特許 7413774 タイヤ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2024-01-05

(45)【発行日】2024-01-16

(54)【発明の名称】タイヤ

(51)【国際特許分類】

   B60C 11/13 20060101AFI20240109BHJP

   B60C 11/12 20060101ALI20240109BHJP

【ＦＩ】

B60C11/13 C

B60C11/12 A

B60C11/12 C

【請求項の数】 11

(21)【出願番号】P 2019236950

(22)【出願日】2019-12-26

(65)【公開番号】P2021104744

(43)【公開日】2021-07-26

【審査請求日】2022-10-21

(73)【特許権者】

【識別番号】000183233

【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100104134

【弁理士】

【氏名又は名称】住友 慎太郎

(74)【代理人】

【識別番号】100156225

【弁理士】

【氏名又は名称】浦 重剛

(74)【代理人】

【識別番号】100168549

【弁理士】

【氏名又は名称】苗村 潤

(74)【代理人】

【識別番号】100200403

【弁理士】

【氏名又は名称】石原 幸信

(74)【代理人】

【識別番号】100206586

【弁理士】

【氏名又は名称】市田 哲

(72)【発明者】

【氏名】鈴木 直也

【審査官】鏡 宣宏

(56)【参考文献】

【文献】国際公開第２０１９／１１１７５６（ＷＯ，Ａ１）

【文献】特開２０１３－２５２７４９（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１６－１１７３０６（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１６－０９７８２２（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１０－１４３３７７（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許出願公開第２０１５／０２５１５００（ＵＳ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｂ６０Ｃ １１／００－１１／２４

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる主溝で区分された第１陸部を含み、
前記第１陸部は、タイヤ周方向に延びる第１縦エッジ及び第２縦エッジと、前記第１縦エッジと前記第２縦エッジとの間の踏面とを含み、
前記第１陸部には、タイヤ周方向に交互に設けられた第１横溝及び第２横溝と、前記第１横溝と前記第２横溝との間を連通する複数の縦サイプとが設けられ、
前記第１横溝は、前記第１縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れ、
前記第２横溝は、前記第２縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れ、
前記第１横溝及び前記第２横溝のそれぞれの溝横断面において、少なくとも一方の溝壁は、溝縁に立てたトレッド法線に対して３～８°の角度で傾斜しており、
前記第１陸部は、前記第１縦エッジを含みかつ２つの前記第１横溝の間に区分された第１ブロックを複数含み、
前記第１ブロックには、タイヤ軸方向に延びかつ両端が前記第１ブロックの踏面内で途切れる横サイプが設けられている、
タイヤ。

【請求項2】

トレッド部を有するタイヤであって、
前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる主溝で区分された第１陸部を含み、
前記第１陸部は、タイヤ周方向に延びる第１縦エッジ及び第２縦エッジと、前記第１縦エッジと前記第２縦エッジとの間の踏面とを含み、
前記第１陸部には、タイヤ周方向に交互に設けられた第１横溝及び第２横溝と、前記第１横溝と前記第２横溝との間を連通する複数の縦サイプとが設けられ、
前記第１横溝は、前記第１縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れ、
前記第２横溝は、前記第２縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れ、
前記第１横溝及び前記第２横溝のそれぞれの溝横断面において、少なくとも一方の溝壁は、溝縁に立てたトレッド法線に対して３～８°の角度で傾斜しており、
前記第１陸部は、前記第１縦エッジを含みかつ２つの前記第１横溝の間に区分された第１ブロックを含み、
前記第１ブロックは、六角形状の踏面を有している、
タイヤ。

【請求項3】

前記第１縦エッジは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜した第１傾斜エッジ及び第２傾斜エッジを含み、
前記縦サイプは、前記第２横溝のタイヤ周方向の一方側に連通しかつ前記第１傾斜エッジとは逆向きに傾斜する第１縦サイプと、前記第２横溝のタイヤ周方向の他方側に連通しかつ前記第２傾斜エッジとは逆向きに傾斜する第２縦サイプとを含み、
前記第１傾斜エッジと前記第２傾斜エッジとの間の第１角度は、前記第１縦サイプと前記第２縦サイプとの間の第２角度よりも大きい、請求項２に記載のタイヤ。

