(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】脂肪族ポリアミド樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20240109BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240109BHJP
C08L 27/22 20060101ALI20240109BHJP
B29C 49/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/26
C08L27/22
B29C49/00
(21)【出願番号】P 2020063616
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-01-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】坪井 一俊
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】廣木 鉄郎
(72)【発明者】
【氏名】安井 哲也
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特表平08-509248(JP,A)
【文献】国際公開第2019/054454(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0075837(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド樹脂(a)、エラストマー(b)及び変性された含フッ素系重合体(c)を含む脂肪族ポリアミド樹脂組成物のブロー成形品であって、
前記エラストマー(b)が、無水マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体であって、
前記変性された含フッ素系重合体(c)が、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体で変性された含フッ素系重合体であり、
前記エラストマー(b)が有するカルボキシル基及
び酸無水物基の合計濃度を[X](μeq/g)、前記エラストマー(b)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Y](質量%)、前記変性された含フッ素系重合体(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Z](質量%)とした時、[X]×[Y]×[Z]の値が2,900未満である、ブロー成形品。
【請求項2】
前記エラストマー(b)を前記脂肪族ポリアミド樹脂組成物中に10質量%以上25質量%以下含有する請求項1に記載のブロー成形品。
【請求項3】
前記脂肪族ポリアミド(a)が、メチレン基数のアミド基数に対する比が8.0以下である請求項1又は2に記載のブロー成形品。
【請求項4】
前記脂肪族ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド6、ポリアミド66からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、ポリアミド6/66、及びポリアミド6/12からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のブロー成形品。
【請求項5】
前記脂肪族ポリアミド樹脂(a)が、ポリカプロアミド(ポリアミド6)を含み、
ISO 1133に準拠した方法で測定したMFR(280℃、10kg)が10g/10分以上20g/10分以下である請求項1から4のいずれか1項に記載のブロー成形品。
【請求項6】
中空成形体である請求項1から5のいずれか1項に記載のブロー成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族ポリアミド樹脂組成物およびそれを含む中空成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリアミド樹脂の成形体は様々な成形方法で製造されており、代表的な成形方法として、押出成形、ブロー成形、回転成形、射出成形が挙げられる。同様の形状であっても、複数の成形方法の中から選択することができるため、各成形方法に用いられる装置所有の有無、工場のレイアウト、後工程の簡便さ等、様々なことを考慮した上で成形方法は選択される。
【0003】
一方で、それぞれの成形法に適したポリアミド樹脂特性は異なっており、同様な形状の成形体を作成する場合でも、成形方法が異なれば、ポリアミド樹脂へ求める特性も変わる。そのため、成形方法が異なれば、異なるポリアミド樹脂組成物を使用することが必要になる。
【0004】
例えば、中空体の押出成形では、特定の割合のポリアミド6/12樹脂に可塑剤、変性ポリオレフィンを含むポリアミド樹脂組成物が提案され、成形性が優れるとされている(特許文献1参照)。
【0005】
また、ブロー成形においては、芳香族ポリアミド樹脂と衝撃改良材と安定剤とを含むポリアミド樹脂組成物が提案され、平滑な表面外観を有するブロー成形体が得られるとされている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】:国際公開第2013/058027号
【文献】:特表2006-523763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これらの技術では、特許文献1では押出成形、特許文献2ではブロー成形に適した材料が提案されている。いずれの成形方法であっても、例えば製品の外観が良好であることが求められるが、押出成形では製品の表面に模様や突起が生じることがある一方で、ブロー成形では、表面の凹凸が生じることがある。したがって、いずれの成形方法においても外観が良好となるポリアミド樹脂組成物が求められている。さらには、押出成形は連続した製造を安定して行うことが求められる一方で、ブロー成形では、パリソン保持率が高いことが求められる。
【0008】
そこで、本発明は、押出成形で成形した際に、外観が良好な成形品を得ることができ、押出成形における安定した連続製造が可能であって、かつブロー成形におけるパリソン保持率が良好なポリアミド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、脂肪族ポリアミド樹脂(a)、エラストマー(b)、変性された含フッ素系重合体(c)を含む脂肪族ポリアミド樹脂組成物が、押出成形、ブロー成形のいずれの成形方法で成形したとしても外観に優れ、高速成形、長時間成形に適している低圧で成形可能であることを見出した。
本発明は、たとえば以下の[1]~[11]である。
[1]脂肪族ポリアミド樹脂(a)、エラストマー(b)及び変性された含フッ素系重合体(c)を含む脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[2]前記エラストマー(b)は、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有する[1]の脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[3]前記エラストマー(b)を前記脂肪族ポリアミド樹脂組成物中に10質量%以上25質量%以下含有する[1]又は[2]の脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[4]前記脂肪族ポリアミド(a)が、メチレン基数のアミド基数に対する比が8.0以下である[1]から[3]のいずれかの脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[5]前記脂肪族ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド6、ポリアミド66からなる群より選ばれる少なくとも1種の単独重合体、ポリアミド6/66、及びポリアミド6/12からなる群から選択される少なくとも1種である[1]から[3]のいずれかの脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[6]前記変性された含フッ素系重合体(c)が、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体で変性された含フッ素系重合体である[1]から[5]のいずれかの脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[7]前記エラストマー(b)が有するカルボキシル基及び/又は酸無水物基の合計濃度を[X](μeq/g)、前記エラストマー(b)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Y](質量%)、前記変性された含フッ素系重合体(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Z](質量%)とした時、[X]×[Y]×[Z]の値が2,900未満である[2]から[6]のいずれかの脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[8]前記脂肪族ポリアミド樹脂(a)が、ポリアミド6を含み、
ISO 1133に準拠した方法で測定したMFR(280℃、10kg)が10g/10分以上20g/10分以下である[1]から[7]のいずれかの脂肪族ポリアミド樹脂組成物。
[9][1]から[8]のいずれかの脂肪族ポリアミド樹脂組成物を含む中空成形体。
[10]押出成形品又はブロー成形品である[9]の中空成形体。
【発明の効果】
【0010】
本発明の脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、押出成形すると、外観が良好な成形品を得ることができる。また、押出成形における安定した連続製造が可能であって、かつブロー成形におけるパリソン保持率が良好である。さらに、エラストマー(b)が有するカルボキシル基及び/又は酸無水物基の合計濃度を[X](μeq/g)、エラストマー(b)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Y](質量%)、変性された含フッ素系重合体(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Z](質量%)とした時、[X]×[Y]×[Z]の値が2,900未満である態様においては、ブロー成形においても、外観が良好な成形品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタアクリル酸の少なくとも一方の意味を有する。「(メタ)アクリル変性」は、アクリル酸及びメタアクリル酸の少なくとも一方の変性の意味を有する。
本明細書において、ポリテトラフルオロエチレンをPTFEともいう。
【0012】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(a)、エラストマー(b)及び変性された含フッ素系重合体(c)を含む。
脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、成形時の成形性、得られる成形品の機械物性、外観の観点から、ISO 1133に準拠した方法で測定したMFR(280℃、10kg)が10g/10分以上20以g/10分下であることが好ましい。脂肪族ポリアミド樹脂(a)は、ポリカプロアミド(ポリアミド6)を含み、MFR(280℃、10kg)が上記範囲にあると、成形時の成形性、得られる成形品の外観の観点から特に好ましい。
【0013】
[脂肪族ポリアミド樹脂(a)]
脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド樹脂(a)を含む。
脂肪族ポリアミド樹脂は、脂肪族基を構成繰り返し単位中に含み、主鎖中にアミド結合(-CONH-)を有する。
脂肪族ポリアミド樹脂(a)としては、脂肪族ホモポリアミド及び脂肪族共重合ポリアミドが挙げられ、これらは1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0014】
(脂肪族ホモポリアミド)
脂肪族ホモポリアミドは、脂肪族モノマー由来の1種類の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族ホモポリアミドは、1種類のラクタム及び当該ラクタムの加水分解物であるアミノカルボン酸の少なくとも一方からなるものであってもよく、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸との組合せからなるものであってもよい。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
【0015】
ラクタムとしては、例えば、ε-カプロラクタム、エナントラクタム、ウンデカンラクタム、ドデカンラクタム(ω-ラウロラクタム)、α-ピロリドン、α-ピペリドンが挙げられる。これらの中でも重合生産性の観点から、ε-カプロラクタム、ウンデカンラクタム及びドデカンラクタムからなる群から選択される1種が好ましい。
また、アミノカルボン酸としてはε-アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、9-アミノノナン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸が挙げられる。
【0016】
ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ペプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,8-オクタンジアミン、2,2,4/2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン;1,3-/1,4-シクロヘキシルジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-/1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、5-アミノ-2,2,4-トリメチル-1-シクロペンタンメチルアミン、5-アミノ-1,3,3-トリメチルシクロヘキサンメチルアミン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、ビス(アミノエチル)ピペラジン、ノルボルナンジメチレンジアミンの脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0017】
ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、ヘキサデカンジオン酸、オクタデカンジオン酸、エイコサンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;1,3-/1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキサンメタン-4,4’-ジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸が挙げられる。
【0018】
脂肪族ホモポリアミドとして具体的には、ポリアミド6、ポリアミド7、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド44、ポリアミド45、ポリアミド46、ポリアミド48、ポリアミド49、ポリアミド54、ポリアミド55、ポリアミド56、ポリアミド66、ポリアミド410、ポリアミド412、ポリアミド58、ポリアミド59、ポリアミド510、ポリアミド512、ポリアミド64、ポリアミド65、ポリアミド68、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド96、ポリアミド98、ポリアミド99、ポリアミド105、ポリアミド616、ポリアミド618、ポリアミド910、ポリアミド912、ポリアミド106、ポリアミド108、ポリアミド109、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド125、ポリアミド126、ポリアミド129、ポリアミド1210、ポリアミド1212、ポリアミド122が挙げられる。これらの脂肪族ホモポリアミドは、各々単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。これらの中でも、入手の容易さ、経済性、得られる成形体の機械物性、耐熱性の観点から、ポリアミド6及びポリアミド66が好ましい。
【0019】
(脂肪族共重合ポリアミド)
脂肪族共重合ポリアミドは、脂肪族モノマー由来の2種以上の構成単位からなるポリアミド樹脂である。脂肪族共重合ポリアミドは、ジアミンとジカルボン酸の組合せ、ラクタム及びアミノカルボン酸からなる群から選択される2種以上の共重合体である。ここで、ジアミンとジカルボン酸の組み合わせは、1種類のジアミンと1種類のジカルボン酸の組合せで1種類のモノマーとみなす。
【0020】
ジアミンとしては、脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。挙げられる。
【0021】
ジカルボン酸としては、脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0022】
ラクタムとしては、脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
また、アミノカルボン酸としては脂肪族ホモポリアミドの原料として例示したものと同様のものが挙げられる。
これらのジアミン、ジカルボン酸、ラクタム、アミノカルボン酸は1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
脂肪族共重合ポリアミドとしては、具体的には、脂肪族ホモポリアミドとして例示したポリアミドを形成する単量体を2種以上組み合わせた共重合体が挙げられ、より具体的には、ポリアミド6/66、ポリアミド6/69、ポリアミド6/610、リアミド6/611、ポリアミド6/612、ポリアミド6/11、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12、ポリアミド6/66/610、ポリアミド6/66/612、ポリアミド6/610/12、ポリアミド6/612/12の脂肪族共重合ポリアミドが挙げられる。これらの脂肪族共重合ポリアミドは、各々単独で又は2種以上の混合物として用いることができる。
これらの中でも、ポリアミド6/66及びε-カプロラクタム又はε-アミノカプロン酸から誘導される単位aと、12-アミノドデカン酸又はω-ラウロラクタムから誘導される単位bとを含む共重合体が好ましい。これらの共重合体において、単位aを50質量%以上含む事が好ましく、70重量%以上含む事がより好ましく、75質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0024】
ε-カプロラクタム又はε-アミノカプロン酸から誘導される単位aと、12-アミノドデカン酸又はω-ラウロラクタムから誘導される単位bとを含む脂肪族共重合ポリアミドとしては、ポリアミド6/12、ポリアミド6/66/12、ポリアミド6/610/12、ポリアミド6/612/12、及びこれらの混合物が好ましく、ポリアミド6/12及び/又はポリアミド6/66/12がより好ましい。
【0025】
入手の容易さ、経済性、得られる成形体の機械的特性、耐薬品性、柔軟性等の諸物性を十分に確保することの観点から、ε-カプロラクタム又はε-アミノカプロン酸から誘導される単位aと、12-アミノドデカン酸又はω-ラウロラクタムから誘導される単位bとを含む共重合体において、ε-カプロラクタム又はε-アミノカプロン酸から誘導される単位aが好ましくは50質量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75質量%以上を満たすように適宜選択されることが好ましい。
【0026】
脂肪族ポリアミド樹脂は、メチレン基数([CH2])のアミド基数([NHCO])に対する比[CH2]/[NHCO](以下、メチレン基数のアミド基数に対する比を[CH2]/[NHCO]と称する場合がある。)が8.0以下であることが好ましく、7.0以下であることがより好ましく、6.0以下であることがさらに好ましい。
【0027】
メチレン基数のアミド基数に対する比[CH2]/[NHCO]が8.0以下の脂肪族ポリアミドとしては、例えば、ポリカプロアミド(ポリアミド6):[CH2]/[NHCO]=5.0、ポリアミド26:[CH2]/[NHCO]=3.0、ポリアミド44:[CH2]/[NHCO]=3.0、ポリアミド45:[CH2]/[NHCO]=3.5、(ポリアミド46:[CH2]/[NHCO]=4.0、ポリアミド48:[CH2]/[NHCO]=5.0、ポリアミド49:[CH2]/[NHCO]=5.5、ポリアミド410:[CH2]/[NHCO]=6.0、ポリアミド412:[CH2]/[NHCO]=7.0、ポリアミド54:[CH2]/[NHCO]=3.5、ポリアミド55:[CH2]/[NHCO]=4.0、ポリアミド56:[CH2]/[NHCO]=4.5、ポリアミド58:[CH2]/[NHCO]=5.5、ポリアミド59:[CH2]/[NHCO]=6.0、ポリアミド510:[CH2]/[NHCO]=6.5、ポリアミド512:[CH2]/[NHCO]=7.5、ポリアミド64:[CH2]/[NHCO]=4.0、ポリアミド65:[CH2]/[NHCO]=4.5、ポリアミド66:[CH2]/[NHCO]=5.5、ポリアミド68:[CH2]/[NHCO]=6.0、ポリアミド69:[CH2]/[NHCO]=6.5、ポリアミド610:[CH2]/[NHCO]=7.0、ポリアミド96:[CH2]/[NHCO]=6.5、ポリアミド98:[CH2]/[NHCO]=7.5、ポリアミド105):[CH2]/[NHCO]=6.5、ポリアミド106:[CH2]/[NHCO]=7.0、ポリアミド125:[CH2]/[NHCO]=7.5が挙げられる。また、メチレン基数のアミド基数に対する比[CH2]/[NHCO]が8.0以下の脂肪族ポリアミドとしては、前記の少なくとも1種の単独重合体を形成する原料単量体を数種用いた少なくとも1種の共重合体も挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0028】
脂肪族ポリアミド樹脂(a)が共重合体である場合、そのメチレン基数のアミド基数に対する比[CH2]/[NHCO]は、共重合体の構成繰り返し単位を構成する単量体の単独重合体におけるメチレン基数のアミド基数に対する比[CH2]/[NHCO]に、その構成繰り返し単位のモル比を乗じた値を、すべての構成繰り返し単位について加え合わせることで求めることができる。
脂肪族ポリアミド樹脂(a)が2種以上の脂肪族ポリアミド樹脂の混合物である場合、そのメチレン基数のアミド基数に対する比[CH2]/[NHCO]は、それぞれの脂肪族ポリアミド樹脂におけるメチレン基数のアミド基数に対する比[CH2]/[NHCO]に、モル比で表される混合割合を乗じた値を、すべての脂肪族ポリアミド樹脂について加え合わせることで求めることができる。
【0029】
脂肪族ポリアミド樹脂(a)は、入手の容易さ、経済性、得られる成形体の機械物性、耐熱性の観点から、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド6/66及びポリアミド6/12からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0030】
JIS K-6920に準拠して、96%硫酸、ポリマー濃度1%、25℃の条件下にて測定した脂肪族ポリアミド樹脂(a)の相対粘度は、得られる成形体の機械的性質を確保することと、溶融時の粘度を適正範囲にして成形体の望ましい成形性を確保する観点から、3.0以上5.0以下であることが好ましく、3.5以上4.5以下であることがより好ましい。
【0031】
脂肪族ポリアミド樹脂(a)は、前記ポリアミド原料を、アミン類の存在下に、溶融重合、溶液重合、固相重合等の公知の方法で、重合又は共重合することにより製造される。あるいは、重合後、アミン類の存在下に、溶融混練することにより製造される。このように、アミン類は、重合時の任意の段階、あるいは、重合後、溶融混練時の任意の段階において添加できるが、重合時の段階で添加することが好ましい。
【0032】
[エラストマー(b)]
脂肪族ポリアミド組成物は、エラストマー(b)を含有する。エラストマー(b)は、カルボン酸及び/又は酸無水物で変性されていてもよい。カルボン酸及び/又は酸無水物で変性されたエラストマー(b)は、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を有する。
エラストマー(b)としては、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有する、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有しない(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体、(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体が挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有する不飽和化合物から誘導される構成単位を含有する、(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体が好ましい。
【0033】
前記(エチレン及び/又はプロピレン)/α-オレフィン系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンと炭素原子数3以上のα-オレフィンとを共重合した重合体であり、炭素原子数3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセン、12-エチル-1-テトラデセンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-オクタジエン、1,5-オクタジエン、1,6-オクタジエン、1,7-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン、4,8-ジメチル-1,4,8-デカトリエン(DMDT)、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,5-ノルボルナジエン等の非共役ジエンのポリエンを共重合してもよい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
(エチレン及び/又はプロピレン)/(α,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル)系共重合体は、エチレン及び/又はプロピレンとα,β-不飽和カルボン酸及び/又はα,β-不飽和カルボン酸エステル単量体を共重合した重合体である。α,β-不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。α,β-不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸ペンチル、メタクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸ヘプチル、メタクリル酸ヘプチル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、メタクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、メタクリル酸デシル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチルが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
