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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】収納ケースのラッチ機構
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/52 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E05B65/52 P
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020058060
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2021156037
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139365
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100150304
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 勉
(72)【発明者】
【氏名】塩坂 拓
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実公昭37-002428(JP,Y1)
【文献】米国特許第02953404(US,A)
【文献】実公昭14-010975(JP,Y1)
【文献】実公昭44-005227(JP,Y1)
【文献】実公昭54-025561(JP,Y2)
【文献】実開昭51-014917(JP,U)
【文献】特公昭45-024000(JP,B1)
【文献】特公昭50-026688(JP,B1)
【文献】特開平09-184345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 65/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース本体にケースカバーが開閉可能に連結され、当該ケースカバーの上部に底面が上下2段の段状の凹部が形成された収納ケースのラッチ機構であって、
前記ケース本体に連結されたラッチアームと、
前記ケースカバーの前記凹部の上段に設けられたアーム受け部と、を備え、
前記ラッチアームの先端側には前記凹部に入り込むフックが形成されており、
前記アーム受け部の先端側には前記凹部の上段から前方に突き出した係止爪が形成されており、
前記アーム受け部には、前記フックを前記係止爪の爪先に向けてガイドする斜面が形成されていることを特徴とする収納ケースのラッチ機構。
【請求項2】
ケース本体にケースカバーが開閉可能に連結された収納ケースのラッチ機構であって、
前記ケース本体に連結されたラッチアームと、
前記ケースカバーに設けられたアーム受け部と、
前記ケース本体に連結された連結アームと、
前記連結アームの揺動に反発する反発バネと、を備え、
前記ラッチアームの先端側にはフックが形成されており、
前記アーム受け部の先端側には係止爪が形成されており、
前記アーム受け部には、前記フックを前記係止爪の爪先に向けてガイドする斜面が形成され
前記ラッチアームは前記連結アームに連結されており、
前記連結アームは前記ラッチアームを押し上げる起立姿勢と前記ラッチアームを引き下ろす倒伏姿勢を取り、
前記ラッチ機構の開状態では前記反発バネの反発力によって前記連結アームが起立姿勢に保持され、前記ラッチ機構の閉状態では前記反発バネの反発力によって前記連結アームが倒伏姿勢に保持されることを特徴とする収納ケースのラッチ機構。
【請求項3】
前記アーム受け部には、前記係止爪よりも基端側の所定位置から前記爪先までの範囲に前記斜面が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の収納ケースのラッチ機構。
【請求項4】
前記ラッチアームの基端側には把持部が形成されており、
前記フックが前記係止爪の爪先から外れた状態で、前記連結アームが起立姿勢から倒伏姿勢を取るように揺動した場合に、前記フックが前記斜面に当たり、かつ前記把持部が前記ケース本体の上面に当たることを特徴とする請求項2に記載の収納ケースのラッチ機構。
【請求項5】
前記連結アームは第1の揺動ピンを介して前記ケース本体に連結されており、
前記ラッチアームは第2の揺動ピンを介して前記連結アームに連結されており、
前記フックが前記斜面に当たった点と前記第1の揺動ピンの中心を結ぶ直線よりも、前記第2の揺動ピンの中心が開状態側に位置することを特徴とする請求項4に記載の収納ケースのラッチ機構。
