(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】共重合体、ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20240109BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20240109BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240109BHJP
C08F 236/04 20060101ALI20240109BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240109BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08L9/00
C08F236/04
C08K3/36
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020010865
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鷲頭 健介
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-521376(JP,A)
【文献】特表2011-508068(JP,A)
【文献】国際公開第2016/139935(WO,A1)
【文献】米国特許第03931107(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 236/04
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/16
B60C 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び下記式(1)で表される化合物、又は、共役ジエン化合物及び下記式(1)で表される化合物を共重合して得られ、重量平均分子量が1.0×10
3~2.5×10
6である共重合体
、天然ゴム、並びに、ブタジエンゴムを含有するゴム成分を含むゴム組成物。
【化1】
(式中、R
1、R
2は、同一でも異なっていてもよく、炭素、水素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも2種を含む官能基である。R
1、R
2は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記式(1)で表される化合物成分の含有量が0.05~35質量%である請求項1記載の
ゴム組成物。
【請求項3】
芳香族ビニル化合物成分の含有量が5~55質量%である請求項1又は2記載の
ゴム組成物。
【請求項4】
共役ジエン化合物成分の含有量が40~90質量%である請求項1~3のいずれかに記載の
ゴム組成物。
【請求項5】
ゴム成分100質量%中、前記共重合体の含有量が5質量%以上である請求項
1~4のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が5~150質量部である請求項
1~5のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項7】
前記式(1)中のR
1
及びR
2
が、アルキル基である請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項8】
ゴム成分100質量%中、天然ゴムの含有量が5~50質量%である請求項1~7のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項9】
ゴム成分100質量%中、ブタジエンゴムの含有量が5~40質量%である請求項1~8のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項10】
ゴム成分100質量%中、前記共重合体の含有量が45~70質量%である請求項1~9のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項11】
ゴム成分100質量%中、スチレンブタジエンゴムの含有量が50質量%以下である請求項1~10のいずれかに記載のゴム組成物。
【請求項12】
請求項
1~11のいずれかに記載のゴム組成物で構成されたタイヤ部材を有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共重合体、ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤトレッドゴムの性能として、低燃費性及びウェットグリップ性能の両立が求められる。しかしながら、通常、これらの性能は背反関係にあり、両者を同時に向上させることは困難である。
【0003】
低燃費性及びウェットグリップ性能の総合性能を改善する手法として、シリカを用いる手法が検討されている。しかしながら、シリカは、ゴム中で均一に分散させることが困難であり、加工性の面で改善の余地がある。
【0004】
また、特許文献1では、スチレン、1,3-ブタジエン及び特定のアルコキシスチレンの共重合体により、低燃費性及びウェットグリップ性能のバランスに優れたゴム組成物が得られることが開示されている。しかしながら、近年では、低燃費性及びウェットグリップ性能の総合性能の更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性及びウェットグリップ性能の総合性能を改善できる共重合体、並びに、該共重合体を用いたゴム組成物及びタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び下記式(1)で表される化合物、又は、共役ジエン化合物及び下記式(1)で表される化合物を共重合して得られ、重量平均分子量が1.0×10
3~2.5×10
6である共重合体に関する。
【化1】
(式中、R
1、R
2は、同一でも異なっていてもよく、炭素、水素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも2種を含む官能基である。R
1、R
2は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0008】
前記共重合体は、前記式(1)で表される化合物成分の含有量が0.05~35質量%であることが好ましい。
【0009】
前記共重合体は、芳香族ビニル化合物成分の含有量が5~55質量%であることが好ましい。
【0010】
前記共重合体は、共役ジエン化合物成分の含有量が40~90質量%であることが好ましい。
【0011】
本発明はまた、前記共重合体を含むゴム組成物に関する。
【0012】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中、前記共重合体の含有量が5質量%以上であることが好ましい。
【0013】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対して、シリカの含有量が5~150質量部であることが好ましい。
【0014】
本発明はまた、前記ゴム組成物で構成されたタイヤ部材を有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び式(1)で表される化合物、又は、共役ジエン化合物及び式(1)で表される化合物を共重合して得られ、重量平均分子量が1.0×103~2.5×106であるので、優れた低燃費性及びウェットグリップ性能が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び式(1)で表される化合物、又は、共役ジエン化合物及び式(1)で表される化合物を共重合して得られ、重量平均分子量が1.0×103~2.5×106である共重合体である。
【0017】
通常、ゴムは、シランカップリング剤を介した不可逆的な共有結合によってシリカと結合する。一方、上記共重合体は、式(1)で表される化合物中の酸素原子が、シリカ表面の水酸基に対して水素結合などの可逆的な結合を形成し、これにより、シリカの分散が促進され、低燃費性及びウェットグリップ性能の総合性能が改善されると推測される。
【0018】
なお、特許文献1で開示された共重合体においても、シリカに対して可逆的な結合が形成され得ると考えられるが、上記共重合体は、特許文献1で開示された共重合体よりも可逆的な結合を形成する結合点が多いことで、低燃費性及びウェットグリップ性能の総合性能が顕著に改善されると考えられる。
【0019】
