb方向における第2工具42Aの送り位置として送り先の座標値「□□□(□は数字)」と、第2工具駆動部24Aにおける第2工具42Aの送り速度を表す識別子「FF」と、第2工具42Aの送り速度を示す数値「***(*は数字、単位はmm/分)」とを含む。
【0066】
なお、この動作指令70(第1指令70c及び第2指令70d)は、送り位置として送り先の座標値を用いているが、この形態に限定されない。例えば、送り位置として送り先までの送り量を用いる形態であってもよい。この場合、第1指令70cにおける「△△△(△は数字)」は、送り量(単位はmm)であり、第2指令70dにおける「□□□(□は数字)」は、送り量(単位はmm)である。
【0067】
1つのブロックである動作指令70は、第1指令70c、第2指令70dの順に記述されている。動作プログラム60Aは、上記したような動作指令70を複数備えている。なお、第1工具駆動部23A及び第2工具駆動部24Aのいずれか一方を動作させる場合、すなわち、第1工具41A及び第2工具42Aのいずれか一方によりワーク1を加工させる場合、動作指令70には、第1指令70c及び第2指令70dのいずれか一方が記述される。
【0068】
旋盤100Aが備える制御装置50は、図3に示す第1実施形態の制御装置50と同様である。旋盤100Aの制御装置50は、上記した図4に示すフローチャートに沿って旋盤100Aを制御する。制御装置50は、指令読み出し部33により動作プログラム60Aから各動作指令70を1つずつ読み出して指令受付部34に送り、その動作指令70を指令識別部35に送る(図4のステップS1からステップS2参照)。続いて、制御装置50の指令識別部35は、指令受付部34で受け付けた動作指令70から、第1指令70cと第2指令70dとをそれぞれ識別する(図4のステップS3参照)。
【0069】
指令識別部35は、動作指令70において、識別子「Xa」と識別子「F」とが含まれている部分を第1指令70cであると識別する。また、指令識別部35は、動作指令70において、識別子「Xb」と識別子「FF」とが含まれている部分を第2指令70dであると識別する。なお、指令識別部35は、動作指令70において、最初の記述部分を第1指令70cと識別し、後の記述部分又は第1指令70cに続く記述部分を第2指令70dと識別してもよい。指令識別部35は、動作指令70から第1指令70cから抽出し、動作指令70から第2指令70dを抽出する。
【0070】
指令識別部35は、動作指令70から抽出した第1指令70cを、第1指令出力部36に送る(図4のステップS4参照)。指令識別部35は、動作指令70から抽出した第2指令70bを、第2指令出力部37に送る(図4のステップS5参照)。第1指令70cは、第1指令出力部36により第1工具駆動部23Aに出力される。また、第2指令70dは、第2指令出力部37により第2工具駆動部24Aに出力される。
【0071】
第1工具駆動部23Aは、第1指令70cに基づいて、第1工具41Aを、第1指令70cに含まれる第1工具41Aの送り方向Xa方向に沿って、送り位置である送り先の座標値「△△△」まで、送り速度「○○○」mm/分で移動させる。この第1工具41Aの送り(移動)により第1指令70cに基づいたワーク1の所定位置が加工される。また、第2工具駆動部24Aは、第2指令70dに基づいて、第2工具42Aを、第2指令70dに含まれる第2工具42Aの送り方向Xb方向に沿って、送り位置である送り先の座標値「□□□」まで、送り速度「***」mm/分で移動させる。この第2工具42Aの送り(移動)により第2指令70dに基づいたワーク1の所定位置が加工される。
【0072】
このように、本実施形態によれば、第1工具41A及び第2工具42Aを平行する同一方向(Xa方向及びXb方向)に送る場合であっても、第1実施形態と同様に、第1工具41A及び第2工具42Aをそれぞれ適した送り速度(適した加工条件)で送ることができ、ワーク1を精度よく加工することができる。
【0073】
[他の実施形態]
上記した第1及び第2の実施形態では、第1工具駆動部23、23Aは、第1工具41、41Aを、X方向、Xa方向に移動させ、第2工具駆動部24、24Aは、第2工具42、42Aを、Z方向、Xb方向に移動させている。つまり、第1工具駆動部23、23A、及び第2工具駆動部24、24Aは、第1工具41、41A及び第2工具42、42Aを、それぞれ1方向に移動させる形態を例に挙げて説明しているが、この形態に限定されない。例えば、第1工具駆動部23、23A、第2工具駆動部24、24Aは、第1工具41、41A及び第2工具42、42Aをそれぞれ2方向以上に移動させる形態であってもよい。例えば、第1工具駆動部23、23A、第2工具駆動部24、24Aは、第1工具41、41A及び第2工具42、42Aを、それぞれX方向、Y方向、Z方向の3方向に移動させてもよい。
