IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

特許7413779セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置
<>
  • 特許-セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置 図1
  • 特許-セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置 図2
  • 特許-セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置 図3
  • 特許-セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置 図4
  • 特許-セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置 図5
  • 特許-セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置 図6
  • 特許-セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】セパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0202 20160101AFI20240109BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240109BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240109BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240109BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240109BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20240109BHJP
   B22F 3/16 20060101ALI20240109BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20240109BHJP
   H01M 8/026 20160101ALI20240109BHJP
   H01M 8/0247 20160101ALI20240109BHJP
   H01M 8/0258 20160101ALI20240109BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20240109BHJP
【FI】
H01M8/0202
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y80/00
B22F3/105
B22F3/16
H01M8/0206
H01M8/026
H01M8/0247
H01M8/0258
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019238851
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108251
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】上口 聡
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-331688(JP,A)
【文献】特開2018-123413(JP,A)
【文献】特開2010-129299(JP,A)
【文献】特開2018-115364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/0202
B33Y 30/00
B33Y 10/00
B33Y 50/02
B33Y 80/00
B22F 3/105
B22F 3/16
H01M 8/0206
H01M 8/026
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池に用いられる平板状のセパレータを、当該セパレータの平板面に沿った方向を造形方向として三次元金属積層造形により造形する方法であって、
前記平板面に、ガスを流通させる流路溝をそれぞれ平面形状が同一である複数の突起部の組み合わせで形成する造形工程を有し、
前記起部前記平板面に沿いつつ前記造形方向に対して直交する方向では、隣り合う他の前記突起部の少なくともつの一部と並ぶ、セパレータの造形方法。
【請求項2】
前記複数の突起部は、記造形方向では、それぞれ、一定の間隔で整列する、請求項1に記載のセパレータの造形方法。
【請求項3】
前記突起部の平面形状は、前記平板面に沿いつつ前記造形方向に対して直交する方向に延伸する第1辺と、前記造形方向に延伸する第2辺とを有する矩形であり、
前記第1辺の長さは、前記第2辺の長さよりも長い、請求項1又は2に記載のセパレータの造形方法。
【請求項4】
前記突起部の平面形状は、円形である、請求項1又は2に記載のセパレータの造形方法。
【請求項5】
燃料電池に用いられる平板状かつ金属製のセパレータであって、
平板面にそれぞれ平面形状が同一である複数の突起部の組み合わせで形成され、ガスを流通させる流路溝を備え、
前記平板面に沿う1つの方向を基準方向とすると、
前記突起部において前記基準方向に向かう端部と前記流路溝の底部との連続部分に肉盛部が存在し、
前記起部前記平板面に沿いつつ前記基準方向に対して直交する方向では、隣り合う他の前記突起部の少なくともつの一部と並ぶ、セパレータ。
【請求項6】
燃料電池に用いられる平板状かつ金属製のセパレータを造形する三次元積層造形装置に備えられた制御部に、
前記セパレータの平板面に沿った方向を造形方向として規定する処理と、
