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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】車両用開閉体の制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/659 20150101AFI20240109BHJP
   B60J 7/057 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E05F15/659
B60J7/057 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020072785
(22)【出願日】2020-04-15
(65)【公開番号】P2021169718
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】別所 伸康
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-34831(JP,A)
【文献】特開2002-103979(JP,A)
【文献】米国特許第5633571(US,A)
【文献】特開2003-159945(JP,A)
【文献】特開2001-30762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 1/00- 1/20
B60J 5/00- 9/04
B60J 11/00-11/10
E05F 15/00-15/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体を駆動するモータと、を備え、前記開閉体が前記開口部を全開する全開位置及び前記開閉体が前記開口部を全閉する全閉位置の間の作動範囲内に前記モータの負荷が変動する変動位置を含む車両用開閉装置に適用され、
前記開閉体の作動範囲内に設定される原点位置を基準とする前記開閉体の位置を取得する取得部と、
前記原点位置を基準とする前記全閉位置、前記全開位置及び前記変動位置を記憶する記憶部と、
前記取得部が取得する前記開閉体の位置と前記記憶部に記憶される前記全閉位置及び前記全開位置とに基づいて前記モータを制御することにより、前記開閉体を前記全閉位置及び前記全開位置の間で開閉作動させる制御部と、
前記記憶部に記憶される前記変動位置を第1変動位置とし、前記第1変動位置が記憶された後の前記開閉体の開閉作動時に前記取得部が取得する前記変動位置を第2変動位置としたとき、
前記第1変動位置及び前記第2変動位置に位置ずれが生じている場合、当該位置ずれに基づいて、前記記憶部に記憶される前記全閉位置及び前記全開位置を補正する補正処理を実施する補正部と、を備える
車両用開閉体の制御装置。
【請求項2】
前記変動位置は、前記開閉体を開作動又は閉作動させるときに前記モータの負荷が変動し始める変動開始位置であり、前記第1変動位置を第1変動開始位置とし、前記第2変動位置を第2変動開始位置としたとき、
前記補正部は、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置に位置ずれが生じている場合、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置の差分に基づいて、前記補正処理を実施する
請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置。
【請求項3】
前記車両用開閉装置は、前記全閉位置及び前記全開位置の間の前記開閉体の作動範囲内に、前記変動位置を複数含むものであり、
前記記憶部は、複数の前記第1変動位置を記憶し、
前記補正部は、複数の前記第1変動位置と、複数の前記第2変動位置と、にそれぞれ位置ずれが生じている場合、当該位置ずれに基づいて、前記補正処理を実施する
請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置。
【請求項4】
前記変動位置は、前記開閉体を開作動又は閉作動させるときに、前記モータの負荷が変動し始める変動開始位置と、前記モータの負荷が変動し終わる変動終了位置と、を含み、
前記第1変動位置は、前記変動開始位置に対応する第1変動開始位置と、前記変動終了位置に対応する第1変動終了位置と、を含み、
前記第2変動位置は、前記変動開始位置に対応する第2変動開始位置と、前記変動終了位置に対応する第2変動終了位置と、を含み、
前記補正部は、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置に位置ずれが生じるとともに前記第1変動終了位置及び前記第2変動終了位置に位置ずれが生じている場合、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置の差分と前記第1変動終了位置及び前記第2変動終了位置の差分との平均値に基づいて、前記補正処理を実施する
請求項3に記載の車両用開閉体の制御装置。
【請求項5】
前記変動位置は、前記開閉体を開作動又は閉作動させるときに、前記モータの負荷が変動し始める複数の変動開始位置を含み、
前記第1変動位置は、複数の前記変動開始位置に対応する複数の第1変動開始位置を含み、
前記第2変動位置は、複数の前記変動開始位置に対応する複数の第2変動開始位置を含み、
前記補正部は、複数の前記第1変動開始位置と、複数の前記第2変動開始位置と、にそれぞれ位置ずれが生じている場合、当該位置ずれに基づいて、前記補正処理を実施する
請求項3に記載の車両用開閉体の制御装置。
【請求項6】
前記補正部は、複数の前記第1変動開始位置と、複数の前記第2変動開始位置と、にそれぞれ位置ずれが生じている場合、複数の前記第1変動開始位置と複数の前記第2変動開始位置とのそれぞれの差分の平均値に基づいて、前記補正処理を実施する
請求項5に記載の車両用開閉体の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記原点位置を基準とした前記全閉位置及び前記全開位置を前記記憶部に記憶させる初期化処理を実施する際に、前記第1変動位置を前記記憶部に記憶させる
請求項1~請求項6の何れか一項に記載の車両用開閉体の制御装置。
【請求項8】
前記補正部は、前記開閉体の閉作動時に、前記補正処理を実施しない
請求項1~請求項7の何れか一項に記載の車両用開閉体の制御装置。
【請求項9】
前記補正部は、車両が走行中の場合、前記補正処理を実施しない
請求項1~請求項8の何れか一項に記載の車両用開閉体の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、開口部が設けられるルーフを有する車体と、ルーフに搭載されるサンルーフ装置と、を備える車両が記載されている。サンルーフ装置は、開口部を開閉するスライドルーフと、スライドルーフを駆動するモータと、モータの回転量に応じたパルスを出力するパルス発生手段と、パルス発生手段が出力するパルスに基づいてモータを制御する制御部と、を有する。スライドルーフの移動範囲には、スライドルーフが機械的な接触により閉方向に移動不能となる閉側のロック位置と、スライドルーフが機械的な接触により開方向に移動不能となる開側のロック位置と、が含まれる。
【0003】
そして、制御部は、スライドルーフを閉作動させる場合には、閉側のロック位置よりも手前の全閉位置でスライドルーフを停止させ、スライドルーフを開作動させる場合には、開側のロック位置よりも手前の全開位置でスライドルーフを停止させる。詳しくは、制御部は、全閉位置及び全開位置に応じたパルス情報を記憶し、当該パルス情報とスライドルーフの開閉作動時に出力されるパルスをカウントした値とを比較することで、スライドルーフが全閉位置及び全開位置に到達したか否かを判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-290939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなサンルーフ装置では、経年変化などにより、制御部に記憶される全閉位置及び全開位置と実際の全閉位置及び全開位置とに乖離が生じる場合がある。この場合、制御部は、制御部が記憶する全閉位置及び全開位置に応じたパルス情報を補正することが好ましい。
