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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/06 20060101AFI20240109BHJP
   B25C 1/04 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B25C1/06
B25C1/04
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020045098
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021146402
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 健太
(72)【発明者】
【氏名】原田 睦生
(72)【発明者】
【氏名】西河 智雅
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達也
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-071039(JP,A)
【文献】特開2014-083601(JP,A)
【文献】特開2018-103291(JP,A)
【文献】特開平09-239674(JP,A)
【文献】特開2017-013296(JP,A)
【文献】特開2019-005847(JP,A)
【文献】特開平09-309077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0096259(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C1/00-13/00
B25B21/00-21/02
B25D1/00-17/32
B25F1/00-5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、作業者により操作される操作部と、対象物に接触されて前記ハウジングに対して移動可能とされる接触部材と、を有し、作業者により保持される本体と、
前記本体によって作動可能に支持され、かつ、第1方向への作動によって処理を行う作動部と、
前記操作部及び前記接触部材が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、
前記操作状態検出部によって前記操作部及び前記接触部材が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、
を有する、作業機であって、
前記本体に加わる物理量として加速度を検出可能な物理量検出部と、
前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、
を有し、
前記制御回路は、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときに、前記接触部材の操作を検出する前に検出された前記本体に加わる前記第1方向の加速度が第1所定値以下であると、前記本体の状態が適正状態にないと判断し、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する、作業機。
【請求項2】
前記制御回路は、前記本体に加わる加速度が0.4G以下であると、前記本体の状態が適正状態にないと判断する、請求項1記載の作業機。
【請求項3】
ハウジングと、前記ハウジングに設けられる操作部と、を有し、作業者により保持される本体と、
前記本体によって作動可能に支持され、かつ、作動によって処理を行う作動部と、
前記操作部が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、
前記操作状態検出部によって前記操作部が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、
を有する、作業機であって、
前記本体に加わる物理量として加速度を検出可能な物理量検出部と、
前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、を有し、
前記物理量検出部が検出可能な前記物理量は、前記作動部の作動方向である第1方向とは異なる第2方向の加速度を含み、
前記制御回路は、前記第2方向の加速度が第2所定値を超えた場合に、前記本体が適正状態にないと判断する、作業機。
【請求項4】
前記物理量検出部が検出可能な前記第2方向の加速度は、前記本体に加わる回転方向の加速度であり、
前記制御回路は、前記本体に加わる回転方向の加速度が検出されている場合に、前記本体が適正状態にでないと判断する、請求項3記載の作業機。
【請求項5】
前記制御回路は、前記本体に第3所定値以上の前記物理量が所定時間以上加わった場合に、前記本体が適正状態にないと判断する、請求項1乃至4の何れか1項記載の作業機。
【請求項6】
前記物理量検出部は、
前記本体に設けられ、かつ、前記物理量を検出する第1検出部と、前記本体において前記第1検出部とは異なる個所に設けられ、かつ、前記物理量を検出する第2検出部と、
を有し、
前記制御回路は、前記第1検出部で検出される前記物理量、及び前記第2検出部で検出される前記物理量に基づいて、前記本体が適正状態にあるかないかを判断する、請求項1乃至5の何れか1項記載の作業機。
【請求項7】
前記物理量検出部は、
前記本体に設けられ、かつ、前記物理量を検出する第1検出部と、前記本体において前記第1検出部とは異なる個所に設けられ、かつ、前記物理量を検出する第2検出部と、
を有し、
前記制御回路は、前記第1検出部で検出される前記物理量、及び前記第2検出部で検出される前記物理量に基づいて、前記本体が適正状態にあるかないかを判断し、
前記第1検出部は、前記ハウジングに設けられ、
前記第2検出部は、前記接触部材に設けられている、請求項1または2記載の作業機。
【請求項8】
前記制御回路は、前記第2検出部が検出する前記物理量が、前記第1検出部が検出する前記物理量を超えていると、前記本体が適正状態にないと判断する、請求項7記載の作業機。
【請求項9】
ハウジングと、作業者により操作される操作部と、対象物に接触されて前記ハウジングに対して移動可能とされる接触部材と、を有し、作業者により保持される本体と、
前記本体によって作動可能に支持され、かつ、作動によって処理を行う作動部と、
前記操作部及び前記接触部材が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、
前記操作状態検出部によって前記操作部及び前記接触部材が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、
を有する、作業機であって、
前記本体に加わる物理量である加速度を検出可能な物理量検出部と、
前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、を有し、
前記物理量検出部は、
前記ハウジングに設けられ、かつ、前記ハウジングの加速度を検出する第1検出部と、前記接触部材に設けられ、かつ、前記接触部材の加速度を検出する第2検出部と、を有し、
前記制御回路は、前記第2検出部が検出する前記接触部材の加速度が、前記第1検出部が検出する前記ハウジングの加速度を超えていると、前記本体が適正状態にないと判断する、作業機。
【請求項10】
前記物理量検出部と前記制御回路とが別々に設けられている、請求項1乃至9の何れか1項記載の作業機。
【請求項11】
前記物理量検出部は、前記物理量に応じたアナログ信号を処理してデジタル信号を出力し、
前記制御回路は、前記物理量検出部から出力されるデジタル信号を処理するマイクロコンピュータを有する、請求項10記載の作業機。
【請求項12】
前記作動部は、前記駆動部により前記第1方向に作動されることにより、対象物に打ち込む止具を打撃可能な打撃部を含む、請求項1記載の作業機。
【請求項13】
ハウジングと、作業者により操作される操作部と、対象物に接触されて前記ハウジングに対して移動可能とされる接触部材と、を有し、作業者により保持される本体と、
前記本体によって作動可能に支持され、かつ、作動によって処理を行う作動部と、
前記操作部及び前記接触部材が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、