前記平板面に、ガスを流通させる流路溝をそれぞれ平面形状が同一である複数の突起部の組み合わせで形成する造形処理と、
を実行させ、
前記造形処理では、前記起部前記平板面に沿いつつ前記造形方向に対して直交する方向で、隣り合う他の前記突起部の少なくともつの一部と並ぶように、前記流路溝を形成させる、造形プログラム。
【請求項7】
燃料電池に用いられる平板状のセパレータを造形する三次元積層造形装置であって、
請求項6に記載の造形プログラムを格納する記録媒体と、
前記記録媒体に格納されている前記造形プログラムを実行する制御部と、
を備える、三次元積層造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば燃料電池に用いられるセパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、固体酸化物形燃料電池(SOFC)等の燃料電池は、ガスを流通させる流路を有するセパレータを備える。特許文献1は、周知の燃料電池の構造を例示するとともに説明されたセパレータを開示している。
【0003】
一般に、SOFCに採用されるセパレータは、複数の金属薄板を互いに重ね合わせて形成されることが多いが、金属製の一体型、いわゆるシームレスに形成されることもある。このようなシームレス金属セパレータの製造には、例えば三次元金属積層造形技術を採用可能である。特許文献2は、高エネルギービームの照射により凝固される金属粉末を用いて金属部材を造形することが可能な三次元積層造形方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-232997号公報
【文献】特表2009-544501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
平板状の金属部材を三次元金属積層造形技術により造形する場合、一般に、造形方向は金属部材の平面方向と平行となるように設定される。一方、従来の平板状のシームレス金属セパレータには、例えば、厚肉部に相当する外周部と、薄肉部に相当する流路領域とが形成されている。このようなセパレータを三次元金属積層造形技術により造形しようとすると、外周部に意図しない凹凸が発生する場合がある。
【0006】
そこで、本開示は、三次元金属積層造形により造形されるセパレータでの意図しない凹凸の発生を抑えるのに有利なセパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、燃料電池に用いられる平板状のセパレータを、当該セパレータの平板面に沿った方向を造形方向として三次元金属積層造形により造形する方法であって、平板面に、ガスを流通させる流路溝をそれぞれ平面形状が同一である複数の突起部の組み合わせで形成する造形工程を有し、起部平板面に沿いつつ造形方向に対して直交する方向では、隣り合う他の突起部の少なくともつの一部と並ぶ。
【0008】
上記のセパレータの造形方法では、複数の突起部は、造形方向では、それぞれ、一定の間隔で整列し、平板面に沿いつつ造形方向に対して直交する方向では、それぞれ、隣り合うもの同士の一部と並ぶものとしてもよい。突起部の平面形状は、平板面に沿いつつ造形方向に対して直交する方向に延伸する第1辺と、造形方向に延伸する第2辺とを有する矩形であり、第1辺の長さは、第2辺の長さよりも長くてもよい。突起部の平面形状は、円形であってもよい。
【0009】
また、本開示の一態様は、燃料電池に用いられる平板状かつ金属製のセパレータであって、平板面にそれぞれ平面形状が同一である複数の突起部の組み合わせで形成され、ガスを流通させる流路溝を備え、平板面に沿う1つの方向を基準方向とすると、突起部において準方向に向かう端部と流路溝の底部との連続部分に肉盛部が存在し、起部は、平板面に沿いつつ基準方向に対して直交する方向では、隣り合う他の突起部の少なくともつの一部と並ぶ。
【0010】
また、本開示の一態様に係る造形プログラムは、燃料電池に用いられる平板状かつ金属製のセパレータを造形する三次元積層造形装置に備えられた制御部に、セパレータの平板面に沿った方向を造形方向として規定する処理と、平板面に、ガスを流通させる流路溝をそれぞれ平面形状が同一である複数の突起部の組み合わせで形成する造形処理と、を実行させ、造形処理では、起部平板面に沿いつつ造形方向に対して直交する方向で、隣り合う他の突起部の少なくともつの一部と並ぶように、流路溝を形成させる。
【0011】
さらに、本開示の一態様は、燃料電池に用いられる平板状のセパレータを造形する三次元積層造形装置であって、上記の造形プログラムを格納する記録媒体と、記録媒体に格納されている造形プログラムを実行する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、三次元金属積層造形により造形されるセパレータでの意図しない凹凸の発生を抑えるのに有利なセパレータの造形方法、セパレータ、造形プログラム及び三次元積層造形装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の一実施形態における造形対象のセパレータを示す図である。
図2図1のII部の拡大図である。
図3図2のIII-IIIに対応する断面図である。
図4】三次元金属積層造形装置の構成を示す図である。
図5】造形プログラムの流れを示すフローチャートである。
図6】造形処理の流れを示す図である。
図7】本開示の他の実施形態における造形対象のセパレータの一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。ここで、実施形態に示す寸法、材料、その他、具体的な数値等は例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。また、実質的に同一の機能及び構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、本開示に直接関係のない要素については、図示を省略する。
【0015】
(セパレータ)