上記共重合体は、少なくとも、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び下記式(1)で表される化合物、又は、共役ジエン化合物及び下記式(1)で表される化合物を共重合して得られるものである。すなわち、上記共重合体としては、芳香族ビニル化合物由来の構成単位、共役ジエン化合物由来の構成単位及び下記式(1)で表される化合物由来の構成単位を有する三元共重合体や、共役ジエン化合物由来の構成単位及び下記式(1)で表される化合物由来の構成単位を有する二元共重合体等を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、芳香族ビニル化合物由来の構成単位、共役ジエン化合物由来の構成単位及び下記式(1)で表される化合物由来の構成単位を有する三元共重合体が好ましい。
【化2】
(式中、R
1、R
2は、同一でも異なっていてもよく、炭素、水素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも2種を含む官能基である。R
1、R
2は、互いに結合して環構造を形成していてもよい。)
【0020】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、1-ビニルナフタレン、3-ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4-シクロヘキシルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、スチレン、α-メチルスチレンが好ましく、スチレンが好ましい。
【0021】
上記共重合体100質量%中、芳香族ビニル化合物成分(芳香族ビニル化合物由来の構成単位)の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは19質量%以上であり、また、好ましくは55質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0022】
共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。
【0023】
上記共重合体100質量%中、共役ジエン化合物成分(共役ジエン化合物由来の構成単位)の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは45質量%以上、更に好ましくは50質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0024】
式(1)中、R1、R2は、炭素、水素及びケイ素からなる群より選択される少なくとも2種を含む官能基であり、例えば、フェノールの保護基に用いられるメチル基、エチル基などの炭化水素系の官能基(炭素及び水素を含む官能基)や、トリメチルシリル基、トリエトキシシリル着などのケイ素系の官能基(炭素、水素及びケイ素を含む官能基)などが挙げられる。なかでも、炭化水素系の官能基が好ましく、アルキル基が好ましい。アルキル基の炭素数は、好ましくは1~6、より好ましくは1~4、更に好ましくは1~2である。
また、R1、R2は、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0025】
式(1)で表される化合物の具体例としては、3,4-ジメトキシスチレン、5-エテニルベンゾ[1,3]ジオキサン、6-ビニルー2,3-ジヒドロー1,4-ベンゾジオキサン、4-エテニル-1,2-ビス[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシスチレン、4-エテニル-1-(トリメチルシリル)オキシ-2-メトキシ-ベンゼン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、3,4-ジメトキシスチレン、4-エテニル-1,2-ビス[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼン、3,4-ジヒドロキシスチレン、4-エテニル-1-(トリメチルシリル)オキシ-2-メトキシ-ベンゼンが好ましく、3,4-ジメトキシスチレンがより好ましい。
【0026】
上記共重合体100質量%中、式(1)で表される化合物成分(式(1)で表される化合物由来の構成単位)の含有量は、低燃費性及びウェットグリップ性能の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、また、コストの観点から、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0027】
上記共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1.0×103~2.5×106であればよいが、低燃費性の観点から、好ましくは1.0×105以上、より好ましくは3.5×105以上、更に好ましくは4.5×105以上、特に好ましくは4.7×105以上であり、また、加工性の観点から、好ましくは1.5×106以下、より好ましくは1.0×106以下、更に好ましくは8.0×105以下、特に好ましくは6.0×105以下である。
なお、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC-8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMULTIPORE HZ-M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めることができる。
【0028】
上記共重合体の重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、安定性の観点から、溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0029】
本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上記共重合体を含有する。
ゴム成分100質量%中、上記共重合体の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは45質量%以上であり、また、好ましくは85質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0030】
上記共重合体以外に使用できるゴム成分としては、ジエン系ゴムを用いることが好ましい。
ジエン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)や、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などのジエン系合成ゴムなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、低燃費性及びウェットグリップ性能の総合性能の観点から、NR、SBR、BRが好ましく、NR、BRがより好ましい。
【0031】
ゴム成分100質量%中、NRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0032】
ゴム成分100質量%中、SBRの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは50質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは20質量%以下、特に好ましくは15質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0033】
ゴム成分100質量%中、BRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0034】
ゴム成分は、変性により、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基が導入されていてもよい。
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0035】
上記官能基を有する化合物(変性剤)の具体例としては、2-ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2-ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
上記ゴム組成物は、補強剤として、シリカを含有することが好ましい。
