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特許7413808光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20240109BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20240109BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G02B5/28
G02B5/22
G02B5/18
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020020046
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2021124683
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】川下 雅史
(72)【発明者】
【氏名】石丸 佳子
(72)【発明者】
【氏名】下村 温紗
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/070431(WO,A1)
【文献】特開2010-122227(JP,A)
【文献】特開2006-349776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/28
G02B 5/22
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸部または凹部である凹凸要素であって、サブ波長周期で並ぶ複数の前記凹凸要素が構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層と、
前記凹凸構造上に位置して当該凹凸構造に追従した表面形状を有する高屈折率層であって、前記凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部、および、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部を含み、前記凹凸構造層よりも屈折率の高い材料からなる前記高屈折率層と、
前記高屈折率層上に位置する低屈折率層であって、前記高屈折率層よりも屈折率の低い材料からなる前記低屈折率層と、を備える光学デバイスであって、
前記光学デバイスの構成層には、所定の波長域として紫外領域の光の吸収性を有する層が含まれ
前記第1格子高屈折率部を含む領域において導波モード共鳴現象により強められて射出される反射光、および、前記第2格子高屈折率部を含む領域において導波モード共鳴現象により強められて射出される反射光の少なくとも一方には、紫外領域の光が含まれる
光学デバイス。
【請求項2】
凸部または凹部である凹凸要素であって、サブ波長周期で並ぶ複数の前記凹凸要素が構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層と、
前記凹凸構造上に位置して当該凹凸構造に追従した表面形状を有する高屈折率層であって、前記凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部、および、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部を含み、前記凹凸構造層よりも屈折率の高い材料からなる前記高屈折率層と、
前記高屈折率層上に位置して当該高屈折率層の表面の凹凸に追従した表面形状を有する低屈折率層であって、前記高屈折率層よりも屈折率の低い材料からなる前記低屈折率層と、を備える光学デバイスであって、
前記光学デバイスの構成層には、所定の波長域の光の吸収性を有する層が含まれる
光学デバイス。
【請求項3】
凸部または凹部である凹凸要素であって、サブ波長周期で並ぶ複数の前記凹凸要素が構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層と、
前記凹凸構造上に位置して当該凹凸構造に追従した表面形状を有する高屈折率層であって、前記凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部、および、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部を含み、前記凹凸構造層よりも屈折率の高い材料からなる前記高屈折率層と、
前記高屈折率層上に位置する低屈折率層であって、前記高屈折率層よりも屈折率の低い材料からなる前記低屈折率層と、を備える光学デバイスであって、
前記光学デバイスの構成層には、所定の波長域の光の吸収性を有する層が含まれ
前記第1格子高屈折率部の厚さをT1、前記第2格子高屈折率部の厚さをT2、
前記高屈折率層の材料の屈折率をn1、前記凹凸構造層の材料の屈折率をn2、前記低屈折率層の材料の屈折率をn3、
前記第1格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第1格子高屈折率部が占める面積比率をR1、前記第2格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第2格子高屈折率部が占める面積比率をR2、とするとき、
n1>n2、n1>n3、かつ、R1+R2>1であって、
T1×{n1×R1+n2×(1-R1)}で表される第1パラメータに対する、T2×{n1×R2+n3×(1-R2)}で表される第2パラメータの比が、0.5以上2.0以下である
光学デバイス。
【請求項4】
前記高屈折率層は、前記第1格子高屈折率部と前記第2格子高屈折率部との間で前記凹凸要素の側面に沿って延びる中間高屈折率部を含み、
前記中間高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該中間高屈折率部が占める面積比率をR3とするとき、R3≦R1+R2-1が満たされる
請求項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
前記低屈折率層が、前記所定の波長域の光の吸収性を有する
請求項1~のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項6】
前記凹凸構造層が、前記所定の波長域の光の吸収性を有する
請求項1~のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項7】
前記凹凸構造層を支持する基材を備え、
前記基材が前記所定の波長域の光の吸収性を有する
請求項1~のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項8】
前記凹凸構造層を支持する基材と、
前記基材に対して前記凹凸構造層と反対側に位置し、前記所定の波長域の光の吸収性を有する吸収層と、を備える
請求項1~のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項9】
前記凹凸構造層、前記高屈折率層、および、前記低屈折率層を有する部分が共鳴構造部であり、
前記光学デバイスは、前記共鳴構造部の厚さ方向に沿って並ぶ複数の前記共鳴構造部と、
互いに隣り合う前記共鳴構造部の間を埋める層であって、前記高屈折率層よりも屈折率が低い材料から構成され、かつ、前記所定の波長域の光の吸収性を有する埋込層と、を備える
請求項1~のいずれか一項に記載の光学デバイス。
【請求項10】
所定の波長域として紫外領域の光を吸収する材料からなる層を形成する工程を含む光学デバイスの製造方法であって、
サブ波長周期で並ぶ複数の凸部または凹部である凹凸要素を表面に有し、第1低屈折率材料から構成される凹凸構造層を形成する第1工程と、
前記第1低屈折率材料よりも高い屈折率を有する高屈折率材料を用いて、前記凹凸構造層の表面に沿って、当該凹凸構造層が有する凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部と、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部とを含む高屈折率層を形成する第2工程と、
前記高屈折率材料よりも低い屈折率を有する第2低屈折率材料を用いて、前記高屈折率層上に低屈折率層を形成する第3工程と、を含み、
前記光学デバイスにて、前記第1格子高屈折率部を含む領域において導波モード共鳴現象により強められて射出される反射光、および、前記第2格子高屈折率部を含む領域において導波モード共鳴現象により強められて射出される反射光の少なくとも一方には、紫外領域の光が含まれる
光学デバイスの製造方法。
【請求項11】
所定の波長域の光を吸収する材料からなる層を形成する工程を含む光学デバイスの製造方法であって、
サブ波長周期で並ぶ複数の凸部または凹部である凹凸要素を表面に有し、第1低屈折率材料から構成される凹凸構造層を形成する第1工程と、
前記第1低屈折率材料よりも高い屈折率を有する高屈折率材料を用いて、前記凹凸構造層の表面に沿って、当該凹凸構造層が有する凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部と、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部とを含む高屈折率層を形成する第2工程と、
前記高屈折率材料よりも低い屈折率を有する第2低屈折率材料を用いて、前記高屈折率層上に、前記高屈折率層の表面の凹凸に追従した表面形状を有する低屈折率層を形成する第3工程と、を含む
光学デバイスの製造方法。
【請求項12】
所定の波長域の光を吸収する材料からなる層を形成する工程を含む光学デバイスの製造方法であって、
サブ波長周期で並ぶ複数の凸部または凹部である凹凸要素を表面に有し、第1低屈折率材料から構成される凹凸構造層を形成する第1工程と、
前記第1低屈折率材料よりも高い屈折率を有する高屈折率材料を用いて、前記凹凸構造層の表面に沿って、当該凹凸構造層が有する凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部と、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部とを含む高屈折率層を形成する第2工程と、
前記高屈折率材料よりも低い屈折率を有する第2低屈折率材料を用いて、前記高屈折率層上に低屈折率層を形成する第3工程と、を含み、
前記第1格子高屈折率部の厚さをT1、前記第2格子高屈折率部の厚さをT2、
前記高屈折率層の材料の屈折率をn1、前記凹凸構造層の材料の屈折率をn2、前記低屈折率層の材料の屈折率をn3、
前記第1格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第1格子高屈折率部が占める面積比率をR1、前記第2格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第2格子高屈折率部が占める面積比率をR2、とするとき、
n1>n2、n1>n3、かつ、R1+R2>1であって、
T1×{n1×R1+n2×(1-R1)}で表される第1パラメータに対する、T2×{n1×R2+n3×(1-R2)}で表される第2パラメータの比が、0.5以上2.0以下である
光学デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波モード共鳴現象を利用した光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光から特定の波長域の光を透過光あるいは反射光として取り出す光学デバイスは、入射光から赤緑青の各色の光を取り出すカラーフィルタのように、波長選択フィルタとして用いられる。例えば、顔料等の色素での吸収によって特定の波長域の光を相対的に多く透過するように構成されたフィルタが広く普及している。一方で、色素での吸収を利用したフィルタよりも高い波長選択性を実現可能なフィルタとして、導波モード共鳴現象を利用した光学デバイスが利用可能である。この光学デバイスは、光の波長よりも小さい周期の回折格子であるサブ波長格子を有する。当該サブ波長格子に光が入射すると、周囲との屈折率差等に起因して、特定の波長域の光が多重反射しながら伝播することにより共鳴を起こし、反射光として強く射出される。そして、入射光のうち、反射光の波長域を除く波長域の光が、透過光として光学デバイスから射出される(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5023324号明細書
【文献】特開2009-25558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光学デバイスの用途の拡大のためには、光学デバイスが、光を選択的に反射および透過する機能に加えて、光の遮蔽機能を有していることが好ましい。
例えば、次世代のディスプレイとして、微小なLED素子を用いたLEDディスプレイが注目されている。LEDディスプレイの一種は、紫外線LED(UV-LED)素子からの光を蛍光体からなる波長変換層に照射して蛍光体を励起させることにより、有色光を射出する。詳細には、波長変換層は、赤色光を射出する副画素領域と、緑色光を射出する副画素領域と、青色光を射出する副画素領域とを備えている。複数のLED素子は、副画素領域の配列に対応する配列で並べられ、各LED素子が射出した紫外光が各副画素領域に照射されることにより、紫外光の強さに応じた強さの各色の光が各副画素領域から射出される。これにより、LEDディスプレイにおけるカラーの像の表示が実現される。
【0005】
