(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】紙用添加剤、および紙
(51)【国際特許分類】
D21H 17/37 20060101AFI20240109BHJP
D21H 21/22 20060101ALI20240109BHJP
C08K 5/20 20060101ALI20240109BHJP
C08L 33/26 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
D21H17/37
D21H21/22
C08K5/20
C08L33/26
(21)【出願番号】P 2020071097
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000109635
【氏名又は名称】星光PMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164828
【氏名又は名称】蔦 康宏
(72)【発明者】
【氏名】平川 文弥
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 賢一
(72)【発明者】
【氏名】宮本 和也
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-309497(JP,A)
【文献】特開2010-121253(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143155(WO,A1)
【文献】特開2006-207048(JP,A)
【文献】特開昭56-159396(JP,A)
【文献】特開2008-255556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21H11/00- 27/42
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物(A)と下記(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)とを含み、化合物(A)と(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)の質量比が、(A):(B)=99~70:1~30であることを特徴とする紙用添加剤。
化合物(A):
1分子内に3~5個のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン(a-1)と、炭素数8~22の一価脂肪酸(a-2)と、尿素類(a-3)との反応物
(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B):
(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)疎水性モノマーと、(b-3)(メタ)アクリルアミドとを、(b-1):(b-2):(b-3)=3~20:5~15:65~92(モル%)の割合で含むモノマーの重合物
【請求項2】
(b-2)疎水性モノマーが、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルであることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤。
【請求項3】
(b-1)アニオン性モノマーが、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の紙用添加剤。
【請求項4】
紙厚向上剤であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の紙用添加剤。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の紙用添加剤を含有することを特徴とする紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エピハロヒドリンを使用せず、サイズ剤のサイズ効果を阻害しない、紙厚向上効果と抄紙系内での発泡抑制効果に優れる紙用添加剤とそれを用いた紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の原木供給事情の悪化や地球環境保護の面から、パルプの使用量を抑えつつ従来の品質を維持した紙が求められている。しかし、紙の軽量化のために単にパルプ量を減らしただけでは、紙が薄くなり不透明度の低下を招き、印字が裏に透けてみえてしまうことがある。そこで、紙厚を保持しつつパルプ量を減少できる、すなわち、紙厚を向上させることができる薬品が求められている。
【0003】
紙厚を向上させる薬品としては、脂肪酸類とポリアルキレンポリアミン類との反応で得られるアミド系化合物と、エピハロヒドリンとの反応物が多孔性向上剤及び不透明度向上剤として有用であることが公知である(例えば、特許文献1,2参照)。またこれらのアミド化合物を尿素架橋した化合物を含む紙用添加剤も、紙厚を向上させる薬品(例えば、特許文献3参照)として公知である。これら化合物では、その紙厚向上効果は十分に満足できるレベルではなく、また、使用されるエピハロヒドリンやエピハロヒドリンからの副生物が残存するが、これらは環境負荷低減の観点からできるだけ減じることが好ましい。
【0004】
エピハロヒドリンとの反応物ではない紙厚向上効果を示す薬品として、多価アルコールと脂肪酸のエステル反応物からなる紙用嵩高剤(例えば、特許文献4参照)、直鎖状脂肪酸モノアミドを主成分として含有する紙用嵩高剤(例えば、特許文献5参照)が公知であるが、これらも紙厚向上効果は十分に満足できるレベルではなく、さらに紙が滑りやすくなる、併用するサイズ剤の種類によっては紙のサイズ効果を著しく低下させる、等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-252400号公報
【文献】特開2000-273792号公報
【文献】特開2005-60891号公報
【文献】特許第2971447号公報
【文献】特開2007-231485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、エピハロヒドリンを使用せず、サイズ剤のサイズ効果を阻害しない、紙厚向上効果と抄紙系内での発泡抑制効果に優れる紙用添加剤とそれを用いた紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリアルキレンポリアミン、特定の炭素数を有する一価脂肪酸、及び尿素類を反応させて得られる化合物と、特定の組成を有するアクリルアミド及び/又はメタアクリルアミド系ポリマーを含有する紙用添加剤が、パルプスラリー中に添加された場合に優れた紙厚向上効果を発揮することを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