【請求項6】
前記フックが前記斜面に当たり、かつ前記把持部が前記ケース本体の上面に当たった状態で、前記反発バネの反発力によって前記連結アームが起立姿勢側に押し上げられることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の収納ケースのラッチ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納ケースのラッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
収納ケースとして、いわゆるドローラッチ機構(パッチン錠)によって閉状態を維持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の収納ケースは、ケース本体に対してケースカバーが開閉可能に連結されており、ケース本体とケースカバーによって収納空間が形成されている。ケース本体の前面には一対の掛け金具が設けられ、ケースカバーの前面には一対の受け金具が設けられており、受け金具に掛け金具が引っ掛けられた状態で、掛け金具のロックレバーを押し下げることでケースカバーが閉じた状態でロックされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-095227号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、ケースカバーが完全に閉じていない状態でロック操作が行われると、受け金具に掛け金具が引っ掛からずに、受け金具と掛け金具の圧接によって閉状態が保持される場合がある。このため、ロック操作の終了後にケースカバーが確実に掛け止めされているか否かを、ユーザが確認する必要があった。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ケースカバーを閉じた状態で容易な操作によって確実に掛け止めすることができる収納ケースのラッチ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の収納ケースのラッチ機構は、ケース本体にケースカバーが開閉可能に連結され、当該ケースカバーの上部に底面が上下2段の段状の凹部が形成された収納ケースのラッチ機構であって、前記ケース本体に連結されたラッチアームと、前記ケースカバーの前記凹部の上段に設けられたアーム受け部と、を備え、前記ラッチアームの先端側には前記凹部に入り込むフックが形成されており、前記アーム受け部の先端側には前記凹部の上段から前方に突き出した係止爪が形成されており、前記アーム受け部には、前記フックを前記係止爪の爪先に向けてガイドする斜面が形成されていることで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様の収納ケースのラッチ機構によれば、ラッチアームのロック操作時にアーム受け部の斜面にフックが当たると、斜面に沿ってアーム受け部の係止爪の爪先までフックがガイドされる。係止爪にフックが掛け止めされて、収納ケースを閉じた状態で収納ケースがロックされる。容易な操作によってフックが係止爪に確実に掛け止めされるため、適切に掛け止めされているかをユーザが確認する必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施例の収納ケースの斜視図である。
図2】本実施例の収納ケースの部分断面図である。
図3】本実施例の収納ケースの平面図である。
図4】本実施例の収納ケースの部分平面図である。
図5】本実施例の収納ケースの部分平面図である。
図6】本実施例の施錠機構の斜視図である。
図7】本実施例の施錠状態を示す斜視図である。
図8】本実施例のラッチ機構の閉動作の遷移図である。
図9】本実施例のラッチ機構の開動作の遷移図である。
図10】変形例の収納ケースの部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様の収納ケースは、ケース本体にケースカバーが開閉可能に連結されている。ケース本体にはラッチアームが連結され、ケースカバーにはアーム受け部が設けられており、ラッチアームとアーム受け部によってケース本体にケースカバーを固定するラッチ機構が形成されている。ラッチアームの先端側にはフックが形成され、アーム受け部の先端側には係止爪が形成されている。アーム受け部には斜面が形成されており、ラッチアームのロック操作時にアーム受け部の斜面にフックが当たると、斜面に沿ってアーム受け部の係止爪の爪先までフックがガイドされる。係止爪にフックが掛け止めされて、ケース本体を閉じた状態でケースカバーがロックされる。これにより、容易な操作によってフックが係止爪に確実に掛け止めされるため、適切に掛け止めされているかをユーザが確認する必要がない。