【請求項4】

前記第１角度は、１２０～１７０°である、請求項３に記載のタイヤ。

【請求項5】

前記第２角度は、９０～１５０°である、請求項３又は４に記載のタイヤ。

【請求項6】

前記第１陸部は、前記第１縦エッジを含みかつ２つの前記第１横溝の間に区分された第１ブロックを複数含み、
前記第１ブロックのタイヤ軸方向の長さは、前記第１ブロックのタイヤ周方向の長さの３０％～７０％である、請求項１ないし５のいずれか１項に記載のタイヤ。

【請求項7】

前記縦サイプは、その深さ方向に波状に延びるサイプ壁を有している、請求項１ないし６のいずれか１項に記載のタイヤ。

【請求項8】

前記主溝は、前記第１陸部の前記第１縦エッジ側に隣接する第１主溝を含み、
前記第１主溝の溝横断面において、前記第１主溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度は、前記第１横溝の溝横断面における前記第１横溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度に対して±２°である、請求項１ないし７のいずれか１項に記載のタイヤ。

【請求項9】

前記主溝は、前記第１陸部の前記第２縦エッジ側に隣接する第２主溝を含み、
前記第２主溝の溝横断面において、前記第２主溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度は、前記第１横溝の溝横断面における前記第１横溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度に対して±２°である、請求項１ないし７のいずれか１項に記載のタイヤ。

【請求項10】

前記主溝は、前記第１陸部の前記第２縦エッジ側に隣接する第２主溝を含み、
前記第２主溝は、溝底がタイヤ半径方向外側に突出した複数の突起部を含んでいる、請求項１ないし９のいずれか１項に記載のタイヤ。

【請求項11】

前記突起部は、前記第２横溝をタイヤ軸方向に平行に前記第２主溝側に延長した領域と重複しない、請求項１０に記載のタイヤ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、タイヤに関する。

【背景技術】

【0002】

下記特許文献１には、クラウン陸部にクラウン縦サイプ及びクラウンラグ溝が設けられたタイヤが提案されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０１８－１０８７７６号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１のタイヤのクラウン陸部のように、陸部内で途切れる横溝及びタイヤ周方向に延びる縦サイプが設けられた陸部は、タイヤ周方向の剛性が比較的高い。このため、前記陸部は、接地・非接地でのタイヤ周方向の変形量の差が小さい傾向がある。このような陸部は、横溝に小石が挟まれて保持されるいわゆる「石噛み」が生じ易く、改善が求められていた。

【0005】

一方、石噛みを防ぐために、横溝の溝底面に石噛み防止用の突起を設けることが提案されているが、このような手法では、ウェット性能が損なわれる傾向があった。

【0006】

本発明は、以上のような問題に鑑み案出されたもので、ウェット性能を維持しつつ優れた耐石噛み性能を発揮し得るタイヤを提供することを主たる目的としている。

【課題を解決するための手段】

【0007】

本発明は、トレッド部を有するタイヤであって、前記トレッド部は、タイヤ周方向に連続して延びる主溝で区分された第１陸部を含み、前記第１陸部は、タイヤ周方向に延びる第１縦エッジ及び第２縦エッジと、前記第１縦エッジと前記第２縦エッジとの間の踏面とを含み、前記第１陸部には、タイヤ周方向に交互に設けられた第１横溝及び第２横溝と、前記第１横溝と前記第２横溝との間を連通する複数の縦サイプとが設けられ、前記第１横溝は、前記第１縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れ、前記第２横溝は、前記第２縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れ、前記第１横溝及び前記第２横溝のそれぞれの溝横断面において、少なくとも一方の溝壁は、溝縁に立てたトレッド法線に対して３～８°の角度で傾斜している。

【0008】

本発明のタイヤにおいて、前記第１陸部は、前記第１縦エッジを含みかつ２つの前記第１横溝の間に区分された第１ブロックを含み、前記第１ブロックは、六角形状の踏面を有しているのが望ましい。

