(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】診断装置、及び診断方法
(51)【国際特許分類】
G01K 7/026 20210101AFI20240109BHJP
G01K 7/02 20210101ALI20240109BHJP
【FI】
G01K7/026
G01K7/02 L
(21)【出願番号】P 2020059140
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100188307
【氏名又は名称】太田 昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【氏名又は名称】岡野 大和
(72)【発明者】
【氏名】立花 拓也
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-139274(JP,A)
【文献】特開昭63-100341(JP,A)
【文献】特開2013-104791(JP,A)
【文献】特開2018-067032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電対に係る診断装置であって、
前記熱電対に電流を流したときの該熱電対に係る測定値を取得し、
前記測定値に基づき時間的な所定区間内における前記測定値の平均値を算出し、前記熱電対が断線する予兆があるかを前記
平均値に基づき所定周期で判定する制御部と、
前記制御部による判定結果に基づき、前記予兆に係る第1のアラームを出力する出力部と、
を備え
、
前記平均値は、前記所定区間内の所定の時刻における前記測定値の移動平均である診断装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の診断装置であって、
前記制御部は、前記平均値が第1閾値を超過する場合、前記予兆があると判定し、前記平均値が第2閾値を超過する場合、前記熱電対が断線していると判定し、
前記出力部は、前記制御部により前記熱電対が断線していると判定された場合、前記熱電対の断線に係る第2のアラームを出力する診断装置。
【請求項3】
請求項
1又は
2のいずれか一項に記載の診断装置であって、
前記出力部は、前記制御部により前記測定値と前記平均値との差が所定値を超過すると判定された場合、異常を示す第3のアラームを出力する、診断装置。
【請求項4】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の診断装置であって、
前記制御部は、前記予兆があると判定した場合、前記所定周期を、前記予兆があると判定する前よりも短くする、診断装置。
【請求項5】
請求項1乃至
3のいずれか一項に記載の診断装置であって、
前記制御部は、前記予兆があると判定した場合、前記所定周期を徐々に短くする、診断装置。
【請求項6】
請求項
1に記載の診断装置であって、
前記制御部は、前記熱電対と異なる第2熱電対に前記電流を流したときの該第2熱電対に係る第2測定値を取得し、前記第2測定値に基づき前記所定区間内における第2測定値の第2平均値を算出し、前記平均値と前記第2平均値とに基づき、前記予兆を判定する診断装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の診断装置であって、
前記第2熱電対は前記熱電対と同一場所の温度を測定する熱電対である診断装置。
【請求項8】
請求項
7に記載の診断装置であって、
前記制御部はさらに、前記平均値が第3閾値を超過する場合、前記予兆があると判定する診断装置。
【請求項9】
熱電対に係る診断方法であって、
前記熱電対に電流を流したときの該熱電対に係る測定値を取得し、
前記測定値に基づき時間的な所定区間内における前記測定値の平均値を算出し、前記
平均値に基づき、前記熱電対が断線する予兆があるかを所定周期で判定するステップと、
前記判定するステップの判定結果に基づき、前記予兆に係る第1のアラームを出力するステップと、
を含
み、