また、前記芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体は、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックと共役ジエン化合物系重合体ブロックからなるブロック共重合体であり、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックを少なくとも1個と、共役ジエン化合物系重合体ブロックを少なくとも1個有するブロック共重合体が用いられる。前記ブロック共重合体では、共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合が水素添加されていてもよい。
【0036】
芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、芳香族ビニル化合物に由来する単位から主としてなる重合体ブロックである。その場合の芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、1,5-ジメチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン、4-プロピルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレンが挙げられ、これらは1種又は2種以上を用いることができる。また、芳香族ビニル化合物系重合体ブロックは、場合により少量の他の不飽和単量体からなる単位を有していてもよい。
【0037】
共役ジエン化合物系重合体ブロックは、例えば、1,3-ブタジエン、クロロプレン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンの共役ジエン系化合物の1種又は2種以上から形成された重合体ブロックであり、水素添加した芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体では、その共役ジエン化合物系重合体ブロックにおける不飽和結合部分の一部又は全部が水素添加により飽和結合になっている。
芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及びその水素添加物の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状、又はそれら任意の組み合わせのいずれであってもよい。これらの中でも、芳香族ビニル化合物/共役ジエン化合物系ブロック共重合体及び/又はその水素添加物として、1個の芳香族ビニル化合物重合体ブロックと1個の共役ジエン化合物系重合体ブロックが直鎖状に結合したジブロック共重合体、芳香族ビニル化合物系重合体ブロック-共役ジエン化合物系重合体ブロック-芳香族ビニル化合物系重合体ブロックの順に3つの重合体ブロックが直鎖状に結合しているトリブロック共重合体、及びそれらの水素添加物の1種又は2種以上が好ましく用いられ、未水添又は水添スチレン/ブタジエンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(エチレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体、未水添又は水添スチレン/(イソプレン/ブタジエン)/スチレンブロック共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0038】
エラストマー(b)の構成単位を形成してもよいカルボキシル基を有する不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、及びこれらカルボン酸の金属塩のα,β-不飽和カルボン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。エラストマー(b)の構成単位を形成してもよい酸無水物基を有する不飽和化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物のα,β-不飽和結合を有するジカルボン酸無水物が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、α,β-不飽和結合を有するジカルボン酸無水物が好ましく、無水マレイン酸、無水イタコン酸がより好ましい。
【0039】
エラストマー(b)におけるカルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度は、低温耐衝撃性の改良効果、得られる脂肪族ポリアミド組成物の流動性の観点から、25μeq/g以上200μeq/g以下であることが好ましく、50μeq/g以上150μeq/g以下であることがより好ましい。
【0040】
尚、エラストマー(b)におけるカルボキシル基及び/又は酸無水物基濃度は、該エラストマーをトルエン溶液に溶解し、更に、エタノールを加えて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定して測定することができる。
【0041】
[変性された含フッ素系重合体(c)]
変性された含フッ素系重合体(c)における含フッ素系重合体は、少なくとも1種の含フッ素単量体から誘導される構成繰り返し単位を有する重合体(単独重合体又は共重合体)である。熱溶融加工可能な含フッ素系重合体であれば特に限定されるものではない。
【0042】
変性の態様としては、含フッ素系重合体にフルオロ基以外の官能基が導入されている態様が挙げられ、官能基は含フッ素系重合体内に導入されており、変性された含フッ素系重合体(c)の分子末端、側鎖又は主鎖のいずれに導入されていても構わない。また、その官能基は、変性された含フッ素系重合体(c)中に単独、又は2種類以上のものが併用されていてもよい。
変性を行うと、成形体の外観、成形安定性の点から好ましい。
【0043】
含フッ素系重合体に導入されるフルオロ基以外の官能基としては、アミノ基に対して反応性を有する官能基が好ましく、アミノ基に対して反応性を有する官能基としては、カルボキシル基、酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸金属塩、カルボン酸イミド基、カルボン酸アミド基等のカルボキシル基及び/又はその誘導体の基;スルホ基、スルホン酸塩、エポキシ基、シアノ基、カーボネート基、及びハロホルミル基が挙げられる。これらの中でも、成形体の外観及び成形性の観点から、カルボキシル基及び/又はその誘導体の基が好ましく、含フッ素系重合体は、少なくともカルボキシル基及び/又はその誘導体の基を有することが好ましい。
カルボキシル基及び/又はその誘導体の基を導入するための変性の態様としては、成形体の外観及び成形性の観点から、カルボン酸及び/又はその誘導体による変性が好ましく、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体等による変性がより好ましく、(メタ)アクリル酸及び/又はその誘導体による変性がさらに好ましい。なお、カルボン酸及び/又はその誘導体には、酸無水物も含まれる。
【0044】
カルボン酸及びその誘導体の例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸及びこれらカルボン酸の金属塩、マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノメチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸アミノエチル、マレイン酸ジメチル、イタコン酸ジメチル、酢酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、安息香酸ビニル、クロトン酸ビニル、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸無水物、マレイミド、N-エチルマレイミド、N-ブチルマレイミド、N-フェニルマレイミド、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、シトラコン酸グリシジルが挙げられる。これらは1種単独でも又は2種以上を組合せて用いることができる。これらの中ではアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸の誘導体及びメタクリル酸の誘導体が好ましい。
【0045】
変性された含フッ素系重合体(c)に、フルオロ基以外の官能基を導入する方法としては、(i)含フッ素系重合体の重合時、フルオロ基以外の官能基を有する共重合可能な単量体を共重合する方法、(ii)重合開始剤、連鎖移動剤等により、重合時に含フッ素系重合体の分子末端にフルオロ基以外の官能基を導入する方法、(iii)反応性を有するフルオロ基以外の官能基とグラフト化が可能なフルオロ基以外の官能基とを有する化合物(グラフト化合物)を含フッ素系重合体にグラフトさせる方法等が挙げられる。これらの導入方法は、単独で、あるいは適宜、組合せて用いることができる。前記(i)、(ii)から製造される変性された含フッ素系重合体(c)が好ましい。(iii)については、特開平7-18035号公報、特開平7-25952号公報、特開平7-25954号公報、特開平7-173230号公報、特開平7-173446号公報、特開平7-173447号公報、特表平10-503236号公報による製造法を参照されたい。
【0046】
(i)含フッ素系重合体の製造時、フルオロ基以外の官能基を有する共重合可能な単量体(以下、官能基含有単量体と略記する場合がある。)を共重合する方法において、官能基含有単量体としては、官能基含有非フッ素単量体、官能基含有含フッ素単量体等が挙げられる。
【0047】
官能基含有非フッ素単量体は、例えば上述のカルボン酸及びその誘導体として例示した化合物が挙げられ、使用する含フッ素単量体との共重合反応性を考慮して決定される。適当な官能基含有非フッ素単量体を選択することにより、重合が良好に進行し、官能基含有非フッ素単量体の主鎖中に均一に導入しやすく、結果として未反応モノマーが少なくなり、不純物を減らすことができるという利点がある。
【0048】
官能基含有含フッ素単量体としては、一般式CX3X4=CX5-(R7)n-Y(ここで、Yは、-COOM(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、カルボキシル基由来基、-SO3M(Mは、水素原子又はアルカリ金属を表す。)、スルホン酸由来基、エポキシ基、及び-CNからなる群より選択される官能基を表し、X3、X4及びX5は、同一又は異なって、水素原子若しくはフッ素原子を表し(但し、X3、X4及びX5が同一に水素原子の場合、n=1であり、R7にフッ素原子を含む。)、R7は、炭素原子数1以上40以下のアルキレン基、炭素原子数1以上40以下の含フッ素オキシアルキレン基、エーテル結合を有する炭素原子数1以上40以下の含フッ素アルキレン基、又はエーテル結合を有する炭素原子数1以上40以下の含フッ素オキシアルキレン基を表し、nは、0又は1である。)で表される不飽和化合物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
前記一般式におけるYであるカルボキシル基由来基としては、例えば、一般式-C(=O)Q1(式中、Q1は、-OR8、-NH2、F、Cl、Br、又はIを表し、R8は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数6以上22以下のアリール基を表す。)で表される官能基が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
前記一般式におけるYであるスルホン酸由来基としては、例えば、一般式-SO2Q2(式中Q2は、-OR9、-NH2、F、Cl、Br、又はIを表し、R9は、炭素原子数1以上20以下のアルキル基又は炭素原子数6以上22以下のアリール基を表す。)で表される官能基が挙げられる。
前記Yは、-COOH、-SO3H、-SO3Na、-SO2F、又は-CNが好ましい。
【0049】
官能基含有含フッ素単量体としては、例えば、カルボニル基を有する官能基である場合、パーフルオロアクリル酸フルオライド、1-フルオロアクリル酸フルオライド、アクリル酸フルオライド、1-トリフルオロメタクリル酸フルオライド、パーフルオロブテン酸が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0050】
変性された含フッ素系重合体(c)中の官能基含有単量体の含有量は、高温での加工時、接着不良、着色、発泡、高温での使用時、分解による剥離、着色、発泡、溶出等の発生を防止する観点から、全重合単位に対して、0.01モル%以上5モル%以下であることが好ましく、0.015モル%以上4モル%以下であることがより好ましく、0.02モル%以上3モル%以下であることが更に好ましい。変性された含フッ素系重合体(c)中の官能基含有単量体の含有量が前記の範囲にあると、製造時の重合速度が低下せず、かつ変性された含フッ素系重合体(c)は積層される相手材との接着性に優れたものとなる。官能基含有単量体の添加法は、特に限定されず、重合開始時に一括添加してもよいし、重合中に連続添加してもよい。添加方法は、重合開始剤の分解反応性及び重合温度により適宜選択されるが、重合中に、官能基含有単量体が重合で消費されるに従って、消費された量を連続的又は断続的に重合槽内に供給し、当該官能基含有単量体の濃度をこの範囲に維持することが好ましい。
尚、変性された含フッ素系重合体(c)中の官能基含有単量体の含有量としては、全重合単位に対して、0.01モル%とは、変性された含フッ素系重合体(c)中の官能基残基の含有量が変性された含フッ素系重合体(c)の主鎖炭素数1×106個に対して、100個であることに相当する。また、変性された含フッ素系重合体(c)中の全重合単位に対して、5モル%とは、変性された含フッ素系重合体(c)中の官能基残基の含有量が変性された含フッ素系重合体(c)の主鎖炭素数1×106個に対して、50,000個であることに相当する。
