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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】水分計
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/04 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
G01N27/04 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020075703
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021173565
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001812
【氏名又は名称】株式会社サタケ
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】藤友 博太
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-256084(JP,A)
【文献】特開2006-038595(JP,A)
【文献】特開2005-077212(JP,A)
【文献】特開2014-169885(JP,A)
【文献】特開2020-034254(JP,A)
【文献】特開平05-126774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
G01N 15/00 - G01N 15/14
F26B 17/00 - F26B 17/34
F26B 25/00 - F26B 25/22
G01N 1/00 - G01N 1/44
G01N 33/00 - G01N 33/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸心が同じ水平方向に延びるようにロール径方向に並設された第1及び第2電極ロールと、該第1及び第2電極ロールの間における電圧、電流及び抵抗の少なくとも1つの値を検出可能な検出部とを備え、
互いに反対向きに回転する上記第1及び第2電極ロールの間を通過しながら挟み込まれて圧砕される穀粒の圧砕時における電圧、電流及び抵抗の少なくとも1つの値を上記検出部が検出するとともに、その値から上記穀粒の含有水分値を換算して得るよう構成された水分計であって、
上記第1電極ロールの外周面には、小径穀粒を圧砕する第1領域と、上記小径穀粒よりも粒径が大きい大径穀粒を圧砕する第2領域とが周方向に順に並ぶようにそれぞれ1つ以上設定され、
上記第2領域には、径方向外側に開口するとともに上記大径穀粒を収容した際、当該大径穀粒の一部が開口部分からはみ出るよう構成された圧砕用凹部が形成されており、上記圧砕用凹部の底部には、径方向外側に突出する突起部が形成されていることを特徴とする水分計。
【請求項2】
請求項1に記載の水分計において、上記圧砕用凹部は、大きさが異なる2種類以上の上記大径穀粒をそれぞれ収容可能に底部の深さの異なるものが複数種設けられていることを特徴とする水分計。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水分計において、上記各圧砕用凹部における回転軸心方向の寸法は、上記大径穀粒の粒径に対応する寸法に設定されていることを特徴とする水分計。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の水分計において、上記圧砕用凹部は、上記回転軸心周りに複数形成されていることを特徴とする水分計。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の水分計において、上記圧砕用凹部は、回転軸心方向から見て周方向に対称の形状をなしていることを特徴とする水分計。
【請求項6】
請求項1に記載の水分計において、上記突起部は、径方向外側に行くにつれて次第に周方向に接近する一対の傾斜面を備えた先端尖鋭の断面山形状をなしていることを特徴とする水分計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒の含有水分値を測定可能な水分計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、収穫した籾や大豆等の穀物は、予め決められた水分規格となるように乾燥機を用いて乾燥させる必要があり、これらの乾燥機は、水分計を用いて穀粒の含有水分値を周期的に測定しながら乾燥状態を管理している。