前記平均値は、前記所定区間内の所定の時刻における前記測定値の移動平均である診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラントの温度監視をするシステムに関し、特に熱電対に係る診断装置、及び診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントにおいて材料等の温度を監視するために、例えばペーパーレスレコーダが使われる場合がある。かかる場合において、熱電対をペーパーレスレコーダに接続し、材料の温度が測定及び記録される。熱電対は、周囲の環境による腐食や材料に含まれる化学物質等が原因で経年劣化し断線してしまう。熱電対が断線してしまうと温度の監視ができなくなるため、特許文献1には、かかる熱電対の断線を検出する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、熱電対に電流を流して両端電圧を測定することにより断線を検出することが記載されている。しかしながら従来は、熱電対の断線が検出されてから熱電対を交換する等の対処をしていた。そのため、断線後から交換等の対処が完了するまでの間は温度の監視ができなくなり、ダウンタイムが発生してしまっていた。すなわち、熱電対の断線に係る診断技術には改善の余地があった。
【0005】
そこで本開示は、熱電対の断線に係る診断技術を改善できる診断装置、及び診断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る診断装置は、熱電対に係る診断装置であって、
前記熱電対に電流を流したときの該熱電対に係る測定値を取得し、前記熱電対が断線する予兆があるかを前記測定値に基づき所定周期で判定する制御部と、
前記制御部による判定結果に基づき、前記予兆に係る第1のアラームを出力する出力部と、
を備える。
【0007】
このように、幾つかの実施形態に係る診断装置は、熱電対が断線する予兆があるかを制御部が判定して予兆に係る第1のアラームを出力させるため、熱電対が断線する前の予兆の段階で該第1のアラームを出力し、熱電対が断線する前に交換することを促すことができる。そのため幾つかの実施形態に係る診断装置は、熱電対の断線に伴うダウンタイムを減らすことができる。
【0008】
一実施形態において、前記制御部は、前記測定値に基づき所定区間内における該測定値の平均値を算出し、前記平均値に基づき、前記熱電対が断線する予兆があるかを判定してもよい。
【0009】
このように、制御部が熱電対に係る測定値の平均値に基づき予兆の判定をするため、測定値の突発的な変動に伴う誤判定を防止することができる。
【0010】
一実施形態において、前記制御部は、前記平均値が第1閾値を超過する場合、前記予兆があると判定し、前記平均値が第2閾値を超過する場合、前記熱電対が断線していると判定し、
前記出力部は、前記制御部により前記熱電対が断線していると判定された場合、前記熱電対の断線に係る第2のアラームを出力してもよい。
【0011】
このように、制御部が平均値と第1閾値及び第2閾値と比較することで断線の予兆又は断線を判定する。すなわち一実施形態における診断装置は、予兆診断及び断線診断用の2つの閾値を用いて、熱電対の状態をより詳細に報知することができる。またこれにより、仮に断線が起きた場合において、過去に予兆なく突発的な要因で断線したのか否かをユーザが判断することもできる。換言すると熱電対が断線した場合の原因の切り分けを容易化することができる。
【0012】
一実施形態において、前記出力部は、前記制御部により前記測定値と前記平均値との差が所定値を超過すると判定された場合、異常を示す第3のアラームを出力してもよい。
【0013】
このように、熱電対に係る測定値とその平均値との差が所定値を超過する場合に、出力部が当該第3のアラームを出力することで、何らかの異常が生じていることをユーザに適切に報知することができる。
【0014】
一実施形態において、前記制御部は、前記予兆があると判定した場合、前記所定周期を、前記予兆があると判定する前よりも短くしてもよい。
【0015】
このように、予兆があると判定した後に、判定に係る所定周期を短くすることで、より適時に熱電対の断線の判定を行うことができる。
【0016】
一実施形態において、前記制御部は、前記予兆があると判定した場合、前記所定周期を徐々に短くしてもよい。
【0017】
このように、予兆があると判定した後に、判定に係る所定周期を徐々に短くすることで、より適時に熱電対の断線の判定を行うことができる。
【0018】
一実施形態において、前記制御部は、前記熱電対と異なる第2熱電対に前記電流を流したときの該第2熱電対に係る第2測定値を取得し、前記第2測定値に基づき前記所定区間内における第2測定値の第2平均値を算出し、前記平均値と前記第2平均値とに基づき、前記予兆を判定してもよい。
【0019】
このように、第2熱電対の測定値を用いて断線の予兆を判定することで、熱電対が断線する前の予兆の段階で該第1のアラームを出力し、熱電対が断線する前に交換することを促すことができる。
【0020】
一実施形態において、前記第2熱電対は前記熱電対と同一場所の温度を測定する熱電対であってもよい。
