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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】合成樹脂製容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20240109BHJP
   B65D 23/00 20060101ALI20240109BHJP
   B65D 23/08 20060101ALI20240109BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B65D1/02 221
B65D1/02 111
B65D23/00 H ZAB
B65D23/08 B
B65D77/20 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020039901
(22)【出願日】2020-03-09
(65)【公開番号】P2021138433
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田所 洋一
(72)【発明者】
【氏名】清都 弘光
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 創哉
(72)【発明者】
【氏名】小宮 温
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131300(JP,A)
【文献】特許第4838907(JP,B1)
【文献】特開2012-071872(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 23/00-23/08
B65D 77/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層と、容器胴部に装着されたラベルとを備え、
前記容器本体には、周面が凹溝状に陥没してなる段差部が、所定の方向に沿って連続又は不連続に延在して設けられているとともに、
前記段差部の陥没した形状に追随して積層された前記被覆層には、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部が、前記段差部の溝底に沿って連続又は不連続に設けられており、
前記ラベルの少なくとも一部が、前記被覆層の外表面の前記線状薄肉部に近接する部位に接着されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項2】
所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層と、容器胴部に装着されたラベルとを備え、
前記容器本体には、周面が所定の幅で容器内方に窪んでなる帯状凹部が、所定の方向に沿って延在して設けられ、前記帯状凹部の幅方向の両端に、前記帯状凹部の底面から隆起して前記周面に連なる段差部が形成されているとともに、
前記帯状凹部の窪んだ形状に追随して積層された前記被覆層には、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部が、前記段差部に沿って設けられており、
前記ラベルの少なくとも一部が、前記被覆層の外表面の前記線状薄肉部に近接する部位に接着されていることを特徴とする合成樹脂製容器。
【請求項3】
前記ラベルが帯状に切り揃えられ、容器胴部に巻き付けられて装着されており、
前記ラベルの長手方向の一方の端縁側が、前記被覆層の前記線状薄肉部に近接する部位に接着されている請求項1又は2に記載の合成樹脂製容器。
【請求項4】
前記線状薄肉部が、少なくとも前記ラベルが装着された範囲内で、高さ方向に沿って延在している請求項1~3のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項5】
前記線状薄肉部が、前記ラベルが近接して接着された部位側を基端として、容器胴部の周面に沿って螺旋状に設けられた部位を含む請求項1~のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【請求項6】
前記容器本体には、前記ラベルが装着された範囲内に、周囲より低く落ち込んだ窪み部が、前記段差部に連接して設けられており、
前記被覆層には、前記窪み部の底面から隆起した前記窪み部の縁部上に位置する部位に、前記被覆層の厚みが変化して周囲に比して厚肉となった厚肉部が形成されているとともに、前記厚肉部に連接し、かつ、前記窪み部の底面側上に位置する部位に、前記被覆層の厚みが変化して周囲に比して薄肉となった薄肉部が形成されている請求項1~5のいずれか一項に記載の合成樹脂製容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の外周面側に被覆層が積層された合成樹脂製容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂を用いて有底筒状のプリフォームを形成し、次いで、このプリフォームを二軸延伸ブロー成形などによってボトル状に成形してなる合成樹脂製の容器が、各種飲料品、各種調味料等を内容物とする容器として広い分野で利用されている。
【0003】
この種の合成樹脂製容器は、近年、益々身近な存在となってきており、それに伴って様々な提案がなされている。例えば、特許文献1には、容器本体を従来と同様にリサイクルできるようにしながら、内容物の光による変質を抑制するために、容器本体の口部以外の全域に、着色されたプラスチック製部材を剥離除去可能に密着して設けた複合容器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-055523号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1には、容器本体からプラスチック製部材を剥離して除去するには、刃物等を用いてプラスチック製部材を切除したり、プラスチック製部材に設けた切断線に沿って剥離したりすることができると記載されているが、容器本体の口部以外の全域に密着したプラスチック製部材を剥離するのは、実際には容易ではない。
【0006】