【0009】

本発明のタイヤにおいて、前記第１縦エッジは、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜した第１傾斜エッジ及び第２傾斜エッジを含み、前記縦サイプは、前記第２横溝のタイヤ周方向の一方側に連通しかつ前記第１傾斜エッジとは逆向きに傾斜する第１縦サイプと、前記第２横溝のタイヤ周方向の他方側に連通しかつ前記第２傾斜エッジとは逆向きに傾斜する第２縦サイプとを含み、前記第１傾斜エッジと前記第２傾斜エッジとの間の第１角度は、前記第１縦サイプと前記第２縦サイプとの間の第２角度よりも大きいのが望ましい。

【0010】

本発明のタイヤにおいて、前記第１角度は、１２０～１７０°であるのが望ましい。

【0011】

本発明のタイヤにおいて、前記第２角度は、９０～１５０°であるのが望ましい。

【0012】

本発明のタイヤにおいて、前記第１陸部は、前記第１縦エッジを含みかつ２つの前記第１横溝の間に区分された第１ブロックを複数含み、前記第１ブロックのタイヤ軸方向の長さは、前記第１ブロックのタイヤ周方向の長さの３０％～７０％であるのが望ましい。

【0013】

本発明のタイヤにおいて、前記第１陸部は、前記第１縦エッジを含みかつ２つの前記第１横溝の間に区分された第１ブロックを複数含み、前記第１ブロックには、タイヤ軸方向に延びかつ両端が前記第１ブロックの踏面内で途切れる横サイプが設けられているのが望ましい。

【0014】

本発明のタイヤにおいて、前記縦サイプは、その深さ方向に波状に延びるサイプ壁を有しているのが望ましい。

【0015】

本発明のタイヤにおいて、前記主溝は、前記第１陸部の前記第１縦エッジ側に隣接する第１主溝を含み、前記第１主溝の溝横断面において、前記第１主溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度は、前記第１横溝の溝横断面における前記第１横溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度に対して±２°であるのが望ましい。

【0016】

本発明のタイヤにおいて、前記主溝は、前記第１陸部の前記第２縦エッジ側に隣接する第２主溝を含み、前記第２主溝の溝横断面において、前記第２主溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度は、前記第１横溝の溝横断面における前記第１横溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度に対して±２°であるのが望ましい。

【0017】

本発明のタイヤにおいて、前記主溝は、前記第１陸部の前記第２縦エッジ側に隣接する第２主溝を含み、前記第２主溝は、溝底がタイヤ半径方向外側に突出した複数の突起部を含んでいるのが望ましい。

【0018】

本発明のタイヤにおいて、前記突起部は、前記第２横溝をタイヤ軸方向に平行に前記第２主溝側に延長した領域と重複しないのが望ましい。

【発明の効果】

【0019】

本発明のタイヤにおいて、トレッド部の第１陸部は、タイヤ周方向に延びる第１縦エッジ及び第２縦エッジと、前記第１縦エッジと前記第２縦エッジとの間の踏面とを含む。前記第１陸部には、タイヤ周方向に交互に設けられた第１横溝及び第２横溝と、前記第１横溝と前記第２横溝との間を連通する複数の縦サイプとが設けられている。前記第１横溝は、前記第１縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れ、前記第２横溝は、前記第２縦エッジから延びかつ前記第１陸部内で途切れている。また、前記第１横溝及び前記第２横溝のそれぞれの溝横断面において、少なくとも一方の溝壁は、溝縁に立てたトレッド法線に対して３～８°の角度で傾斜している。

【0020】

第１横溝及び第２横溝の前記溝壁は、トレッド法線に対する角度の下限が３°とされているため、トレッド法線と平行に延びる溝壁を有する横溝と比較して、溝内に挟まれた石を排出し易く、優れた耐石噛み性能を発揮できる。

【0021】

また、本発明の第１横溝及び第２横溝の前記溝壁は、トレッド法線に対する角度の上限を８°とされているため、接地時における路面と前記溝壁との間のエッジ角度を直角に近い角度にすることができる。このため、前記第１横溝及び前記第２横溝は、ウェット路面において溝縁による大きな引っ掻き力を提供し、ウェット性能を維持できる。

