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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】測距モジュール
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20240109BHJP
   G01S 7/02 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01S7/481 Z
G01S7/02 216
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020045191
(22)【出願日】2020-03-16
(65)【公開番号】P2021148443
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 光
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/165633(WO,A1)
【文献】特開2012-159327(JP,A)
【文献】特開2018-197678(JP,A)
【文献】特開2019-056588(JP,A)
【文献】国際公開第97/040400(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/51
G01S 13/00 - G01S 13/95
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信する信号送信部(10)と、
前記信号送信部が送信した電磁波を空間に走査して投射電磁波とする走査部(30)と、
投射電磁波の物体からの反射電磁波を受信して受信信号を出力する信号受信部(40)と、
前記信号受信部の受信信号に基づいて物体との距離を算出する信号処理部(50)と、を備える測距モジュールであって、
前記信号受信部は、
投射電磁波のメインローブ、および、2つのグレーティングローブの反射電磁波を受信するように設定された第1受信部(40a)と、
投射電磁波のメインローブ、および、一方のグレーティングローブの反射電磁波を受信するように設定された第2受信部(40b)と、
投射電磁波のメインローブ、および、他方のグレーティングローブの反射電磁波を受信するように設定された第3受信部(40c)と、を備え、
前記信号処理部は、前記第1受信部、前記第2受信部、前記第3受信部の受信信号の組み合わせに基づいて、前記信号受信部が受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブ、一方のグレーティングローブ、他方のグレーティングローブのいずれの反射電磁波であるかを判定し、物体との距離を算出し、
前記信号受信部は、前記第1受信部を2つ備え、
前記信号処理部は、2つの前記第1受信部、前記第2受信部、前記第3受信部の受信信号の組み合わせに基づいて、前記信号受信部が受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブ、一方のグレーティングローブ、他方のグレーティングローブのいずれの反射電磁波であるかを判定し、
前記信号処理部は、
2つの前記第1受信部の受信信号と前記第2受信部の受信信号とを加算した後に平均化して第1加算信号とし、
2つの前記第1受信部の受信信号と前記第3受信部の受信信号とを加算した後に平均化して第2加算信号とし、
いずれか一方の前記第1受信部の受信信号と前記第2受信部の受信信号と前記第3受信部の受信信号とを加算した後に平均化して第3加算信号とし、
前記第1加算信号、前記第2加算信号、前記第3加算信号に現れた複数の信号のうち、前記第1加算信号、前記第2加算信号、前記第3加算信号で共通して信号強度が最大となった時刻の信号を、前記信号受信部が投射電磁波のメインローブの反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定し、
該信号を除いた残りの信号のうち、前記第2加算信号よりも前記第1加算信号において大きく現れた信号を、前記信号受信部が投射電磁波の一方のグレーティングローブの反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定し、
前記第1加算信号よりも前記第2加算信号において大きく現れた信号を、前記信号受信部が投射電磁波の他方のグレーティングローブの反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定する測距モジュール。
【請求項2】
前記信号受信部は、電磁波を受信するアンテナ部(41)を備え、
前記アンテナ部は、2つの前記第1受信部を構成する部分と、前記第2受信部を構成する部分と、前記第3受信部を構成する部分とに分かれており、
前記アンテナ部のうち、2つの前記第1受信部を構成する部分は、前記第2受信部を構成する部分および前記第3受信部を構成する部分のいずれよりも面積が大きい請求項1に記載の測距モジュール。
【請求項3】
前記アンテナ部のうち、一方の前記第1受信部を構成する部分と、他方の前記第1受信部を構成する部分と、前記第2受信部を構成する部分と、前記第3受信部を構成する部分とは、面積が互いに等しい請求項2に記載の測距モジュール。
