(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】制動制御装置
(51)【国際特許分類】
B60L 7/18 20060101AFI20240109BHJP
B60T 8/17 20060101ALI20240109BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240109BHJP
B60L 7/24 20060101ALI20240109BHJP
B60W 10/08 20060101ALN20240109BHJP
B60W 20/14 20160101ALN20240109BHJP
B60K 7/00 20060101ALN20240109BHJP
B60W 40/068 20120101ALN20240109BHJP
【FI】
B60L7/18
B60T8/17 C ZHV
B60L15/20 Y
B60L7/24 D
B60W10/08 900
B60W20/14
B60K7/00
B60W40/068
(21)【出願番号】P 2019234055
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 直人
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-322803(JP,A)
【文献】特開2018-088735(JP,A)
【文献】特開2018-098905(JP,A)
【文献】特開2003-102108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-58/40
B60T 8/17
B60W 10/00-20/50
B60W 40/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置を有する車両に適用され、
前記回生制動装置を制御する制動制御部と、
前記車輪の減速スリップ状態量が判定値以上であるかを判定するスリップ判定部と、
前記車両が走行する路面の摩擦係数を推定路面μ値として導出する路面μ値推定部と、を備え、
前記路面μ値推定部は、制動時に前記車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値以上であると判定されたときに当該車輪に付与されている回生制動力に基づいて当該回生制動力が小さいほど前記推定路面μ値を小さい値として導出し、
前記制動制御部は、前記推定路面μ値に基づいて前記車輪に付与する回生制動力を調整する車両安定制御を実行
し、
前記制動制御部は、前記車両安定制御の実施中に前記車輪の車輪速度の変化率が規定の判定変化率よりも小さくなったとき、前記車両安定制御を終了する
制動制御装置。
【請求項2】
車両の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置を有する車両に適用され、
前記回生制動装置を制御する制動制御部と、
前記車輪の減速スリップ状態量が判定値以上であるかを判定するスリップ判定部と、
前記車両が走行する路面の摩擦係数を推定路面μ値として導出する路面μ値推定部と、を備え、
前記路面μ値推定部は、制動時に前記車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値以上であると判定されたときに当該車輪に付与されている回生制動力に基づいて当該回生制動力が小さいほど前記推定路面μ値を小さい値として導出し、
前記制動制御部は、前記推定路面μ値に基づいて前記車輪に付与する回生制動力を調整する車両安定制御を実行
するようになっており、
前記車両は、前輪および後輪の一方の車輪に摩擦制動力を付与する摩擦制動装置を有するものであり、前記回生制動装置は、前輪および後輪の他方の車輪に回生制動力を付与するものであり、
制動時に前記前輪と前記後輪とが同時にロックするような前後制動力配分比率を理想制動力配分比率とすると、
前記車両安定制御の実施によって前記他方の車輪に付与する回生制動力を変動させたときには、前記理想制動力配分比率および前記他方の車輪に付与する回生制動力の大きさに基づいて、前記前後制動力配分比率が前記理想制動力配分比率に近づくように、前記一方の車輪に付与する摩擦制動力の大きさを調整する配分調整処理を実施する
制動制御装置。
【請求項3】
前記制動制御部は、前記車両安定制御の実施中に前記車輪の車輪速度の変化率が規定の判定変化率よりも小さくなったとき、前記車両安定制御を終了する
請求項
2に記載の制動制御装置。
【請求項4】
前記制動制御部は、制動時に前記車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値以上であると判定されたときに前記車両安定制御を開始して当該車輪に付与する回生制動力を減少させ、前記車両安定制御では、前記推定路面μ値が小さいほど、回生制動力を減少させる補正値である減少補正値を大きくする
請求項
1~3のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項5】
前記制動制御部は、制動時に前記車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値以上であると判定されたときに前記車両安定制御を開始して当該車輪に付与する回生制動力を減少させ、