【0021】
このように、第2熱電対を前記熱電対と同一場所の温度を測定するものとすることで、熱電対の温度が略同一となり、温度に係る測定値の補償の必要性を無くすことができる。
【0022】
一実施形態において、前記制御部はさらに、前記平均値が第3閾値を超過する場合、前記予兆があると判定してもよい。
【0023】
このように、制御部が、第2平均値に加えて第3閾値と平均値とを比較することで、仮に第2熱電対が経年劣化している場合であっても、熱電対の状態を適切に判定することができる。
【0024】
幾つかの実施形態に係る診断方法は、熱電対に係る診断方法であって、
前記熱電対に電流を流したときの該熱電対に係る測定値を取得し、前記測定値に基づき、前記熱電対が断線する予兆があるかを所定周期で判定するステップと、
前記判定するステップの判定結果に基づき、前記予兆に係る第1のアラームを出力するステップと、
を含む。
【0025】
このように、幾つかの実施形態に係る診断方法は、熱電対が断線する予兆があるかを判定し、判定結果に基づき予兆に係る第1のアラームを出力するため、熱電対が断線する前の予兆の段階で該第1のアラームを出力し、熱電対が断線する前に交換することを促すことができる。そのため幾つかの実施形態に係る診断方法は、熱電対の断線に伴うダウンタイムを減らすことができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、熱電対の断線に係る診断技術を改善できる診断装置、及び診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本開示の一実施形態に係る診断装置の機能ブロック図の一例である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る診断方法を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の一実施形態に係る単純判定の概要を示す図である。
【
図4】区間判定による判定処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】本開示の一実施形態に係る区間判定の概要を示す図である。
【
図6】本開示の一実施形態に係る診断装置の機能ブロック図の他の一例である。
【
図7】本開示の一実施形態に係る診断装置の機能ブロック図のさらなる他の一例である。
【
図8】本開示の一実施形態に係る複数解析判定の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本開示の実施形態に係る診断装置10について、図面を参照して説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る診断装置10の構成を説明する。
【0029】
図1に示す診断装置10は、プラントにおいて材料等の温度を監視する熱電対20に接続される。診断装置10は、電流源11と、スイッチ12と、ADコンバータ13と、制御部14と、記憶部15と、出力部16とを備える。概略として
図1は、温度測定装置(ペーパーレスレコーダ)として機能する装置により、本開示に係る診断方法を実現する例を示す。
【0030】
電流源11は、スイッチ12及び端子台を介して熱電対20に接続される回路である。本開示における診断方法により熱電対20の状態を判定する場合に、電流源11は、熱電対20に診断用の電流を流す。具体的にはこの場合、制御部14の制御によりスイッチ12がONにされ、電流源11は、熱電対20に診断用の電流を流す。他方で熱電対20がプラントにおいて材料等の温度を監視しているときには、制御部14の制御によりスイッチ12がOFFにされる。この場合、電流源11は、熱電対20に診断用の電流を流さない。
【0031】
ADコンバータ13は、熱電対20の両端の電圧のアナログデータを取得し、デジタルデータに変換して制御部14に渡す。スイッチ12がOFFである場合には、ADコンバータ13は、熱電対20の両端の電圧のアナログデータをデジタルデータに変換して制御部に渡す。制御部14は、当該デジタルデータに基づき所定の処理を施し、熱電対20により測定された温度を出力部16により出力する。例えば制御部14は、熱電対20により測定された温度トレンドを所定の周期で出力部16により表示する。他方でスイッチ12がONである場合には、ADコンバータ13は、熱電対20に電流源11からの電流が流れた状態における両端の電圧のアナログデータをデジタルデータに変換して制御部14に渡す。
【0032】