図1は、本実施形態に係る造形方法において造形対象となるセパレータ100を示す平面図である。セパレータ100は、全体として平板状である。以下の各図では、セパレータ100の形状又は姿勢に関する方向を示すものとして、Xs軸、Ys軸、Zs軸の各軸を規定する。セパレータ100の平板面は、Xs-Ys平面に対して平行な面である。Xs-Ys平面に対して垂直となるZs方向は、セパレータ100の厚み方向に相当する。
【0016】
セパレータ100は、各種の燃料電池の中でも、例えば、複数の平板状の燃料電池本体を互いに重ね合わせた積層形のSOFCに採用され得る。なお、セパレータは、インターコネクタと称されることもある。また、燃料電池本体は、単セルと称されることもある。燃料電池本体は、基本構成として、電解質膜としての固体酸化物膜と、互いに固体酸化物膜を挟み込む空気極及び燃料極と、例えばガス拡散層を介して空気極又は燃料極にそれぞれ張り合わされる2つのセパレータとを備える。燃料極に供給されるガスは、例えば水素である。セパレータ100は、このような燃料電池本体に含まれるセパレータとして用いられ得る。
【0017】
セパレータ100は、厚み方向で互いに対向する2つの平板面を有する。一方の第1平板面102は、不図示の一方の燃料電池本体に含まれる燃料極に対向する燃料極側の平板面である。なお、不図示であるが、他方の第2平板面は、不図示の他方の燃料電池本体に含まれる空気極に対向する空気極側の平板面である。
【0018】
第1平板面102の中央領域には、燃料極に供給される燃料ガスを流通させる第1流路溝110aを有する第1流路領域110が形成されている。本実施形態では、第1流路領域110の平面形状は、一例として、正方形であるものとする。第1流路領域110の外周領域には、第1外周溝111が形成されている。
【0019】
図2は、図1のII部に対応した、第1流路領域110上の一部を拡大した図である。図3は、図2のIII-IIIに対応した、セパレータ100の一部断面図である。
【0020】
第1流路領域110上には、Zs方向に突出する複数の第1突起部110bが形成されている。第1流路溝110aは、これらの第1突起部110bの配列により規定された、互いに隣り合う第1突起部110b同士の間の隙間に相当する。つまり、第1流路溝110aは、複数の第1突起部110bの組み合わせで形成される。なお、本実施形態では、複数の第1突起部110bのそれぞれの形状は、すべて同一であるものとする。
【0021】
第1突起部110bの平面形状は、Xs方向に沿って延伸する第1辺110cと、Ys方向に沿って延伸する第2辺110dとを有する矩形である。第1辺110cの長さである第1長さL1は、第2辺110dの長さである第2長さL2よりも長い。
【0022】
ここで、図3を参照すると、第1突起部110bのYs方向の形状は、厳密には一様ではない。具体的には、特にYs方向のプラス側の端部は、第1流路溝110aの底部との連続部分が第1肉盛部110eとなっている。なお、図3では、第1突起部110bの第2長さL2のうち、Xs-Ys平面と平行な平面部の長さをL21と表記し、第1肉盛部110eの長さをL22と表記している。なお、第1肉盛部110eは、意図して形成しているものではない。セパレータ100がSOFCの燃料電池本体に採用される場合、長さL22の寸法は、数mm程度となる。このようなセパレータ100を三次元金属積層造形により造形する場合には、セパレータ100の平板面に沿った方向を造形方向として設定し、かつ、Ys方向を造形方向と一致させると、三次元金属積層造形の特性として生じ得るものである。つまり、造形されたセパレータ100を見たときに、第1突起部110bの端部と第1流路溝110aの底部との連続部分に第1肉盛部110eが存在していれば、このセパレータ100が三次元金属積層造形により造形されたものであることが推測可能である。さらに、肉盛り部分が第1突起部110bのどの位置に存在するかにより、三次元金属積層造形により造形されたときに、セパレータ100の形状に対して造形方向がどの方向に設定されたかを推定することができる。
【0023】
造形されたセパレータ100から、三次元金属積層造形時の造形方向がどの方向に設定されていたのかを把握する手法は、上記のような第1突起部11bにおける第1肉盛部110eの存在位置から推定する以外にもある。例えば、造形されたセパレータ100の金属組織を、走査型電子顕微鏡(SEM)や後方散乱電子回折(EBSD:Electron BackScatter Diffraction)を用いて観察・分析してもよい。この観察・分析結果に基づいて、セパレータ100が三次元金属積層造形により造形されたものであるか、又は、そのときの造形方向を特定してもよい。例えば、三次元金属積層で造形された金属組織には、結晶に配向性が生じる場合がある。結晶配向によって、造形方向を特定してもよい。また、三次元金属積層で造形された金属組織には、溶融凝固界面(Molten Pool Boundary)が残る場合がある。溶融凝固界面によって、造形方向を特定してもよい。
【0024】
また、セパレータ100の金属組織をSEM観察することにより、第1突起部110bの端部と第1流路溝110aの底部との連続部分に存在する曲面部が、三次元金属積層造形により生じたものなのかを推定することもできる。例えば、セパレータが、三次元金属積層造形ではなく、鋳造や切削などにより製作されたものである場合には、そのセパレータの金属組織は、厳密には、本実施形態に係るセパレータ100の金属組織とは異なると考えられる。
【0025】
まず、Xs方向について、複数の第1突起部110bは、一定の間隔W1で整列している。本実施形態では、Xs方向は、後述するとおり、セパレータ100を三次元金属積層造形により造形するときの造形方向に相当する。なお、Xs方向についての第1突起部110bの整列間隔は、厳密に間隔W1で一定とするのではなく、隣り合う列ごとに異なっていてもよい。
【0026】