前記推定路面μ値に応じて減少させる回生制動力の減少値を回生減少値とした場合、
前記制動制御部は、前記車両安定制御の開始時点で、前記車輪に付与する回生制動力を前記回生減少値だけ減少させる
請求項
1~4のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項6】
前記推定路面μ値に応じて減少させる回生制動力の減少値を回生減少値とした場合、
前記制動制御部は、前記車両安定制御では、前記車輪に付与する回生制動力を前記回生減少値だけ減少しても当該車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値以上である状態が継続するときには、前記車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値以上であると判定されなくなるまで前記車輪に付与する回生制動力をさらに減少させる
請求項
1~5のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【請求項7】
前記制動制御部は、前記車両安定制御では、前記車輪に付与する回生制動力の減少によって当該車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値よりも小さくなったとき、前記車輪に付与する回生制動力を増大させる
請求項
1~6のいずれか一項に記載の制動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車輪に回生制動力を付与する回生制動装置を備える車両の制動制御装置が開示されている。特許文献1に開示されている制動制御装置は、制動時に車輪がスリップしたとき、スリップ量が所定値よりも大きい場合には車輪に付与する回生制動力を減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている制動制御装置では、回生制動力を減少させる際に回生制動力の減少速度を状況に応じて変化させることが開示されているものの、スリップを早期に解消させるための具体的な方策が示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための制動制御装置は、車両の車輪に回生制動力を付与する回生制動装置を有する車両に適用され、前記回生制動装置を制御する制動制御部と、前記車輪の減速スリップ状態量が判定値以上であるかを判定するスリップ判定部と、前記車両が走行する路面の摩擦係数を推定路面μ値として導出する路面μ値推定部と、を備え、前記路面μ値推定部は、制動時に前記車輪の前記減速スリップ状態量が前記判定値以上であると判定されたときに当該車輪に付与されている回生制動力に基づいて当該回生制動力が小さいほど前記推定路面μ値を小さい値として導出し、前記制動制御部は、前記推定路面μ値に基づいて前記車輪に付与する回生制動力を調整する車両安定制御を実行することをその要旨とする。
【0006】
車輪がスリップするか否かの限界となる制動力を限界制動力とした場合、路面の摩擦係数が小さいほど限界制動力が小さくなる。上記構成によれば、車両安定制御の開始時点で車輪に付与されている回生制動力が小さいほど路面の摩擦係数である推定路面μ値が小さい値として導出される。このため、車両安定制御の実施によって、推測される路面の摩擦係数に応じて回生制動力を調整することができる。これによって、車輪に付与される回生制動力を、スリップした車輪のスリップ量が減少しやすくなる大きさにすることができる。すなわち、車輪に所定のスリップが発生している状態を早期に解消しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】車両の制動制御装置の一実施形態と、同制動制御装置の制御対象である車両と、を示す模式図。
【
図2】同制動制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【
図3】同制動制御装置が実行する車両安定制御を示すフローチャート。
【
図4】制動時に車両安定制御が実行された場合の車両の車輪速度と回生制動力との推移を示す図。
【
図5】制動時に車両安定制御が実行された場合の回生制動力の推移を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、車両の制動制御装置の一実施形態について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、車両90と、車両90の制動制御装置10とを示す。
図1には、車両90が前方に備える車輪として前輪51を一つ示している。
図1には、車両90が後方に備える車輪として後輪52を一つ示している。
【0009】
車両90は、各車輪に対応した制動機構81を備えている。車両90の車輪には、制動機構81の作動によって摩擦制動力がそれぞれ付与される。各制動機構81は、ホイールシリンダ82内の液圧が高いほど、車輪と一体回転する回転体84に摩擦材83を押し付ける力が大きくなるように構成されている。各制動機構81は、ホイールシリンダ82内の液圧が高いほど大きな摩擦制動力を車輪に付与することができる。