【0003】
上記水分計は、穀粒を一対の電極ロールで圧砕する際に流れる電流値を測定するとともにその値から含有水分値を換算して得るのが一般的である。したがって、穀粒の大きさが変わると測定値が大きく変わるので、乾燥機で乾燥する穀物を穀粒の大きさが異なる別種類のものに変更する際には、それぞれ対応する水分計を用意して測定を行わなければならず、煩雑であるとともにコストが嵩むという問題があった。
【0004】
これに対応するために、例えば、特許文献1に開示されている水分計は、大きさが異なる別種類の穀粒の含有水分値をそれぞれ測定可能になっている。該水分計は、小径穀粒圧砕用の第1回転部と大径穀粒圧砕用の第2回転部とが回転軸心方向に並設されてなる電極ロールがロール径方向に一対並設され、両電極ロールの上方には、穀粒を両電極ロールの間へと案内する穀粒ガイド部が配設されている。該穀粒ガイド部は、電極ロールの回転軸心に沿って位置を切替可能になっていて、一方側に位置を切り替えることにより、両第1回転部にて小径穀粒の測定が可能になる一方、他方側に位置を切り替えることにより、両第2回転部にて大径穀粒の測定が可能になるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-36077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の場合、小径穀粒の測定と大径穀粒の測定とを切り替えるために、両電極ロールまでの穀粒の経路を切り替える穀粒ガイド部を装置に設ける必要があるので、構造が複雑になって部品コスト並びに組立コストが嵩むという問題があった。また、大きさが異なる別種類の穀粒に測定を切り替える際において、穀粒ガイド部の位置を作業者が切り替える作業を行わなければならず、作業が煩雑であるという問題もあった。
【0007】
本発明は、斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、大きさが異なる別種類の穀粒の含有水分値を測定可能であり、しかも、作業者による測定作業が簡易であるとともに構造がシンプルで低コストな水分計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、電極ロールの外周面に小径穀粒を圧砕する領域と大径穀粒を圧砕する領域とを周方向に順に並ぶように設けるとともに、大径穀粒を圧砕する領域に当該大径穀粒を収容可能な圧砕用凹部を設けたことを特徴とする。
【0009】
具体的には、回転軸心が同じ水平方向に延びるようにロール径方向に並設された第1及び第2電極ロールと、該第1及び第2電極ロールの間における電圧、電流及び抵抗の少なくとも1つの値を検出可能な検出部とを備え、互いに反対向きに回転する上記第1及び第2電極ロールの間を通過しながら挟み込まれて圧砕される穀粒の圧砕時における電圧、電流及び抵抗の少なくとも1つの値を上記検出部が検出するとともに、その値から上記穀粒の含有水分値を換算して得るよう構成された水分計を対象とし、次のような対策を講じた。
【0010】
すなわち、第1の発明では、上記第1電極ロールの外周面には、小径穀粒を圧砕する第1領域と、上記小径穀粒よりも粒径が大きい大径穀粒を圧砕する第2領域とが周方向に順に並ぶようにそれぞれ1つ以上設定され、上記第2領域には、径方向外側に開口するとともに上記大径穀粒を収容した際、当該大径穀粒の一部が開口部分からはみ出るよう構成された圧砕用凹部が形成され、前記圧砕用凹部の底部には、径方向外側に突出する突起部が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、上記圧砕用凹部は、大きさが異なる2種類以上の上記大径穀粒をそれぞれ収容可能に底部の深さの異なるものが複数種設けられていることを特徴とする。
【0012】
第3の発明では、第1又は第2の発明において、上記各圧砕用凹部における回転軸心方向の寸法は、上記大径穀粒の粒径に対応する寸法に設定されていることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、第1から第3のいずれか1つの発明において、上記圧砕用凹部は、上記回転軸心周りに複数形成されていることを特徴とする。