前記含有量を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素系重合体と、官能基が導入されていない含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
【0051】
(ii)重合開始剤等により含フッ素系重合体の分子末端にフルオロ基以外の官能基を導入する方法において、変性された含フッ素系重合体(c)中の主鎖炭素原子数106個に対する末端官能基数(フルオロ基以外)は、耐熱性を十分に確保し、高温での加工時、接着不良、着色、発泡、高温での使用時、分解による剥離、着色、発泡、溶出等の発生を防止する観点から、150個以上3,000個以下であることが好ましく、200個以上2,000個以下であることがより好ましく、300個以上1,000個以下であることが更に好ましい。
また、前記官能基数を満たす限りにおいて、官能基が導入された含フッ素系重合体と、官能基が導入されていない含フッ素系重合体の混合物であって構わない。
【0052】
一方、含フッ素系重合体の製造に用いられる含フッ素単量体としては、テトラフルオロエチレン(TFE)、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン(VDF)、フッ化ビニル(VF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、トリクロロフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)、CF2=CF-OCH2-Rf2(ここで、Rf2は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキレン基を表す。)、CF2=CF(CF2)pOCF=CF2(ここで、pは、1又は2である。)、CH2=CX1(CF2)nX2(ここで、X1及びX2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは、2以上10以下の整数である。)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0053】
前記一般式CF2=CFORf1の具体例としては、CF2=CFOCF2(パーフルオロ(メチルビニルエーテル):PMVE)、CF2=CFOCF2CF3(パーフルオロ(エチルビニルエーテル):PEVE)、CF2=CFOCF2CF2CF3(パーフルオロ(プロピルビニルエーテル):PPVE)、CF2=CFOCF2CF2CF2CF3(パーフルオロ(ブチルビニルエーテル):PBVE)、CF2=CFO(CF2)8F(パーフルオロ(オクチルビニルエーテル):POVE)等のパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(以下、PAVEと称する場合がある。)が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、CF2=CFOCF2、CF2=CFOCF2CF2CF3が好ましい。
【0054】
また、前記一般式CH2=CX1(CF2)nX2(ここで、X1及びX2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは、2以上10以下の整数である。)で表される化合物中のnは、含フッ素系重合体の改質(例えば、共重合体の成形時及び成形品のクラック発生の抑制)効果に確保し、十分な重合反応性を得る観点から、2以上10以下の整数である。具体的には、CH2=CF(CF2)2F、CH2=CF(CF2)3F、CH2=CF(CF2)4F、CH2=CF(CF2)5F、CH2=CF(CF2)8F、CH2=CF(CF2)2H、CH2=CF(CF2)3H、CH2=CF(CF2)4H、CH2=CF(CF2)5H、CH2=CF(CF2)8H、CH2=CH(CF2)2F、CH2=CH(CF2)3F、CH2=CH(CF2)4F、CH2=CH(CF2)5F、CH2=CH(CF2)8F、CH2=CH(CF2)2H、CH2=CH(CF2)3H、CH2=CH(CF2)4H、CH2=CH(CF2)5H、CH2=CH(CF2)8H等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、変性された含フッ素系重合体(c)の薬液バリア性と耐環境応力亀裂性のバランスの観点から、CH2=CH(CF2)nF又はCH2=CF(CF2)nHで表される化合物が好ましく、式中のnは、2以上4以下であることがより好ましい。
【0055】
変性された含フッ素系重合体(c)は、前記含フッ素単量体及びアミノ基に対して反応性を有する官能基を有する単量体に加えて、更に、非フッ素含有単量体に基づく重合単位を含有してもよい。非フッ素含有単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素原子数2以上4以下のオレフィン;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物、;メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)、イソブチルビニルエーテル(IBVE)、シクロへキシルビニルエーテル(CHVE)、グリシジルビニルエーテル等のビニルエーテル等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、エチレン、プロピレンが好ましく、エチレンがより好ましい。
【0056】
変性された含フッ素系重合体(c)の中でも、耐熱性、耐薬品性、及び薬液バリア性の観点から、テトラフルオロエチレン単独重合体(E0)、少なくとも、フッ化ビニリデン単位(VDF単位)からなる重合体(E1)、少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体(E2)、少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)、ヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)、及び前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる群から選択される少なくとも2種からなる共重合体(E3)、少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)からなる共重合体(E4)、少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)及びテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)からなる共重合体(E5)のそれぞれが変性されたものであることが好ましい。これらの中でも、テトラフルオロエチレン単独重合体及びテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)を含む共重合体が変性されたものがより好ましく、テトラフルオロエチレン単独重合体の変性されたものがさらに好ましい。
【0057】
少なくとも、フッ化ビニリデン単位(VDF単位)からなる重合体(E1)(以下、VDF重合体(E1)と称する場合がある。)としては、例えば、フッ化ビニリデン単独重合体(ポリフッ化ビニリデン(PVDF))(E1-1)、
VDF単位及びTFE単位とからなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が30モル%以上99モル%以下、及びTFE単位の含有量が1モル%以上70モル%以下である共重合体(E1-2)、
VDF単位、TFE単位、及びトリクロロフルオロエチレン単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が10モル%以上90モル%以下、TFE単位の含有量が0モル%以上90モル%以下、及びトリクロロフルオロエチレン単位の含有量が0モル%以上30モル%以下である共重合体(E1-3)、
VDF単位、TFE単位、及びHFP単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量が10モル%以上90モル%以下、TFE単位の含有量が0モル%以上90モル%以下、及びHFP単位の含有量が0モル%以上30モル%以下である共重合体(E1-4)等が挙げられる。
【0058】
前記共重合体(E1-4)において、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、VDF単位の含有量は、15モル%以上84モル%以下、TFE単位の含有量は、15モル%以上84モル%以下、及びHFP単位の含有量は、0モル%以上30モル%以下であることが好ましい。
【0059】
少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)及びエチレン単位(E単位)からなる共重合体(E2)としては(以下、TFE共重合体(E2)と称する場合がある。)、例えば、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が20モル%以上である重合体が挙げられ、更には、後記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が20モル%以上80モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上80モル%以下、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位の含有量が0モル%以上60モル%以下である共重合体等が挙げられる。
【0060】
前記共重合可能な単量体としては、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)、前記一般式CH2=CX1(CF2)nX2(ここで、X1及びX2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは、2以上10以下の整数である。)等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0061】
TFE共重合体(E2)としては、例えば、
TFE単位、E単位、及び前記一般式CH2=CX1(CF2)nX2(ここで、X1及びX2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは、2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が30モル%以上70モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上55モル%以下、及び前記一般式CH2=CX1(CF2)nX2(ここで、X1及びX2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは、2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィンに由来するフルオロオレフィン単位の含有量が0モル%以上10モル%以下である共重合体(E2-1)、
TFE単位、E単位、HFP単位、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が30モル%以上70モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上55モル%以下、HFP単位の含有量が1モル%以上30モル%以下、及びこれらと共重合可能な単量体に由来する単位の含有量が0モル%以上10モル%以下である共重合体(E2-2)、
TFE単位、E単位、及び前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が30モル%以上70モル%以下、E単位の含有量が20モル%以上55モル%以下、及び前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位の含有量が0モル%以上10モル%以下である共重合体(E2-3)等が挙げられる。
【0062】
少なくとも、テトラフルオロエチレン単位(TFE単位)、ヘキサフルオロプロピレン単位(HFP単位)、及び前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来するPAVE単位からなる群から選択される少なくとも2種からなる共重合体(E3)(以下、TFE共重合体(E3)と称する場合がある。)としては、例えば、
TFE単位及びHFP単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下であり、好ましくは85モル%以上93モル%以下であり、HFP単位の含有量が5モル%以上30モル%以下であり、好ましくは7モル%以上15モル%以下である共重合体(E3-1)、
TFE単位及び前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下、及び前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位の含有量が5モル%以上30モル%以下である共重合体(E3-2)、
TFE単位、HFP単位、及び前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位からなる共重合体であって、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、TFE単位の含有量が70モル%以上95モル%以下、HFP単位と前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEに由来する1種又は2種以上のPAVE単位の合計含有量が5モル%以上30モル%以下である共重合体(E3-3)等が挙げられる。
【0063】
少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)からなる共重合体とは、CTFE単位[-CFCl-CF2-]、更に、エチレン単位(E単位)及び/又は含フッ素単量体単位から構成されるクロロトリフルオロエチレン共重合体(E4)である(以下、CTFE共重合体(E4)と称する場合がある。)。