【0010】
車両90は、摩擦制動装置80を備えている。摩擦制動装置80は、各制動機構81のホイールシリンダ82にブレーキ液を供給できるように構成されている。摩擦制動装置80は、電気モータを動力源とするポンプを備えている。ポンプから吐出されたブレーキ液が、各ホイールシリンダ82内に供給される。摩擦制動装置80は、各車輪に付与する摩擦制動力の大きさがそれぞれ異なるように各ホイールシリンダ82の液圧を個別に変更することができる。
【0011】
車両90は、モータジェネレータ71を備えている。モータジェネレータ71には、バッテリが接続されている。モータジェネレータ71は、電動機または発電機として機能させることができる。モータジェネレータ71を電動機として機能させる場合、モータジェネレータ71から出力される駆動力が前輪51に入力される。一方、モータジェネレータ71を発電機として機能させる場合、モータジェネレータ71は、前輪51の回転速度に応じて発電する。これによって、車両に回生制動力BFRを発生させることができる。回生制動力BFRは、モータジェネレータ71の発電量が多いほど大きくなる。車両90では、モータジェネレータ71によって、前輪51に回生制動力BFRを付与する回生制動装置70が構成されている。
【0012】
車輪に摩擦制動力または回生制動力BFRを付与することによって車両90を減速させることを、車両90の制動という。モータジェネレータ71から出力される駆動力が入力される前輪51は、車両90の駆動輪である。また、後輪52は、非駆動輪である。
【0013】
車両90は、車両90の状態を検出するための各種センサを備えている。
図1には、各種センサの例として、車輪速センサ99を示している。車輪速センサ99は、車両90の各車輪における車輪速度を検出するセンサである。車輪速センサ99は、各車輪にそれぞれ設けられている。
【0014】
車輪速センサ99からの検出信号は、制動制御装置10に入力される。制動制御装置10は、車輪速センサ99からの検出信号に基づいて各車輪の車輪速度VWをそれぞれ導出する。以下、駆動輪である前輪51の車輪速度VWを駆動輪速度VWaといい、非駆動輪である後輪52の車輪速度を非駆動輪速度VWbという。制動制御装置10は、各車輪の車輪速度VWに基づいて車両90の車体速度VSを導出する。
【0015】
車両90は、車両90の運転者による操作が可能な操作部材として、第1ペダル91と第2ペダル92とを備えている。車両90は、第1ペダル91の操作量を検出する第1ペダルセンサ93を備えている。車両90は、第2ペダル92の操作量を検出する第2ペダルセンサ94を備えている。
【0016】
車両90では、第1ペダル91の操作を運転者による加速要求として扱う通常操作と、第1ペダル91の操作を運転者による加速要求または減速要求として扱うワンペダル操作と、を運転者が選択して切り換えることができる。通常操作では、第1ペダル91の踏み込み量に応じて第1ペダルセンサ93から出力される信号が加速要求として処理される。一方、ワンペダル操作では、たとえば、所定の位置よりも第1ペダル91を踏み込むことによって第1ペダルセンサ93から出力される信号が加速要求として処理され、所定の位置よりも第1ペダル91の踏み込みを戻すことによって第1ペダルセンサ93から出力される信号が減速要求として処理される。また、第2ペダル92の踏み込み量に応じて第2ペダルセンサ94から出力される信号は、減速要求として処理される。減速要求は、制動制御装置10に入力される。また、加速要求は、車両90を制御する車両ECUに入力される。車両ECUは、制動制御装置10と通信が可能な電子制御装置である。以下、本実施形態では、ワンペダル操作が選択されている場合の例について説明する。
【0017】
なお、制動制御装置10および車両ECUは、以下(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)コンピュータプログラムに従って各種処理を実行する一つ以上のプロセッサを備える。プロセッサは、CPU並びに、RAMおよびROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。(b)各種処理を実行する一つ以上の専用のハードウェア回路を備える。専用のハードウェア回路は、たとえば、特定用途向け集積回路すなわちASIC(Application Specific Integrated Circuit)、または、FPGA(Field Programmable Gate Array)等である。(c)各種処理の一部をコンピュータプログラムに従って実行するプロセッサと、各種処理のうち残りの処理を実行する専用のハードウェア回路と、を備える。
【0018】
図1に示すように、制動制御装置10は、機能部として、制動制御部20とスリップ判定部11と路面μ値推定部12とを備えている。
制動制御部20は、第1ペダル91または第2ペダル92の操作による減速要求に基づいて車両90の減速度の目標値を導出する。制動制御部20は、減速度の目標値に基づいて、車両90に付与する制動力として要求制動力を導出する。
【0019】