【0006】
なお、こうした実情は、モータの回転量に応じたパルスに基づいて、開閉体を開閉作動させる車両用開閉体の制御装置においても概ね共通する。本発明の目的は、開閉体の開閉作動に必要な情報を補正できる車両用開閉体の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用開閉体の制御装置は、車両の開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体を駆動するモータと、を備え、前記開閉体が前記開口部を全開する全開位置及び前記開閉体が前記開口部を全閉する全閉位置の間の作動範囲内に前記モータの負荷が変動する変動位置を含む車両用開閉装置に適用され、前記開閉体の作動範囲内に設定される原点位置を基準とする前記開閉体の位置を取得する取得部と、前記原点位置を基準とする前記全閉位置、前記全開位置及び前記変動位置を記憶する記憶部と、前記取得部が取得する前記開閉体の位置と前記記憶部に記憶される前記全閉位置及び前記全開位置とに基づいて前記モータを制御することにより、前記開閉体を前記全閉位置及び前記全開位置の間で開閉作動させる制御部と、前記記憶部に記憶される前記変動位置を第1変動位置とし、前記第1変動位置が記憶された後の前記開閉体の開閉作動時に前記取得部が取得する前記変動位置を第2変動位置としたとき、前記第1変動位置及び前記第2変動位置に位置ずれが生じている場合、当該位置ずれに基づいて、前記記憶部に記憶される前記全閉位置及び前記全開位置を補正する補正処理を実施する補正部と、を備える。
【0008】
上記構成の制御装置が適用される車両用開閉装置において、開閉体を開閉作動させる場合、開閉体は、モータの負荷が変動する変動位置を通過する。そして、車両用開閉装置において、記憶部が記憶する第1変動位置と開閉体が開閉作動されるときに取得される第2変動位置との間に位置ずれが生じている場合には、記憶部が記憶する全閉位置及び全開位置と実際の全閉位置及び全開位置との間にも位置ずれが生じる。
【0009】
この点、制御装置は、第1変動位置と第2変動位置に位置ずれが生じている場合、両位置の位置ずれに基づいて補正処理を実施する。このため、制御装置は、開閉体を開閉作動させるときに、実際の全閉位置及び全開位置と乖離した位置に開閉体を停止することを抑制できる。こうして、制御装置は、開閉体の開閉作動に必要な情報を補正できる。
【0010】
上記車両用開閉体の制御装置において、前記変動位置は、前記開閉体を開作動又は閉作動させるときに前記モータの負荷が変動し始める変動開始位置であり、前記第1変動位置を第1変動開始位置とし、前記第2変動位置を第2変動開始位置としたとき、前記補正部は、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置に位置ずれが生じている場合、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置の差分に基づいて、前記補正処理を実施することが好ましい。
【0011】
モータの負荷が変動し始める変動開始位置は、モータの負荷が変動し終わる変動終了位置よりも明確になりやすい。このため、車両用開閉体の制御装置は、第1変動開始位置及び第2変動開始位置に位置ずれが生じているか否かを精度良く判別できる。また、車両用開閉体の制御装置は、第1変動開始位置及び第2変動開始位置の差分に基づき、補正処理を精度良く実施できる。
【0012】
上記車両用開閉体の制御装置において、前記車両用開閉装置は、前記全閉位置及び前記全開位置の間の前記開閉体の作動範囲内に、前記変動位置を複数含むものであり、前記記憶部は、複数の前記第1変動位置を記憶し、前記補正部は、複数の前記第1変動位置と、複数の前記第2変動位置と、にそれぞれ位置ずれが生じている場合、当該位置ずれに基づいて、前記補正処理を実施することが好ましい。
【0013】
上記構成の制御装置は、複数の第1変動位置及び複数の第2変動位置のそれぞれの位置ずれに基づいて補正処理を実施するため、補正処理を精度良く実施できる。
上記車両用開閉体の制御装置において、前記変動位置は、前記開閉体を開作動又は閉作動させるときに、前記モータの負荷が変動し始める変動開始位置と、前記モータの負荷が変動し終わる変動終了位置と、を含み、前記第1変動位置は、前記変動開始位置に対応する第1変動開始位置と、前記変動終了位置に対応する第1変動終了位置と、を含み、前記第2変動位置は、前記変動開始位置に対応する第2変動開始位置と、前記変動終了位置に対応する第2変動終了位置と、を含み、前記補正部は、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置に位置ずれが生じるとともに前記第1変動終了位置及び前記第2変動終了位置に位置ずれが生じている場合、前記第1変動開始位置及び前記第2変動開始位置の差分と前記第1変動終了位置及び前記第2変動終了位置の差分との平均値に基づいて、前記補正処理を実施することが好ましい。
【0014】
上記構成の車両用開閉体の制御装置は、第1変動開始位置及び第2変動開始位置の差分と第1変動終了位置及び第2変動終了位置の差分との平均値に基づいて、補正処理を実施する点で、補正処理をより精度良く実施できる。
【0015】
上記車両用開閉体の制御装置において、前記変動位置は、前記開閉体を開作動又は閉作動させるときに、前記モータの負荷が変動し始める複数の変動開始位置を含み、前記第1変動位置は、複数の前記変動開始位置に対応する複数の第1変動開始位置を含み、前記第2変動位置は、複数の前記変動開始位置に対応する複数の第2変動開始位置を含み、前記補正部は、複数の前記第1変動開始位置と、複数の前記第2変動開始位置と、にそれぞれ位置ずれが生じている場合、当該位置ずれに基づいて、前記補正処理を実施することが好ましい。
【0016】
上記構成の車両用開閉体の制御装置は、複数の前記第1変動開始位置と複数の前記第2変動開始位置とのそれぞれの位置ずれに基づいて、補正処理を実施するため、精度良く補正処理を実施できる。
【0017】
上記車両用開閉体の制御装置において、前記補正部は、複数の前記第1変動開始位置と、複数の前記第2変動開始位置と、にそれぞれ位置ずれが生じている場合、複数の前記第1変動開始位置と複数の前記第2変動開始位置とのそれぞれの差分の平均値に基づいて、前記補正処理を実施することが好ましい。
【0018】
上記構成の車両用開閉体の制御装置は、複数の前記第1変動開始位置と複数の前記第2変動開始位置とのそれぞれの位置ずれを、差分の平均値として、容易に算出できる。
上記車両用開閉体の制御装置において、前記制御部は、前記原点位置を基準とした前記全閉位置及び前記全開位置を前記記憶部に記憶させる初期化処理を実施する際に、前記第1変動位置を前記記憶部に記憶させることが好ましい。
【0019】
上記構成の制御装置は、例えば、車両用開閉装置の出荷時において、初期化処理を実施することで、正確な変動位置を記憶部に記憶させることができる。この場合、制御装置は、精度良く補正処理を実施できる。
【0020】
上記車両用開閉体の制御装置において、前記補正部は、前記開閉体の閉作動時に、前記補正処理を実施しないことが好ましい。
開閉体が閉作動する場合には異物などの挟み込みなど、実際の変動位置とは異なる位置でモータの負荷が変動するおそれがある。つまり、第2変動位置の取得精度が低下するおそれがある。この点、上記構成の制御装置は、開閉体の閉作動時に補正処理を実施しないため、誤って補正処理を実施することを抑制できる。
【0021】
上記車両用開閉体の制御装置において、前記補正部は、車両が走行中の場合、前記補正処理を実施しないことが好ましい。
車両の走行中に開閉体が開閉作動する場合には、開閉体に振動及び走行風等が作用することによって、実際の変動位置とは異なる位置でモータの負荷が変動するおそれがある。この点、上記構成の制御装置は、車両が走行中の場合に補正処理を実施しないため、誤って補正処理を実施することを抑制できる。
【発明の効果】
【0022】