【0022】

以上のように、本発明のタイヤは、ウェット性能を維持しつつ優れた耐石噛み性能を発揮できる。

【図面の簡単な説明】

【0023】

【図1】本発明の一実施形態のタイヤのトレッド部の展開図である。

【図2】図１の第１陸部の拡大図である。

【図3】図２のＡ－Ａ線断面図である。

【図4】他の実施形態の縦サイプのサイプ壁を示す拡大斜視図である。

【図5】図２の第１ブロックの拡大図である。

【図6】図２のＢ－Ｂ線断面図である。

【図7】図１の第２陸部の拡大図である。

【発明を実施するための形態】

【0024】

以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図１は、本発明の一実施形態を示すタイヤ１のトレッド部２の展開図である。図１に示されるように、本発明のタイヤ１は、例えば、ライトトラック用の空気入りタイヤとして好適に使用される。但し、本発明は、このような使用態様に限定されるものではない。

【0025】

トレッド部２には、タイヤ周方向に連続して延びる第１主溝３及び第２主溝４が設けられている。本実施形態のトレッド部２には、２本の第１主溝３と１本の第２主溝４が設けられている。第１主溝３は、例えば、タイヤ赤道Ｃとトレッド端Ｔｅとの間に設けられている。第２主溝４は、２本の第１主溝３の間に設けられており、本実施形態ではタイヤ赤道Ｃ上に設けられている。なお、各部の構成が理解され易いように、図１において、溝が薄く着色されている。

【0026】

「トレッド端Ｔｅ」は、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷である正規状態のタイヤ１に、正規荷重を負荷してキャンバー角０度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置である。特に断りがない場合、タイヤの各部の寸法等は、正規状態で測定された値である。

【0027】

「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばＪＡＴＭＡであれば "標準リム" 、ＴＲＡであれば "Design Rim" 、ＥＴＲＴＯであれば"Measuring Rim" である。

【0028】

「正規内圧」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、ＪＡＴＭＡであれば "最高空気圧" 、ＴＲＡであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ＥＴＲＴＯであれば "INFLATION PRESSURE" である。

【0029】

「正規荷重」は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、ＪＡＴＭＡであれば "最大負荷能力" 、ＴＲＡであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ＥＴＲＴＯであれば "LOAD CAPACITY" である。

【0030】

第１主溝３及び第２主溝４は、例えば、溝中心線が振幅してタイヤ周方向に延びている。第１主溝３及び第２主溝４の溝中心線は、例えば、タイヤ周方向に対して５°以下の角度で傾斜している。

【0031】

タイヤ赤道Ｃから第１主溝３の溝中心線までのタイヤ軸方向の距離Ｌ１は、例えば、トレッド幅ＴＷの２０％～３５％であるのが望ましい。トレッド幅ＴＷは、前記正規状態におけるトレッド端Ｔｅ、Ｔｅ間のタイヤ軸方向の距離である。

【0032】

各主溝の溝幅は、例えば、トレッド幅ＴＷの４～１０％であるのが望ましい。本実施形態では、第２主溝４の溝幅が第１主溝３の溝幅よりも大きい。各主溝の深さは、例えば、１０～２５mmである。これによりウェット性能と耐摩耗性能とがバランス良く向上する。

【0033】

トレッド部２は、上述の主溝に区分された陸部を有している。本実施形態のトレッド部２は、例えば、２つの第１陸部５及び２つの第２陸部６で構成されている。第１陸部５は、例えば、第１主溝３と第２主溝４との間に区分されている。第２陸部６は、例えば、第１主溝３とトレッド端Ｔｅとの間に区分されている。

【0034】

図２には、第１陸部５の拡大図が示されている。図２に示されるように、第１陸部５は、タイヤ周方向に延びる第１縦エッジ１１及び第２縦エッジ１２と、第１縦エッジ１１と第２縦エッジ１２との間の踏面とを含んでいる。第１縦エッジ１１は、第１主溝３の溝縁を構成するエッジである。第２縦エッジ１２は、第２主溝４の溝縁を構成するエッジである。第１縦エッジ１１及び第２縦エッジ１２は、それぞれ、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜した第１傾斜エッジ１３及び第２傾斜エッジ１４を含んでいる。

