(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20240109BHJP
F04B 39/12 20060101ALI20240109BHJP
F04C 27/00 20060101ALI20240109BHJP
F04C 18/02 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
F04B39/00 104Z
F04B39/12 G
F04C27/00
F04C18/02 311Z
(21)【出願番号】P 2019227824
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】P 2019063153
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】山蔭 駿平
(72)【発明者】
【氏名】木下 雄介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 順也
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180137(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047342(WO,A1)
【文献】特開2018-119528(JP,A)
【文献】特開2013-060816(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0065027(US,A1)
【文献】特開2016-208718(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2003-0008027(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
F04C 2/00-2/077、
18/00-18/077、
23/00-29/12
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧縮を行う圧縮機構と、
前記圧縮機構を駆動させるモータ機構と、
前記モータ機構の駆動制御を行うインバータと、
内部に前記モータ機構を収容する有底筒状のモータハウジングと、
内部に前記インバータを収容するとともに前記モータハウジングの
底側の端部に接合されるインバータケースと、
前記モータハウジングと前記インバータケースとを前記モータハウジングにおける軸方向で締結する締結具と、
前記インバータと前記モータ機構とを電気的に接続する導電部材とを備え、
前記インバータケースは、筒状をなして前記インバータ及び前記端部を囲繞するケース周壁を有し、
前記端部は、前記モータハウジングにおける径方向に延び、前記導電部材が設けられる端面と、前記端面と接続して前記軸方向に延びる周面とを有し、
前記周面と前記ケース周壁との間には、環状をなすシール部材が設けられ、
前記周面には、前記シール部材を収容する収容溝が凹設されており、
前記シール部材は、前記周面と前記ケース周壁とで径方向に挟持されることにより、前記導電部材が配置される空間を密封し、
前記インバータケースは、前記径方向に延びて前記ケース周壁と接続するとともに前記端面と前記軸方向に対向するインバータ底壁を有し、
前記ケース周壁は、前記インバータを囲繞する第1周壁と、前記端部を囲繞しつつ前記周面との間で前記シール部材を挟持する第2周壁とを有し、
前記第2周壁は、前記インバータ底壁を挟んで前記第1周壁とは前記軸方向の反対側に位置し
、
前記インバータ底壁、前記第1周壁及び前記第2周壁は一体であることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記周面及び前記第2周壁は円筒状であり、
前記シール部材及び前記収容溝は円環状である請求項1記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記第1周壁と前記第2周壁とは同径かつ同軸の円筒状であり
、
前記端部は、前記モータハウジングの他の部分より小径であり、
前記端部の外周面が前記周面とされ、
前記他の部分は、前記第1周壁及び前記第2周壁と同径かつ同軸である請求項2記載の電動圧縮機。
【請求項4】
前記シール部材は、外周面及び内周面に複数条の環状の凸部を有している請求項1乃至3のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項5】
前記シール部材は、前記径方向の断面が矩形状をなしている請求項1乃至3のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【請求項6】
前記第2周壁は前記収容溝の全体を覆って
おり、
前記インバータケースは、前記インバータ底壁、前記第1周壁及び前記第2周壁を有するインバータボックスと、
前記第1周壁と同径かつ同軸の円筒状をなすカバー周壁と、前記カバー周壁と接続しつつ、前記カバー周壁から径内方向に延びる円板状をなすインバータ上壁とを有し、前記軸方向で前記インバータボックスに締結されたインバータカバーとからなる請求項1乃至5のいずれか1項記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の電動圧縮機が開示されている。この電動圧縮機は、圧縮機構と、モータ機構と、インバータと、モータハウジングと、インバータケースとを備えている。