【請求項4】
前記アンテナ部は、平行に並んだ複数の導波路で構成されている請求項2または3に記載の測距モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェーズドアレイ構造を備える測距モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
OPA(Optical Phased Array)構造のLiDAR(Light Detection and Ranging)を用いた測距モジュールでは、投射光のメインローブの他に、メインローブ光とは異なる角度に投射されるグレーティングローブ光が現れる。
【0003】
従来の測距モジュールでは、グレーティングローブ光がメインローブ光の走査範囲に入らないように、メインローブ光とグレーティングローブ光との間の角度が走査角の3倍以上となるように投光OPAを設計している。さらに、受光OPAについては、投光と同期してメインローブ光が投射された方向からの光を受光するとともに、グレーティングローブ光が受光範囲から外れるように、受光角設計が行われる。
【0004】
このようなグレーティングローブ光について、特許文献1では、メインローブ光に加えて、グレーティングローブ光を用いて物体との距離を測定するLiDARシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2019/0129008号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のLiDARシステムでは、メインローブ光とグレーティングローブ光のそれぞれに対して、別々の受光部を備えた構成とされている。このような構成では、必要な受光素子の数が多くなるため、装置の体格が大きくなる。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、体格の大型化を抑制可能な測距モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、電磁波を送信する信号送信部(10)と、信号送信部が送信した電磁波を空間に走査して投射電磁波とする走査部(30)と、投射電磁波の物体からの反射電磁波を受信して受信信号を出力する信号受信部(40)と、信号受信部の受信信号に基づいて物体との距離を算出する信号処理部(50)と、を備える測距モジュールであって、信号受信部は、投射電磁波のメインローブ、および、2つのグレーティングローブの反射電磁波を受信するように設定された第1受信部(40a)と、投射電磁波のメインローブ、および、一方のグレーティングローブの反射電磁波を受信するように設定された第2受信部(40b)と、投射電磁波のメインローブ、および、他方のグレーティングローブの反射電磁波を受信するように設定された第3受信部(40c)と、を備え、信号処理部は、第1受信部、第2受信部、第3受信部の受信信号の組み合わせに基づいて、信号受信部が受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブ、一方のグレーティングローブ、他方のグレーティングローブのいずれの反射電磁波であるかを判定し、物体との距離を算出し、信号受信部は、第1受信部を2つ備え、信号処理部は、2つの第1受信部、第2受信部、第3受信部の受信信号の組み合わせに基づいて、信号受信部が受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブ、一方のグレーティングローブ、他方のグレーティングローブのいずれの反射電磁波であるかを判定し、信号処理部は、2つの第1受信部の受信信号と第2受信部の受信信号とを加算した後に平均化して第1加算信号とし、2つの第1受信部の受信信号と第3受信部の受信信号とを加算した後に平均化して第2加算信号とし、いずれか一方の第1受信部の受信信号と第2受信部の受信信号と第3受信部の受信信号とを加算した後に平均化して第3加算信号とし、第1加算信号、第2加算信号、第3加算信号に現れた複数の信号のうち、第1加算信号、第2加算信号、第3加算信号で共通して信号強度が最大となった時刻の信号を、信号受信部が投射電磁波のメインローブの反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定し、該信号を除いた残りの信号のうち、第2加算信号よりも第1加算信号において大きく現れた信号を、信号受信部が投射電磁波の一方のグレーティングローブの反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定し、第1加算信号よりも第2加算信号において大きく現れた信号を、信号受信部が投射電磁波の他方のグレーティングローブの反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定する。
【0009】
このように、信号受信部は、メインローブと2つのグレーティングローブを受信する第1受信部、メインローブと一方のグレーティングローブを受信する第2受信部、メインローブと他方のグレーティングローブを受信する第3受信部を備える。そして、信号処理部は、距離の算出に、3つの受信信号を組み合わせて用いる。これにより、各受信信号の強度が低くても、全体での信号強度を高く維持することができるため、受光素子の数の増加を抑制し、体格の大型化を抑制することができる。