【実施例
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施例について詳細に説明する。以下の説明では、鞍乗型車両等の車両にサイドケースとして取り付けられる収納ケースについて説明する。ただし、本実施例の収納ケースは、荷台上のリアボックス、キャスター付きのトランクケースや手荷物バッグ等の他の収納ケースに適用することができる。また、以下の図では、矢印FRはケース前方、矢印REはケース後方、矢印Lはケース左方、矢印Rはケース右方をそれぞれ示している。図1は本実施例の収納ケースの斜視図である。
【0011】
図1に示すように、収納ケース1は、車両側部のケースホルダ10に対して着脱可能に取り付けられる。収納ケース1のケース本体20の前面が開放されており、ケース本体20の下縁にはヒンジを介してケースカバー30が下開き可能に連結されている。ケース本体20とケースカバー30によって荷物の収納空間が形成され、ケース本体20には収納空間に収納された荷物を押さえる中バンド21がX字状に設けられている。収納ケース1の底面四隅には半球状の弾性脚部(不図示)が設けられ、収納ケース1が車両から外された状態でも、収納ケース1を安定した状態で自立させることができる。
【0012】
ケース本体20の上面中央には、収納ケース1を持ち運び可能にするハンドル40が揺動可能に連結されている。ハンドル40の内側には、ケースカバー30が閉まった状態で、ケース本体20にケースカバー30を固定するラッチ機構50が設置されている。また、ケース本体20の上面には、ハンドル40及びラッチ機構50を囲むように上部カバー29が取り付けられている。上部カバー29から施錠機構70(図6参照)のキーシリンダ71が露出しており、キーシリンダ71の鍵穴に差し込まれたキーによって、ラッチ機構50及びハンドル40の施錠及び開錠が切り替えられる。
【0013】
収納ケース1のラッチ機構50は、ラッチアーム51の先端をケースカバー30に引っ掛けた状態で、ラッチアーム51を押し下げることによって収納ケース1を閉じた状態でロックする。このとき、ラッチアーム51の押し下げ方によっては、ラッチアーム51によってケースカバー30が掛け止めされず、不完全な状態で収納ケース1がロックされるおそれがある。そこで、本実施例の収納ケース1では、ラッチアーム51によってケースカバー30が確実に掛け止めされるように、ケースカバー30に接触したラッチアーム51の先端が掛け止め位置に向けてガイドされている。
【0014】
図2から図7を参照して、収納ケースの上部構造について説明する。図2は、本実施例の収納ケースの部分断面図である。図3は、本実施例の収納ケースの平面図である。図4は、本実施例の収納ケースの部分平面図である。図5は、本実施例の収納ケースの部分平面図である。図6は、本実施例の施錠機構の斜視図である。図7は、本実施例の施錠状態を示す斜視図である。なお、図4は収納ケースから上部カバー、ラッチアーム、ハンドルを外した状態を示し、図5はさらに設置カバーを外した状態を示している。
【0015】
図2から図4に示すように、ケース本体20のケース上部は、各種機構が設置される設置カバー22によって形成されている。設置カバー22の上部には、上面中央を露出させるように上部カバー29が取り付けられ、設置カバー22の露出部分にはラッチ機構50及びハンドル40が設置されている(特に図3参照)。設置カバー22の上部にはラッチ機構50の掛け具としてラッチアーム51が設けられ、ケースカバー30の上部にはラッチ機構50の受け具として複数の板状突起から成るアーム受け部35が設けられている。ラッチアーム51は連結アーム61を介して設置カバー22に連結されている。
【0016】
連結アーム61は、左右一対のアーム部を連ねた平面視H状に形成されている(特に図4参照)。連結アーム61の基端側は第1の揺動ピン63を介して設置カバー22に連結されており、連結アーム61の先端側は第2の揺動ピン64を介してラッチアーム51に連結されている。連結アーム61の基端側にはカム62(特に図2参照)が形成されており、設置カバー22上には連結アーム61の揺動に反発する側面視アーチ状の反発バネ65が設置されている。連結アーム61が第1の揺動ピン63を支点に揺動して、カム62が反発バネ65に弾接することで、ラッチアーム51を押し上げる起立姿勢とラッチアーム51を引き下ろす倒伏姿勢に連結アーム61が保持される。
【0017】