前記操作状態検出部によって前記操作部及び前記接触部材が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、
を有する、作業機であって、
前記本体に加わる物理量である加速度を検出可能な物理量検出部と、
前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、を有し、
前記制御回路は、前記接触部材が前記対象物に接触されて前記作動部が作動し前記接触部材が前記対象物から離間された後に、前記本体に加わる加速度のうち前記作動部の作動方向と交差する方向への加速度が所定値未満である場合に、前記接触部材が前記対象物の表面方向における同一箇所にあると判断可能であり、
前記制御回路は、前記接触部材が前記対象物の前記表面方向における同一箇所に接触して操作されたと判断すると、前記本体が適正状態でないと判断する、作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動可能な作動部と、作動部を作動させる駆動部と、を備えた作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
作業者により操作される操作部と、作動によって処理を行う作動部と、操作部が操作されると作動部を作動させる駆動部と、を有する作業機の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された作業機としての打込機は、操作部としてのトリガ及びプッシュレバーと、作動部としての打撃部と、打撃部を支持する本体としてのハウジングと、ハウジングに設けられ、かつ、打撃部を作動させる電動モータ及び圧力室と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018-221106号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、本体の状態が、作動部を作動させることに適さない状態である場合に、作動部が作動される可能性がある、という課題を認識した。
【0005】
本発明の目的は、本体が作動部を作動させることに適さない状態である場合に、作動部の作動を阻止可能な作業機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の作業機は、ハウジングと、作業者により操作される操作部と、対象物に接触されて前記ハウジングに対して移動可能とされる接触部材と、を有し、作業者により保持される本体と、前記本体によって作動可能に支持され、かつ、第1方向への作動によって処理を行う作動部と、前記操作部及び前記接触部材が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、前記操作状態検出部によって前記操作部及び前記接触部材が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、を有する、作業機であって、前記本体に加わる物理量として加速度を検出可能な物理量検出部と、前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、を有する。前記制御回路は、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときに、前記接触部材の操作を検出する前に検出された前記本体に加わる前記第1方向の加速度が第1所定値以下であると、前記本体の状態が適正状態にないと判断し、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する。
一実施形態の作業機は、ハウジングと、前記ハウジングに設けられる操作部と、を有し、作業者により保持される本体と、前記本体によって作動可能に支持され、かつ、作動によって処理を行う作動部と、前記操作部が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、前記操作状態検出部によって前記操作部が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、を有する、作業機であって、前記本体に加わる物理量として加速度を検出可能な物理量検出部と、前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、を有する。前記物理量検出部が検出可能な前記物理量は、前記作動部の作動方向である第1方向とは異なる第2方向の加速度を含み、前記制御回路は、前記第2方向の加速度が第2所定値を超えた場合に、前記本体が適正状態にないと判断する。
一実施形態の作業機は、ハウジングと、作業者により操作される操作部と、対象物に接触されて前記ハウジングに対して移動可能とされる接触部材と、を有し、作業者により保持される本体と、前記本体によって作動可能に支持され、かつ、作動によって処理を行う作動部と、前記操作部及び前記接触部材が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、前記操作状態検出部によって前記操作部及び前記接触部材が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、を有する、作業機であって、前記本体に加わる物理量である加速度を検出可能な物理量検出部と、前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、を有する。前記物理量検出部は、前記ハウジングに設けられ、かつ、前記ハウジングの加速度を検出する第1検出部と、前記接触部材に設けられ、かつ、前記接触部材の加速度を検出する第2検出部と、を有する。前記制御回路は、前記第2検出部が検出する前記接触部材の加速度が、前記第1検出部が検出する前記ハウジングの加速度を超えていると、前記本体が適正状態にないと判断する。
一実施形態の作業機は、ハウジングと、作業者により操作される操作部と、対象物に接触されて前記ハウジングに対して移動可能とされる接触部材と、を有し、作業者により保持される本体と、前記本体によって作動可能に支持され、かつ、作動によって処理を行う作動部と、前記操作部及び前記接触部材が操作されたか否かを検出する操作状態検出部と、前記操作状態検出部によって前記操作部及び前記接触部材が操作されたことが検出されると、前記作動部を作動可能とする駆動部と、を有する、作業機であって、前記本体に加わる物理量である加速度を検出可能な物理量検出部と、前記物理量検出部によって検出される前記本体に加わる加速度に基づいて、前記操作部及び前記接触部材が操作されたときの前記本体の状態が前記作動部を作動させることに適した適正状態にないと判断すると、前記駆動部が前記作動部を作動させることを阻止する制御回路と、を有する。前記制御回路は、前記接触部材が前記対象物に接触されて前記作動部が作動し前記接触部材が前記対象物から離間された後に、前記本体に加わる加速度のうち前記作動部の作動方向と交差する方向への加速度が所定値未満である場合に、前記接触部材が前記対象物の表面方向における同一箇所にあると判断可能であり、前記制御回路は、前記接触部材が前記対象物の前記表面方向における同一箇所に接触して操作されたと判断すると、前記本体が適正状態でないと判断する。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態の作業機は、本体が作動部を作動させることに適さない状態であると、作動部の作動を阻止可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の作業機の一実施形態である釘打機の正面図である。
図2図1の釘打機の右側面図である。
図3図1の釘打機の内部構造を示す右側面断面図である。
図4】釘打機に設けられた変換部を示す模式図である。
図5】釘打機の制御系統の一例を示すブロック図である。
図6】釘打機の制御回路が行う第1制御例を示すフローチャートである。
図7】(A)及び(B)は、制御回路が検出する加速度の変化例を示すグラフ図である。
図8】制御回路が行う第2制御例を示すフローチャートである。
図9】(A)及び(B)は、制御回路が第2制御例で2個の加速度センサによって検出する加速度の変化例を示す図、(C)は、制御回路が第2制御例で検出する加速度同士の差の変化例を示す図である。
図10】(A)は、制御回路が第2制御例で検出する2個の加速度センサの信号の変化例を示すグラフ図、(B)は、2個の加速度センサの信号の和の例を示すグラフ図である。