一方、Ys方向について、複数の第1突起部110bは、一定の間隔W2で整列している。本実施形態では、Xs方向が造形方向に相当するのに対して、Ys方向は、造形方向に対して直交する方向に相当する。なお、Ys方向についての第1突起部110bの整列間隔に関しても、厳密に間隔W2で一定とするのではなく、隣り合う第1突起部110bごとに異なっていてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、Xs方向に沿って延伸する方向では、複数の第1突起部110bが一直線上に整列していない。換言すれば、複数の第1突起部110bのうちの1つは、Xs方向では、少なくとも他の1つの一部と並ぶ。例えば、図2に示す例では、複数の第1突起部110bは、Xs方向では、それぞれ、隣り合うもの同士の一部と並ぶ。
【0028】
ここで、図2を参照し、ある1つの第1突起部110bについて着目する。第1突起部110bは、Ys方向に複数の第1突起部110bが並ぶ第1列に含まれる。同じくYs方向に複数の第1突起部110bが並び、第1列に対してXs方向のプラス側で隣り合う第2列には、第1突起部110bの近傍に、第1突起部110b及び第1突起部110bとの2つの第1突起部110bが存在する。なお、第1突起部110bと第1突起部110bとは、Ys方向で互いに隣り合う。
【0029】
このとき、第1列にある第1突起部110bは、第2列にある第1突起部110b又は第1突起部110bのいずれとも、Xs方向に延伸する一直線上で整列しない。つまり、第1列と第2列とでは、Ys方向で、それぞれに含まれる第1突起部110bが同列とならない。そして、具体的には、第1突起部110bは、第1突起部110bの一部と、及び、第1突起部110bの一部と、それぞれ並ぶことになる。図2で、第1突起部110b及び第1突起部110bにおいて、それぞれ、Xs方向で並ぶ領域をハッチングで示している。
【0030】
なお、複数の第1突起部110bの配列は、複数の第1突起部110bのうちの1つがXs方向で少なくとも他の1つの一部と並ぶという条件を満たせば、図2に示す以外にも、種々考えられる。例えば、図2では、第1列における第1突起部110b同士の間隔と、第1列とXs方向で隣り合う第2列における第1突起部110b同士の間隔とは、間隔W2で同一としているが、第1列と第2列とで若干異なっていてもよい。また、図2では、第2列に対して第1列とはXs方向で反対側にある第3列の配列は、第1列の配列と同一であるが、互いに異なっていてもよい。さらに、図2では、第1列と第2列との配列のずれが、他の列においてもXs方向で交互に続くものとしているが、例えば、第1列と第2列とが同列で、第3列が、第1列及び第2列の配列とずれるものとしてもよい。
【0031】
ここまで、第1平板面102に形成されている第1流路領域110の形状について説明したが、第1平板面102とは厚さ方向で反対側にある第2平板面104にも、第1流路領域110と同様の第2流路領域が形成されていてもよい。図3では、一例として、第2流路領域の形状が、第1流路領域110の形状と同一、すなわち、Zs方向で第1流路領域110が正反転した形状であるものとして、その一部を示している。つまり、第2流路領域上には、それぞれ、Zs方向に沿って突出する複数の第2突起部120bが形成されている。第2流路溝120aは、これらの第2突起部120bの配列により規定された、互いに隣り合う第2突起部120b同士の間の隙間に相当する。また、第2突起部120bに関しても、造形方向に対応したYs方向のプラス側の端部は、第2流路溝120aの底部との連続部分が第2肉盛部120eとなっている。なお、第2流路領域の形状は、空気の流れにより適した、第1流路領域110とは異なる形状であるものとしてもよい。
【0032】
引き続き、図1を参照し、セパレータ100において、第1流路領域110と外周端112とに挟まれる部分が外周部113となる。
【0033】
外周部113は、それぞれ、Zs方向に沿って貫通し、ガスを流通させる4つのガス流通穴を有する。これらのガス流通穴のうち、第1ガス供給穴114及び第1ガス排出穴115を含む一組が、燃料ガスを流通させる。その他の第2ガス供給穴116及び第2ガス排出穴117を含む一組が、空気を流通させる。例えば、第1ガス供給穴114と第2ガス排出穴117とは、第1流路領域110及び第2流路領域の位置よりもXs方向のマイナス側にある外周部113に形成される。一方、第1ガス排出穴115と第2ガス供給穴116とは、第1流路領域110及び第2流路領域の位置よりもXs方向のプラス側にある外周部113に形成される。
【0034】
第1ガス供給穴114と第2ガス排出穴117とは、流通させるガスの種類が異なり、また、後述する第1内部流路130と第4内部流路133との干渉を回避させるために、互いにずれた位置に設けられる。同様に、第1ガス排出穴115と第2ガス供給穴116とは、流通させるガスの種類が異なり、また、後述する第2内部流路131と第3内部流路132との干渉を回避させるために、互いにずれた位置に設けられる。例えば、第1ガス供給穴114と第2ガス排出穴117とは、又は、第2ガス供給穴116と第2ガス排出穴117とは、それぞれYs軸に沿って延伸する直線上に並んで離間していてもよい。
【0035】
また、外周部113は、第1流路領域110と連通する第1内部流路130及び第2内部流路131と、第2流路領域と連通する第3内部流路132及び第4内部流路133とを有する。なお、これらの内部流路は、すべて、外周部113の内部に形成され、図1では破線で示されている。
【0036】
第1内部流路130は、一端が第1ガス供給穴114と連通し、他端が第1流路領域110の一辺に面する第1外周溝111の一部に連通して、第1ガス供給穴114から導入された燃料ガスを第1流路領域110に供給させる。第1内部流路130は、第1ガス供給穴114から第1流路領域110に向かって徐々に広がっていく形状を有する。
【0037】
第2内部流路131は、一端が第1流路領域110の一辺に面する第1外周溝111の一部に連通し、他端が第1ガス排出穴115と連通して、第1流路領域110から導出された燃料ガスを第1ガス排出穴115に排出させる。第2内部流路131は、第1流路領域110から第1ガス供給穴114に向かって徐々に狭まっていく形状を有する。
