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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】熱交換器のブラケット
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/00 20060101AFI20240109BHJP
   F28F 9/02 20060101ALI20240109BHJP
   F28F 21/06 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F28F9/00 321
F28F9/02 301Z
F28F21/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020023488
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127867
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100140486
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100170058
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 拓真
(72)【発明者】
【氏名】竹内 伸介
(72)【発明者】
【氏名】宇野 孝博
(72)【発明者】
【氏名】北川 新也
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】村井 豊
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2146169(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0326434(US,A1)
【文献】特開2017-106656(JP,A)
【文献】特開2018-035802(JP,A)
【文献】特開2000-283690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 9/00
F28F 9/02
F28F 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が内部を流れる複数のチューブ(210)と、複数の前記チューブの端部に接続されるタンク(22)とを有し、前記チューブが水平方向に延びるように設けられ、且つ前記タンクが鉛直方向に延びるように設けられるとともに、複数の前記チューブの間を流れる空気と、前記チューブの内部を流れる前記流体との間で熱交換を行うことにより、空気の熱を前記流体に吸収させる吸熱器として動作するクロスフロー型の熱交換器(10)に装着されるブラケットであって、
前記タンクにおいて鉛直方向に延びるように設けられる筒状の部分をタンク外壁部(221)とし、前記タンク外壁部の鉛直方向下方の開口部を閉塞するように設けられる部分をタンク底壁部(222)とするとき、
前記タンク底壁部に対向するように配置される底壁(42)と、
前記底壁から前記タンク外壁部に沿って延びるように形成される側壁(41)と、を備え、
前記底壁及び前記側壁により区画される空間のうち、前記タンクが配置される空間を内部空間(Sa)とし、前記底壁及び前記側壁を挟んで前記内部空間の反対側に位置する空間を外部空間(Sb)とするとき、
前記側壁において前記底壁に隣接する部分には、前記内部空間と前記外部空間とを連通させる連通部(45,46,60)が形成されており、
前記側壁において前記タンクに対向する面を内面とするとき、
前記側壁の前記内面には、前記タンクに向かって突出するリブ(413,414)が形成されており、
前記リブにおいて鉛直方向上方に位置する外面は、水平方向に対して傾斜している
熱交換器のブラケット。
【請求項2】
前記連通部は、前記側壁において前記底壁に隣接する部分をその内面から外面に貫通するように形成される貫通孔(45,46)である
請求項1に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項3】
前記タンクに係合する係合爪(43)を更に備え、
前記係合爪は、前記貫通孔の延長線上に配置されている
請求項2に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項4】
前記流体を第1流体とするとき、
前記熱交換器は、前記第1流体が内部を流れる第1熱交換部(20)と、第2流体が内部を流れる第2熱交換部(30)とを空気流れ方向に並べて有するものであって、
前記第1熱交換部は、前記吸熱器として動作し、
前記第2熱交換部は、その外部を流れる空気と前記第2流体との間で熱交換を行うことにより、前記第2流体の熱を空気に放散する放熱器として動作し、
前記連通部は、前記第1熱交換部の前記タンクに対向するように設けられている
請求項1~3のいずれか一項に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項5】
前記側壁は、前記タンク外壁部に沿って延びるように形成される底辺部(410)と、前記底壁の幅方向の両端から前記チューブの長手方向に延びるように形成される側辺部(411,412)とを有し、鉛直方向に直交する前記側壁の断面形状が凹状をなすものであって、