ラッチアーム51は、連結アーム61の先端側からケースカバー30に向かって延びた幅広の板状に形成されている。ラッチアーム51の基端側には筒状の把持部52が形成されており、把持部52によってラッチアーム51が持ち上げられる。また、ラッチアーム51の基端側は、第2の揺動ピン64に装着されたトーションバネ66(特に図4参照)によって押し上げ方向(開方向)に押されている。ラッチアーム51の先端側には、側面視C字状に屈曲したフック53が形成されている。フック53が複数のアーム受け部35の先端に掛け止めされることで、ケース本体20に対してケースカバー30が閉状態でロックされる。
【0018】
ケースカバー30の上部には、ラッチアーム51のフック53が入り込むように凹部31が形成されており、凹部31の底面は上下2段の段状に形成されている。凹部31の上段には、平面視櫛歯状の複数のアーム受け部35がケース幅方向(左右方向)に設けられている。各アーム受け部35の先端側には、凹部31の上段から前方に突出した係止爪36が形成されている。各アーム受け部35の上面には、ラッチアーム51のフック53を係止爪36の爪先に向けてガイドする斜面37(特に図2参照)が形成されている。フック53が斜面37に当たることで、フック53が係止爪36に掛け止めされる係止位置までガイドされる。
【0019】
また、各アーム受け部35の斜面37は、係止爪36よりも基端側の所定位置から爪先までの範囲に亘って形成されている。本実施例では各アーム受け部35の基端から略中間位置までは略水平に形成され、この略中間位置から爪先に向かって各アーム受け部35の厚みが薄くなるように傾斜している。アーム受け部35は平面視細長に形成されており、樹脂成型がし易くなっている。なお、斜面37は、本実施例のように直線的に傾斜してもよいし、凸状に湾曲しながら傾斜してもよいし、凹状に湾曲しながら傾斜してもよい。
【0020】
ハンドル40は、第1の揺動ピン63を支点に揺動する一対の支持アーム41と、一対の支持アーム41を連ねるグリップ42と、によって平面視U字状に形成されている。ハンドル40はラッチアーム51と同一の設置カバー22に揺動可能に連結されており、ハンドル40を倒したときに平面視U字状のハンドル40の内側にラッチアーム51の基端側が収まっている。これにより、設置カバー22上の設置スペースにハンドル40とラッチアーム51がコンパクトに設置される。一対の支持アーム41の基端側は、第1の揺動ピン63に装着された一対のトーションバネ43(特に図4参照)によって引き込み方向(閉方向)に押されている。
【0021】
第1の揺動ピン63はケース幅方向に延びており、第1の揺動ピン63のケース幅方向の内側には連結アーム61が支持され、第1の揺動ピン63のケース幅方向の外側にはハンドル40が支持されている。連結アーム61とハンドル40に第1の揺動ピン63が兼用されることで、部品点数及びコストが低減されると共に、ラッチ機構50とハンドル40がよりコンパクトに設置される。また、第1の揺動ピン63の一端はL字状に屈曲しており、屈曲部分の先端が設置カバー22上の保持部67に回り止めされている。保持部67によって第1の揺動ピン63の回転が抑えられて、ハンドル40とラッチアーム51の共回りが防止されている。
【0022】
図5から図7に示すように、設置カバー22の下側のケース部23には、ラッチ機構50及びハンドル40を同時に施錠する施錠機構70が設けられている。施錠機構70は、ケース本体20(ケース部23)に固定されたプレート支持部77に対して、キーシリンダ71に連結されたロックプレート72をケース幅方向(左右方向)にスライドさせている。プレート支持部77は、ケース幅方向を長辺とした上面開放のボックス状に形成されている。プレート支持部77の側壁には、ロックプレート72に点接触又は線接触して、ロックプレート72に対する摺動抵抗を抑えるように凸状部78(特に図6参照)が形成されている。
【0023】
ロックプレート72は、ケース幅方向に延びた帯状に形成されている。ロックプレート72には、ロックプレート72及びハンドル40を掛け止めする4つの係止片74a-74dが形成されている。一対の係止片74b、74cはケース幅方向の内側でラッチアーム51を掛け止めし、一対の係止片74a、74dはケース幅方向の外側でハンドル40を掛け止めする。ラッチアーム51には一対の係止片74b、74cに掛け止めされる一対のラッチ受け部54が形成され、ハンドル40には一対の係止片74a、74dに掛け止めされる一対のハンドル受け部44が形成されている。
【0024】