【0035】

第１陸部５には、タイヤ周方向に交互に設けられた第１横溝１６及び第２横溝１７と、第１横溝１６と第２横溝１７との間を連通する複数の縦サイプ１５とが設けられている。第１横溝１６は、第１縦エッジ１１から延びかつ第１陸部５内で途切れている。第２横溝１７は、第２縦エッジ１２から延びかつ第１陸部５内で途切れている。なお、本明細書において、「サイプ」とは、幅が１．５mm以下の切れ込みである。

【0036】

図３には、図２のＡ－Ａ線断面図が示されている。図３に示されるように、第１横溝１６及び第２横溝１７のそれぞれの溝横断面において、少なくとも一方の溝壁１９は、溝縁に立てたトレッド法線に対して３～８°の角度θ１で傾斜している。前記角度θ１は、４～６°がより望ましい。本実施形態では、両側の溝壁が前記角度で傾斜している。

【0037】

第１横溝１６及び第２横溝１７の溝壁１９は、トレッド法線に対する角度の下限が３°とされているため、トレッド法線と平行に延びる溝壁を有する横溝と比較して、溝内に挟まれた石を排出し易く、優れた耐石噛み性能を発揮できる。

【0038】

また、本発明の第１横溝１６及び第２横溝１７の溝壁１９は、トレッド法線に対する角度の上限を８°とされているため、接地時における路面と溝壁１９との間のエッジ角度を直角に近い角度にすることができる。このため、第１横溝１６及び第２横溝１７は、ウェット路面において溝縁による大きな引っ掻き力を提供し、ウェット性能を維持できる。

【0039】

望ましい態様として、本実施形態の第１横溝１６及び第２横溝１７は、溝底面で開口する溝底サイプ１８を含んでいる。このような溝底サイプ１８は、耐石噛み性能をさらに高めることができる。

【0040】

図２に示されるように、第１横溝１６又は第２横溝１７のタイヤ軸方向の長さＬ２は、例えば、第１陸部５のタイヤ軸方向の幅Ｗ１の４０％～６０％である。第１横溝１６又は第２横溝１７の溝幅Ｗ２は、例えば、第１主溝３の溝幅よりも大きいのが望ましい。このような第１横溝１６及び第２横溝１７は、ウェット性能と耐摩耗性能とをバランス良く高めるのに役立つ。

【0041】

第１横溝１６及び第２横溝１７は、タイヤ軸方向に対して同じ向きに傾斜している。第１横溝１６又は第２横溝１７のタイヤ軸方向に対する角度θ２は、例えば、５～１５°である。このような第１横溝１６及び第２横溝１７は、タイヤ周方向に大きな摩擦力を提供する。

【0042】

縦サイプ１５は、例えば、タイヤ周方向に対して互いに逆向きに傾斜した第１縦サイプ２１及び第２縦サイプ２２を含んでいる。第１縦サイプ２１は、第２横溝１７のタイヤ周方向の一方側に連通している。また、第１縦サイプ２１は、第１縦エッジ１１の第１傾斜エッジ１３とは逆向きに傾斜している。第２縦サイプ２２は、第２横溝１７のタイヤ周方向の他方側に連通している。また、第２縦サイプ２２は、第１縦エッジ１１の第２傾斜エッジ１４とは逆向きに傾斜している。

【0043】

第１縦サイプ２１のタイヤ周方向に対する角度θ３は、第２縦サイプ２２のタイヤ周方向に対する角度θ４よりも大きいのが望ましい。第１縦サイプ２１のタイヤ周方向に対する角度θ３は、例えば、２０～３０°である。第２縦サイプ２２のタイヤ周方向に対する角度θ４は、例えば、１０～２０°である。これにより、縦サイプ１５で区分されるブロックの倒れ込みを抑制することができ、耐摩耗性能が向上する。

【0044】

第１傾斜エッジ１３と第２傾斜エッジ１４との間の第１角度θａは、第１縦サイプ２１と第２縦サイプ２２との間の第２角度θｂよりも大きいのが望ましい。具体的には、第１角度θａは、１２０～１７０°である。第２角度θｂは、９０～１５０°である。これにより、縦サイプ１５で区分されるブロックの倒れ込みが抑制され、かつ、第１縦エッジ１１の偏摩耗が抑制される。