【0014】
第5の発明では、第1から第4のいずれか1つの発明において、上記圧砕用凹部は、回転軸心方向から見て周方向に対称の形状をなしていることを特徴とする。
【0016】
の発明では、第の発明において、上記突起部は、径方向外側に行くにつれて次第に周方向に接近する一対の傾斜面を備えた先端尖鋭の断面山形状をなしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明では、小径穀粒が両電極ロール間に到達すると、第1電極ロールの第1領域において第2電極ロールとの間で挟み込まれて圧砕されるので、圧砕時において検出部により検出する電流、電圧及び抵抗の少なくとも1つの値から小径穀粒の含有水分値を換算して得ることができる。
もし仮に圧砕用凹部に小径穀粒が入り込んだ場合、小径穀粒が第2電極ロールとの間で挟み込まれないので、小径穀粒は圧砕されずに第1電極ロールと第2電極ロールとの間を通過した後、第1電極ロール及び第2電極ロールの下方に落下する。
一方、大径穀粒が両電極ロール間に到達すると、第1電極ロールの第1領域に位置する際には、第1及び第2電極ロールの間に入り込まずに第1及び第2電極ロールの間に入り込む手前の位置に留まり、圧砕用凹部が大径穀粒に対応する位置に到達すると、当該大径穀粒が圧砕用凹部に収容されるとともに第2電極ロールとの間で挟み込まれて圧砕されるので、圧砕時において検出部により検出する電流、電圧及び抵抗の少なくとも1つの値から大径穀粒の含有水分値を換算して得ることができる。
このように、小径穀粒及び大径穀粒が両電極ロールの間の同じ位置に到達してもそれぞれの含有水分値が得られるので、特許文献1の如き穀粒の経路を切り替える構造を装置に設ける必要が無く、構造がシンプルで低コストな水分計にすることができる。
また、大きさが異なる別種類の穀粒に測定を切り替える際に、特許文献1のように作業者が穀粒の経路を切り替える作業を行うといったことが無いので、作業者の測定作業を簡易にすることができる。
さらに、圧砕用凹部に収容された大径穀粒が第2電極ロールの外周面との間に挟み込まれる際、突起部における大径穀粒との接触部分に応力が集中するようになる。
したがって、大径穀粒が圧砕用凹部内において割れ易くなり、大径穀粒における含有水分値の測定不良を防ぐことができるという効果もある。

【0018】
第2の発明では、第1電極ロールにおける第1領域と種類の異なる複数の圧砕用凹部とで3種類以上の大きさが異なる別種類の穀粒の圧砕が可能になる。したがって、3種類以上の大きさが異なる別種類の穀粒の含有水分値を得ることができるようになり、大きさが異なる別種類の穀粒の測定を行うたびに水分計を交換する必要が無くなるので、コストを低く抑えることができるとともに作業者による装置の取り扱い時にかかる手間を少なくすることができる。
【0019】
第3の発明では、各圧砕用凹部には、2つ以上の大径穀粒が回転軸心方向に並んで収容されないので、各圧砕用凹部において大径穀粒を2つ同時に圧砕することがなくなり、大径穀粒を2つ同時に圧砕することを起因とした検出部における異常値の発生を防ぐことができる。また、第1電極ロールの外周面において全圧砕用凹部の占める領域が最小になるので、第1電極ロールの外周面において設定可能な第1領域の面積が最大になる。したがって、水分計による小径穀粒の測定の際には、効率良く小径穀粒の含有水分値を測定することができる。
【0020】
第4の発明では、第1電極ロールにおける1回転当たりの大径穀粒の測定回数が増えるので、効率良く大径穀粒の含有水分値を測定することができる。
【0021】
第5の発明では、第1電極ロールを装置に取り付ける際、具体的には、工場で装置を組み立てる際や、或いは、第1電極ロールをメンテナンスのために装置から外した後、再度、装置に取り付ける際、装着方向を通常設定とは反対向きにしたとしても圧砕用凹部の回転軸心方向から見た形状が通常設定の状態と同じになる。したがって、装置を作動させても圧砕用凹部にて大径穀粒を圧砕可能になるので、装置を停止させて第1電極ロールの装着をし直すといった作業の必要が無くなり、作業者に扱い易い装置にすることができる。
【0023】
の発明では、突起部の先端が尖っているので、第2電極ロールの外周面との間に挟み込まれる大径穀粒の突起部との接触部分に大きな応力が集中するようになる。