<1>下記化合物(A)と下記(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)とを含み、化合物(A)と(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)の質量比が、(A):(B)=99~70:1~30であることを特徴とする紙用添加剤、
化合物(A):
1分子内に3~5個のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン(a-1)と、炭素数8~22の一価脂肪酸(a-2)と、尿素類(a-3)との反応物
(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B):
(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)疎水性モノマーと、(b-3)(メタ)アクリルアミドとを、(b-1):(b-2):(b-3)=3~20:5~15:65~92(モル%)の割合で含むモノマーの重合物
<2>(b-2)疎水性モノマーが、炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルであることを特徴とする前記<1>に記載の紙用添加剤、
<3>(b-1)アニオン性モノマーが、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記<1>に記載の紙用添加剤、
<4>紙厚向上剤であることを特徴とする、前記<1>~<3>のいずれか1項に記載の紙用添加剤、
<5>前記<1>~<4>いずれか1項に記載の紙用添加剤を含有することを特徴とする紙、
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エピハロヒドリンを使用しないにも関わらず、優れた紙厚向上効果とサイズ阻害抑制効果および抄紙系内の発泡抑制効果を有する紙用添加剤を提供することができ、紙製品を製造する際にパルプ原料の使用量を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の紙用添加剤は、化合物(A)と(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)とを含む。なお、本発明における「(メタ)アクリル」は、「アクリルまたはメタクリル」を意味する。
【0010】
化合物(A)は1分子内に3~5個のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン(a-1)と、炭素数8~22の一価脂肪酸(a-2)と、尿素類(a-3)との反応物である。
【0011】
1分子内に3~5個のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン(a-1)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン等が挙げられ、これらの中でも、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンが工業的に入手しやすく安価な点で好ましい。ポリアルキレンポリアミン(a-1)はその1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0012】
炭素数8~22の一価脂肪酸(a-2)としては、飽和であっても不飽和であってもよく、直鎖であっても分岐であってもよい。具体的には、炭素数8のオクタン酸(カプリル酸)、2-エチルヘキサン酸、炭素数10のデカン酸(カプリン酸)、炭素数12のドデカン酸(ラウリン酸)、炭素数14のテトラデカン酸(ミリスチン酸)、炭素数16のヘキサデカン酸(パルミチン酸)、炭素数18のオクタデカン酸(ステアリン酸)、16-メチルヘプタデカン酸(イソステアリン酸)、cis-9-オクタデセン酸(オレイン酸)、cis,cis-9,12-オクタデカジエン酸(リノール酸)、9,12,15-オクタデカントリエン酸((9,12,15)-リノレン酸)、6,9,12-オクタデカトリエン酸((6,9,12)-リノレン酸)、炭素数20のイコサン酸(アラキジン酸)、炭素数22のドコサン酸(ベヘン酸)やこれら脂肪酸のエステル化物又は酸ハロゲン化物が挙げられる。また、混合脂肪酸や硬化脂肪酸として牛脂脂肪酸、ヤシ脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、トール油脂肪酸およびそれらの硬化物などが挙げられる。これらの中でも、工業的に入手しやすく紙厚向上効果付与効果が高い点で炭素数12~22の一価脂肪酸が好ましい。より好ましくは炭素数12~20の飽和の一価脂肪酸である。一価脂肪酸(a-2)はその1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0013】
本発明における(a-3)成分の尿素類としては、尿素、チオ尿素、グアニル尿素、メチル尿素、ジメチル尿素等が挙げられ、これらの中でも、工業的に入手しやすく安価な面で尿素が好ましい。尿素類(a-3)は、その1種を単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0014】
ポリアルキレンポリアミン(a-1)のアミノ基1当量に対する一価脂肪酸(a-2)のカルボニル基は、0.40~0.65当量であることが好ましい。0.40当量未満であると、化合物(A)中の(a-2)由来の疎水部位が減るため所望の紙厚向上効果およびサイズ阻害抑制効果が得られない場合がある。また、0.65当量を超えると尿素類の反応部位が減少することで尿素類由来のウレイド基が少なくなり、パルプとの水素結合力が小さくなるため所望の紙厚向上効果およびサイズ阻害抑制効果が得られない場合がある。0.45~0.60当量であることがより好ましい。
ポリアルキレンポリアミン(a-1)のアミノ基1当量に対する尿素類(a-3)は、0.1~0.4当量であるのが好ましい。0.4当量を超えると、疎水部位が少なくなるため所望の紙厚向上効果およびサイズ阻害抑制効果が得られない場合がある。また、0.1当量未満であると尿素類由来のウレイド基が少なくなり、パルプとの水素結合力が小さくなるため所望の紙厚向上効果およびサイズ阻害抑制効果が得られない場合がある。0.2~0.4当量であるのがより好ましい。