【0003】
圧縮機構は流体としての冷媒の圧縮を行う。モータ機構は圧縮機構を駆動させる。インバータはモータ機構の駆動制御を行う。モータハウジングは、有底筒状であり、内部にモータ機構を収容している。インバータケースは、内部にインバータを収容しているとともにモータハウジングの端部に接合されている。
【0004】
モータハウジングは、圧縮機構と締結される第1ハウジングと、第1ハウジングとインバータケースとに締結される第2ハウジングとからなる。第2ハウジングはモータ周壁とモータ底壁とを有している。モータ周壁は、軸方向に延びる筒状をなして第1ハウジングとともに内側にモータ機構を収容する。モータ底壁は、モータ周壁における軸方向の一端側でモータ周壁から径内方向に延びる円板状をなし、インバータケースと軸方向に対向している。モータ底壁には開口が形成され、この開口にモータ機構とインバータとを接続するための複数本の導電部材としてのターミナルが挿通されている。
【0005】
インバータケースは、第2ハウジングの一端と当接するインバータボックスと、インバータボックスと締結されるインバータカバーとを有している。インバータボックスは、ボックス周壁とインバータ底壁とを有している。ボックス周壁は、軸方向に延びる円筒状をなしてインバータを囲繞する。インバータ底壁は、ボックス周壁におけるモータハウジング側でボックス周壁の径内方向に延びるとともに、モータ底壁と対向してモータ底壁及びモータ周壁と当接する。インバータカバーは、カバー周壁とインバータ上壁とを有している。カバー周壁は、ボックス周壁に当接する円筒状をなしている。インバータ上壁は、径方向に延びる円盤状をなしており、カバー周壁と接続するとともにインバータと対向している。
【0006】
この電動圧縮機では、外部の電力をインバータケース内のインバータに供給し、その電力をターミナルを介してモータ機構に供給してモータ機構を作動させる。これにより、圧縮機構が作動し、車両等の空調装置が作動することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国公開特許第10-2018-0120129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の電動圧縮機では、モータハウジングとインバータケースとの間を封止するシール部材が開示されていない。このため、この電動圧縮機では、外部の水分がターミナルと接触し、ターミナルが劣化したり、相間短絡を生じたりするおそれがある。
【0009】
このため、モータ周壁やモータ底壁に軸方向と直交する方向に延びる円環状の第1端面を形成するとともに、インバータケースのボックス周壁やインバータ底壁にも軸方向と直交する方向に延びる円環状の第2端面を形成し、第1端面と第2端面との間に環状をなすシール部材を設けることが考えられる。
【0010】
しかしながら、このように構成した電動圧縮機でも、水や塩水等が比較的に多く存在する環境下で使用される場合には、上記懸念が残存する。特に、モータハウジングとインバータケースとを複数の締結具によって軸方向で締結する場合、好適な封止性を追求すると、締結具の締結力によってシール部材が軸方向に過剰に押し潰される恐れがある。このため、シール部材の耐久性が損なわれることになる。
【0011】
そこで、例えばシール部材について、モータハウジングとインバータケースとによって、モータハウジングの径方向に挟持される構成とすることが考えられる。しかし、この場合、インバータケースをモータハウジングに組付ける際に、シール部材がモータハウジングの軸方向、すなわち、インバータケースとモータハウジングとの締結方向に移動したり、それに伴ってシール部材が変形したりすることで、耐久性やシール性が損なわれる懸念がある。
【0012】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、過酷な条件下であっても、インバータとモータ機構とを電気的につなぐ導電部材の劣化や相間短絡をより高い耐久性の下でより確実に防止可能な電動圧縮機を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の電動圧縮機は、流体の圧縮を行う圧縮機構と、
前記圧縮機構を駆動させるモータ機構と、
前記モータ機構の駆動制御を行うインバータと、
内部に前記モータ機構を収容する有底筒状のモータハウジングと、
内部に前記インバータを収容するとともに前記モータハウジングの底側の端部に接合されるインバータケースと、
前記モータハウジングと前記インバータケースとを前記モータハウジングにおける軸方向で締結する締結具と、
前記インバータと前記モータ機構とを電気的に接続する導電部材とを備え、
前記インバータケースは、筒状をなして前記インバータ及び前記端部を囲繞するケース周壁を有し、
前記端部は、前記モータハウジングにおける径方向に延び、前記導電部材が設けられる端面と、前記端面と接続して前記軸方向に延びる周面とを有し、
前記周面と前記ケース周壁との間には、環状をなすシール部材が設けられ、
前記周面には、前記シール部材を収容する収容溝が凹設されており、
前記シール部材は、前記周面と前記ケース周壁とで径方向に挟持されることにより、前記導電部材が配置される空間を密封し、
前記インバータケースは、前記径方向に延びて前記ケース周壁と接続するとともに前記端面と前記軸方向に対向するインバータ底壁を有し、