したがって、大径穀粒が圧砕用凹部内において確実に割れるようになり、大径穀粒の含有水分値を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態に係る水分計の斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る水分計の内部を正面から見た図である。
図3図2のA矢視図である。
図4図3のB-B線における断面図であり、小径穀粒を圧砕する直前の状態を示す図である。
図5図3のB-B線における断面図であり、大径穀粒を圧砕する直前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
【0026】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る水分計1を示す。該水分計1は、収穫した米や大豆等の穀物を循環させながら乾燥させる循環式乾燥機において穀粒10を流下させる穀粒流下通路に取り付けられて使用される機器であり、内部に収容空間S1を有する略直方体形状の本体ケース2を備えている。
【0027】
尚、本発明の実施形態では、粒径が2mm以上5mm未満の範囲の籾や小麦等の穀粒10を小径穀粒10Aと呼び、粒径が5mm以上10mm以下の範囲の大豆等の穀粒10を大径穀粒10Bと呼ぶことにする(図4及び図5参照)。
【0028】
本体ケース2の正面略中央には、収容空間S1に連通する窓部(図示せず)が設けられ、該窓部は、矩形板状をなす透明カバー2aで覆われている。
【0029】
本体ケース2の一方の側面略中央には、矩形状をなす穀粒導入口2bが形成され、該穀粒導入口2bは、循環式乾燥機における穀粒流下通路を流下する穀粒10を収容空間S1に導入するようになっている。
【0030】
本体ケース2の収容空間S1における幅方向一側中央には、図2に示すように、穀粒導入口2bから収容空間S1に導入される各穀粒10を所定の間隔をあけながら回転動作により移送するフィーダー3が配設され、該フィーダー3は、斜め下方に延びるシューター3aを介して1粒ずつ装置下流側へと穀粒10を供給するようになっている。
【0031】
本体ケース2の収容空間S1における幅方向他側の中央から下部に亘る部分には、測定ユニット4が配設されている。
【0032】
該測定ユニット4は、回転軸心C1,C2が同じ水平方向に延びるようにシューター3aの斜め下方においてロール径方向に並設された第1電極ロール5及び第2電極ロール6と、第1及び第2電極ロール5,6の上方に配設された駆動モータ7と、第1及び第2電極ロール5,6と駆動モータ7とを連結するギアボックス8と、第1及び第2電極ロール5,6と駆動モータ7とに接続された制御盤9とを備え、該制御盤9は、駆動モータ7により、ギアボックス8を介して第1及び第2電極ロール5,6を互いに反対向きに回転させるようになっている。
【0033】
第1電極ロール5は、金属材で形成され、第2電極ロール6に対してフィーダー3から離れる側の斜め上方に位置している。
【0034】
第1電極ロール5は、図3に示すように、厚みを有する円板形状のロール本体5aと、該ロール本体5aの回転軸心C1方向両側に回転一体に取り付けられた厚みの薄い一対の円盤プレート5bとを備え、該円盤プレート5bの外径は、ロール本体5aの外径よりも若干大きい形状に設定されている。
【0035】
ロール本体5aは、回転軸心C1方向一側半分の第1回転部51と、回転軸心C1方向他側半分の第2回転部52とで構成されている。
【0036】
第1回転部51の外周面には、径方向外側に開口する圧砕用凹部53(第2領域)が回転軸心C1周りに等間隔に3つ形成され、各圧砕用凹部53の間には、ローレット加工が施された3つの湾曲面部54(第1領域)が設けられている。
【0037】
すなわち、第1回転部51の外周面には、圧砕用凹部53と湾曲面部54とが周方向に順に並ぶように設定されている。
【0038】
圧砕用凹部53は、回転軸心C1方向両側が一方の円盤プレート5bと第2回転部52とで塞がれていて、その回転軸心C1方向の寸法は、大径穀粒10Bの粒径に対応する寸法になっている。
【0039】
圧砕用凹部53は、図4及び図5に示すように、回転軸心C1方向から見て周方向に対称の形状をなしていて、その底部には、径方向外側に突出する突起部53aが形成されている。
