(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】呼処理装置、呼処理プログラム、及び呼処理方法
(51)【国際特許分類】
H04M 3/46 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H04M3/46
(21)【出願番号】P 2020025097
(22)【出願日】2020-02-18
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】細井 秀樹
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-030136(JP,A)
【文献】特開2000-083105(JP,A)
【文献】特開2018-182474(JP,A)
【文献】特開平10-093717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0170160(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M 3/00
H04M 3/38- 3/58
H04M 11/00-11/10
H04L 12/50-12/66
H04L 45/00-49/9057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グループ化された複数のゲートウェイで構成される代表組を用いて前記各ゲートウェイと通信を行う呼処理装置であって、
少なくとも過去に行った当該呼処理装置から前記各ゲートウェイへのセッション開始要求に対する無応答の発生有無の情報を含む回線情報を記憶する記憶部と、
前記代表組に対する前記セッション開始要求があった場合、前記代表組から通信を行う一のゲートウェイを、前記回線情報を加味して選択する代表組選択部と、
前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答の発生を検出し、検出した無応答の発生情報を前記回線情報に書き込む無応答検出部と
を有することを特徴とする呼処理装置。
【請求項2】
前記無応答検出部は、前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求から所定時間経過しても選択したゲートウェイから応答が無い場合、無応答が発生したと検出することを特徴とする請求項1に記載の呼処理装置。
【請求項3】
前記無応答検出部は、前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答が外部に通知された場合、無応答が発生したと検出することを特徴とする請求項1に記載の呼処理装置。
【請求項4】
前記代表組選択部は、前記回線情報に無応答の発生があったゲートウェイが存在する場合、無応答の発生があったゲートウェイを選択から除外することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の呼処理装置。
【請求項5】
前記代表組選択部は、前記回線情報に無応答の発生があったゲートウェイが存在する場合でも、他のゲートウェイが所定の条件に合致する場合には、無応答の発生があったゲートウェイを通信を行うゲートウェイとして選択することを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の呼処理装置。
【請求項6】
前記所定の条件は、前記代表組選択部で選択したゲートウェイから前記セッション開始要求に対して話中のため通信できない旨のメッセージを受信したことであることを特徴とする請求項5に記載の呼処理装置。
【請求項7】
前記回線情報に書き込まれたゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答の発生情報は、無応答の発生があったゲートウェイと通信の確認がとれたことを契機としてクリアすることを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の呼処理装置。
【請求項8】
グループ化された複数のゲートウェイで構成される代表組を用いて前記各ゲートウェイと通信を行う呼処理装置に搭載されるコンピューターを、
少なくとも過去に行った当該呼処理装置から前記各ゲートウェイへのセッション開始要求に対する無応答の発生有無の情報を含む回線情報を記憶する記憶部と、
前記代表組に対する前記セッション開始要求があった場合、前記代表組から通信を行う一のゲートウェイを、前記回線情報を加味して選択する代表組選択部と、
前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答の発生を検出し、検出した無応答の発生情報を前記回線情報に書き込む無応答検出部と