前記ケース周壁は、前記インバータを囲繞する第1周壁と、前記端部を囲繞しつつ前記周面との間で前記シール部材を挟持する第2周壁とを有し、
前記第2周壁は、前記インバータ底壁を挟んで前記第1周壁とは前記軸方向の反対側に位置し、
前記インバータ底壁、前記第1周壁及び前記第2周壁は一体であることを特徴とする。
【0014】
本発明の電動圧縮機では、環状のシール部材がモータハウジングにおける端部と、インバータケースのケース周壁との間、より具体的には、端部の周面に形成された収容溝と、ケース周壁の内周面との間を封止している。
【0015】
ここで、この電動圧縮機は、締結具がモータハウジングとインバータケースとをモータハウジングの軸方向で締結しているが、シール部材は、収容溝とケース周壁との間、つまり、端部の周面とケース周壁の内周面との間に位置している。そして、シール部材は、収容溝とインバータ周壁の内周面とで径方向に挟持される。これらため、シール部材は、締結具の締結力によって軸方向に押し潰されることがない。
【0016】
ここで、この電動圧縮機では、収容溝がシール部材を収容する。このため、締結具によってモータハウジングとインバータケースとを軸方向で締結する際、これに伴って、収容溝に収容された状態でシール部材が軸方向に移動しようとしても、シール部材は収容溝の内面に当接することで軸方向に移動することが規制される。これにより、この電動圧縮機では、インバータケースをモータハウジングに組付ける際にシール部材が軸方向に移動することが防止され、シール部材は、好適な位置において端部とケース周壁との間を封止できる。また、この電動圧縮機では、軸方向の移動に伴うシール部材の不要な変形も抑制されるので、シール部材の耐久性やシール性が損なわれ難い。
【0017】
こうして、この電動圧縮機は、水や塩水等が比較的に多く存在する環境下で使用される場合でも、外部の水分が導電部材と接触し難く、導電部材が劣化したり、相間短絡を生じたりすることがより確実に防止されている。
【0018】
したがって、本発明の電動圧縮機では、過酷な条件下であっても、導電部材の劣化や相間短絡をより高い耐久性の下でより確実に防止可能である。
【0019】
シール部材は、外周面及び内周面に複数条の環状の凸部を有していることが好ましい。この場合、シール部材は、各凸部において端部及びケース周壁に当接するため、外部からの水分は、例えシール部材における外部から1条目の凸部を乗り越えたとしても、外部から2条目の凸部で進入が阻止され、より高い封止性を発揮できる。
【0020】
この反面、各凸部以外では、シール部材が収容溝やケース周壁の内周面に当接しなくなるため、シール部材の外周面及び内周面がそれぞれ収容溝やケース周壁の内周面に面接触する構成に比べて、収容溝及びケース周壁とシール部材との接触面積が少なくなる。このため、モータハウジングとインバータケースとを軸方向で締結する際、シール部材が軸方向に移動しつつ変形することによって、各凸部のうちの一部が収容溝やケース周壁から離間したり、収容溝やケース周壁に十分に当接しなかったりすることが懸念される。しかし、この電動圧縮機では、収容溝によってシール部材の軸方向の移動が規制されるため、それによるシール部材の変形も生じ難い。このため、各凸部のうちの一部が収容溝やケース周壁から離間したり、十分に当接しなかったりすることを確実性高く防止できる。
【0021】
また、シール部材は、径方向の断面が矩形状をなしていることも好ましい。この場合には、シール部材は、外周面及び内周面において、収容溝及びケース周壁にそれぞれ面接触することが可能となる。これにより、シール部材はより高い封止性を発揮できる。
【0022】
第2周壁は収容溝の全体を覆っていることが好ましい。この場合、収容溝内のシール部材が紫外線によって劣化し難く、より高い耐久性を発揮できる。また、収容溝の全体が第2周壁に覆われることで、電動圧縮機の外部の水分がシール部材まで届き難くなるため、シール部材がより高いシール性を発揮できる。
【0023】
インバータケースは、径方向に延びてケース周壁と接続するとともに端面と軸方向に対向するインバータ底壁を有している。また、ケース周壁は、インバータを囲繞する第1周壁と、端部を囲繞しつつ周面との間でシール部材を挟持する第2周壁とを有している。そして、第2周壁は、インバータ底壁を挟んで第1周壁とは軸方向の反対側に位置している。
【0024】
このため、インバータケースは、第1周壁と第2周壁とインバータ底壁とがなす形状により、 高い締結力が作用しても変形しない充分な剛性を発揮する。これにより、この電動圧縮機では、シール部材が優れた耐久性の下で好適な封止性を発揮する。また、インバータケースも優れた耐久性を発揮する。
【0025】
周面及び第2周壁は円筒状であり、シール部材及び収容溝は円環状であることが好ましい。この場合、軸方向が水平方向になるように電動圧縮機を配置することにより、外部からシール部材の外側で端部と第2周壁との隙間に進入した水分が自重によって外部に排出され易く、シール部材、モータハウジング及びインバータケースの劣化を防止してより高い耐久性を発揮できる。
【0026】
第1周壁と第2周壁とは同径かつ同軸の円筒状であることが好ましい。この場合、第1周壁と第2周壁とは連続したひとつの周壁としての構造を有しており、インバータケースが軽量化のために薄肉化されても強度を発揮し易い。
【発明の効果】
【0027】