【0040】
該突起部53aは、径方向外側に行くにつれて次第に周方向に接近する一対の傾斜面53bを備えた先端尖鋭の断面山形状をなしており、その先端位置は、圧砕用凹部53の開口部分から飛び出さない位置となっている。
【0041】
すなわち、圧砕用凹部53は、回転軸心C1方向に見てW字形状をなしている。
【0042】
そして、圧砕用凹部53に大径穀粒10Bを収容した際、当該大径穀粒10Bの一部が圧砕用凹部53の開口部分から第1回転部51の径方向外側にはみ出るよう構成されている。
【0043】
一方、圧砕用凹部53に小径穀粒10Aを収容させると、当該小径穀粒10Aが圧砕用凹部53の開口部分から第1回転部51の径方向外側にはみ出ないようになっている。
【0044】
第2回転部52の外周面には、図3に示すように、第1回転部51と同様に、3つの圧砕用凹部53と3つの湾曲面部54とが周方向に順に並ぶように設定され、第2回転部52における各圧砕用凹部53は、回転軸心C1方向から見てそれぞれ第1回転部51の各圧砕用凹部53の中間位置になっている。
【0045】
すなわち、第1電極ロール5に設けられた各圧砕用凹部53は、第1電極ロール5の周方向において回転軸心C1方向の一側と他側とに交互に千鳥状にずれた位置になっている。
【0046】
第2回転部52の圧砕用凹部53は、回転軸心C1方向両側が他方の円盤プレート5bと第1回転部51とで塞がれていて、その回転軸心C1方向の寸法は、大径穀粒10Bの粒径に対応する寸法になっている。
【0047】
第2電極ロール6は、第1電極ロール5に対してフィーダー3側における斜め下方に位置しており、その外周面には、ローレット加工が施されている。
【0048】
第2電極ロール6は、回転軸心C1方向の寸法が第1電極ロール5と略同じである一方、第2電極ロール6の外径は、第1電極ロール5の外径より大きく設定されている。
【0049】
該第1電極ロール5におけるフィーダー3とは反対側の位置には、図2に示すように、第1スクレーパ11aと第1ブラシ12aとが回転方向上流側から順に所定の間隔をあけて配設され、該第1スクレーパ11a及び第1ブラシ12aは、各先端が回転状態の第1電極ロール5の外周面に摺接して当該第1電極ロール5の外周面を清掃するようになっている。
【0050】
また、第2電極ロール6の下方には、第2スクレーパ11bと第2ブラシ12bとが回転方向上流側から順に所定の間隔をあけて配設され、該第2スクレーパ11b及び第2ブラシ12bは、各先端が回転状態の第2電極ロール6の外周面に摺接して当該第2電極ロール6の外周面を清掃するようになっている。
【0051】
制御盤9は、第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間に流れる電流値を検出可能な検出部9aを有しており、該検出部9aは、フィーダー3から供給される穀粒10が互いに反対向きに回転する第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間を通過しながら挟み込まれて圧砕される時に第1電極ロール5と第2電極ロール6との間に流れる電流値を検出するとともに、その電流値から穀粒10の含有水分値を換算して得るようになっている。
【0052】
また、制御盤9は、第1電極ロール5と第2電極ロール6との間に穀粒10が噛み込んで回転駆動させる駆動モータ7に予め決められた所定値を超える負荷が掛かった際、駆動モータ7を介して第1電極ロール5と第2電極ロール6とをそれぞれ逆回転させて第1電極ロール5と第2電極ロール6との間に噛み込んだ穀粒10を圧砕させずに収容空間S1の下方に落下させるようになっている。
【0053】
次に、水分計1を用いた小径穀粒10Aの含有水分値の測定について詳述する。
【0054】
循環式乾燥機において小径穀粒10Aが乾燥される際、穀粒通過通路にて下方に流下する小径穀粒10Aは、本体ケース2の穀粒導入口2bから本体ケース2の内部の収容空間S1に少量ずつ導入される。
【0055】
収容空間S1に導入される各小径穀粒10Aは、R1方向に回転状態のフィーダー3の外周面の一部に引っ掛けられながら所定の間隔で順次移送され、シューター3aを介して1粒ずつ装置下流側へと供給される。
【0056】