制動制御部20は、回生制動装置70を制御する機能を有する回生制御部21と、摩擦制動装置80を制御する機能を有する摩擦制御部22と、を有している。制動制御部20は、回生制動装置70によって発生可能な回生制動力BFRが要求制動力以上である場合、回生制御部21に回生制動装置70を制御させて、要求制動力に等しい回生制動力BFRを付与することによって車両90を制動する。制動制御部20は、回生制動装置70によって発生可能な回生制動力BFRが要求制動力よりも小さい場合には、回生制御部21に回生制動装置70を制御させて回生制動力BFRを付与して、摩擦制御部22に摩擦制動装置80を制御させて摩擦制動力を付与することで、回生制動力BFRと摩擦制動力との合計を要求制動力に等しくすることによって車両を制動する。
【0020】
また、制動制御部20は、車両安定制御を実施する。車両安定制御は、車両90の制動中に発生したスリップを解消するために回生制動力BFRを減少させる処理を含む制御である。車両安定制御の詳細については後述する。
【0021】
スリップ判定部11は、車輪に所定のスリップが発生しているかを減速スリップ状態量に基づいて判定する。減速スリップ状態量は、たとえば、車体速度VSと各車輪の車輪速度VWとに基づいてスリップ判定部11によって導出される各車輪についてスリップ量である。スリップ判定部11は、車輪のスリップ量が規定の判定値以上であるか否かを判定する。スリップ判定部11は、車輪のスリップ量が規定の判定値以上である場合、当該車輪に所定のスリップが発生していると判定する。なお、減速スリップ状態量は、スリップ量に限らずスリップ量を微分した値、または、スリップ量を積分した値でもよい。スリップ判定部11には、スリップ量を微分した値を用いてスリップの発生を判定するための判定値、および、スリップ量を積分した値を用いてスリップの発生を判定するための判定値も記憶されている。スリップ判定部11は、スリップ量、スリップ量を微分した値、およびスリップ量を積分した値のうち二つ以上を用いて、車輪に所定のスリップが発生しているかを判定することもできる。
【0022】
路面μ値推定部12は、車輪に所定のスリップが発生したときに当該車輪が接地する路面の摩擦係数を推定路面μ値として導出する。路面μ値推定部12は、車輪のスリップ量が規定の判定値以上であると判定された時点において当該車輪に付与されている回生制動力BFRをスリップ時制動力BFRSとして、スリップ時制動力BFRSが小さいほど推定路面μ値を小さい値として導出する。路面μ値推定部12は、推定路面μ値の導出に際して、スリップ時制動力BFRSに加えて車両90の重量等を考慮してもよい。その他、車体加速度、車輪加速度、スリップが発生した車輪と路面との接地面積、およびスリップが発生した車輪におけるタイヤの外径等をさらに用いて推定路面μ値を導出することもできる。
【0023】
図2は、制動制御装置10が実行する処理の流れを示す。制動制御装置10は、車両90の制動中であり前輪51に付与されている制動力が回生制動力BFRのみである場合に、所定の周期毎に本処理ルーチンを繰り返し実行する。
【0024】
制動制御装置10は、本処理ルーチンを開始すると、まず、ステップS101において、駆動輪である前輪51にスリップが発生しているか否かをスリップ判定部11に判定させる。スリップが発生していない場合(S101:NO)、すなわち、前輪51のスリップ量が判定値よりも小さい場合、制動制御装置10は、本処理ルーチンを終了する。
【0025】
一方、スリップが発生している場合(S101:YES)、すなわち、前輪51のスリップ量が判定値以上である場合、制動制御装置10は、処理をステップS102に移行する。ステップS102では、制動制御装置10は、制動制御部20に車両安定制御を開始させる。その後、制動制御装置10は、本処理ルーチンを終了する。
【0026】
図3を用いて、車両安定制御の処理ルーチンについて説明する。本処理ルーチンは、
図2におけるステップS102の処理によって開始される。
制動制御部20は、本処理ルーチンを開始すると、まず、ステップS201において、路面μ値推定部12に推定路面μ値を導出させる。
【0027】
路面μ値推定部12は、前輪51のスリップ量が判定値以上であると判定された時点で前輪51に付与されている回生制動力BFRをスリップ時制動力BFRSとして、スリップ時制動力BFRSに基づいて推定路面μ値を導出する。すなわち、路面μ値推定部12は、車両安定制御が開始された時点で前輪51に付与されている回生制動力BFRに基づいて推定路面μ値を導出する。推定路面μ値が導出されると、制動制御部20は、処理をステップS202に移行する。
【0028】