本発明は、上記したような事情に鑑みてなされたものであり、所定の容器形状に成形された容器本体と、かかる容器本体の外周面側に積層された被覆層とを有する合成樹脂製容器であって、廃棄時に、容器本体と被覆層とを容易に分別することができる合成樹脂製容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明に係る合成樹脂製容器は、所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層と、容器胴部に装着されたラベルとを備え、前記容器本体には、周面が凹溝状に陥没してなる段差部が、所定の方向に沿って連続又は不連続に延在して設けられているとともに、前記段差部の陥没した形状に追随して積層された前記被覆層には、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部が、前記段差部の溝底に沿って連続又は不連続に設けられており、前記ラベルの少なくとも一部が、前記被覆層の外表面の前記線状薄肉部に近接する部位に接着された構成としてある。
また、本発明に係る合成樹脂製容器は、所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層と、容器胴部に装着されたラベルとを備え、前記容器本体には、周面が所定の幅で容器内方に窪んでなる帯状凹部が、所定の方向に沿って延在して設けられ、前記帯状凹部の幅方向の両端に、前記帯状凹部の底面から隆起して前記周面に連なる段差部が形成されているとともに、前記帯状凹部の窪んだ形状に追随して積層された前記被覆層には、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部が、前記段差部に沿って設けられており、
前記ラベルの少なくとも一部が、前記被覆層の外表面の前記線状薄肉部に近接する部位に接着された構成としてある。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、容器胴部に装着されたラベルを容器から引き剥がす際に、ラベルが近接して接着された部位側の被覆層を線状薄肉部に沿って破断して、被覆層を引き裂く起点を形成することができ、これによって、容器本体から被覆層を容易に分別することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る合成樹脂製容器の第一実施形態の概略を示す正面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3図1に示す容器の一部を拡大して示す要部拡大正面図である。
図4】本発明に係る合成樹脂製容器の第一実施形態について、ラベルを排除する過程の一例を示す説明図である。
図5】プリフォームの一例を示す縦断面図である。
図6】本発明の第一実施形態に係る合成樹脂製容器の製造方法に用いるブロー成形型の一例の概略を示す説明図である。
図7】本発明に係る合成樹脂製容器の第一実施形態を成形するブロー成形型の要部拡大端面図である。
図8図7に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突条部によって段差部が賦形される様子を示す説明図である。
図9図7に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突条部によって段差部が賦形される過程を示す説明図である。
図10】本発明に係る合成樹脂製容器の第二実施形態の概略を示す正面図である。
図11図10に示す容器の一部を拡大して示す要部拡大正面図である。
図12】本発明に係る合成樹脂製容器に設けられる段差部の変形例を示す要部拡大正面図である。
図13】本発明に係る合成樹脂製容器の第三実施形態の概略を示す正面図である。
図14図13のB-B断面図である。
図15】本発明に係る合成樹脂製容器の第三実施形態を成形するブロー成形型の要部拡大端面図である。
図16図15に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された帯状凸部によって帯状凹部が賦形される過程を示す説明図である。
図17図15に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された帯状凸部によって帯状凹部が賦形される過程を示す説明図である。
図18】本発明に係る合成樹脂製容器の第四実施形態の概略を示す正面図である。
図19図18のC-C断面図である。
図20】本発明に係る合成樹脂製容器の第四実施形態を成形するブロー成形型の要部拡大斜視図である。
図21図20のD-D端面図である。
図22図21に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突出部によって窪み部が賦形される過程を示す説明図である。
図23図21に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突出部によって窪み部が賦形される過程を示す説明図である。
図24図21に示すブロー成形型のキャビティ面に形成された突出部によって窪み部が賦形される過程を示す説明図である。
図25】本発明に係る合成樹脂製容器の変形例の概略を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る合成樹脂製容器1の概略を示す正面図であり、図2は、図1のA-A端面図である。
【0012】
これらの図に示す容器1は、口部2、胴部3、及び底部4を含む所定の容器形状に成形された容器本体1aと、容器本体1aの外周面側に積層された被覆層5とを有しており、容器胴部3には、ラベルLが装着されている。
図示する例において、容器1(容器本体1a)は、概ね円筒状に成形され、高さ方向上側の部位を口部2に向かって縮径させた胴部3と、いわゆるペタロイド形状に成形された底部4を含む容器形状としているが、容器1の形状は、これに限定されない。また、図示する例では、ラベルLを破線で示しており、帯状に切り揃えられ、容器1の胴部3の周方向全体に巻き付けられて装着されているラベルLが示されているが、ラベルLの形状、装着される範囲や位置は、これに限定されない。
【0013】
ここで、図1には、口部2から胴部3の上端側の一部を切り欠いて、その断面を示しているが、断面にあらわれる容器本体1a、被覆層5の肉厚を誇張して描写している。他の図面においても、断面にあらわれる容器本体1a、被覆層5などの肉厚を適宜誇張して描写している。
また、高さ方向とは、口部2を上にして容器1を水平面に正立させたときに、水平面に直交する方向をいうものとし、この状態(図1に示す状態)で容器1の上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0014】