【0038】
一方、第3内部流路132は、一端が第2ガス供給穴116と連通し、第1流路領域110に対する第1内部流路130と同様に、第2ガス供給穴116から導入された空気を第2流路領域120に供給させる。また、第4内部流路133は、一端が第2ガス排出穴117と連通し、第1流路領域110に対する第2内部流路131と同様に、第2流路領域から導出された空気を第2ガス排出穴117に排出させる。
【0039】
なお、第1内部流路130と第4内部流路133とは、及び、第2内部流路131と第3内部流路132とは、それぞれ、Zs方向視では一部重なるが、互いに接触しない。
【0040】
外周部113における4つの内部流路がそれぞれ上記のように配置される場合、少なくとも、第1流路領域110における燃料ガスの全体的な進行方向はXs方向に沿う。つまり、少なくとも、第1流路領域110に設けられている複数の第1突起部110bにおける長手方向の第1辺110cは、それぞれ、燃料ガスの全体的な進行方向と平行である。
【0041】
また、Xs方向の両側の外周部113には、第1内部流路130及び第4内部流路133、並びに、第2内部流路131及び第3内部流路132が設けられているのに対して、Ys方向の両側の外周部113には、内部流路は設けられていない。そのため、セパレータ100において、内部流路が存在しないYs方向の最長寸法は、内部流路が存在するXs方向の最長寸法よりも短くてもよい。また、セパレータ100の平面形状は、矩形状ではなく、図1に示すように、各内部流路の形成領域を回避しながら、四方の直角部をなくした、楕円に近似した形状であってもよい。このようなセパレータ100の概略形状によれば、不要な部分を極力排除し、セパレータ100の軽量化を実現することができる。
【0042】
さらに、外周部113は、燃料電池本体ごとに、又は、複数の燃料電池を互いに積層させたいわゆるセルスタックごとに、セパレータ100を含む複数の構成要素を積層方向に結合するためのボルトを貫通させる複数のボルト穴135を有する。複数のボルト穴135は、それぞれ、Zs方向に沿って貫通し、外周端112に沿っておおよそ一定の間隔で配置される。
【0043】
(三次元積層造形装置)
本実施形態では、セパレータ100は、三次元金属積層造形により造形される。以下、三次元金属積層造形を「三次元造形」と略記する。
【0044】
図4は、本実施形態に係る造形方法に用いられる三次元造形装置1の構成の一例を示す概略断面図である。以下の各図では、三次元造形装置1の構成や動作に関する方向を示すものとして、X軸、Y軸、Z軸の各軸を規定する。セパレータ100を載置するステージ31の平面は、X-Y平面に対して平行な面である。X-Y平面に対して垂直となるZ方向は、セパレータ100の造形方向に相当する。
【0045】
三次元造形装置1は、金属粉末Pに電子ビームEを照射して金属粉末Pを溶融し凝固させ、凝固した金属粉末Pを積層させていくことで、三次元の物体を造形する、いわゆるパウダーベッド方式を採用した装置である。金属粉末Pの材質は、特に限定されるものではく、燃料電池用のセパレータとして機能し、かつ、三次元造形に支障がないものが選択され得る。金属粉末Pは、多数の粉末体により構成される。また、金属粉末Pとしては、電子ビームEの照射により溶融及び凝固できるものであれば、粉末より粒径の大きい粒体を用いてもよい。
【0046】
三次元造形装置1は、ビーム出射部2と、造形部3と、制御部4とを備える。
【0047】
ビーム出射部2は、造形部3の金属粉末Pに対し電子ビームEを出射し、金属粉末Pを溶融させるユニットである。電子ビームEは、荷電粒子である電子の直線的な運動により形成される荷電粒子ビームである。ビーム出射部2は、電子銃部21と、収差コイル22と、フォーカスコイル23と、偏向コイル24と、コラム25とを備える。
【0048】
電子銃部21は、造形部3に向けて電子ビームEを出射する。電子銃部21は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。
【0049】
収差コイル22は、電子銃部21から出射される電子ビームEの周囲に設置され、電子ビームEの収差を補正する。収差コイル22は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。なお、三次元造形装置1の種類によっては、収差コイル22の設置を省略する場合もある。
【0050】
フォーカスコイル23は、電子銃部21から出射される電子ビームEの周囲に設置され、電子ビームEを収束させて、電子ビームEの照射位置におけるフォーカス状態を調整する。フォーカスコイル23は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。
【0051】
偏向コイル24は、電子銃部21から出射される電子ビームEの周囲に設置され、制御信号に応じて電子ビームEの照射位置を調整する。偏向コイル24は、電磁的にビーム偏向を行うため、機械的にビーム偏向を行う場合に比べて、電子ビームEの照射時における走査速度を高速にすることができる。また、偏向コイル24は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。
【0052】
コラム25は、例えば筒状の筐体である。コラム25は、電子銃部21、収差コイル22、フォーカスコイル23及び偏向コイル24を収容する。
【0053】
造形部3は、所望の形状にセパレータ100を造形するユニットである。造形部3は、チャンバ30と、ステージ31と、昇降機32と、造形タンク33と、リコータ34と、ホッパ35とを備える。
【0054】
チャンバ30は、例えば箱状の筐体である。チャンバ30は、ステージ31、昇降機32、リコータ34及びホッパ35を収容する。チャンバ30は、ビーム出射部2のコラム25と連結している。チャンバ30の内部空間は、電子銃部21が配置されるコラム25の内部空間と連通している。また、チャンバ30の内部空間は、真空又はほぼ真空な状態に維持されている。