車両用開閉体の制御装置は、開閉体の開閉作動に必要な情報を補正できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1実施形態に係るサンルーフ装置を備える車両の平面図。
図2】第1実施形態において、可動パネルが全閉位置に配置されるときのサンルーフ装置の側面図。
図3】第1実施形態において、可動パネルがチルトアップ位置に配置されるときのサンルーフ装置の側面図。
図4】第1実施形態において、可動パネルが全開位置に配置されるときのサンルーフ装置の側面図。
図5】第1実施形態の可動パネルの作動範囲を示す模式図。
図6】第1実施形態において、可動パネルの開作動時のモータの負荷の変動の一例を示すグラフ。
図7】第1実施形態において、可動パネルの開作動時に制御装置が実施する処理の流れを説明するフローチャート。
図8】第1実施形態において、補正処理を実施するために制御装置が実施する処理の流れを説明するフローチャート。
図9】第1実施形態において、可動パネルの開作動時のモータの負荷の変動の一例を示すグラフ。
図10】第2実施形態において、可動パネルの開作動時のモータの負荷の変動の一例を示すグラフ。
図11】第2実施形態において、補正処理を実施するために制御装置が実施する処理の流れを説明するフローチャート。
図12】第2実施形態において、可動パネルの開作動時のモータの負荷の変動の一例を示すグラフ。
図13】変更例において、可動パネルの開作動時のモータの負荷の変動の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る車両用開閉体の制御装置を備える車両について図面を参照しつつ説明する。以降の説明では、車両の幅方向に延びる軸線をX軸で図示し、車両の前後方向に延びる軸線をY軸で示し、車両の上下方向に延びる軸線をZ軸で示す。
【0025】
図1に示すように、車両10は、ルーフ21にルーフ開口部22が設けられる車体20と、ルーフ開口部22を区画するベースフレーム30と、ルーフ21に搭載されるサンルーフ装置40と、サンルーフ装置40を作動させる際に操作される操作スイッチSWと、サンルーフ装置40を制御する制御装置100と、を備える。
【0026】
ルーフ開口部22は、上方からの平面視において、幅方向を長手方向とし前後方向を短手方向とする略矩形状をなしている。ルーフ開口部22は、「車両の開口部」の一例に相当する。ベースフレーム30は、前後方向に延びる一対のガイドレール31と、幅方向に延びるフロントハウジング32と、フロントハウジング32よりも後方で幅方向に延びるセンターフレーム33と、を有する。フロントハウジング32は、一対のガイドレール31の前端部同士を接続し、センターフレーム33は、一対のガイドレール31の前後方向における中間部同士を接続する。こうして、一対のガイドレール31、フロントハウジング32及びセンターフレーム33は、ルーフ開口部22を区画する。
【0027】
次に、サンルーフ装置40について説明する。
図1及び図2に示すように、サンルーフ装置40は、ルーフ開口部22を開閉する可動パネル50と、可動パネル50を駆動する駆動装置60と、を備える。第1実施形態において、サンルーフ装置40は、「車両用開閉装置」の一例に相当する。
【0028】
図1に示すように、可動パネル50は、上方からの平面視において、ルーフ開口部22よりも一回り大きな矩形板状をなしている。可動パネル50は、例えば、透光性を有するガラスパネルである。第1実施形態において、可動パネル50は、「開閉体」の一例に相当する。
【0029】
図1及び図2に示すように、駆動装置60は、可動パネル50を支持する支持ブラケット61と、支持ブラケット61の前端部を支持するフロントリンク62と、フロントリンク62よりも後方で支持ブラケット61を支持するリアリンク63と、を備える。また、駆動装置は、ガイドレール31に沿って移動することでフロントリンク62及びリアリンク63を駆動する駆動シュー64と、可動パネル50の駆動源となるモータ65と、モータ65の動力を駆動シュー64に伝達するプッシュプルケーブル66と、を備える。また、駆動装置60は、駆動シュー64の前方への移動限界を規定するフロントブロック67と、駆動シュー64の後方への移動限界を規定するリアブロック68と、モータ65の回転角に応じた信号を出力する回転角センサSEと、を有する。図1に示すように、駆動装置60の構成要素のうち、モータ65を除く構成要素は、幅方向に対をなす構成部材である。
【0030】
続いて、サンルーフ装置40の動作について説明する。
図1及び図2に示すように、駆動シュー64がガイドレール31の前端付近に位置する状態では、支持ブラケット61の長手方向がガイドレール31の長手方向と略一致する。図2に示す状態では、支持ブラケット61に支持される可動パネル50が、ルーフ開口部22を全閉する「全閉位置Pc」に配置される。可動パネル50が全閉位置Pcに配置される場合、駆動シュー64は、フロントブロック67に最接近するが、フロントブロック67には接触しない。
【0031】
図1及び図3に示すように、可動パネル50が全閉位置Pcに配置される状況下において、モータ65に駆動されるプッシュプルケーブル66が駆動シュー64を後方に押すと、リアリンク63が起き上がる。つまり、支持ブラケット61の後端部が上昇し、可動パネル50は後端部が上昇した「チルトアップ位置Pt」に配置される。
【0032】
図1及び図4に示すように、可動パネル50がチルトアップ位置Ptに配置される状況下において、モータ65に駆動されるプッシュプルケーブル66が駆動シュー64を後方に押すと、フロントリンク62及びリアリンク63が後方に移動する。つまり、フロントリンク62及びリアリンク63に支持される支持ブラケット61が後方に移動し、可動パネル50は前端部に対して後端部が上昇した状態で後方に移動する。その結果、可動パネル50は、ルーフ開口部22を全開する「全開位置Po」に配置される。可動パネル50が全開位置Poに配置される場合、駆動シュー64は、リアブロック68に最接近するが、リアブロック68には接触しない。
【0033】
一方、可動パネル50が全開位置Poに配置される状況下において、モータ65に駆動されるプッシュプルケーブル66が駆動シュー64を前方に引くと、フロントリンク62及びリアリンク63が前方に移動する。つまり、フロントリンク62及びリアリンク63に支持される支持ブラケット61が前方に移動し、可動パネル50はチルトアップ位置Ptに配置される。さらに、可動パネル50がチルトアップ位置Ptに配置される状況下において、モータ65に駆動されるプッシュプルケーブル66が駆動シュー64を前方に引くと、リアリンク63が前傾する。つまり、支持ブラケット61の後端部が下降し、可動パネル50は全閉位置Pcに配置される。
【0034】
こうして、第1実施形態では、フロントブロック67及びリアブロック68に接触しない範囲で、駆動シュー64がガイドレール31に沿って移動することにより、可動パネル50が全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt及び全開位置Poの間で作動する。仮に、可動パネル50が全開位置Poを通過しても開作動し続ける場合には、駆動シュー64とリアブロック68との接触により、可動パネル50が停止される。一方、可動パネル50が全閉位置Pcを通過しても閉作動し続ける場合には、駆動シュー64とフロントブロック67との接触により、可動パネル50が停止される。このように、フロントブロック67及びリアブロック68は、可動パネル50が何らかの理由により全閉位置Pc及び全開位置Poの間の通常の作動範囲外で作動しようとしたときの機械的なストッパとして機能する。
【0035】
また、サンルーフ装置40において、可動パネル50がチルトアップ位置Ptの付近で作動する場合には、駆動シュー64の摺動抵抗が変動することがある。以降の説明では、駆動シュー64の摺動抵抗が変動するときの可動パネル50の位置、言い換えれば、モータ65の負荷が変動するときの可動パネル50の位置を「変動位置Px」という。さらに、可動パネル50の変動位置Pxを含む作動範囲を「変動範囲Rx」という。第1実施形態では、変動範囲Rxは、チルトアップ位置Ptを含む作動範囲である。変動位置Pxは、サンルーフ装置40の構造的に自然に生じるものであるが、後述する制御のために意図的に生じるようにサンルーフ装置40を設計してもよい。