前記連通部は、前記側壁の前記底辺部に形成されている
請求項1~4のいずれか一項に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項6】
前記側壁には、前記内部空間と前記外部空間とを連通する複数の連通部(48,49)が更に形成されている
請求項1~5のいずれか一項に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項7】
前記リブは、鉛直方向において前記連通部からずれた位置に形成されている
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項8】
前記リブは、鉛直方向において前記連通部と重なる位置に形成されている
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項9】
前記リブは、台形状又は三角状に形成されている
請求項に記載の熱交換器のブラケット。
【請求項10】
前記底壁及び前記側壁は、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及びポリアセタール樹脂のいずれかにより形成されている
請求項1~のいずれか一項に記載の熱交換器のブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱交換器のブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記の特許文献1に記載の熱交換器のブラケットがある。特許文献1に記載のブラケットは、車両に搭載される熱交換器のタンクに外付けされる。このブラケットは、熱交換器に対してファンシュラウドを固定したり、熱交換器を車体に固定したりするために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-337530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱交換器には、その内部を流れる熱媒体と、その外部を流れる空気との間で熱交換を行うことにより空気の熱を熱媒体に吸収させる、いわゆる吸熱器として用いられるものがある。このような熱交換器では、タンクの内部を流れる熱媒体と、タンクの外部に存在する空気との間で熱交換が行われるため、タンクの外部に存在する空気が冷却される。これにより空気中の水蒸気が結露すると、タンクの外面に凝縮水が生成される。
【0005】
一方、このような吸熱器に、特許文献1に記載のブラケットを装着した場合、タンクの外面に凝縮水が生成されると、タンクの外面とブラケットとの間に凝縮水が溜まる可能性がある。この凝縮水が凍結すると、その体積膨張によりブラケットが破損するおそれがある。
【0006】
本開示は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、凝縮水の凍結に起因する破損を抑制することが可能な熱交換器のブラケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する熱交換器のブラケットは、流体が内部を流れる複数のチューブ(210)と、複数のチューブの端部に接続されるタンク(22)とを有し、チューブが水平方向に延びるように設けられ、且つタンクが鉛直方向に延びるように設けられるとともに、複数のチューブの間を流れる空気と、チューブの内部を流れる流体との間で熱交換を行うことにより、空気の熱を流体に吸収させる吸熱器として動作するクロスフロー型の熱交換器(10)に装着されるブラケットである。ブラケットは、タンクにおいて鉛直方向に延びるように設けられる筒状の部分をタンク外壁部(221)とし、タンク外壁部の鉛直方向下方の開口部を閉塞するように設けられる部分をタンク底壁部(222)とするとき、タンク底壁部に対向するように配置される底壁(42)と、底壁からタンク外壁部に沿って延びるように形成される側壁(41)と、を備える。底壁及び側壁により区画される空間のうち、タンクが配置される空間を内部空間(Sa)とし、底壁及び側壁を挟んで内部空間の反対側に位置する空間を外部空間(Sb)とするとき、側壁において底壁に隣接する部分には、内部空間と外部空間とを連通させる連通部(45,46,60)が形成されている。側壁においてタンクに対向する面を内面とするとき、側壁の内面には、タンクに向かって突出するリブ(413,414)が形成されている。リブにおいて鉛直方向上方に位置する外面は、水平方向に対して傾斜している。
【0009】
この構成によれば、ブラケットの内部空間に生成される凝縮水が連通部を通じて外部空間に排出されるため、凝縮水の凍結に起因するブラケットの破損を抑制することができる。
なお、上記手段、特許請求の範囲に記載の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明の効果】
【0010】
本開示の熱交換器のブラケットによれば、凝縮水の凍結に起因する破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態の熱交換器の斜視構造を示す斜視図である。
図2図2は、第1実施形態の熱交換器のタンク周辺の正面構造を示す正面図である。