本発明の電動圧縮機では、過酷な条件下であっても、導電部材の劣化や相間短絡をより高い耐久性の下でより確実に防止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施
例の電動圧縮機の縦断面図である。
【
図2】
図2は、実施
例の電動圧縮機に係り、要部拡大断面図である。
【
図3】
図3は、
参考例1の電動圧縮機に係り、要部拡大断面図である。
【
図4】
図4は、参考例
2の電動圧縮機に係り、要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(実施
例)
実施
例の電動圧縮機は、
図1に示すように、スクロール式の圧縮機構10と、モータ機構12と、インバータ14と、ハウジング16とを備えている。ハウジング16は、フロントハウジング1と、モータハウジング3と、インバータケース4とを有している。
【0031】
以下の説明では、
図1の紙面左側に位置するフロントハウジング1側を電動圧縮機の前側と規定し、
図1の紙面右側に位置するインバータケース4側を電動圧縮機の後側と規定する。また、
図1の紙面上側を電動圧縮機の上側と規定し、
図1の紙面下側を電動圧縮機の下側と規定する。前後方向は本発明における「軸方向」に対応しており、上下方向は本発明における「径方向」に対応している。そして、
図2以降の各図に示す前後方向及び上下方向は全て、
図1に対応させて表示する。なお、実施例における前後方向は一例である。電動圧縮機は、搭載される車両等に対応して、その前後方向が適宜変更される。
【0032】
図1に示すように、フロントハウジング1とモータハウジング3とは互いに突き合わされ、複数本のボルト9によって相互に締結されている。モータハウジング3は、前後に円筒状に延びるモータ周壁3dと、モータ周壁3dの後端で円板状をなすモータ底壁3aとを有し、フロントハウジング1側に開口を有する有底の円筒状をしている。モータハウジング3内には、軸支部材11が設けられているとともに、軸支部材11の前方に固定スクロール13が設けられている。フロントハウジング1とモータハウジング3とは、固定スクロール13及び軸支部材11を互いに当接させた状態で収納している。
【0033】
モータ底壁3aは、前方側に面する前面30aと、後方側に面する後面30bとを有している。後面30bは、本発明における「端面」の一例である。後面30bは、モータ底壁3aを含め、モータハウジング3の後端に位置している。一方、前面30aの内面中央には円筒状の軸支部3bが前方に向けて突設されている。一方、軸支部材11は、円筒状の本体部11aと、本体部11aの前端の開口縁から外側に張り出す鍔部11bとからなる。本体部11aの中央には軸孔11cが貫通して形成されている。鍔部11bはモータハウジング3の内周面に固定されている。鍔部11bの前面側には、後述する可動スクロール15の自転を規制して、公転のみ可能とする自転阻止ピン17aが前方に向けて突設されている。
【0034】
軸孔11cには前後方向に延びる回転軸19が挿通されている。軸支部材11と軸支部3bとには、回転軸19の各端部がラジアル軸受21、23を介して回転可能に支持されている。ラジアル軸受23の後方にはシール材25が設けられ、シール材25は軸支部材11と回転軸19との間を封止している。
【0035】
回転軸19の前端には、回転軸19の軸方向に延びる軸心Oから偏心した位置に円柱状の偏心ピン19aが突出して形成されている。偏心ピン19aには、ブッシュ27が嵌合して支持されている。ブッシュ27の外周面の略半周部分には、外側へ扇状に広がるバランスウェイト27aが一体に形成されている。
【0036】
固定スクロール13は、径方向に延びる円板状をなす固定基板13aと、固定基板13aの外周側で後方に向かって円筒状に延びるシェル13bと、シェル13bの内側で固定基板13aから後方に向かって渦巻き状に延びる固定渦巻壁13cとからなる。
【0037】
一方、ブッシュ27と固定スクロール13との間にはラジアル軸受29を介して可動スクロール15が設けられている。可動スクロール15は、径方向に延びる円板状をなす可動基板15aと、可動基板15aから前方に向かって渦巻き状に延びる可動渦巻壁15bとからなる。可動渦巻壁15bは固定渦巻壁13cに噛み合わされている。
【0038】
可動基板15aの後面には、自転阻止ピン17aの先端部を遊嵌状態で受ける自転阻止孔17bが凹設されている。自転阻止孔17bには円筒状のリング17cが遊嵌されている。自転阻止ピン17aがリング17cの内周面を摺動及び転動することにより、可動スクロール15は自転を規制されて軸心O周りで公転のみ可能となっている。固定基板13a、固定渦巻壁13c、可動基板15a及び可動渦巻壁15bによって圧縮室31が区画されている。
【0039】
モータハウジング3内には、軸支部材11より後方にモータ室3cが形成されている。モータ室3cは吸入室を兼ねている。モータ室3c内には、ステータ33がモータ周壁3dの内周面に固定して設けられている。ステータ33の内側には、回転軸19に固定されたロータ35が設けられている。ステータ33への通電によってロータ35及び回転軸19が一体に回転すると、その駆動力が偏心ピン19a及びブッシュ27を介して可動スクロール15に伝達され、可動スクロール15が公転するようになっている。
【0040】