シリカとしては、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、EVONIK社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0037】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、補強性の観点から、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは80m2/g以上、更に好ましくは150m2/g以上、特に好ましくは180m2/g以上であり、また、分散性の観点から、好ましくは300m2/g以下、より好ましくは250m2/g以下、更に好ましくは200m2/g以下である。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037-81に準じてBET法で測定される値である。
【0038】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、補強性の観点から、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは45質量部以上、特に好ましくは60質量部以上であり、また、加工性の観点から、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは70質量部以下である。
【0039】
シリカは、シランカップリング剤と併用することが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィドなどのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、EVONIK社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、補強性改善効果の観点から、スルフィド系が好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドがより好ましく、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドが更に好ましい。
【0040】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、加工性の観点から、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、コストの観点から、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。
【0041】
上記ゴム組成物は、補強剤として、カーボンブラックを含有してもよい。
カーボンブラックとしては、特に限定されず、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0042】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは80m2/g以上、より好ましくは100m2/g以上であり、また、好ましくは160m2/g以下、より好ましくは140m2/g以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、カーボンブラックのN2SAは、JIS K6217-2:2001に準拠して測定される値である。
【0043】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0044】
上記ゴム組成物は、レジンを含有してもよい。
レジンとしては、例えば、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、テルペン系樹脂、C5/C9系樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられる。市販品としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、JXTGエネルギー(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業(株)、ExxonMobil社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
上記レジンの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上であり、また、好ましくは25質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0046】
上記ゴム組成物は、老化防止剤を含んでもよい。
老化防止剤としては、例えば、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4′-ビス(α,α′-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3′,5′-ジ-t-ブチル-4′-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤等が挙げられる。市販品としては、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0047】
老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0048】
上記ゴム組成物は、オイルを含有してもよい。
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等を用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、JXTGエネルギー(株)、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、また、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部、更に好ましくは30質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0050】
上記ゴム組成物は、ワックスを含有してもよい。
ワックスとしては、特に限定されず、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス;植物系ワックス、動物系ワックス等の天然系ワックス;エチレン、プロピレン等の重合物等の合成ワックス等が挙げられる。市販品としては、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、また、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0052】
上記ゴム組成物は、ステアリン酸を含有してもよい。
ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0053】
ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0054】
上記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含有してもよい。
酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、市販品としては、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上であり、また、好ましくは10質量部以下、より好ましくは6質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0056】
上記ゴム組成物は、硫黄を含有してもよい。
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄等が挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0058】
上記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。
加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N′-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。市販品としては、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0059】