制御部14には、少なくとも1つのプロセッサ、少なくとも1つの専用回路、又はこれらの組み合わせが含まれる。プロセッサは、MCU(micro controller unit)、CPU(central processing unit)等の汎用プロセッサ、又は特定の処理に特化した専用プロセッサである。専用回路は、例えば、FPGA(field-programmable gate array)又はASIC(application specific integrated circuit)である。制御部14は、診断装置10の各部を制御しながら、診断装置10に関わる処理を実行する。
【0033】
記憶部15には、少なくとも1つの半導体メモリ、少なくとも1つの磁気メモリ、少なくとも1つの光メモリ、又はこれらのうち少なくとも2種類の組み合わせが含まれる。半導体メモリは、例えば、RAM(random access memory)又はROM(read only memory)である。RAMは、例えば、SRAM(static random access memory)又はDRAM(dynamic random access memory)である。ROMは、例えば、EEPROM(electrically erasable programmable read only memory)である。記憶部15は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能する。記憶部15には、診断装置10の動作に用いられるデータと、診断装置10の動作によって得られたデータとが記憶される。
【0034】
出力部16には、少なくとも1つの出力用インタフェースが含まれる。出力用インタフェースは、例えば、ディスプレイ又はスピーカである。ディスプレイは、例えば、LCD(liquid crystal display)又は有機EL(electro luminescence)ディスプレイである。出力部16は、診断装置10の動作によって得られるデータを出力する。また出力部16には、少なくとも1つの通信用インタフェースが含まれていてもよい。通信用インタフェースは、例えば、LANインタフェース、WANインタフェース、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th generation)、若しくは5G(5th generation)などの移動通信規格に対応したインタフェース、又はBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信に対応したインタフェースである。出力部16は、通信用インタフェースにより、外部機器に診断装置10の動作によって得られるデータを出力してもよい。
【0035】
次に、本開示の一実施形態に係る診断装置10によって実行される診断方法について、
図2~
図5に基づき説明する。
図2は、本開示の一実施形態に係る診断方法を示すフローチャートである。
【0036】
はじめに、制御部14は、熱電対20に係る測定値を取得し、記憶部15に保存する(ステップS1)。具体的には制御部14は、スイッチ12をONにして、電流源11から熱電対20に電流を流す。ADコンバータ13は、このときの熱電対20の両端の電圧のアナログデータをデジタルデータに変換し、制御部14に渡す。制御部14は、かかるデジタルデータを取得し、記憶部15に保存する。ここでは熱電対20に係る測定値は、熱電対20の両端の電圧値であるが、熱電対20に係る測定値は、熱電対20の両端の電圧値から換算した熱電対20の抵抗値であってもよい。かかる抵抗値は、以下の関係式から求めることができる。
Vr(t)=Rline(t)×iout
ここで、Vr(t)は熱電対20の両端の電圧値であり、Rline(t)は、熱電対20の抵抗値であり、ioutは、電流源11から供給する電流値である。ioutが既知であり、Vr(t)がADコンバータ13によるデジタルデータから得られるため、これらに基づき制御部14は、抵抗値を得ることもできる。
【0037】
次に制御部14は、現在時刻が熱電対20の判定を行う時刻(以下、判定時刻ともいう)であるか否かを判定する(ステップS2)。具体的には制御部14は、記憶部15に記憶された所定周期の情報を参照する。かかる所定周期の情報は、あるタイミングで制御部14が判定処理を行うか否かを定めるものであり、例えば1日周期、12時間周期等である。判定時刻である場合、プロセスはステップS3に進む。他方で判定時刻でない場合、プロセスはステップS1に戻る。
【0038】
ステップS2において判定時刻である場合、制御部14は、熱電対20に係る測定値に基づき、熱電対20が断線する予兆があるかを判定する(ステップS3)。