【0010】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態にかかる測距モジュールのブロック図である。
図2】投射電磁波のメインローブとグレーティングローブについて説明するための図である。
図3図1に示す信号受信部の構成を示す図である。
図4図1に示す信号処理部のブロック図である。
図5図4に示す方向符号化部のブロック図である。
図6図4に示す方位判定部のブロック図である。
図7】3つのアンテナ部で反射電磁波を受信する様子を示す図である。
図8】受信信号と加算信号を示す図である。
図9】第2実施形態における信号受信部の構成を示す図である。
図10】4つのアンテナ部で反射電磁波を受信する様子を示す図である。
図11】第2実施形態における受信信号と加算信号を示す図である。
図12】第3実施形態にかかる測距モジュールのブロック図である。
図13図12に示す信号処理部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0013】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。図1に示す測距モジュールは、車両に搭載され、電磁波の送受信によって車両と物体との距離を測定するものであり、シリコンフォトニクスによってSOI(Silicon on Insulator)基板上に形成された集積チップで構成されている。電磁波としては、光やミリ波が用いられる。
【0014】
図1に示すように、測距モジュールは、送信信号としての電磁波を生成して出力する信号送信部10と、この信号送信部10を駆動する送信駆動部20と、信号送信部10が出力した電磁波を空間に走査して投射電磁波とする走査部30とを備えている。
【0015】
信号送信部10と送信駆動部20は、SOI基板上に形成されたAl等の金属配線で接続されており、信号送信部10と走査部30は、Si等で構成されたコア層と、SiO等で構成されたクラッド層からなる導波路によって接続されている。信号送信部10は、例えばレーザダイオードで構成され、送信駆動部20から電流が供給されることによって光を発生させる。
【0016】
走査部30は、信号送信部10から送信された電磁波を空間に投射する投射部31と、投射部31を駆動する位相制御部32とを備えている。投射部31は、導波路が分岐して平行に並んだOPAで構成されており、平行に並ぶ複数の導波路の端部から電磁波が出射されるようになっている。
【0017】
位相制御部32は、図示しない制御回路から入力される電気信号に応じて、投射部31から出射される電磁波の位相を変化させるものである。投射部31を構成する複数の導波路を通る電磁波の位相は、位相制御部32によって周期的に変化し、これにより、複数の導波路から出射される電磁波の位相が周期的に変化する。そして、投射部31の全体から出射される電磁波の指向性が変化し、電磁波が任意の方向に走査される。
【0018】
測距モジュールは、信号送信部10等に加えて、投射電磁波の物体からの反射電磁波を受信する構成を備えている。具体的には、図1に示すように、測距モジュールは、反射電磁波を受信して受信信号を出力する信号受信部40と、信号受信部40の受信信号に基づいて物体との距離を算出する信号処理部50と、信号処理部50が算出した距離を車両のECU等に送信する通信部60とを備えている。
【0019】
信号受信部40は、アンテナ部41と、合波部42と、電気変換部43とを備えている。アンテナ部41は、外部からの電磁波を受信するものである。アンテナ部41は、平行に並んだ複数の導波路を備えるフェーズドアレイ構造とされており、各導波路の端部から電磁波が入射するようになっている。各導波路には図示しない移相器が配置されており、移相器によって各導波路に入射する電磁波の位相を制御することで、アンテナ部41全体での電磁波の入射方向を制御することができる。
【0020】
アンテナ部41を構成する複数の導波路は、1つに合流して合波部42に接続されている。そして、アンテナ部41が受信した電磁波は、合波部42によって、信号送信部10が出力した電磁波と合波され、これによってビート信号が生成される。これは、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体との距離を測定するためである。
【0021】
合波部42は、導波路によって電気変換部43に接続されており、合波部42によって合波された電磁波は、電気変換部43に送信される。電気変換部43は、フォトダイオード等で構成された図示しない光電変換部と、トランスインピーダンスアンプ等で構成された図示しない電流電圧変換部と、図示しないアナログデジタル変換部とを備えている。電気変換部43は、金属配線によって信号処理部50に接続されており、電気変換部43に送信された電磁波は、デジタル信号に変換されて信号処理部50に送信される。
【0022】