モータ周壁3dには、外部とモータ室3cとを連通させる吸入口3eが貫設されている。吸入口3eは、配管によって図示しない蒸発器と接続されている。蒸発器は、配管によって膨張弁及び凝縮器と接続されている。蒸発器における低圧かつ低温の冷媒は、吸入口3eからモータ室3c内に導入され、軸支部材11に形成された図示しない吸入通路を経て圧縮室31に供給されるようになっている。
【0041】
固定基板13aとフロントハウジング1との間には吐出室37が形成されている。固定基板13aの中央には吐出ポート13dが貫通して形成され、吐出ポート13dは圧縮室31と吐出室37とを連通している。固定基板13aには、吐出室37内において、吐出ポート13dを開閉するための吐出弁39と、この吐出弁39の開度を規制するリテーナ41とが設けられている。
【0042】
フロントハウジング1には、外部と吐出室37とを連通させる吐出口1aが貫設されている。吐出口1aは、図示しない凝縮器に配管によって接続されている。吐出室37に導入された冷媒は、吐出口1aを介して凝縮器に排出される。
【0043】
モータ室3c、回転軸19、ブッシュ27、ラジアル軸受29、可動スクロール15、固定スクロール13、吐出室37、吐出弁39、リテーナ41等によって冷媒の圧縮を行なう圧縮機構10が構成されている。圧縮機構10は吐出室37に設けられるオイルセパレータ(図示略)も含み得る。ロータ35、ステータ33及び回転軸19によって圧縮機構10を駆動させるモータ機構12が構成されている。フロントハウジング1、モータハウジング3、圧縮機構10、モータ機構12及びボルト9によって圧縮機本体20が構成されている。
【0044】
インバータケース4は、インバータボックス5と、インバータカバー7とからなる。インバータボックス5は、第1周壁5aと、インバータ底壁5bと、第2周壁5cとを有している。第1周壁5aは、軸心O方向で後方に延びる円筒状をなしている。インバータ底壁5bは、第1周壁5aにおけるモータ周壁3d側で第1周壁5aの径内方向に延びる円板状をなしている。インバータ底壁5bは、モータ底壁3aの後面30bと対向しつつ後面30bと当接している。第2周壁5cは、インバータ底壁5bから軸方向で前方、つまり第1周壁5aとは逆側に延びる円筒状をなしている。こうして、第1周壁5aと、インバータ底壁5bと、第2周壁5cとは一体化されている。
【0045】
インバータカバー7は、カバー周壁7aとインバータ上壁7bとを有している。カバー周壁7aは、第1周壁5aと同径かつ同軸の円筒状をなしており、図示しないガスケットを介して第1周壁5aに当接している。これらの第1周壁5a、第2周壁5c及びカバー周壁7aによって、本発明における「ケース周壁」が構成されている。インバータ上壁7bは、カバー周壁7aと接続しつつ、カバー周壁7aから径内方向に延びる円板状をなしている。カバー周壁7aは、インバータ14、より具体的には、インバータ14の基板14aと前後方向で対向している。
【0046】
インバータ14は樹脂製のインバータホルダ45と一体化されている。インバータ14は、インバータホルダ45のインバータカバー7側に設けられた基板14aと、基板14aと接続され、インバータボックス5側に設けられたスイッチング素子14b、コイル14c、コネクタ14d等を有している。また、インバータ14は、インバータボックス5及びインバータカバー7に形成された図示しない開口によって外部の電源と接続されるようになっている。インバータホルダ45はインバータボックス5の第1周壁5a内に保持されている。
【0047】
モータ底壁3aの後面30bにはモータ室3cと連通する開口3fが形成され、インバータ底壁5bには開口3fと連通する開口5dが形成されている。開口3f、5dには絶縁体47を介して導電部材としての3本のターミナル49が挿通されている。各ターミナル49はステータ33のコイルとコネクタ14dとに接続されている。
【0048】
図2にも示すように、モータハウジング3の後端に位置する端部50は、他の部分よりも小径に形成されている。端部50の外周面は、軸方向に延びる円筒状をなす第1周面51とされている。第1周面51は、本発明における「周面」の一例である。つまり、端部50は、後面30aを含むモータ底壁3aと、第1周面51とを有している。また、第1周面51はモータ底壁3aの外周面を兼ねている。そして、第1周面51はモータ周壁3dの後端と接続している。
【0049】
第1周面51には収容溝71が形成されている。収容溝71は、第2周壁5cから径方向で遠ざかるように第1周面51に対して凹設されている。また、収容溝71は、第1周面51を周方向に一周する円環状に形成に形成されている。そして、収容溝71は底面71aと側面71bとを有している。底面71aは、平面状をなすとともに、第2周壁5cと径方向で対向している。側面71aは、径方向に延びており、底面71aと第1周面51とに接続している。一方、第2周壁5cには、軸方向で前方に延びる円筒状をなし、第1周面51及び収容溝71と対向する第2周面53が形成されている。第1周壁5aと第2周壁5cとは、同径かつ同軸の円筒状であり、それぞれの外周面が連続してつながっている。また、第1周壁5a、第2周壁5c及びカバー周壁7aと、モータ周壁3dとは、同径かつ同軸である。
【0050】