図3図3は、第1実施形態の熱交換器のタンク周辺の側面構造を示す側面図である。
図4図4は、図2のIV-IV線に沿った断面構造を示す断面図である。
図5図5は、第1実施形態のブラケットの側面構造を示す側面図である。
図6図6は、第1実施形態のブラケットの正面構造を示す正面図である。
図7図7は、第1実施形態のブラケットが組み付けられた熱交換器の正面構造を示す正面図である。
図8図8は、図7のVIII-VIII線に沿った断面構造を示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態のブラケットが組み付けられた熱交換器の側面構造を示す側面図である。
図10図10は、第1実施形態の第1変形例のブラケットの正面構造を示す正面図である。
図11図11は、第1実施形態の第2変形例のブラケットの正面構造を示す正面図である。
図12図12は、第1実施形態の第3変形例のブラケットの正面構造を示す正面図である。
図13図13は、第1実施形態の第4変形例のブラケットの側面構造を示す側面図である。
図14図14は、第2実施形態のブラケットの正面構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、熱交換器のブラケットの実施形態について図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
<第1実施形態>
はじめに、熱交換器のブラケットの第1実施形態について説明する。
【0013】
図1に示されるように、熱交換器10は第1熱交換部20と第2熱交換部30とを備えている。第1熱交換部20及び第2熱交換部30の内部にはLLC等の熱媒体が流れている。以下では、第1熱交換部20の内部を流れる熱媒体を第1熱媒体と称し、第2熱交換部30の内部を流れる熱媒体を第2熱媒体と称する。本実施形態では、第1熱媒体が第1流体に相当し、第2熱媒体が第2流体に相当する。第1熱交換部20及び第2熱交換部30はアルミニウム合金により形成されている。
【0014】
第1熱交換部20はコア部21とタンク22,23とを備えている。
コア部21は複数のチューブ210とサイドプレート211,212とを有している。
チューブ210は、図中に矢印Xで示される方向に延びるように形成された偏平筒状の部材からなる。チューブ210の内部空間は、第1熱媒体が流れる流路となっている。複数のチューブ210は、図中に矢印Zで示される方向に所定の隙間を開けて配置されている。隣り合うチューブ210,210の間の隙間には空気が流れる。
【0015】
以下では、矢印Xで示される方向を「チューブ長手方向X」とも称し、矢印Zで示される方向を「チューブ積層方向Z」とも称する。
図2に示されるように、隣り合うチューブ210,210の間にはアウターフィン213が配置されている。アウターフィン213は、薄い金属版を波状に屈曲させることにより形成される、いわゆるコルゲートフィンからなる。アウターフィン213は、チューブ210,210の間を流れる空気との接触面積を増加させることにより、チューブ210の内部を流れる第1熱媒体と空気との熱交換を促進させるために設けられている。
【0016】
図1に示されるように、チューブ積層方向Zにおけるチューブ210の積層構造の両端部にはサイドプレート211,212がそれぞれ配置されている。サイドプレート211,212はチューブ長手方向Xに延びるように形成されている。サイドプレート211,212はチューブ210の積層構造を補強するために設けられている。
【0017】
図1に示されるように、タンク22,23は、コア部21のチューブ長手方向Xの両端にそれぞれ取り付けられている。タンク22,23は、チューブ積層方向Zに延びるように形成される筒状の部材からなる。タンク22,23は、複数のチューブ210の両端部にそれぞれ接続されている。複数のチューブ210のそれぞれの一端部は、一方のタンク22の外壁を貫通してタンク22の内部空間に配置されている。複数のチューブ210のそれぞれの他端部は、他方のタンク23の外壁を貫通してタンク23の内部空間に配置されている。タンク22には、その内部に第1熱媒体を流入させるための流入口220が設けられている。タンク23には、その内部の第1熱媒体を外部に流出させるための流出口230が設けられている。
【0018】
第1熱交換部20では、流入口220からタンク22に流入した第1熱媒体が複数のチューブ210の内部流路に分配される。各チューブ210に第1熱媒体が流れる際に、各チューブ210の内部を流れる第1熱媒体と、各チューブ210の外部を流れる空気との間で熱交換が行われることにより、空気の熱が第1熱媒体に吸収される。したがって第1熱交換部20は吸熱器として動作する。各チューブ210を流れた第1熱媒体はタンク23で集められた後、流出口230から排出される。
【0019】
本実施形態の熱交換器10は、チューブ長手方向X及び空気流れ方向Yが水平方向となり、且つチューブ積層方向Zが鉛直方向となるように配置される。したがって、第1熱交換部20は、第1熱媒体が水平方向に流れる、いわゆるクロスフロー型の構造を有している。
【0020】