フェーズドアレイ構造の投射部を備える測距モジュールでは、図2に示すように、電磁波が3つに分かれて投射される。すなわち、投射電磁波は、位相制御部32によって制御された所望の方向に投射されるメインローブMLと、このメインローブMLの両側に投射される2つのグレーティングローブGL1、GL2に分かれる。そして、矢印AR1で示すようにメインローブMLが走査されると、これに伴って矢印AR2で示すようにグレーティングローブGL1、GL2も走査される。これにより、メインローブMLの反射電磁波と同様に、グレーティングローブGL1、GL2の反射電磁波も測距モジュールに入射する。
【0023】
本実施形態の測距モジュールは、受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブMLと、2つのグレーティングローブGL1、GL2との、いずれの反射電磁波であるかを判定し、各ローブを反射した物体との距離を測定する構成を備えている。
【0024】
具体的には、図3に示すように、アンテナ部41は、アンテナ部41aと、アンテナ部41bと、アンテナ部41cとに分かれている。そして、アンテナ部41a、41b、41cは、各アンテナ部を構成する複数の導波路に配置された移相器によって、それぞれ異なる方向からの電磁波を受信するように設定されている。
【0025】
アンテナ部41aは、投射電磁波のメインローブML、および、2つのグレーティングローブGL1、GL2の反射電磁波を受信するように設定されている。アンテナ部41bは、投射電磁波のメインローブML、および、一方のグレーティングローブGL1の反射電磁波を受信するように設定されている。アンテナ部41cは、投射電磁波のメインローブML、および、他方のグレーティングローブGL2の反射電磁波を受信するように設定されている。
【0026】
合波部42、電気変換部43は、アンテナ部41に対応してアレイ構造とされている。具体的には、合波部42は、合波部42a、合波部42b、合波部42cに分かれており、電気変換部43は、電気変換部43a、電気変換部43b、電気変換部43cに分かれている。そして、アンテナ部41a、41b、41cが受信した電磁波は、合波部42a、42b、42cによって、信号送信部10が出力した電磁波と別々に合波され、電気変換部43a、43b、43cによって受信信号に変換される。
【0027】
信号受信部40のうち、アンテナ部41a、合波部42a、電気変換部43aによって構成される部分を第1受信部40aとする。また、信号受信部40のうち、アンテナ部41b、合波部42b、電気変換部43bによって構成される部分を第2受信部40bとする。また、信号受信部40のうち、アンテナ部41c、合波部42c、電気変換部43cによって構成される部分を第3受信部40cとする。
【0028】
信号処理部50は、これら3つの受信部の受信信号の組み合わせに基づいて、信号受信部40が受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブML、一方のグレーティングローブGL1、他方のグレーティングローブGL2のいずれの反射電磁波であるかを判定する。そして、信号処理部50は、メインローブMLと2つのグレーティングローブGL1、GL2のそれぞれについて、物体との距離を算出する。
【0029】
具体的には、図4に示すように、信号処理部50は、データ保持部51と、方向符号化部52と、FFT処理部53と、方位判定部54と、距離算出部55とを備えている。信号処理部50は、例えばDSP(Digital Signal Processor)で構成される。データ保持部51は、電気変換部43が出力した受信信号を保持するものであり、方向符号化部52は、データ保持部51が保持した受信信号の符号化を行うものである。
【0030】
方向符号化部52は、図5に示すように、組み合わせ加算部521と、除算部522とを備えている。そして、アンテナ部41a、41b、41cが受信した電磁波の受信信号は、組み合わせ加算部521によって加算された後に、除算部522によって、加算した信号の数で除算され、平均化される。
【0031】
なお、方向符号化部52は、第1受信部40aの受信信号を第1受信信号とし、第2受信部40bの受信信号を第2受信信号として、第1受信信号と第2受信信号とを加算した後に平均化して、第1加算信号とする。また、方向符号化部52は、第3受信部40cの受信信号を第3受信信号として、第1受信信号と第3受信信号とを加算した後に平均化して、第2加算信号とする。また、方向符号化部52は、第1受信信号と第2受信信号と第3受信信号とを加算した後に平均化して、第3加算信号とする。これらの加算信号は、FFT処理部53に送信される。
【0032】
FFT処理部53は、方向符号化部52から送信された加算信号に対してFFT処理を行い、周波数を検出するものである。FFT処理部53は、周波数の検出結果と、方向符号化部52から送信された信号を、方位判定部54に送信する。
【0033】
図6に示すように、方位判定部54は、メインローブ判定部541と、グレーティングローブ判定部542とを備えている。メインローブ判定部541は、信号受信部40が受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブMLの反射電磁波であるか否かを判定するものである。グレーティングローブ判定部542は、信号受信部40が受信した電磁波が、投射電磁波のグレーティングローブGL1、GL2の反射電磁波であるか否かを判定するものである。