モータハウジング3とインバータケース4との間には、ゴム製のシール部材55が収容溝71と第2周壁5c、ひいては端部50と第2周壁5cとによって径方向に挟持されつつ設けられている。シール部材55は、ターミナル49が配置される空間を密封している。より詳細には、シール部材55は円環状をなしている。シール部材55は、収容溝71側となる内周面及び第2周面53側となる外周面に複数条の円環状の凸部55aが形成されている。また、シール部材55は、収容溝71に収容された状態で、収容溝71と第2周面53との間、すなわち第1周面51と第2周面53との間に設けられている。この際、シール部材55は、軸方向では収容溝71内に全体が収容されているものの、外周面を含め外周側の一部が収容溝71の外にはみ出した状態となっている。換言すれば、収容溝71は、径方向でシール部材55の約半分を収容可能な深さに形成されている。そして、シール部材55は、収容溝71内において、底面71aと第2周壁5cとで径方向に挟持されることにより、第2周壁5cによって全体が外周側から覆われた状態となっている。これにより、シール部材55は、第2周壁5cによって全体が電動圧縮機の外部から隠蔽されている。
【0051】
インバータカバー7のインバータ上壁7b、インバータホルダ45、インバータボックス5のインバータ底壁5b及びモータ周壁3dには、それぞれ複数個のボルト穴7c、45a、5e、3gが形成されている。各ボルト43は、各ボルト穴7c、45a、5eに挿通され、ボルト穴3gで螺合されている。つまり、各ボルト43は、インバータケース4を貫通しつつモータハウジング3の一端に締結されている。
【0052】
以上のように構成された電動圧縮機は、蒸発器、膨張弁及び凝縮器とともに車両用空調装置の冷凍回路を構成する。この電動圧縮機は、次のように作動する。すなわち、車両の運転者が車両用空調装置に対する操作を行うと、インバータ14がモータ機構12を制御し、ロータ35及び回転軸19を回転させる。そうすると、偏心ピン19aが軸心O周りに旋回される。このとき、可動スクロール15は、自転阻止ピン17aがリング17cの内周面に沿って摺動及び転動することにより、その自転が阻止されて軸心O周りで公転のみが許容される。そして、可動スクロール15の公転によって圧縮室31が固定スクロール13及び可動スクロール15の外周側から中心側へと容積を減少しながら移動される。このため、蒸発器から吸入口3eを介してモータ室3cに供給された冷媒が圧縮室31内へと吸入されて圧縮される。吐出圧力まで圧縮された冷媒は、吐出ポート13dから吐出室37に吐出され、吐出口1aを介して凝縮器へ排出される。こうして、車両用空調装置の空調が行われる。
【0053】
この際、この電動圧縮機では、環状のシール部材55が収容溝71の底面71aと、インバータボックス5における第2周壁5cの第2周面53との間、ひいては、端部50と第2周壁5cとの間を封止している。
【0054】
ここで、この電動圧縮機は、複数のボルト43がモータハウジング3とインバータケース4とを軸方向で締結しているが、シール部材55は、収容溝71と第2周壁5cとの間、つまり、端部50の第1周面51と第2周壁5cの第2周面53との間に位置している。そして、収容溝71が形成された第1周面51は軸方向に延びる円筒状をなしているとともに、第2周面53も軸方向に延びる円筒状をなしている。これらのため、シール部材55はそれらの締結力によって軸方向に押し潰されない。また、この電動圧縮機では、モータハウジング3の端部50、より詳細には、端部50の第1周面51に形成された収容溝71にシール部材55が収容されている。このため、この電動圧縮機は、モータハウジング3とインバータボックス5とを軸方向に組み付ける際や、複数のボルト43によってモータハウジング3とインバータケース4とを軸方向で締結する際に、これに伴ってシール部材55が軸方向に移動しようとすれば、シール部材55は、収容溝71、より具体的には、収容溝71の側面71bに当接する。こうして、この電動圧縮機では、シール部材55が収容溝71を超えて軸方向に移動することが規制されている。これにより、シール部材55は、第1周面51や第2周面53に対して軸方向にずれ難く、好適な位置で端部50と第2周壁5cとの間を封止することが可能となっている。
【0055】
さらに、この電動圧縮機では、インバータケース4は、第1周壁5aと第2周壁5cとがこれらの間のインバータ底壁5bから互いに逆側に延びていることから、高い締結力が作用しても変形しない十分な剛性を発揮する。
【0056】
特に、この電動圧縮機では、第1周壁5aと第2周壁5cが同径の円筒状であるため、連続したひとつの周壁としての構造を有しており、インバータケース4が軽量化のために薄肉化されても強度を発揮し易い。このため、インバータケース4が優れた耐久性を発揮する。
【0057】
また、シール部材55が外周面及び内周面に複数条の環状の凸部55aを有しているため、シール部材55が収容溝71の底面71a及び第2周壁5cの第2周面53に対して複数条で当接する。このため、外部からの水分は、例えシール部材55における外部から1条目の凸部55aを乗り越えたとしても、外部から2条目の凸部55aで進入が阻止され、より高い封止性を発揮できる。このため、シール部材55は優れた耐久性の下で好適な封止性を発揮する。
【0058】