ステップS202では、制動制御部20は、回生制御部21に回生補正量DAを導出させる。回生制御部21は、駆動輪に所定のスリップが発生した場合にスリップを解消させるための回生制動力BFRの減少量の最小値を回生補正量DAとすると、スリップ時制動力BFRSと当該スリップ時制動力BFRSに対する減少率DRとに基づいて、回生補正量DAを導出する。回生制御部21には、推定路面μ値と減少率DRとの関係が記憶されている。推定路面μ値と減少率DRは、推定路面μ値が小さいほど減少率DRが大きい関係を示す。当該関係は、実験等によって予め導出されている。回生制御部21は、推定路面μ値と減少率DRとの関係に基づいて、推定路面μ値が小さいほど減少率DRを大きい値として導出する。すなわち、「前記推定路面μ値が小さいほど」大きくされる「回生制動力を減少させる補正値である減少補正値」は、減少率DRに対応する。また、たとえば、減少率DRが大きい場合と減少率DRが小さい場合とでスリップ時制動力BFRSが同じ値であるとすると、減少率DRが大きい場合の方が回生補正量DAが大きい値として導出される。換言すれば、推定路面μ値が小さいほど回生補正量DAが大きくなりやすい。すなわち、「前記推定路面μ値が小さいほど」大きくされる「回生制動力を減少させる補正値である減少補正値」は、回生補正量DAにも対応している。また、回生補正量DAは、「推定路面μ値に応じて減少させる回生制動力の減少値」である「回生減少値」でもある。回生補正量DAが導出されると、制動制御部20は、処理をステップS203に移行する。
【0029】
ステップS203では、制動制御部20は、前輪51に付与する回生制動力BFRを減少させる。具体的には、制動制御部20は、スリップ時制動力BFRSから回生補正量DAを減算した大きさの回生制動力BFRが前輪51に付与されるように回生制御部21に回生制動装置70を制御させることによって回生制動力BFRを減少させる。回生制動力BFRを減少させると、制動制御装置10は、処理をステップS204に移行する。
【0030】
ステップS204では、制動制御部20は、前輪51に発生したスリップが継続しているか否かをスリップ判定部11に判定させる。スリップ判定部11は、スリップ量が判定値以上である状態が継続している場合、スリップが継続していると判定する。一方で、スリップ量が判定値よりも小さくなっている場合、スリップ判定部11は、スリップが解消したと判定する。
【0031】
スリップが継続している場合(S204:YES)、制動制御部20は、処理をステップS205に移行する。ステップS205では、制動制御部20は、回生制動力BFRの減少処理を回生制御部21に開始させる。
【0032】
回生制御部21が実行する減少処理は、ステップS203の処理によって減少させた回生制動力BFRをさらに減少させる処理である。回生制御部21は、減少処理では、前輪51に付与される回生制動力BFRが徐々に減少するように回生制動装置70を制御する。回生制御部21は、ステップS201において導出された推定路面μ値に応じて、回生制動力BFRの減少速度を変化させる。たとえば、回生制動力BFRは、推定路面μ値が小さいほど回生制動力BFRの減少速度を大きくする。
【0033】
ステップS205の処理によって減少処理を開始させると、制動制御部20は、処理をステップS204に移行する。すなわち、ステップS204においてスリップが継続していると判定される場合には、制動制御部20は、ステップS204およびステップS205の処理を繰り返し実行する。このため、スリップ量が判定値以上であると判定されなくなるまで回生制動力BFRが減少され続ける。
【0034】
一方、ステップS204の処理において、スリップが継続していない場合(S204:NO)、すなわちスリップが解消している場合、制動制御部20は、処理をステップS206に移行する。このとき、ステップS205の処理によって減少処理が開始されている場合には、制動制御部20は、減少処理を終了させて処理をステップS206に移行する。
【0035】
ステップS206では、制動制御部20は、回生制動力BFRを増加させる回生制動力BFRの回復処理を回生制御部21に開始させる。
回生制御部21が実行する回復処理とは、ステップS203の処理およびステップS205の処理によって減少させた回生制動力BFRを増加させる処理である。たとえば、回生制御部21は、スリップ時制動力BFRSを目標値として回生制動力BFRが徐々に増加するように回生制動装置70を制御する。このとき、回生制御部21は、推定路面μ値が小さいほど回生制動力BFRの増加速度を小さくする。回生制御部21は、回生制動力BFRが目標値まで増加すると回復処理を終了する。
【0036】
ステップS206の処理によって回復処理を開始させると、制動制御部20は、処理をステップS207に移行する。ステップS207では、制動制御部20は、スリップが前輪51に発生しているか否かをスリップ判定部11に判定させる。すなわち、ここでは、スリップ判定部11は、回復処理が開始されたことによる回生制動力BFRの増加に伴って前輪51のスリップ量が再び増加したか否かを判定する。前輪51にスリップが再度発生している場合には(S207:YES)、制動制御部20は、回生制御部21に回復処理を終了させ、処理をステップS201に移行する。この場合、制動制御部20は、ステップS207の処理が実行された時点における回生制動力BFRをスリップ時制動力BFRSとしてステップS201以降の処理を実行する。
【0037】
一方、ステップS207の処理において、スリップが発生していない場合(S207:NO)、制動制御部20は、処理をステップS208に移行する。ステップS208では、制動制御部20は、車両安定制御の終了条件が成立したか否かを判定する。制動制御部20は、たとえば、以下の(条件A)~(条件C)が一つ以上成立している場合に終了条件が成立していると判定し、(条件A)~(条件C)がいずれも成立していない場合に終了条件が成立していないと判定する。
(条件A)駆動輪速度VWaの変化率が規定の判定変化率よりも小さい。