【0045】

縦サイプ１５は、その深さ方向に波状に延びているのが望ましい。図４には、縦サイプ１５のさらに望ましい実施形態のサイプ壁１５ｗを示す拡大斜視図が示されている。図４に示されるように、縦サイプ１５のサイプ壁１５ｗは、その深さ方向及び長さ方向に波状に延びているのが望ましい。換言すれば、縦サイプ１５は、所謂３Ｄサイプとして構成されている。このような縦サイプ１５は、互いに向き合うサイプ壁１５ｗが強固に噛み合うことができ、耐摩耗性能をさらに高めることができる。

【0046】

図２に示されるように、第１陸部５は、複数の第１ブロック２６及び第２ブロック２７を含んでいる。第１ブロック２６は、第１縦エッジ１１を含みかつ２つの第１横溝１６の間に区分されている。第２ブロック２７は、第２縦エッジ１２を含みかつ２つの第２横溝１７の間に区分されている。第２ブロック２７は、第１ブロック２６と同様の構成を有している。このため、以下で説明される第１ブロック２６の構成は、第２ブロック２７に適用することができる。

【0047】

図５には、第１ブロック２６の拡大図が示さている。図５に示されるように、第１ブロック２６は、例えば、六角形状の踏面を有している。なお、六角形状の踏面とは、完全な六角形の踏面だけでなく、六角を形成するエッジが湾曲しているものや、角部分が丸く曲がっているものも含む。

【0048】

第１ブロック２６のタイヤ軸方向の長さＬ３は、第１ブロック２６のタイヤ周方向の長さＬ４の３０％～７０％であるのが望ましい。このような第１ブロック２６は、タイヤ周方向の剛性が高く、ウェット路面でのトラクションが向上する。

【0049】

第１ブロック２６には、タイヤ軸方向に延びかつ両端が第１ブロック２６の踏面内で途切れる横サイプ２５が設けられている。本実施形態の横サイプ２５は、例えば、タイヤ軸方向に平行に延びている。横サイプ２５の長さＬ５は、例えば、第１ブロック２６のタイヤ軸方向の長さＬ３の４０％～６０％である。また、横サイプ２５の深さは、縦サイプ１５の深さよりも小さいのが望ましい。このような横サイプ２５は、耐摩耗性能を維持しつつ、ウェット性能を向上させる。

【0050】

図２に示されるように、第１ブロック２６に設けられた横サイプ２５は、第２横溝１７をその長さ方向に仮想延長した領域内に配されているのが望ましい。より望ましい態様では、第１ブロック２６の横サイプ２５は、第２横溝１７に設けられた溝底サイプ１８をその長さ方向に仮想延長した領域と重複している。このような横サイプ２５の配置は、第２横溝１７を開き易くし、第２横溝１７での石噛みを防止することができる。

【0051】

図６には、図２のＢ－Ｂ線断面図が示されている。図６に示されるように、第１主溝３の溝横断面において、第１主溝３の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度θ５は、第１横溝１６の溝横断面における第１横溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度に対して±２°であるのが望ましい。同様に、第２主溝４の溝横断面において、第２主溝４の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度θ６は、前記第２横溝の溝横断面における前記第２横溝の溝壁の溝縁に立てたトレッド法線に対する角度に対して±２°である。これにより、第１陸部５のタイヤ周方向の剛性及びタイヤ軸方向の剛性が同程度となり、耐摩耗性能が向上する。

【0052】

図２に示されるように、第２主溝４は、例えば、溝底がタイヤ半径方向外側に突出した複数の突起部２８を含んでいるのが望ましい。このような突起部２８は、耐石噛み性能を向上させる。一方、第１主溝３には、上述の突起部２８が設けられていない。これにより、第１主溝３の排水性が維持される。

【0053】

突起部２８は、タイヤ周方向の長さＬ６がタイヤ半径方向の高さｈ１（図６に示す）の１２０％～３００％であるのが望ましい。

【0054】

突起部２８は、第２横溝１７をタイヤ軸方向に平行に第２主溝４側に延長した領域と重複しないのが望ましい。このような突起部２８は、第２横溝１７の排水性を損ねず、ウェット性能を維持するのに役立つ。