第2熱交換部30は第1熱交換部20に対して空気流れ方向Yの上流側に配置されている。よって、熱交換器10は、第1熱交換部20及び第2熱交換部30を空気流れ方向Yに並べて有するものである。第2熱交換部30は第1熱交換部20と略同一の構造を有している。すなわち、第2熱交換部30はコア部31とタンク32,33とを有している。コア部31は複数のチューブ310とサイドプレート311,312とにより構成されている。タンク32には流入口320が設けられている。タンク33には流出口330が設けられている。第2熱交換部30では、各チューブ310の内部を流れる第2熱媒体と、各チューブ310の外部を流れる空気との間で熱交換が行われることにより、第2熱媒体の熱が空気に放散される。したがって第2熱交換部30は放熱器として動作する。
【0021】
熱交換器10は、第1熱交換部20のタンク22及び第2熱交換部30のタンク32に取り付けられるブラケットと、第1熱交換部のタンク23及び第2熱交換部30のタンク33に取り付けられるブラケットとを更に備えている。各ブラケットは、熱交換器10を車体に固定するために用いられる。各ブラケットの構造は基本的には同一であるため、以下では、第1熱交換部のタンク22及び第2熱交換部30のタンク32に取り付けられるブラケットの構造について代表して説明する。
【0022】
なお、以下では、矢印Zで示される方向を「鉛直方向Z」と称し、矢印Xで示される方向を「第1水平方向X」と称し、矢印Yで示される方向を「第2水平方向Y」と称する。また、鉛直方向Zの上方を「鉛直方向上方Z1」と称し、鉛直方向Zの下方を「鉛直方向下方Z2」と称する。
【0023】
また、図3に示されるように、タンク22,32において鉛直方向Zに沿って延びるように形成される筒状の部分をタンク外壁部221,321とそれぞれ称する。また、タンク外壁部221,321の鉛直方向下方Z2の開口部を閉塞するように設けられる部分をタンク底壁部222,322とそれぞれ称する。さらに、タンク外壁部221,321のうち、第2水平方向Yにおいて外側に位置する面を側面221a,321aとそれぞれ称する。また、図4に示されるように、タンク外壁部221,321のうち、チューブ210が接続される面を内面221b,321bと称するとともに、内面221b,321bとは反対側の面を、図3に示されるように外面221c,321cと称する。
【0024】
図5及び図6に示されるように、ブラケット40は側壁41と底壁42とを有している。ブラケット40は樹脂により形成されている。ブラケット40の形成に用いられる樹脂は、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、及びポリアセタール樹脂等である。
側壁41は底辺部410と側辺部411,412とを有しており、鉛直方向Zに直交する断面形状が凹状をなしている。底辺部410は、側壁41において鉛直方向Zに沿って延びるように形成される板状の部分である。側辺部411,412は、底辺部410の幅方向の両端面から第2水平方向Yに延びるように形成されている部分である。
【0025】
側壁41の一方の側辺部411の内面には複数のリブ413が形成されている。図5に示されるように、リブ413は、側辺部411,412のそれぞれの内面における第1水平方向Xの一端部から他端部まで矩形状に延びるように形成されている。複数のリブ413は鉛直方向Zにおいて所定の間隔を有して配置されている。図6に示されるように、側壁41の他方の側辺部412の内面にも同様にリブ414が形成されている。各リブ413,414は第2水平方向Yにおいて対向するように配置されている。
【0026】
図5及び図6に示されるように、底壁42は、鉛直方向下方Z2における側壁41の開口部分を閉塞するように設けられている。第1水平方向Xにおける底壁42の先端面420には係合爪43,44が形成されている。係合爪43は、底壁42の先端面420においてその中央部よりも側辺部411側に配置されている。係合爪44は、底壁42の先端面420においてその中央部よりも側辺部412側に配置されている。
【0027】
底壁42の鉛直方向下方Z2の底面にはマウントピン47が形成されている。マウントピン47は、車体に設けられるピン挿入部に挿入される部分である。
以下では、ブラケット40において側壁41及び底壁42により区画される空間のうち、それらの内側に形成されている空間を内部空間Saと称し、側壁41及び底壁42を挟んで内部空間Saの反対側に形成されている空間を外部空間Sbと称する。
【0028】
側壁41における底壁42に隣接する部分には貫通孔45,46が形成されている。貫通孔45,46は側壁41をその内面から外面に貫通するように形成されている。貫通孔45,46は、第1水平方向Xにおいて係合爪43,44と並ぶようにそれぞれ配置されている。本実施形態では、貫通孔45,46がブラケット40の内部空間Saと外部空間Sbとを連通させる連通部に相当する。
【0029】
図5及び図6に示されるブラケット40は、図7図9に示されるようにタンク22,32に装着される。タンク22,32はブラケット40の内部空間Saに挿入される。したがって、ブラケット40の内部空間Saは、タンク22,32が配置される空間に相当する。図7図9に示されるようにタンク22,32にブラケット40が装着されると、ブラケット40の側壁41がタンク22,32のそれぞれの外壁部221,321に対向し、且つブラケット40の底壁42がタンク22,32のそれぞれの底壁部222,322に対向する。より詳細には、ブラケット40の側壁41の一方の側辺部411は、タンク22の外壁部221の側面221aに対向するように配置される。また、ブラケット40の側壁41の他方の側辺部412は、タンク32の外壁部321の側面321aに対向するように配置される。さらに、ブラケット40の側壁41の底辺部410は、タンク22,32のそれぞれの外壁部221,321の外面221c,321cに対向するように配置される。