【0036】
なお、モータ65を一定の回転速度VMで回転させているときに、モータ65の負荷が大きくなると、モータ65の回転速度VMが低下する。第1実施形態では、モータ65の回転速度VMの低下をモータ65の負荷の増大とする。
【0037】
図1に示すように、操作スイッチSWは、ユーザに操作されるスイッチであり、運転席の周囲又はルーフ開口部22の周囲に設置される。操作スイッチSWは、可動パネル50を全開位置Poまでオート作動させるスイッチ、可動パネル50を全閉位置Pcまでオート作動させるスイッチ及び可動パネル50をチルトアップ位置Ptまでオート作動させるスイッチを有する。操作スイッチSWは、操作されるスイッチに応じて、可動パネル50を全開位置Poまで開作動させるための開作動指令信号、可動パネル50を全閉位置Pcまで閉作動させるための閉作動指令信号及び可動パネル50をチルトアップ位置Ptまでチルト作動させるためのチルト作動指令信号を制御装置100に出力する。ここで、オート作動とは、ユーザが操作スイッチSWを操作し続けなくても、可動パネル50が目的の位置まで作動し続ける作動モードのことをいう。
【0038】
次に、制御装置100について説明する。
図1に示すように、制御装置100は、可動パネル50の位置を取得する取得部101と、可動パネル50を開閉作動させるために必要な位置情報を記憶する記憶部102と、モータ65を制御することにより可動パネル50を開閉作動させる制御部103と、記憶部102の位置情報にずれが生じた場合に補正処理を実施する補正部104と、を有する。
【0039】
取得部101は、回転角センサSEに接続される。取得部101には、回転角センサSEから、モータ65の所定の回転角毎にパルスが入力される。取得部101は、可動パネル50の開閉作動に伴って増減するパルスカウント値を可動パネル50の位置として取得する。
【0040】
詳しくは、取得部101は、可動パネル50の作動範囲内に設定される原点位置Porgにおけるパルスカウント値を「0」とする。取得部101は、可動パネル50が開作動する場合には、回転角センサSEからパルスが入力される度にパルスカウント値を「1」だけ加算し、可動パネル50が閉作動する場合には、回転角センサSEからパルスが入力される度にパルスカウント値を「1」だけ減算する。こうして、取得部101は、原点位置Porgを基準とした可動パネル50の位置を取得する。
【0041】
第1実施形態では、駆動シュー64がフロントブロック67に接触するときの可動パネル50の位置を原点位置Porgとする。このため、可動パネル50が全閉位置Pc及び全開位置Poの間で開閉作動する状況下において、パルスカウント値は常に正の値となる。なお、全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt、全開位置Po及びその他の位置の何れかの位置を原点位置Porgとして設定することも可能である。
【0042】
記憶部102は、可動パネル50の現在位置と、原点位置Porgを基準とする全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt、全開位置Po及び変動位置Pxと、変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMと、を記憶する。つまり、記憶部102は、現在位置、全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt及び全開位置Poに対応するパルスカウント値を記憶する。また、記憶部102は、変動位置Pxに対応するパルスカウント値と、変動範囲Rxにおけるパルスカウント値毎のモータ65の回転速度VMを示す値と、を記憶する。記憶部102は、車両10のイグニッション電源のオンオフ状況に関わらず、情報を保持し続ける。
【0043】
制御部103は、車両10の出荷時などに、全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt、全開位置Po及び変動位置Pxと、変動範囲Rx内のモータ65の負荷と、を記憶部102に記憶させる初期化処理を実施する。図5に示すように、制御部103は、初期化処理において、駆動シュー64がフロントブロック67に接触するまで、可動パネル50を閉方向に作動させる。制御部103は、例えば、モータ65の負荷の増大に基づいて、駆動シュー64がフロントブロック67に接触したか否かを判断すればよい。駆動シュー64がフロントブロック67に接触すると、制御部103は、可動パネル50を停止させるとともに、可動パネル50の停止位置を原点位置Porgとして記憶部102に記憶させる。原点位置Porgから全閉位置Pcまでの距離、原点位置Porgからチルトアップ位置Ptまでの距離及び原点位置Porgから全開位置Poまでの距離は、サンルーフ装置40の仕様から求まる数値である。このため、原点位置Porgが確定した時点で、全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt及び全開位置Poが確定する。
【0044】
続いて、制御部103は、可動パネル50を原点位置Porgから、全閉位置Pc及びチルトアップ位置Ptを経由して全開位置Poまで開作動させる。ここで、可動パネル50が、モータ65の負荷が変動しやすいときの可動パネル50の作動範囲である変動範囲Rxを開作動するとき、制御部103は、パルスカウント値と対応付けてモータ65の回転速度VMを記憶部102に記憶させる。なお、変動範囲Rxは、チルトアップ位置Ptを含む点で、チルト作動範囲Rt及びスライド作動範囲Rsに跨る範囲である。
【0045】
図6は、初期化処理において、可動パネル50が開作動するとき、詳しくは、可動パネル50がチルトアップ作動及びスライド開作動するときの可動パネル50の位置とモータ65の回転速度VMとの関係を示すグラフである。図6に示すように、第1実施形態では、可動パネル50が開作動するときに、一度だけモータ65の回転速度VMが一時的に低下する場合を想定している。また、図6では、説明理解の容易のために、モータ65の回転速度VMの変動を顕著なものとして図示している。
【0046】
制御部103は、初期化処理において、可動パネル50の作動範囲のうち、太線で示す変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMの変化を記憶部102に記憶させる。制御部103は、変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMの変化を記憶部102に記憶させた後、モータ65の回転速度VMが減少し始める変動位置Pxを記憶部102に記憶させる。以降の説明では、この位置を第1変動開始位置PxA1という。第1変動開始位置PxA1は、「第1変動位置」の一例である。
【0047】
可動パネル50が全閉位置Pcに到達すると、制御部103は、可動パネル50を全開位置Poからチルトアップ位置Ptを経由して全閉位置Pcまで閉作動させる。なお、制御部103は、初期化処理において、モータ65の回転速度VMが意図せず変動する場合など、初期化処理が正常に完了できなかったと判断できる場合には、初期化処理を再度実施することが好ましい。
【0048】
初期化処理が完了すると、制御部103は、取得部101が取得する可動パネル50の位置と記憶部102に記憶される位置情報とに基づいてモータ65を制御することにより、可動パネル50を開閉作動させることが可能となる。詳しくは、制御部103は、操作スイッチSWから開作動指令信号が入力された場合、記憶部102に記憶される全開位置Poに基づき可動パネル50を開作動させる。また、制御部103は、操作スイッチSWから閉作動指令信号が入力された場合、記憶部102に記憶される全閉位置Pcに基づき可動パネル50を閉作動させる。また、制御部103は、操作スイッチSWからチルトアップ指令信号が入力された場合、記憶部102に記憶されるチルトアップ位置Ptに基づき可動パネル50をチルト作動させる。一例として、可動パネル50を全閉位置Pcから全開位置Poまで開作動させる場合、可動パネル50が全開位置Poに近付くにつれて、可動パネル50の現在位置を示すパルスカウント値が増大する。制御部103は、可動パネル50の現在位置を示すパルスカウント値が記憶部102に記憶される全閉位置Pcに対応するパルスカウント値となったとき、可動パネル50の開作動を終了させる。