【0055】
ステージ31は、セパレータ100を支持する。ステージ31は、電子ビームEの出射方向の延長線上に位置し、例えば、主平面を水平面とする円板状の部材である。また、ステージ31は、造形タンク33内に配置され、Z方向に移動可能である。なお、ステージ31の表面上には、底板36が設置されている。金属粉末Pは、底板36上に直接的に供給される。
【0056】
昇降機32は、ステージ31を昇降させる機構である。昇降機32は、制御部4と電気的に接続され、制御部4からの制御信号を受けて作動する。例えば、昇降機32は、セパレータ100の造形の初期においてステージ31を上部へ移動させておき、ステージ31上で金属粉末Pが溶融凝固されて積層されるごとにステージ31を降下させる。なお、昇降機32は、ステージ31を昇降できる機構であれば、いずれの機構のものを用いてもよい。
【0057】
造形タンク33は、ステージ31の外形に合わせた内壁を有する筒状容器である。本実施形態の例では、ステージ31の形状は円板状であるので、造形タンク33の形状は、ステージ31の移動方向に沿った軸に対して断面形状が同心円状となる内壁を有する円筒状である。これにより、造形タンク33に供給される金属粉末Pのステージ31の下方へ漏れ落ちが抑制される。なお、金属粉末Pの漏れ落ちをより抑制するために、ステージ31の外縁部にシール材を設けてもよい。また、造形タンク33の形状は、円筒状に限定されず、断面矩形の角筒状であってもよい。
【0058】
リコータ34は、ステージ31の上方に金属粉末Pを供給し、金属粉末Pの表面を均す粉末塗布機構である。リコータ34は、例えば棒状又は板状の部材である。リコータ34は、図3中の矢印で示すように、水平方向に移動することにより電子ビームEの照射領域に金属粉末Pを供給し、金属粉末Pの表面を均す。また、リコータ34は、不図示のアクチュエータ等により移動制御される。なお、金属粉末Pを均す機構として、リコータ34以外の機構を用いてもよい。
【0059】
ホッパ35は、塗布前の金属粉末Pを収容する容器である。ホッパ35は、下部に、金属粉末Pを排出する排出口35aを有する。排出口35aから排出された金属粉末Pは、ステージ31上へ直接流入するか、又は、リコータ34によりステージ31上へ供給される。なお、ステージ31上に金属粉末Pを層状に供給する機構としては、リコータ34及びホッパ35以外の機構を用いてもよい。
【0060】
制御部4は、三次元造形装置1の装置全体の動作等を制御するユニットである。制御部4は、例えば、CPU、ROM又はRAMを有するコンピュータを含む。例えば、制御部4に含まれるRAM4aは、本実施形態に係るセパレータ100の造形方法を行わせる造形プログラムを格納する記録媒体である。この場合、制御部4は、RAM4aに格納されている造形プログラムに従って造形工程を実行する。当該造形処理では、制御部4は、例えば、ステージ31の昇降制御、リコータ34の作動制御、電子ビームEの出射制御、偏向コイル24の作動制御などを行う。
【0061】
制御部4は、例えば、セパレータ100の三次元CAD(Computer-Aided Design)データを用いて造形を行わせる。三次元CADデータは、予め制御部4に入力される、セパレータ100の形状データである。制御部4は、三次元CADデータをもとに、二次元のスライスデータを生成する。スライスデータは、例えば、セパレータ100の水平断面のデータであり、積層方向の各位置に応じた多数のデータの集合体である。制御部4は、スライスデータに基づいて、電子ビームEを金属粉末Pに対し照射する領域を決定し、その領域に応じて偏向コイル24に制御信号を出力する。これにより、セパレータ100の形状に応じた領域に対し、電子ビームEが照射される。なお、金属粉末Pの予備加熱を行う場合も、制御部4は、ビーム出射部2の偏向コイル24に制御信号を出力し、ステージ31上の加熱領域に対し、電子ビームEを走査して照射させる。
【0062】
(セパレータの造形方法)
次に、三次元造形装置1を用いた造形工程について説明する。以下、三次元造形装置1を用いてセパレータ100を造形する工程を、単に「三次元造形工程」という。
【0063】
図5は、制御部4が実行する造形プログラムの主な流れを示すフローチャートである。制御部4は、三次元造形工程を開始すると、ステップS101として、RAM4aに予め保存されている、セパレータ100に関する三次元CADデータを読み込む。三次元CADデータには、少なくとも、第1平板面102に、ガスを流通させる第1流路溝110aを複数の第1突起部110bの組み合わせで形成する情報が含まれている。次に、制御部4は、ステップS102として、ステップS101にて読み込んだ三次元CADデータに基づいて二次元のスライスデータを生成する。次に、制御部4は、ステップS103として、造形処理前の造形準備処理を行う。ここで、造形準備処理とは、セパレータ100の平板面に沿った方向を造形方向として規定するなど、ステップS102にて生成されたスライスデータに基づいて正確に造形処理を行わせるための処理全般をいう。本実施形態では、以下のステップS104で造形処理を行うに際して、第1突起部110bの形状に関連して、造形方向を第2辺110dが延伸するYs方向と規定する。一方、造形方向に対して直交する方向を第1辺110cが延伸するXs方向と規定する。次に、制御部4は、ステップS104として、造形処理を開始する。造形処理は、実際にセパレータ100の造形を行う処理である。
【0064】
図6は、三次元造形装置1による造形処理の流れを時系列で示す概略断面図である。ここで、図6では、三次元造形装置1の要部の一部のみが示されている。図6では、セパレータ100に形成される第1流路領域110等の各流路領域や、第1ガス供給穴114等の各種の穴部は、簡略化のために不図示としている。また、図6に示す例では、セパレータ100は、計17層の粉末層Laが最終的に積層されて造形されるものとして説明する。
【0065】