【0030】
図8及び図9に示されるように、ブラケット40の側辺部411,412に形成される複数のリブ413の先端面にタンク22の側面221aが接触し、且つブラケット40の他方の側辺部412に形成される複数のリブ414の先端面にタンク32の側面321aが接触することで、各リブ413,414がタンク22を第2水平方向Yにおいて挟持している。これにより第2水平方向Yにおいてブラケット40がタンク22,32に係合している。また、図7及び図8に示されるように、ブラケット40の係合爪43,44がタンク22,32のそれぞれの外壁部221,321の内面221b,321bに係合することにより、第1水平方向Xにおいてブラケット40がタンク22,32に係合している。このような係合構造によりブラケット40がタンク22,32に対して固定されている。このブラケット40のマウントピン47が車体のピン挿入部に挿入されて固定されることで、熱交換器10がブラケット40を介して車体に固定されることとなる。
【0031】
一方、熱交換器10では、第1熱交換部20が吸熱動作を行うため、そのタンク22の外周面に凝縮水が生成され易い。仮にタンク22の外周面に凝縮水が生成された場合、その凝縮水は鉛直方向下方Z2に流れる。そのため、ブラケット40とタンク22,32との間に形成される隙間のうち、鉛直方向下方Z2の部分に凝縮水が溜まり易い。この凝縮水が凍結して体積膨張するとブラケット40が破損するおそれがある。
【0032】
この点、本実施形態のブラケット40では、ブラケット40とタンク22,32との間に形成される隙間に溜まる凝縮水が貫通孔45,46を通じて外部空間Sbに排出される。そのため、ブラケット40とタンク22,32との間に形成される隙間に凝縮水が溜まり難いため、凝縮水の凍結に起因するブラケット40の破損を抑制することができる。
【0033】
以上説明した本実施形態の熱交換器10のブラケット40によれば、以下の(1)~(4)に示される作用及び効果を得ることができる。
(1)ブラケット40の側壁41において底壁42に隣接する部分には、ブラケット40の内部空間Saと外部空間Sbとを連通させる連通部として、側壁41をその内面から外面に貫通する貫通孔45,46が形成されている。この構成によれば、ブラケット40とタンク22,32との間の隙間に形成される凝縮水、換言すればブラケット40の内部空間Saに形成される凝縮水が貫通孔45,46を通じて外部空間Sbに排出されるため、凝縮水の凍結に起因するブラケット40の破損を抑制することができる。
【0034】
(2)ブラケット40の製造は、金型を用いた樹脂成形により行われる。本実施形態のブラケット40は、係合爪43,44がブラケット40の内部空間Saに突出しているため、金型を用いてブラケット40の側壁41及び底壁42を樹脂成形した後、その金型をブラケット40の内部空間Saから引き抜く際に、係合爪43,44が金型に接触することにより金型を抜くことができない可能性がある。この点、本実施形態のブラケット40の係合爪43,44は貫通孔45,46の延長上に設けられている。この構成によれば、貫通孔45,46に挿入される金型を用いて係合爪43,44を成形した後、その金型を貫通孔45,46から引き抜くことができる。よって、係合爪43,44を有するブラケット40を容易に成形することができる。
【0035】
(3)本実施形態のブラケット40のように、鉛直方向Zに直交する側壁41の断面形状が凹状をなす場合、その底辺部410の鉛直方向下方Z2側の部分に凝縮水が特に溜まり易い。この点、本実施形態のブラケット40では、側壁41の底辺部410における鉛直方向下方Z2側の部分に貫通孔45,46が形成されているため、凝縮水の排水性を効果的に向上させることができる。
【0036】
(4)ブラケット40の側壁41の内面には、タンク22,32に向かって突出するようにリブ413,414が形成されている。この構成によれば、リブ413,414によりタンク22,32を把持することでブラケット40をタンク22,32に固定することができる。また、ブラケット40の内部空間Saに生成される凝縮水が鉛直方向下方Z2に向かって流れた後、リブ413,414における鉛直方向上方Z1の外面413a,413bに当たると、凝縮水がリブ413,414の外面413a,413bに沿って第1水平方向Xに流れるようになる。これにより、ブラケット40における第1水平方向Xの開口部分から凝縮水を排水することもできるため、凝縮水の排水性を更に向上させることができる。
【0037】
(第1変形例)
次に、第1実施形態のブラケット40の第1変形例について説明する。
図10に示されるように、本変形例のブラケット40には、貫通孔45,46に代えて、開口部60が形成されている。開口部60は、ブラケット40の側壁41の底辺部410に形成されている。第1水平方向Xに直交する開口部60の断面形状は矩形状をなしている。開口部60は、底辺部410における底壁42に隣接する部分から鉛直方向上方Z1に延びるように形成されている。開口部60は、第1水平方向Xにおいて係合爪43,44の延長線上に設けられている。