して機能させることを特徴とする呼処理プログラム。
【請求項9】
グループ化された複数のゲートウェイで構成される代表組を用いて前記各ゲートウェイと通信を行う呼処理装置に使用する呼処理方法であって、
記憶部は、少なくとも過去に行った当該呼処理装置から前記各ゲートウェイへのセッション開始要求に対する無応答の発生有無の情報を含む回線情報を記憶し、
代表組選択部は、前記代表組に対する前記セッション開始要求があった場合、前記代表組から通信を行う一のゲートウェイを、前記回線情報を加味して選択し、
無応答検出部は、前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答の発生を検出し、検出した無応答の発生情報を前記回線情報に書き込む
ことを特徴とする呼処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼処理装置、呼処理プログラム、及び呼処理方法に関し、例えば、代表組のサービスを実施する呼処理装置に適用し得る。
【背景技術】
【0002】
従来、代表組と呼ばれる仕組みが存在する(例えば、特許文献1を参照)。代表組は、複数の回線をグループ化(代表組化)し、代表番号に着信があった場合に代表組内の空き回線に着信をスライドさせるというサービスである。
【0003】
具体的に、SIP(Session Initiation Protocol)端末を収容する複数のゲートウェイ(GW)を備える通信システムの場合、ゲートウェイ単位で代表組化することが考えられる。この場合、SIP端末間で呼接続処理を行うコールエージェント(CA)は、代表番号に着信があった場合には、所定のアルゴリズム(順次サーチ方式、ラウンドロビン方式等)を用いて代表組化したグループ内の空き回線(或るGW)に着信をスライドさせることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の従来システムの場合、所定のアルゴリズムで捕捉した回線(先頭回線)の端末(GW)が故障等した場合に問題が生じる。即ち、先頭回線へのREGISTER登録情報がCA上から消えるまで代表番号に着信する度に、(1)先頭回線を捕捉してINVITE送信、(2)INVITE無応答タイムアウト(例えば、数十秒経過)、(3)次回線にスリップという動作となり、故障している端末に対して回線捕捉動作を行ってしまう。
【0006】
そのため、代表組化した回線(端末)に障害が生じた場合でも、効率的に空き回線を捕捉できる呼処理装置、呼処理プログラム、及び呼処理方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の本発明は、グループ化された複数のゲートウェイで構成される代表組を用いて前記各ゲートウェイと通信を行う呼処理装置であって、(1)少なくとも過去に行った当該呼処理装置から前記各ゲートウェイへのセッション開始要求に対する無応答の発生有無の情報を含む回線情報を記憶する記憶部と、(2)前記代表組に対する前記セッション開始要求があった場合、前記代表組から通信を行う一のゲートウェイを、前記回線情報を加味して選択する代表組選択部と、(3)前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答の発生を検出し、検出した無応答の発生情報を前記回線情報に書き込む無応答検出部とを有することを特徴とする。
【0008】
第2の本発明の呼処理プログラムは、グループ化された複数のゲートウェイで構成される代表組を用いて前記各ゲートウェイと通信を行う呼処理装置に搭載されるコンピューターを、(1)少なくとも過去に行った当該呼処理装置から前記各ゲートウェイへのセッション開始要求に対する無応答の発生有無の情報を含む回線情報を記憶する記憶部と、(2)前記代表組に対する前記セッション開始要求があった場合、前記代表組から通信を行う一のゲートウェイを、前記回線情報を加味して選択する代表組選択部と、(3)前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答の発生を検出し、検出した無応答の発生情報を前記回線情報に書き込む無応答検出部として機能させることを特徴とする。
【0009】
第3の本発明は、グループ化された複数のゲートウェイで構成される代表組を用いて前記各ゲートウェイと通信を行う呼処理装置に使用する呼処理方法であって、(1)記憶部は、少なくとも過去に行った当該呼処理装置から前記各ゲートウェイへのセッション開始要求に対する無応答の発生有無の情報を含む回線情報を記憶し、(2)代表組選択部は、前記代表組に対する前記セッション開始要求があった場合、前記代表組から通信を行う一のゲートウェイを、前記回線情報を加味して選択し、(3)無応答検出部は、前記代表組選択部で選択したゲートウェイへの前記セッション開始要求に対する無応答の発生を検出し、検出した無応答の発生情報を前記回線情報に書き込むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、代表組化した回線(端末)に障害が生じた場合でも、効率的に空き回線を捕捉できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係るコールエージェント(CA)の機能的構成を示すブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係るコールエージェント(CA)に代表番号の着信があった場合の動作について示すシーケンス図である。