前記CTFE共重合体(E4)における含フッ素単量体としては、CTFE以外のものであれば特に限定されないが、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、前記一般式CH2=CX1(CF2)nX2(ここで、X1及びX2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは、2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0064】
CTFE共重合体(E4)としては、特に限定されず、例えば、CTFE/PAVE共重合体、CTFE/VDF共重合体、CTFE/HFP共重合体、CTFE/E共重合体、CTFE/PAVE/E共重合体、CTFE/VDF/E共重合体、CTFE/HFP/E共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0065】
CTFE共重合体(E4)におけるCTFE単位の含有量は、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、15モル%以上70モル%以下であることが好ましく、18モル%以上65モル%以下であることがより好ましい。一方、E単位及び/又は含フッ素単量体単位の含有量は、30モル%以上85モル%以下であることが好ましく、35モル%以上82モル%以下であることがより好ましい。
【0066】
少なくとも、クロロトリフルオロエチレン単位(CTFE単位)及びテトラフルオロエチレン単位(TFE単位)からなる共重合体(E5)は、CTFE単位[-CFCl-CF2-]、TFE単位[-CF2-CF2-]、並びにCTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位から構成されるクロロトリフルオロエチレン共重合体である(以下、CTFE/TFE共重合体(E5)と称する場合がある。)。
【0067】
前記CTFE/TFE共重合体(E5)における共重合可能な単量体としては、CTFE及びTFE以外のものであれば特に限定されないが、フッ化ビニリデン(VDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVE、前記一般式CH2=CX1(CF2)nX2(ここで、X1及びX2は、互いに独立に水素原子又はフッ素原子を表し、nは、2以上10以下の整数である。)で表されるフルオロオレフィン等の含フッ素単量体;エチレン、プロピレン、イソブテン等の炭素原子数2以上4以下のオレフィン;メチルビニルエーテル(MVE)、エチルビニルエーテル(EVE)、ブチルビニルエーテル(BVE)等のビニルエーテル等の非フッ素含有単量体が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、前記一般式CF2=CFORf1(ここで、Rf1は、炭素原子数1以上10以下のエーテル性酸素原子を含んでもよいパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるPAVEであることが好ましく、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(プロビルビニルエーテル)(PPVE)がより好ましく、耐熱性の観点から、PPVEが更に好ましい。
【0068】
CTFE/TFE共重合体(E5)としては、特に限定されず、例えば、CTFE/TFE共重合体、CTFE/TFE/HFP共重合体、CTFE/TFE/VDF共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/E共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体、CTFE/TFE/VDF/PAVE共重合体等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、CTFE/TFE/PAVE共重合体、CTFE/TFE/HFP/PAVE共重合体が好ましい。
【0069】
CTFE/TFE共重合体(E5)中におけるCTFE単位及びTFE単位の合計含有量は、良好な成形性、耐環境応力亀裂性、薬液バリア性、耐熱性、及び機械的特性を確保する観点から、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、90モル%以上99.9モル%以下であることが好ましく、前記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体単位の含有量は、0.1モル%以上10モル%以下であることが好ましい。
【0070】
CTFE/TFE共重合体(E5)中のおけるCTFE単位の含有量は、良好な成形性、耐環境応力亀裂性、及び薬液バリア性を確保する観点から、前記CTFE単位及びTFE単位の合計量100モル%に対して、15モル%以上80モル%以下であることが好ましく、17モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、19モル%以上65モル%以下であることが更に好ましい。
【0071】
CTFE/TFE共重合体(E5)において、前記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体がPAVEである場合、PAVE単位の含有量は、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、0.5モル%以上7モル%以下であることが好ましく、1モル%以上5モル%以下であることがより好ましい。
【0072】
CTFE/TFE共重合体(E5)において、前記CTFE及びTFEと共重合可能な単量体がHFP及びPAVEである場合、HFP単位及びPAVE単位の合計含有量は、前記の官能基含有単量体を除く単量体全体に対して、0.5モル%以上7モル%以下であることが好ましく、1モル%以上5モル%以下であることがより好ましい。
【0073】
TFE共重合体(E3)、CTFE共重合体(E4)、及びCTFE/TFE共重合体(E5)は、薬液バリア性、特に含アルコールガソリンに対するバリア性に卓越して優れる。含アルコールガソリン透過係数は、イソオクタン、トルエン、及びエタノールを45:45:10の容積比で混合したイソオクタン/トルエン/エタノール混合溶媒を投入した透過係数測定用カップに測定対象樹脂から得たシートを入れ、60℃において測定した質量変化から算出される値である。TFE共重合体(E3)、CTFE共重合体(E4)、及びCTFE/TFE共重合体(E5)の前記含アルコールガソリン透過係数は、1.5g・mm/(m2・day)以下であることが好ましく、0.01g・mm/(m2・day)以上1g・mm/(m2・day)以下であることがより好ましく、0.02g・mm/(m2・day)以上0.8g・mm/(m2・day)以下であることが更に好ましい。
【0074】
変性された含フッ素系重合体(c)は、重合体を構成する単量体を使用し、従来からの重合方法で(共)重合することによって得ることができる。その中でも、主としてラジカル重合による方法が用いられる。即ち、重合を開始するには、ラジカル的に進行するものであれば手段は何ら制限されないが、例えば、有機、無機ラジカル重合開始剤、熱、光、電離放射線等によって開始される。
【0075】
変性された含フッ素系重合体(c)の製造方法は、特に制限はなく、一般に用いられているラジカル重合開始剤を使用する重合方法が用いられる。重合方法としては、塊状重合、フッ化炭化水素、塩化炭化水素、フッ化塩化炭化水素、アルコール、炭化水素等の有機溶媒を使用する溶液重合、水性媒体及び必要に応じて適当な有機溶剤を使用する懸濁重合、水性媒体及び乳化剤を使用する乳化重合等、公知の方法を採用できる。
また、重合は、一槽ないし多槽式の攪拌型重合装置、管型重合装置等を使用して、回分式又は連続式操作として実施することができる。
【0076】
ラジカル重合開始剤としては、半減期が10時間である分解温度が0℃以上100℃以下であることが好ましく、20℃以上90℃以下であることがより好ましい。具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-シクロプロピルプロピオニトリル)、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビス[2-(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]、4,4’-アゾビス(4-シアノペンテン酸)等のアゾ化合物;過酸化水素、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の非フッ素系ジアシルパーオキサイド;メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル;(Z(CF2)pCOO)2(ここで、Zは、水素原子、フッ素原子、又は塩素原子であり、pは、1以上10以下の整数である。)で表される化合物等の含フッ素ジアシルパーオキサイド;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の無機過酸化物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0077】
また、変性された含フッ素系重合体(c)の製造に際しては、分子量調整のために、通常の連鎖移動剤を使用することも好ましい。連鎖移動剤としては、メタノール、エタノール等のアルコール;1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン等のクロロフルオロハイドロカーボン;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等のハイドロカーボン;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のクロロハイドロカーボンが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0078】
重合条件については、特に限定されず、重合温度は、0℃以上100℃以下であることが好ましく、20℃以上90℃以下であることがより好ましい。重合体中のエチレン-エチレン連鎖生成による耐熱性の低下を避けるためには、一般に、低温が好ましい。重合圧力は、用いる溶媒の種類、量、蒸気圧、重合温度等の他の重合条件に応じて適宜定められるが、0.1MPa以上10MPa以下であることが好ましく、0.5MPa以上3MPa以下であることがより好ましい。重合時間は、1時間以上30時間以下であることが好ましい。
【0079】
変性された含フッ素系重合体(c)の分子量は、成形性の観点から、高分子量であることが好ましく、平均分子量が600万以上であることが好ましい。平均分子量は、ASTM D4591で下記式によって算出される。Log Mw=27.5345-12.1405D(式中、Mwは重量平均分子量、Dは標準比重を表す。)。また、分子量は、重合に用いる単量体の濃度、重合開始剤の濃度、連鎖移動剤の濃度、温度等によって制御される。
【0080】
変性された含フッ素系重合体(c)として粒子状のものを使用する場合、その他の樹脂の粒子との混合粉体として、脂肪族ポリアミド樹脂組成物に配合することも好ましい。
【0081】
混合粉体は、変性された含フッ素系重合体粒子水性分散液とその他の樹脂粒子水性分散液とを混合して凝固またはスプレードライにより粉体化する、あるいは変性された含フッ素系重合体粒子水性分散液存在下でその他の樹脂を構成する単量体を重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化する、あるいは含フッ素系重合体粒子水性分散液とその他の樹脂粒子水性分散液とを混合した分散液中で、ビニル単量体を乳化重合した後、凝固またはスプレードライにより粉体化することにより得ることができる。
【0082】
変性された含フッ素系重合体粒子水性分散液は、含フッ素界面活性剤を用いる乳化重合などにより得ることができる。
【0083】
混合粉体を構成するその他の樹脂としては特に制限されるものではないが、分散性の観点から脂肪族ポリアミド樹脂(a)との親和性が高いものであることが好ましい。
【0084】
その他の樹脂を生成するための単量体の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、o-エチルスチレン、p-クロロスチレン、o-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、p-メトキシスチレン、o-メトキシスチレン、2,4-ジメチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸ドデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸トリデシル、メタクリル酸トリデシル、アクリル酸オクタデシル、メタクリル酸オクタデシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;無水マレイン酸等のα,β-不飽和カルボン酸;N-フェニルマレイミド、N-メチルマレイミド、N-シクロヒキシルマレイミド等のマレイミド単量体;グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン単量体等を挙げることができる。
これらの単量体は、単独であるいは2種以上組みあわせて用いることができる。
【0085】
これらの単量体の中で脂肪族ポリアミド樹脂(a)との親和性の観点から好ましいものとして、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体からなる群より選ばれる1種以上の単量体を30重量%以上含有する単量体を挙げることができる。特に好ましいものとして、スチレン、アクリロニトリルからなる群より選ばれる1種以上の単量体を30重量%以上含有する単量体を挙げることができる。
【0086】
混合粉体は、その水性分散液を、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム等の金属塩を溶解した熱水中に投入し、塩析、凝固した後に乾燥するか、スプレードライより粉体化することができる。__