【0049】
また、制御部103は、可動パネル50を開作動させる状況下において、可動パネル50が変動範囲Rx内を作動する場合、可動パネル50の位置に対するモータ65の回転速度VMを監視する。そして、制御部103は、モータ65の回転速度VMが減少し始める位置を算出する。以降の説明では、この位置を第2変動開始位置PxA2という。第2変動開始位置PxA2は、「第2変動位置」の一例である。
【0050】
第2変動開始位置PxA2は、第1変動開始位置PxA1と対応する位置である。第1変動開始位置PxA1は、初期化処理が実施されない限り変化しない基準となる変動位置Pxである一方、第2変動開始位置PxA2は、後述する各種の理由によりずれが生じ得る変動位置Pxである。つまり、第2変動開始位置PxA2は、第1変動開始位置PxA1との比較対象となる変動位置Pxである。第2変動開始位置PxA2は、初期化処理の実施後に取得される変動位置Pxである点で、記憶部102に第1変動開始位置PxA1が記憶された後の可動パネル50の開作動時に取得部101が取得する変動位置Pxであるといえる。
【0051】
また、制御部103は、開閉作動中の可動パネル50が異物に接触する場合、可動パネル50の開閉作動を中断したり可動パネル50の作動方向を逆方向としたりする挟み込み判定処理を実施することが好ましい。制御部103は、例えば、モータ65の回転速度VMの減少に基づいて、可動パネル50が異物に接触したか否かを判定すればよい。
【0052】
ユーザが車両10の利用を継続していると、サンルーフ装置40が経年劣化したとき、回転角センサSEがモータ65の回転角に応じたパルス信号を正確に出力できなかったとき及びサンルーフ装置40の分解修理後に初期化処理が実施されなかったときに、変動位置Pxにずれが生じることがある。詳しくは、第1変動開始位置PxA1に対して、第2変動開始位置PxA2が位置ずれすることがある。
【0053】
そこで、補正部104は、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2に位置ずれが生じている場合には、原点位置Porgを補正する補正処理を実施する。詳しくは、補正部104は、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2の差分ΔPに基づいて、原点位置Porgを補正する補正処理を実施する。
【0054】
例えば、第2変動開始位置PxA2が第1変動開始位置PxA1に対して開方向に10パルス分だけずれている場合、補正部104は、記憶部102に記憶される原点位置Porgを10パルス分だけ閉方向にずれるように補正する。同様に、第2変動開始位置PxA2が第1変動開始位置PxA1に対して可動パネル50の閉方向に10パルス分だけずれている場合、補正部104は、原点位置Porgを10パルス分だけ開方向にずれるように補正する。
【0055】
このように、原点位置Porgを補正すると、補正前後において、原点位置Porgがずれることにより、記憶部102に記憶される全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt及び全開位置Poがずれる。こうして、補正部104は、補正処理において、記憶部102に記憶される全閉位置Pc、全開位置Po及びチルトアップ位置Ptを補正する。
【0056】
第1実施形態では、初期化処理において、記憶部102に第1変動開始位置PxA1が記憶され、可動パネル50の開作動時に制御部103が第2変動開始位置PxA2を算出する。このため、補正部104は、可動パネル50の開作動後に、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2の差分ΔPに基づいて、補正処理を実施する。
【0057】
ただし、補正部104は、正常に補正処理を実施できない可能性がある場合、補正処理を実施しない。この場合には、制御部103による可動パネル50の開閉作動が許容される一方で、補正部104による補正処理が制限される。以下、補正部104が補正処理の実施を制限する場合について説明する。
【0058】
可動パネル50の閉作動時には、可動パネル50の開作動時に比較して、異物の挟み込みが起きやすい。つまり、可動パネル50の開作動時には、異物の挟み込みによって、モータ65の回転速度VMが変動するおそれがある。このため、補正部104は、可動パネル50の閉作動時には補正処理を実施しない。
【0059】
車両10が走行中、特に、車両10が高速走行中には、サンルーフ装置40に振動が作用したり、走行速度に応じた負圧が可動パネル50に作用したりする。つまり、車両10の走行中には、可動パネル50の開閉作動時にモータ65の回転速度VMが変動するおそれがある。このため、補正部104は、車体速度VBが速度判定値Vth以上の場合には補正処理を実施しない。速度判定値Vthは、車体20が停止中であるか走行中であるかを判定するための判定値としてもよいし、車体20が停止中及び低速走行中であるか高速走行中であるかを判定するための判定値としてもよい。
【0060】
内燃機関を備える車両10における内燃機関の始動時及びパワースライドドアを備える車両10におけるスライドドアの開閉作動時などには、バッテリ電圧EBが一時的に低下しやすい。この場合に、可動パネル50を開閉作動させると、モータ65の回転速度VMが低下したり不安定になったりしやすい。このため、補正部104は、バッテリ電圧EBが所定の電圧判定値Eth未満の場合には補正処理を実施しない。
【0061】
以下、図7に示すフローチャートを参照して、可動パネル50を開作動させるために制御装置100が実施する処理の流れについて説明する。なお、図7では図示を省略したが、可動パネル50の開作動時にも挟み込み判定処理を実施することが好ましい。
【0062】
図7に示すように、制御装置100は、開作動指令信号が入力されると、可動パネル50の開作動を開始する(S11)。続いて、制御装置100は、車体速度VBが速度判定値Vth以上か否かを判定する(S12)。車体速度VBが速度判定値Vth未満の場合(S12:NO)、例えば、車両10が停止中の場合、制御装置100は、バッテリ電圧EBが電圧判定値Eth以上か否かを判定する(S13)。バッテリ電圧EBが電圧判定値Eth以上の場合(S13:YES)、制御装置100は、補正フラグをオンにする(S14)。ここで、補正フラグは、図7に示すフローチャートの開始時にオフにされるフラグであり、補正処理を実施するか否かを判定するためのフラグである。
【0063】
続いて、制御装置100は、可動パネル50の開作動に伴い増大するパルスカウント値に基づいて、可動パネル50が変動範囲Rx内で作動しているかを判定する(S15)。可動パネル50が変動範囲Rx内で作動していない場合(S15:NO)、制御装置100は、その処理を後のステップS17に移行する。一方、可動パネル50が変動範囲Rx内で作動している場合(S15:YES)、制御装置100は、モータ65の負荷としてのモータ65の回転速度VMを取得する(S16)。
【0064】
その後、制御装置100は、パルスカウント値に基づき、可動パネル50が全開位置Poに到達したか否かを判定する(S17)。可動パネル50が全開位置Poに到達していない場合(S17:NO)、制御装置100は、その処理を先のステップS15に移行する。一方、可動パネル50が全開位置Poに到達している場合、制御装置100は、可動パネル50の開作動を終了し(S18)、本処理を終了する。
【0065】
一方、先のステップS12において、車体速度VBが速度判定値Vth以上の場合(S12:YES)、制御装置100は、その処理をステップS15に移行する。また、先のステップS13において、バッテリ電圧EBが電圧判定値Eth未満の場合(S13:NO)、制御装置100は、その処理をステップS15に移行する。つまり、これらの場合には、補正フラグがオフのままとなる。また、補正フラグがオフのままステップS15の処理を行う場合、制御装置100は、ステップS16の処理を行わなくてもよい。