口部2は、内容物の注ぎ口となる円筒状の部位である。かかる口部2の開口端側の側面には、図示しない蓋体を取り付けるためのねじ山21が設けられている。
また、口部2の下端側には、周方向に沿って外方に突出する環状のネックリング22が設けられている。
【0015】
被覆層5は、底部4の底面から胴部3の周面の全面を覆うとともに、その末端側が、口部2の下端側に設けられたネックリング22の下面を覆いつつ、ネックリング22の周端縁に達するように、容器本体1aの外周面側に積層されているのが好ましい。このような態様は、内容物の光による変質を抑制するために、被覆層5を着色して遮光性を付与することが要求される場合に、特に好適である。
【0016】
本実施形態において、容器本体1aの胴部3には、周面が略U字状の凹溝状に陥没してなる段差部6が、所定の方向に沿って連続して延在するように設けられている。
図示する例では、段差部6は、胴部3のラベルが装着された範囲内で、高さ方向に沿って延在し、また、高さ方向に沿って延在する段差部6の端部を基端として、胴部3の周面に沿って螺旋状に設けられた部位を含むようにして、容器胴部3の上端側(口部2下部)から、下端側(底部4上部)に至る範囲に設けられている。なお、図1では、段差部6が胴部の周面に沿って連続して胴部3の上端側まで設けられている態様を示すために、図示する容器1の背面側の段差部6を、破線により表している。
一方、このような容器本体1aの外周面側に積層された被覆層5には、段差部6に沿って、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部7が設けられている(図2図3参照)。
なお、図3は、本実施形態に係る容器1の一部を拡大して示す要部拡大正面図であり、容器胴部3に設けられた段差部6が、図の縦方向に沿って延在している状態を示している。
【0017】
ラベルLは、ラベルLの長手方向の一方の端縁側が被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pに接着され、ラベルLの長手方向の他方の端縁側が、一方の端縁側の上に重なり合って、重なり合った箇所においてラベルの端部同士が接着されて容器1の胴部3に装着されている。
【0018】
このようにして、ラベルLの少なくとも一部が、被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pに接着されていると、容器1からラベルLを分離するにあたり、ラベルLの一端を手指で摘んでラベルLを容器1から引き剥がす際に、ラベルLが接着している被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pが、ラベルLに連なって容器外方へ引っ張られることによって、線状薄肉部7に沿って被覆層5を容易に破断させることができ、そこを起点として、容器本体1aから被覆層5を剥離することが可能となる。
なお、図4は、本実施形態に係る合成樹脂製容器1について、ラベルを排除する過程の一例を示す説明図である。
また、本実施形態によれば、ラベルLを被覆層5の外表面から剥がした後に、被覆層5の端部の一部を手指などで摘んで引っ張ったりして被覆層5を破断させて、そこを起点として容器本体1aから被覆層5を剥離していく、という二段階の動作を踏むことなく、ラベルLと被覆層5とを一体として容器本体1aから分離回収することができる。
【0019】
なお、このようにして被覆層5を破断させるにあたり、図示するように、線状薄肉部7が、少なくともラベルLが装着された範囲内で、高さ方向に沿って延在するように、段差部6が設けられると、帯状に切り揃えられたラベルLの終端側を、そのまま線状薄肉部7に沿って接着することができ、ラベルLを容器周方向に剥がす際に、線状薄肉部7において被覆層5が破断しやすくなるため、好ましい。
【0020】
また、本実施形態にあっては、線状薄肉部7は、被覆層5を破断させて、被覆層5を容器本体1aから剥離する起点とすることができるように、容器胴部3の一部に設けられていればよいが、線状薄肉部7が、ラベルLが近接して接着された部位P側を基端として、容器1の胴部3の周面に沿って螺旋状に設けられた部位を含むようにして、容器胴部3の上端側及び/又は下端側に至るように設けられることで、ラベルLを容器1から引き剥がす際に、ラベルLが近接して接着された部位側の被覆層5を、線状薄肉部7に沿って破断させ、引き続いて容器胴部3の上端側及び/又は下端側に向かって延在する線状薄肉部7に沿って、被覆層5を容易に引き裂いていくことができるため、好ましい。
【0021】
なお、ラベルLは、容器外方へ引っ張っていく際に、ラベルLと被覆層5とが離れないままで、線状薄肉部7で被覆層5を破断させることができるように、十分な粘着力を有する接着剤などによって、被覆層5と接着されていればよく、ラベルLと被覆層5とを接着するための接着方法や接着剤の種類については、特に限定されない。
【0022】
このような合成樹脂製容器1は、円筒状の胴部30の一端側に口部20が形成され、他端側に半球状の底部40が形成された、一端が開口する有底筒状のプリフォーム本体10aと、プリフォーム本体10aの外周面側に積層された被覆材層50とを有するプリフォーム10を、所定の内面形状を有するブロー成形型100を用いてブロー成形することによって容器本体1aと被覆層5を成形し、その後、所定の形状に切り揃えられたラベルLを、被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位に接着するとともに、容器胴部3に装着することで作製することができる。
【0023】
図5に、プリフォーム10の一例を示す。前述したような態様で被覆層5が積層された容器1を製造するには、プリフォーム本体10aの外周面側に、底部40から口部20の直下に至る全面を覆うとともに、その末端側が、口部20の下端側に設けられたネックリング22の下面を覆いつつ、ネックリング22の周端縁に達するように、被覆材層50が積層されたプリフォーム10を用いればよい。
ここで、本実施形態にあっては、プリフォーム10についても容器1と同様に、口部20を上にした図5に示す状態で、上下左右及び縦横の方向を規定するものとする。
【0024】