図11】制御回路が行う第3制御例を示すフローチャートである。
図12】(A)、(B)及び(C)は、制御回路が検出する加速度の変化例を示すグラフ図である。
図13】制御回路が物体の材質を判断するにあたり、加速度センサの信号が急激に変化するノイズが発生した例を示すグラフ図である。
図14】釘打機の制御系統の他の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の作業機の一実施形態である打込機を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1図2及び図3には、打込機の具体例である釘打機10が示されている。釘打機10は、本体79、打撃部12、電源部14、電動モータ15、減速機構16、変換部17、蓄圧容器18、シリンダ27及び制御回路67を有する。本体79は、ハウジング11、ノーズ部13及びプッシュレバー64を含む。ハウジング11は、シリンダケース19、ハンドル20、モータケース21、装着部22及びヘッドカバー25を有する。ハンドル20及びモータケース21は、それぞれシリンダケース19に接続されている。装着部22は、ハンドル20及びモータケース21に接続されている。
【0011】
電源部14は、装着部22に対し取り付け及び取り外しが可能である。電動モータ15はモータケース21内に配置されている。蓄圧容器18は、キャップ23と、キャップ23が取り付けられるホルダ24と、を有する。ヘッドカバー25は、シリンダケース19に取り付けられており、蓄圧容器18は、シリンダケース19内及びヘッドカバー25内に亘って配置されている。
【0012】
シリンダ27は、シリンダケース19内に収容されている。シリンダ27は金属製、例えば、アルミニウム製または鉄製などの材質である。圧力室26が、蓄圧容器18内及びシリンダ27内に亘って形成される。圧力室26に圧縮流体が充填されている。圧縮流体は、空気の他、不活性ガスを用いることができる。
【0013】
ホルダ24は環状であり、ホルダ24は、シリンダ27の外周面に取り付けられている。打撃部12は、ハウジング11の内部から外部に亘って配置されている。打撃部12は、ピストン28及びドライバブレード29を有する。ピストン28は、シリンダ27内で中心線A1に沿った方向に往復作動可能である。中心線A1は、シリンダ27の中心を通る仮想線である。
【0014】
ノーズ部13は、図3のように、シリンダケース19の内外に亘って配置されている。ノーズ部13は、バンパ支持部31及び射出部32を有する。バンパ35がバンパ支持部31内に配置されている。バンパ35は合成ゴム製、シリコンゴム製の何れでもよい。バンパ35は環状である。射出部32は、バンパ支持部31に接続され、かつ、バンパ支持部31から中心線A1に沿った方向に突出されている。射出部32は射出路37を有し、射出路37は中心線A1に沿って設けられている。ドライバブレード29は、射出路37内で中心線A1に沿った方向に作動可能である。
【0015】
電動モータ15は、モータケース21内に設けられている。電動モータ15は、ロータ39及びステータ40を有する。ステータ40は、モータケース21に取り付けられている。電動モータ15は、ブラシレスモータであり、ロータ39は正回転及び逆回転可能である。
【0016】
減速機構16は、モータケース21内に設けられている。減速機構16は、複数組のプラネタリギヤ機構を備えている。減速機構16の入力要素はロータ39に連結されている。電動モータ15及び減速機構16は、中心線A2を中心として同心状に配置されている。
【0017】
図1に示す釘打機10の正面視は、中心線A1と平行であり、かつ、中心線A2に対して垂直な平面内におけるものである。また、図1のように釘打機10を正面視すると、中心線A1と中心線A2とは交差しない。図3のように釘打機10を側面視すると、中心線A1と中心線A2とが、所定角度、例えば、90度で交差されている。
【0018】
変換部17は、シリンダケース19内に配置されている。変換部17は、減速機構16の出力要素の回転力を、打撃部12の作動力に変換する。変換部17は、図4に示すように、回転軸46に固定されたホイール50と、ホイール50に設けたピニオンピン51と、ドライバブレード29に設けた凸部52と、を備えている。回転軸46は、減速機構16の出力要素に連結されている。ピニオンピン51は、ホイール50の回転方向に間隔をおいて複数配置されている。
【0019】
凸部52は、ドライバブレード29の作動方向に間隔をおいて複数配置されている。ピニオンピン51は、凸部52に対して係合可能及び解放可能である。ホイール50が回転し、かつ、ピニオンピン51が凸部52に係合されていると、打撃部12は、ホイール50の回転力で第2方向D2で作動する。ピニオンピン51が凸部52から解放されていると、ホイール50の回転力はドライバブレード29に伝達されない。ピニオンピン51及びドライバブレード29は、ラック・アンド・ピニオン機構を構成している。
【0020】
打撃部12は、圧力室26の圧力を受けて第1方向D1に付勢されている。打撃部12は、圧力室26の圧力に抗して第2方向D2で作動可能である。打撃部12が、圧力室26の圧力により第1方向D1で作動することを下降と定義する。打撃部12が図3で第2方向D2で作動することを上昇と定義する。第1方向D1及び第2方向D2は中心線A1と平行であり、かつ、第2方向D2は第1方向D1とは逆向きである。
【0021】
回転規制機構が、シリンダケース19内に設けられている。回転規制機構は、ホイール50が、電動モータ15の回転力により図4で時計回りに回転することを可能とする。回転規制機構は、ドライバブレード29の第1方向D1の力がホイール50に伝達されて、ホイール50が図4で時計回りに回転されることを阻止する。
【0022】
トリガ54が、ハンドル20に設けられている。トリガ54は、ハンドル20に対して作動可能に設けられている。作業者は、トリガ54に操作力を付加すること、操作力を解除することが可能である。
【0023】
電源部14は、収容ケース58と、収容ケース58内に収容した複数の電池セルとを有する。電池セルは、充電及び放電が可能な二次電池であり、電池セルは、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、リチウムイオンポリマー電池、ニッケルカドミウム電池等、公知の電池セルを任意に用いることができる。なお、電池セルは、放電のみが可能な一次電池でもよい。装着部22に第1側端子が設けられ、電源部14に第2側端子が設けられている。電源部14は、装着部2へ取り付け及び取り外しが可能である。電源部14が装着部22に取り付けられると、第1端子と第2端子とが電気的に接続される。
【0024】
また、図2のように、釘59を収容するマガジン60が設けられ、マガジン60は射出部32及び装着部22により支持されている。釘59は、マガジン60内に複数収容される。フィーダ61がマガジン60に設けられている。フィーダは、マガジン60内の釘59を射出部32へ送る。
【0025】
プッシュレバー64は、射出部32に取り付けられている。プッシュレバー64は、射出部32及びハウジング11に対して、中心線A1に沿った方向の所定範囲内で作動可能である。プッシュレバー64を中心線A1に沿った方向に付勢する図示しない付勢部材が設けられている。付勢部材は、プッシュレバー64をバンパ支持部31から離れる向きで付勢する。ストッパが射出部32に設けられている。付勢部材により付勢されたプッシュレバー64は、ストッパに接触して停止する。
【0026】
図5は、釘打機10に設けられる制御系統の一例を示すブロック図である。釘打機10は、トリガスイッチ57、プッシュレバースイッチ69、位置検出センサ70、回転速度検出センサ71、位相検出センサ72を有する。トリガスイッチ57は、ハンドル20内に設けられている。トリガスイッチ57は、トリガ54に加わる操作力の有無を検出し、かつ、検出結果に応じた信号を出力する。プッシュレバースイッチ69は、射出部32またはハウジング11に設けられており、プッシュレバー64が中心線A1に沿った方向に作動されたか否かを検出して信号を出力する。位置検出センサ70は、ホイール50の回転方向における位置を検出して信号を出力する。回転速度検出センサ71は、電動モータ15のロータ39の回転速度を検出して信号を出力する。位相検出センサ72は、ロータ39の回転方向の位相を検出して信号を出力する。