ここで、LED素子が射出した紫外光の一部は、波長変換層を透過して、LEDディスプレイの表面に漏れ出る。LEDディスプレイの視聴者の眼の保護のためには、LEDディスプレイからの紫外光の漏れは少ないことが好ましい。光学デバイスが、有色光を透過し、かつ、紫外光を遮蔽する機能を有していれば、紫外光の漏れを抑えるために光学デバイスを用いることも可能であり、光学デバイスの用途が広がる。
【0006】
本発明は、光の遮蔽機能を有する光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する光学デバイスは、凸部または凹部である凹凸要素であって、サブ波長周期で並ぶ複数の前記凹凸要素が構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層と、前記凹凸構造上に位置して当該凹凸構造に追従した表面形状を有する高屈折率層であって、前記凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部、および、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部を含み、前記凹凸構造層よりも屈折率の高い材料からなる前記高屈折率層と、前記高屈折率層上に位置する低屈折率層であって、前記高屈折率層よりも屈折率の低い材料からなる前記低屈折率層と、を備える。前記光学デバイスの構成層には、所定の波長域の光の吸収性を有する層が含まれる。
【0008】
上記構成によれば、第1格子高屈折率部を含む格子領域と第2格子高屈折率部を含む格子領域とで生じる導波モード共鳴現象により、光学デバイスは、光を選択的に反射および透過する。さらに、光学デバイスは、特定の波長域の光を吸収するため、当該波長域の光の遮蔽機能を有する。したがって、波長選択フィルタ等の光学デバイスの用途の拡大が可能である。
【0009】
上記構成において、前記所定の波長域の光は、紫外領域の光であってもよい。
上記構成によれば、光学デバイスは、紫外光の遮蔽機能を有する。したがって、紫外光による蛍光体の励起を利用した表示装置等、紫外光の漏れの抑制が求められる装置に設けるフィルタとして、光学デバイスを用いることもできる。
【0010】
上記構成において、前記第1格子高屈折率部を含む領域において導波モード共鳴現象により強められて射出される反射光、および、前記第2格子高屈折率部を含む領域において導波モード共鳴現象により強められて射出される反射光の少なくとも一方には、紫外領域の光が含まれてもよい。
【0011】
上記構成によれば、入射光に含まれる紫外領域の光は、導波モード共鳴現象によって反射され、あるいは、紫外領域の光の吸収性を有する層に吸収される。したがって、光学デバイスにおける紫外光の遮蔽機能がさらに高められる。
【0012】
上記構成において、前記低屈折率層が、前記所定の波長域の光の吸収性を有してもよい。
上記構成において、前記凹凸構造層が、前記所定の波長域の光の吸収性を有してもよい。
【0013】
上記構成において、前記凹凸構造層を支持する基材を備え、前記基材が前記所定の波長域の光の吸収性を有していてもよい。
上記各構成によれば、2以上の格子領域を有する光学デバイスにおいて、その構成層を増加させずとも、光の遮蔽機能の実現が可能である。
【0014】
上記構成において、前記凹凸構造層を支持する基材と、前記基材に対して前記凹凸構造層と反対側に位置し、前記所定の波長域の光の吸収性を有する吸収層と、を備えてもよい。
上記構成によれば、特定の波長域の光の吸収機能に特化した層を設けることにより光学デバイスにおける光の遮蔽機能が実現される。そのため、光学デバイスが有する各層の材料や膜厚を、その機能により適するように選定することが可能である。
【0015】
上記構成において、前記低屈折率層は、前記高屈折率層の表面の凹凸に追従した表面形状を有してもよい。
上記構成によれば、低屈折率層の厚さおよび屈折率の調整により、導波モード共鳴現象により強められた反射光とは異なる波長域の光を打ち消して、こうした光が上記反射光とともに射出されることを抑えることができる。
【0016】
上記構成において、前記第1格子高屈折率部の厚さをT1、前記第2格子高屈折率部の厚さをT2、前記高屈折率層の材料の屈折率をn1、前記凹凸構造層の材料の屈折率をn2、前記低屈折率層の材料の屈折率をn3、前記第1格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第1格子高屈折率部が占める面積比率をR1、前記第2格子高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該第2格子高屈折率部が占める面積比率をR2、とするとき、n1>n2、n1>n3、かつ、R1+R2>1であって、T1×{n1×R1+n2×(1-R1)}で表される第1パラメータに対する、T2×{n1×R2+n3×(1-R2)}で表される第2パラメータの比が、0.5以上2.0以下であってもよい。
【0017】
上記構成によれば、第1格子高屈折率部を含む格子領域と、第2格子高屈折率部を含む格子領域とにおいて、導波モード共鳴現象によって共鳴を起こす光の波長域が近くなる。したがって、2つの格子領域の各々で強められた近しい波長域の光が反射光として得られるため、反射光の波長選択性がより高められる。
【0018】
上記構成において、前記高屈折率層は、前記第1格子高屈折率部と前記第2格子高屈折率部との間で前記凹凸要素の側面に沿って延びる中間高屈折率部を含み、前記中間高屈折率部を含みその厚さ方向と直交する断面にて当該中間高屈折率部が占める面積比率をR3とするとき、R3≦R1+R2-1が満たされてもよい。
【0019】
上記構成によれば、中間高屈折率部の幅が小さく抑えられるため、2つの格子領域の間の領域の平均屈折率が過度に大きくなることが抑えられる。したがって、格子領域とその隣接領域との平均屈折率の差が良好に確保されるため、導波モード共鳴現象によって得られる各格子領域からの反射光の強度が良好になる。
【0020】
上記構成において、前記凹凸構造層、前記高屈折率層、および、前記低屈折率層を有する部分が共鳴構造部であり、前記光学デバイスは、前記共鳴構造部の厚さ方向に沿って並ぶ複数の前記共鳴構造部と、互いに隣り合う前記共鳴構造部の間を埋める層であって、前記高屈折率層よりも屈折率が低い材料から構成され、かつ、前記所定の波長域の光の吸収性を有する埋込層と、を備えてもよい。
上記構成によれば、2以上の共鳴構造部を有する光学デバイスにおいて、その構成層を増加させずとも、光の遮蔽機能の実現が可能である。
【0021】
上記課題を解決する光学デバイスの製造方法は、所定の波長域の光を吸収する材料からなる層を形成する工程を含む光学デバイスの製造方法であって、サブ波長周期で並ぶ複数の凸部または凹部である凹凸要素を表面に有し、第1低屈折率材料から構成される凹凸構造層を形成する第1工程と、前記第1低屈折率材料よりも高い屈折率を有する高屈折率材料を用いて、前記凹凸構造層の表面に沿って、当該凹凸構造層が有する凹凸構造の底部に位置してサブ波長格子を構成する第1格子高屈折率部と、前記凹凸構造の頂部に位置してサブ波長格子を構成する第2格子高屈折率部とを含む高屈折率層を形成する第2工程と、前記高屈折率材料よりも低い屈折率を有する第2低屈折率材料を用いて、前記高屈折率層上に低屈折率層を形成する第3工程と、を含む。
【0022】
上記製法によれば、導波モード共鳴現象による選択的な光の反射および透過機能と、所定の波長域の光の遮蔽機能とを有する光学デバイスが製造される。そして、格子領域に接する層を導波層として利用する形態と比較して、格子領域に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、導波モード共鳴による反射光の波長選択性の高い光学デバイスを製造することができる。したがって、こうした光学デバイスを容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、光学デバイスにおいて、光の遮蔽機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】光学デバイスの第1実施形態について、(a)は、光学デバイスの断面構造を示す図、(b)は、第1格子領域の断面構造を示す図、(c)は、中間領域の断面構造を示す図、(d)は、第2格子領域の断面構造を示す図。
図2】第1実施形態の光学デバイスの製造方法について、凹凸構造層の形成工程を示す図。
図3】第1実施形態の光学デバイスの製造方法について、高屈折率層の形成工程を示す図。
図4】第1実施形態の光学デバイスの製造方法について、低屈折率層の形成工程を示す図。
図5】第1実施形態の光学デバイスにおける変形例の断面構造を示す図。
図6】第1実施形態の光学デバイスにおける変形例の断面構造を示す図。
図7】第1実施形態の光学デバイスが適用されたフィルタを備える表示装置の平面構造を示す図。
図8】第1実施形態の光学デバイスが適用されたフィルタを備える表示装置の作用を示す図。
図9】光学デバイスの第2実施形態について、光学デバイスの断面構造の一例を示す図。
図10】光学デバイスの第2実施形態について、光学デバイスの断面構造の一例を示す図。
図11】第2実施形態の光学デバイスの製造方法について、凹凸構造体が向かい合わされた状態を示す図。
図12】第2実施形態の光学デバイスの製造方法について、埋込層の形成工程を示す図。
図13】光学デバイスの第3実施形態について、光学デバイスの断面構造の一部を示す図。
図14】光学デバイスの第4実施形態について、(a)は、光学デバイスの断面構造を示す図、(b)は、第1格子領域の断面構造を示す図、(c)は、中間領域の断面構造を示す図、(d)は、第2格子領域の断面構造を示す図。
図15】第1実施形態の光学デバイスにおける変形例の断面構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1実施形態)
図1図8を参照して、光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法の第1実施形態を説明する。本実施形態においては、一例として、紫外領域の光の遮蔽機能を有する光学デバイスの構成を説明する。以下において、可視領域の光の波長は、400nm以上800nm以下とし、紫外領域の光の波長は、300nm以上400nm未満とする。
【0026】
[光学デバイスの全体構成]
図1(a)が示すように、光学デバイス10は、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16、および、頂部領域17を備えている。これらの各領域は、層状に広がっており、基材11に近い位置から、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16、および、頂部領域17がこの順に並んでいる。各領域の並ぶ方向が第1方向であり、第1方向は、すなわち、各領域および光学デバイス10の厚さ方向である。また、基材11に対して頂部領域17の位置する側が光学デバイス10の表面側であり、頂部領域17に対して基材11の位置する側が、光学デバイス10の裏面側である。図1(b)は、第1格子領域13における第1方向と直交する断面を示し、図1(c)は、中間領域14における第1方向と直交する断面を示し、図1(d)は、第2格子領域15における第1方向と直交する断面を示す。
【0027】
基材11は板状を有し、基材11が有する面のうち、光学デバイス10の表面側に位置する面が基材11の表面である。基材11は、光学デバイス10において取り出したい波長域に吸収波長を有さない材料から構成される。例えば、可視領域の光を透過光として取り出す場合、基材11としては、合成石英基板や、ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレート等の樹脂からなるフィルムのように、可視領域の光に対して透明な基材が用いられる。
【0028】
第1低屈折率領域12は、基材11の表面に接し、基材11の表面に沿って一様に広がっている。第1格子領域13は、第1格子高屈折率部13aと第1格子低屈折率部13bとを有する。基材11の表面と対向する位置から見て、すなわち、第1方向に沿った方向から見て、第1格子高屈折率部13aと第1格子低屈折率部13bとは、共通の方向である第2方向に沿って帯状に延び、第2方向と直交する第3方向に沿って交互に並んでいる。第2方向と第3方向との各々は、第1方向に直交する。
【0029】
中間領域14は、中間高屈折率部14aと第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとを有する。これらの各部は、第1方向に沿った方向から見て、第2方向に沿って延び、第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとは、その間に中間高屈折率部14aを挟みつつ、第3方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、第3方向に沿って、第1中間低屈折率部14b、中間高屈折率部14a、第2中間低屈折率部14c、中間高屈折率部14aが、この順に繰り返し並んでいる。第1中間低屈折率部14bは、第1格子低屈折率部13b上に位置する。中間高屈折率部14aは、第1格子高屈折率部13aの幅方向における端部上に位置し、第2中間低屈折率部14cは、第1格子高屈折率部13aの幅方向における中央部上に位置する。
【0030】
第2格子領域15は、第2格子高屈折率部15aと第2格子低屈折率部15bとを有する。第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aと第2格子低屈折率部15bとは、第2方向に沿って帯状に延び、第3方向に沿って交互に並んでいる。すなわち、2つの格子領域13,15において、高屈折率部および低屈折率部の配列方向は一致している。第2格子高屈折率部15aは、第1中間低屈折率部14b上および中間高屈折率部14a上に位置し、第2格子低屈折率部15bは、第2中間低屈折率部14c上に位置する。