【
図4】第1の実施形態に係る代表組回線情報の一例を示す説明図である。
【
図5】第2の実施形態に係るコールエージェント(CA)に代表番号の着信があった場合の動作について示すシーケンス図である。
【
図6】第2の実施形態に係る代表組回線情報の一例を示す説明図である。
【
図7】変形実施形態に係るコールエージェント(CA)に代表番号の着信があった場合の動作について示すシーケンス図である。
【
図8】変形実施形態に係る代表組回線情報の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(A)第1の実施形態
以下、本発明による呼処理装置、呼処理プログラム、及び呼処理方法の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0013】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)全体構成
図2は、第1の実施形態に係る通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【0014】
図2に示す通信システム1は、ネットワークNと接続されている。また、通信システム1は、呼処理装置としてのコールエージェント(CA)10と、セッションボーダーコントローラー(SBC)20(20-1、20-2)と、ゲートウェイ(GW)30(30-1~30-n)と加入者端末40とを有している。なお、通信システム1において、GW30及びSBC20の数は限定されないものである。
【0015】
CA10は、SBC20-1を介してネットワークNに接続している。例えば、CA10はネットワークN(ネットワークNを介した電話端末)からの電話通信の呼について、GW30のいずれかとSIPメッセージを用いた呼制御処理を行う。なお、この実施形態では、CA10は、代表組化した複数のGW30の回線状態(INVITE無応答の有無)を管理し、ネットワークNから代表番号に着信があった場合には、GW30の回線状態を考慮して着信させるGW30を決定する。
【0016】
SBC20は、例えば異なる事業者網間の境界に設置され、SIPやRTP(Real-time Transport Protocol)などによる通話や呼制御などの通信を中継する。また、SBC20は、NAT(Network Address Translation)によるIPアドレスの相互変換、不正通信を遮断するファイアウォール機能、帯域制御や優先制御といったQoS(Quality of Service)機能等を有する。この実施形態では、通信システム1がSBC20を2台備える例を示すが、変形例として省略しても良い。
【0017】
GW30は、複数の加入者端末40を収容し、例えば加入者端末側のネットワークとSBC20-2側のネットワークとのプロトコル変換等を行う。なお、
図1では、GW30-1のみ加入者端末40(40-1~40-m)を図示しているが、図面上省略しているだけで他のGW30も実際には加入者端末40を有している。
【0018】
加入者端末40は、GW30と接続され、GW30による呼接続処理により、相手先の電話端末と通信(通話)する。なお、加入者端末40の仕様は限定されないものであり、例えばIP電話端末でも良いし、ISDN端末でも良い。
【0019】
(A-1-2)CA10の詳細構成
図1は、第1の実施形態に係るコールエージェント(CA)の機能的構成を示すブロック図である。
図1において、CA10は、通信制御部11と、記憶部12と、通信部13とを有する。
【0020】
CA10は、プロセッサやメモリ等を有するコンピュータにプログラム(実施形態に係る呼処理プログラム)をインストールして実現するようにしても良いが、この場合でも、CA10は機能的には
図1を用いて示すことができる。なお、CA10については一部又は全部をハードウェア的に実現するようにしても良い。
【0021】
通信制御部11は、GW30(加入者端末40)とネットワークNに接続される電話端末とをSIPメッセージ等を用いて通信(接続)し、各端末に対する電話通信の呼を確立させる等の呼制御処理(通信制御処理)を行うものである。通信制御部11は、後述する記憶部12に記憶されている各種データを用いて呼制御処理を行う。また、通信制御部11は、着信回線選択部100及び無応答検出部101を備え、代表番号の着信に関して以下の制御を行う。