【0034】
メインローブ判定部541は、第1、第2、第3加算信号に現れた複数の信号のうち、第1、第2、第3加算信号で共通して信号強度が最大となった時刻の信号を、信号受信部40が投射電磁波のメインローブMLの反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定する。
【0035】
グレーティングローブ判定部542は、この信号を除いた残りの信号のうち、第2加算信号よりも第1加算信号において大きく現れた信号を、信号受信部40が投射電磁波の一方のグレーティングローブGL1の反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定する。
【0036】
また、グレーティングローブ判定部542は、第1加算信号よりも第2加算信号において大きく現れた信号を、信号受信部40が投射電磁波の他方のグレーティングローブGL2の反射電磁波を受信して出力した受信信号と判定する。方位判定部54は、メインローブMLとグレーティングローブGL1、GL2の判定結果、および、FFT処理部53から送信された周波数の検出結果を距離算出部55に送信する。
【0037】
距離算出部55は、方位判定部54から送信された情報に基づいて、物体との距離および物体の速度を算出するものである。本実施形態では、距離算出部55は、投射電磁波のメインローブMLを反射した物体と、グレーティングローブGL1、GL2を反射した物体の両方について、距離と速度を算出する。信号処理部50が算出した距離および速度と、物体の方向は、通信部60によって車両のECU等に送信される。
【0038】
例えば、投射電磁波のメインローブMLと2つのグレーティングローブGL1、GL2が、図7に示す位置にある3つの物体100a、100b、100cで反射したときには、図8に示すように受信信号が出力される。すなわち、アンテナ部41aを備える第1受信部40aから出力される第1受信信号は、3つの時刻t1、t2、t3において信号強度が高くなる。また、アンテナ部41bを備える第2受信部40bから出力される第2受信信号は、時刻t2、t3において信号強度が高くなる。また、アンテナ部41cを備える第3受信部40cから出力される第3受信信号は、時刻t1、t3において信号強度が高くなる。なお、図8および後述の図11では、第1、第2、第3受信信号と、加算信号に含まれる第1、第2、第3受信信号に、異なるハッチングを施してある。
【0039】
これらの受信信号が方向符号化部52によって処理されると、第1、第2、第3加算信号は、図8に示すようになる。すなわち、第1加算信号は、時刻t2、t3において最も信号強度が高くなり、第2加算信号は、時刻t1、t3において最も信号強度が高くなり、第3加算信号は、時刻t3において最も信号強度が高くなる。
【0040】
このことから、メインローブ判定部541は、第1、第2、第3加算信号で共通して信号強度が最大となる時刻t3の信号を、メインローブMLの反射電磁波による受信信号であると判定する。
【0041】
そして、グレーティングローブ判定部542は、残りの時刻t1、t2の信号のうち、第2加算信号よりも第1加算信号において信号強度が高くなる時刻t2の信号を、一方のグレーティングローブGL1の反射電磁波による受信信号であると判定する。
【0042】
また、グレーティングローブ判定部542は、第1加算信号よりも第2加算信号において信号強度が高くなる時刻t1の信号を、他方のグレーティングローブGL2の反射電磁波による受信信号であると判定する。
【0043】
距離算出部55は、合波部42a、42b、42cによって生成されたビート信号から、物体100a、100b、100cとの距離、および、物体100a、100b、100cの速度を算出する。また、メインローブMLとグレーティングローブGL1、GL2との間の角度は、投射部31の設計によって定まり、距離算出部55は、メインローブMLの投射方向と、この角度とに基づいて、物体100a、100b、100cの方向を算出する。
【0044】
本実施形態の効果について説明する。従来の測距モジュールで走査角を増やすには、測距点数を減らす、測距時間を短くする等の方法が考えられる。しかしながら、測距点数を減らすと空間分解能が低下し、測距時間を短くすると受信信号のSN比が低下するため、距離検知性能が低下するおそれがある。また、受光OPA等のシステムを増やすことが考えられるが、システムを増やすと、体格やコストが増大するおそれがある。
【0045】
これに対して、本実施形態では、投射電磁波のメインローブとグレーティングローブの両方の反射電磁波を同時に受信する構成とし、3つの受信信号に基づいて物体を検知している。これにより、測距点数や測距時間を減らさずに、走査角を増やすことができる。また、アンテナ部41を分割し、分割された各アンテナ部が受信する電磁波の組み合わせを変えることにより、アンテナ部の面積の増大による体格の大型化やコストの増加を抑制することができる。また、各受信信号の平均化および符号化によりノイズの影響が低減され、アンテナ部を分割した本実施形態においても、SN比を維持することができる。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して信号受信部40の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0047】