加硫促進剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.5質量部以上であり、また、好ましくは6質量部以下、より好ましくは3質量部以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
【0060】
上記ゴム組成物には、上記成分の他、タイヤ工業において一般的に用いられている添加剤、例えば、有機過酸化物;炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、マイカ等の充填剤;等を更に配合してもよい。これらの添加剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましい。
【0061】
上記ゴム組成物は、例えば、上述の各成分をオープンロール、バンバリーミキサー等のゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0062】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常100~180℃、好ましくは120~170℃である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常120℃以下、好ましくは85~110℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理が施される。加硫温度としては、通常140~190℃、好ましくは150~185℃である。加硫時間は、通常5~15分である。
【0063】
上記ゴム組成物は、例えば、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、アンダートレッド、ショルダー、クリンチ、ビードエイペックス、ブレーカークッションゴム、カーカスコード被覆用ゴム、インスレーション、チェーファー、インナーライナー等や、ランフラットタイヤのサイド補強層などのタイヤ部材に(タイヤ用ゴム組成物として)用いることができる。なかでも、トレッドに好適である。
【0064】
本発明のタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。
すなわち、上記ゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド等の形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、タイヤを得る。
【0065】
なお、上記タイヤのタイヤ部材(例えば、トレッド)は、少なくとも一部が上記ゴム組成物で構成されていればよく、全部が上記ゴム組成物で構成されていてもよい。
【0066】
上記タイヤ(空気入りタイヤ等)は、乗用車用タイヤ;トラック・バス用タイヤ;二輪車用タイヤ;高性能タイヤ;スタッドレスタイヤ等の冬用タイヤ;サイド補強層を備えるランフラットタイヤ;スポンジ等の吸音部材をタイヤ内腔に備える吸音部材付タイヤ;パンク時に封止可能なシーラントをタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える封止部材付タイヤ;センサや無線タグ等の電子部品をタイヤ内部又はタイヤ内腔に備える電子部品付タイヤ等に使用可能であり、乗用車用タイヤに好適である。
【実施例】
【0067】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0068】
以下に、共重合体の合成時に用いた各種薬品について説明する。
n-ヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
1,3-ブタジエン:東京化成工業(株)製
p-(t-ブトキシ)スチレン:富士フイルム和光純薬(株)製
3,4-ジメトキシスチレン:Sigma-Aldrich社製
4-エテニル-1,2-ビス[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼン:合成品
3,4-ジヒドロキシスチレン:富士フイルム和光純薬(株)製
4-エテニル-1-(トリメチルシリル)オキシ-2-メトキシ-ベンゼン:合成品
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
n-ブチルリチウム:関東化学(株)製の1.6M n-ブチルリチウムヘキサン溶液
アルコール:関東化学(株)製のメタノール
2,6-tert-ブチル-p-クレゾール:大内新興化学工業(株)製のノクラック
200
【0069】
<測定および同定方法>
(重量平均分子量の測定)
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製GPC-8000シリーズの装置を用い、検知器として示差屈折計を用い、分子量は標準ポリスチレンにより校正した。
【0070】
(共重合体の構造同定)
共重合体の構造同定は、日本電子(株)製JNM-ECAシリーズの装置を用いて測定した。
【0071】
<共重合体の合成>
(共重合体(1))
十分に窒素置換した耐熱容器にn-ヘキサン1500ml、スチレン100mmol、1,3-ブタジエン800mmol、p-(t-ブトキシ)スチレン1mmol、テトラメチルエチレンジアミン0.2mmol、n-ブチルリチウム0.12mmolを加えて、0℃で48時間攪拌した。その後、アルコールを加えて反応を止め、反応溶液に2,6-tert-ブチル-p-クレゾール1gを添加後、再沈殿精製により共重合体(1)を得た。得られた共重合体は、Mw:480,000、p-(t-ブトキシ)スチレン成分の含有量:0.1mol%(0.33質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0072】
(共重合体(2))
p-(t-ブトキシ)スチレンの使用量を5mmolとする点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(2)を得た。得られた共重合体は、Mw:490,000、p-(t-ブトキシ)スチレン成分の含有量:0.6mol%(1.61質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:79質量%であった。
【0073】
(共重合体(3))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、3,4-ジメトキシスチレンを1mmol加える点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(3)を得た。得られた共重合体は、Mw:470,000、3,4-ジメトキシスチレン成分の含有量:0.1mol%(0.30質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0074】
(共重合体(4))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、3,4-ジメトキシスチレンを5mmol加える点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(4)を得た。得られた共重合体はMw:480,000、3,4-ジメトキシスチレン成分の含有量:0.6mol%(1.50質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:79質量%であった。
【0075】
(4-エテニル-1,2-ビス[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼンの合成法)
十分に窒素置換したガラス容器にヘキサン200mLとトリメチルクロロシラン1molを仕込み、氷冷しながら、3,4-ジヒドロキシスチレン1molとトリエチルアミン2molの混液を温度40℃以下で2時間以上かけて滴下した。TLC(薄層クロマトグラフィー)で3,4-ジヒドロキシスチレンのスポットの消失を確認した後、反応液をセライトろ過した後、ロータリーエバポレーターでヘキサンを濃縮し、ヘキサンで充填したシリカゲルカラムに通したのち、最も大きいスポットのみを含むフラクションを濃縮した。
濃縮液のLC-MS分析によって絶対分子量280を確認し、精製物が4-エテニル-1,2-ビス[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼンであることを確認した。