【0027】
さらに、釘打機10は、複数の加速度センサ、一例として3個の加速度センサ63A,63B,63Cを有する。加速度センサ63Aは、ヘッドカバー25に設けられている。加速度センサ63Bは、シリンダケース19に設けられている。加速度センサ63Cは、プッシュレバー64に設けられている。加速度センサ63A,63B,63Cは、中心線A1に沿った方向における位置がそれぞれ異なる。また、釘打機10を図2のように側面視すると、所定箇所Q1から加速度センサ63Bまで距離L1がある。所定箇所Q1から加速度センサ63Aまで距離L2がある。所定箇所Q1は、釘打機10の重心であり、所定箇所Q1は、例えばトリガ54付近にある。所定箇所Q1から加速度センサ63Cまで距離L3がある。距離L1,L2,L3は、一例として互いに異なっている。
【0028】
加速度センサ63A,63B,63Cは、中心線A1に沿った方向の速度、具体的には加速度を、それぞれ単独で検出可能である。また、加速度センサ63A,63B,63Cは、中心線A1,A2に対して略平行な平面内である図2及び図3において、釘打機10に加わる回転方向の加速度を、それぞれ単独で検出可能である。加速度センサ63A,63B,63Cは、本体79の加速度、つまり、単位時間当たりの速度の変化率をそれぞれ検出してアナログ信号を出力可能である。加速度センサ63A,63B,63Cの種類は、光学形、半導体形、静電容量形、ピエゾ抵抗形の何れであってもよい。
【0029】
また、インバータ回路68が、モータケース21内に設けられている。インバータ回路68は、電動モータ15のステータ40と電源部14とを接続及び遮断する。インバータ回路68は、複数のスイッチング素子を備え、複数のスイッチング素子は単独でオン・オフが可能である。
【0030】
制御回路67は、装着部22内に設けられている。制御回路67は、マイクロコンピュータ73及びAD変換器74を有する。マイクロコンピュータ73は、中央演算処理部75、タイマー76、記憶部77、入力ポート及び出力ポートを有する。中央演算処理部75は、入出力と処理との間で時間のズレを吸収・調整をするために一時的に情報を保存するバッファを備えている。記憶部77は、インバータ回路68を制御するための各種の情報を、予め記憶している。電源部14が装着部22に取り付けられると、電源部14の電力が制御回路67に供給され、制御回路67が起動される。
【0031】
また、電源部14の電力は、加速度センサ63A,63B,63C、トリガスイッチ57、プッシュレバースイッチ69、位置検出センサ70、位相検出センサ72、回転速度検出センサ71に供給される。トリガスイッチ57から出力される信号、加速度センサ63A,63B,63Cから出力されたアナログ信号、プッシュレバースイッチ69から出力される信号、位置検出センサ70から出力される信号、回転速度検出センサ71から出力される信号、位相検出センサ72から出力される信号は、AD変換器に入力される。AD変換器74は、アナログ信号をデジタル信号に変換して出力する電子回路である。AD変換器74から出力されたデジタル信号は、中央演算処理部75に入力される。
【0032】
中央演算処理部75は、ニューラルネットワークを構築するソフトウェアである。中央演算処理部75は、デジタル回路であり、AD変換器74から入力されるデジタル信号、つまり、加速度の検出値が、閾値よりも大か小かにより“1”か“0”かを判断可能である。制御回路67は、中央演算処理部75に入力される信号、及び記憶部77に記憶されている情報に基づいて、インバータ回路68を制御する駆動信号を出力する。つまり、制御回路67は、電動モータ15の回転及び停止、電動モータ15の回転数、電動モータ15の回転方向を制御する。
【0033】
次に、釘打機10の使用例を説明する。制御回路67は、トリガ54に操作力が加えられていないこと、またはプッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられていないこと、の少なくとも一方を検出すると、インバータ回路68を制御して、電動モータ15に対する電力の供給を停止する。このため、電動モータ15は停止され、かつ、打撃部12は待機位置で停止されている。ここでは、ピストン28が下死点と上死点との間にある状態で打撃部12が停止されている位置を、打撃部12の待機位置として説明する。ピストン28の下死点は、図3のように、ピストン28がバンパ35に接触した位置である。ピストン28の上死点は、中心線A1に沿った方向でバンパ35から最も離れた位置である。
【0034】
圧力室26の圧力は、常に打撃部12に加わっており、打撃部12は第1方向D1で付勢されている。打撃部12は、次の作用で待機位置に停止されている。ピニオンピン51と凸部52とが係合し、打撃部12が圧力室26から受ける付勢力は、ホイール50に伝達され、ホイール50は回転力を受ける。回転規制機構は、ホイール50が図4で時計回りに回転されることを阻止し、打撃部12は待機位置で停止されている。
【0035】
打撃部12が待機位置で停止されていると、ドライバブレード29の先端は、中心線A1に沿った方向で、プッシュレバー64の先端と同じ位置で停止されているか、または、プッシュレバー64の先端とバンパ支持部31との間で停止されている。さらに、送り方向で先頭に位置する1本の釘59は、ドライバブレード29に接触され、かつ、射出路37の手前で停止されている。
【0036】
制御回路67は、トリガ54に操作力が加えられていること、及びプッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられていること、を検出すると、インバータ回路68を制御して電源部14の電力を電動モータ15に供給し、電動モータ15は正回転される。電動モータ15の回転力は、減速機構16を経由して回転軸46に伝達される。すると、回転軸46及びホイール50が回転される。減速機構16は、ホイール50の回転速度を、電動モータ15の回転速度よりも低速にする。
【0037】
ホイール50の回転力は、打撃部12に伝達され、打撃部12が図3で上昇する。打撃部12が上昇すると、射出路37の手前で停止されていた釘59は、フィーダ61によって射出路37へ送られる。打撃部12が上昇すると圧力室26の圧力が上昇する。ピストン28が上死点に到達すると、全てのピニオンピン51が凸部52から解放される。打撃部12は、圧力室26の圧力で図3において下降する。打撃部12が下降すると、ドライバブレード29は、射出路37へ送られた釘59を打撃し、釘59は被打込材W1に打ち込まれる。
【0038】
また、ピストン28は、釘59が被打込材W1に打ち込まれた後、バンパ35に衝突する。バンパ35は中心線A1方向の荷重を受けて弾性変形し、バンパ35は打撃部12の運動エネルギの一部を吸収する。
【0039】
制御回路67は、打撃部12の位置検出センサ70の信号を処理して、中心線A1に沿った方向における打撃部12の位置を検出し、かつ、打撃部12が待機位置に到達したか否かを検出する。制御回路67は、打撃部12が待機位置に到達すると、電動モータ15を停止させる。
【0040】
(第1制御例)
制御回路67が行うことの可能な第1制御例が、図6に示されている。制御回路67は、加速度センサ63A,63B,63のうち少なくとも1つの加速度センサの信号を処理することにより、釘打機10で生じる加速度、具体的には、本体79に加わる加速度を検出する。制御回路67が第1制御例を行うと、作業者が釘打機10を移動させ、かつ、プッシュレバー64が被打込材W1に接触させたか否かを判断可能である。制御回路67は、判断結果に基づいて、打撃部12を待機位置から作動させるか、または、打撃部12を待機位置に停止させておくかを決定する。
【0041】
制御回路67が起動されると、図6の第1制御例がスタートされる。制御回路67は、過去に入力された信号及び情報を、ステップS10で初期化する。制御回路67は、電動モータ15をステップS11で停止させている。つまり、打撃部12は、待機位置で停止されている。制御回路67は、ステップS12において、加速度センサ63A,63B,63のうち少なくとも1つの加速度センサの信号を処理することにより、釘打機10に加わる加速度を検出する。制御回路67は、中心線A1に沿った方向において、正(+)の加速度及び負(-)の加速度を検出可能である。正(+)の加速度は、釘打機10が物体に接近する向き、つまり、第1方向D1の加速度である。負(-)の加速度は、第2方向D2の加速度である。