【0015】
1分子内に3~5個のアミノ基を有するポリアルキレンポリアミン(a-1)と、炭素数8~22の一価脂肪酸(a-2)と、尿素類(a-3)との反応物である化合物(A)は、どのような方法で製造されても構わないが、例えば、ポリアルキレンポリアミン(a-1)と、一価脂肪酸(a-2)とを必要により公知のアミド化触媒を用いて100~200℃で0.5~10時間反応させた後に、尿素類(a-3)を100~200℃で0.5~5時間、副生するアンモニアを除去しながら反応させる方法などがあげられる。
【0016】
(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)(以下「ポリマー(B)」と称することがある)は、(b-1)アニオン性モノマーと、(b-2)疎水性モノマーと、(b-3)(メタ)アクリルアミドとを、(b-1):(b-2):(b-3)=3~20:5~15:65~92(モル%)の割合で含むモノマーの重合物である。
【0017】
本紙用添加剤は水を媒体とするエマルションであり、ポリマー(B)は、疎水性が強く単体では水に分散しにくい化合物(A)の乳化分散剤として機能すると考えられる。(b-1)アニオン性モノマーがポリマー(B)のポリマー鎖に導入されることにより、エマルション粒子間の静電反発によるエマルションの安定化に寄与し、さらに本紙用添加剤が抄紙系に添加された際にカチオン性物質である硫酸バンドや抄紙系内に存在する各種金属塩、歩留まり剤を介して本紙用添加剤がパルプ表面により効率的に定着し、紙厚向上効果、サイズ阻害抑制効果、発泡抑制効果を高めることができると考えられる。また、(b-2)疎水性モノマーがポリマー(B)のポリマー鎖に導入されることにより、例えば(メタ)アクリル酸エステル類のエステル残基であるアルキル基、シクロアルキル基等の疎水性基と化合物(A)との疎水-疎水相互作用による高い親和性によってポリマー(B)がより強固に化合物(A)の粒子表面に固着し、本紙用添加剤の分散性(製造時の異物生成の抑制)および貯蔵時の沈降抑制(貯蔵安定性)、機械的安定性、希釈安定性、紙厚向上効果、サイズ阻害抑制効果および発泡抑制効果などに寄与すると考えられる。
【0018】
(b-1)アニオン性モノマーは、カルボキシル基を有するモノマー、スルホン酸基を有するモノマー、およびこれらの塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。カルボキシル基を有するモノマー(以下カルボン酸系モノマーと表記)としては、一塩基性カルボン酸モノマーや、二塩基性カルボン酸モノマー等の多価カルボン酸モノマー及びその酸無水物が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸等を例示できる。スルホン酸基を有するモノマー(以下スルホン酸系モノマーと表記)として、具体的にはスチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アリルスルホン酸等のスルホン酸系モノマー及び/又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルの硫酸エステル等の硫酸エステル系モノマー等が挙げられる。カルボキシル基およびスルホン酸基の塩としてはナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩、アルキルアミン塩等を例示できる。
【0019】
(b-1)アニオン性モノマーは1種単独で、又は2種以上組み合わせて使用できるが、本発明において上記スルホン酸系モノマー類は上記カルボン酸系モノマーと比較し分散安定性に寄与する一方、エマルションである本紙用添加剤のパルプ表面への定着についてはカルボン酸系モノマーがスルホン酸系モノマーに比較し優れることから、上記スルホン酸系モノマー類は上記カルボン酸系モノマーの半量以下であることが好ましい。また、(b-1)アニオン性モノマーの使用量は、ポリマー(B)を構成するモノマーの総モル和の3~20モル%が好ましく、5~15モル%が更に好ましい。
【0020】
(b-1)アニオン性モノマーの使用量がポリマー(B)を構成する単量体の総モル和の3~20モル%の範囲にあるポリマー(B)で化合物(A)を水中に乳化分散させることで、安定性および性能に優れた紙用添加剤が得られる。(b-1)アニオン性モノマーの使用量が3モル%より少ない場合は、アニオン性不足に由来する粒子間の静電反発力の不足により化合物(A)を乳化分散させる能力がポリマー(B)に十分に付与されず、紙用添加剤製造時あるいは貯蔵時に分散粒子が凝集することによる異物の生成、分散粒子の沈降または紙用添加剤自身の増粘を引き起こし、紙厚向上効果の低下、製造器具、貯蔵容器、抄紙器具の汚れや送液時のポンプ負荷の増加の懸念がある。またアニオン性不足により、抄紙系に紙用添加剤が添加された際に粒子表面のポリマー(B)と硫酸バンド由来の(多価)金属との塩形成量が不足することとなり、紙用添加剤のパルプへの定着が低下し、十分な紙厚向上効果、サイズ阻害抑制効果および発泡抑制効果が得られない。
逆に(b-1)アニオン性モノマーの使用量が20モル%より多い場合は、紙用添加剤製造時あるいは貯蔵時に分散粒子が凝集することによる異物の生成、分散粒子の沈降または紙用添加剤自身の増粘を引き起こし、抄紙系内ではポリマー(B)と硫酸バンド等に由来する多価金属塩が過剰な塩を形成してしまい、本紙用添加剤の分散物に凝集等が起き、紙厚向上効果およびサイズ抑制阻害効果が低下する。
【0021】
(b-2)疎水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルマルオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル等の炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ベンジル等のその他(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、およびこれらの芳香環に炭素数1~4のアルキル基を有するスチレン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルおよびネオデカン酸ビニル等のカルボン酸の炭素数が1~20であるカルボン酸ビニルエステル類等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、工業的に入手しやすく安価な面で炭素数1~20のアルキル基またはシクロアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルが好ましい。