【0066】
次に、図8に示すフローチャートを参照して、補正処理を実施するために制御装置100が実行する処理の流れについて説明する。
図8に示すように、制御装置100は、補正フラグがオンか否かを判定する(S21)。補正フラグがオフの場合(S21:NO)、すなわち、直近の可動パネル50の開作動時に取得した変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMに基づいて補正処理を実施することが妥当でない場合、制御装置100は、本処理を終了する。この場合、制御装置100は、補正処理を実施しない。
【0067】
一方、補正フラグがオンの場合(S21:YES)、制御装置100は、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2の位置ずれ量を示す差分ΔPを算出する(S22)。続いて、制御装置100は、差分の絶対値|ΔP|が差分判定値ΔPth以下か否かを判定する(S23)。差分判定値ΔPthは、ステップS22で算出された差分ΔPが妥当性のある数値か否かを判定するための判定値である。差分判定値ΔPthは、現実的ではない誤った差分ΔPに基づいて、補正処理が実施されるのを防止するためのガード値であるともいえる。一例として、差分判定値ΔPthは、原点位置Porg及び全開位置Poの間をなす距離の数%~数十%の値とすればよい。
【0068】
制御装置100は、差分の絶対値|ΔP|が差分判定値ΔPth以上の場合(S23:NO)、本処理を終了し、差分の絶対値|ΔP|が差分判定値ΔPth未満の場合(S23:YES)、差分ΔPの大きさに応じた補正処理を実施する(S24)。補正処理では、差分ΔPの大きさ及び差分ΔPの正負に応じて、記憶部102に記憶される位置情報が補正される。
【0069】
第1実施形態の作用について説明する。
図9は、可動パネル50の開作動時において、可動パネル50の位置とモータ65の回転速度VMとの関係を示している。図9において、実線で示すモータ65の回転速度VMは、初期化処理の実施時に可動パネル50を開作動させたときのものであり、一点鎖線で示すモータ65の回転速度VMは、ユーザが任意のタイミングで可動パネル50を開作動させるときのものである。また、図9では、可動パネル50の作動範囲内のうち、変動範囲Rxを太線で示している。
【0070】
図9に一点鎖線で示すように、記憶部102に記憶される可動パネル50の位置情報が実際の可動パネル50の位置に対してずれが生じている場合に可動パネル50を閉作動させると、本来の全閉位置Pcからずれた全閉位置Pc’に可動パネル50が停止する。同様に、記憶部102に記憶される可動パネル50の位置情報が実際の可動パネル50の位置に対してずれが生じている場合に可動パネル50を開作動させると、全開位置Poからずれた全開位置Po’に可動パネル50が停止する。
【0071】
このような場合、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2の間に差分ΔPに相当する位置ずれが生じている。このため、差分ΔPに基づいて、記憶部102に記憶される位置情報が補正される。
【0072】
図9に一点鎖線で示す例では、記憶部102に記憶される位置が本来の位置よりも閉方向に進んだ位置となるため、記憶部102に記憶される位置に対応するパルスカウント値が差分ΔPに相当するパルスだけ減算される。その結果、記憶部102に記憶される位置と実際の位置とのずれが解消される。
【0073】
第1実施形態の効果について説明する。
(1)制御装置100は、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2に位置ずれが生じている場合、両位置の位置ずれに基づいて補正処理を実施する。このため、制御装置100は、可動パネル50を開閉作動させるときに、実際の全閉位置Pc及び全開位置Poと乖離した位置に可動パネル50を停止することを抑制できる。こうして、制御装置100は、可動パネル50の開閉作動に必要な情報を補正できる。
【0074】
(2)モータ65の回転速度VMが変動する場合、回転速度VMが変動し始める変動開始位置は、回転速度VMが変動し終わる変動終了位置よりも明確に取得しやすい。この点、制御装置100は、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2の差分ΔPに基づいて、補正処理を実施する。このため、制御装置100は、補正処理を精度良く実施できる。
【0075】
(3)制御装置100は、例えば、サンルーフ装置40の出荷時において、初期化処理を実施することで、正確な変動位置Pxを記憶部102に記憶させることができる。この場合、制御装置100は、精度良く補正処理を実施できる。
【0076】
(4)可動パネル50が閉作動する場合には異物などの挟み込みなど、実際の変動位置Pxとは異なる位置でモータ65の負荷が変動するおそれがある。この点、制御装置100は、可動パネル50の閉作動時に補正処理を実施しないため、誤って補正処理を実施することを抑制できる。言い換えれば、制御装置100は、記憶部102に記憶される位置情報にずれが生じている場合には、可動パネル50の閉作動時の挟み込み判定処理を実施する前に、補正処理を実施できる。このため、可動パネル50の閉作動時の挟み込み判定処理の精度を高めることができる。
【0077】
(5)車両10が走行中に可動パネル50が開閉作動する場合には、可動パネル50に振動が作用することによって、実際の変動位置Pxとは異なる位置でモータ65の負荷が変動するおそれがある。この点、制御装置100は、車両10が走行中の場合に補正処理を実施しないため、誤って補正処理を実施することを抑制できる。
【0078】
(6)内燃機関の始動時及びスライドドアの開閉作動時には、バッテリ電圧EBが低下し、可動パネル50の開閉速度が不安定となるおそれがある。この点、制御装置100は、バッテリ電圧EBが低下している場合に補正処理を実施しないため、誤って補正処理を実施することを抑制できる。
【0079】
(7)駆動シュー64がフロントブロック67又はリアブロック68に接触したことに起因して、補正処理を実施する場合には、例えば、原点位置Porg及び全閉位置Pcの間に相当する距離だけ位置ずれが発生しなければ、補正処理を実施できない。この点、制御装置100は、駆動シュー64がフロントブロック67又はリアブロック68に接触しなくても、補正処理を実施することができる点で、大きな位置ずれの発生を抑制できるだけでなく、小さな位置ずれの発生をも抑制できる。
【0080】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比較して、可動パネル50が開作動されるときのモータ65の負荷の変動の態様が異なる。さらに、第2実施形態は、第1実施形態と比較して、補正処理の内容が異なる。第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通する構成について、説明を省略化又は簡略化する。
【0081】
図10は、初期化処理において、可動パネル50が開作動するとき、詳しくは、可動パネル50がチルトアップ作動及びスライド開作動するときの可動パネル50の位置とモータ65の回転速度VMとの関係を示すグラフである。図10に示すように、第2実施形態では、可動パネル50が開作動するときに、二度に渡りモータ65の回転速度VMが一時的に低下する場合を想定している。また、図10では、説明理解の容易のために、モータ65の回転速度VMの変動を顕著なものとして図示している。
【0082】
制御部103は、初期化処理において、可動パネル50の作動範囲のうち、太線で示す変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMの変化を記憶部102に記憶させる。制御部103は、変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMの変化を記憶部102に記憶させた後、モータ65の回転速度VMが減少し始める2つの変動位置Pxを記憶部102に記憶させる。以降の説明では、これらの位置をそれぞれ第1変動開始位置PxB1及び第1変動開始位置PxC1という。第1変動開始位置PxB1,PxC1は、「第1変動位置」の一例である。言い換えれば、第1変動位置は、複数の第1変動開始位置PxB1,PxC1を含んでいるといえる。