混合粉体における変性された含フッ素系重合体(c)の粒子径は、特に制限されないが10μm以下であることが好ましい。粒子径は、動的光散乱法により測定した値である。
なお、後述の変性された含フッ素系重合体(c)の含有量に、混合粉体におけるその他の樹脂は含まれない。
【0087】
(脂肪族ポリアミド樹脂組成物)
脂肪族ポリアミド樹脂組成物中の脂肪族ポリアミド(a)の含有量は、脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、65質量%以上95質量%以下であることが好ましく、70質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、75質量%以上88質量%以下であることがさらに好ましい。脂肪族ポリアミド(a)の含有量が前記範囲にあると、成形性、得られる成形体の機械物性、耐熱性の観点で優れる
【0088】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物中のエラストマー(b)の含有量は、脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、4質量%以上35質量%以下であることが好ましく、7質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。エラストマー(b)の含有量が前記範囲にあると、成形性、得られる成形体の機械物性の観点で優れる。
【0089】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物中の変性された含フッ素系重合体(c)の含有量は、脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。変性された含フッ素系重合体(c)の含有量が前記範囲にあると、成形性、得られる成形体の機械物性、外観の観点で優れる。
【0090】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、前記脂肪族ポリアミド樹脂(a)、エラストマー(b)及び変性された含フッ素系重合体(c)以外のその他の熱可塑性樹脂との混合物であってもよい。脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対して、 脂肪族ポリアミド樹脂(a)、エラストマー(b)、変性された含フッ素系重合体(c)の合計含有量は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
【0091】
混合するその他の熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリメチルペンテン(TPX)等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体(MS)、メタクリル酸メチル/スチレン/ブタジエン共重合体(MBS)等のポリスチレン系樹脂;カルボキシル基及びその塩、酸無水物基、エポキシ基等の官能基が含有された前記ポリオレフィン系樹脂及びポリスチレン系樹脂;ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、ポリ(エチレンテレフタレート/エチレンイソフタレート)共重合体(PET/PEI)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート(PCT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリアリレート(PAR)、液晶ポリエステル(LCP)、ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)等のポリエステル系樹脂;ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPO)等のポリエーテル系樹脂;ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESU)、ポリフェニルサルホン(PPSU)等のポリサルホン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリチオエーテルサルホン(PTES)等のポリチオエーテル系樹脂;ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルエーテルケトン(PEEEK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、ポリエーテルケトンケトンケトン(PEKKK)、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)等のポリケトン系樹脂;ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体(NBR)等のポリニトリル系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル(PEMA)等のポリメタクリレート系樹脂;ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/アクリル酸メチル共重合体等のポリビニル系樹脂;酢酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロース系樹脂;ポリカーボネート(PC)等のポリカーボネート系樹脂;熱可塑性ポリイミド(TPI)、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエステルアミドイミド等のポリイミド系樹脂;熱可塑性ポリウレタン系樹脂;ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられ、場合により、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/ビニリデンフルオライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、クロロトリフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)/テトラフルオロエチレン共重合体(CPT)等のフッ素系樹脂が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0092】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、更に導電性フィラーを含んでいてもよい。
導電性とは、例えば、ガソリンのような引火性の流体が樹脂のような絶縁体に連続的に接触した場合、静電気が蓄積して引火する可能性があるが、この静電気が蓄積しない程度の電気特性を有することを言う。これにより、燃料等の流体の搬送時に発生する静電気による爆発防止が可能となる。
導電性フィラーは、樹脂に導電性能を付与するために添加されるすべての充填剤が包含され、粒状、フレーク状、繊維状フィラー等が挙げられる。
【0093】
粒状フィラーとしては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。フレーク状フィラーとしては、アルミフレーク、ニッケルフレーク、ニッケルコートマイカ等が挙げられる。また、繊維状フィラーとしては、炭素繊維、炭素被覆セラミック繊維、カーボンウィスカー、カーボンナノチューブ、アルミ繊維、銅繊維、黄銅繊維、ステンレス繊維等の金属繊維等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、カーボンナノチューブ、カーボンブラックが好ましい。
【0094】
カーボンナノチューブは、中空炭素フィブリルと称されるものであり、該フィブリルは、規則的に配列した炭素原子の本質的に連続的な多数層からなる外側領域と、内部中空領域とを有し、各層と中空領域とが該フィブリルの円柱軸の周囲に実質的に同心に配置されている本質的に円柱状のフィブリルである。更に、前記外側領域の規則的に配列した炭素原子が黒鉛状であり、前記中空領域の直径が2nm以上20nm以下であることが好ましい。カーボンナノチューブの外径は、樹脂中への十分な分散性及び得られる樹脂成形体の良好な導電性を付与する観点から、3.5nm以上70nm以下であることが好ましく、4nm以上60nm以下であることがより好ましい。カーボンナノチューブのアスペクト比(長さ/外径の比)は、5以上であることが好ましく、100以上であることがより好ましく、500以上であることが更に好ましい。該アスペクト比を満たすことにより、導電性ネットワークを形成しやすく、少量添加で優れた導電性を発現することができる。
【0095】
カーボンブラックは、導電性付与に一般的に使用されているカーボンブラックがすべて包含され、好ましいカーボンブラックとしては、アセチレンガスを不完全燃焼して得られるアセチレンブラック、原油を原料にファーネス式不完全燃焼によって製造されるケッチェンブラック等のファーネスブラック、オイルブラック、ナフタリンブラック、サーマルブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ロールブラック、ディスクブラック等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これらの中でも、アセチレンブラック、ファーネスブラックがより好ましい。
【0096】
また、カーボンブラックは、その粒子径、表面積、DBP吸油量、灰分等の特性の異なる種々のカーボン粉末が製造されている。該カーボンブラックの特性に制限は無いが、良好な鎖状構造を有し、凝集密度の大きいものが好ましい。カーボンブラックの多量配合は、耐衝撃性の観点から好ましくなく、より少量で優れた電気伝導度を得る観点から、平均粒径は、500nm以下であることが好ましく、5nm以上100nm以下であることがより好ましく、10nm以上70nm以下であることが更に好ましく、表面積(BET法)は、10m2/g以上であることが好ましく、30m2/g以上であることがより好ましく、50m2/g以上であることが更に好ましく、更に、DBP(ジブチルフタレート)吸油量は、50ml/100g以上であることが好ましく、100ml/100gであることがより好ましく、150ml/100g以上であることが更に好ましい。また、灰分は、0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましい。ここでいうDBP吸油量は、ASTM D-2414に定められた方法で測定した値である。また、カーボンブラックの揮発分含量は、1質量%未満であることが好ましい。
これら、導電性フィラーはチタネート系、アルミ系、シラン系等の表面処理剤で表面処理を施されていてもよい。更に、溶融混練作業性を向上させるために造粒されたものを用いることも可能である。
【0097】
導電性フィラーの含有量は、用いる導電性フィラーの種類により異なるため、一概に規定はできないが、導電性、流動性、機械的強度等とのバランスの観点から、脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量部に対して、一般に、3質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
また、かかる導電性フィラーは、十分な帯電防止性能を得る観点から、溶融押出物の表面固有抵抗値が108Ω/square以下であることが好ましく、106Ω/square以下であることがより好ましい。但し、前記導電性フィラーの添加は、強度、流動性の悪化を招きやすい。そのため、目標とする導電レベルが得られれば、前記導電性フィラーの含有量はできるだけ少ない方が望ましい。
【0098】
更に、脂肪族ポリアミド樹脂組成物には、必要に応じて、フェノール系、リン系等の酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、添加剤の添着剤、滑剤、無機充填剤、帯電防止剤、難燃剤、結晶化促進剤、着色剤等を添加してもよい。
【0099】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、エラストマー(b)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度を[X](μeq/g)、前記エラストマー(b)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Y](質量%)、前記変性された含フッ素系重合体(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量を[Z](質量%)とした時、[X]×[Y]×[Z]の値が2,900未満であることが好ましく、300以上2,900未満であることがより好ましく、400以上2000以下であることがさらに好ましく、600以上1750以下であることがさらに好ましい。[X]×[Y]×[Z]の値が上記範囲にあると、チューブ、ブロー成型品の外観、成形性の観点で優れている。
【0100】
[脂肪族ポリアミド樹脂組成物の製造方法]
脂肪族ポリアミド樹脂(a)とエラストマー(b)と変性された含フッ素系重合体(c)とその他の任意成分を混合する方法は、特に制限されず、従来から知られている各種の方法を採用することができる。例えば、三者をタンブラー及び/又はミキサーを用いて、脂肪族ポリアミド樹脂(a)、エラストマー(b)及び変性された含フッ素系重合体(c)のペレット同士を前記の混合割合になるように均一にドライブレンドする方法、三者を必要に応じて添加される他の成分と共に、成形時に使用する濃度で予めドライブレンドし、溶融混練する方法、一部の成分を配合後、溶融混練し、更に残りの成分を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の成分を配合後、溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの成分を混合する方法等により製造することができる。ペレットとして、各成分を熱可塑性樹脂と混合したマスターバッチを使用することもできる。溶融混練は、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練機を使用して行うことができる。