【0022】
着信回線選択部100は、ネットワークNから代表番号に着信があった場合に、後述する代表組回線情報Iを用いて、所定のアルゴリズム(順次サーチ方式、ラウンドロビン方式等)に従い、実際に着信させるSIP回線(GW30)を選択(決定)するものである。ただし、この実施形態では、着信回線選択部100は、無応答検出部101で1度でもINVITE無応答を検出したGW30については、当該GW30を着信候補から除外した上で、残りの代表組内のGW30から着信させる回線を選択する。
【0023】
無応答検出部101は、着信回線選択部100で決定したGW30にINVITEを送信後、INVITEに対する無応答を検出するものである。例えば、無応答検出部101は、INVITEを中継するSBC20-2からSIP408のエラー(要求がタイムアウト)を受信した場合や、INVITE送信後、自装置で設定した所定時間のタイマ(例えば30秒前後)が経過(タイムアウト)した場合に、着信先のGW30がINVITE無応答と判断する。
【0024】
記憶部12は、CA10において種々の処理に適用されるデータを記憶する記憶手段である。記憶部12には、例えば加入者情報T及び代表組回線情報Iが記憶される。
【0025】
加入者情報Tは、例えば、SIPメッセージのREGISTERによる加入者のロケーション情報等を各加入者(GW30)ごとに、管理するための情報である。REGISTER未登録のGW30は、着信回線選択部100の着信先の選択から除外される。
【0026】
代表組回線情報Iは、代表組に関する各SIP回線(GW30)の状態を管理するための情報である。代表組回線情報Iには、少なくとも着信無応答の情報(INVITE無応答発生有無)が書き込まれる。
【0027】
通信部13は、CA10におけるネットワークインタフェースの機能を担っている。この実施形態では、CA10は、SBC20に接続されている。
【0028】
(A-2)第1の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第1の実施形態の通信システム1の動作を説明する。この実施形態では、ネットワークN上の端末(図示せず)から代表番号に着信があった場合を例に説明する。
【0029】
図3は、第1の実施形態に係るコールエージェント(CA)に代表番号の着信があった場合の動作について示すシーケンス図である。
【0030】
SBC20-1は、ネットワークNからのINVITEメッセージをCA10へ転送する(S101)。
【0031】
CA10は、着信回線選択部100を用いて着信するGW30を選択して、SBC20-2を介して選択したGW30へINVITEメッセージを送信する(S102)。
【0032】
ここで、着信回線選択部100は、例えば、
図4の代表組回線情報Iに従い、着信先を選択する。
図4において、代表組回線情報Iは、所定の代表番号に属する各GW30を示す「SIP回線」と、各GW30のREGISTERの登録状態を示す「REGISTER状態」と、各GW30のSIP回線状態を示す「回線状態」の項目を有する。
【0033】
REGISTER状態の項目は、例えば「REGISTER登録済」と「REGISTER未登録」で管理する。着信回線選択部100はREGISTER状態が「REGISTER登録済」の場合に着信可能で、一方「REGISTER未登録」の場合には着信不可能と判定する。
【0034】
また、回線状態の項目は、例えば各GW30と通信可能であることを示す「通常」と、CA10から各GW30に過去に1度INVITEを送信したが無応答であったことを示す「無応答」とで管理する。着信回線選択部100は、回線状態が「通常」の場合に着信可能で、一方「無応答」の場合には着信不可能と判定する。
【0035】
例えば、着信回線選択部100は、
図4(A)の代表組回線情報I(初期状態)に従い、順次サーチ方式で着信候補を確認すると、先頭のGW30-1が、REGISTER登録済で、回線状態が通常であるので、GW30-1を着信先に選択する。以下では、
図4(A)に従い、選択したGW30-1に対してINVITEメッセージを送信したことを前提とする。
【0036】
SBC20-2は、CA10からGW30-1に対するINVITEメッセージを受信すると、当該INVITEメッセージをGW30-1に転送し、所定時間の応答タイマを設定する(S103)。以下、GW30-1に障害が発生してINVITEメッセージに対する応答が無いものとする。
【0037】
SBC20-2は、先述のステップS103で、設定したタイマがタイムアウトすると、SIP408のメッセージ(要求がタイムアウト)をCA10に送信する(S104)。
【0038】