このため、この電動圧縮機は、水や塩水等が比較的に多く存在する環境下で使用される場合でも、外部の水分がターミナル49と接触し難く、ターミナル49が劣化したり、短絡を生じたりすることがより確実に防止されている。ここで、シール部材55は、各凸部55a以外では底面71a及び第2周面53に当接しなくなる。つまり、シール部材55は、底面71a及び第2周面53に対して、各凸部55aを通じて点接触するのみとなる。このため、底面71a及び第2周面53とシール部材55との接触面積が少なくなる。しかし、上記のように、この電動圧縮機では、収容溝71によってシール部材55の軸方向の移動が規制される。これにより、底面71a及び第2周面53とシール部材55との接触面積が少なくても、シール部材55には、軸方向の移動による変形が生じ難い。このため、この電動圧縮機では、モータハウジング3とインバータボックス5とを軸方向に組み付ける際や、複数のボルト43によってモータハウジング3とインバータケース4とを軸方向で締結する際に、各凸部55aのうちの一部が底面71a第2周面53から離間したり、底面71a第2周面53に十分に当接しなかったりすることを確実性高く防止することが可能となっている。
【0059】
したがって、この電動圧縮機では、過酷な条件下であっても、ターミナル49の劣化や短絡をより高い耐久性の下でより確実に防止可能である。
【0060】
また、この電動圧縮機では、第1周面51及び第2周面53が円筒状であり、シール部材55及び収容溝71が円環状である。このため、軸方向が水平方向になるように電動圧縮機を配置することにより、外部からシール部材55の外側で第1周面51や第2周面53に進入した水分が自重によって外部に排出され易く、シール部材55、モータハウジング3及びインバータケース4の劣化を防止してより高い耐久性を発揮できる。
【0061】
さらに、この電動圧縮機では、モータハウジング3とインバータケース4とが締結されることにより、第2周壁5cは、収容溝71の全体を外周側から覆っている。これにより、第2周壁5cは、収容溝71に収容されたシール部材55の全体も外周側から覆っている。これにより、この電動圧縮機では、シール部材55が紫外線によって劣化し難くなっており、シール部材55がより高い耐久性を発揮している。また、このように収容溝71及びシール部材55の全体が第2周壁5cに覆われることにより、電動圧縮機の外部の水分がシール部材55まで届き難くなっている。特に、シール部材55は、底面71a及び第2周面53に対して複数条で当接しているため、たとえ外部からの水分シール部材55まで到達し、かつ、シール部材55における外部から1条目の部分を乗り越えたとしても、外部から2条目の部分で進入が阻止される。このため、シール部材55は、より高い封止性を発揮することが可能となっている。
【0062】
また、この電動圧縮機では、内部に吸入室を兼ねるモータ室3cを有するモータハウジング3のモータ底壁3aの後面30bとインバータ底壁5bとが当接しているため、インバータ14を冷却し易くなっている。特に、スイッチング素子14bやコイル14cを冷却したい場合には、これらをインバータ底壁5bに当接することも可能である。
【0063】
また、この電動圧縮機では、モータハウジング3の端面にカップ状の部材を接合してインバータ収容室を形成する電動圧縮機とは異なり、インバータケース4がモータハウジング3とは完全に独立した収容容器として構成されている。そのため、フィルタ素子を含むインバータ14が大型化しても、収容空間を容易に大型化することができる。その背反として、インバータケース4及びインバータ14の重量が大きくなり、高い締結力が求められるが、それでもシール部材55が劣化することはない。
【0064】
(
参考例1)
図3に示すように、
参考例1の電動圧縮機では、実施
例の電動圧縮機におけるインバータケース4及びシール部材55に換えて、インバータケース8及びシール部材56を備えている。ここで、実施
例の電動圧縮機では、インバータボックス5とインバータカバー7との2つの部材によって、インバータケース4が構成されているのに対し、
参考例1の電動圧縮機では、1つの部材によってインバータケース8が構成されている。
【0065】
インバータケース8は、ケース周壁8aと、ケース底壁8bとを有している。ケース周壁8aは、軸方向に延びる円筒状に形成されている。より具体的には、ケース周壁8aは、モータハウジング3のモータ周壁3dと同径かつ同軸をなす円筒状に形成されている。つまり、ケース周壁8aは、モータハウジング3の端部50よりも大径である。また、ケース周壁8aには、端部50の第1周面51及び収容溝71と対向する第3周面81が形成されている。
【0066】
ケース底壁8bは、ケース周壁8aと接続しつつ、ケース周壁8aから径内方向に延びる円板状をなしている。また、ケース底壁8bには、複数個のボルト穴8cが形成されている。ここで、インバータケース8には、インバータ底壁5bが設けられていない。このため、インバータケース8は、ケース周壁8a及びケース底壁8bにより、有底の筒状、つまりカップ状をなしている。
【0067】
この電動圧縮機においても、インバータケース8は、内部にインバータ14及びインバータホルダ45を収容しつつ、複数のボルト43によって、モータハウジング3の端部50に接合されている。これにより、インバータケース8では、ケース周壁8aがインバータ14及びインバータホルダ45を囲繞しているとともに、端部50を囲繞している。また、ケース底壁8bがインバータ14の基板14aと前後方向で対向している。ここで、インバータケース8には、インバータ底壁5bが設けられていないため、インバータホルダ45は、モータハウジング3のモータ底壁3aの後面30bに保持されている。
【0068】