【0039】
ステップS3における判定処理は各種態様を取り得る。例えば制御部14は、熱電対20に係る測定値により断線の予兆を判定してもよい。以下では当該判定処理を、単純判定ともいう。
図3は、本開示の一実施形態に係る単純判定による判定処理の概要を示す図である。
図3に示すように、時間の経過とともに熱電対20の劣化が進むと、熱電対20の両端の電圧Vr(t)は増加する。制御部14は、熱電対20に係る測定値と所定の閾値とを比較して、断線の予兆を判定する。ここでは制御部14は、熱電対20に係る測定値(つまりここでは両端の電圧Vr(t))と、第1閾値(V
TH1)とを比較して断線の予兆を判定する。具体的には熱電対20の両端の電圧Vr(t)が第1閾値を超過する場合、制御部14は、断線の予兆があると判定する。他方で熱電対20の両端の電圧Vr(t)が第1閾値以下である場合、制御部14は、断線の予兆がないと判定する。さらに制御部14は、熱電対20の両端の電圧Vr(t)と、第2閾値(V
TH2)とを比較して断線を判定してもよい。具体的には熱電対20の両端の電圧Vr(t)が第2閾値を超過する場合、制御部14は、断線していると判定する。他方で熱電対20の両端の電圧Vr(t)が第2閾値以下である場合、制御部14は、断線のしていないと判定する。ここで本実施形態において「熱電対20が断線している」状態とは、熱電対20が断線している状態に加えて、熱電対20が断線する直前の状態も含む。熱電対20が断線する直前の状態とは、例えば熱電対20が所定時間内に断線する可能性のある状態である。
【0040】
再び
図2を参照する。制御部14は、判定結果に基づき出力部16にアラームを出力させる(ステップS4)。例えば制御部14は、断線の予兆があると判定した場合、熱電対20の断線の予兆があることを示すアラーム(以下、第1のアラームともいう)を出力部16に出力させる。例えば出力部16は、第1のアラームを画面等に表示出力してもよい。また出力部16は、第1のアラームをEメール等によりユーザの端末等に送信してもよい。また例えば制御部14は、熱電対20が断線していると判定した場合、断線していることを示すアラーム(以下、第2のアラームともいう)を出力部16に出力させる。例えば出力部16は、第2のアラームを画面等に表示出力してもよい。また出力部16は、第2のアラームをEメール等によりユーザの端末等に送信してもよい。
【0041】
制御部14は、ステップS3における判定処理を所定区間における測定値の平均値に基づき行ってもよい。以下本実施形態において当該判定処理を区間判定という。
図4は、区間判定による判定処理の一例を示すフローチャートである。はじめに制御部14は、熱電対20に係る測定値の所定区間における平均値Vaを算出する(ステップS301)。
図5に区間判定の概要を示す。
図5では、所定区間における平均値Vaとして、測定値の移動平均を算出している。制御部14は、
図5における各時刻t1、t2、t3、t4、t5における移動平均値に基づき、判定処理を行う。
【0042】
再び
図4を参照する。制御部14は、ステップS301において算出した平均値Vaが、第1閾値(V
TH1)を超過しているか否かを判定する(ステップS302)。平均値Vaが、第1閾値を超過している場合、制御部14は、熱電対20の断線の予兆があると判定する(ステップS303)。他方で平均値Vaが、第1閾値を超過していない場合、制御部14は、熱電対20の断線の予兆がないと判定する(ステップS304)。具体的には例えば制御部14は、
図5の時刻t1において、測定値の移動平均値Vaを算出する。そして制御部14は、移動平均値Vaと第1閾値とを比較して断線の予兆を判定する。この区間において平均値は第1閾値以下であるため、制御部14は、熱電対20の断線の予兆がないと判定する。また例えば制御部14は、
図5の時刻t4において、測定値の移動平均値Vaを算出する。そして制御部14は、移動平均値Vaと第1閾値とを比較して断線の予兆を判定する。この場合、移動平均値Vaが第1閾値を超過しているため、制御部14は、熱電対20の断線の予兆があると判定する。
【0043】
再び
図4を参照する。制御部14は、ステップS301において算出した平均値Vaが、第2閾値(V
TH2)を超過しているか否かを判定する(ステップS305)。平均値Vaが、第2閾値を超過している場合、制御部14は、熱電対20が断線している判定する(ステップS306)。他方で平均値Vaが第2閾値を超過していない場合、制御部14は、断線していない判定する(ステップS307)。例えば制御部14は、