【0031】
第2低屈折率領域16は、第2格子領域15に対して中間領域14とは反対側で第2格子領域15に沿って一様に広がっている。頂部領域17は、第1頂部低屈折率部17aと第2頂部低屈折率部17bとを有する。第1方向に沿った方向から見て、第1頂部低屈折率部17aと第2頂部低屈折率部17bとは、第2方向に沿って帯状に延び、第3方向に沿って交互に並んでいる。第1頂部低屈折率部17aは、第2低屈折率領域16を挟んで第2格子高屈折率部15a上に位置し、第2頂部低屈折率部17bは、第2低屈折率領域16を挟んで第2格子低屈折率部15b上に位置する。
【0032】
光学デバイス10を構成する上記の各領域において、第1方向に沿って互いに隣接する領域は、その一部において互いに連続している。具体的には、第1低屈折率領域12と第1格子低屈折率部13bとは互いに連続し、さらに、第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。また、第1格子高屈折率部13aと中間高屈折率部14aとは互いに連続し、さらに、中間高屈折率部14aと第2格子高屈折率部15aとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。また、第2中間低屈折率部14cと第2格子低屈折率部15bとは互いに連続し、第2格子低屈折率部15bと第2低屈折率領域16とは互いに連続し、さらに、第2低屈折率領域16と第1頂部低屈折率部17aとは互いに連続しており、これらは互いに同一の材料から構成される。また、第2頂部低屈折率部17bは空気で充填されている。
【0033】
すなわち、光学デバイス10は、基材11と、基材11上に位置し、複数の凸部21aが構成する凹凸構造を表面に有する凹凸構造層21と、凹凸構造層21の表面に沿って配置された高屈折率層22と、高屈折率層22の表面に沿って配置された低屈折率層23とを備える構造体であるとも捉えられる。複数の凸部21aは、第2方向に沿って延び、第3方向に沿って並ぶ。高屈折率層22は、凹凸構造層21の凹凸に追従した表面形状を有し、低屈折率層23は、高屈折率層22の凹凸に追従した表面形状を有する。
【0034】
凹凸構造層21は、第1低屈折率領域12と第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとから構成され、凸部21aは、第1格子低屈折率部13bと第1中間低屈折率部14bとから構成される。
【0035】
高屈折率層22は、第1格子高屈折率部13aと中間高屈折率部14aと第2格子高屈折率部15aとから構成される。第1格子高屈折率部13aは、複数の凸部21aの間、すなわち、凹凸構造層21が有する凹凸構造の底部に位置する。中間高屈折率部14aは、凸部21aの側面に接し、第1方向に沿った方向から見て互いに隣り合う第1格子高屈折率部13aと第2格子高屈折率部15aとの端部間を繋ぐように、中間領域14の厚さ方向に延びている。第2格子高屈折率部15aは、凸部21aの頂面を覆い、すなわち、凹凸構造層21が有する凹凸構造の頂部に位置する。
【0036】
低屈折率層23は、第2中間低屈折率部14cと第2格子低屈折率部15bと第2低屈折率領域16と第1頂部低屈折率部17aとから構成される。低屈折率層23は、第2低屈折率領域16から基材11に向けて第2中間低屈折率部14cおよび第2格子低屈折率部15bが突出し、第2低屈折率領域16から基材11とは反対側に向けて第1頂部低屈折率部17aが突出した形状を有する。低屈折率層23の表面は凹凸を有し、その凹部に第2頂部低屈折率部17bが対応する。
【0037】
高屈折率層22の材料の屈折率は、空気の屈折率よりも大きく、かつ、凹凸構造層21および低屈折率層23の各々の材料の屈折率よりも大きい。すなわち、第1格子高屈折率部13a、中間高屈折率部14a、第2格子高屈折率部15aの各々の屈折率は、第1低屈折率領域12、第1格子低屈折率部13b、第1中間低屈折率部14b、第2中間低屈折率部14c、第2格子低屈折率部15b、第2低屈折率領域16、第1頂部低屈折率部17a、第2頂部低屈折率部17bの各々の屈折率よりも大きい。
【0038】
凹凸構造層21を構成する材料、および、低屈折率層23を構成する材料の屈折率は、空気の屈折率よりも大きい。導波モード共鳴現象を好適に生じさせるためには、凹凸構造層21を構成する材料、および、低屈折率層23を構成する材料の各々と、高屈折率層22を構成する材料との屈折率差が大きいことが好ましく、凹凸構造層21を構成する材料と低屈折率層23を構成する材料との屈折率差よりも、これらの各材料と高屈折率層22を構成する材料との屈折率差の方が大きいことが好ましい。また、空気層と隣接する低屈折率層23を構成する材料の屈折率は、凹凸構造層21を構成する材料の屈折率以下であることが好ましい。
【0039】
凹凸構造層21、高屈折率層22、および、低屈折率層23の各々は、光学デバイス10において取り出したい波長域に吸収波長を有さない材料から構成される。例えば、可視領域の光を透過光として取り出す場合、凹凸構造層21、高屈折率層22、および、低屈折率層23の各々は、可視領域の光に対して透明な材料から構成される。さらに、低屈折率層23は、紫外領域に吸収波長を有する材料、すなわち、紫外光を吸収する材料から構成される。
【0040】
具体的には、凹凸構造層21を構成する低屈折率材料としては、合成石英等の無機物や、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂材料を用いることができる。また、低屈折率層23を構成する低屈折率材料としては、エポキシ樹脂や酸化亜鉛等を用いることができる。また、高屈折率層22を構成する高屈折率材料としては、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、酸化インジウムスズ、窒化アルミニウム等の無機化合物材料を用いることができる。
【0041】
[光学デバイスの作用]
第1格子領域13における格子構造の周期、すなわち、第1格子高屈折率部13aの配列の周期が、第1周期P1であり、第1周期P1は、光学デバイス10に対する入射光の波長よりも小さい。同様に、第2格子領域15における格子構造の周期、すなわち、第2格子高屈折率部15aの配列の周期が、第2周期P2であり、第2周期P2は、光学デバイス10に対する入射光の波長よりも小さい。すなわち、第1周期P1および第2周期P2はサブ波長周期であり、第1格子領域13および第2格子領域15の各々はサブ波長格子を含む。なお、本実施形態の光学デバイス10が対象とする入射光の波長域は、紫外領域および可視領域を含む領域であり、すなわち、300nm以上800nm以下である。
【0042】
光学デバイス10において、領域ごとの平均屈折率は、各領域における高屈折率部と低屈折率部との体積比率に応じて、高屈折率部の屈折率と低屈折率部の屈折率とを均した値に近似される。第1格子領域13における第1格子高屈折率部13aの割合、および、第2格子領域15における第2格子高屈折率部15aの割合の各々よりも、中間領域14における中間高屈折率部14aの割合は小さい。したがって、中間領域14の平均屈折率は、第1格子領域13の平均屈折率、および、第2格子領域15の平均屈折率の各々よりも小さい。すなわち、光学デバイス10は、第1格子領域13および第2格子領域15の各々に位置するサブ波長格子が、低屈折率の領域に埋め込まれた構造を有している。
【0043】
上記光学デバイス10の表面側から光学デバイス10に光が入射すると、第2格子領域15のサブ波長格子が低屈折率の領域に埋め込まれていることから、第2格子領域15では、表面側への回折光の射出が抑えられ、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第2格子領域15を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、光学デバイス10の表面側に反射光として射出される。
【0044】
第2格子領域15を透過し、さらに中間領域14を透過した光は、第1格子領域13に入る。第1格子領域13に光が入射すると、第1格子領域13のサブ波長格子が低屈折率の領域に埋め込まれていることから、第1格子領域13でも、導波モード共鳴現象が発生する。すなわち、特定の波長域の光が第1格子領域13を多重反射しつつ伝播して共鳴を起こし、この特定の波長域の光が、光学デバイス10の表面側に反射光として射出される。
【0045】
第1格子領域13を透過した光は、第1低屈折率領域12および基材11を透過して、光学デバイス10の裏面側に出る。
また、入射光に紫外領域の光が含まれる場合、紫外領域の光は、低屈折率層23に吸収される。すなわち、紫外領域の光は、頂部領域17、第2低屈折率領域16、第2格子領域15、および、中間領域14の各々を通る際に、各領域に吸収される。
【0046】
結果として、光学デバイス10の表面側には、第2格子領域15で強められた波長域の光と、第1格子領域13で強められた波長域の光とが射出される。そして、光学デバイス10を構成する各領域を透過した光が、透過光として光学デバイス10の裏面側に射出される。
【0047】
低屈折率層23が紫外領域の光の吸収性を有することにより、光学デバイス10の入射光に紫外領域の光が含まれる場合であっても、光学デバイス10の透過光に紫外領域の光が含まれることを抑えることができる。すなわち、光学デバイス10の透過光においては、可視領域の光が支配的になる。なお、光学デバイス10の反射光には、紫外領域の光が含まれてもよい。例えば、第1格子領域13や第2格子領域15で強められる波長域は紫外領域の波長域であってもよいし、各領域間の界面で反射される光に紫外領域の光が含まれてもよい。
【0048】
各格子領域13,15で強められる波長域は、各格子領域13,15のサブ波長格子の周期、各格子領域13,15の厚さT1,T2、凹凸構造層21、高屈折率層22、および、低屈折率層23の各層の材料によって調整可能である。
【0049】
なお、上述のように、光学デバイス10の表面側には、各格子領域13,15で強められた波長域の光に加えて、光学デバイス10を構成する各領域での反射や干渉に起因した光が射出され得る。そして、こうした光には、各格子領域13,15で強められた波長域とは異なる波長域が含まれる。そのため、光学デバイス10の表面側に射出される上記異なる波長域の光の強度が大きいと、光学デバイス10の表面側に取り出される反射光の波長選択性が低くなる。
【0050】
光学デバイス10の用途に応じて、反射光の波長選択性が高いことが望まれる場合には、頂部領域17は、各格子領域13,15で強められた波長域とは異なる波長域の光が、光学デバイス10の表面側に射出されることを抑える機能を有することが好ましい。言い換えれば、頂部領域17は、上記異なる波長域の光を打ち消すように構成されていることが好ましい。具体的には、頂部領域17は、上記異なる波長域の光を干渉によって弱めることや、裏面側に反射することによって、表面側に射出される上記異なる波長域の光の強度を低くする。頂部領域17によって打ち消される光の波長域は、頂部領域17の厚さおよび平均屈折率によって調整可能であり、言い換えれば、低屈折率層23の厚さおよび材料によって調整できる。すなわち、各格子領域13,15で強められた波長域以外の光が頂部領域17から表面側に射出されることを抑えられるように、低屈折率層23の厚さおよび材料が選択される。
【0051】
また、光学デバイス10の最表面である低屈折率層23の表面が凹凸を有しているため、光学デバイス10の最表面が平坦である形態と比較して、光学デバイス10の表面反射を抑えることができる。これによっても、光学デバイス10の表面側に、各格子領域13,15で強められた波長域の光とは異なる波長域の光が射出されることが抑えられるため、光学デバイス10の表面側に取り出される光の波長選択性が高められる。
【0052】
サブ波長格子が、1つの方向に帯状に延びる格子高屈折率部13a,15aから構成されている場合、各格子領域13,15では、サブ波長格子の配列方向に依存する特定の方向へ偏光した光が多重反射して共鳴を起こし、反射光として射出される。したがって、第1実施形態の光学デバイス10によれば、偏光の揃った入射光に対して効率的に反射光を取り出すことができる。
【0053】
なお、光学デバイス10の用途に応じて、反射光の波長選択性が重視されない場合には、頂部領域17は、各格子領域13,15で強められた波長域とは異なる波長域の光を打ち消す機能を有していなくてもよい。
また、光学デバイス10の裏面側から光学デバイス10に光が入射するように、光学デバイス10が用いられてもよい。この場合も、光学デバイス10の裏面側には、反射光として、各格子領域13,15で強められた波長域の光が射出される。そして、光学デバイス10を構成する各領域を透過した光が、透過光として光学デバイス10の表面側に射出される。格子領域13,15で強められた反射光として紫外領域の光を得たい場合には、裏面側から光を入射させた方が、低屈折率層23で吸収される前に格子領域13,15に入る紫外領域の光の量が多くなるため、共鳴に供される光を増大させることができる。低屈折率層23にて入射光に含まれる紫外領域の光のすべてを吸収させることは困難であり、また、格子領域13,15にて入射光に含まれる紫外領域の光のすべてを共鳴させて反射させることも困難であるため、低屈折率層23による紫外領域の光の吸収と、格子領域13,15での共鳴による紫外領域の光の吸収との双方が行われることによって、光学デバイス10の透過光に紫外領域の光が含まれることがより的確に抑えられる。すなわち、光学デバイス10における紫外光の遮蔽機能が高められる。
【0054】
[光学デバイスの詳細構成]