CA10の無応答検出部101は、SBC20-2から408のSIPメッセージを受信すると、
図4(B)に示すように、GW30-1のデータの回線状態を通常から無応答に変更する(S105)。
【0039】
続いて、着信回線選択部100は、次に着信するGW30を選択して、SBC20-2を介して選択したGW30へINVITEメッセージを送信する(S106)。即ち、着信回線選択部100は、
図4(B)の代表組回線情報I(最初の着呼後)に従い、順次サーチ方式で着信候補を確認すると、先頭のGW30-1の回線状態が「無応答」であるので、着信候補から除外し、次のGW30-2(REGISTER登録済で、回線状態が通常)を着信先に選択する。以下では、
図4(B)に従い、選択したGW30-2に対してINVITEメッセージを送信したことを前提とする。
【0040】
SBC20-2は、CA10からGW30-2に対するINVITEメッセージを受信すると、当該INVITEメッセージをGW30-2に転送し、所定時間の応答タイマを設定する(S106)。このステップS106の後には、GW30-2が収容する加入者端末40を呼び出し、CA10と従来と同様のSIPシーケンス処理を行うだけであるので、詳細な説明を省略する。
【0041】
次に、先述のステップS101~S106の代表番号に対する着信が終了し、続けて当該代表番号に対する新たな着信(ステップS107)があった場合を説明する。
【0042】
着信回線選択部100は、先述のステップS102及びステップS106と同様に着信するGW30を選択して、SBC20-2を介して選択したGW30へINVITEメッセージを送信する(S108)。この場合、先に述べたように着信回線選択部100は、
図4(B)の代表組回線情報Iに従い、先頭のGW30-1(無応答)を着信候補から除外し、次のGW30-2(REGISTER登録済で、回線状態が通常)を着信先に選択する。以下、従来のSIPシーケンス処理と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0043】
(A-3)第1の実施形態の効果
第1の実施形態によれば、CA10は、代表番号に対する着信で、選択された回線のGW30が一度、INVITE無応答を検出した以降では、次の代表選択時にINVITE無応答を検出した回線(GW30)へINVITEを送信メッセージを送信することなく次回線へスリップ着信することができる。即ち、INVITEを送信メッセージの送信及びタイムアウトによる余計な処理(言い換えれば、無駄な時間)を防止できるため、代表番号に対する着信を効率的に処理することができる。
【0044】
(B)第2の実施形態
以下、本発明による呼処理装置、呼処理プログラム、及び呼処理方法の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳述する。
【0045】
(B-1)第2の実施形態の構成
第2の実施形態の通信システム1及びCA10の構成についても、第1の実施形態と同様に
図1及び
図2を用いて示すことができる。ただし、着信回線選択部100の内容が第1の実施形態と異なるので、ここでは異なる点を中心に説明を行う。
【0046】
第1の実施形態の着信回線選択部100ではINVITE無応答を検出したGW30を着信させる回線から除外していたが、一方、第2の実施形態の着信回線選択部100では、所定のアルゴリズムで一周しても代表組の中に着信させる回線が見つからなかった場合、例外的に無応答のGW30を着信させる回線として決定する。これ以上の詳細は動作の項で述べる。
【0047】
(B-2)第2の実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する第2の実施形態の通信システム1の動作を説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態と同様にネットワークN上の端末(図示せず)から代表番号に着信があった場合を例に説明する。
【0048】
図5は、第2の実施形態に係るコールエージェント(CA)に代表番号の着信があった場合の動作について示すシーケンス図である。
【0049】
なお、
図5におけるステップS101~ステップS103の処理は、先述の
図3で説明を行った処理と同様であるので説明を省略する。以下では、第2の実施形態の通信システム1の特有の処理であるステップS201~ステップS204の処理を中心に説明を行う。
【0050】
GW30-1は、CA10からINVITEメッセージを受信しても収容する加入者端末40が話中であるため、SIP486のメッセージ(話中)をSBC20-2を介して、CA10へ返信する(S201、S202)。
【0051】
CA10は、GW30-1が話中のため、別の着信させる回線を選択する(S203)。例えば、第2の実施形態の着信回線選択部100は、