(条件B)車体速度VSが規定の停止判定速度よりも小さい。
(条件C)車両90の制動が終了した。
【0038】
なお、上記判定変化率は、駆動輪速度VWaが一定の速度に維持されている状態であるかを判定するための閾値である。上記停止判定速度は、車両90が停止したかを判定するための閾値である。制動が終了とは、要求制動力が「0」になることである。
【0039】
ステップS208の処理において、車両安定制御の終了条件が成立していない場合(S208:NO)、制動制御部20は、処理をステップS207に移行して、ステップS207以降の処理を再び実行する。一方、終了条件が成立している場合(S208:YES)、制動制御部20は、本処理ルーチンを終了する。
【0040】
本実施形態の作用および効果について説明する。
図4に示す例では、タイミングt11から制動が開始されて、
図4の(b)に実線で示すように、タイミングt11から回生制動力BFRが増加している。なお、
図4に示す例では、前輪51に付与されている回生制動力BFRのみによって要求制動力が足りている。
【0041】
図4の(a)には、非駆動輪である後輪52の車輪速度を非駆動輪速度VWbとして実線で示している。駆動輪である前輪51の車輪速度を駆動輪速度VWaとして破線で示している。制動が開始されるタイミングt11以降では、非駆動輪速度VWbおよび駆動輪速度VWaが減少している。
【0042】
図4の(a)に示すように、タイミングt12において、駆動輪速度VWaが非駆動輪速度VWbよりも大きく減少して、駆動輪速度VWaと非駆動輪速度VWbとの差が大きくなっている。すなわち、駆動輪である前輪51にスリップが発生している。駆動輪速度VWaの減少量が大きくなりスリップ量が大きくなると、スリップ判定部11によってスリップが発生していると判定される(S101:YES)。このため、車両安定制御が開始される(S102)。
【0043】
タイミングt12において車両安定制御が開始されることによって、タイミングt12における回生制動力BFRであるスリップ時制動力BFRSに基づいて推定路面μ値が導出され(S201)、推定路面μ値に基づいて減少率DRが導出されて、回生補正量DAが導出される(S202)。そして、
図4の(b)に実線で示すように、タイミングt12の時点で回生制動力BFRがスリップ時制動力BFRSから回生補正量DAだけ減少される(S203)。
【0044】
タイミングt12の時点で回生制動力BFRが減少されることによって前輪51のスリップ量の増加が抑制される。その後、
図4の(a)に示すように、駆動輪速度VWaと非駆動輪速度VWbとの乖離が徐々に小さくなり、タイミングt13において駆動輪速度VWaと非駆動輪速度VWbとが等しくなっている。すなわち、前輪51に発生したスリップが解消している。
【0045】
また、
図4の(b)には、実線で示した例に比して推定路面μ値が小さい場合の回生制動力BFR´の推移を二点鎖線で例示している。二点鎖線で示す例では、実線で示す例と同様にタイミングt11以降で制動が開始されている。ところが、二点鎖線で示す例では、実線で示す例よりも推定路面μ値が小さいために、スリップ時制動力BFRSよりも小さい制動力でスリップが発生する。すなわち、タイミングt12における回生制動力BFR´であるスリップ時制動力BFRS´は、スリップ時制動力BFRSよりも小さい。そして、
図4の(b)に二点鎖線で示すように、タイミングt12の時点で回生制動力BFR´がスリップ時制動力BFRS´から回生補正量DA´だけ減少される。ここで、減少率DRは、推定路面μ値が小さいほど大きくされる。このため、
図4の(b)に二点鎖線で示す例のように推定路面μ値が小さい場合の減少率DR´は、推定路面μ値が大きい場合と比較して大きくなる。また、回生補正量DAは、スリップ時制動力BFRSと減少率DRとによってその大きさが決定される値である。このため、
図4に示す例では、推定路面μ値が大きい場合の回生補正量DAと推定路面μ値が小さい場合の回生補正量DA´とで、大きさに差異がなくなっている。
【0046】
車両90の制動時に車輪がスリップした場合には、スリップが発生した時点で当該車輪に付与されている回生制動力BFRが小さいほど、車輪が接地する路面の路面μ値が小さいと推測できる。そして、車輪がスリップするか否かの限界となる制動力を限界制動力とした場合、路面μ値が小さいほど限界制動力が小さくなる。制動制御装置10によれば、駆動輪である前輪51にスリップが発生していると判定されて、回生制動力BFRを減少させる車両安定制御が開始されるとき、スリップ時制動力BFRSが小さいほど推定路面μ値が小さく導出される。また、推定路面μ値が小さいほど回生制動力BFRの減少率DRが大きくされる。このため、推定路面μ値が小さいほど、車両安定制御の実施によって減少された後の回生制動力BFRが小さくなりやすい。これによって、前輪51に付与される回生制動力BFRが限界制動力以下になりやすくなり、前輪51のスリップ量が減少しやすくなる。すなわち、前輪51に所定のスリップが発生している状態を早期に解消しやすくなる。
【0047】
制動制御装置10では、推定路面μ値に応じて回生補正量DAが導出されるため、回生制動力BFRを大きく減少させすぎることなくスリップ量の低減を図ることができる。