【0022】
(b-2)疎水性モノマーの使用量は、ポリマー(B)を構成する単量体の総モル和の5~15モル%が好ましく、7~10モル%がさらに好ましい。(b-2)疎水性モノマーの使用量が5~15モル%にあることで、乳化分散工程によりエマルションとして得られる紙用添加剤の分散性や沈降抑制効果、希釈安定性に優れたものとなる。さらに紙用添加剤として使用された際に紙厚向上効果、サイズ阻害抑制効果、発泡抑制効果に優れたものとなる。
【0023】
(b-3)(メタ)アクリルアミドとしては、アクリルアミド及び/又はメタアクリルアミドであり、使用量はポリマー(B)を構成するモノマーの総モル和の65~92モル%が好ましく、75~88モル%が更に好ましい。(b-3)アクリルアミド及び/またはメタクリルアミドの使用量が65~92モル%の範囲にあるポリマー(B)で化合物(A)を水中に分散させることで、分散性に優れた紙用添加剤が得られる。
【0024】
本願発明の効果を阻害しない限り、上記(b-1)~(b-3)の他に支障のない範囲でその他のモノマーをポリマー(B)の共重合成分に加えられる。その他のモノマーとしては、例えば、カチオン性モノマー、ノニオン性モノマー、架橋剤、連鎖移動剤がある。
【0025】
カチオン性モノマーとしては、具体的には、アミノアルキル(メタ)アクリレート、アミノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ビニルイミダゾール、ジアリルアミン等や更にはこれらの第4級アンモニウム塩、ノニオン性モノマーとしてヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの使用量は1種単独または少なくとも2種以上を(b-1)~(b-3)のモノマーの総モル和100モル%に対して多くても10モル%以下であることが好ましい。
【0026】
架橋剤としては、ラジカル重合性官能基を2つ以上有する多官能モノマーであれば特に限定されず、公知のものを使用することができ、具体的には、メチレンビスアクリルアミド等の多官能(メタ)アクリルアミド類、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヘキサエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、1,3,5-トリアクロイルヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン等の多官能(メタ)アクリレート類、ジビニルベンゼン等の芳香族ポリビニル化合物が挙げられる。これらは1種単独または少なくとも2種以上を(b-1)~(b-3)のモノマーの総モル和100モル%に対して多くても5モル%以下であることが好ましい。5モル%超の架橋剤を用いることにより、分岐(架橋)構造がポリマー(B)に過剰に導入されることで、本紙用添加剤の分散性や貯蔵安定性、機械的安定性、希釈安定性が損なわれることがある。
【0027】
連鎖移動剤としては、メルカプタン化合物が挙げられ、具体的には、2-メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプトグリコール、チオグリセリン、システアミン塩酸塩、メルカプトプロピオン酸及びその塩、チオグリコール酸及びその塩、チオ酢酸及びその塩、チオリンゴ酸、メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシルやメルカプトプロピオン酸n-オクチル等のメルカプトプロピオン酸エステル類、チオグリコール酸2-エチルヘキシルやチオグリコール酸n-オクチル等のチオグリコール酸エステル類、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン等のメルカプタン類が挙げられる。また、α―メチルスチレンの不飽和二量体である2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテンも連鎖移動剤として用いることができる。これらは1種単独または少なくとも2種以上を(b-1)~(b-3)のモノマーの総モル和100モル%に対して多くても5モル%以下であることが好ましい。5モル%を超えると、ポリマー(B)を含む本紙用添加剤の分散性や貯蔵安定性、機械的安定性、希釈安定性が損なわれることがある。
【0028】
ポリマー(B)の製造方法としては、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の各種公知の方法を採用でき、前記モノマーを共重合させることにより得られる。溶液重合による場合には、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルイソブチルケトン等の溶媒を使用できる。乳化重合方法で使用する乳化剤としては特に制限はされず各種アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、反応性界面活性剤を使用できる。また、前記重合で使用する重合開始剤としては特に限定はされず、過硫酸塩類、過酸化物、アゾ化合物、レドックス系開始剤などの各種のものを使用できる。また、pH調整剤として酸、アルカリおよび緩衝液を添加することができる。酸としては特に制限はされず、硫酸、塩酸、りん酸、硝酸などの無機酸や酢酸、乳酸、クエン酸などの有機酸、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウムなどの酸性の塩等の各種のものを使用できる。アルカリとしては特に制限はされず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、アルキルアミン、アルキロールアミン等の各種のものを使用できる。緩衝液としては特に制限はされず、りん酸緩衝液、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液等の各種のものを使用できる。酸、アルカリ、緩衝液は単独でも2種以上の組み合わせでも使用できる。
【0029】