上述の光学デバイス10において、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とは、反射光あるいは透過光として取り出したい光の波長域に応じて設定されればよい。
【0055】
例えば、より狭域で高い強度の反射光を得たい場合、すなわち、反射光の波長選択性をより高めたい場合には、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とが近いほど好ましい。第2格子領域15で特定の波長域の光が共鳴を起こしたとき、第2格子領域15と中間領域14との屈折率の差が小さい場合等には、上記特定の波長域の光の一部が、第2格子領域15内での反射ごとに、中間領域14に漏れ出る。こうした場合にも、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域が一致していれば、中間領域14に漏れ出た上記特定の波長域の光が第1格子領域13に入って共鳴を起こし、反射光として射出される。したがって、光学デバイス10から射出される反射光の波長選択性が高められる。
【0056】
一方、反射光の波長選択性よりも光学デバイス10における紫外光の吸収性を重視する場合には、第2格子領域15での多重反射における損失の低減や共鳴する波長域の調整よりも、低屈折率層23における紫外光の吸収性を優先して、低屈折率層23の材料や厚さを決定してもよい。この場合、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とは離れていてもよい。
【0057】
以下、反射光の波長選択性を高める場合の好ましい構成について説明する。反射光の波長選択性を高めるため、すなわち、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域を一致させるためには、第1格子領域13と第2格子領域15とにおいて、平均屈折率と膜厚とを乗じた値として表されるパラメータである光学膜厚を一致させればよい。つまり、第1格子領域13と第2格子領域15とにおいて、光学膜厚が近いほど、共鳴を起こす光の波長域が近くなり、波長選択性が高められる。本願の発明者は、シミュレーションによって、反射光についての良好な波長選択性を得られる第1格子領域13と第2格子領域15との光学膜厚の比の範囲を見出した。以下、詳細に説明する。
【0058】
第1格子領域13の全体に対する第1格子高屈折率部13aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第1格子領域13の全体に対する第1格子高屈折率部13aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第1格子高屈折率部13aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第1格子高屈折率部13aが占める面積比率である。断面の位置によって第1格子高屈折率部13aの面積が変化する場合には、第1格子高屈折率部13aの面積が最大となる断面での第1格子高屈折率部13aの面積比率が採用される。
【0059】
第1格子高屈折率部13aの上記面積比率をR1とするとき、上記断面における第1格子低屈折率部13bの面積比率は1-R1で表される。
高屈折率層22の材料の屈折率をn1、凹凸構造層21の材料の屈折率をn2とするとき(n1>n2)、第1格子領域13の平均屈折率NA1は、下記式(1)によって表される。
NA1=n1×R1+n2×(1-R1) ・・・(1)
【0060】
そして、第1格子領域13の光学膜厚OT1は、第1格子領域13の平均屈折率NA1および厚さT1を用いて、下記式(2)によって表される。
OT1=T1×NA1
=T1×{n1×R1+n2×(1-R1)} ・・・(2)
【0061】
第2格子領域15において、格子構造の周期である第2周期P2は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。ただし、第1方向に沿った方向から見て、第2格子領域15における第2格子高屈折率部15aの幅は、第1格子領域13における第1格子低屈折率部13bの幅よりも大きい。そして、第2格子低屈折率部15bの幅は、第1格子高屈折率部13aの幅よりも小さい。
【0062】
第2格子領域15の全体に対する第2格子高屈折率部15aの体積比率は、第1方向に沿った方向から見た平面視での第2格子領域15の全体に対する第2格子高屈折率部15aの面積比率に等しい。当該面積比率は、言い換えれば、第2格子高屈折率部15aを含みその厚さ方向と直交する断面にて第2格子高屈折率部15aが占める面積比率である。断面の位置によって第2格子高屈折率部15aの面積が変化する場合には、第2格子高屈折率部15aの面積が最大となる断面での第2格子高屈折率部15aの面積比率が採用される。
【0063】
第2格子高屈折率部15aの上記面積比率をR2とするとき、上記断面における第2格子低屈折率部15bの面積比率は1-R2で表される。
高屈折率層22の材料の屈折率をn1、低屈折率層23の材料の屈折率をn3とするとき(n1>n3)、第2格子領域15の平均屈折率NA2は、下記式(3)によって表される。
NA2=n1×R2+n3×(1-R2) ・・・(3)
【0064】
そして、第2格子領域15の光学膜厚OT2は、第2格子領域15の平均屈折率NA2および厚さT2を用いて、下記式(4)によって表される。
OT2=T2×NA2
=T2×{n1×R2+n3×(1-R2)} ・・・(4)
【0065】
第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比(OT2/OT1)が1に近いほど、第1格子領域13と第2格子領域15とのそれぞれにおいて共鳴を起こす光の波長域が近くなる。一方で、上記比が1から離れるにつれ、第1格子領域13と第2格子領域15とで共鳴を起こす光の波長域が異なるようになる。本願の発明者によって、高い波長選択性を得るためには、OT2/OT1の値は0.5以上2.0以下であることが好ましく、より高い波長選択性を得るためには、OT2/OT1の値は0.625以上1.6以下であることが好ましいことが確認された。
【0066】
OT2/OT1の値が1.0、すなわち、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致すると、第1格子領域13で共鳴を起こす光の波長域と、第2格子領域15で共鳴を起こす光の波長域とが一致し、波長選択性が特に高められる。したがって、光学膜厚OT1と光学膜厚OT2とが一致するように、各層の材料が選択されるとともに、厚さT1,T2、および、凹凸構造層21における凸部21aの幅が設定されていることが好ましい。凹凸構造層21の材料と低屈折率層23の材料との屈折率差が小さいほど、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比を1.0に近づけることが容易である。
【0067】
例えば、第1格子高屈折率部13aの面積比率R1と第2格子高屈折率部15aの面積比率R2とを近づけるために、第1格子領域13にて第1格子低屈折率部13bの面積比率が第1格子高屈折率部13aの面積比率よりも小さくなり、第2格子領域15にて第2格子高屈折率部15aの面積比率が第2格子低屈折率部15bの面積比率よりも大きくなるように、凸部21aの幅を設定してもよい。この場合、第1格子高屈折率部13aの面積比率R1と第2格子高屈折率部15aの面積比率R2との各々は、0.5よりも大きく、R1+R2は1よりも大きくなる。
【0068】
面積比率R1,R2が0.5よりも大きいことにより、面積比率R1,R2が0.5以下である形態と比較して、格子領域13,15の平均屈折率が高くなるため、各格子領域13,15と、隣接する領域12,14,16との平均屈折率の差が大きくなる。その結果、各格子領域13,15にて生じる多重反射での損失が小さくなるため、格子領域13,15から射出される反射光の強度が高められる。
【0069】
中間領域14における第1中間低屈折率部14bの配列の周期である第3周期P3は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。第1方向に沿った方向から見て、第1中間低屈折率部14bの幅は、第1格子低屈折率部13bの幅と一致する。
【0070】
第1方向に沿った方向から見た平面視での中間領域14の全体に対する中間高屈折率部14aの面積比率は、第2格子高屈折率部15aの上記面積比率と第1格子低屈折率部13bの上記面積比率との差以下であることが好ましい。すなわち、上記中間高屈折率部14aの面積比率をR3とするとき、R3は、下記式(5)を満たすことが好ましい。なお、当該面積比率は、言い換えれば、中間高屈折率部14aを含みその厚さ方向と直交する断面にて中間高屈折率部14aが占める面積比率である。断面の位置によって中間高屈折率部14aの面積が変化する場合には、中間高屈折率部14aの面積が最大となる断面での中間高屈折率部14aの面積比率が採用される。
R3≦R2-(1-R1)=R1+R2-1 ・・・(5)
【0071】
第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aが位置する領域が、第1中間低屈折率部14bおよび中間高屈折率部14aが位置する領域と一致するとき、中間高屈折率部14aの上記面積比率R3は、右辺と一致し、R1+R2-1となる。そして、第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aが位置する領域が、第1中間低屈折率部14bおよび中間高屈折率部14aが位置する領域よりも大きいとき、言い換えれば、中間高屈折率部14aが第2格子高屈折率部15aの外縁よりも内側の領域に位置するとき、上記面積比率R3は、R1+R2-1よりも小さくなる。
【0072】
上述のように、導波モード共鳴現象によって格子領域13,15から射出される反射光の強度を高めるためには、各格子領域13,15について、格子領域13,15の平均屈折率と、格子領域13,15を挟む領域12,14,16の平均屈折率との差が大きいことが望ましい。したがって、中間領域14の平均屈折率は小さいほど好ましく、すなわち、中間高屈折率部14aの面積比率が小さいほど好ましい。上記式(5)が満たされている構成であれば、中間高屈折率部14aの幅が、第2格子高屈折率部15aよりも外側まで広がらない程度に抑えられるため、中間高屈折率部14aの面積比率が大きくなりすぎない。したがって、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0073】
上記反射光の強度を高めるためには、第1格子領域13の平均屈折率と、第1低屈折率領域12および中間領域14の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。同様に、第2格子領域15の平均屈折率と、中間領域14および第2低屈折率領域16の各々の平均屈折率との差は、いずれも0.1よりも大きいことが好ましい。
【0074】
なお、頂部領域17における第1頂部低屈折率部17aの配列の周期も、第1格子領域13における第1周期P1と一致する。
【0075】
[光学デバイスの製造方法]
図2図4を参照して、光学デバイス10の製造方法について説明する。
図2が示すように、まず、基材11の表面に、低屈折率材料からなる層を形成し、この層の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。凹凸構造層21は、基材11に沿って広がる平坦部21cと、平坦部21cから突き出た複数の凸部21aとを有するとともに、凸部21a間に位置する部分である複数の凹部21bを有する。凸部21aおよび凹部21bは、第2方向に沿って帯状に延びる。
【0076】
凹凸構造の形成には、ナノインプリント法やドライエッチング法等の公知の微細加工技術が用いられる。なかでも、ナノインプリント法は、微細な凸部21aおよび凹部21bを簡便に形成できるため好ましい。
【0077】
例えば、低屈折率材料として紫外線硬化性樹脂を用い、光ナノインプリント法によって凹凸構造層21を形成する場合、まず、基材11の表面に、紫外線硬化性樹脂を塗工する。次いで、紫外線硬化性樹脂からなる塗工層の表面に、形成対象の凸部21aおよび凹部21bからなる凹凸の反転された凹凸を有する凹版である合成石英モールドを押し当て、塗工層および凹版に紫外線を照射する。続いて、硬化した紫外線硬化性樹脂から凹版を離型する。これによって、凹版の有する凹凸が紫外線硬化性樹脂に転写されて凸部21aおよび凹部21bが形成されるとともに、凸部21aおよび凹部21bと基材11との間には、紫外線硬化性樹脂からなる残膜として、平坦部21cが形成される。
【0078】
次に、図3が示すように、凹凸構造層21の表面に、高屈折率材料からなる高屈折率層22を形成する。高屈折率層22の形成方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法等の公知の成膜技術が用いられる。高屈折率層22の厚さは、凸部21aの高さよりも小さく、所望の厚さT1および厚さT2に応じて設定される。高屈折率層22の厚さは、例えば、10nm以上500nm以下である。
【0079】
真空蒸着法やスパッタリング法を含む物理気相成長法を用いて高屈折率層22を形成する場合、凹凸構造層21の凸部21a上には、凸部21aよりも広がるように膜が形成される。すなわち、第2格子高屈折率部15aの幅が、凸部21aである第1格子低屈折率部13bおよび第1中間低屈折率部14bの幅よりも大きく形成される。したがって、物理気相成長法が採用される場合に、凹凸構造層21の表面における凸部21aと凹部21bとの面積比率を1対1に設定したとしても、第1格子高屈折率部13aと第2格子高屈折率部15aとの面積比率にはずれが生じてしまう。