さらに、車両90において、回生制動力BFRは、モータジェネレータ71を発電機として機能させた場合の発電量に応じて前輪51に付与できる制動力である。このため、回生制動力BFRは、ホイールシリンダ82内の液圧に応じて付与されるような摩擦制動力と比較して応答性が高い。制動制御装置10によれば、タイミングt12の時点で、前輪51に付与する回生制動力BFRをスリップ時制動力BFRSから回生補正量DAだけ減少させた制動力に変更することが可能である。車両安定制御が開始されるタイミングt12の時点で前輪51に付与する回生制動力BFRをスリップ時制動力BFRSから回生補正量DAだけ減少させることによって、前輪51のスリップを早く解消することができる。
【0048】
ここで、制動時に前輪51に発生したスリップを解消するために回生制動力BFRを減少させた後も回生制動力BFRを減少させた状態を継続していると、車両90の制動距離が長くなるおそれがある。
【0049】
この点、制動制御装置10によれば、駆動輪速度VWaと非駆動輪速度VWbとが
図4の(a)に示すようにタイミングt13において等しくなりスリップが解消したと判定されると(S204:NO)、回復処理が開始される(S206)。回復処理が開始されることで、タイミングt13以降では、
図4の(b)に実線で示すように、回生制動力BFRが徐々に増加されている。回生制動力BFRの増加は、タイミングt14において終了されている。このように、制動制御装置10によれば、スリップが解消した場合には回復処理が開始される。スリップ解消のために回生制動力BFRを減少させた状態で制動を続ける場合と比較して、回復処理による回生制動力BFRの増加によって車両90の制動距離を短くすることができる。
【0050】
また、回復処理では、推定路面μ値に応じて回生制動力BFRの増加速度が調整されるため、スリップが解消した後に再びスリップが発生することを抑制できる。
なお、回復処理の実行中にスリップが発生した場合には、回復処理が終了される(S207:YES)。この結果、回生制動力BFRの増大が停止される。その後、ステップS201以降の処理が実行されて回生制動力BFRが減少されることによって、回復処理の実行中にスリップが発生した場合でもスリップを解消させることができる。
【0051】
さらに、制動制御装置10では、回生制動力BFRを回生補正量DAだけ減少させてもスリップが継続している場合には、さらに回生制動力BFRを減少させる減少処理が実行される。減少処理が実行される場合の回生制動力BFRの推移を説明する。
【0052】
図5に示す例では、タイミングt21から制動が開始されて、回生制動力BFRが増加している。タイミングt22においてスリップが発生していると判定され、車両安定制御が開始されている(S102)。そして、回生制動力BFRが回生補正量DAだけ減少されている(S203)。
図5に示す例では、回生制動力BFRを減少させた後もスリップが継続していることによって(S204:YES)、タイミングt23において減少処理が開始され(S205)、タイミングt23以降では回生制動力BFRがさらに減少されている。なお、タイミングt23以降ではスリップが継続していると判定されている間は回生制動力BFRが減少され続けるが、スリップが解消された時点で(S204:NO)、減少処理が終了されて回生制動力BFRの減少が停止される。その後、回復処理が開始される(S206)。図示は省略するが、回復処理が開始されると、
図4の(b)に実線で示す例におけるタイミングt13以降と同様に、回生制動力BFRが徐々に増加される。
【0053】
すなわち、制動制御装置10では、スリップが発生した際に推定路面μ値に基づいて導出した回生補正量DAだけ回生制動力BFRを減少させてもスリップの解消に至らない場合であっても、さらに回生制動力BFRを減少させることによって、スリップ量の低減を図ることができる。
【0054】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、制動制御装置10を適用する車両90は、前輪51が駆動輪である。制動制御装置10は、モータジェネレータから出力される駆動力が後輪52に入力される車両に適用してもよい。すなわち、車両は、後輪52が駆動輪でもよく、後輪52に回生制動力BFRを付与する回生制動装置を備えていてもよい。この場合、駆動輪である後輪52について車両安定制御を実施することで、回生制動力BFRが付与される車輪に発生するスリップを、上記実施形態と同様に早期に解消することができる。
【0055】
・制動制御装置10を適用する車両は、前輪51および後輪52に回生制動力BFRを付与する回生制動装置を備えていてもよい。
・上記実施形態では、ワンペダル操作が選択されている場合の例について説明したが、通常操作が選択されている場合でも、上記実施形態における車両安定制御を実施することができる。制動時に車輪に付与されている制動力が回生制動力BFRのみであれば、上記実施形態と同様に、車両安定制御によって、回生制動力BFRが付与される車輪に発生するスリップを早期に解消する効果を奏することができる。
【0056】