【0083】
可動パネル50が全閉位置Pcに到達すると、制御部103は、可動パネル50を全開位置Poからチルトアップ位置Ptを経由して全閉位置Pcまで閉作動させる。なお、制御部103は、初期化処理において、モータ65の回転速度VMが意図せず変動する場合など、初期化処理が正常に完了できなかったと判断できる場合には、初期化処理を再度実施することが好ましい。
【0084】
初期化処理が完了すると、制御部103は、取得部101が取得する可動パネル50の位置と記憶部102に記憶される位置情報とに基づいてモータ65を制御することにより、可動パネル50を開閉作動させることが可能となる。
【0085】
また、制御部103は、可動パネル50を開作動させる状況下において、可動パネル50が変動範囲Rx内を作動する場合、可動パネル50の位置に対するモータ65の回転速度VMを監視する。そして、制御部103は、モータ65の回転速度VMが減少し始める1回目の位置と、モータ65の回転速度VMが減少し始める2回目の位置と、を算出する。以降の説明では、これらの位置をそれぞれ第2変動開始位置PxB2及び第2変動開始位置PxC2という。第2変動開始位置PxB2,PxC2は、「第2変動位置」の一例である。言い換えれば、第2変動位置は、複数の第2変動開始位置PxB2,PxC2を含んでいるといえる。
【0086】
第2変動開始位置PxB2,PxC2は、第1変動開始位置PxB1,PxC1とそれぞれ対応する位置である。第1変動開始位置PxB1,PxC1は、初期化処理が実施されない限り変化しない基準となる変動位置Pxである一方、第2変動開始位置PxB2,PxC2は、第1実施形態で述べた理由によりずれが生じ得る変動位置Pxである。つまり、第2変動開始位置PxB2,PxC2は、第1変動開始位置PxB1,PxC1の比較対象となる変動位置Pxである。第2変動開始位置PxB2,PxC2は、初期化処理の実施後に取得される変動位置Pxである点で、記憶部102に第1変動開始位置PxB1,PxC1が記憶された後の可動パネル50の開作動時に取得部101が取得する変動位置Pxであるといえる。
【0087】
ユーザが車両10の利用を継続していると、第1実施形態で述べた理由により、変動位置Pxにずれが生じることがある。詳しくは、第1変動開始位置PxB1,PxC1に対して、第2変動開始位置PxB2,PxC2がそれぞれ位置ずれすることがある。
【0088】
そこで、補正部104は、第1変動開始位置PxB1,PxC1と第2変動開始位置PxB2,PxC2とにそれぞれ位置ずれが生じている場合には、当該位置ずれに基づいて、原点位置Porgを補正する補正処理を実施する。詳しくは、補正部104は、第1変動開始位置PxB1,PxC1の差分と第2変動開始位置PxB2,PxC2の差分との平均値である差分平均値ΔPmに基づいて、原点位置Porgを補正する補正処理を実施する。
【0089】
例えば、第2変動開始位置PxB2,PxC2が第1変動開始位置PxB1,PxC1に対して開方向に10パルス分だけずれている場合、補正部104は、記憶部102に記憶される原点位置Porgを10パルス分だけ閉方向にずれるように補正する。同様に、第2変動開始位置PxB2,PxC2が第1変動開始位置PxB1,PxC1に対して可動パネル50の閉方向に10パルス分だけずれている場合、補正部104は、原点位置Porgを10パルス分だけ開方向にずれるように補正する。
【0090】
このように、原点位置Porgを補正すると、補正前後において、原点位置Porgがずれることにより、記憶部102に記憶される全閉位置Pc、チルトアップ位置Pt及び全開位置Poがずれる。こうして、補正部104は、補正処理において、記憶部102に記憶される全閉位置Pc、全開位置Po及びチルトアップ位置Ptを補正する。
【0091】
次に、図11に示すフローチャートを参照して、補正処理を実施するために制御装置100が実行する処理の流れについて説明する。
図11に示すように、制御装置100は、補正フラグがオンか否かを判定する(S31)。補正フラグがオフの場合(S31:NO)、すなわち、直近の可動パネル50の開作動時に取得した変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMに基づいて補正処理を実施することが妥当でない場合、制御装置100は、本処理を終了する。この場合、制御装置100は、補正処理を実施しない。
【0092】
一方、補正フラグがオンの場合(S31:YES)、制御装置100は、第1変動開始位置PxB1,PxC1と第2変動開始位置PxB2,PxC2とのそれぞれの位置ずれ量を示す差分平均値ΔPmを算出する(S32)。詳しくは、制御装置100は、第1変動開始位置PxB1及び第2変動開始位置PxB2の差分である第1差分ΔP1と、第1変動開始位置PxC1及び第2変動開始位置PxC2の差分である第2差分ΔP2と、の平均値である差分平均値ΔPmを算出する。なお、差分平均値ΔPmを算出する際に、第1差分ΔP1及び第2差分ΔP2に適当な重み付けを行ってもよい。つまり、差分平均値ΔPmは、第1差分ΔP1及び第2差分ΔP2の単なる平均値でなくてもよい。
【0093】
続いて、制御装置100は、差分平均値の絶対値|ΔPm|が差分判定値ΔPth以下か否かを判定する(S33)。制御装置100は、差分平均値の絶対値|ΔPm|が差分判定値ΔPth以上の場合(S33:NO)、本処理を終了し、差分平均値の絶対値|ΔPm|が差分判定値ΔPth未満の場合(S33:YES)、差分平均値ΔPmの大きさに応じた補正処理を実施する(S34)。補正処理では、差分平均値ΔPmの大きさ及び差分平均値ΔPmの正負に応じて、記憶部102に記憶される位置情報が補正される。
【0094】
第2実施形態の作用について説明する。
図12は、可動パネル50の開作動時において、可動パネル50の位置とモータ65の回転速度VMとの関係を示している。図12において、実線で示すモータ65の回転速度VMは、初期化処理の実施時に可動パネル50を開作動させたときのものであり、一点鎖線で示すモータ65の回転速度VMは、ユーザが任意のタイミングで可動パネル50を開作動させるときのものである。また、図12では、可動パネル50の作動範囲内のうち、変動範囲Rxを太線で示している。
【0095】
図12に一点鎖線で示すように、記憶部102に記憶される可動パネル50の位置情報が実際の可動パネル50の位置に対してずれが生じている場合に可動パネル50を閉作動させると、本来の全閉位置Pcからずれた全閉位置Pc’に可動パネル50が停止する。同様に、記憶部102に記憶される可動パネル50の位置情報が実際の可動パネル50の位置に対してずれが生じている場合に可動パネル50を開作動させると、全開位置Poからずれた全開位置Po’に可動パネル50が停止する。
【0096】
このような場合、第1変動開始位置PxB1及び第2変動開始位置PxB2の間に第1差分ΔP1に相当する位置ずれが生じ、第1変動開始位置PxC1及び第2変動開始位置PxC2の間に第2差分ΔP2に相当する位置ずれが生じている。このため、第1差分ΔP1及び第2差分ΔP2の平均値、すなわち差分平均値ΔPmに基づいて、記憶部102に記憶される位置情報が補正される。
【0097】
図12に一点鎖線で示す例では、記憶部102に記憶される位置が本来の位置よりも閉方向に進んだ位置となるため、記憶部102に記憶される位置に対応するパルスカウント値が差分平均値ΔPmに相当するパルスだけ減算される。その結果、記憶部102に記憶される位置と実際の位置とのずれが解消される。
【0098】
第2実施形態の効果について説明する。第2実施形態は、第1実施形態と同等の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(8)制御装置100は、複数の第1変動開始位置PxB1,PxC1と複数の第2変動開始位置PxB2,PxC2とのそれぞれの位置ずれに基づいて、補正処理を実施するため、精度良く補正処理を実施できる。また、制御装置100は、上記位置ずれを、複数の第1変動開始位置PxB1,PxC1と複数の第2変動開始位置PxB2,PxC2とのそれぞれの差分の平均値として、簡易に算出できる。