【0080】
また、成膜中に第2格子高屈折率部15aの幅が拡大していくと、凹部21b上に蒸着材料の粒子が付着し難くなるため、第1格子高屈折率部13aの厚さT1と第2格子高屈折率部15aの厚さT2とにずれが生じる場合がある。
【0081】
光学デバイス10の反射光の波長選択性を高めたい場合には、こうした第2格子高屈折率部15aの幅の拡大に起因した面積比率や厚さのずれを補填しつつ、上記光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下となるように、凸部21aの幅、すなわち、凸部21aと凹部21bとの面積比率を設定することが望ましい。
【0082】
また、物理気相成長法を用いて高屈折率層22を形成する場合、凹凸構造層21の凸部21aの側面にも高屈折率材料が付着する場合が多く、中間高屈折率部14aの形成は避け難い。そこで、上述のように、上記式(5)が満たされるように、中間高屈折率部14aの幅を制御することで、中間高屈折率部14aが形成される製造方法を採用しながらも、各格子領域13,15からの反射光の強度を良好に得ることができる。
【0083】
中間高屈折率部14aの幅は、成膜方法や成膜の条件によって制御することが可能である。例えば、真空蒸着法とスパッタリング法とでは、粒子の飛来方向についての角度依存性が異なるため、いずれの方法を用いるかによって、中間高屈折率部14aの幅を変えることができる。また、高屈折率層22の形成後にエッチングを行うことによって、中間高屈折率部14aの幅を縮小させてもよい。
【0084】
次に、図4が示すように、高屈折率層22の表面に、低屈折率材料からなる低屈折率層23を形成する。低屈折率層23の形成方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法等の公知の成膜技術が用いられる。低屈折率層23の厚さは、例えば、10nm以上500nm以下である。
【0085】
本実施形態においては、格子領域に接する層を導波モード共鳴における導波層として用いる形態と比較して、格子領域に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、具体的には、ナノインプリント法を用いて光学デバイス10を形成する場合には、残膜の膜厚の精密な制御を要さずに、光学デバイス10を製造することができる。したがって、光学デバイス10の製造が容易である。
【0086】
また、光学デバイス10は、光ナノインプリント法と真空蒸着法等とを組み合わせた製造方法によって形成可能であるため、ロール・トゥ・ロール法による製造に適している。したがって、光学デバイス10の構成は、大量生産にも適している。
【0087】
なお、上述の製造方法において、紫外線硬化性樹脂に代えて熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いて、ナノインプリント法により凹凸構造層21を形成してもよい。熱硬化性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を加熱に変更すればよく、熱可塑性樹脂を用いる場合、紫外線の照射を、加熱および冷却に変更すればよい。
【0088】
[変形例]
上記実施形態の光学デバイス10は以下のように変更してもよい。
図5が示すように、光学デバイス10は、基材11を備えていなくてもよい。この場合、低屈折率材料からなる板状体の表面に凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。例えば、熱可塑性樹脂からなるシートを用いて、当該シートの表面に凹凸構造を形成してもよいし、合成石英からなる基板を用いて、当該基板の表面に凹凸構造を形成してもよい。合成石英基板に対する凹凸構造の形成には、ドライエッチング法等の公知の技術が用いられればよい。
【0089】
また、図6が示すように、基材11の表面に凸部21aが直接に形成されていてもよい。すなわち、凹凸構造層21は、凸部21aに連続する平坦部21cを有さなくてもよい。この場合、凸部21aと基材11とが凹凸構造層21を構成し、基材11のなかで凸部21aに接する領域が、第1低屈折率領域12として機能する。こうした凹凸構造層21は、例えば、フォトリソグラフィの利用によって形成できる。
【0090】
また、低屈折率層23は、各種の塗布法を用いて形成されてもよい。塗布法によって低屈折率層23を形成する場合には、低屈折率層23の材料としてソーダガラスを用いてもよい。ただし、低屈折率層23を高屈折率層22に追従した形状に形成するため、言い換えれば、低屈折率層23の表面に好適に凹凸を形成するためには、低屈折率層23は物理気相成長法によって形成されることが好ましい。低屈折率層23が凹凸を有していることで、頂部領域17における平均屈折率を調整して頂部領域17が打ち消す波長を調整することや、光学デバイス10の表面反射を抑えることが可能となる。
【0091】
なお、上記の頂部領域17の機能が重視されない場合には、低屈折率層23の表面は平坦であってもよい。この場合、光学デバイス10は、頂部領域17、すなわち、低屈折率層23の表面の凹凸部分に対応する領域を有さず、第2低屈折率領域16の表面が光学デバイス10の最外面となる。
【0092】
[光学デバイスの適用例]
上述した光学デバイス10の具体的な適用例として、光学デバイス10を表示装置に備えられるフィルタとして用いる形態を説明する。
【0093】
図7が示すように、表示装置100は、光源層110と、変換層120と、フィルタ層130とを備えている。光源層110は、複数の発光部111を備えている。発光部111は、紫外線LED(UV-LED)素子を備え、紫外光を射出する。紫外線LED素子は、例えば、数10μmの長さおよび幅を有する大きさに形成されている。
【0094】
変換層120は、複数の副画素領域121を備えている。複数の副画素領域121は、赤色副画素領域121Rと、緑色副画素領域121Gと、青色副画素領域121Bとの三種類の副画素領域121を含む。赤色副画素領域121Rは、紫外光による励起によって赤色光を射出する無機蛍光体を備え、緑色副画素領域121Gは、紫外光による励起によって緑色光を射出する無機蛍光体を備え、青色副画素領域121Bは、紫外光による励起によって青色光を射出する無機蛍光体を備える。本実施形態においては、赤色光は、600nm以上700nm以下の波長域に強度ピークを有する光であり、緑色光は、520nm以上580nm以下の波長域に強度ピークを有する光であり、青色光は、400nm以上500nm以下の波長域に強度ピークを有する光である。
【0095】
図7においては、各副画素領域121R,121G,121Bを1つずつ示しているが、赤色副画素領域121Rと、緑色副画素領域121Gと、青色副画素領域121Bとは、所定の並びで繰り返し配列されている。赤色副画素領域121Rと、緑色副画素領域121Gと、青色副画素領域121Bとを含む単位領域が画素領域である。なお、互いに隣接する副画素領域121は接していてもよいし、互いに隣接する副画素領域121の間にこれらを区画する領域が設けられていてもよい。
【0096】
複数の発光部111は、各副画素領域121R,121G,121Bに対して1つずつ、すなわち、1つの副画素領域121の下方に1つの発光部111が配置されるように配列されている。
【0097】
フィルタ層130は、複数のフィルタ領域131を備えている。フィルタ領域131には、光学デバイス10の構成が適用されている。複数のフィルタ領域131は、赤色フィルタ領域131Rと、緑色フィルタ領域131Gと、青色フィルタ領域131Bとの三種類のフィルタ領域131を含む。赤色フィルタ領域131Rは、赤色光を透過し、緑色フィルタ領域131Gは、緑色光を透過し、青色フィルタ領域131Bは、青色光を透過する。赤色フィルタ領域131Rは、赤色副画素領域121Rの上方に位置し、緑色フィルタ領域131Gは、緑色副画素領域121Gの上方に位置し、青色フィルタ領域131Bは、青色副画素領域121Bの上方に位置する。変換層120に対してフィルタ層130の位置する側が、表示装置100の表面側である。
【0098】
赤色フィルタ領域131Rは、可視領域の光のうち、少なくとも赤色光を透過すればよく、例えば、赤色フィルタ領域131Rは、可視領域の光のすべてを透過し、紫外領域の光を反射してもよいし、あるいは、赤色光を透過し、緑色光および青色光を反射してもよい。同様に、緑色フィルタ領域131Gは、可視領域の光のうち、少なくとも緑色光を透過すればよく、青色フィルタ領域131Bは、可視領域の光のうち、少なくとも青色光を透過すればよい。
【0099】
したがって、赤色フィルタ領域131Rと、緑色フィルタ領域131Gと、青色フィルタ領域131Bとの構造は必ずしも互いに異なっている必要はない。例えば、これらのフィルタ領域131R,131G,131Bは、互いに同一の構造を有し、いずれも、可視領域の光のすべてを透過し、紫外領域の光を反射してもよい。こうした構成によれば、赤色フィルタ領域131Rと緑色フィルタ領域131Gと青色フィルタ領域131Bとの構造が互いに異なる場合と比較して、フィルタ層130の形成が容易である。
【0100】
フィルタ領域131には、例えば、基材11が副画素領域121に向けられるように、光学デバイス10の構成が適用される。各フィルタ領域131R,131G,131Bの構造が互いに同一である場合には、複数のフィルタ領域131を同一の製造工程で一括して形成することができる。また、各フィルタ領域131R,131G,131Bの構造が互いに異なる場合であっても、サブ波長格子の周期のみを変えることによって反射光および透過光の波長域を異ならせる形態であれば、凸部21aの形成時にその周期を変えることによって、複数のフィルタ領域131を同一の製造工程で一括して形成することができる。
【0101】
これらの場合、複数のフィルタ領域131の間で、基材11、第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16、頂部領域17の各々は連続している。すなわち、複数のフィルタ領域131は、共通した1つの基材11と、フィルタ領域131間で相互に連続した凹凸構造層21と、フィルタ領域131間で相互に連続した高屈折率層22と、フィルタ領域131間で相互に連続した低屈折率層23とを有している。サブ波長格子の周期を変える場合、複数のフィルタ領域131における凹凸構造層21は、例えば、ナノインプリント法を利用して、各色のフィルタ領域131に対応する部分で凹凸の周期を変えた合成石英モールドを用いることによって、同時に形成することができる。また、高屈折率層22および低屈折率層23も、各色のフィルタ領域131に対応する部分を同時に形成することができる。したがって、複数のフィルタ領域131Rを容易に形成することができる。
【0102】
図8が示すように、各発光部111は紫外光Ioを射出する。発光部111から射出された紫外光Ioは、発光部111の上方の副画素領域121に入射する。これにより、赤色副画素領域121Rからは赤色光Irが射出され、緑色副画素領域121Gからは緑色光Igが射出され、青色副画素領域121Bからは青色光Ibが射出される。
【0103】
赤色副画素領域121Rから射出された赤色光Irは、赤色副画素領域121Rの上方の赤色フィルタ領域131Rに入る。赤色フィルタ領域131Rは、一部の波長域の光を反射する一方で赤色光を透過するため、赤色フィルタ領域131Rに入った赤色光Irは、赤色フィルタ領域131Rを透過して表示装置100の表面側に射出される。
【0104】
緑色副画素領域121Gから射出された緑色光Igは、緑色副画素領域121Gの上方の緑色フィルタ領域131Gに入る。緑色フィルタ領域131Gは、一部の波長域の光を反射する一方で緑色光を透過するため、緑色フィルタ領域131Gに入った緑色光Igは、緑色フィルタ領域131Gを透過して表示装置100の表面側に射出される。
【0105】
青色副画素領域121Bから射出された青色光Ibは、青色副画素領域121Bの上方の青色フィルタ領域131Bに入る。青色フィルタ領域131Bは、一部の波長域の光を反射する一方で青色光を透過するため、青色フィルタ領域131Bに入った青色光Ibは、青色フィルタ領域131Bを透過して表示装置100の表面側に射出される。
【0106】
表示装置100に入力される画像データに応じて、各副画素領域121に照射される紫外光Ioの強さが制御されることにより、副画素領域121から射出される赤、緑、青の各光の強さが制御され、これによって、画素領域に視認される色が制御される。その結果、画像データに応じた画像が表示装置100に表示される。微小な紫外線LED素子の利用により、表示装置100では、高輝度かつ広視野角で高精細な画像の表示が実現される。
【0107】
ここで、発光部111から照射された紫外光Ioの一部は、副画素領域121を透過する。こうして副画素領域121を透過した紫外光Iuは、フィルタ領域131に入る。フィルタ領域131は、低屈折率層23による紫外光の吸収性を有しているため、紫外光Iuはフィルタ領域131で吸収される。その結果、紫外光が表示装置100の表面側に漏れ出ることが抑えられる。したがって、紫外光が視聴者等の外部に影響を与えることが抑えられる。
【0108】
また、フィルタ領域131が導波モード共鳴現象により紫外領域の光を反射する構成であれば、紫外光が表示装置100の表面側に漏れ出ることがより的確に抑えられる。さらに、こうした構成において、副画素領域121を透過した紫外光の一部は、フィルタ領域131で反射されてフィルタ領域131の下方の副画素領域121に入り、無機蛍光体の励起に寄与する。そのため、発光部111での発光量に対する副画素領域121における有色光の生成効率が高められる。
【0109】