図5のt6において、測定値の移動平均値Vaを算出する。そして制御部14は、当該移動平均値Vaと第1閾値とを比較して断線を判定する。この場合、移動平均値が第2閾値を超過しているため、制御部14は、熱電対20が断線していると判定する。
【0044】
再び
図4を参照する。制御部14は、ステップS301において算出した平均値Vaと、各所定の区間における測定値の最大値又は最小値との差が、所定値を超過しているか否かを判定する(ステップS308)。例えば
図4では、所定の区間としてt0~t1、t1~t2、t2~t3、t3~t4、t4~t5、t5~t6が定められている。平均値Vaと、各区間における測定値の最大値又は最小値との差が所定値を超過している場合、制御部14は、異常があると判定する(ステップS309)。他方で平均値Vaと、各区間における測定値の最大値及び最小値との差が、所定値以下である場合、制御部14は、異常がないと判定する(ステップS310)。例えば
図4におけるVmax@Δt1及びVmin@Δt1は、それぞれt0~t1における測定値の最大値及び最小値である。制御部14は、これらの値と平均値Vaとを比較することにより当該判定を行う。同様にVmax@Δt5及びVmin@Δt5は、それぞれt4~t5における測定値の最大値及び最小値である。制御部14は、これらの値と平均値Vaとを比較することにより当該判定を行う。
【0045】
再び
図2を参照する。制御部14は、判定結果に基づき出力部16にアラームを出力させる(ステップS4)。例えば制御部14は、断線の予兆があると判定した場合、第1のアラームを出力部16に出力させる。例えば出力部16は、第1のアラームを画面等に表示出力してもよい。また出力部16は、第1のアラームをEメール等によりユーザの端末等に送信してもよい。また例えば制御部14は、熱電対20が断線していると判定した場合、第2のアラームを出力部16に出力させる。例えば出力部16は、第2のアラームを画面等に表示出力してもよい。また出力部16は、第2のアラームをEメール等によりユーザの端末等に送信してもよい。また例えば制御部14は、熱電対20に異常があると判定した場合、熱電対に異常があることを示すアラーム(以下、第3のアラームともいう)を出力部16に出力させる。例えば出力部16は、第3のアラームを画面等に表示出力してもよい。また出力部16は、第3のアラームをEメール等によりユーザの端末等に送信してもよい。
【0046】
このように、本実施形態に係る診断装置10によれば、熱電対が断線する予兆があるかを制御部14が判定し、出力部16が第1のアラームを出力するため、熱電対が断線する前の予兆の段階で該第1のアラームを出力し、熱電対が断線する前に交換することを促すことができる。そのため本実施形態に係る診断装置10は、熱電対の断線に伴うダウンタイムを減らすことができる。
【0047】
また本実施形態に係る診断装置10による区間判定によれば、制御部14が熱電対20に係る測定値の平均値に基づき予兆の判定をするため、測定値の突発的な変動に伴う誤判定を防止することができる。
【0048】
また本実施形態に係る診断装置10によれば、制御部14は、平均値が第1閾値を超過している場合に、熱電対20の断線の予兆があると判定し、平均値が第2閾値を超過している場合に熱電対20が断線していると判定する。そして出力部16は、制御部14により熱電対20が断線していると判定された場合、第2のアラームを出力する。そのため、本実施形態に係る診断装置10は、予兆診断及び断線診断用の2つの閾値を用いて、熱電対20の状態をより正確に通知することができる。またこれにより、仮に断線が起きた場合において、過去に予兆なく突発的な要因で断線したのか否かをユーザが判断することもできる。換言すると本実施形態に係る診断装置10によれば、熱電対20が断線した場合の原因の切り分けを容易化することができる。
【0049】
また本実施形態に係る診断装置10によれば、制御部14は、測定値と平均値との差が所定値を超過する場合、出力部16に第3のアラームを出力させる。このように本実施形態に係る診断装置10によれば、熱電対20に係る測定値とその平均値との差が所定値以上である場合に第3のアラームを出力することで、何らかの異常が生じていることをユーザに適切に把握することができる。
【0050】
本開示を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【0051】
例えば制御部14は、熱電対20の断線の予兆があると判定した場合、判定に係る所定周期を、予兆があると判定する前よりも短くしてもよい。例えば予兆があると判定する前において当該所定周期が1日である場合、予兆があると判定した後の所定周期を12時間等にしてもよい。このように予兆があると判定した後に判定周期を短くすることで、より適時に熱電対の断線の判定を行うことができる。