(共重合体(5))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、4-エテニル-1,2-ビス[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼンを1mmol加える点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(5)を得た。得られた共重合体は、Mw:460,000、4-エテニル-1,2-ビス[(トリメチルシリル)オキシ]ベンゼン成分の含有量:0.1mol%(0.51質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0076】
(共重合体(6))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、3,4-ジヒドロキシスチレンを1mmol加える点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(6)を得た。得られた共重合体は、Mw:620,000、3,4-ジヒドロキシスチレン成分の含有量:0.1mol%(0.25質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0077】
(4-エテニル-1-(トリメチルシリル)オキシ-2-メトキシ-ベンゼンの合成法)
十分に窒素置換したガラス容器にヘキサン200mLとトリメチルクロロシラン0.5molを仕込み、氷冷しながら、3,4-ジヒドロキシスチレン1molとトリエチルアミン1molの混液を40℃以下で2時間以上かけて滴下した。TLC(薄層クロマトグラフィー)で3,4-ジヒドロキシスチレンのスポットの消失を確認した後、反応液をセライトろ過した後、ロータリーエバポレーターでヘキサンを濃縮し、ヘキサンで充填したシリカゲルカラムに通した後、最も大きいスポットのみを含むフラクションを濃縮した。
次いで、十分に窒素置換したガラス容器に200mLのヘキサンとジメチル硫酸0.5molを仕込み、前述の濃縮液とトリエチルアミン1molの混液を40℃以下で2時間以上かけて滴下した。TLC(薄層クロマトグラフィー)で濃縮液由来のスポットの消失を確認した後、反応液をセライトろ過した後、ロータリーエバポレーターでヘキサンを濃縮し、ヘキサンで充填したシリカゲルカラムに通したのち、最も大きいスポットのみを含むフラクションを濃縮した。
濃縮液のLC-MS分析によって絶対分子量222を確認し、精製物が4-エテニル-1-(トリメチルシリル)オキシ-2-メトキシ-ベンゼンであることを確認した。
(共重合体(7))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、4-エテニル-1-(トリメチルシリル)オキシ-2-メトキシ-ベンゼンを1mmol加える点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(7)を得た。得られた共重合体は、Mw:470,000、4-エテニル-1-(トリメチルシリル)オキシ-2-メトキシ-ベンゼン成分の含有量:0.1mol%(0.39質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0078】
(共重合体(8))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、3,4-ジメトキシスチレンを1mmol加える点、Mw調整のため、テトラメチルエチレンジアミン、n-ブチルリチウムの使用量を変更する点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(8)を得た。得られた共重合体は、Mw:1,000、3,4-ジメトキシスチレン成分の含有量:0.1mol%(0.3質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0079】
(共重合体(9))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、3,4-ジメトキシスチレンを1mmol加える点、Mw調整のため、テトラメチルエチレンジアミン、n-ブチルリチウムの使用量を変更する点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(9)を得た。得られた共重合体は、Mw:2,500,000、3,4-ジメトキシスチレン成分の含有量:0.1mol%(0.3質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0080】
(共重合体(10))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、3,4-ジメトキシスチレンを1mmol加える点、Mw調整のため、テトラメチルエチレンジアミン、n-ブチルリチウムの使用量を変更する点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(10)を得た。得られた共重合体は、Mw:800、3,4-ジメトキシスチレン成分の含有量:0.1mol%(0.3質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0081】
(共重合体(11))
p-(t-ブトキシ)スチレンの代わりに、3,4-ジメトキシスチレンを1mmol加える点、Mw調整のため、テトラメチルエチレンジアミン、n-ブチルリチウムの使用量を変更する点以外は共重合体(1)と同様の処方により共重合体(11)を得た。得られた共重合体は、Mw:2,700,000、3,4-ジメトキシスチレン成分の含有量:0.1mol%(0.3質量%)、スチレン成分の含有量:19質量%、1,3-ブタジエン成分の含有量:80質量%であった。
【0082】
以下に、実施例及び比較例で用いた各種薬品について説明する。
【0083】
NR:RSS#3
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B
SBR:JSR(株)製のSL574
共重合体(1)~(11):上記方法で合成
シリカ:EVONIK社製のULTRASIL VN3(N2SA:180m2/g)
シランカップリング剤:EVONIK社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
硫黄:鶴見化学(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(1,3-ジフェニルグアニジン)
【0084】
<実施例及び比較例>
表1に示す配合内容に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で5分間混練りし、混練物を得た。次に、得られた混練物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で15分間プレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。
【0085】
上記加硫ゴム組成物を用いて以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(低燃費性)
(株)上島製作所製スペクトロメーターを用いて、動的歪振幅1%、周波数10Hz、温度50℃で、上記加硫ゴム組成物のtanδを測定した。そして、tanδの逆数の値について、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく、低燃費性に優れることを示す。
【0087】
(ウェットグリップ性能)
(株)上島製作所製フラットベルト式摩擦試験機(FR5010型)を用いてウェットグリップ性能を評価した。上記加硫ゴム組成物からなる円筒形(幅20mm、直径100mm)のゴム試験片を用いて、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップを0~70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとり、比較例1を100として指数表示した。数値が大きいほど摩擦係数の最大値が高く、ウェットグリップ性能に優れることを示す。
【0088】
【0089】
表1より、芳香族ビニル化合物、共役ジエン化合物及び式(1)で表される化合物、又は、共役ジエン化合物及び式(1)で表される化合物を共重合して得られ、重量平均分子量が1.0×103~2.5×106である共重合体を含む実施例は、比較例と比較して、低燃費性及びウェットグリップ性能の総合性能(各指数の合計)が良好であった。