プリフォーム10は、加熱により軟化させてブロー成形が可能な状態とされてから、ブロー成形型にセットされ、ネックリング22の直下から底部40に至るまでの部位が、必要に応じて延伸ロッドにより軸方向(縦方向)に延伸されつつ、高圧流体ブローにより軸方向及び周方向(横方向)に延伸される。そして、延伸された部位にブロー成形型のキャビティ形状が転写されることによって、所定の容器形状を備える容器1に成形される。このとき、延伸されたプリフォーム本体10aによって容器本体1aが成形されるとともに、プリフォーム本体10aに積層された被覆材層50が、プリフォーム本体10aと一体に成形されて、容器本体1aに積層された被覆層5となる。
【0025】
このようにして、プリフォーム10をブロー成形するに際し、ネックリング22を含むプリフォーム10の口部20は、ブロー成形によって延伸されずに、そのまま容器1の口部2となる。したがって、図5に示すプリフォーム10を用いれば、ネックリング22の下面を覆う被覆材層50の末端側もそのまま容器1の被覆層5の末端側となるため、前述したような態様で被覆層5が積層された容器1を製造することができる。
【0026】
図6は、本発明に係る合成樹脂製容器の第一実施形態を製造するためのブロー成形型100の概略を示す説明図である。
ブロー成形型100は、プリフォーム10を二軸延伸ブロー成形によって、所定の容器形状に成形するためのものであり、これを型閉じすると、容器1の容器形状に対応するキャビティが型内に形成されて、胴型103によって胴部3が賦形され、ベース型104によって底部4が賦形されるようになっている。胴型103は、開閉可能に構成された一対の分割型からなるものを用いることができる。
なお、図6においては、ブロー成形型100にセットされたプリフォーム10を一点鎖線で示している。
【0027】
本実施形態において、胴型103のキャビティ面には、容器1の容器本体1aに略U字状の凹溝状に陥没してなる段差部6を賦形する突条部106が、周面から先端先細り状に突設して、所定の方向に沿って連続して延在している。
先端先細り状に突設した突条部106を設けることによって、キャビティ内周面から突条部106の先端までに高低差を形成して、キャビティ内周面に段差が設けられるように形成されている。これとともに、このような突条部106の頂部には、突条部106の先端と、キャビティ内周面から突条部106の先端に向かって隆起する二つの側面とで形成されるエッジ部107が設けられている。
なお、図7は、本実施形態に用いられる胴型103の突条部106近傍の横端面を模式的に示した要部拡大端面図である。
【0028】
このようなブロー成形型100を用いて容器1を製造するには、まず、前述したように、プリフォーム10を加熱して、ブロー成形が可能な状態にしてからブロー成形型100にセットする。その際、プリフォーム本体10aが、プリフォーム本体10aを形成する樹脂材料の融点以下、ガラス転移点以上の温度に加熱されるようにして、プリフォーム本体10aを延伸可能に軟化させておく。一方、被覆材層50にあっては、被覆材層50を形成する樹脂材料の融点付近の温度(例えば、[融点-30]~[融点+30]℃)に加熱されるようにして、被覆材層50を流動性が高い熔融状態又は半熔融状態としておく。
【0029】
プリフォーム10を加熱するに際し、プリフォーム本体10aと被覆材層50のそれぞれが、上記のように加熱されるようにするには、例えば、赤外線ヒータなどによりプリフォーム10を外側から加熱するとともに、高周波誘導加熱により発熱させた棒状の高周波誘導発熱体をプリフォーム10内に挿通するなどして、プリフォーム10を内側からも加熱することにより、内外からの加熱温度を適宜調整するなどすればよい。
【0030】
ブロー成形型100内でプリフォーム10のブロー成形が開始されると、延伸された部位がキャビティ面に接触して、プリフォーム本体10a(容器本体1aの胴部3)には、突条部106によって段差部6が賦形される。
【0031】
このとき、プリフォーム本体10aに賦形される段差部6は、キャビティ内周面から先端先細り状に突設した突条部106の形状通りには賦形されない。プリフォーム本体10aは、突条部106の先細り形状に対して、被覆材層50を介して湾曲するようにして延伸される。これによって、周面が緩やかなU字状に窪んだ、略U字状に陥没してなる段差部6が形成されるように賦形される。
これに対して、被覆材層50は、流動性が高い熔融状態又は半熔融状態にある。そのため、プリフォーム本体10aが延伸されていくにつれて、突条部106の頂部に形成されたエッジ部107に被覆材層50が押し当てられていくと、被覆材層50のエッジ部107に圧接された部位が、押し退けられるようにして、プリフォーム本体10aの湾曲するように延伸された部位と、キャビティ内周面との間を埋めるように流動する。これにより、被覆材層50は、概ね突条部106の形状通りに賦形され、突条部106のエッジ部107に沿って線状に薄肉となるように成形される(図8図9参照)。
【0032】
その結果、ブロー成形後の容器1において、被覆層5には、段差部6の溝底に沿って、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部7が形成される(図2参照)。
【0033】
このようにして、被覆層5に線状薄肉部7が形成されるようにするにあたり、線状薄肉部7がより細幅で、かつ、より明瞭に形成されているほど、線状薄肉部7に沿って被覆層5を引き裂き易くなる。このような観点から、突条部106の形状や寸法などを適宜設計するのが好ましい。
例えば、突条部106の先端とキャビティ内周面との高低差hや、突条部106の頂部に形成されるエッジ部107の角度θ、すなわち、突条部106の頂角θなどが、上記観点から適宜設計される。
なお、上記のようにして被覆層5に線状薄肉部7を形成することができれば、エッジ部107にはRをつけてもよい。
【0034】
本実施形態において、容器本体1a(プリフォーム本体10a)を形成する樹脂材料としては、リサイクル性を考慮すると、ポリエチレンテレフタレートなどのエチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステル(ガラス転移点:50~90℃、融点:200~275℃)を好ましく用いることができる。
【0035】
被覆層5(被覆材層50)を形成する樹脂材料としては、容器本体1aと被覆層5とを容易に分別できるようにする観点から、容器本体1aを形成する樹脂材料と非相溶性の熱可塑性樹脂を用いるのが好ましい。