一対のラッチ受け部54には一対の係止片74b、74cが入り込む開口が形成されており、一対のハンドル受け部44には一対の係止片74a、74dが入り込む開口が形成されている。設置カバー22には、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44に対応して4つのスリット24a-24d(図4参照)が形成されている。一対のラッチ受け部54はケース幅方向の内側のスリット24b、24cを通じて設置カバー22の下側に突出し、一対のハンドル受け部44はケース幅方向の外側のスリット24a、24dを通じて設置カバー22の下側に突出している。
【0025】
ロックプレート72は、キーシリンダ71(図4参照)に差し込まれたキーの操作によってプレート支持部77上でスライドされる。ロックプレート72が左側にスライドされると、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の開口に係止片74a-74dが入り込む。そして、4つの係止片74a-74dの先端は、スリット24a-24dを通り越して設置カバー22の内側面と対向する(不図示)。これにより、ラッチ機構50及びハンドル40が施錠される。ロックプレート72が右側にスライドされると、一対のラッチ受け部54及び一対のハンドル受け部44の開口から係止片74a-74dが抜け出してラッチ機構50及びハンドル40が解錠される。一方のハンドル受け部44の下部には、施錠状態でハンドル40が下りないように誤施錠防止用の突起部45が設けられている。
【0026】
このとき、ラッチ受け部54及びハンドル受け部44がケース幅方向に並んでいるため、ケース幅方向に長い単一のロックプレート72によってラッチ受け部54及びハンドル受け部44が同時に掛け止めされる。ロックプレート72がケース幅方向にスライドされることで、ロックプレート72によってラッチ機構50及びハンドル40が同時に施錠及び解錠される。よって、ラッチ機構50及びハンドル40に施錠機構70が兼用されて施錠機構70の部品点数が低減される。また、ラッチ受け部54とハンドル受け部44が近いため、ロックプレート72を短く形成して施錠機構70の耐久性が向上される。
【0027】
上記したように、収納ケース1は、ケースホルダ10を介して車両に取り付けられている。ケースホルダ10の前面から一対の係止部11(特に図5参照)が突出しており、各係止部11にはそれぞれ係止穴12が形成されている。設置カバー22の後面から一対の固定フック25(図4参照)が突出しており、各固定フック25の先端側が下方に向けて屈曲されている。設置カバー22の一対の固定フック25の先端側がケースホルダ10の一対の係止穴12に入り込むことで、ケース幅方向に離間した2カ所でケースホルダ10に対して収納ケース1が着脱可能に掛け止めされる。収納ケース1には庇部28(図2参照)が形成され、庇部28によって係止部11に対する掛け止め箇所が覆われて意匠性が向上する。
【0028】
また、設置カバー22(図4参照)の下側のケース部23には、ケースホルダ10に対する掛け止め状態を固定する固定機構80が設けられている。固定機構80は、ケース本体20の内側に収納されたスライダ81と、ケース本体20の外側でスライダ81と一体にスライドするスライドフック86と、を有している。スライダ81は、ケース幅方向を長辺とした角柱状に形成されており、ケース本体20の壁面によってケース幅方向にスライド可能に収納されている。スライダ81の上面には側面視凸状の摘み部88が設けられており、摘み部88は設置カバー22の上面から露出している(図4参照)。
【0029】
摘み部88の操作によってスライダ81がスライドされ、ケース本体20の後面上のスライドフック86がスライドされる。スライダ81が左側にスライドされると、一対の係止部11からスライドフック86が離間する。スライドフック86による収納ケース1の掛け止め状態の固定が解除されて、収納ケース1がケースホルダ10に着脱可能に掛け止めされる。スライダ81が右側にスライドされると、一対の係止部11にスライドフック86が突き当たる。スライドフック86による収納ケース1の掛け止め状態が固定されて、収納ケース1がケースホルダ10に着脱不能に掛け止めされる。
【0030】
このように、スライダ81は、収納ケース1が着脱可能な着脱位置と収納ケース1が着脱不能な固定位置の間でスライドされている。ハンドル40(図7参照)のグリップ42には、スライダ81を固定位置に位置決めするための窪み46が形成されている。この場合、ハンドル40を倒したときにグリップ42の真下に摘み部88が位置し、スライダ81が固定位置に位置付けられたときの摘み部88にグリップ42の窪み46が対応している。摘み部88の先端が窪み46に入り込むことで、スライダ81が固定位置に位置決めされて、ハンドル40によってスライダ81が固定位置に保持される。