本発明の紙用添加剤における化合物(A)とポリマー(B)の質量比は固形分として(A):(B)=99~70:1~30である必要があり、90~80:10~20が好ましい。本紙用添加剤におけるポリマー(B)の含有量が1質量%未満では乳化分散能力が十分でなく、貯蔵安定性、機械的安定性、希釈安定性にも劣る。また、30質量%を越えて使用すると紙用添加剤の粘度が増加し、ポンプ送液可能な粘度にするために製品固形分を下げねばならずコストアップにつながる。また化合物(A)の分散に寄与しない剰余のポリマー(B)が抄紙系内において発泡の増加を招く。
【0030】
本発明において、化合物(A)及びポリマー(B)から紙用添加剤を調製する方法は、特に限定されないが、例えば特公昭54-36242号公報に記載されているように、前記化合物(A)を予め油溶性の溶剤に溶かした溶液とポリマー(B)及び水を混合し、ホモジナイザー処理した後、溶剤を留去し、水中油型エマルションを製造するいわゆる溶剤法、特公昭53-32380号公報に記載されているように、溶融した化合物(A)を高温高圧下でポリマー(B)と水とを混合し、ホモジナイザーを通して水中油型エマルションを製造するいわゆるメカニカル法、特開昭52-77206号公報に記載されているように、溶融した化合物(A)成分にポリマー(B)と一部の水とを混合した後、さらに水を加えて油中水型エマルションを形成し、その後反転水を添加して水中油型エマルションに相転移させるいわゆる転相法が用いられる。また、特開平10-226981号公報に記載されているような高剪断型回転式乳化分散機を用いて水中油型エマルションを形成するメカニカル法も用いられる。
【0031】
本発明の紙用添加剤の固形分は好ましくは10質量%以上50質量%以下、さらに好ましくは15質量%以上35質量%以下である。固形分が50質量%を超える場合は経時的に増粘しやすく、貯蔵中に液面の固形分濃度が高まることで凝集物が生じやすく(皮張りやすく)なり、10質量%未満の場合は有効成分が少なくなるため経済的ではない。
【0032】
なお本発明における固形分とは、本紙用添加剤を150℃20分加熱乾燥した後の残存質量の加熱前の質量に対する百分率とする。
【0033】
本発明の紙用添加剤の粘度は、好ましくは100mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以下である。
【0034】
本発明の紙用添加剤の平均粒子径(重量基準粒径分布における累積50%径)は好ましくは0.3~1.0μmである。1.0μmを越える粒径の場合、保存中に粒子が沈降しやすく、また機械的安定性が劣る傾向がある。0.3μm以下の場合には粘度や皮張り量の増加等が見られる。本発明における平均粒子径は、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラックベル製)で測定したものである。
【0035】
これらの方法で本紙用添加剤を調製するにあたり、化合物(A)の乳化分散剤として用いられている(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)以外の各種界面活性剤、及びカゼイン、レシチン、ポリビニルアルコール、カチオン性、アニオン性あるいは両性などの各種変性澱粉などの保護コロイドを組み合わせて使用してもよい。
【0036】
前記「(メタ)アクリルアミド系ポリマー(B)以外の各種界面活性剤」(以下、単に界面活性剤と記載することがある)には、公知の界面活性剤を適宜使用することができる。例えば、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4~20である脂肪酸ソルビタンエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪酸アミド、及び各種ポリアルキレンオキサイド型ノニオン性界面活性剤等のノニオン性界面活性剤、アルキル基及び/又はアルケニル基の炭素数が4~20である長鎖アルキルアミン塩、ポリオキシアルキレンアミン、テトラアルキル4級アンモニウム塩、トリアルキルベンジル4級アンモニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルキノリウム塩、アルキルホスホニウム塩、及びアルキルスルホニウム塩等のカチオン性界面活性剤、並びに、各種ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤が挙げられる。
【0037】
前記界面活性剤は、その1種を単独で又は2種以上を使用することができる。界面活性剤を使用する場合、その使用量としては、化合物(A)100質量%に対し、0.1~20質量%であることが、発泡性を抑えつつ、分散性を高めるのに好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0038】
本発明の紙用添加剤は、本発明の効果を損なわず、かつ貯蔵時の安定性等に影響を与えない範囲内であれば、他に消泡剤や増粘剤、防腐剤、防錆剤、前記pH調整剤、充填剤、酸化防止剤、填料、染料等の各種添加剤を加えても構わない。
【0039】
本発明の紙用添加剤は、紙厚向上剤として用いることができる。紙あるいは板紙の種類や求められる紙厚向上効果にもよるが、通常はパルプスラリーの乾燥質量に対して、固形分で0.1~1.5質量%添加されることで、所望の紙厚向上効果を得ることができる。また、紙の表面処理剤として使用することも可能であり、この場合は予め抄造された湿紙又は紙に噴霧、浸漬、塗布等の慣用方法で適用される。
【0040】
本発明の紙用添加剤を含有する紙としては、特に制限されないが、各種の紙、及び板紙が挙げられる。紙の種類としては、PPC用紙、インクジェット印刷用紙、レーザープリンター用紙、フォーム用紙、熱転写紙、感熱記録原紙、感圧記録原紙等の記録用紙、印画紙及びその原紙、アート紙、キャストコート紙、上質コート紙等のコート原紙、クラフト紙、純白ロール紙等の包装用紙、ティシュペーパー、トイレットペーパー、タオルペーパー、キッチンペーパーなどの家庭用薄葉紙、その他ノート用紙、書籍用紙、各種印刷用紙、新聞用紙等の各種紙(洋紙)、マニラボール、白ボール、チップボール等の紙器用板紙、ライナー、中芯、石膏ボード原紙等の板紙が挙げられる。紙以外には改質木材、無機系建築材料が挙げられ、例えばパーティクルボード、ハードボード、インシュレーションボード、ロックウールボード等を挙げることができる。その中でも、紙厚向上効果により紙に厚さや柔軟性を付与できることから、印刷適性の向上や読み応えを向上させる各種印刷用紙や書籍用紙、耐折強度を向上させる紙器用板紙や板紙、良好な手触りを付与させる家庭用薄葉紙が好ましい。
【0041】