例えば、容器本体1aを形成する樹脂材料として、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルを用いる場合、被覆層5を形成する樹脂材料には、ポリプロピレン(融点:160~170℃)、ポリエチレン(融点:80~140℃)等のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂は、一般に、エチレンテレフタレート系熱可塑性ポリエステルよりも融点が低いため、ブロー成形に際して、プリフォーム10を加熱して、プリフォーム本体10aを延伸可能に軟化させつつ、被覆材層50を熔融状態又は半熔融状態とする際の加熱温度の調整が容易となるため好ましいが、これに限定されない。
例えば、容器1にガスバリア性が要求される場合には、被覆層5を形成する樹脂材料に、エチレン-ビニルアルコール共重合体やポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等のガスバリア性を有する熱可塑性樹脂を用いることもできる。
【0036】
また、容器1に遮光性が要求される場合には、被覆層5を形成する樹脂材料に、顔料や着色剤などを添加して、所望の色相に着色することができる。装飾効果を高めるために、複数の顔料や着色剤を混ぜてマーブル模様となるように添加することもできる。被覆層5を形成する樹脂材料には、容器本体1aに求められるリサイクル性によって制限されることなく、各種の添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0037】
ラベルLは、このようにして成形された容器1における被覆層5の外表面であって、線状薄肉部7に近接する部位に、ラベルLの少なくとも一部が接着剤などで接着されるとともに、ラベルLの形態に合った方法で装着されればよく、その方法は特に限定されない。
【0038】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図10は、本実施形態に係る合成樹脂製容器1の概略を示す正面図であり、図11は、本実施形態に係る容器1の一部を拡大して示す要部拡大正面図であり、図3と同様に、容器胴部3に設けられた段差部6が、図の縦方向に沿って延在している状態を示している。
【0039】
前述した第一実施形態では、容器本体1aに、容器本体1aの周面が略U字状の凹溝状に陥没してなる段差部6が、所定の方向に沿って連続して延在するように設けられ、被覆層5に、段差部6の溝底に沿って、所定の方向に沿って連続して延在する線状薄肉部7が設けられた構成の容器1とした。
これに対して、本実施形態では、容器本体1aに、容器本体1aの周面が略U字状の凹溝状に陥没してなる段差部6が、所定の方向に沿って不連続に延在して設けられ、被覆層5に、段差部6の溝底に沿って、所定の方向に不連続に延在する線状薄肉部7が設けられた構成の容器1としている。
【0040】
第一実施形態と同様に、ラベルLは、帯状に切り揃えられ、ラベルLの長手方向の一方の端縁側が、被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pに接着され、容器1の胴部3の周方向全体に巻き付けられて装着されている。
段差部6は、胴部3のラベルが装着された範囲内で、高さ方向に沿って不連続に延在し、また、高さ方向に沿って延在する段差部6の端部を基端として、胴部3の周面に沿って螺旋状に設けられた部位を含むようにして、容器胴部3の上端側(口部2下部)から、下端側(底部4上部)に至る範囲に、不連続に延在して設けられている。
【0041】
本実施形態の容器1によれば、ラベルLの一端を手指で摘んで容器1から引き剥がしていく際に、ラベルLが接着している被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pが、ラベルに連なって容器外方へ引っ張られることによって、不連続に形成されたミシン目状の線状薄肉部7に沿って、被覆層5を容易に破断させることができる。引き続き、ラベルLを容器1から引き剥がすように引っ張っていくと、ラベルLが近接して接着された部位側に連なって、不連続に形成されたミシン目状の線状薄肉部7に沿って、被覆層5を引き裂いて、容器本体1aから被覆層5を容易に剥離することができる。
【0042】
本実施形態では、前述したようにしてプリフォーム10をブロー成形することによって容器1を作製するに際し、胴型103のキャビティ面に、容器1の容器本体1aに段差部6を賦形する突条部106が、胴型103の周面から先端先細り状に突設して、所定の方向に沿って不連続に延在するように設けられた以外は、第一実施形態と同様に加工されたブロー成形型100が用いられ、第一実施形態と同様にして、容器1を作製することができる。
【0043】
なお、被覆層5に線状薄肉部7を形成するにあたり、所定の方向に沿って不連続に延在する突条部106は、被覆層5の破断しやすさを阻害しない範囲で、線状薄肉部7が設けられている近傍の被覆層5の強度を安定させることができるように、間隔を適宜調整して、適切な隙間が設けられたミシン目状に形成すればよい。
【0044】
また、所定の方向に沿って不連続に延在して設けられた段差部6の間に、周面が略U字状の凹溝状に陥没してなる段差部であって、異なる溝幅及び溝深さを有する別の段差部61を設けて、異なる溝幅及び溝深さを有する二種類の段差部(6、61)を交互に設けるようにして所定の方向へ連続して延在させてもよい。
図12は、そのような段差部6の変形例を示す要部拡大正面図であり、図3と同様に、容器胴部3に設けられた段差部6が、図の縦方向に沿って延在している状態を示している。
【0045】
このような容器1は、胴型103のキャビティ内周面に設けられる突条部106について、突条部106の先端までの高さや、突条部106の幅を適宜所望の形状に設計したブロー成形型100を用いることによって、作成することができる。胴型103に設けられた突条部106の形状によっては、被覆層5に、厚みの異なる線状薄肉部7を交互に形成することも可能である。
【0046】
本実施形態は、上記の点で第一実施形態と異なっているが、他の構成は第一実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0047】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図13は、本実施形態に係る合成樹脂製容器1の概略を示す正面図であり、図14は、図13のB-B端面図である。