【0031】
スライダ81が固定位置に位置していないと、グリップ42に摘み部88が干渉してハンドル40を完全に倒すことができない。一対のハンドル受け部44が設置カバー22のスリット24a、24d(図4参照)に中途半端に入り込んで、一対のハンドル受け部44によって施錠機構70のロックプレート72のスライドが阻害される。このように、施錠機構70は、スライダ81が固定位置に位置付けられたときにのみ、ハンドル40とラッチ機構50が施錠可能になっている。よって、ケースホルダ10に対して収納ケース1が着脱可能な状態ではハンドル40とラッチ機構50が施錠されることがない。
【0032】
一方、スライダ81が固定位置に位置していると、ハンドル40の窪み46に摘み部88が入り込んでハンドル40が完全に倒される。このため、一対のハンドル受け部44によって施錠機構70のロックプレート72のスライドが阻害されることがない。施錠機構70によってラッチ機構50及びハンドル40が施錠されると、ハンドル40によってスライダ81が固定位置に固定されてケースホルダ10から収納ケース1が着脱不能になる。よって、ラッチ機構50及びハンドル40の施錠操作に伴って、施錠機構70によって施錠されたハンドル40によって固定機構80も施錠される。
【0033】
図8及び図9を参照して、ラッチ機構の開閉動作について説明する。図8は本実施例のラッチ機構の閉動作の遷移図であり、(A)はラッチ機構の開状態、(B)はラッチ機構の操作状態、(C)はラッチ機構の閉状態をそれぞれ示している。図9は本実施例のラッチ機構の開動作の遷移図であり、(A)はラッチ機構の閉状態、(B)はラッチ機構の操作状態、(C)はラッチ機構の開状態をそれぞれ示している。なお、図8では収納ケースが僅かに開いた状態を示している。
【0034】
先ず、ラッチ機構50の閉動作について説明する。図8(A)に示すように、ラッチ機構50の開状態では、起立姿勢の連結アーム61によってラッチアーム51が押し上げられている。このとき、連結アーム61のカム62には反発バネ65のバネ力が第1の揺動ピン63を中心にした時計回りに作用しており、この時計回りのバネ力によって連結アーム61が起立姿勢で保持されている。また、ラッチアーム51にはトーションバネ66のバネ力が第2の揺動ピン64を中心にした反時計回りに作用しており、この反時計回りのバネ力によってラッチアーム51の先端側が持ち上げられている。
【0035】
図8(B)に示すように、ラッチアーム51が押し下げられると、連結アーム61が第1の揺動ピン63を中心にして反時計回りに揺動される。このとき、トーションバネ66のバネ力に抗してラッチアーム51が押し下げられ、反発バネ65のバネ力に抗して連結アーム61が揺動される。収納ケース1が僅かに開いているため、連結アーム61のカム62がアーチ状の反発バネ65に乗り上がると、ラッチアーム51の先端側のフック53がアーム受け部35の斜面37に当接する。ラッチアーム51のフック53がアーム受け部35の斜面37に当接することで、フック53がアーム受け部35の係止爪36の爪先に向けてガイドされる。
【0036】
図8(C)に示すように、ラッチアーム51がさらに押し下げられると、連結アーム61のカム62が反発バネ65を乗り越える。このとき、連結アーム61のカム62には反発バネ65のバネ力が第1の揺動ピン63を中心にした反時計回りに作用して、連結アーム61に連結したラッチアーム51が引き下げられる。ラッチアーム51の引き下げに伴って、ラッチアーム51のフック53がアーム受け部35の斜面37を摺動して、ラッチアーム51によってケースカバー30がケース本体20側に押し込まれる。フック53が係止爪36の爪先に到達すると、収納ケース1が完全に閉じられた状態でフック53が係止爪36に掛け止めされる。
【0037】
次に、ラッチ機構50の開動作について説明する。図9(A)に示すように、ラッチ機構50の閉状態では、倒伏姿勢の連結アーム61によってラッチアーム51が引き下げられている。このとき、連結アーム61のカム62には反発バネ65のバネ力が第1の揺動ピン63を中心にした反時計回りに作用しており、この反時計回りのバネ力によって連結アーム61が倒伏姿勢で保持されている。また、ラッチアーム51にはトーションバネ66のバネ力が第2の揺動ピン64を中心にした反時計回りに作用しているが、係止爪36にフック53が掛け止めされてアーム受け部35からラッチアーム51が外れることがない。
【0038】