本発明の紙はパルプ原料としてクラフトパルプあるいはサルファイトパルプなどの晒あるいは未晒化学パルプ、砕木パルプ、機械パルプあるいはサーモメカニカルパルプなどの晒あるいは未晒高収率パルプ、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙あるいは脱墨古紙などの古紙パルプを含有することができる。また、上記パルプ原料とポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリオレフィン、及びポリビニルアルコール等の合成繊維との混合物を含有してもよい。
【0042】
本発明の紙を製造するにあたって、填料、サイズ剤、乾燥紙力向上剤、湿潤紙力向上剤、歩留り向上剤、及び濾水性向上剤など一般的に紙を製造するにあたって使用される添加物も、各々の紙種に要求される物性を発現するために、必要に応じて使用しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、これらを本発明の紙用添加剤と予め混合して紙料に添加して使用することもでき、混合の方法は特に制限はない。
【0043】
填料としては、クレー、タルク、ホワイトカーボン、酸化チタン及び炭酸カルシウム等が挙げられ、これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0044】
サイズ剤としては、ステアリン酸ナトリウムのような脂肪酸石鹸のサイズ剤、ロジン、強化ロジン及びロジンエステル系サイズ剤(以下、「ロジンサイズ剤」と称することがある)、アルケニル無水コハク酸の水性エマルション(以下、「ASAサイズ剤」と称することがある)、2-オキセタノンの水性エマルション(以下、「AKDサイズ剤」と称することがある)、パラフィンワックスの水性エマルション、カルボン酸と多価アミンとの反応により得られるカチオン性サイズ剤及び脂肪族オキシ酸と脂肪族アミン又は脂肪族アルコールとの反応物の水性エマルション、カチオン性スチレン系サイズ剤等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0045】
乾燥紙力向上剤としては、アニオン性ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉、及び両性澱粉等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を併用しても良い。
【0046】
湿潤紙力向上剤としては、ポリアミド・エピクロロヒドリン樹脂、ポリビニルアミン、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂、及び尿素・ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、アニオン性ポリアクリルアミドを併用しても良い。
【0047】
歩留り向上剤としては、アニオン性、カチオン性、又は両性の高分子量ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン、シリカゾルとカチオン化澱粉の併用、及びベントナイトとカチオン性高分子量ポリアクリルアミドの併用等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0048】
濾水性向上剤としては、ポリエチレンイミン、カチオン性又は両性又はアニオン性ポリアクリルアミド、ポリビニルアミン等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。
【0049】
また、サイズプレス、ゲートロールコーター、ビルブレードコーター、カレンダーなどで、澱粉、ポリビニルアルコール及びアクリルアミド系ポリマー等の表面紙力向上剤、染料、コーティングカラー、表面サイズ剤、並びに防滑剤などを必要に応じて塗布しても良い。これらは単独で用いても良く、二種以上を併用しても良い。また、硫酸バンドは本発明の紙用添加剤を添加する前、添加した後、あるいは同時に添加して使用しても良い。
【実施例】
【0050】
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、以下における部及び%は特記しない限りすべて質量基準である。
【0051】
(Aの合成)
合成例1
温度計、冷却管、撹拌機を有するセパラブルフラスコに、ポリアルキレンポリアミン(a-1)としてテトラエチレンペンタミン189.3g(1.0モル)、一価脂肪酸(a-2)としてステアリン酸さくら550.0g(日油製、ステアリン酸/パルミチン酸混合物、2.0モル、対アミン0.40当量)を添加し、170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら、170℃で9時間反応させた。その後、130℃まで冷却し、水20g、尿素96.2g(1.6モル、対アミン0.32当量)を添加して生成するアンモニアを除去しながら140℃5時間反応させた。固形分100%の化合物(A)M-1を772g得た。
【0052】
合成例2~9
表1に記載のように一価脂肪酸(a-2)であるステアリン酸さくらの量、尿素類(a-3)である尿素の量を変えた以外は合成例1と同様にして合成し、化合物(A)であるM-2~M-9を得た。
【0053】
比較合成例1
温度計、冷却管、撹拌機を有するセパラブルフラスコに、ポリアルキレンポリアミン(a-1)としてテトラエチレンペンタミン189.3g(1.0モル)、一価脂肪酸(a-2)としてステアリン酸さくら687.5g(日油製、ステアリン酸/パルミチン酸混合物、2.5モル、対アミン0.50当量)を添加し、170℃まで昇温し、生成する水を除去しながら170℃で9時間反応させ、尿素を反応させずに固形分100%の比較例用化合物(A)RM-1を831g得た。
【0054】
【0055】
(Bの合成)
合成例10
攪拌機、温度計および窒素ガス導入管を備えたフラスコに25℃撹拌下で窒素雰囲気下、イオン交換水210.2g、イソプロピルアルコール(IPA)322.1g、(b-1)アニオン性モノマーとしてイタコン酸(IA)10.8g(2モル%)およびスチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)8.5g(1モル%)、(b-2)疎水性モノマーとしてメタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)48.8g(7モル%)、(b-3)アクリルアミドおよび/またはメタアクリルアミドとして50%アクリルアミド(AAm)水溶液523.0g(90モル%)、連鎖移動剤としてノルマルドデシルメルカプタン(NDM)8.4g(1.0モル%)およびメルカプトエタノール(MET)3.2g(1.0モル%)、pH調整剤として25%水酸化ナトリウム水溶液13.3gを仕込み、60℃に昇温した後開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル3.4gを添加して重合反応を開始し、75℃で5時間反応させた。次いでイソプロピルアルコールを留去し、冷却後イオン交換水を260.1g加え、室温まで冷却することにより、固形分が35%であるポリマー(B)P-1を得た。