図6の代表組回線情報Iに従い、着信させる回線(GW30)を選択する。
図6の代表組回線情報Iは、先述の
図4でも説明した「SIP回線」、「REGISTER状態」、及び「回線状態」に加えて、「代表選択条件」の項目を有する。
【0052】
「代表選択条件」の項目は、着信回線選択部100で所定のアルゴリズムにより代表組を一周した際の履歴(選択履歴)であり、INVITEメッセージを送信して着信させた回線には「着信」が、一方、着信させなかった(選択しなかった)回線には「スリップ」と記載される。また、
図6の2周目の「-」は1周目の結果により選択から除外された回線であることを示している。
【0053】
図6の1周目の選択代表条件は、先述のステップS102の処理の際にINVITEメッセージを送信するGW30を選択したときの履歴である。即ち、GW30-1はREGISTER登録済で回線状態が通常であるので着信させる回線として選択され、また、GW30-2は回線状態が無応答であるのでスリップされ、GW30-3はREGISTER未登録であるのでスリップされたことが記載されている。
【0054】
そして、ステップS203で新たな着信させる回線を選択する場合(つまり2周目の場合)には、GW30-1が話中のため、全回線が選択不可の状態である。この場合、着信回線選択部100は、例外的に1周目で回線状態が無応答でスリップと判断された回線(GW30-2)を着信先に選択する。
【0055】
CA10は、着信回線選択部100で選択したGW30-2にINVITEメッセージを送信する(S204)。これ以降のSIPシーケンス処理は従来と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0056】
なお、CA10は、INVITEメッセージを送信したGW30-2から返答がない場合(つまり、無応答が回復していない場合)、再度、着信回線選択部100で着信させる回線を選択せずに(つまり、3周目は実施せずに)、ネットワークNに接続不可のメッセージを返信して良い。
【0057】
(B-3)第2の実施形態の効果
第2の実施形態によれば、第1の実施形態の効果に加えて以下の効果を奏する。
【0058】
第2の実施形態のCA10は、所定の条件に合致する場合(代表組内の回線を一周しても全回線選択不可の場合)、例外的にINVITE無応答を検出した回線(GW30)を選択してINVITEメッセージを送信することとした。これにより、過去に無応答を検出した回線が復旧していれば、呼接続処理が可能となる。
【0059】
(C)他の実施形態
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0060】
(C-1)上記第2の実施形態では、所定の条件に合致する場合に、例外的にINVITE無応答を検出した回線(GW30)を選択してINVITEメッセージを送信する例を示したが、
図7及び
図8のような場合でも同様の処理を行っても良い。
【0061】
図7におけるステップS101~ステップS104の処理、及びステップS204の処理は、先述の
図3及び
図5で説明を行った処理と同様であるので説明を省略する。以下では、変形例の通信システム1の特有の処理であるステップS301の処理を中心に説明を行う。
【0062】
CA10は、1周目で選択したGW30-1が無応答だったため、別の着信させる回線を選択する(S301)。例えば、変形例の着信回線選択部100は、
図8の代表組回線情報Iに従い、着信させる回線(GW30)を選択する。
図8の代表組回線情報Iは、基本的に先述の
図6と同様であるが、代表選択条件の1周目のGW30-1が無応答である点が異なる。
【0063】
この場合(つまり、2周目の場合)、着信回線選択部100は、第2の実施形態と同様に例外的に1周目で回線状態が無応答でスリップと判断された回線(GW30-2)を着信先に選択する。つまり、着信回線選択部100は、着前(1周目)で初めて無応答と判断されたGW30-1は着信先から除外する。直前に無応答と判断された回線に再度着信させても復旧している見込みは少ないからである。
【0064】
(C-2)上記第1及び第2の実施形態では、代表組回線情報Iの回線状態を復旧させる契機を特に述べなったが、例えば、無応答と判断された回線(GW30)からREGISTERメッセージ又はINVITE等のSIPメッセージを受信した場合、無応答と判断された回線へ保守コマンドにより強制的に無応答状態を解除した場合、CA10を再起動した場合等に代表組回線情報Iの回線状態を復旧(無応答から通常に変更)しても良い。
【符号の説明】
【0065】
1…通信システム、10…CA、11…通信制御部、12…記憶部、13…通信部、20…SBC、30…GW、40…加入者端末、100…着信回線選択部、101…無応答検出部、I…代表組回線情報、N…ネットワーク、T…加入者情報。