図9(B)に示すように、ラッチアーム51が持ち上げられると、連結アーム61が第1の揺動ピン63を中心にして時計回りに揺動される。このとき、反発バネ65のバネ力に抗して連結アーム61が揺動され、連結アーム61が倒伏姿勢から起立し始める。連結アーム61のカム62がアーチ状の反発バネ65に乗り上がると、連結アーム61に連結したラッチアーム51の基端側が押し上げられる。ラッチアーム51の基端側だけが押し上げられた状態で、ラッチアーム51の先端側のフック53が係止爪36に掛け止めされて収納ケース1の閉状態が保持されている。
【0039】
図9(C)に示すように、ラッチアーム51がさらに持ち上げられると、連結アーム61のカム62が反発バネ65を乗り越える。このとき、連結アーム61のカム62には反発バネ65のバネ力が第1の揺動ピン63を中心にした時計回りに作用して、連結アーム61に連結したラッチアーム51が押し上げられる。ラッチアーム51の押し上げに伴って、ラッチアーム51のフック53が係止爪36の爪先から外れる。ラッチアーム51の基端側にはトーションバネ66のバネ力が第2の揺動ピン64を中心にした反時計回りに作用して、ラッチアーム51の先端側が持ち上げられてラッチ機構50のロックが解除される。
【0040】
以上、本実施例によれば、ラッチアーム51のロック操作時にアーム受け部35の斜面37にフック53が当たると、斜面37に沿ってアーム受け部35の係止爪36の爪先までフック53がガイドされる。係止爪36にフック53が掛け止めされて、収納ケース1を閉じた状態で収納ケース1がロックされる。容易な操作によってフック53が係止爪36に確実に掛け止めされるため、適切に掛け止めされているかをユーザが確認する必要がない。
【0041】
なお、図10の変形例に示すように、ラッチアーム51のフック53が係止爪36の爪先から外れた状態では、ラッチアーム51が完全に閉じきらないような構成にしてもよい。図10では、説明の便宜上、本実施例と同一の名称には同一の符号を付している。フック53が係止爪36の爪先から外れた状態で、ラッチアーム51が押し下げられると、連結アーム61が第1の揺動ピン63を中心にして、起立姿勢から倒伏姿勢を取るように反時計回りに揺動される。変形例では、連結アーム61が倒伏姿勢まで揺動する前に、ラッチアーム51のフック53がアーム受け部35の斜面37に当たり、かつラッチアーム51の把持部52がケース本体20の上面20aに当たるように、ラッチアーム51及び周辺部品(係止爪36、ケース本体20の上面20a、連結アーム61等)が形成されている。
【0042】
より詳細には、ラッチアーム51のフック53がアーム受け部35の斜面37に当たった点Paと第1の揺動ピン63の中心Pbを結ぶ直線Wよりも、第2の揺動ピン64の中心Pcが開状態側(上側)に位置するように、ラッチアーム51及び周辺部品が形成されている。これにより、連結アーム61が倒伏姿勢を取らずに僅かに傾斜して、ラッチアーム51が完全に閉じきらないため、収納ケース1が適切に掛け止めされていない状態をユーザが容易に確認できる。
【0043】
さらに変形例では、ラッチアーム51のフック53がアーム受け部35の斜面37に当たり、かつラッチアーム51の把持部52がケース本体20の上面20aに当たる状態で、反発バネ65の反発力によって連結アーム61が起立姿勢側に押し上げられる。すなわち、連結アーム61のカム62には反発バネ65のバネ力が第1の揺動ピン63を中心にした時計回りに作用し、この時計回りのバネ力によって連結アーム61が押し返される。よって、ラッチアーム51のフック53が係止爪36の爪先から外れた状態では、ラッチアーム51を閉じようとしても、ラッチアーム51が開方向に押し返されて、収納ケース1が適切に掛け止めされていない状態をユーザが容易に確認できる。
【0044】
また、本実施例では、ラッチアームが連結アームを介してケース本体に連結されたが、ラッチアームは直にケース本体に連結されてもよいし、ラッチアームは他のリンク機構を介してケース本体に連結されてもよい。
【0045】
また、本実施例では、単一のラッチアームが複数の板状突起から成るアーム受け部に掛け止めされたが、ラッチアーム及びアーム受け部の数は特に限定されない。例えば、複数のラッチアームが複数のアーム受け部に掛け止めされてもよいし、単一のラッチアームが単一のアーム受け部に掛け止めされてもよい。
【0046】
また、本実施例では、アーム受け部の長手方向の略中間位置から係止爪の爪先までの範囲に斜面が形成されたが、係止爪よりも基端側の所定位置から爪先までの範囲に斜面が形成されていればよい。
【0047】
また、本実施例では、車両の左右に収納ケースが取り付けられたが、車両の前後に収納ケースが取り付けられてもよい。また、収納ケースのケース本体がケースホルダに取り付けられたが、収納ケースのケースカバーがケースホルダに取り付けられてもよい。