図6(a)は、粉末層Laの最下層である第1層La1から、次に積層される第2層La2までのセパレータ100の造形状態を示している。図6(b)は、図6(a)に引き続き、さらに第7層La7までのセパレータ100の造形状態を示している。そして、図6(c)は、図6(b)に引き続き、粉末層Laの最上層である第17層La17までのセパレータ100の造形状態を示している。
【0066】
三次元造形工程では、底板36上の金属粉末Pに電子ビームEを照射してセパレータ100の一部の造形を繰り返して積層していくことで、所望の形状にセパレータ100を造形する。すなわち、造形処理における造形方向は、積層方向と同義である。また、三次元造形装置1では、平板状であるセパレータ100のXs-Ys平面が、三次元造形装置1の造形方向を規定するZ軸と平行となるように、セパレータ100を造形する。
【0067】
三次元造形装置1は、まず、粉末層Laの最下層である第1層La1における粉末供給処理を行う。粉末供給処理は、底板36上に金属粉末Pを供給し、そして、供給された金属粉末Pの表面を均す処理である。具体的には、制御部4は、昇降機32に制御信号を出力してステージ31の上下位置を調節し、不図示のアクチュエータ又は機構に制御信号を出力してリコータ34を作動させる。これにより、リコータ34が例えばY軸に沿って移動し、ステージ31上に金属粉末Pが供給され、金属粉末Pの表面が均される。
【0068】
次に、三次元造形装置1は、第1層La1における造形処理を行う。具体的には、制御部4は、ステップS102で生成されたスライスデータに基づいて、金属粉末Pに対し電子ビームEを照射する領域を決定し、その領域に応じてビーム出射部2から電子ビームEを照射させる。
【0069】
ここで、本実施形態では、三次元CADデータ内に、図2及び図3を用いて説明した第1突起部110bの形状や配置が反映されている。つまり、造形処理は、少なくとも、第1平板面102に第1流路溝110aを形成する。
【0070】
第1層La1に関してセパレータ100の一部が造形された後、第2層La2では、上記のような粉末供給処理から当該層に対する造形処理までの一連の処理を繰り返すことにより、さらにセパレータ100の一部が造形される。そして、三次元造形装置1は、引き続き第17層La17までの各層に対する造形処理を施すことにより、最終的に、所望の形状のセパレータ100が造形される。
【0071】
なお、金属粉末Pを溶融し凝固させる粉末層Laの造形処理ごとに、その造形処理の前に、さらに金属粉末Pに電子ビームEを照射することで、金属粉末Pの予備加熱を行ってもよい。予備加熱は、予熱とも称され、金属粉末Pの融点未満の温度で金属粉末Pを加熱する処理である。この予備加熱により、金属粉末Pが加熱されて仮焼結され、電子ビームEの照射による金属粉末Pへの負電荷の蓄積が抑制されて、電子ビームEの照射時に金属粉末Pが飛散して舞い上がるスモーク現象を抑制することができる。
【0072】
次に、本実施形態による効果について説明する。
【0073】
まず、本実施形態に係る造形方法は、燃料電池に用いられる平板状のセパレータ100を、セパレータ100の第1平板面102等に沿った方向を造形方向として三次元金属積層造形により造形する。この造形方法は、例えば、第1平板面102に、燃料ガスを流通させる第1流路溝110aを複数の第1突起部110bの組み合わせで形成する造形工程を有する。複数の第1突起部110bのうちの1つは、造形方向に対して直交する方向では、少なくとも他の1つの一部と並ぶ。
【0074】
なお、本実施形態に係る造形方法は、第1平板面102に第1流路領域110が形成されることに加えて、第1平板面102とは反対側の第2平板面に、第1流路領域110と同様の第2流路領域が形成されている場合にも、同様に適用可能である。
【0075】
一般的なSOFCでは、燃料電池本体を構成する平板状の各要素は、互いに積層方向に沿って重ね合わされる。そのため、セパレータには、燃料電池本体の一部として用いられているときのガスリークを抑えるために、凹凸が抑えられた高い平坦度が要求される。
【0076】
例えば、従来のセパレータでは、第1流路領域110のような流路領域に流路溝を構成する複数の突起部が形成されており、これらの突起部が、造形方向と、造形方向とは直交する方向とのそれぞれの方向に整列しているものと仮定する。この場合、造形方向とは直交するXs方向では、一直線上に整列する突起部と、一直線上に延伸する流路溝の底部とに明確に分かれる。つまり、流路領域において、複数の突起部が整列する造形部分と、流路溝の底部が延伸する造形部分とで、造形断面積が造形方向で周期的に大きく変化することになる。流路領域で生じる造形断面積の変化が、外周部での凹凸の発生に影響すると考えられる。
【0077】
これに対して、本実施形態によれば、例えば第1流路領域110でみると、複数の第1突起部110bのうちの1つが造形方向に対して直交する方向すなわちXs方向で少なくとも他の1つの一部と並ぶ。つまり、第1流路領域110において、Xs方向で複数の第1突起部110bが一直線上に整列することが回避される。例えば、本実施形態に係る造形方法で造形されたセパレータ100における第1流路領域110をXs方向視で観察すると、いずれかの第1突起部110bが視認されることになる。これは、Xs方向で一直線上に整列する複数の突起部や、同様にXs方向で一直線上に延伸する流路溝の底部の形成が回避され、第1流路領域110では造形方向での造形断面積の周期的な変化が従来よりも小さくなることを意味する。これにより、セパレータ100全体では、断面積プロファイルの均一化が図られ、結果として、剛性が均一化されるため、意図しない凹凸の発生が抑えられる。
【0078】
このように、本実施形態によれば、三次元金属積層造形により造形されるセパレータ100での意図しない凹凸の発生を抑えるのに有利なセパレータ100の造形方法を提供することができる。
【0079】
また、本実施形態に係る造形方法では、複数の第1突起部110bは、造形方向では、それぞれ、一定の間隔で整列し、造形方向に対して直交する方向では、それぞれ、隣り合うもの同士の一部と並ぶものとしてもよい。
【0080】