【0101】
[脂肪族ポリアミド樹脂組成物の用途]
脂肪族ポリアミド樹脂組成物は、ブロー成形によるブロー成形品の製造に好適に用いることができる。さらには、押出成形による押出成形品の製造に好適に用いることができる。
脂肪族ポリアミド樹脂からブロー成形によりブロー成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。一般的には、通常のブロー成形機を用いパリソンを形成した後、ブロー成形を実施すればよい。パリソン形成時の好ましい樹脂温度は、脂肪族ポリアミド樹脂組成物の融点より10℃から70℃高い温度範囲で行うことが好ましい。
【0102】
脂肪族ポリアミド樹脂から押出成形により押出成形品を製造する方法については特に制限されず、公知の方法を利用することができる。
また、ポリエチレンなどのポリオレフィンや他の熱可塑性樹脂と共押出した後、ブロー成形を行い、多層構造体を得ることも可能である。その場合脂肪族ポリアミド樹脂組成物層とポリオレフィンなどの他の熱可塑性樹脂層の間に接着層を設けることも可能である。多層構造体の場合、本発明の脂肪族ポリアミド樹脂組成物は外層、内層のいずれにも使用し得る。
【0103】
ブロー成形によるブロー成形品及び押出成形による押出成形品としては、特に限定されないが、スポイラー、エアインテークダクト、インテークマニホールド、レゾネーター、燃料タンク、ガスタンク、作動油タンク、燃料フィラーチューブ、燃料デリバリーパイプ、その他各種ホース・チューブ・タンク類などの自動車部品、電動工具ハウジング、パイプ類などの機械部品を始め、タンク、チューブ、ホース、フィルム等の電気・電子部品、家庭・事務用品、建材関係部品、家具用部品等が挙げられ、中空成形品が好ましい。中空成形品としては、パイプ、チューブ、ホース及びタンクからなる群から選択される成形体が好ましい。
【実施例】
【0104】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0105】
尚、実施例及び比較例における分析及び物性の測定方法、並びに実施例及び比較例に用いた材料を示す。
【0106】
脂肪族ポリアミド樹脂組成物の材料物性は以下の方法で測定した。
【0107】
[相対粘度]
JIS K-6920に準拠した方法で、96%硫酸中、ポリアミド濃度1%、温度25℃の条件下で測定した。
【0108】
[流動性(MFR)]
脂肪族ポリアミド樹脂組成物の流動性はISO 1133に準拠した方法で、測定温度は280℃、荷重は10kgの条件で測定を行った。
【0109】
[エラスマー重合体(b)のカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X]]
三つ口ナス型フラスコに所定量のエラストマー試料を入れ、トルエン170mLに溶解し、更に、エタノールを30mL加えて調製した試料溶液を用いて、フェノールフタレインを指示薬とし、0.1NのKOHエタノール溶液で滴定を行い、カルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度を求めた。
【0110】
(1) 押出成形性
以下の方法で測定した。
[チューブ成形安定性]
押出成形機の引き取りによるチューブの成形安定性について、以下の基準で評価した。
○:連続成形が可能であり、脈動も生じず安定して成形できる。
△:連続成形が可能であるが、僅かな脈動が生じる。
×:連続成形が不可能であり、脈動も生じる。
【0111】
[外観(平滑性)]
押出成形後のチューブ外表面の平滑性について、円周方向に生じた縞模様(ビビリ跡)の有無を目視観察し、以下の基準で評価した。
○:チューブ外表面に縞模様(ビビリ跡)、突起等が肉眼で観察されない。
△:チューブ外表面に微小な縞模様(ビビリ跡)、突起等が肉眼で観察される。
×:チューブ外表面に大きな縞模様(ビビリ跡)、突起等が肉眼で観察される。
【0112】
[樹脂圧力]
チューブの押出成形を行っている際の押出機の樹脂圧力を測定した。測定は、押出機に圧力計を取り付けその値を読み取った。圧力が低いと、装置への負担を軽減でき、安定して連続成形をすることができる。
【0113】
(2)ブロー成形性
以下の方法で測定した。
[ブロー成形品表面性]
ブロー成形体の表面性について、成形体の内表面を目視観察、直接指で触れて確認し、以下の基準で評価した。
○:成形体の内表面に凹凸及びざらつきはない。
△:成形体の内表面に凹凸は無いが、ざらつきはある。
×:成形体の内表面に凹凸とざらつきがある。
【0114】
[ドローダウン特性]
ブロー成形機より1mのパリソンを出した後、2秒後、5秒後のパリソン長を測定した。ドローダウン量が少ないほど、パリソン保持率が高く、ブロー成形性に優れるため、いずれの時間でも初期値からの変化が、絶対値で20cm以下である場合、良好なドローダウン特性を有すると判断した。
【0115】
[実施例及び比較例で用いた材料]
脂肪族ポリアミド樹脂(a)
ポリアミド6(a-1):相対粘度4.1であるポリアミド6
ポリアミド6/12(a-2):ε-カプロラクタム80質量%と12-アミノドデカン酸20質量%からなり、相対粘度3.9であるポリアミド6/12
ポリアミド6/66(a-3):ε-カプロラクタム85質量%とヘキサメチレンジアミンアジペート15質量%からなり、相対粘度4.0であるポリアミド6/66)
【0116】
エラストマー(b)
エラストマー(b-1):タフマーMH5020(三井化学(株)製、無水マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体、酸無水物濃度:100μeq/g)
エラストマー(b-2):タフマーMH5040(三井化学(株)製、無水マレイン酸変性エチレン/ブテン共重合体、酸無水物濃度:200μeq/g)
【0117】
変性されたPTFE(c)
アクリル酸で変性されたPTFE(c-1):メタブレンA-3800(三菱ケミカル(株)製、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン)
未変性のPTFE(c-2):Fluon PTFE L169E(AGC(株)製、ポリテトラフルオロエチレン)
【0118】
[脂肪族ポリアミド樹脂組成物]
[実施例1]
ポリアミド6組成物(A-1)の製造
ポリアミド6(a-1)にエラストマー(b-1)、変性されたPTFE(c-1)、酸化防止剤として、ビス[3-[3-(tert-ブチル)-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル]プロパン酸]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2-メチルプロパン-2,1-ジイル)(住友化学(株)製、SUMILIZER GA-80)、酸化防止剤として、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン社製、Irganox 1010)、リン系加工安定剤として3,9―ビス(2,6―ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノキシ)-2,4,8,10-テトラオキサ-3,9-ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(ADEKA(株)、アデカスタブ PEP-36)、及び添加剤の添着剤としてポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(丸菱油化工業(株)製、バルー 7220)をあらかじめ混合し、二軸溶融混練機((株)コペリオン製、型式:ZSK シリンダー径32mm L/D48に供給し、シリンダ温度240℃から250℃、スクリュー回転400rpm、吐出量60kg/hrsにて溶融混練し、溶融樹脂をストランド状に押出した後、これを水槽に導入し、冷却、カット、真空乾燥して、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=87/12/1(質量比)の合計100質量部、酸化防止剤0.5質量部、リン系加工安定剤0.25質量部、添着剤0.1質量部よりなるポリアミド6組成物(A-1)ペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=86.3/11.9/1.0(質量%))。この材料のエラストマー(b-1)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が100μeq/g、前記エラストマー(b-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が11.9質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が1.0質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、1,190となる。また、ポリアミド6組成物(A-1)のMFR(280℃、10kg)の値は、17g/10minであった。
【0119】
[実施例2]
ポリアミド6組成物(A-2)の製造
ポリアミド6組成物(A-1)の製造においてエラストマー(b-1)と変性されたPTFE(c-1)の量を変更し、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=84.5/15/0.5(質量比)とした以外は同様の方法にて、ポリアミド6組成物(A-2)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=83.8/14.9/0.5(質量%))。この材料のエラストマー(b-1)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が100μeq/g、前記エラストマー(b-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が14.9質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0.5質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、745となる。また、ポリアミド6組成物(A-2)のMFR(280℃、10kg)の値は、18g/10minであった。
【0120】
[実施例3]
ポリアミド6組成物(A-3)の製造
ポリアミド6組成物(A-1)の製造においてエラストマー(b-1)の量を変更し、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=84/15/1(質量比)とした以外は同様の方法にて、ポリアミド6組成物(A-3)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=83.3/14.9/1.0(質量%))。この材料のエラストマー(b-1)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が100μeq/g、前記エラストマー(b-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が14.9質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が1.0質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、1,490となる。また、ポリアミド6組成物(A-3)のMFR(280℃、10kg)の値は、15g/10minであった。
【0121】
[実施例4]
ポリアミド6組成物(A-4)の製造
ポリアミド6組成物(A-1)の製造においてエラストマー(b-1)と変性されたPTFE(c-1)の量を変更し、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=82/15/3(質量比)とした以外は同様の方法にて、ポリアミド6組成物(A-4)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=81.3/14.9/3.0(質量%))。この材料のエラストマー(b-1)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が100μeq/g、前記エラストマー(b-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が14.9質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が3.0質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、4,470となる。また、ポリアミド6組成物(A-4)のMFR(280℃、10kg)の値は、6g/10minであった。
【0122】
[実施例5]
ポリアミド6組成物(A-5)の製造
ポリアミド6組成物(A-2)の製造においてエラストマー(b-1)をエラストマー(b-2)へ変更した以外は同様の方法にて、ポリアミド6組成物(A-5)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-2)/変性されたPTFE(c-1)=83.8/14.9/0.5(質量%))。この材料のエラストマー(b-2)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が200μeq/g、前記エラストマー(b-2)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が14.9質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0.5質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、1,490となる。また、ポリアミド6組成物(A-5)のMFR(280℃、10kg)の値は、11g/10minであった。