また、赤色フィルタ領域131Rが、可視領域の光のうち赤色光のみを透過し、緑色フィルタ領域131Gが、可視領域の光のうち緑色光のみを透過し、青色フィルタ領域131Bが、可視領域の光のうち青色光のみを透過する構成であると、表示装置100が発する色の鮮明さが高められる。
【0110】
なお、光学デバイス10の用途は、表示装置100に備えられる紫外光の遮蔽のためのフィルタに限られない。紫外光の遮蔽が望まれる用途であれば、光学デバイス10は、光の色の変換や色分解を行う装置に用いられる波長選択フィルタや、偽造防止あるいは装飾のために物品に付される表示体に適用されてもよい。
【0111】
以上、第1実施形態によれば、以下に列挙する効果が得られる。
(1)第1格子領域13と第2格子領域15とにおいて、導波モード共鳴現象が生じることにより、光学デバイス10は、光を選択的に反射および透過する。さらに、低屈折率層23が、紫外領域の光を吸収するため、光学デバイス10は、紫外領域の光の遮蔽機能を有する。したがって、紫外光による蛍光体の励起を利用した表示装置100等、紫外光の漏れの抑制が求められる装置に設けるフィルタとして、光学デバイス10を用いることが可能であり、光学デバイス10の用途の拡大が実現できる。
【0112】
(2)第1格子領域13にて強められる波長域、および、第2格子領域15にて強められる波長域の少なくとも一方に、紫外領域の波長域が含まれる形態であれば、光学デバイス10の透過光に、紫外領域の光が含まれることがさらに抑えられる。すなわち、光学デバイス10における紫外光の遮蔽機能がさらに高められる。
【0113】
(3)頂部領域17が、各格子領域13,15で強められた反射光とは異なる波長域の光を打ち消して、こうした光が上記反射光とともに射出されることを抑える機能を有する。これにより、光学デバイス10の反射光の波長選択性が高められる。
【0114】
(4)第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下であることにより、2つの格子領域13,15の各々で強められた近しい波長域の光が反射光として得られる。それゆえ、光学デバイス10の反射光の波長選択性が高められる。
【0115】
(5)中間領域14における中間高屈折率部14aの面積比率R3について、R3≦R1+R2-1が満たされることにより、中間高屈折率部14aの幅が小さく抑えられるため、中間領域14の平均屈折率が過度に大きくなることが抑えられる。したがって、格子領域13,15とその隣接領域との平均屈折率の差が良好に確保されるため、導波モード共鳴現象によって得られる各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0116】
また、第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aが中間高屈折率部14aの外側まで広がる構成であれば、中間高屈折率部14aの幅が小さく抑えられるため、上記と同様に、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0117】
(6)低屈折率材料からなる凹凸構造層21を形成する工程と、凹凸構造層21の表面に高屈折率層22を形成する工程と、高屈折率層22の表面に低屈折率層23を形成する工程とによって、上記光学デバイス10が形成される。こうした製法によれば、サブ波長格子に接する層の精密な膜厚の制御を要さずに、光学デバイス10の波長選択性が高められるため、光学デバイス10を容易に製造することができる。
【0118】
また、低屈折率材料として樹脂を用い、樹脂からなる塗工層に凹版を押し付けて樹脂の硬化によって凹凸構造層21を形成する製法では、ナノインプリント法を用いて凹凸構造層21の形成が行われるため、微細な凹凸を有する凹凸構造層21を好適に、かつ、簡便に形成することができる。また、物理気相成長法を用いて低屈折率層23を形成する方法であれば、高屈折率層22の表面の凹凸に追従した表面形状を有する低屈折率層23を好適に形成することができる。また、高屈折率層22の形成に物理気相成長法を用いる場合において、第1方向に沿った方向から見て第2格子高屈折率部15aが中間高屈折率部14aの外側まで広がるように、高屈折率層22を形成する。こうした製法によれば、凸部21aの側面に中間高屈折率部14aが形成される方法を採用しながらも、中間高屈折率部14aの幅が小さく抑えられるため、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0119】
(第2実施形態)
図9図12を参照して、光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法の第2実施形態を説明する。以下では、第2実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0120】
[光学デバイスの構成]
図9および図10を参照して、第2実施形態の光学デバイスの構成について説明する。図9が示すように、第2実施形態の光学デバイス30は、第1実施形態にて説明した第1低屈折率領域12、第1格子領域13、中間領域14、第2格子領域15、第2低屈折率領域16、および、頂部領域17からなる構造体である共鳴構造部31を、2つ備えている。ただし、頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bは、低屈折率材料で充填されている。
【0121】
2つの共鳴構造部31である第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとは、第1方向に隣り合っており、2つの共鳴構造部31A,31Bは、2つの基材11で挟まれている。換言すれば、第2実施形態の光学デバイス30は、第1実施形態の構成を有する2つの光学デバイス10が、頂部領域17同士が向かい合うように接合された構造を有する。すなわち、第2実施形態の光学デバイス30は、第1方向に間をあけて並ぶ4つのサブ波長格子を有し、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に埋め込まれた構造を有している。なお、一方の基材11に対する他方の基材11の側が光学デバイス30の表面側であり、他方の基材11に対する一方の基材11の側が光学デバイス30の裏面側である。
【0122】
光学デバイス30において、第1共鳴構造部31Aにおける格子要素である格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bの延びる方向と、第2共鳴構造部31Bにおける格子要素である格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bの延びる方向とは、一致している。言い換えれば、第1共鳴構造部31Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部31Bが有するサブ波長格子の配列方向とは、一致している。また、各共鳴構造部31の中間領域14および頂部領域17における各低屈折率部および高屈折率部も、格子要素と同一の方向に延びている。
【0123】
第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとの間には、第1共鳴構造部31Aの頂部領域17と第1共鳴構造部31Aの頂部領域17とに沿って一様に広がる境界低屈折率領域18が位置する。境界低屈折率領域18は、第1共鳴構造部31Aの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17b、および、第2共鳴構造部31Bの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bの各々と連続しており、境界低屈折率領域18と各共鳴構造部31の第2頂部低屈折率部17bとは、互いに同一の材料から構成される。
【0124】
第1共鳴構造部31Aにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkと、第2共鳴構造部31Bにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkとは、図9が示すように同一であってもよいし、図10が示すように互いに異なっていてもよい。構造周期Pkは、第1格子領域13における第1周期P1と一致する。
【0125】
反射光の波長選択性の高さを重視する場合には、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとの各々において、第1実施形態と同様に、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.625以上1.6以下であることがより好ましい。
【0126】
[光学デバイスの作用]
2つの共鳴構造部31A,31Bが同一の構造周期Pkを有する構成では、光学デバイス30が有する4つの格子領域13,15において、共鳴を起こす光の波長域のばらつきが小さくなる。4つの格子領域13,15の各々で強められた波長域の反射光が光学デバイス30から射出されることにより、第1実施形態の光学デバイス10と比較して、反射光における特定の範囲の波長域の強度がより大きくなる。このとき、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとで、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が一致している構成であれば、4つの格子領域13,15における光学膜厚のばらつきが小さくなり、各格子領域13,15で共鳴を起こす光の波長域がより近くなるため、反射光の波長選択性がより高められる。
【0127】
一方、2つの共鳴構造部31A,31Bが互いに異なる構造周期Pkを有する構成では、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。その結果、光学デバイス30からは、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15にて強められた波長域の光と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15にて強められた波長域の光とを含む反射光が射出される。そして、光学デバイス30への入射光のうち、各共鳴構造部31A,31Bおよび境界低屈折率領域18を透過した光が、光学デバイス30からの透過光として射出される。各共鳴構造部31A,31Bの構造周期Pkの設定により、各共鳴構造部31A,31Bで強められて反射される光の波長域の設定が可能であり、これにより、透過光の波長域を調整することも可能である。
【0128】
このように、第2実施形態の光学デバイス30は、2つの格子領域13,15を備える共鳴構造部31を複数有するため、反射光や透過光の波長域や強度の調整の自由度が高められる。
【0129】
そして、第2実施形態の光学デバイス30は、紫外領域の光の吸収機能を有する低屈折率層23を2つ備えており、2つの共鳴構造部31A,31Bの各々で紫外領域の光が吸収される。したがって、入射光に紫外領域の波長の光が含まれる場合であっても、光学デバイス30の透過光に紫外領域の光が含まれることがより好適に抑えられる。すなわち、第1実施形態と比較して、光学デバイス30における紫外光の遮蔽機能が高められる。
さらに、格子領域13,15にて強められて反射される波長域に紫外領域の波長域が含まれる形態であれば、光学デバイス30における紫外光の遮蔽機能がより高められる。
【0130】
なお、頂部領域17は、第1実施形態と同様に、頂部領域17よりも裏面側での反射や干渉による光のうち、取り出したい波長域の光とは異なる波長域の光を打ち消すことで当該異なる波長域の光が光学デバイス30の表面側に射出されることを抑えてもよい。すなわち、各格子領域13,15で強められた波長域以外の光を頂部領域17が打ち消すように、低屈折率層23の厚さおよび材料と、境界低屈折率領域18の材料とが選択されることが好ましい。
【0131】
[光学デバイスの製造方法]
図11および図12を参照して、第2実施形態の光学デバイス30の製造方法について説明する。まず、第2実施形態の光学デバイス30の製造に際しては、第1実施形態と同様に、基材11上に凹凸構造層21と高屈折率層22と低屈折率層23とが順に形成される。
【0132】
続いて、図11が示すように、基材11と凹凸構造層21と高屈折率層22と低屈折率層23とからなる構造体である2つの凹凸構造体32を、低屈折率層23同士が向かい合うように対向させ、図12が示すように、2つの凹凸構造体32の間の領域を低屈折率材料で埋めることによってこれらの凹凸構造体32を接合する。これにより、光学デバイス30が形成される。
【0133】
図12が示すように、低屈折率材料による埋め込みによって、2つの凹凸構造体32の間に形成される部分が埋込層24である。埋込層24は、第1共鳴構造部31Aの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bと、第2共鳴構造部31Bの頂部領域17における第2頂部低屈折率部17bと、境界低屈折率領域18とから構成される。
【0134】
埋込層24を構成する低屈折率材料は、高屈折率層22を構成する高屈折率材料よりも屈折率の低い材料であって、紫外線硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の樹脂材料が用いられることが好ましい。例えば、埋込層24は、凹凸構造層21と同一の材料から構成されればよい。埋込層24の形成方法としては、各種の塗布法等が用いられればよい。
【0135】