シューター3aを通過した小径穀粒10Aは、R2方向に回転する第1電極ロール5とR3方向に回転する第2電極ロール6との間の手前に投入される。すると、小径穀粒10Aは、第2電極ロール6の外周面に到達するとともに、当該第2電極ロール6の外周面に載置された状態で当該第2電極ロール6の回転動作により第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間に到達する。
【0057】
すると、図4に示すように、小径穀粒10Aが第1電極ロール5の湾曲面部54において第2電極ロール6との間で挟み込まれて圧砕されるので、圧砕時において検出部9aにより検出する電流値から小径穀粒10Aの含有水分値が換算して得られる。
【0058】
もし仮に、第1電極ロール5の各圧砕用凹部53に小径穀粒10Aが入り込んだ場合、小径穀粒10Aが第1電極ロール5と第2電極ロール6との間で挟み込まれないので、小径穀粒10Aは圧砕されずに第1電極ロール5と第2電極ロール6との間を通過した後、第1電極ロール5と第2電極ロール6の下方に落下する。
【0059】
次に、水分計1を用いた大径穀粒10Bの含有水分値の測定について詳述する。
【0060】
循環式乾燥機において大径穀粒10Bが乾燥される際、穀粒通過通路にて下方に流下する大径穀粒10Bは、本体ケース2の穀粒導入口2bから本体ケース2の内部の収容空間S1に少量ずつ導入される。
【0061】
収容空間S1に導入される各大径穀粒10Bは、R1方向に回転状態のフィーダー3の外周面の一部に引っ掛けられながら所定の間隔で順次移送され、シューター3aを介して1粒ずつ装置下流側へと供給される。
【0062】
シューター3aを通過した大径穀粒10Bは、第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間の手前に投入される。すると、大径穀粒10Bは、第2電極ロール6の外周面に到達するとともに、当該第2電極ロール6の外周面に載置された状態で当該第2電極ロール6の回転動作により第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間に到達する。
【0063】
すると、大径穀粒10Bが第1電極ロール5の湾曲面部54に位置する際には、第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間に入り込まずに第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間に入り込む手前の位置に留まり、圧砕用凹部53が大径穀粒10Bに対応する位置に到達すると、当該大径穀粒10Bが圧砕用凹部53に収容されるとともに第2電極ロール6との間で挟み込まれて圧砕されるので、圧砕時において検出部9aにより検出する電流値から大径穀粒10Bの含有水分値が換算して得られる。
【0064】
以上より、本発明の実施形態によると、小径穀粒10A及び大径穀粒10Bが第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間の同じ位置に到達してもそれぞれの含有水分値が得られるので、特許文献1の如き穀粒10の経路を切り替える構造を装置に設ける必要が無く、構造がシンプルで低コストな水分計1にすることができる。
【0065】
また、大きさが異なる別種類の小径穀粒10Aの測定と大径穀粒10Bの測定とにそれぞれ切り替える際に、特許文献1のように作業者が小径穀粒10Aと大径穀粒10Bとの経路をそれぞれ切り替える作業を行うといったことが無いので、作業者の測定作業を簡易にすることができる。
【0066】
また、圧砕用凹部53における回転軸心C1方向の寸法は、大径穀粒10Bの粒径に対応する寸法であるので、圧砕用凹部53には、2つ以上の大径穀粒10Bが回転軸心C1方向に並んで収容されない。したがって、各圧砕用凹部53において大径穀粒10Bを2つ同時に圧砕することがなくなり、大径穀粒10Bを2つ同時に圧砕することを起因とした検出部9aにおける異常値の発生を防ぐことができる。
【0067】
また、各圧砕用凹部53における回転軸心C1方向の寸法を大径穀粒10Bの粒径に対応する寸法にすることで、第1電極ロール5の外周面において全圧砕用凹部53の占める領域が最小になる。したがって、第1電極ロール5の外周面において設定可能な湾曲面部54の面積が最大になるので、水分計1による小径穀粒10Aの測定の際には、効率良く小径穀粒10Aの含有水分値を測定することができる。