【0048】
前述した第一実施形態では、容器本体1aに、容器本体1aの周面が略U字状に陥没してなる段差部6を設け、被覆層5に、段差部6に沿って線状薄肉部7が設けられた容器1であって、線状薄肉部7が、ラベルLが装着された範囲の被覆層5に、高さ方向に沿って設けられているとともに、ラベルLが近接して接着された部位側を基端として、容器胴部3の周面に沿って螺旋状に設けられた部位を含む構成の容器1とした。
これに対して、本実施形態では、容器本体1aに、容器本体1aの周面が所定の幅で容器内方に窪んで、所定の方向に沿って延在する帯状凹部8を設けて、帯状凹部8の幅方向の両端縁に、帯状凹部8の底面8aから隆起して、胴部3の周面に連なる段差部6を形成し、被覆層5に、所定の方向に延在する段差部6に沿って、線状薄肉部7が設けられた構成の容器1としている。
【0049】
ラベルLは、帯状に切り揃えられ、ラベルLの長手方向の一方の端縁側が、被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pに接着され、容器1の胴部3の周方向全体に巻き付けられて装着されている。
図示する例では、帯状凹部8が、高さ方向に沿って胴部3の上端側から下端側に至るように設けられ、線状薄肉部7は、ラベルLが近接して接着された部位側を基端として、胴部3の上端側及び下端側に向かって延在する部位を含むように構成されている。
【0050】
本実施形態の容器1によれば、ラベルLの一端を手指で摘んで容器1から引き剥がしていく際に、ラベルLが接着している被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pが、ラベルに連なって容器外方へ引っ張られることによって、線状薄肉部7に沿って被覆層5を容易に破断することができる。引き続き、ラベルLを容器1から引き剥がすように引っ張っていくと、ラベルLが近接して接着された部位側から連続して設けられている線状薄肉部7に沿って、被覆層5を引き裂いて、容器本体1aから被覆層5を容易に剥離することができる。
図示するように、ラベルLが、帯状凹部8の底面8aに該当する部位、すなわち、所定の間隔で設けられた二列の線状薄肉部7の間に接着されていると、ラベルLが容器外方へ引っ張られることで、被覆層5は二列の線状薄肉部7に沿って帯状に切り離される。これにより、被覆層5が帯状に切り離されて容器本体1aがむき出しになっている箇所から、容器本体1aに残っている被覆層5を容易に剥がしていくことができるが、ラベルLの接着位置は、このような態様に限定されるものではない。少なくとも一列の線状薄肉部7に沿って、被覆層5を引き裂いていくことができるように、線状薄肉部7に近接する部位にラベルLが接着されていればよい。
【0051】
本実施形態では、前述したようにしてプリフォーム10をブロー成形することによって容器1を作製するに際し、胴型103のキャビティ面に、容器1の容器本体1aに帯状凹部8を賦形する帯状凸部108が設けられたブロー成形型100が用いられる。
帯状凸部108は、所定の幅で突出して、その幅方向の両端縁が切り立って設けられており、これにより、帯状凸部108の両端縁に沿って、段差部6を賦形するエッジ部107が形成されるようにしている(図15参照)。図示する例において、このような帯状凸部108は、胴型103の上端側から下端側に至るように延在している。
なお、図15は、本実施形態に用いられる胴型103の帯状凸部108近傍の横端面を模式的に示した要部拡大端面図である。
このような胴型103を用いる以外は、第一実施形態と同様にして、容器1を作製することができる。
【0052】
ここで、ブロー成形にあたり、プリフォーム本体10aに賦形される段差部は、突条部106の形状通りには賦形されないのは、前述した通りであるが、プリフォーム本体10aに賦形される帯状凹部8においても同様に、両端縁にエッジ部107が形成されるように切り立って設けられた帯状凸部108の形状通りには賦形されない。プリフォーム本体10aは、図16図17に示すように、被覆材層50を介して帯状凸部108の上面に接した部位の両端側が、帯状凸部108の両端縁側の段差に対して湾曲するように延伸される。これによって、帯状凹部8は、その両端縁に、帯状凹部8の底面8aから隆起して、胴部3の周面に連なる段差部6が形成されるように賦形される(図14参照)。
【0053】
これに対して、前述したように、被覆材層50は、流動性が高い熔融状態又は半熔融状態にある。そのため、プリフォーム本体10aが、帯状凸部108の両端縁側の段差に対して湾曲するように延伸されていくにつれて、帯状凸部108の両端縁に沿って形成されたエッジ部107に被覆材層50が押し当てられていくと、被覆材層50のエッジ部107に圧接された部位が、押し退けられるようにして、プリフォーム本体10aの湾曲するように延伸された部位と、帯状凸部108の両端縁側の段差との間を埋めるように流動する。これにより、被覆材層50は、概ね帯状凸部108の形状通りに賦形され、帯状凸部108のエッジ部107に沿って線状に薄肉となるように成形される。
【0054】
その結果、ブロー成形後の容器1において、被覆層5には、帯状凹部8の両端縁に形成された段差部6に沿って、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部7が形成される(図14参照)。
【0055】
このようにして、被覆層5に線状薄肉部7が形成されるようにするにあたり、線状薄肉部7がより細幅で、かつ、より明瞭に形成されているほど、線状薄肉部7に沿って被覆層5を引き裂き易くなる。このような観点から、帯状凸部108の形状、寸法などを適宜設計するのが好ましい。
例えば、帯状凸部108の段差h、すなわち、図示する例では、帯状凸部108の上面と隣接するキャビティ面との高低差hや、帯状凸部108の両端縁に沿って形成されるエッジ部107の角度θ、すなわち、帯状凸部108の上面と、当該上面とともにエッジ部107を形成する帯状凸部108の側面とのなす角度θなどが、上記観点から適宜設計される。
なお、上記のようにして被覆層5に線状薄肉部7を形成することができれば、帯状凸部108の両端縁に沿って形成されるエッジ部107には、Rをつけてもよい。
【0056】
本実施形態は、上記の点で第一実施形態と異なっているが、他の構成は第一実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0057】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