シール部材56は、シール部材55と同様、ゴム製であり円環状をなしている。ここで、シール部材55とは異なり、シール部材56には凸部55aが形成されていない。これにより、シール部材56は、径方向の断面が矩形状をなしている。より詳細には、シール部材56における径方向の断面は、軸方向の辺が径方向の辺に比べて長い長方形をなしている。
【0069】
シール部材56は、収容溝71に収容された状態で、収容溝71の底面71aと第3周面81との間、すなわち第1周面51と第3周面81との間に設けられている。この際、シール部材56についても、軸方向では収容溝71内に全体が収容されているものの、外周面を含め外周側の一部が収容溝71の外にはみ出した状態となっている。そして、シール部材56は、収容溝71内において、底面71aとケース周壁8aとで径方向に挟持されることにより、ターミナル49が配置される空間を密封している。また、シール部材56は、ケース周壁8aによって全体が外周側から覆われた状態となっている。これにより、シール部材56は、ケース周壁8aによって全体が電動圧縮機の外部から隠蔽されている。この電動圧縮機における他の構成は実施例の電動圧縮機と同様であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0070】
この電動圧縮機では、シール部材56の径方向の断面が矩形状をなしているため、シール部材56の外周面が第3周面81に面接触するとともに、シール部材56の内周面が底面71aに面接触する。これにより、第3周面81及び底面71aとシール部材56との接触面積が大きく確保されている。特に、シール部材56の径方向の断面は、軸方向の辺が径方向の辺に比べて長い長方形をなしている。このため、シール部材56の径方向の断面が立方体である場合に比べても、この電動圧縮機では、第3周面81及び底面71aとシール部材56との接触面積が大きくなっている。これらのため、この電動圧縮機では、シール部材56によって、底面71aと第3周面81との間、ひいては、端部50とケース周壁8aとの間を好適に封止することが可能となっている。また、シール部材56に対して、シール部材55のように凸部55aを設ける必要がないため、シール部材55に比べてシール部材56の構成が簡素化されている。このため、この電動圧縮機では、シール部材56の形成も容易となっている。
【0071】
そして、この電動圧縮機では、インバータケース8が一つの部材で構成されており、インバータケース8がケース周壁8aとケース底壁8bとをする有底の筒状をなしている。このため、この電動圧縮機では、実施例の電動圧縮機に比べて部品点数を少なくすることで製造コストを低廉化している。この電動圧縮機における他の作用は、実施例の電動圧縮機と同様である。
【0072】
(参考例
2)
参考例
2の電動圧縮機は、
図4に示すように、モータハウジング3のモータ底壁3aの後端に円筒状の筒部3jが形成され、筒部3jの内周面として軸方向で後方に延びる円筒状をなす第1周面61が形成されている。筒部3jはモータ周壁3dと接続している。一方、インバータボックス5には、小径の第1周壁5gと、第1周壁5gと連続する大径の第1周壁5hとが形成され、実施
例のような第2周壁5cは形成されていない。第1周壁5gには、第1周面61と対向する第2周面62が外周面として形成されている。第1周面61と第2周面62との間にシール部材55が設けられている。ここで、この電動圧縮機では、第1周面61や第2周面62に対して、シール部材55を収容する収容溝71が形成されてない。この電動圧縮機における他の構成は実施
例の電動圧縮機と同様である。
【0073】
この電動圧縮機は、インバータボックス5が第2周壁を有さないことから、強度に懸念がある。また、この電動圧縮機では、モータハウジング3に筒部3jを形成する必要があるため、モータハウジング3の製造が複雑化し、製造コストが増大する。さらに、この電動圧縮機では、第1周面61や第2周面62に収容溝71が形成されてないため、モータハウジング3とインバータボックス5とを軸方向に組み付ける際や、複数のボルト43によってモータハウジング3とインバータケース4とを軸方向で締結する際に、シール部材55が軸方向に移動し易い。これにより、シール部材55が好適な位置で第1周面61と第2周面62との間を封止し難くなっている。
【0074】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0075】
例えば、上記実施例では、圧縮機構10がスクロール式であるが、本発明の電動圧縮機では、斜板式、ベーン式等、他の形式の圧縮機構を採用することも可能である。
【0076】
また、実施例の構成と参考例1の構成とを適宜組み合わせることによって、電動圧縮機を形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は車両等の空調装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
3…モータハウジング
3a…モータ底壁
4…インバータケース(5…インバータボックス、7…インバータカバー)
5a…第1周壁(ケース周壁)
5b…インバータ底壁
5c…第2周壁(ケース周壁)
7a…カバー周壁(ケース周壁)
8…インバータケース
8a…ケース周壁
10…圧縮機構
12…モータ機構
14…インバータ
30b…後面(端面)
43…締結具(ボルト)
49…導電部材(ターミナル)
50…端部
51…第1周面(周面)
55…シール部材
55a…凸部
56…シール部材
71…収容溝