【0042】
制御回路67は、ステップS13において、プッシュレバー64が作動されたか、を判断し、かつ、ステップS14において、トリガ54に操作力が付加されたか、を判断する。制御回路67は、ステップS13及びステップS14で共にYESと判断すると、制御回路67は、検出された加速度が所定値E1を超えているか否かをステップS15で判断する。図7(A)は、加速度センサで検出される加速度の変化例を示している。時刻T1は、プッシュレバー64が物体に衝突された時点である。所定値E1は、正(+)の加速度である。所定値E1は、実験またはシミュレーションによって求められ、かつ、記憶部に記憶されている。所定値E1は、例えば、+0.4[G]である。
【0043】
制御回路67は、ステップS15の判断を行う場合に、3個の加速度センサ63A,63B,63Cのうち、何れか1個の加速度センサで検出された加速度と、所定値E1とを比較することが可能である。また、制御回路67は、ステップS15の判断を行う場合に、3個の加速度センサ63A,63B,63Cのうち、複数個の加速度センサで検出された加速度と、所定値E1とを比較することが可能である。この場合、複数個の加速度センサで検出される加速度の平均値を、検出された加速度として処理すること、または、最も高い加速度を、検出された加速度として処理することが可能である。
【0044】
制御回路67は、ステップS15において、作業者が釘打機10を用いて釘59を被打込材W1へ打ち込む意図があるか否かを判断している。制御回路67は、検出される加速度が図7(A)のように所定値E1を超えていると、ステップS15でYesと判断する。これは、制御回路67が、“作業者が釘打機10を移動させてプッシュレバー64を被打込材W1へ押し付けたと判断した。”ことを意味する。つまり、制御回路67は、“作業者は、被打込材W1へ釘59を打ち込む意図があると判断した。”ことを意味する。
【0045】
一方、制御回路67は、検出される加速度が、図7(B)のように所定値E1以下であると、ステップS15でNoと判断する。図7(B)に示される所定値E1は、+0.4[G]及び-0.4[G]である。これは、制御回路67が、“作業者は、釘打機10を用いて釘59を被打込材W1へ打ち込む意図が無いと判断した。”ことを意味する。制御回路67は、検出される加速度が加速度が0[G]から+0.4[G]の範囲内である場合、または、検出される加速度が負(-)の加速度である場合、制御回路67は、ステップS15でNoと判断する。例えば、作業者が釘打機10を運搬中は、図7(B)のように、釘打機10において、正の加速度である+0.4[G]と、負の加速度である-0.4[G]と、の間で交互に加速度が変動する。さらに、釘打機10が略静止している状態で、移動する物体がプッシュレバー64に衝突すると、制御回路67は負(-)の加速度を検出する。
【0046】
制御回路67は、ステップS15でYesと判断すると、ステップS16において、電動モータ15を回転させて打撃部12を待機位置から上昇させる制御と、打撃部12が上死点から下死点へ作動された後、打撃部12を下死点から再度上昇させる制御と、を行う。制御回路67は、ステップS16の後にステップS11へ進む。
【0047】
これに対して、制御回路67は、ステップS13、ステップS14、ステップS15の少なくとも1つのステップでNoと判断すると、ステップS11に進む。つまり、打撃部12は、待機位置で停止されている。
【0048】
なお、制御回路67が、ステップS12,S13,S14,S15のそれぞれの処理を行うタイミングは問われない。各ステップを異なるタイミングで行ってもよいし、全てのステップを同じタイミングで行ってもよい。
【0049】
制御回路67が、図6の第1制御例を行うと、次のような効果を得ることが可能である。例えば、作業者が釘打機10を中心線A1に沿った方向に移動させることにより、釘打機10を被打込材W1に接近させ、かつ、トリガ54に操作力が付加され、かつ、プッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられると、制御回路67は、打撃部12を作動させる。
【0050】
一方、作業者が釘打機10を運搬している状態で、プッシュレバー64が被打込材W1とは異なる物体に接触した場合、または、釘打機10が略静止している状態で、被打込材W1とは異なる物体が移動してプッシュレバー64に接触した場合、制御回路67は、ステップS15でNoと判断し、打撃部12が待機位置で停止された状態を維持する。
【0051】
つまり、制御回路67は、“釘59を被打込材W1に打ち込むことを、作業者が意図していない状態”または“打撃部12が釘59を打撃することが適当でない状態”において、打撃部12が待機位置から作動することを阻止可能である。したがって、作業者による釘打機10の操作性が向上する。
【0052】
(第2制御例)
制御回路67は、2個の加速度センサの信号を処理することにより、図8に示す第2制御例を実行可能である。制御回路66が行う第2制御例は、釘打機10の移動方向を判断し、判断結果に基づいて、打撃部12を待機位置から作動させるか、または、打撃部12を待機位置に停止させておくか、を決定するものである。
【0053】
制御回路67が起動すると、図8の第2制御例がスタートされる。制御回路67は、ステップS20において、中央演算処理部75のバッファに記憶されている情報を初期化する。また、制御回路67は、ステップS21において、打撃部12を待機位置に停止させている。ステップS21の制御は、ステップS11の制御と同じである。
【0054】
さらに、制御回路67は、ステップS22において、2個の加速度センサ、例えば、加速度センサ63A,63Bの信号を所定時間間隔で処理することにより、釘打機10に加わる加速度を、所定時間の間隔で検出する。制御回路67は、第1方向D1の正(+)の加速度、及び第2方向D2の負(-)の加速度を検出する。また、制御回路67は、図2及び図3に示されるように、釘打機10の所定箇所Q1を中心とする回転方向の加速度を検出する。制御回路67が検出する回転方向の加速度は、釘打機10が受ける反時計方向H1における正(+)の加速度、及び時計方向H2における負(-)の加速度を検出可能である。
【0055】
制御回路67は、ステップS23において、所定時間の間隔毎に、加速度センサ63Aの信号から検出された加速度と、加速度センサ63Bの信号から検出された加速度との差を求める。制御回路67は、ステップS23で求めた加速度の差を、ステップS24でバッファへ保存する。
【0056】
制御回路67は、ステップS25で“プッシュレバー64が作動されたか”を判断し、かつ、ステップS26で“トリガ54に操作力が付加されたか”を判断する。制御回路67は、ステップS25でYesと判断し、かつ、ステップS26でYesと判断すると、ステップS27において、“バッファに保存された加速度の差が、所定値E2未満であるか”を判断する。所定値E2は、実験またはシミュレーションによって求められ、かつ、記憶部に記憶されている。なお、所定値E2は、所定値E1より大きい。
【0057】
例えば、作業者が、釘打機10を中心線A1に沿った方向に移動させて被打込材W1に近づけている場合、2個の加速度センサ63A,63Bの信号から求められる加速度は、図9(A)に示されるように、共に第1方向D1の正(+)の加速度である。図9(A)には、加速度センサ63Bの信号から求められる加速度が実線で示され、加速度センサ63Aの信号から求められる加速度が破線で示されている。ここで、加速度センサ63A,63Bの信号から求められる加速度は、略重なっている。加速度センサ63Aの信号から求められる正(+)の加速度と、加速度センサ63Bの信号から求められる正(+)の加速度との差は、図9(C)に破線で示されるように所定値E2未満である。このため、制御回路67は、ステップS27でYesと判断し、ステップS28の制御を行ってステップS21へ進む。ステップS28の制御は、ステップS16の制御と同じである。
【0058】
これに対して、釘打機10が作業者の手から落下した場合、または、作業者が釘打機10を運搬している場合のように、釘打機10が、トリガ54付近を中心として回転されると、2個の加速度センサ63A,63Bは、共に所定箇所Q1を中心とする回転方向の加速度を検出する。また、釘打機10を側面視した図2において、所定箇所Q1から加速度センサ63Aまでの距離L1と、所定箇所Q1から加速度センサ63Bまでの距離L2と、が異なる。このため、加速度センサ63Aの信号から求められる回転方向の加速度と、加速度センサ63Bの信号から求められる回転方向の加速度と、が異なる。