なお、2つの凹凸構造体32を対向させた状態において、第1頂部低屈折率部17a同士が向かい合ってもよいし、一方の凹凸構造体32における第1頂部低屈折率部17aと、他方の凹凸構造体32における第2頂部低屈折率部17bとが向かい合ってもよい。あるいは、一方の凹凸構造体32における第1頂部低屈折率部17aは、他方の凹凸構造体32における第1頂部低屈折率部17aの一部および第2頂部低屈折率部17bの一部と向かい合っていてもよい。
【0136】
例えば、2つの凹凸構造体32として、凸部21aの周期が同一である凹凸構造体32を接合することによって、2つの共鳴構造部31A,31Bが同一の構造周期Pkを有する光学デバイス30が形成できる。また例えば、2つの凹凸構造体32として、凸部21aの周期が互いに異なる凹凸構造体32を接合することによって、2つの共鳴構造部31A,31Bが互いに異なる構造周期Pkを有する光学デバイス30が形成できる。
【0137】
なお、2つの共鳴構造部31A,31Bは、頂部領域17同士が向かい合うように配置されることに代えて、頂部領域17を外側に向けて配置されてもよい。すなわち、2つの凹凸構造体32は、基材11同士が向かい合うように低屈折率材料によって接合されていてもよい。
【0138】
また、2つの共鳴構造部31A,31Bは、各共鳴構造部31A,31Bの頂部領域17が、いずれも表面側を向くように配置されてもよい。すなわち、2つの凹凸構造体32は、一方の凹凸構造体32の頂部領域17と、他方の凹凸構造体32の基材11とが向かい合うように低屈折率材料によって接合されていてもよい。
頂部領域17が光学デバイス30の最表面に位置する構成であれば、頂部領域17によって表面反射を抑える効果が、第1実施形態と同様に得られる。
【0139】
また、光学デバイス30は、第1方向に並ぶ3以上の共鳴構造部31を備えていてもよい。光学デバイス30が備える共鳴構造部31の数が多いほど、光学デバイス30における紫外領域の光の吸収性が高められる。光学デバイス30が複数の共鳴構造部31を備える形態において、これらの共鳴構造部31における構造周期Pkが同一であれば、共鳴構造部31の数が多いほど、反射光の強度は高められる。また、複数の共鳴構造部31に、構造周期Pkが同一である共鳴構造部31と、構造周期Pkが互いに異なる共鳴構造部31とが含まれてもよい。こうした構成によれば、光学デバイス30から出射される反射光や透過光の波長域の細かな調整も可能となる。
【0140】
3以上の共鳴構造部31を備える光学デバイス30の製造に際しては、基材11と凹凸構造層21とが、凹凸構造層21から基材11を剥離可能な材料から形成され、凹凸構造体32の積層に際して基材11が剥離されてもよい。例えば、2つの凹凸構造体32が、頂部領域17同士が向かい合うように低屈折率材料によって接合されたのち、一方の基材11が剥離され、露出された凹凸構造層21と他の凹凸構造体32とがさらに低屈折率材料を挟んで接合されることが繰り返されることによって、6以上のサブ波長格子を有する光学デバイス30が形成される。
【0141】
第2実施形態の光学デバイス30の構成は、第1実施形態で示した適用例と同様に、表示装置等に備えられるフィルタに適用されてもよいし、表示体に適用されてもよい。
以上、第2実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(6)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
【0142】
(7)光学デバイス30が、第1方向に並ぶ複数の共鳴構造部31を備える構成によれば、光学デバイス10が4つ以上の格子領域13,15を備えるため、光学デバイス30の波長選択性をさらに高めることや、反射光と透過光とに含まれる波長域の調整の自由度を高めることが可能である。そして、光学デバイス30が、2つの低屈折率層23を備えるため、光学デバイス30における紫外光の遮蔽機能が高められる。
【0143】
(8)複数の共鳴構造部31において構造周期Pkが等しい形態であれば、各共鳴構造部31の格子領域13,15で共鳴を起こす光の波長域のばらつきが小さくなる。したがって、反射光の波長選択性がより高められる。さらに、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとで、光学膜厚OT1に対する光学膜厚OT2の比が一致する構成によれば、4つの格子領域13,15において、光学膜厚のばらつきが小さくなり、すなわち、各格子領域13,15において共鳴を起こす光の波長域がより近くなる。したがって、反射光の波長選択性がより高められる。
【0144】
(9)第1共鳴構造部31Aの構造周期Pkと、第2共鳴構造部31Bの構造周期Pkとが互いに異なる形態であれば、第1共鳴構造部31Aの各格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域と、第2共鳴構造部31Bの各格子領域13,15にて共鳴を起こす光の波長域とは、互いに異なる。したがって、反射光や透過光の波長域の調整の自由度が高められる。
【0145】
(10)光学デバイス30は、2つの凹凸構造体32を向かい合わせ、2つの凹凸構造体32の間の領域を低屈折率材料で埋めることによって形成される。これによれば、複数の共鳴構造部31を備える光学デバイス30を容易に形成することができる。
【0146】
(第3実施形態)
図13を参照して、光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法の第3実施形態を説明する。第3実施形態は、第2実施形態と比較して、2つの共鳴構造部におけるサブ波長格子の配列方向が異なる。以下では、第3実施形態と第2実施形態との相違点を中心に説明し、第2実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。なお、図13は、光学デバイスの一部分を示す図であり、光学デバイスの構造を理解しやすくするために、凹凸構造層21、高屈折率層22、低屈折率層23、埋込層24の各々に、互いに異なる濃度のドットを付して示している。
【0147】
[光学デバイスの構成]
図13が示すように、第3実施形態の光学デバイス40は、第2実施形態と同様に、第1方向に隣り合う2つの共鳴構造部31A,31Bを備えている。ただし、第3実施形態においては、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15が有する格子要素、すなわち、格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bの延びる方向と、第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15が有する各格子要素の延びる方向とは互いに異なる。言い換えれば、第1共鳴構造部31Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部31Bが有するサブ波長格子の配列方向とが互いに異なっている。
【0148】
第1共鳴構造部31Aにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkと、第2共鳴構造部31Bにおける凸部21aの配列の周期である構造周期Pkとは、同一である。反射光の波長選択性の高さを重視する場合には、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとの各々において、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比は、0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.625以上1.6以下であることがより好ましい。さらに、第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとで、上記比は一致していることが好ましい。
【0149】
第1共鳴構造部31Aの格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bは、第2方向に沿って延び、第3方向に沿って並ぶ。一方、第2共鳴構造部31Bの格子高屈折率部13a,15aおよび格子低屈折率部13b,15bは、第3方向に沿って延び、第2方向に沿って並ぶ。すなわち、第1共鳴構造部31Aが有する格子要素の延びる方向と、第2共鳴構造部31Bが有する格子要素の延びる方向とは直交している。換言すれば、第1共鳴構造部31Aが有するサブ波長格子の配列方向と、第2共鳴構造部31Bが有するサブ波長格子の配列方向とのなす角は90°である。
【0150】
[光学デバイスの作用]
上述のように、サブ波長格子が、1つの方向に帯状に延びる格子高屈折率部13a,15aから構成されている場合、各格子領域13,15では、特定の方向へ偏光した光が多重反射して共鳴を起こし、反射光として射出される。上記特定の方向は、サブ波長格子の配列方向に依存する。第1共鳴構造部31Aと第2共鳴構造部31Bとでサブ波長格子の配列方向が異なることにより、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15と第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15とでは、多重反射する光の偏光方向は互いに異なる。したがって、第3実施形態の光学デバイス40によれば、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射されるため、反射光の強度がより高められる。
【0151】
[光学デバイスの製造方法]
第3実施形態の光学デバイス40は、第2実施形態と同様に、2つの凹凸構造体32を、頂部領域17同士が向かい合うように対向させ、2つの凹凸構造体32の間の領域を低屈折率材料で埋めることによって形成される。ここで、第3実施形態では、一方の凹凸構造体32における凸部21aの延びる方向と、他方の凹凸構造体32における凸部21aの延びる方向とが直交するように、これらの凹凸構造体32を向かい合わせて低屈折率材料により接合する。
【0152】
なお、第2実施形態と同様に、2つの共鳴構造部31A,31Bは、頂部領域17を外側に向けて配置されてもよいし、各共鳴構造部31A,31Bの頂部領域17が、いずれも表面側を向くように配置されてもよい。
【0153】
また、光学デバイス40は、第1方向に並ぶ3以上の共鳴構造部31を備えていてもよく、複数の共鳴構造部31に、格子要素の延びる方向が互いに異なる共鳴構造部31が含まれていればよい。こうした光学デバイス40は、偶数、すなわち2n(nは3以上の整数)個のサブ波長格子を備え、表面側もしくは裏面側から2m-1番目(mは1以上n以下の整数)のサブ波長格子と2m番目のサブ波長格子とにおいて、配列方向は互いに同一であり、格子の配列周期は互いに同一である。換言すれば、光学デバイス40は、配列方向および配列周期が同一であるサブ波長格子の対が、第1方向に並び、これらのサブ波長格子が低屈折率材料に埋め込まれた構造を有している。
【0154】
こうした構成によれば、共鳴構造部31ごとのサブ波長格子の配列方向の設定や、サブ波長格子の配列方向が同一である共鳴構造部31の数の設定等によって、光学デバイス40の偏光応答性を調整することもできる。そして、光学デバイス40が備える共鳴構造部31の数が多いほど、光学デバイス40における紫外領域の光の吸収性が高められる。なお、複数の共鳴構造部31には、サブ波長格子の配列周期が互いに異なる共鳴構造部31が含まれていてもよい。
【0155】
第3実施形態の光学デバイス40の構成は、第1実施形態で示した適用例と同様に、表示装置等に備えられるフィルタに適用されてもよいし、表示体に適用されてもよい。第3実施形態の光学デバイス40が、様々な方向への偏光成分を含む入射光を対象とする場合に適用されると、偏光に関して効率的に反射光が出射される効果を高く得られる。一方、偏光方向の揃った入射光を対象とする場合には、第2実施形態の光学デバイス30の構成が適用されることが好ましい。
【0156】
以上、第3実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(6)、第2実施形態の(7),(8),(10)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
(11)第1共鳴構造部31Aの格子要素の延びる方向と、第2共鳴構造部31Bの格子要素の延びる方向とが、互いに異なるため、第1共鳴構造部31Aの格子領域13,15と第2共鳴構造部31Bの格子領域13,15とでは、入射光に含まれる光のうち、互いに異なる方向へ偏光した光が共鳴を起こして、それぞれの共鳴構造部31から射出される。したがって、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射される。
【0157】
(第4実施形態)
図14を参照して、光学デバイス、および、光学デバイスの製造方法の第4実施形態を説明する。第4実施形態は、第1実施形態と比較して、サブ波長格子の配列が異なる。以下では、第4実施形態と第1実施形態との相違点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については同じ符号を付してその説明を省略する。
【0158】
図14(a)~(d)が示すように、第4実施形態の光学デバイス50において、サブ波長格子は、二次元格子状の配列を有する。
詳細には、図14(b)が示すように、第1格子領域13において、複数の第1格子低屈折率部13bは、二次元格子状に配置されている。二次元格子の種類は特に限定されず、互いに異なる方向に延びる2つの平行線群が交差することによって構成される格子の格子点に第1格子低屈折率部13bが位置していればよい。例えば、第1格子低屈折率部13bが構成する二次元格子は、正方格子であってもよいし、六方格子であってもよい。第1格子領域13における格子構造の周期である第1周期P1は、二次元格子が延びる各方向において一致している。第1格子高屈折率部13aは、複数の第1格子低屈折率部13bの間を埋めており、連続する1つの高屈折率部を構成している。