・上記実施形態における車両安定制御は、駆動輪に付与されている制動力が回生制動力BFRのみである制動時に適用できる。たとえば、駆動輪である前輪51に回生制動力BFRのみが付与されており、非駆動輪である後輪52に摩擦制動力が付与されている場合にも車両安定制御を実施することができる。
【0057】
この場合のように前輪51および後輪52に制動力を付与する場合、制動制御部20は、前輪51に付与する制動力を前輪制動力として、後輪52に付与する制動力を後輪制動力として、車両に付与する制動力を前輪制動力と後輪制動力とに割り当てる比率である前後制動力配分比率を調整する配分調整処理を実施する。
【0058】
図6には、制動時に前輪と後輪とが同時にロックするような前後制動力配分比率を理想制動力配分比率L1として実線で例示している。制動制御部20は、配分調整処理では、前後制動力配分比率が理想制動力配分比率L1に近づくように前輪制動力と後輪制動力とを調整する。すなわち、車両安定制御によって駆動輪に付与する回生制動力BFRが変動された場合には、理想制動力配分比率L1および回生制動力BFRの大きさに基づいて非駆動輪に付与する摩擦制動力の大きさが調整される。
【0059】
・車両90が備える摩擦制動装置80としては、ホイールシリンダ82内の液圧に応じた摩擦制動力を車輪に付与する構成に限らない。たとえば、電気モータの駆動量に応じた力で摩擦材83を回転体84に押し付ける機構を採用して、電気モータの駆動量に応じた摩擦制動力を車輪に付与する摩擦制動装置としてもよい。
【0060】
・上記実施形態では、制動制御装置10は、車両安定制御の開始時点で、回生制動力BFRを回生補正量DAだけ減少させている。車両安定制御では、回生制動力BFRを早めに回生補正量DAだけ減少させることが好ましいが、回生制動力BFRを徐々に減少させることもできる。車両安定制御では、スリップ時制動力BFRSから導出した推定路面μ値を用いて、回生制動力BFRの減少量として回生補正量DAを導出し、回生制動力BFRを回生補正量DAだけ減少させればよい。
【0061】
・上記実施形態では、制動制御装置10は、
図3を用いて説明した車両安定制御において、スリップが解消したあとに回生制動力BFRの回復処理を開始するようにした。車両安定制御における回復処理は、必須の構成ではない。すなわち、
図3におけるステップS206およびステップS207の処理を省略することもできる。この場合、制動制御部20は、ステップS204の処理においてスリップが解消していると判定された場合にステップS208に処理を移行するとよい。終了条件が成立するまでステップS208の処理が繰り返し実行されることになる。
【0062】
・上記実施形態では、回生制御部21は、回復処理を実行中の回生制動力BFRの目標値をスリップ時制動力BFRSとしている。回復処理における回生制動力BFRの目標値は、スリップ時制動力BFRSに限らない。一例として、
図4の(b)に二点鎖線で示した例では、タイミングt13以降で回復処理が開始されることによって回生制動力BFR´が徐々に増加されているが、タイミングt14において回生制動力BFR´の増加が終了された時点での回生制動力BFR´をスリップ時制動力BFRS´よりも小さくしている。
【0063】
回復処理では、たとえば、推定路面μ値に基づいて回生制動力BFRの目標値を設定することができる。
・上記実施形態では、制動制御装置10は、
図3を用いて説明した車両安定制御において、回生制動力BFRを回生補正量DAだけ減少させてもスリップが継続している場合に回生制動力BFRの減少処理を実行した。制動制御装置10は、減少処理を開始させるタイミングを変更してもよい。たとえば、回生制動力BFRを回生補正量DAだけ減少させてからスリップが継続している状態が規定期間以上経過したときに減少処理を開始するようにしてもよい。また、スリップ量が規定の許容値よりも大きくなった場合に減少処理を開始するようにしてもよい。
【0064】
・車両安定制御における減少処理は、必須の構成ではない。すなわち、
図3におけるステップS204およびステップS205の処理を省略することもできる。この場合、制動制御部20は、ステップS203の処理を実行したあと、処理をステップS206に移行するとよい。
【0065】
・上記実施形態では、回生制御部21は、減少処理において、前輪51に付与する回生制動力BFRを徐々に減少させた。減少処理では、推定路面μ値に応じて回生制動力BFRの減少速度を変更してもよい。また、回生制動力BFRを徐々に減少させることに替えて、回生制動力BFRを段階的に減少させてもよい。
【0066】
・上記実施形態では、スリップ判定部11は、前輪51のスリップ量が判定値よりも小さくなった場合にスリップが解消したと判定したが、スリップが解消したと判定する条件は、これに限らない。たとえば、乖離した駆動輪速度VWaと非駆動輪速度VWbとの差が小さくなり、当該差が規定の速度差よりも小さくなったことをもってスリップが解消したと判定することもできる。
【符号の説明】
【0067】
10…制動制御装置
11…スリップ判定部
12…路面μ値推定部
20…制動制御部
21…回生制御部
22…摩擦制御部
51…前輪
52…後輪
70…回生制動装置
71…モータジェネレータ
80…摩擦制動装置
81…制動機構
90…車両
91…第1ペダル
92…第2ペダル
93…第1ペダルセンサ
94…第2ペダルセンサ
99…車輪速センサ