【0059】
釘打機10が、トリガ54付近を中心として回転された場合に、釘打機10に加わる加速度の変化例が、図9(B)に示されている。加速度センサ63Bの信号から求められる加速度が実線で示され、加速度センサ63Aの信号から求められる加速度が破線で示されている。同一時刻において、加速度センサ63Bの信号から求められる加速度と、加速度センサ63Aの信号から求められる加速度とに差が生じている。加速度センサ63Bの信号から求められる加速度と、加速度センサ63Aの信号から求められる加速度との差の一例が、図9(C)に実線で示されている。
【0060】
制御回路67は、加速度センサ63Aの信号から求められる加速度と、加速度センサ63Bの信号から求められる加速度との差が所定値E2以上であると、ステップS27でNoと判断し、ステップS21へ進む。なお、制御回路67は、ステップS25またはステップS26の少なくとも一方でNoと判断すると、ステップS21へ進む。
【0061】
なお、制御回路67は、加速度センサ63A及び加速度センサ63Bの信号を処理することにより、図8の第2制御例を実行することも可能である。また、制御回路67は、加速度センサ63B及び加速度センサ63Cの信号を処理することにより、図8の第2制御例を実行することも可能である。制御回路67が第2制御例を行うと、制御回路67が第1制御例を行った場合と同様の効果を得ることができる。
【0062】
さらに、制御回路67は、ステップS27において、図9(B)のように、所定値E5以上の加速度が、時刻T3から時刻T4に至る所定時間TL2未満で生じたか否かを判断することも可能である。そして、制御回路67は、ステップS27でYesと判断すると、ステップS28に進み、制御回路67は、ステップS27でNoと判断すると、ステップS21に進む。
【0063】
さらに、制御回路67は、2個の加速度センサ63A,63Cによって検出される加速度を用いて第2制御例を行うことにより、作業者が釘打機10を被打込材W1に向けて移動させ、かつ、プッシュレバー64が被打込材W1に接触させたか否かを判断可能である。制御回路67は、判断結果に基づいて打撃部12を作動させるか、打撃部12を停止させておくかを決定可能である。
【0064】
作業者が釘打機10を第1方向D1で移動させると、制御回路67は、ステップS22において、加速度センサ63A,63Cの信号を処理し加速度をそれぞれ検出する。制御回路67は、加速度センサ63Aの信号を処理すると、第1方向D1の加速度を検出する。制御回路67は、加速度センサ63Cの信号を処理すると、第2方向D2の加速度を検出する。
【0065】
制御回路67は、ステップS27において、第2方向D2の加速度の絶対値が、第1方向D1の加速度以下であると、ステップS27でYesと判断する。つまり、作業者が釘打機10を被打込材W1に向けて移動させ、かつ、プッシュレバー64が被打込材W1に接触させた場合、制御回路67は、ステップS27でYesと判断する。
【0066】
これに対して、制御回路67は、ステップS27において、第2方向D2の加速度の絶対値が、第1方向D1の加速度の絶対値を超えていると、ステップS27でNoと判断する。つまり、作業者が釘打機10を被打込材W1に向けて移動させる加速度を超えた場合、制御回路67は、“物体がプッシュレバー64に向けて第2方向D2で移動している。”と判断し、打撃部12を停止させる処理を行う。
【0067】
なお、制御回路67は、2個の加速度センサ63B,63Cによって検出される加速度を用いて第2制御例を行うことにより、制御回路67は、“作業者が釘打機10を被打込材W1に向けて移動させ、かつ、プッシュレバー64が被打込材W1に接触させたか否か。”を判断してもよい。
【0068】
図5の制御回路が、図6の第1制御例、または図8の第2制御例を実行する場合、AD変換器74は、加速度センサ63A,63B,63Cのアナログ信号をデジタル信号に変換する。中央演算処理部75は、図6に示されたステップS11、ステップS15、及びステップS16の処理を行う。中央演算処理部75は、図8に示されたステップS21、ステップS23、ステップS24、ステップS27及びステップS28の処理を行う。図5に示された制御回路67は、信号の処理、状況の判断等を中央演算処理部75で行うため、回路構成が単純であり、制御回路67の製造コストの上昇を抑制可能である。
【0069】
なお、制御回路67は、第2制御例において、プッシュレバー64に設けられた2個の加速度センサ63A,63Bによって検出される加速度を互いに補正することが可能である。すなわち、一方の加速度センサ63Aにノイズが偶発的に生じた場合であっても、2個の加速度センサ63A,63Bで同時にノイズが生じることは稀である。例えば、制御回路67が、図10(A)に破線で示す加速度センサ63Aの信号と、実線で示す加速度センサ63Bの信号とを検出すると、制御回路67は、加速度センサ63A,63Bの信号の和を、図10(B)のように求める。
【0070】
制御回路67は、加速度センサ63A,63Bの信号の和が閾値E6を超えている場合に、一方の加速度センサの信号をノイズと判断可能である。制御回路67は、時刻T5で急激な加速度変化が生じている加速度センサの信号を、ノイズと判断可能である。このようにすると、制御回路67が、加速度センサから検出される加速度の値に閾値を設けて制御のための判断を行う場合に、加速度センサ63A,63Bで検出される信号に、閾値を超えるノイズが生じたとしても、制御回路67は、このノイズを除去する処理、及び補完する処理を行うことができる。したがって、制御回路67は、判断の精度を向上させることができる。
【0071】
(第3制御例)
図5に示された制御回路67は、図11の第3制御例を実行可能である。制御回路67は、複数の加速度センサの信号を処理することにより、第3制御例を実行可能である。制御回路67は、第3制御例を行うことにより、プッシュレバー64が接触された物体の種類、材質を判断し、判断結果に基づいて、打撃部12を待機位置から作動させるか、または、打撃部12を待機位置に停止させておくか、を決定することが可能である。
【0072】
制御回路67が起動されると、図11の第3制御例がスタートされる。制御回路67が行うステップS30の処理は、図6のステップS10の処理と同じである。制御回路67が、ステップS30の次に行うステップS31の処理は、図6のステップS11の処理と同じである。制御回路67は、ステップS31に次ぐステップS32において、複数の加速度センサの信号を処理して、釘打機10に加わる第1方向D1及び第2方向D2の加速度を検出する。
【0073】
制御回路67は、ステップS32に次ぐステップS33において、プッシュレバー64が作動されたか、を判断し、かつ、ステップS34において、トリガ54に操作力が付加されたか、を判断する。制御回路67は、ステップS33及びステップS34において共にYesと判断すると、ステップS35において、複数の加速度センサの信号に応じた入力変数ベクトルを、中央演算処理部75が構築したニューラルネットワークへ入力する。プッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられた場合の反力は、被打込材W1の材質によって異なる。このため、プッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられた場合に、所定時間内に釘打機10に加わる加速度の絶対値、所定時間内に加速度の絶対値が所定値を超える回数、所定時間内に加速度の方向が変換される回数等は、被打込材W1の材質により異なる。
【0074】
制御回路67は、ステップS36において、中央演算処理部75のニューラルネットワークは、ステップS32で検出された加速度に基づいて、それぞれの入力変数ベクトルの重み付けを行い、出力変数ベクトルをそれぞれ求める。出力変数ベクトルは、加速度の大きさを表す。制御回路67は、出力変数ベクトルに基づいて、プッシュレバー64が接触している物体の材質を判断する。制御回路67は、物体の材質が、例えば木材、石膏、金属の何れであるかを判断するためのデータを、予め記憶している。
【0075】