【0159】
第1方向に沿った方向から見て、第1格子低屈折率部13bの形状は特に限定されないが、例えば第1格子低屈折率部13bが正方形であると、第1格子領域13の平均屈折率を規定する面積比率の設定が容易である。
【0160】
図14(c)が示すように、中間領域14において、複数の第1中間低屈折率部14bは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。中間領域14における第1中間低屈折率部14bの配列の周期である第3周期P3は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。第1方向に沿った方向から見て、第1中間低屈折率部14bの大きさは、第1格子低屈折率部13bと一致する。
【0161】
第1方向に沿った方向から見て、中間高屈折率部14aは枠形状を有し、第1中間低屈折率部14bを1つずつ取り囲んでいる。第2中間低屈折率部14cは、互いに隣接する中間高屈折率部14aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。
【0162】
図14(d)が示すように、第2格子領域15において、複数の第2格子高屈折率部15aは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。第2格子低屈折率部15bは、複数の第2格子高屈折率部15aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。第2格子領域15における格子構造の周期である第2周期P2は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
【0163】
ただし、第1方向に沿った方向から見て、第2格子領域15において点在する第2格子高屈折率部15aは、第1格子領域13において点在する第1格子低屈折率部13bよりも大きい。言い換えれば、第2方向および第3方向の各々において、第2格子高屈折率部15aの幅は、第1格子低屈折率部13bの幅よりも大きい。したがって、第2格子低屈折率部15bの幅は、第1格子高屈折率部13aの幅よりも小さい。第1方向に沿った方向から見て、第2格子高屈折率部15aは、第1格子低屈折率部13bの形状に準じた形状を有する。
【0164】
また、頂部領域17においても、複数の第1頂部低屈折率部17aは、第1格子低屈折率部13bと一致した二次元格子状に配置されている。そして、第2頂部低屈折率部17bは、複数の第1頂部低屈折率部17aの間を埋めており、連続する1つの低屈折率部を構成している。頂部領域17における第1頂部低屈折率部17aの配列の周期は、第1格子領域13における第1周期P1と一致している。
【0165】
第4実施形態の光学デバイス50においても、第1実施形態と同様の原理によって導波モード共鳴現象が起こり、第1格子領域13で強められた波長域の光と、第2格子領域15で強められた波長域の光とが、反射光として射出される。そして、紫外領域の光は低屈折率層23に吸収され、光学デバイス50を構成する各領域を透過した光が、透過光として射出される。
【0166】
第4実施形態においても、第1格子領域13の光学膜厚OT1は、第1実施形態で示した式(2)によって求められ、第2格子領域15の光学膜厚OT2は、第1実施形態で示した式(4)によって求められる。そして、第1格子領域13の光学膜厚OT1に対する第2格子領域15の光学膜厚OT2の比が、0.5以上2.0以下、より好ましくは0.625以上1.6以下であれば、光学デバイス50において、反射光についての良好な波長選択性が得られる。
【0167】
また、第4実施形態においても、中間高屈折率部14aの面積比率R3について、第1実施形態で示した式(5)が満たされることが好ましい。式(5)が満たされていれば、中間高屈折率部14aの幅が、第2格子高屈折率部15aよりも外側まで広がらない程度に抑えられるため、中間高屈折率部14aの面積比率が大きくなりすぎない。したがって、各格子領域13,15からの反射光の強度が良好になる。
【0168】
第4実施形態のように、サブ波長格子を構成する格子要素が二次元格子状に並ぶ形態であれば、互いに異なる方向へ偏光している光を格子要素が並ぶ方向ごとにそれぞれ共鳴させることができる。したがって、第1実施形態のように、格子要素が1つの方向のみに沿って並ぶ形態と比較して、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射される。そのため、反射光の強度がより高められる。
【0169】
特に、格子要素が六方格子状に並ぶ形態であれば、格子要素が正方格子状に並ぶ形態と比較して、格子領域にて共鳴可能な偏光の方向が多くなるため、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、より効率的に反射光を出射することができる。
【0170】
第4実施形態の光学デバイス50は、第1実施形態の光学デバイス10の製造方法において、凸部21aの配列態様を変更することによって製造できる。具体的には、複数の凸部21aが二次元格子状に配置された凹凸構造を形成することによって、凹凸構造層21を形成する。複数の凸部21aは互いに離間しており、凸部21a間に位置する凹部21bは連続する1つの凹部を構成している。第4実施形態のように、凸部21aが二次元格子状に並ぶ形態であれば、凸部21aの大きさや配置についての自由度が高いため、凸部21aと凹部21bとの面積比率の設定に際しての細かな調整が容易である。
【0171】
第4実施形態の光学デバイス50には、第1実施形態の光学デバイス10の各変形例の構成が適用できる。また、第2実施形態および第3実施形態の構成に第4実施形態の光学デバイス50を適用してもよい。すなわち、複数の光学デバイス50を第1方向に沿って積層することによって、4つ以上の格子領域を有する光学デバイスを構成してもよい。このとき、2以上の共鳴構造部31において、サブ波長格子を構成する格子要素が並ぶ方向、言い換えれば、二次元格子の延びる方向は、一致していてもよいし、異なっていてもよい。2つの共鳴構造部31における二次元格子の延びる方向が異なる構成では、偏光に関し、より多くの方向に対応して反射光を射出することができる。
【0172】
なお、各格子領域13,15において、格子構造の周期は、二次元格子が延びる方向によって異なっていてもよい。こうした構成によれば、二次元格子が延びる方向によって共鳴を起こす波長域を異ならせて、反射光に含まれる波長域や偏光に対する応答性を調整することが可能である。
【0173】
また、凹凸構造層21の凹凸構造は、互いに離間した複数の凹部と、これらの凹部の間で連続している単一の凸部とから構成されてもよい。すなわち、凹凸構造層21の凹凸構造は、凸部もしくは凹部である複数の凹凸要素が互いに離間しつつ二次元格子状に並ぶことにより形成されていればよい。
【0174】
第4実施形態の光学デバイス50の構成は、第1実施形態で示した適用例と同様に、表示装置等に備えられるフィルタに適用されてもよいし、表示体に適用されてもよい。
以上、第4実施形態によれば、第1実施形態の(1)~(6)の効果に加えて、下記の効果が得られる。
【0175】
(12)サブ波長格子を構成する格子要素が二次元格子状に並ぶため、様々な方向への偏光成分を含む入射光に対して、効率的に反射光が出射される。
【0176】
(変形例)
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することが可能である。
・低屈折率材料からなる層であれば、低屈折率層23とは異なる層が、紫外領域の光の吸収性を有していてもよい。例えば、凹凸構造層21あるいは基材11が紫外領域の光の吸収性を有していてもよい。また、第2実施形態および第3実施形態においては、埋込層24が紫外領域の光の吸収性を有してもよい。こうした紫外領域の光の吸収性を有する層は、例えば、紫外線吸収剤が添加された樹脂から構成されればよい。
【0177】
格子領域13,15で強められた反射光として、紫外領域の光を取り出す場合には、格子領域13,15に対して、紫外領域の光の吸収性を有する層とは反対側から入射光を入射させるように、光学デバイスが用いられればよい。例えば、凹凸構造層21あるいは基材11が紫外領域の光の吸収性を有するとき、第1実施形態および第4実施形態においては、頂部領域17の位置する側から光が入射すればよい。また、第2実施形態および第3実施形態においては、2つの共鳴構造部31のうちの一方における凹凸構造層21あるいは基材11が紫外領域の光の吸収性を有し、2つの共鳴構造部31のうちの他方の位置する側から光が入射すればよい。埋込層24が紫外領域の光の吸収性を有する場合には、いずれの側から光が入射してもよい。
【0178】
基材11、凹凸構造層21、低屈折率層23、埋込層24のいずれかが紫外領域の光の吸収性を有する形態であれば、2つ以上の格子領域で導波モード共鳴現象を生じさせる光学デバイスを構成するために要する層に、紫外領域の光の吸収性が付加されることになる。そのため、光学デバイスが紫外領域の光の吸収性を有さない場合と比較して、光学デバイスの構成層を増加させずとも、紫外光の遮蔽機能を有する光学デバイスが形成可能であり、光学デバイスの製造に要する負担の増加が抑えられる。
【0179】
一方、光学デバイスは、上述した各層とは別に、紫外領域の光の吸収性を有する層を備えていてもよい。例えば、図15が示すように、第1実施形態の光学デバイス10は、基材11に対して凹凸構造層21とは反対側で基材11に接する吸収層19を備えていてもよい。吸収層19は、紫外領域の光の吸収性を有する。吸収層19は、例えば、各種の塗布法を用いて形成され、紫外線吸収剤が添加された樹脂から構成される。また、第2実施形態および第3実施形態のように、光学デバイスが2つの共鳴構造部31を備える場合、一方の共鳴構造部31に接する基材11に紫外領域の光の吸収性を有する吸収層が積層されていてもよい。
【0180】
上記構成においても、格子領域13,15で強められた反射光として、紫外領域の光を取り出す場合には、格子領域13,15に対して、紫外領域の光の吸収性を有する層とは反対側から入射光を入射させればよい。
【0181】
上記吸収層19のように、紫外領域の光の吸収機能に特化した層を設けることにより光学デバイスにおける光の遮蔽機能が実現される構成であれば、以下の効果が得られる。すなわち、紫外領域の光の吸収性を有する層が、その他の機能を有する層、例えば、導波モード共鳴現象を生じさせる機能を有する層を兼ねている場合と比較して、各層の材料や膜厚を、各機能により適するように選定することが可能である。
【0182】
以上のように、要は、光学デバイスの構成層に、紫外領域の光の吸収性を有する層が含まれていればよい。この紫外領域の光の吸収性を有する層は、硬化後の紫外線硬化性樹脂よりも、高い紫外光の吸収性を有する。
【0183】
・上記光学デバイスの構成層は、所定の波長域の光の吸収性を有していればよく、吸収の対象の波長域は、紫外領域でなくてもよい。所定の波長域の光の吸収性を有する層を備える光学デバイスであれば、当該波長域の光の遮蔽機能を有する。したがって、当該波長域の遮蔽が望まれる装置に設けられるフィルタ等としての利用が可能である。
【0184】
・上記各実施形態において、光学デバイスの中間領域14は、中間高屈折率部14aを有していなくてもよい。すなわち、中間領域14は、第1中間低屈折率部14bと第2中間低屈折率部14cとから構成されていてもよい。高屈折率層22の製造条件によっては、中間高屈折率部14aを有さない光学デバイス、すなわち、凸部21aの側面への高屈折率層22の成膜がない光学デバイスの製造が可能である。
【0185】
・頂部領域17が最表面に位置する形態において、頂部領域17を覆う保護層が設けられてもよい。この場合、保護層は樹脂等の低屈折率材料から構成され、低屈折率層23の凹部は保護層によって埋められる。すなわち、第2頂部低屈折率部17bは、低屈折率材料によって充填される。
【0186】
・第2実施形態および第3実施形態において、第1共鳴構造部31Aの高屈折率層22と第2共鳴構造部31Bの高屈折率層22との間が、低屈折率層として機能する埋込層24によって埋められていてもよい。この場合、共鳴構造部31は頂部領域17を有さず、第1共鳴構造部31Aの第2低屈折率領域16と、第2共鳴構造部31Bの第2低屈折率領域16とは連続しており、これらの領域の境界は存在しない。
【符号の説明】
【0187】
10,30,40,50…光学デバイス、11…基材、12…第1低屈折率領域、13…第1格子領域、13a…第1格子高屈折率部、13b…第1格子低屈折率部、14…中間領域、14a…中間高屈折率部、14b…第1中間低屈折率部、14c…第2中間低屈折率部、15…第2格子領域、15a…第2格子高屈折率部、15b…第2格子低屈折率部、16…第2低屈折率領域、17…頂部領域、17a…第1頂部低屈折率部、17b…第2頂部低屈折率部、18…境界低屈折率領域、19…吸収層、21…凹凸構造層、21a…凸部、21b…凹部、22…高屈折率層、23…低屈折率層、24…埋込層、31,31A,31B…共鳴構造部、32…凹凸構造体、100…表示装置、110…光源層、111…発光部、120…波長変換層、121,121R,121G,121B…副画素領域、130…フィルタ層、131,131R,131G,131B…フィルタ領域。
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