【0038】
このような構造を有するブラケット40でも第1実施形態のブラケット40と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
(第2変形例)
次に、第1実施形態のブラケット40の第2変形例について説明する。
【0039】
図11に示されるように、本変形例のブラケット40には、複数の貫通孔48,49が更に形成されている。貫通孔48,49は、ブラケット40の側壁41の底辺部410をその内面から外面に貫通するように形成されている。複数の貫通孔48は、貫通孔45に対して鉛直方向上方Z1にずれた位置に配置され、且つ鉛直方向Zに所定の間隔を有して配置されている。複数の貫通孔48は、図3に示されるタンク22における第1水平方向Xの外面221cに対向するように配置されている。複数の貫通孔49は、貫通孔46から鉛直方向上方Z1にずれた位置に配置され、且つ鉛直方向Zに所定の間隔を有して配置されている。複数の貫通孔49は、図3に示されるタンク32における第1水平方向Xの外面321cに対向するように配置されている。
【0040】
このような構造を有するブラケット40を用いれば、ブラケット40の内部空間Saに溜まる凝縮水が貫通孔48,49を通じて更に排出されるため、凝縮水の排出性を更に向上させることができる。
また、貫通孔48,49は鉛直方向Zにおいてリブ413,414からずれた位置に配置されている。この構成によれば、鉛直方向Zにおいて隣り合うリブ413,413の間に存在する凝縮水が貫通孔48を通じて排出されるとともに、鉛直方向Zにおいて隣り合うリブ414,414の間に存在する凝縮水が貫通孔49を通じて排出される。そのため、凝縮水の排出性を一層向上させることができる。
【0041】
(第3変形例)
次に、第1実施形態のブラケット40の第3変形例について説明する。
図12に示されるように、本変形例のブラケット40では、複数の貫通孔48,49が鉛直方向Zにおいてリブ413,414と重なる位置に配置されている。この構成によれば、リブ413,414の外面413a,413bに沿って流れる凝縮水が貫通孔48,49を通じて外部空間Sbに排出されるようになる。そのため、凝縮水の排出性を更に向上させることができる。
【0042】
(第4変形例)
次に、第1実施形態のブラケット40の第4変形例について説明する。
図13に示されるように、本変形例のブラケット40では、第2水平方向Yに直交するリブ413の断面形状が台形状をなしている。リブ413において鉛直方向上方Z1に位置する外面413aは、ブラケット40の開口部に向かうほど鉛直方向下方Z2に向かうように第2水平方向Yに対して傾斜している。リブ414も同様に形成されている。
【0043】
このような構成によれば、リブ413,414の外面413a,413bに達した凝縮水が外面413a,413bに沿ってブラケット40の開口部に向かって流れ易くなるため、凝縮水の排出性を更に向上させることができる。なお、リブ413,414の形状は台形状に限らず三角状であってもよい。
【0044】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のブラケット40について説明する。以下、第1実施形態のブラケット40との相違点を中心に説明する。
図14に示されるように、本実施形態のブラケット40では、底壁42に貫通孔50が形成されている。貫通孔50は、底壁42をその内面から外面に貫通し、且つマウントピン47の中央部を貫通するように形成されている。
【0045】
以上説明した本実施形態のブラケット40であっても、上記の(1)に示される作用及び効果と同一又は類似の作用及び効果を得ることができる。
<他の実施形態>
なお、各実施形態は、以下の形態にて実施することもできる。
【0046】
・凝縮水は、放熱器として動作する第2熱交換部30のタンク32よりも、吸熱器として動作する第1熱交換部20のタンク22において特に発生し易い。そのため、第1実施形態のブラケット40に関しては、タンク32に対向するように配置される貫通孔46を排除し、タンク22に対向するように配置される貫通孔45のみが形成されていてもよい。この構成であっても、凝縮水の排水性を確保することは可能である。
【0047】
・第2実施形態のブラケット40では、底壁42においてマウントピン47が設けられている部分とは異なる部分を貫通するように貫通孔50が形成されていてもよい。
・本開示は上記の具体例に限定されるものではない。上記の具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素、及びその配置、条件、形状等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0048】
Sa:内部空間
Sb:外部空間
10:熱交換器
20:第1熱交換部
22:タンク
30:第2熱交換部
40:ブラケット
41:側壁
42:底壁
43:係合爪
45,46:貫通孔(連通部)
47:マウントピン
48,49:貫通孔(連通部)
50:貫通孔(連通部)
60:開口部(連通部)
210:チューブ
221:タンク外壁部
222:タンク底壁部
410:底辺部
411,412:側辺部
413,414:リブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図14