【0123】
[実施例6]
ポリアミド6組成物(A-6)の製造
ポリアミド6組成物(A-3)の製造においてエラストマー(b-1)をエラストマー(b-2)へ変更した以外は同様の方法にて、ポリアミド6組成物(A-6)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-2)/変性されたPTFE(c-1)=83.3/14.9/1.0(質量%))。この材料のエラストマー(b-2)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が200μeq/g、前記エラストマー(b-2)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が14.9質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が1.0質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、2,980となる。また、ポリアミド6組成物(A-6)のMFR(280℃、10kg)の値は、4g/10minであった。
【0124】
[実施例7]
ポリアミド6/12組成物(A-7)の製造
ポリアミド6組成物(A-2)の製造において、ポリアミド6(a-1)をポリアミド6/12(a-2)へ変更し、エラストマー(b-1)の量を変更し、ポリアミド6/12(a-2)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=79.5/20/0.5(質量比)とした以外は同様の方法にて、ポリアミド6/12組成物(A-7)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6/12(a-2)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=78.8/19.8/0.5(質量%))。この材料のエラストマー(b-1)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が100μeq/g、前記エラストマー(b-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が19.8質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0.5質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、990となる。また、ポリアミド6/12組成物(A-7)のMFR(280℃、10kg)の値は、13g/10minであった。
【0125】
[実施例8]
ポリアミド6/66組成物(A-8)の製造
ポリアミド6組成物(A-3)の製造において、ポリアミド6(a-1)をポリアミド6/66(a-3)へ変更した以外は同様の方法にて、ポリアミド6/66組成物(A-8)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6/66(a-3)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-1)=83.3/14.9/1.0(質量%))。この材料のエラストマー(b-1)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が100μeq/g、前記エラストマー(b-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が14.9質量%、前記変性されたPTFE(c-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が1.0質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、1,490となる。また、ポリアミド6/66組成物(A-8)のMFR(280℃、10kg)の値は、5g/10minであった。
【0126】
[比較例1]
ポリアミド6組成物(A-9)の製造
ポリアミド6組成物(A-1)の製造において変性されたPTFE(c-1)を用いない以外は同様の方法にて、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)=88/12(質量比)のポリアミド6組成物(A-9)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)=87.3/11.9(質量%))。変性されたPTFE(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6組成物(A-9)のMFR(280℃、10kg)の値は、27g/10minであった。
【0127】
[比較例2]
ポリアミド6組成物(A-10)の製造
ポリアミド6組成物(A-2)の製造において変性されたPTFE(c-1)を用いない以外は同様の方法にて、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)=85/15(質量比)のポリアミド6組成物(A-10)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)=84.3/14.9(質量%))。変性されたPTFE(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6組成物(A-10)のMFR(280℃、10kg)の値は、21g/10minであった。
【0128】
[比較例3]
ポリアミド6組成物(A-11)の製造
ポリアミド6組成物(A-9)の製造においてエラストマー(b-1)の量を変更した以外は同様の方法にて、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)=80/20(質量比)のポリアミド6組成物(A-11)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)=79.3/19.8(質量%))。変性されたPTFE(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6組成物(A-11)のMFR(280℃、10kg)の値は、15g/10minであった。
【0129】
[比較例4]
ポリアミド6組成物(A-12)の製造
ポリアミド6組成物(A-9)の製造においてエラストマー(b-1)をエラストマー(b-2)へ変更し、(b-2)の量に変更し、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-2)=90/10(質量比)とした以外は同様の方法にて、ポリアミド6組成物(A-12)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-2)=89.2/9.9(質量%))。変性されたPTFE(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6組成物(A-12)のMFR(280℃、10kg)の値は、17g/10minであった。
【0130】
[比較例5]
ポリアミド6組成物(A-13)の製造
ポリアミド6組成物(A-12)の製造においてエラストマー(b-2)の量に変更し、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-2)=85/15(質量比)とした以外は同様の方法にて、ポリアミド6組成物(A-13)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-2)=84.3/14.9(質量%))。変性されたPTFE(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6組成物(A-13)のMFR(280℃、10kg)の値は、4g/10minであった。
【0131】
[比較例6]
ポリアミド6組成物(A-14)の製造
ポリアミド6組成物(A-1)の製造においてエラストマー(b-1)を用いない以外は同様の方法にて、ポリアミド6(a-1)/変性されたPTFE(c-1)=99/1(質量比)のポリアミド6組成物(A-14)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/変性されたPTFE(c-1)=98.2/1.0(質量%))。エラストマー(b)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)及びエラストマー(b)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6組成物(A-14)のMFR(280℃、10kg)の値は、25g/10minであった。
【0132】
[比較例7]
ポリアミド6/12組成物(A-15)の製造
ポリアミド6/12組成物(A-7)の製造において変性されたPTFE(c-1)を用いない以外は同様の方法にて、ポリアミド6/12(a-2)/エラストマー(b-1)=80/20(質量比)のポリアミド6/12組成物(A-15)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6/12(a-2)/エラストマー(b-1)=79.3/19.8(質量%))。変性されたPTFE(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6/12組成物(A-15)のMFR(280℃、10kg)の値は、23g/10minであった。
【0133】
[比較例8]
ポリアミド6/66組成物(A-16)の製造
ポリアミド6/66組成物(A-8)の製造において変性されたPTFE(c-1)を用いない以外は同様の方法にて、ポリアミド6/66(a-3)/エラストマー(b-1)=85/15(質量比)のポリアミド6/66組成物(A-16)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6/66(a-3)/エラストマー(b-1)=84.3/14.9(質量%))。変性されたPTFE(c)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が0質量%となるため、[X]×[Y]×[Z]は、0となる。また、ポリアミド6/66組成物(A-16)のMFR(280℃、10kg)の値は、9g/10minであった。
【0134】
[比較例9]
ポリアミド6組成物(A-17)の製造
ポリアミド6組成物(A-3)の製造において変性されたPTFE(c-1)を未変性のPTFE(c-2)へ変更した以外は同様の方法にて、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-2)=84/15/1(質量比)のポリアミド6組成物(A-17)のペレットを得た(組成物中、ポリアミド6(a-1)/エラストマー(b-1)/変性されたPTFE(c-2)=83.3/14.9/1.0(質量%))。この材料のエラストマー(b-1)が有するカルボキシル基及び酸無水物基の合計濃度[X](μeq/g)が100μeq/g、前記エラストマー(b-1)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Y](質量%)が14.9質量%、前記変性されたPTFE(c-2)の脂肪族ポリアミド樹脂組成物100質量%に対する含有量[Z](質量%)が1.0質量%となり、[X]×[Y]×[Z]は、1,490となる。また、ポリアミド6組成物(A-17)のMFR(280℃、10kg)の値は、7g/10minであった。
【0135】
[チューブ押出成形]
ポリアミド6組成物(A-1)から(A-17)を使用して、PAL32(マイルファー社製)単層チューブ成形機にて、管状体に成形した。ポリアミド6組成物(A-1)から(A-6)、(A-9)から(A-14)、(A-17)とポリアミド6/66組成物(A-8)、(A-16)は、押出成形機を270℃から300℃に設定し、ポリアミド6/12組成物(A-7)、(A-15)は、押出成形機を240℃から260℃に設定し、成形を行った。
当該チューブ成形の結果を表1に示す。なお、表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
【0136】
【0137】
実施例1から8と、比較例1から5、7、8との比較から明らかなように変性されたPTFEを含むことでチューブ成形安定性、成形体の外観が向上することが分かる。
実施例1と比較例1、実施例2から4と比較例2、実施例5から6と比較例5、実施例7と比較例7、実施例8と比較例8の比較から変性されたPTFEを添加することで押出成形機の樹脂圧力が低下していることが確認できる。変性されたPTFEを添加すると、MFRの値が下がることから樹脂の粘度は上がっているのにも関わらず、樹脂圧力が低下しており、そのため装置への負担が軽減でき、長時間成形や高速成形に適していると言える。
実施例3、6と比較例6の比較からは、エラストマー(b)を含まない場合には、含んだ場合のようなチューブ成形安定性、成形体の外観の改善は見られなかった。
実施例3と比較例9の比較からは、変性されていないPTFE(c-2)を用いた場合には、変性されたPTFEを用いた場合のようなチューブ成形安定性、成形体の外観の向上、樹脂圧力の低下は確認できなかった。
【0138】
[ブロー成形]
株式会社プラコー製のブロー成形機DA-50型アキュームヘッド付きを用いてブロー成形性を確認した。測定条件は、シリンダー温度240℃、スクリュー回転数40rpm、ダイ口径50mm、円筒状3リットルボトル金型、金型温度60℃にて成形品を取得した。
当該ブロー成形の結果を表2に示す。なお、表中の組成の単位は質量%であり、樹脂組成物全体を100質量%とする。
【0139】
【0140】
実施例1から8からいずれもドローダウン特性が2、5秒後のいずれの時間でも20cm以下となっており、良好であった。特に[X]×[Y]×[Z]が2,900未満の範囲内にある実施例1から3、5、7から8ではブロー成形品の表面性も良好であった。