【0048】
以上の通り、本実施例の収納ケース(1)のラッチ機構(50)は、ケース本体(20)にケースカバー(30)が開閉可能に連結された収納ケースのラッチ機構であって、ケース本体に連結されたラッチアーム(51)と、ケースカバーに設けられたアーム受け部(35)と、を備え、ラッチアームの先端側にはフック(53)が形成されており、アーム受け部の先端側には係止爪(36)が形成されており、アーム受け部には、フックを係止爪の爪先に向けてガイドする斜面(37)が形成されている。この構成によれば、ラッチアームのロック操作時にアーム受け部の斜面にフックが当たると、斜面に沿ってアーム受け部の係止爪の爪先までフックがガイドされる。係止爪にフックが掛け止めされて、収納ケースを閉じた状態で収納ケースがロックされる。容易な操作によってフックが係止爪に確実に掛け止めされるため、適切に掛け止めされているかをユーザが確認する必要がない。
【0049】
本実施例の収納ケースのラッチ機構において、アーム受け部には、係止爪よりも基端側の所定位置から爪先までの範囲に斜面が形成されている。この構成によれば、アーム受け部の係止爪よりも基端側にフックが当たっても、フックが斜面に沿って係止爪の爪先までガイドされて、係止爪に対してフックが確実に掛け止めされる。
【0050】
本実施例の収納ケースのラッチ機構において、ケース本体に連結された連結アーム(61)と、連結アームの揺動に反発する反発バネ(65)と、を備え、ラッチアームは連結アームに連結されており、連結アームはラッチアームを押し上げる起立姿勢とラッチアームを引き下ろす倒伏姿勢を取り、ラッチ機構の開状態では反発バネの反発力によって連結アームが起立姿勢に保持され、ラッチ機構の閉状態では反発バネの反発力によって連結アームが倒伏姿勢に保持される。この構成によれば、ラッチ機構の開状態では連結アームが起立姿勢で保持されることで、連結アームにラッチアームが持ち上げられて、係止爪からフックが外れたアンロック状態を維持できる。ラッチ機構の閉状態では連結アームが倒伏姿勢で保持されることで、連結アームにラッチアームが引き下ろされて、係止爪にフックが掛け止めされたロック状態を維持できる。
【0051】
本実施例の収納ケースのラッチ機構において、前記ラッチアームの基端側には把持部(52)が形成されており、前記フックが前記係止爪の爪先から外れた状態で、前記連結アームが起立姿勢から倒伏姿勢を取るように揺動した場合に、前記フックが前記斜面に当たり、かつ前記把持部が前記ケース本体の上面に当たる。この構成によれば、ラッチアームのフックが係止爪の爪先から外れた状態では、ラッチアームが完全に閉じきらないため、収納ケースが適切に掛け止めされていない状態をユーザが容易に確認することができる。
【0052】
本実施例の収納ケースのラッチ機構において、前記連結アームは第1の揺動ピン(63)を介して前記ケース本体に連結されており、前記ラッチアームは第2の揺動ピン(64)を介して前記連結アームに連結されており、前記フックが前記斜面に当たった点(Pa)と前記第1の揺動ピンの中心(Pb)を結ぶ直線(W)よりも、前記第2の揺動ピンの中心(Pc)が開状態側に位置する。この構成によれば、連結アームが倒伏姿勢を取らずに傾斜し、ラッチアームが完全に閉じきらないため、収納ケースが適切に掛け止めされていない状態をユーザが容易に確認することができる。
【0053】
本実施例の収納ケースのラッチ機構において、前記フックが前記斜面に当たり、かつ前記把持部が前記ケース本体の上面に当たった状態で、前記反発バネの反発力によって前記連結アームが起立姿勢側に押し上げられる。この構成によれば、ラッチアームのフックが係止爪の爪先から外れた状態では、ラッチアームを閉じようとしても、ラッチアームが開方向に押し返されるため、収納ケースが適切に掛け止めされていない状態をユーザが容易に確認することができる。
【0054】
なお、本実施例を説明したが、他の実施例として、上記実施例及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0055】
また、本発明の技術は上記の実施例に限定されるものではなく、技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【符号の説明】
【0056】
1 :収納ケース
20:ケース本体
30:ケースカバー
35:アーム受け部
36:係止爪
37:斜面
50:ラッチ機構
52:把持部
63:第1の揺動ピン
64:第2の揺動ピン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10