図12(A)、図12(B)及び図12(C)は、制御回路67がステップS32において検出する加速度が、接触する物体の材質に応じて変化する例を示す。図12(A)は、被打込材W1が木材である場合に、釘打機10に加わる加速度の変化例である。図12(B)は、被打込材W1が石膏である場合に、釘打機10に加わる加速度の変化例である。図12(C)は、被打込材W1が金属である場合に、釘打機10に加わる加速度の変化例である。加速度の変化における初期値は、プッシュレバー64を被打込材W1に押し付けた力によって決定される。つまり、プッシュレバー64を被打込材W1に押し付けた力は、図12(A)、図12(B)及び図12(C)においてそれぞれ異なる。制御回路67は、プッシュレバー64が接触する物体の材質の判断を、加速度の絶対値の変化特性、変化傾向に基づいて行う。
【0076】
一例として、図12(A)では、時刻T0から時刻T2までの所定時間TL1において、加速度の絶対値が所定値E3を超えた回数は3回であり、加速度の絶対値が所定値E4を超えた回数は1回である。所定値E4は所定値E3より大きい。図12(B)では、時刻T0から時刻T2までの間において、加速度の絶対値が所定値E3を超えた回数は5回であり、加速度の絶対値が所定値E4を超えた回数は1回である。図12(C)では、時刻T0から時刻T2までの間において、加速度の絶対値が所定値E3を超えた回数は7回以上であり、加速度の絶対値が所定値E4を超えた回数は0回である。制御回路67は、このような加速度の変化に従い、予め記憶された材質別の特性のデータを参照することで、ステップS36において出力変数ベクトルを求める。なお、制御回路67が加速度の変化から物体の材質を判断する手法として、所定値E4または所定値E3のように絶対値に閾値を設けることは一例である。制御回路67は、この他の手法として、加速度の変化率等、複数の条件を総合的に考慮して物体の材質を判断することもできる。
【0077】
また、図12(A)、図12(B)及び図12(C)においては、被打込材W1の材質を判断するために用いる時間として、プッシュレバー64が被打込材W1に押し付けられた時刻T0から、時刻T2までを所定時間TL1としている。所定時間TL1は、通常の打ち込みにおいて、プッシュレバー64が、被打込材W1に接触してから本体79側に向けて移動している最中に判断が完了する時間とされている。これにより、プッシュレバー64が、本体79に対する所定位置まで押し込まれた時には、制御回路67が物体の材質の判断を完了している。したがって、制御回路67が物体の材質の判断を行うことによる作業性の低下を抑制することができる。
【0078】
制御回路67は、ステップS37において、出力変数ベクトルの最大成分が、許可クラスか否かを判断する。許可クラスは、打撃部12の作動を許可する出力ベクトルの範囲を意味し、物体の材質に応じて定まる。木材、石膏は、出力ベクトルの許可クラス内にある。金属は、出力ベクトルの許可クラス外にある。そして、ステップS37は、出力ベクトルの最大値が、打撃部12の作動を許可するベクトルの範囲内にあるか否かを判断している。
【0079】
制御回路67は、ステップS37でYesと判断すると、ステップS38の制御を行い、ステップS31へ進む。ステップS38の制御は、ステップS16の制御と同じである。制御回路は、ステップS37、ステップS34、ステップS33の少なくとも1つでNoと判断すると、ステップS31へ進む。制御回路67が図11の第3制御例を実行すると、プッシュレバー64が金属に接触した場合に、打撃部12が待機位置から作動することを阻止可能である。
【0080】
さらに、制御回路67は、第1方向D1及び第2方向D2と交差する方向への加速度を更に検出可能としてもよい。すなわち、制御回路67は、第1方向D1及び第2方向D2と交差する方向への加速度が所定値以上である場合に、釘59を被打込材W1に打ち込んだ後、本体79が、釘59の打ち込み箇所から移動されたと判断可能である。また、制御回路67は、第1方向D1及び第2方向D2と交差する方向への加速度が、所定値未満である場合に、本体79が、釘59の打ち込み箇所から、少なくとも被打込材W1の表面方向に移動されていないと判断することができる。制御回路67は、これらの処理を行うことにより、プッシュレバー4が被打込材W1に接触され、かつ、打撃部12が作動して釘59が被打込材W1に打ち込まれ、被打込材W1に釘59が打ち込まれた反動でプッシュレバー64が被打込材W1から離間された後に、プッシュレバー64が前回接触された箇所と同じ個所にある釘59の頭部に接触されたか否かを、ステップS37で判断することも可能である。
【0081】
そして、制御回路67は、ステップS37でNoと判断すると、つまり、プッシュレバー64が、前回、被打込材W1に接触された箇所と同じ個所にある釘59の頭部に接触されたと判断すると、ステップS31進む。これに対して、制御回路67は、ステップS37でYesと判断すると、つまり、プッシュレバー64が前回接触された箇所とは異なる個所に接触されたと判断すると、ステップS38に進む。したがって、作業者による釘打機10の操作性が向上する。
【0082】
なお、制御回路67は、第3制御例を行うことにより、打撃部12の作動の許可、阻止を制御することにとどまらず、制御回路67は、被打込材W1の材質に応じて打撃部12の作動量、または、打撃部12の作動力を変化させるようにしてもよい。例えば、本実施形態において、蓄圧容器18の容積を変更可能なアクチュエータを設けることが可能である。また、制御回路67は、アクチュエータを制御する。そして、制御回路67が第3制御例で行った判断の結果に応じて、制御回路がアクチュエータを制御し、蓄圧容器18の容積を変更可能である。蓄圧容器18の容積が変化すると、打撃部12の作動量、及び打撃部12の作動力が変化する。
【0083】
図5に示す制御回路67が図11の第3制御例を行う場合、中央演算処理部75がニューラルネットワークを構築し、かつ、図11のステップS31,S35,S36,S37,S38の処理を行う。
【0084】
さらに、釘打機10は、プッシュレバー64の同一箇所に2個の加速度センサ63C,63Cを備えていてもよい。この場合、制御回路67は、第3制御例を行うことにより、プッシュレバー64が接触する物体の材質の判断を、より正確に行うことが可能である。具体的には、制御回路67は、図11のステップS32の後に、図8に示されたステップS23及びステップS24と同等の処理を行った後、図11のステップS33の処理に進む。すなわち、制御回路67は、一方の加速度センサ63Cにノイズが偶発的に生じた場合、図10(B)と同様に2個の加速度センサ63Cの信号の和を求めることで、信号のノイズの有無を判断し、かつ、ノイズを除去及び信号の補完を行うことが可能である。
【0085】
このため、制御回路67は、物体の材質の判別をより正確に行うことが可能となる。例えば、制御回路67が物体の材質を判断するにあたり、図13のように、加速度センサからの信号が急激に変化して閾値E7を超えたタイミングを、衝突の起点である時刻T7として判断することができる。しかし、制御回路67が、プッシュレバー64が物体に衝突する直前である時刻T6でノイズが生じ、信号が閾値E7を超える場合がある。
【0086】
この場合、制御回路67は、プッシュレバー64が時刻T6で物体に衝突したものと誤判断し、制御回路67が行う物体の材質の判断に誤りが生じる虞がある。このため、制御回路67は、2個の加速度センサ63Cの信号の和を処理してノイズを除外することにより、制御回路67は、プッシュレバー64が物体に衝突した起点である時刻T7を、正確に把握することが可能である。したがって、制御回路67が、物体の材質を判断する精度が向上する。
【0087】
(制御系統の他の例)
図14は、釘打機10に設けられる制御系統の他の例を示すブロック図である。図14において、図5と同じ構成については、図5と同じ符号を付してある。制御回路67の他に信号処理回路78が設けられている。信号処理回路78は、ハードウェアであり、かつ、アナログ回路である。信号処理回路78は、物理量としての加速度の連続的な変化を利用して、加速度センサ63A,63B,63Cから入力されるアナログ信号を処理する。また、信号処理回路78は、トリガスイッチ57の信号、プッシュレバースイッチ69の信号、位置検出センサ70の信号、回転速度検出センサ71の信号、位相検出センサ72の信号をそれぞれ処理してアナログ信号を出力する。また、信号処理回路78は、情報を一時的に記憶するバッファを有する。信号処理回路78から出力されるアナログ信号は、AD変換器74へ入力される。図14の制御回路67は、図6の第1制御例、図8の第2制御例及び図11の第3制御例を行うことが可能である。