【0055】

図７には、第２陸部６の拡大図が示されている。図７に示されるように、第２陸部６には、第２陸部６を完全に横断する複数の横断横溝３０が設けられている。このような横断横溝３０は、ウェット性能を高めるのに役立つ。

【0056】

横断横溝３０の第１主溝３側の端部は、例えば、第１横溝１６の第１主溝３側の端部を第２陸部６側に延長した領域と重複しないのが望ましい。これにより、耐摩耗性能が維持される。

【0057】

横断横溝３０は、タイヤ軸方向に対して傾斜している。横断横溝３０は、タイヤ軸方向に対して第１横溝１６とは逆向きに傾斜しているのが望ましい。横断横溝３０のタイヤ軸方向に対する角度θ７は、例えば、２０～４０°である。このような横断横溝３０は、そのエッジによって多方向に摩擦力を提供できる。

【0058】

横断横溝は、例えば、第２主溝４からトレッド端Ｔｅ側に向かって溝幅が漸増しているのが望ましい。このような横断横溝３０は、ウェット走行時、内部の水を効果的にトレッド端Ｔｅ側に案内できる。

【0059】

第２陸部６には、例えば、２本の横断横溝３０の間に第１サイプ３１及び第２サイプ３２が設けられている。第１サイプ３１は、例えば、横断横溝３０と同じ向きに傾斜し、第２陸部６を完全に横断している。第２サイプ３２は、例えば、横断横溝３０と同じ向きに傾斜している第１部分３３と、横断横溝３０とは逆向きに傾斜している第２部分３４とを含んでいる。第１部分３３は、第２主溝４に連通している。第２部分３４は、横断横溝３０に連通している。このような第１サイプ３１及び第２サイプ３２は、ウェット性能と耐摩耗性能とをバランス良く高めるのに役立つ。

【0060】

以上、本発明の一実施形態のタイヤが詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。

【実施例】

【0061】

図１の基本パターンを有するサイズ２０５／８５Ｒ１６のライトトラック用の空気入りタイヤが、表１の仕様に基づき試作された。比較例１として、第１横溝及び第２横溝の溝壁のトレッド法線に対する角度が０°であるタイヤが試作された。比較例として、前記角度が１０°であるタイヤが試作された。比較例１及び２のタイヤは、上述の構成を除き、図１で示される基本パターンと同一である。各テストタイヤのウェット性能、耐摩耗性能及び耐石噛み性能がテストされた。各テストタイヤの共通仕様やテスト方法は、以下の通りである。
装着リム：１６×５．５Ｊ
タイヤ内圧：６００kPa
テスト車両：１．５ｔトラック
タイヤ装着位置：全輪

【0062】

＜耐石噛み性能＞
上記テスト車両で砂利道を一定距離走行し、溝内に入り込んだ石が全て採取され、その総重量が測定された。結果は、比較例１の前記石の総重量を１００とする指数であり、数値が小さい程、耐石噛み性能が優れていることを示す。

【0063】

＜ウェット性能＞
上記テスト車両でウェット状態の一般道を走行したときのウェット性能が、運転者の官能により評価された。結果は、比較例１を１００とする評点であり、数値が大きい程、ウェット性能が優れていることを示す。

【0064】

＜耐摩耗性能＞
上記テスト車両で一般道を一定距離走行後、第１主溝の残り溝深さが測定された。結果は、比較例１の前記残り溝深さを１００とする指数であり、数値が大きい程、耐摩耗性能が優れていることを示す。
テストの結果が表１及び表２に示される。

【0065】

【表1】

【0066】

【表2】

@0001

【0067】

テストの結果、実施例のタイヤは、ウェット性能を維持しつつ優れた耐石噛み性能を発揮していることが確認できた。また、実施例のタイヤは、耐摩耗性能が向上していることが確認できた。

【符号の説明】

【0068】

２ トレッド部
５ 第１陸部
１１ 第１縦エッジ
１２ 第２縦エッジ
１５ 縦サイプ
１６ 第１横溝
１７ 第２横溝

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】