【0099】
第1実施形態及び第2実施形態は、以下のように変更して実施することができる。第1実施形態、第2実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0100】
・第1実施形態の変更例について説明する。制御部103は、初期化処理において、変動範囲Rxにおけるモータ65の回転速度VMの変化を記憶部102に記憶させた後、モータ65の回転速度VMが減少し始める変動位置Pxと、モータ65の回転速度VMが増大し終わった変動位置Pxと、を記憶部102に記憶させる。これらの位置をそれぞれ第1変動開始位置PxA1及び第1変動終了位置PxD1という。第1変動開始位置PxA1及び第1変動終了位置PxD1は、「第1変動位置」の一例である。
【0101】
また、制御部103は、可動パネル50を開作動させる状況下において、可動パネル50が変動範囲Rx内を作動する場合、可動パネル50の位置に対するモータ65の回転速度VMを監視する。そして、制御部103は、モータ65の回転速度VMが減少し始める位置と、モータ65の回転速度VMが増大し終わった位置と、を算出する。これらの位置をそれぞれ第2変動開始位置PxA2及び第2変動終了位置PxD2という。第2変動開始位置PxA2及び第2変動終了位置PxD2は、「第2変動位置」の一例である。
【0102】
そして、補正部104は、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2に位置ずれが生じるとともに、第1変動終了位置PxD1及び第2変動終了位置PxD2に位置ずれが生じている場合、補正処理を実施する。詳しくは、補正部104は、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2の差分と第1変動終了位置PxD1及び第2変動終了位置PxD2の差分との平均値に基づいて、補正処理を実施する。
【0103】
図13に示すように、第1変動開始位置PxA1及び第2変動開始位置PxA2の間に第1差分ΔP1に相当する位置ずれが生じ、第1変動終了位置PxD1及び第2変動終了位置PxD2の間に第2差分ΔP2に相当する位置ずれが生じているとする。この場合、第1差分ΔP1及び第2差分ΔP2の平均値、すなわち差分平均値ΔPmに基づいて、記憶部102に記憶される位置情報が補正される。この構成によれば、制御装置100は、差分平均値ΔPmに基づいて、補正処理を実施する点で、精度良く位置情報を補正できる。
【0104】
・第2実施形態において、補正部104は、3以上の第1変動開始位置と、3以上の第2変動開始位置と、のそれぞれの位置ずれに基づいて、補正処理を実施してもよい。詳しくは、補正部104は、3以上の第1変動開始位置と、3以上の第2変動開始位置と、のそれぞれの差分の平均値に基づいて、補正処理を実施してもよい。
【0105】
・サンルーフ装置40は、可動パネル50が全開位置Poに配置される場合などに、車両10の室内に走行風が入り込むことを抑制するデフレクタ装置をルーフ開口部22の前端付近に備えてもよい。デフレクタ装置は、デフレクタと、デフレクタの幅方向における両端部をそれぞれ支持する一対のデフレクタアームと、一対のデフレクタアームを付勢するスプリングと、を有する。デフレクタ装置は、可動パネル50が全開位置Poの付近に配置されるとき、一対のデフレクタアームがスプリングの弾性力によって回動することで、デフレクタを展開させる。一方、全閉位置Pc及びチルトアップ位置Ptの付近に配置される可動パネル50に押されることで、一対のデフレクタアームがスプリングの弾性力に抗して回動することで、デフレクタを格納させる。つまり、可動パネル50が閉作動する場合には、可動パネル50がデフレクタアームに接触するときに、可動パネル50を駆動するモータ65の負荷が増大する。したがって、車両10がデフレクタ装置を備える場合には、可動パネル50の作動範囲のうち、可動パネル50がデフレクタアームに接触する位置を変動位置Pxとしてもよい。
【0106】
・制御装置100は、1つの変動位置Pxに基づいて補正処理を実施してもよいし、3つ以上の変動位置Pxに基づいて補正処理を実施してもよい。ここで、変動位置Pxは、モータ65の回転速度VMの変動に基づいて取得できる位置であればよい。例えば、変動位置Pxは、モータ65の回転速度VMが所定の回転速度判定値未満となるときの可動パネル50の位置でもよいし、モータの回転速度VMの時間微分値が所定の勾配判定値となるときの可動パネル50の位置でもよい。言い換えれば、変動位置Pxは、変動開始位置及び変動終了位置に限る必要はない。
【0107】
・制御装置100は、記憶部102に記憶される変動範囲Rx内のモータ65の回転速度VMの変化と、可動パネル50の開作動時に取得される変動範囲Rx内のモータ65の回転速度VMの変化と、を比較することで補正処理を実施してもよい。変動範囲Rx内のモータ65の回転速度VMの変化の比較には、例えば、図形の形状を比較するアルゴリズムを採用すればよい。
【0108】
・車両10が停車する路面の勾配により、可動パネル50の開作動時のモータ65の負荷が変動する場合、制御装置100は、車両10が停車する路面の勾配の絶対値が所定の勾配判定値以上の場合、補正処理を実施しないことが好ましい。
【0109】
・サンルーフ装置40を精度良く製造できる場合には、変動位置Pxは、全閉位置Pc及び全開位置Poなどと同様に、サンルーフ装置40の仕様から求まる数値であるともいえる。そこで、制御装置100は、全閉位置Pc及び全開位置Poなどと同様に、原点位置Porgを取得した後に、原点位置Porgから変動位置Pxまでの距離に応じて、変動位置Pxにおけるパルスカウント値を決めてもよい。
【0110】
・制御装置100は、可動パネル50の開作動時に補正処理を実施してもよい。また、制御装置100は、車両10の走行中に補正処理の実施を制限しなくてもよい。さらに、制御装置100は、バッテリ電圧EBが低下しているときに補正処理の実施を制限しなくてもよい。
【0111】
・制御部103は、モータ65の負荷をモータ65に流れる電流の大きさなど、他のパラメータから取得してもよい。
・回転角センサSEは、磁気式でもよいし光学式でもよい。回転角センサSEは、モータ65と一体に構成されるものでもよいし、モータ65と別体に構成されるものでもよい。
【0112】
・操作スイッチSWは、可動パネル50をマニュアル作動させるためのスイッチを有してもよい。ここで、マニュアル作動とは、上記スイッチをユーザが操作している期間に限り、可動パネル50が開閉作動される作動モードである。
【0113】
・制御装置100は、「開閉体」としてのウインドウを開閉する「車両用開閉装置」としてのウィンドウレギュレータを制御対象にしてもよい。また、制御装置100は、「開閉体」としてのドアを開閉する「車両用開閉装置」としてのドアアクチュエータを制御対象にしてもよい。この場合、ドアは、スライドドアでもよいし、バックドアでもよいし、揺動式のサイドドアでもよい。
【0114】
・制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0115】
10…車両
20…車体
22…ルーフ開口部(車両の開口部の一例)
40…サンルーフ装置(車両用開閉装置の一例)
50…可動パネル(開閉体の一例)
60…駆動装置
65…モータ
100…制御装置(車両用開閉体の制御装置の一例)
101…取得部
102…記憶部
103…制御部
104…補正部
Porg…原点位置
Pc…全閉位置
Pt…チルトアップ位置
Po…全開位置
Px…変動位置
PxA1,PxB1,PxC1…第1変動開始位置(第1変動位置の一例)
PxA2,PxB2,PxC2…第2変動開始位置(第2変動位置の一例)
PxD1…第1変動終了位置(第1変動位置の一例)
PxD2…第2変動終了位置(第2変動位置の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13