図18は、本実施形態に係る合成樹脂製容器1の第四実施形態の概略を示す正面図である。図19は、図18のC-C断面図である。
【0058】
本実施形態では、容器本体1aのラベルが装着された範囲内に、周囲より低く落ち込んだ窪み部9が、段差部6に連接して設けられている点で、これまでの実施形態とは異なる。
【0059】
図示する例では、第三実施形態と同様に、容器本体1aに、容器本体1aの周面が所定の幅で容器内方に窪んで、所定の方向に沿って延在する帯状凹部8を設けて、帯状凹部8の幅方向の両端縁に、帯状凹部8の底面8aから隆起して、胴部3の周面に連なる段差部6を形成し、被覆層5に、所定の方向に延在する段差部6に沿って、線状薄肉部7が設けられた構成の容器1としている。
そして、本実施形態では、容器本体1aに設けられた帯状凹部8の下端側に、窪み部9が設けられている。窪み部9は、その底面9aが、隣接する胴部3の周面及び帯状凹部8の底面8aよりも容器内方に陥入するように設けられており、窪み部9の底面9aから隆起して、隣接する胴部3の周面及び帯状凹部8の底面8aのそれぞれに連なる縁部9bによって縁取られている(図19参照)。
【0060】
このような容器本体1aの外周面側に積層された被覆層5には、窪み部9の底面9aから隆起して、帯状凹部8の底面8aに連なる縁部9b上に位置する部位に、被覆層5の厚みが変化して周囲に比して厚肉となった厚肉部5aが形成されている。これとともに、厚肉部5aに連接し、かつ、窪み部9の底面9a側に位置する部位には、被覆層5の厚みが変化して周囲に比して薄肉となった薄肉部5bが形成されている(図19参照)。
また、段差部6に連接して設けられた窪み部9に形成された薄肉部5bは、段差部6に沿って設けられた線状薄肉部7と連接して形成されている。
このようにして、被覆層5に線状薄肉部7を設けるだけでなく、窪み部9に形成された薄肉部5bを連接して設けることで、被覆層5をより容易に破断させることが可能となる。
【0061】
図示する例において、ラベルLは、帯状に切り揃えられ、ラベルLの長手方向の一方の端縁側が、被覆層5の線状薄肉部7に近接するとともに、窪み部9に近接又は一部にかかる範囲の部位Pにおいて被覆層5に接着され、容器1の胴部3の周方向全体に巻き付けられて装着されている。
【0062】
本実施形態の容器1によれば、ラベルLの一端を手指で摘んで容器1から剥がしていく際に、ラベルLが接着している被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pが、ラベルに連なって容器外方へ引っ張られることによって、窪み部9の底面9a側上に形成された薄肉部5b及び線状薄肉部7に沿って被覆層5を容易に破断させ、窪み部9の縁部9b上に形成された厚肉部5a側を薄肉部5b側から切り離すことができる。引き続き、ラベルLを容器1から引き剥がすように引っ張っていくと、ラベルLが近接して接着された部位側から連接して設けられている線状薄肉部7に沿って、被覆層5を引き裂いて、容器本体1aから被覆層を容易に剥離することができる。
【0063】
本実施形態では、前述したようにしてプリフォーム10をブロー成形することによって容器1を作製するに際し、胴型103のキャビティ面に、容器1の容器本体1aに帯状凹部8を賦形する帯状凸部108と、窪み部9を賦形する突出部109とが設けられたブロー成形型100が用いられる。
帯状凸部108は、所定の幅で突出して、その幅方向の両端縁に沿ってエッジ部107が形成されるように切り立って設けられ、胴型103の上端側から下端側に至るように延在している。胴型103の下端側には、容器1の容器本体1aに窪み部9を賦形する突出部109が、帯状凸部108の一端側に連接して設けられている。突出部109は、周囲よりも高く突出し、すなわち、隣接するキャビティ面及び帯状凸部108の上面よりも高く突出して、周縁にエッジ部109aが形成されるように切り立って設けられている(図20図21参照)。
なお、図20は、本発明に係る合成樹脂製容器の第四実施形態を成形するブロー成形型100の胴型103のキャビティ面のうち帯状凸部108の一部と突出部109を含む要部を斜視して示した要部拡大斜視図であり、図21は、図20のD-D端面図である。
このような胴型を用いる以外は、第一実施形態と同様にして、容器1を作製することができる。
【0064】
ここで、ブロー成形にあたり、プリフォーム本体10aに賦形される帯状凹部8は、帯状凸部108の形状通りには賦形されないのは、前述した通りであるが、プリフォーム本体10aに賦形される窪み部9も同様に、周縁にエッジ部109aが形成されるように切り立って設けられた突出部109の形状通りには賦形されない。図22図24に示すように、延伸されたプリフォーム本体10aが、被覆材層50を介して突出部109の上面に接すると、エッジ部109aが形成された周縁側の部位は、当該周縁側の段差に対して湾曲するように延伸される。これによって、窪み部9は、その底面9aから隆起して、隣接する胴部3の周面及び帯状凹部8の底面8aのそれぞれに連なる縁部9bによって縁取られるように賦形される(図19参照)。
【0065】
その際、突出部109のエッジ部109aが形成された周縁側に一定以上の段差があると、プリフォーム本体10aが、かかる段差に対して湾曲するように延伸するにつれて、プリフォーム本体10aと突出部109の上面とに挟まれた被覆材層50が押圧されて、突出部109の上面から周縁側にはみ出すように流動していくようになる(図23参照)。これにより、当該段差との間に肉溜まりが形成されるようにして、突出部109のエッジ部109aが形成された周縁側では、被覆材層50が厚肉に成形されるのに対して、プリフォーム本体10aと突出部109の上面とに挟まれた被覆材層50は薄肉に成形される(図24参照)。
【0066】
その結果、ブロー成形後の容器1において、被覆層5には、窪み部9の底面9aから隆起した当該窪み部9の縁部9b上に位置する部位に、被覆層5の厚みが変化して周囲に比して厚肉となった厚肉部5aが形成されるとともに、この厚肉部5aに連接し、かつ、当該窪み部9の底面9a側上に位置する部位に、被覆層5の厚みが変化して周囲に比して薄肉となった薄肉部5bが形成される(図19参照)。
【0067】
このようにして、被覆層5に、厚肉部5aと薄肉部5bとを連接させて形成するにあたり、前述したようにして、薄肉部5bを破断して、厚肉部5aを薄肉部5b側から切り離すことが、より良好になされるようにするという観点から、突出部109の形状、寸法などを適宜設計するのが好ましい。