【0088】
図14の制御回路67が、図6の第1制御例、または図8の第2制御例を行う場合、AD変換器74は、図6のステップS12、ステップS15の処理を行う。中央演算処理部75は、図6のステップS11及びステップS16の処理を行う。AD変換器74は、図8のステップS22、ステップS23及びステップS24の処理を行う。中央演算処理部75は、図8のステップS21、ステップS27及びステップS28の処理を行う。
【0089】
図14の制御回路67が、図11の第3制御例を実行する場合、信号処理回路78がニューラルネットワークを構築し、かつ、図11のステップS35,S36,S37の処理を行う。図14の中央演算処理部75は、図11のステップS31,S38の処理を行う。なお、図14に示された信号処理回路78は、アナログ回路であり、複数の加速度センサ63A,63B,63Cの信号等を並列的に処理することが可能である。このため、信号処理回路78は、中央演算処理部75のみで複数の加速度センサ63A,63B,63Cの信号等を処理することに比べて、信号の処理速度が相対的に速い。したがって、信号処理回路78に信号が入力された時点から、信号処理回路78が判断を行う時点まで、または、信号処理回路78から信号が出力される時点まで、のレスポンスが良好である。
【0090】
(補足説明)
釘打機10の実施形態で開示されている事項の技術的意味の一例は、次の通りである。釘打機10は、作業機の一例である。加速度は、本体に加わる物理量の一例である。本体79は、本体の一例である。ハウジング11は、ハウジングの一例である。打撃部12は、作動部の一例である。トリガ54及びプッシュレバー64は、操作部の一例である。プッシュレバー64は、接触部材の一例である。トリガスイッチ57、プッシュレバースイッチ69及び制御回路67は、操作状態検出部の一例である。電動モータ15、蓄圧容器18、制御回路67、インバータ回路68は、駆動部の一例である。制御回路67は、制御回路の一例である。
【0091】
図5に示された加速度センサ63A,63B,63C及び制御回路67は、物理量検出部の一例である。図14に示された加速度センサ63A,63B,63C及び信号処理回路78は、物理量検出部の一例である。マイクロコンピュータ73は、マイクロコンピュータの一例である。第1方向D1は、作動部の作動方向である第1方向の一例である。第2方向D2は、第2方向の一例である。
【0092】
加速度センサ63A,63B,63Cは、それぞれ第1検出部または第2検出部の一例であり、加速度センサ63A,63Bは、ハウジングに設けられた第1検出部の一例である。加速度センサ63Cは、可動部に設けられた第2検出部の一例である。
【0093】
打撃部12が釘59を打撃すること、は“作動部が行う処理”の一例である。制御回路67が検出する第1方向D1の加速度は、“作動部が処理を行うための作動方向の成分”の一例である。制御回路67によって図6のステップS15の判断に用いられる所定値E1は、第1所定値の一例である。制御回路67がステップS15でNoと判断することが、“本体が適正状態にないと判断する”の一例である。
【0094】
制御回路67が図8のステップS27でNoと判断することが、“本体が適正状態にないと判断する”の一例である。
【0095】
図12のグラフ図に示された所定値E4は、第1所定値の一例である。制御回路67がステップS37でNoと判断することが、“本体が適正状態にないと判断する”の一例である。
【0096】
制御回路67が、図6のステップS13,S14よりも前にステップS12で検出する加速度は、“操作部が操作される直前に本体に加わる物理量”の一例である。制御回路67が、図8のステップS25,S26よりも前にステップS23で検出する加速度は、“操作部が操作される直前に本体に加わる物理量”の一例である。制御回路67が、図11のステップS33,S34よりも前にステップS32で検出する加速度は、“操作部が操作される直前に本体に加わる物理量”の一例である。
【0097】
制御回路67が、図6のステップS12で負(-)の加速度を検出し、かつ、ステップS15でNoと判断することが、“第2方向の加速度が第2所定値を超えた場合に、本体が適正状態にないと判断する”の一例である。また、加速度0.0[G]は、第2所定値の一例であり、負(-)の加速度は、“第2方向の加速度が第2所定値を超えた”の一例である。
【0098】
さらに、図2に示される時計方向H2及び反時計方向H1は、第2方向の一例である。時計方向H2の加速度、反時計方向H1の加速度は、本体に加わる回転方向の加速度の一例である。制御回路67がステップS27の判断に用いる所定値E5は、第3所定値の一例である。所定時間TL2は、所定時間の一例である。
【0099】
本実施形態の作業機は、図面を参照して開示された具体例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、制御回路は、マイクロコンピュータ、プロセッサ、モジュール及びユニット等のうち、少なくとも1つの要素により実現可能である。制御回路は、電気部品または電子部品単体で構成されているもの、複数の電気部品または複数の電子部品で構成されているものを含む。
【0100】
本開示の作業機は、対象物に直動方向の打撃力を加えるものの他、対象物に回転力のみを加えるもの、対象物に直動方向の打撃力及び回転力を加えるもの、を含む。作動部は、工具、または、工具を保持する工具支持部材の何れでもよい。工具は、打撃子、ドライバビット、ドリルビット等を含む。工具支持部材は、チャック、アンビル、スリーブ、ボックス、エクステンション、ソケット、アダプタ等の要素を含む。
【0101】
例えば、打撃部の作動により打撃される止具は、釘の他、アーチ形状のステープル、鋲を含む。つまり、打込機は、釘打機の他に、アーチ形状のステープルを打ち込むタッカ、鋲を打ち込む鋲打ち機を含む。駆動部は、電動モータ15の他、油圧モータ、空気圧モータを含む。電動モータ15の電源部14は、直流電源または交流電源のいずれでもよい。さらに、打撃部の所定位置である待機位置は、下死点であってもよい。
【0102】
本開示において“本体に加わる物理量”は、本体に加わる加速度、本体が受ける加速度、の何れでもよい。なお、加速度に代えて速度でもよく、加速度と速度を併用してもよく、さらに位置情報としてもよい。物理量検出部は、本体に設けられていてもよいし、本体に取り付けられた要素に設けられていてもよい。制御回路は、被打込材及び物体の材質に代えて材料を判断してもよい。
【0103】
本実施形態において、打撃部を作動させる駆動部は、打撃部を第1方向に作動させる第1付勢機構と、打撃部を第2方向に作動させる第2付勢機構と、を有する。第1付勢機構は、圧縮流体の圧力で打撃部を作動させるガススプリングの他、例えば、特開2018-39064公報に記載されているように、金属製のスプリングの弾性復元力で打撃部を作動させるものを含む。また、第1移動機構は、例えば、特開2005-28568号公報に記載されているように、燃料としての可燃性ガスに点火プラグで点火し、可燃性ガスの燃焼エネルギで打撃部を移動させる燃焼室を含む。さらに、第1移動機構は、例えば、特開2008-68357号公報に記載されているように、モータの回転力でフライホイールを回転させ、フライホイールの慣性エネルギで打撃部を作動させるものを含む。
【0104】
本実施形態の作業機は、例えば、国際公開第2017-169393号に記載されている作業機のように、作動部が、回転作動または往復作動のうち、少なくとも一方の作動を行う作業機を含む。本開示の作業機は、例えば、特開2019-107713号公報に記載されている作業機のように、作動部が、回転作動及び往復作動を行う作業機を含む。さらに、本体の外部から本体内へ供給される圧縮空気を供給し、圧縮空気の圧力で作動部を作動させる作業機にも適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
10…釘打機、11…ハウジング、12…打撃部、15…電動モータ、18…蓄圧容器、54…トリガ、57…トリガスイッチ、63A,63B,63C…加速度センサ、64…プッシュレバー、67…制御回路、68…インバータ回路、69…プッシュレバースイッチ、73…マイクロコンピュータ、79…本体、D1…第1方向、D2…第2方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14