【0052】
また例えば制御部14は、前記予兆があると判定した場合、判定に係る所定周期を徐々に短くしてもよい。例えば制御部14は、所定周期を、判定処理毎に1/2の長さにしてもよい。このように、予兆があると判定した後に測定値の取得周期を徐々に短くすることで、より適時に熱電対の断線の判定を行うことができる。この場合、所定周期の下限値が設けられてもよい。例えば当該下限値が10分と設定された場合、所定周期は10分未満にはならない。
【0053】
また上記では温度測定装置(ペーパーレスレコーダ)が診断装置10として機能する装置であり、ADコンバータ13により熱電対20からの測定値を取得する例を示したがこれに限られない。例えば診断装置10は、温度測定装置として機能する装置とは異なる装置であってもよい。
図6は、本開示の一実施形態に係る診断装置の機能ブロック図の他の一例である。
図6では、診断装置10bは、測定装置10aと別に設けられている。測定装置10aは、電流源11aと、スイッチ12aと、ADコンバータ13aと、制御部14aと、記憶部15aと、インタフェース(IF)16aとを備える。電流源11aと、スイッチ12aと、ADコンバータ13aと、制御部14aと、記憶部15aとは、それぞれ
図1における電流源11と、スイッチ12と、ADコンバータ13と、制御部14と、記憶部15と同様の機能を備える。IF16aは、通信用インタフェースであり、例えば、LANインタフェース、WANインタフェース、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th generation)、若しくは5G(5th generation)などの移動通信規格に対応したインタフェース、又はBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信に対応したインタフェースである。IF16aは、診断装置10bに測定装置10aの動作によって得られるデータを出力する。具体的にはIF16aは、熱電対20に係る測定値を、診断装置10bに送信出力する。
【0054】
診断装置10bは、IF11bと、制御部14bと、記憶部15bと、出力部16bとを備える。制御部14bと、記憶部15bと、出力部16bとは、それぞれ
図1における制御部14と、記憶部15と、出力部16と同様の機能を備える。IF11bは、通信用インタフェースであり、例えば、LANインタフェース、WANインタフェース、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th generation)、若しくは5G(5th generation)などの移動通信規格に対応したインタフェース、又はBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信に対応したインタフェースである。IF11bは、測定装置10aから、測定装置10aの動作によって得られるデータを受信する。具体的にはIF11bは、熱電対20に係る測定値を、測定装置10aから受信する。つまり、
図6に示す診断装置10bは、熱電対20に係る測定値を外部から取得(受信)し、当該測定値に基づき、熱電対20に係る断線の予兆の判定を行う。また
図6に示すように診断装置10bは、判定した結果を出力部16bにより、Eメール又は所定の通信プロトコルにより上位システムに通知する。このように本実施形態に係る診断方法は、温度測定装置とは別体の装置により行ってもよい。さらにこの場合、診断装置10bは、熱電対20に係る測定値及び対応する実績データを教師データとして用いて機械学習を行い、判定処理に係る学習モデルを生成してもよい。そして診断装置10bは、当該学習モデルに基づき、熱電対20の断線の予兆の判定を行ってもよい。
【0055】
また例えば、制御部14は、熱電対20と異なる別の熱電対30(以下、第2熱電対30ともいう)を用いてもよい。具体的には制御部14は、第2熱電対30に電流を流したときの第2熱電対30に係る第2測定値を取得する。また制御部14は、第2測定値に基づき所定区間内における第2測定値の第2平均値を算出する。そして制御部14は、熱電対20に係る測定値の平均値(以下、第1平均値ともいう)と第2平均値に基づき、熱電対20の断線の予兆を判定してもよい。ここで
図7は、本開示の一実施形態に係る診断装置10cの機能ブロック図の一例である。