【0068】
例えば、突出部109のエッジ部109aが形成された周縁側の段差h、すなわち、図示する例では、突出部109の上面と帯状凸部108の上面との高低差hや、突出部109の周縁に形成されるエッジ部109aの角度θ、すなわち、突出部109の上面と、当該上面とともにエッジ部109aを形成する突出部109の側面とのなす角度θなどが、上記観点から適宜設計される。
なお、上記のようにして、被覆層5に、厚肉部5aと薄肉部5bとを連接させて形成することができれば、突出部109の周縁に形成されるエッジ部109aには、図21に示すようにRをつけてもよい。
【0069】
また、本実施形態において、突出部109は、帯状凸部108に連接する側において、突出部109の上面とともにエッジ部109aを形成する側面が、帯状凸部108の両端縁に向かって凹状に湾曲するように設けられている。
このような形状となるように突出部109を設けると、プリフォーム本体10aと突出部109の上面との間で押圧されて、突出部109の上面から周縁側にはみ出す被覆材層50が、当該側面の中央側に集まるようになり、これによって、被覆層5に形成される厚肉部5aをより厚肉にして、薄肉部5b側からより容易に切り離すことができるようになるため好ましい。
【0070】
本実施形態は、上記の点で第一実施形態と異なっているが、他の構成は第一実施形態と同様であるため、重複する説明は省略する。
【0071】
以上、本発明について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明は、前述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0072】
例えば、ラベルLは、ラベルLの少なくとも一部が、被覆層5の外表面であって、線状薄肉部7に近接する部位に接着されており、ラベルLの一端を手指で摘んで容器1から引き剥がすことができるものであれば、本実施形態に示されたものに限定されない。
ロールラベルのような容器1の胴部3に巻き付けられて装着されるものだけでなく、容器1の一部のみを覆うように所定の形状に切り揃えられて装着されるタックラベルや、所定の形状に切り揃えられ、一部のみが容器1に接着されて、当該接着部以外は、容器1の外形から浮いた状態で貼り付けられるようなポップシール(アテンションシールとも称される)であってもよい。
図25は、本発明に係る合成樹脂製容器の変形例の概略を示す斜視図である。図25に示すように、ラベルLをポップシールとしても、ラベルLの一部が、容器本体1aの段差部6に近接する部位、すなわち、被覆層5に設けられた線状薄肉部7に近接する部位に接着されていれば、ラベルLの一端を手指で摘んでラベルLを容器1から引き剥がす際に、ラベルLが接着している被覆層5の線状薄肉部7に近接する部位Pが、ラベルLに連なって容器外方へ引っ張られることによって、線状薄肉部7に沿って被覆層5を容易に破断させることができる。引き続き、ラベルLを容器1から引き剥がすように引っ張っていくと、ラベルLが近接して接着された部位側から連続して設けられている線状薄肉部7に沿って、被覆層5を引き裂いて、容器本体1aから被覆層5を容易に剥離することができる。
【0073】
また、前述した実施形態では、線状薄肉部7が、ラベルLが近接して接着された部位P側を基端として、胴部3の上端側から下端側に至るように、容器本体1aの段差部6を設け、ラベルLが近接して接着された部位側の被覆層5を破断させた後に、引き続いて容器胴部3の上端側及び下端側に向かって延在する線状薄肉部7に沿って、被覆層5を引き裂くようにしているが、ラベルLが近接して接着された部位以外の線状薄肉部7を省略してもよい。この場合、被覆層5を破断した後は、被覆層5を直接手で持ち直して、被覆層5が容器1から剥離できるようにさらに引き裂いていってもよいし、被覆層5の引き裂きを補助するため、必要に応じて、被覆層5に、COレーザーなどを用いて所定の方向に沿ったミシン目などの断続的な破断部を形成してもよい。
【0074】
また、段差部6は、線状薄肉部7が設けられるように構成されていればよく、適宜変更することが可能である。例えば、第一実施形態の段差部6を、第三実施形態のように、帯状凹部8の両端縁に形成される、帯状凹部8の底面8aから隆起して、胴部3の周面に連なる段差部6として、二列設けてもよい。このようにして形成される二列の段差部6が、ラベルLが装着された範囲内で、高さ方向に沿って延在するようにしてもよいし、二列の段差部6が、容器胴部3の周面に沿って螺旋状に設けられるようにしてもよい。または、一方の周面から隆起してもう一方の周面に連なるようにして形成された段差部6が、所定の方向に沿って一列設けられるように、容器本体1aの周面を形成してもよい。
【0075】
また、容器1の容器本体1aに窪み部9を賦形する突出部109の形状は、前述した実施形態で示した例には限定されない。被覆層5を容易に破断可能とする厚肉部5aと薄肉部5bとが形成されるように、突出部のエッジ部109aが切り立った形状に設けられればよく、容器1の形状や段差部の形態に応じて、突出部109の形状は適宜変更することができる。
【0076】
要するに、本発明は、所定の容器形状に成形された容器本体と、前記容器本体の外周面側に積層された被覆層とを有する合成樹脂製容器であって、ラベルが容器胴部に装着され、前記容器本体には、周面が隆起又は陥没してなる段差部が、所定の方向に沿って連続又は不連続に延在して設けられているとともに、前記被覆層には、周囲に比して線状に薄肉とされた線状薄肉部が、前記段差部に沿って連続又は不連続に設けられており、前記ラベルの少なくとも一部が、前記被覆層の前記線状薄肉部に近接する部位に接着されていれば、これを実現するために必要な構成以外は、特に限定されることなく変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 合成樹脂製容器
1a 容器本体
2 口部
3 胴部
4 底部
5 被覆層
6 段差部
7 線状薄肉部
8 帯状凹部
9 窪み部
10 プリフォーム
10a プリフォーム本体
50 被覆材層
100 ブロー成形型
106 突条部
107 エッジ部
108 帯状凸部
109 突出部
L ラベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25