【0056】
合成例11~23および比較合成例2~5
表2に記載のように(b-1)アニオン性モノマーの種類と量、(b-2)疎水性モノマーの種類と量、(b-3)アクリルアミドおよび/またはメタアクリルアミドであるアクリルアミド(AAm)の量、連鎖移動剤の種類と量および架橋剤の種類と量を変えた以外は合成例10と同様にして合成し、固形分が35%のポリマー(B)であるP-2~P-14およびRP-1~RP-4を得た。
【0057】
【表2】
表2中の記号の説明
IA:イタコン酸
AA:アクリル酸
MAA:メタクリル酸
NaSS:スチレンスルホン酸ナトリウム
AMPS:2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
MMA:メタクリル酸メチル
EA:アクリル酸エチル
BMA:メタクリル酸n-ブチル
IBMA:メタクリル酸i-ブチル
CHMA:メタクリル酸シクロヘキシル
EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
LMA:メタクリル酸ラウリル
SA:アクリル酸ステアリル
St:スチレン
AAm:アクリルアミド
MPAO:メルカプトプロピオン酸2-エチルヘキシル
NDM:n-ドデシルメルカプタン
MET:メルカプトエタノール
MSD:2,4-ジフェニル-4-メチル-1-ペンテン
HEGDA:ヘキサエチレングリコールジアクリレート
【0058】
(紙用添加剤の製造)
製造例1
温度計、冷却管、撹拌機を有するセパラブルフラスコに、前記で得られた化合物(A)であるM-2を80.0g仕込み、撹拌下100℃まで昇温して加熱溶融した。溶融を確認後、ポリマー(B)であるP-1を57.1g(固形20.0g)、25%水酸化ナトリウム水溶液を1.6g添加し、次いで85℃のイオン交換水361.3gを滴下ロートで1時間かけて滴下して転相乳化を行った。滴下終了後冷却し、固形分が20%である紙用添加剤E-1を得た。
【0059】
製造例2~17、19~22および比較製造例1~7
表3に記載のように化合物(A)の種類と量、ポリマー(B)の種類と量を変えた以外は製造例1と同様にして製造し、紙用添加剤であるE-2~E-17、E-19~E-22およびRE-1~RE-7を得た。
【0060】
製造例18
温度計、冷却管、撹拌機を有するセパラブルフラスコに、前記で得られた化合物(A)であるM-5を85.0g仕込み、撹拌下100℃まで昇温して加熱溶融した。溶融を確認後、ポリマー(B)であるP-12を40.0g(固形14.0g)、界面活性剤としてニューコール2360(日本乳化剤製)を1.0g(固形分1.0g)、25%水酸化ナトリウム水溶液を1.6g添加し、次いで85℃のイオン交換水368.8gを滴下ロートで1時間かけて滴下して転相乳化を行った。滴下終了後、85℃のイオン交換水294.8gを添加して冷却し、固形分が20%である紙用添加剤E-18を得た。
【0061】
製造例1~22で得られた紙用添加剤E-1~E-22および比較製造例1~7で得られた比較例用の紙用添加剤RE-1~RE-7の固形分、粘度、pH、平均粒子径、製造時の異物の有無、沈降安定性評価結果を表3に示す。
粘度はブルックフィールド回転粘度計にて25℃で測定した値である。
平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置マイクロトラックMT3300EXII(マイクロトラックベル製)で測定した、体積の累積度数が50%となる粒子径(D50)である。平均粒子径が小さいほど分散性が良好であることを示す。
製造時の異物の有無は、製造後の紙用添加剤を150メッシュのろ布で濾過した際の濾過残渣を異物としてその有無で判定し、×:濾過残渣有、○:濾過残渣無とした。異物が生じない方が本紙用添加剤の分散性が良好であることを示す。
沈降安定性は製造後の紙用添加剤3gを遠心分離装置により相対遠心加速度125Gで10分遠心分離処理した後、液面から1g、底部から1g採取して150℃20分における固形分(%)をそれぞれ測定し、底部の固形分(%)-液面の固形分(%)から計算した固形分差(%)を基に判定した。固形分差の数値が小さいほど沈降しにくく本紙用添加剤の貯蔵安定性が良好であることを示す。固形分差が3.0%未満である場合は○、3.0%以上である場合を×とした。
【0062】
なお、比較例用の紙用添加剤RE-1、RE-3、RE-4、RE-6及びRE-7は製造時に分散不良による異物が多量に発生したため、固形分、粘度、pHの測定および沈降安定性試験を実施せず、比較例として評価していない。
【0063】
【0064】
(実施例1)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をフリーネス400mlに叩解し、パルプ濃度2.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを攪拌しながら、パルプの固形分質量当たり、前記の紙用添加剤E-1を0.4固形分質量%、硫酸バンドを1.5固形分質量%、カチオン化澱粉を0.5固形分質量%、ロジンサイズ剤としてCC1401(星光PMC製)を0.5固形分質量%、軽質炭酸カルシウムを16固形分質量%となるように添加して紙料を調製した。この紙料を使用して、角型シートマシンにて抄紙して、坪量80g/m2の手すき紙を得た。得られた手すき紙を23℃、相対湿度50%の条件下に24時間調湿したあと、密度、サイズ度、比容積、比容積向上度、発泡性試験を以下の方法により測定し、算出した。比容積向上度の値は紙厚向上効果の指標になる値であり、その値が高い程、紙厚向上効果が高い。比容積向上度とサイズ度の結果を表4に示す。
【0065】
サイズ度…JISP8122紙のステキヒトサイズ度試験方法
密度…JISP8118紙及び板紙-厚さ及び密度の試験方法
比容積…密度の逆数
比容積向上度…「(比容積)/(紙用添加剤無添加の場合の比容積※)×100-100」
※表4、5、6において、それぞれ参考例1、2、3の比容積