このような造形方法によれば、複数の第1突起部110bの配置が規則的なものとなるため、三次元造形工程時の造形処理の複雑化を抑えることができる。
【0081】
また、本実施形態に係る造形方法では、第1突起部110bの平面形状は、造形方向に対して直交する方向に延伸する第1辺110cと、造形方向に延伸する第2辺110dとを有する矩形であってもよい。この場合、第1辺110cの長さは、第2辺110dの長さよりも長くてもよい。
【0082】
従来の突起部の配置で、第1辺110cと第2辺110dとの長さ関係が上記のように規定されている場合には、凹凸が発生しやすいと考えられる。しかし、本実施形態に係る造形方法によれば、上記のような長さ関係で規定されていても、凹凸の発生を抑えることができる。
【0083】
また、本実施形態に係る、燃料電池に用いられる平板状かつ金属製のセパレータ100は、第1平板面102に形成され、ガスを流通させる第1流路溝110aを有する第1流路領域110を備える。また、セパレータ100では、第1突起部110bにおいて1つの基準方向に向かう側面と第1流路溝110aの底部との連続部分に第1肉盛部110eが存在する。この場合、複数の突起部110bのうちの1つは、基準方向に対して直交する方向では、少なくとも他の1つの一部と並ぶ。
【0084】
このようなセパレータ100によれば、基準方向が三次元金属積層造形での造形方向であるとみなすことで、上記説明したセパレータ100の造形方法による効果と同様に、意図しない凹凸の発生が抑えられたセパレータ100を提供することができる。
【0085】
ここで、造形されたセパレータ100を見ると、セパレータ100には、第1突起部110bの端部と第1流路溝110aの底部との連続部分に第1肉盛部110eが存在していることがわかる。このような肉盛部は、例えば、鋳造等により製作されたような一般的なセパレータでは現れない。これに対して、三次元金属積層造形を採用した本実施形態に係るセパレータ100の造形方法によりセパレータ100を造形すると、第1肉盛部110eのような肉盛部が現れる。したがって、セパレータに第1肉盛部110eが存在するかどうかを確認することで、このセパレータが、本実施形態に係るセパレータ100である、又は、セパレータ100の造形方法により造形されたものであると推定することができる。
【0086】
(他の実施形態)
上記の実施形態では、第1流路領域110に形成されている第1突起部110bの平面形状が矩形であるものとしたが、本開示の造形方法において造形対象とするセパレータ100では、このような平面形状に限定されない。
【0087】
図7は、第1流路領域210に形成され、第1流路溝210aの形状を規定する複数の第1突起部210bの平面形状が直径Dの円形である場合のセパレータを例示する一部拡大図である。なお、図7は、上記の実施形態に関する図2に対応して描画されている。造形方向に相当するXs方向について、複数の第1突起部210bは、一定の間隔W12で整列している。一方、造形方向に対して直交する方向に相当するYs方向について、複数の第1突起部210bは、一定の間隔W22で整列している。
【0088】
この場合も、複数の第1突起部210bのうちの1つは、Xs方向では、少なくとも他の1つの一部と並び、特に図6に示す例では、複数の第1突起部110bは、Xs方向では、それぞれ、隣り合うもの同士の一部と並ぶ。
【0089】
ここでも、ある1つの第1突起部210bについて着目すると、第1突起部210bは、Ys方向に複数の第1突起部210bが並ぶ第1列に含まれる。同じくYs方向に複数の第1突起部210bが並び、第1列に対してXs方向のプラス側で隣り合う第2列には、第1突起部210bの近傍に、第1突起部210b及び第1突起部210bとの2つの第1突起部210bが存在する。第1列にある第1突起部210bは、第2列にある第1突起部210b又は第1突起部210bのいずれとも、Xs方向に延伸する一直線上で整列しない。そして、第1突起部210bは、第1突起部210bの一部と、及び、第1突起部210bの一部と、それぞれ並ぶことになる。図7で、第1突起部210b及び第1突起部210bにおいて、それぞれ、Xs方向で並ぶ領域をハッチングで示している。
【0090】
複数の第1突起部210bの形状や配列が図6に示すようなものであっても、結果として、図2等を用いて説明した上記の実施形態における効果と同様の効果を奏する。
【0091】
また、上記の実施形態では、三次元造形装置1が、パウダーベッド方式のうちエネルギービームとして電子ビームを用いて造形する三次元金属積層造形装置であるものとして説明した。しかし、本開示で用いることができる三次元造形装置は、これに限定されず、パウダーベッド方式のうちエネルギービームとしてレーザを用いて造形する三次元金属積層造形装置であってもよい。レーザを用いる三次元造形装置としては、例えば、選択的レーザ溶融法(SLM:Selective laser melting)、レーザ焼結法(SLS:Selective laser sintering)を採用するものがある。なお、レーザを用いる三次元造形装置では、造形を行うチャンバ内を真空状態としなくてもよく、例えばアルゴンガス雰囲気などの不活性ガス雰囲気にすればよい。また、上記の実施形態では、金属粉末Pを溶融し凝固させることで金属粉末Pを固化させる方法を説明したが、かかる方法には限定されず、金属粉末Pを焼結させることで金属粉末Pを固化させるものとしてもよい。また、三次元造形装置1は、選択溶融方式であるパウダーベッド方式に限らず、例えば材料付加方式である、いわゆるパウダーフィード方式を採用するものであってもよい。
【0092】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 三次元造形装置
4 制御部
4a RAM
100 セパレータ
102 第1平板面
110a 第1流路溝
110b 第1突起部
110c 第1辺
110d 第2辺
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7