【0074】
この場合、例えば、1つのブロックである動作指令70において、第1指令70a、70cとして、第1工具駆動部23、23Aの第1工具41、41Aの送り方向の識別子をそれぞれ「Xc、Yc、Zc」とし、この識別子の後にそれぞれ送り位置である送り先の座標値「△△△」を記述し(例えば「Xc△△△、Yc△△△、Zc△△△」)、送り速度の識別子を「F」とし、この識別子の後に第1工具41、41Aの送り速度を示す数値「○○○」を記述する。また、1つのブロックである動作指令70において、第2指令70b、70dとして、第2工具駆動部24、24Aの第2工具42、42Aの送り方向の識別子をそれぞれ「Xd、Yd、Zd」とし、この識別子の後にそれぞれ送り位置である送り先の座標値「□□□」を記述し(例えば「Xd□□□、Yd□□□、Zd□□□」)、送り速度の識別子を「FF」とし、この識別子の後に第2工具42、42Aの送り速度を示す数値「***」を記述する。
【0075】
旋盤100、100Aの制御装置50は、指令識別部35により1つのブロックである動作指令70から第1指令70a、70cと第2指令70b、70dとを識別して、それぞれを第1工具駆動部23、23A及び第2工具駆動部24、24Aに出力する。第1工具駆動部23、23Aは、第1指令70a、70cに基づいて第1工具41、41Aを送り、ワーク1を加工させる。第2工具駆動部24、24Aは、第2指令70b、70dに基づいて第1工具41、41Aを送り、ワーク1を加工させる。
【0076】
このように、第1工具41等を2方向以上に移動させる場合であっても、上記した第1及び第2の実施形態と同様の制御を行うことにより、第1工具41等を適した送り速度(適した加工条件)で送ることができ、ワーク1を精度よく加工することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることは当業者において明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上記した実施形態などで説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上記した実施形態などで説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態などで引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。また、本実施形態において示した各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いない限り、任意の順序で実現可能である。また、上記した実施形態における動作に関して、便宜上「まず」、「次に」、「続いて」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須ではない。
【0078】
また、上記した実施形態では、2つの第1工具41及び第2工具42(又は第1工具41A及び第2工具42A)を用いる場合について説明しているが、この形態に限定されない。例えば、旋盤100、100Aにおいて、3つ以上の工具を用いる形態であってもよい。この場合、上記した実施形態の第1工具41、第2工具42のように、3つ以上の工具をそれぞれ所定方向に独立して移動させる形態であってもよいし、3つ以上の工具のうち、少なくとも2つの工具を上記した実施形態の第1工具41、第2工具42のようにそれぞれ所定方向に独立して移動させる形態であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1・・・ワーク
10・・・主軸
20、20A・・・刃物台
23、23A・・・第1工具駆動部
24、24A・・・第2工具駆動部
34・・・指令受付部
35・・・指令識別部
36・・・第1指令出力部
37・・・第2指令出力部
41、41A・・・第1工具
42、42A・・・第2工具
50・・・制御装置
60、60A・・・動作プログラム
70・・・動作指令
70a、70c・・・第1指令
70b、70d・・・第2指令
100、100A・・・旋盤(工作機械)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8