発泡性試験…上記実施例1の抄紙前の紙料と同じ紙料をpH7.5の水道水でパルプ濃度0.25%に希釈し、円筒形の容器に入れた。円筒形容器内のパルプスラリーの一部をポンプで循環して1mの高さから容器中に落下させることを10分間継続して行い、10分後の液面全体に対する泡で覆われた液面面積の割合から、下記基準により判定を行った。
×:泡で覆われた液面面積が全体の50%以上であり、発泡しやすい。
△:泡で覆われた液面面積が全体の10%以上50%未満であり、やや発泡する。
○:泡で覆われた液面面積が全体の10%未満であり、発泡が抑制されている。
発泡性に関しては〇~△が実用レベルである。
【0066】
(実施例2~22、比較例1~2)
表4に記載のように紙用添加剤の種類を変えた以外は実施例1と同様にして得た手すき紙について比容積向上度とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表4に示す。
【0067】
(参考例1)
実施例1において紙用添加剤を添加しない以外は実施例1と同様にして得た手すき紙について比容積向上度とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表4に示す。
【0068】
【0069】
(実施例23)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をフリーネス400mlに叩解し、パルプ濃度2.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを攪拌しながら、パルプの固形分質量当たり、前記の紙用添加剤E-1を0.4固形分質量%、硫酸バンドを0.5固形分質量%、カチオン化澱粉を0.5固形分質量%、AKDサイズ剤としてAD1614(星光PMC製)を0.08固形分質量%、軽質炭酸カルシウムを16固形分質量%となるように添加して紙料を調製した。この紙料を使用して、角型シートマシンにて抄紙して、坪量80g/m2の手すき紙を得た。得られた手すき紙を23℃、相対湿度50%の条件下に24時間調湿したあと、密度、サイズ度、比容積、比容積向上度を実施例1と同様の方法により測定して算出し、発泡性試験を実施した。比容積向上度、サイズ度および発泡性試験の結果を表5に示す。
【0070】
(実施例24~44、比較例3~4)
表5に記載のように紙用添加剤の種類を変えた以外は実施例23と同様にして得た手すき紙について比容積向上度とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表5に示す。
【0071】
(参考例2)
実施例23において紙用添加剤を添加しない以外は実施例23と同様にして得た手すき紙について比容積向上度とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表5に示す。
【0072】
【0073】
(実施例45)
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)をフリーネス400mlに叩解し、パルプ濃度2.5%のパルプスラリーを調製した。このパルプスラリーを攪拌しながら、パルプの固形分質量当たり、前記の紙用添加剤E-1を0.4固形分質量%、硫酸バンドを0.5固形分質量%、カチオン化澱粉を0.5固形分質量%、ASAサイズ剤としてカチオン化澱粉糊液により乳化したAS1530(星光PMC製)を0.1固形分質量%、軽質炭酸カルシウムを16固形分質量%となるように添加して紙料を調製した。この紙料を使用して、角型シートマシンにて抄紙して、坪量80g/m2の手すき紙を得た。得られた手すき紙を23℃、相対湿度50%の条件下に24時間調湿したあと、密度、サイズ度、比容積、比容積向上度を実施例1と同様の方法により測定し、発泡性試験を実施した。比容積向上度、サイズ度および発泡性試験の結果を表6に示す。
【0074】
(実施例46~66、比較例5~6)
表6に記載のように紙用添加剤の種類を変えた以外は実施例45と同様にして得た手すき紙について比容積向上度とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表6に示す。
【0075】
(参考例3)
実施例45において紙用添加剤を添加しない以外は実施例45と同様にして得た手すき紙について比容積向上度とサイズ度を測定し、発泡性試験を実施した。結果を表6に示す。
【0076】
【0077】
製造例1~22と比較製造例1の対比から、化合物(A):ポリマー(B)=99~70:1~30の範囲よりポリマー(B)が少量になると、化合物(A)が水中で十分に分散安定化されず、紙用添加剤製造時に凝集物が多量に生成することが確認できる。
【0078】
製造例1~22と比較製造例2、実施例1~22と比較例1、実施例23~44と比較例3、実施例45~66と比較例5のそれぞれの対比から、化合物(A):ポリマー(B)=99~70:1~30の範囲よりポリマー(B)が多量になると、乳化分散で余剰となったポリマー(B)が紙用分散剤の沈降安定性を悪化させ、抄紙系内の発泡を引き起こすことが確認できる。
【0079】
製造例1~22と比較製造例3の対比から、化合物(A)において尿素類(a-3)を使用しなかった場合、紙用添加剤製造時に凝集物が多量に生成することが確認できる。
【0080】
製造例1~22と比較製造例4の対比から、ポリマー(B)において(b-1)アニオン性モノマーが3~20モル%の範囲より少量である場合、ポリマー(B)のアニオン性が不足することにより化合物(A)が水中で十分に分散安定化されず、紙用添加剤製造時に凝集物が多量に生成することが確認できる。
【0081】
製造例1~22と比較製造例5、実施例1~22と比較例2、実施例23~44と比較例4、実施例45~66と比較例6のそれぞれの対比から、ポリマー(B)において(b-1)アニオン性モノマーが3~20モル%の範囲より多量である場合、ポリマー(B)のアニオン性が過剰となることにより紙用添加剤の沈降安定性を悪化させ、十分な紙厚向上効果が得られず、また発泡が増加することがわかる。
【0082】
製造例1~22と比較製造例6から、ポリマー(B)において(b-2)疎水性モノマーが5~15モル%の範囲より少量である場合、ポリマー(B)の疎水性が不足することにより紙用添加剤製造時に凝集物が多量に生成することが確認できる。
【0083】
製造例1~22と比較製造例7から、ポリマー(B)において(b-1)アニオン性モノマーが3~20モル%の範囲より多量であり、(b-2)疎水性モノマーが5~15モル%の範囲より多量である場合、紙用添加剤製造時に凝集物が多量に生成することが確認できる。