図9に示すように、本実施形態では、アンテナ部41が、2つのアンテナ部41aと、アンテナ部41b、41cとに分かれており、信号受信部40が第1受信部40aを2つ備える構成とされている。信号処理部50は、2つの第1受信部40a、第2、第3受信部40b、40cの受信信号の組み合わせに基づいて、信号受信部40が受信した電磁波が、投射電磁波のメインローブML、グレーティングローブGL1、GL2のいずれの反射電磁波であるかを判定する。
【0048】
具体的には、方向符号化部52は、2つの第1受信部40aの受信信号と、第2受信部40bの受信信号とを加算した後に平均化して、第1加算信号とする。また、方向符号化部52は、2つの第1受信部40aの受信信号と、第3受信部40cの受信信号とを加算した後に平均化して、第2加算信号とする。また、方向符号化部52は、いずれか一方の第1受信部40aの受信信号と、第2受信部40bの受信信号と、第3受信部40cの受信信号とを加算した後に平均化して、第3加算信号とする。そして、方位判定部54、距離算出部55は、第1実施形態と同様に、メインローブMLとグレーティングローブGL1、GL2の判定を行い、物体との距離、物体の速度、物体の方向を算出する。
【0049】
例えば、投射電磁波のメインローブMLと2つのグレーティングローブGL1、GL2が、図10に示す位置にある3つの物体100a、100b、100cで反射したときには、図11に示すように受信信号が出力される。すなわち、2つの第1受信部40aから出力される第1受信信号は、3つの時刻t1、t2、t3において信号強度が高くなる。また、第2受信部40bから出力される第2受信信号は、時刻t2、t3において信号強度が高くなる。また、第3受信部40cから出力される第3受信信号は、時刻t1、t3において信号強度が高くなる。
【0050】
これらの受信信号が方向符号化部52によって処理されると、第1、第2、第3加算信号は、図11に示すようになる。すなわち、第1加算信号は、時刻t2、t3において最も信号強度が高くなり、第2加算信号は、時刻t1、t3において最も信号強度が高くなり、第3加算信号は、時刻t3において最も信号強度が高くなる。
【0051】
このことから、第1実施形態と同様に、時刻t3の信号がメインローブMLの反射電磁波による受信信号であると判定される。また、時刻t2の信号が一方のグレーティングローブGL1の反射電磁波による受信信号であると判定され、時刻t1の信号が他方のグレーティングローブGL2の反射電磁波による受信信号であると判定される。
【0052】
そして、合波部42a、42b、42cによって生成されたビート信号から、物体100a、100b、100cとの距離、および、物体100a、100b、100cの速度が算出される。また、メインローブMLの投射方向等に基づいて、物体100a、100b、100cの方向が算出される。
【0053】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。また、アンテナ部41aを2つ備え、2つの第1受信部40aからの受信信号が第1、第2加算信号に含まれる構成とすることにより、第1、第2加算信号の信号強度が高くなり、物体の検出精度を向上させることができる。
【0054】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して物体との距離の測定方法を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0055】
本実施形態の測距モジュールは、TOF(Time of Flight)方式によって物体との距離を測定する。具体的には、図12に示すように、信号受信部40が合波部42を備えず、アンテナ部41によって受信された電磁波がそのまま電気変換部43に送信されるようになっている。また、図13に示すように、信号処理部50がFFT処理部53を備えず、方向符号化部52から方位判定部54に信号が送信されるようになっている。
【0056】
そして、距離算出部55は、信号送信部10によって電磁波が送信されてから信号受信部40によって反射電磁波が受信されるまでの時間に基づいて、物体との距離を算出する。通信部60は、信号処理部50が算出した距離と、物体の方向とをECU等に送信する。
【0057】
このようにTOF方式で距離を測定する本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。
【0059】
例えば、上記第3実施形態では、第1実施形態に対して物体との距離の測定方法を変更したが、第2実施形態においてTOF方式で距離を測定してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 信号送信部
30 走査部
40 信号受信部
40a 第1受信部
40b 第2受信部
40c 第3受信部
50 信号処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13