図7に示すように、診断装置10cは、熱電対20及び第2熱電対30と接続され、電流源111cと、電流源112cと、スイッチ121cと、スイッチ122cと、ADコンバータ131cと、ADコンバータ132cと、制御部14cと、記憶部15cと、出力部16cとを備える。電流源111cと、スイッチ121cと、ADコンバータ131cと、制御部14cと、記憶部15cと、出力部16cとは、それぞれ
図1における電流源11と、スイッチ12と、ADコンバータ13と、制御部14と、記憶部15と、出力部16とに相当する。電流源112cは、スイッチ122c及び端子台を介して第2熱電対30に接続される回路である。本開示における診断方法により熱電対20の状態を判定する場合に、電流源112は、第2熱電対30に診断用の電流を流す。具体的にはこの場合、制御部14cの制御によりスイッチ122cがONにされ、電流源112cは、第2熱電対30に診断用の電流を流す。他方で第2熱電対30がプラントにおいて材料等の温度を監視しているときには、制御部14cの制御によりスイッチ122cがOFFにされる。この場合、電流源112cは、第2熱電対30に診断用の電流を流さない。ADコンバータ132cは、第2熱電対30の両端の電圧のアナログデータを取得し、デジタルデータに変換して制御部14cに渡す。スイッチ122cがOFFである場合には、ADコンバータ132cは、第2熱電対30の両端の電圧のアナログデータをデジタルデータに変換して制御部14cに渡す。制御部14cは、当該デジタルデータに基づき所定の処理を施し、第2熱電対30により測定された温度を出力部16cにより出力する。例えば制御部14cは、第2熱電対30により測定された温度トレンドを所定の周期で出力部16cにより表示する。他方でスイッチ122cがONである場合には、ADコンバータ132cは、第2熱電対30に電流が流れた状態における両端の電圧のアナログデータをデジタルデータに変換して制御部14cに渡す。
【0056】
制御部14cは、熱電対20に係る測定値の平均値、すなわち第1平均値と、第2熱電対30に係る平均値、すなわち第2平均値に基づき、熱電対20の断線の予兆を判定する。制御部14はさらに、第1平均値及び第平均値に基づき、第2熱電対30の断線の予兆を判定してもよい。当該判定を、以下本実施形態において複数解析判定ともいう。
図8は、本開示の一実施形態に係る複数解析判定の概要を示す図である。
図8のチャンネル1(CH1)及びチャンネル2(CH2)は、それぞれ熱電対20及び第2熱電対30に係る測定値の移動平均値である。制御部14は、第1平均値と第2平均値との差分が所定値を超えた場合に、熱電対20及び第2熱電対30のいずれか一方が断線の予兆があると判定してよい。例えば、第1平均値が第2平均値より大きく、かつこれらの差分が所定値を超過している場合、制御部14cは、熱電対20に断線の予兆があると判定してよい。また例えば、第1平均値が第2平均値より小さく、かつこれらの差分が所定値を超過している場合、制御部14cは、第2熱電対30に断線の予兆があると判定してよい。基準となる当該所定値を複数設けることにより、制御部14cは、断線の予兆及び断線をそれぞれ判定してもよい。
【0057】
ここで、熱電対20と第2熱電対30の設けられる位置は任意の場所であってよい。熱電対20及び第2熱電対30が異なる場所に設けられた場合、熱電対20及び第2熱電対30により測定される温度が、設けられた位置によって相違する場合がある。制御部14cは、当該測定される温度の相違による測定値のずれを補償してもよい。このようにすることで、熱電対20及び第2熱電対30が異なる位置に設けられていても、複数解析判定を行うことができる。他方で熱電対20及び第2熱電対30が同一場所の温度を測定する熱電対であってもよい。この場合、同一の温度を測定しているため、上記補償をする必要がなくなる。またさらにこの場合、制御部14cは、熱電対20に係る測定値の平均値が第3閾値を超過する場合、断線の予兆があると判定してもよい。このように、制御部14cが、第1平均値と第2平均値との差分に加えて第3閾値と第1平均値とを比較することで、仮に熱電対20と第2熱電対30とが同様に経年劣化している場合であっても、熱電対の状態を適切に判定することができる。
【符号の説明】
【0058】
10、10b、10c 診断装置
10a 測定装置
11、11a、111c、112c 電流源
11b IF
12、12a、121c、122c スイッチ
13、13a、131c、132c スイッチ
14、14a、14b、14c 制御部
15、15a、15b、15c 記憶部
16、16b、16c 出力部
16a IF
20 熱電対
30 第2熱電対