【0068】
また、圧砕用凹部53は、第1電極ロール5の周方向に3つ設けられているので、第1電極ロール5における1回転当たりの大径穀粒10Bの測定回数が増えるようになる。したがって、効率良く大径穀粒10Bの含有水分値を測定することができる。
【0069】
また、圧砕用凹部53は、回転軸心C1方向から見て周方向に対称の形状をなしているので、第1電極ロール5を装置に取り付ける際、具体的には、工場で装置を組み立てる際や、或いは、第1電極ロール5をメンテナンスのために装置から外した後、再度、装置に取り付ける際、装着方向を通常設定とは反対向きにしたとしても圧砕用凹部53の回転軸心C1方向から見た形状が通常設定の状態と同じになる。したがって、装置を作動させても圧砕用凹部53にて大径穀粒10Bを圧砕可能になるので、装置を停止させて第1電極ロール5の装着をし直すといった作業の必要が無くなり、作業者に扱い易い装置にすることができる。
【0070】
また、圧砕用凹部53の底部には、突起部53aが設けられているので、圧砕用凹部53に収容された大径穀粒10Bが第2電極ロール6の外周面との間に挟み込まれる際、突起部53aにおける大径穀粒10Bとの接触部分に応力が集中するようになる。したがって、大径穀粒10Bが圧砕用凹部53内において割れ易くなり、大径穀粒10Bにおける含有水分値の測定不良を防ぐことができる。
【0071】
また、突起部53aが断面山形状をなすとともにその先端が尖っているので、圧砕用凹部53において第2電極ロール6の外周面との間に挟み込まれる大径穀粒10Bの突起部53aとの接触部分に大きな応力が集中するようになる。したがって、大径穀粒10Bが圧砕用凹部53内において確実に割れるようになり、大径穀粒10Bの含有水分値を確実に得ることができる。
【0072】
尚、本発明の実施形態では、第1電極ロール5に形成されている各圧砕用凹部53の形状が同じであるが、これに限らず、例えば、大きさが異なる2種類以上の大径穀粒10Bをそれぞれ収容可能となるように底部の深さの異なる圧砕用凹部53が複数種設けられるような構成であってもよい。
【0073】
具体的には、大径穀粒10Bにおいて、所定の外径寸法の大径穀粒10Bと、当該大径穀粒10Bよりも外径が大きい大径穀粒10Bとの測定を分けて行うような場合、大径穀粒10B用の底の浅い圧砕用凹部53A(図示せず)と、大径穀粒10B用の底の深い圧砕用凹部53B(図示せず)とを第1電極ロール5の外周面にそれぞれ設けるとともに、圧砕用凹部53Bの底部が圧砕用凹部53Bに大径穀粒10Bが収容された際に当該大径穀粒10Bが圧砕用凹部53Bの開口部分から第1回転部51又は第2回転部52の径方向外側にはみ出ないような位置に設定された第1電極ロール5を用意すればよい。そうすると、大径穀粒10Bは、測定時において圧砕用凹部53Aに収容されて圧砕される一方、圧砕用凹部53Bに入り込むと、圧砕されずに第1電極ロール5と第2電極ロール6との間を通過するようになる。また、大径穀粒10Bは、測定時において圧砕用凹部53Bに収容されて圧砕される一方、もし仮に圧砕用凹部53Aに入り込むと、第1電極ロール5と第2電極ロール6との間に噛み込んだ状態になるので、制御盤9により駆動モータ7を介して第1電極ロール5と第2電極ロール6とが逆回転して圧砕されずに収容空間S1の下方に落下するようになる。
【0074】
このように、底部の深さの異なる圧砕用凹部53を第1電極ロール5の外周面に複数種設けることにより、各湾曲面部54と合わせて3種類以上の大きさが異なる別種類の穀粒10の圧砕が可能になる。したがって、3種類以上の大きさが異なる別種類の穀粒10の含有水分値を得ることができるようになり、大きさが異なる別種類の穀粒10の測定を行うたびに水分計1を交換する必要が無くなるので、コストを低く抑えることができるとともに作業者による装置の取り扱い時にかかる手間を少なくすることができる。
【0075】
また、本発明の実施形態では、第1電極ロール5において、3つの圧砕用凹部53が回転軸心C1周りに等間隔に形成されているが、等間隔に形成されていなくてもよい。
【0076】
また、本発明の実施形態では、第1電極ロール5において、圧砕用凹部53が6つ形成されているが、1~5つ形成されていてもよいし、7つ以上形成されていてもよい。
【0077】
また、本発明の実施形態では、各圧砕用凹部53が第1電極ロール5の周方向において回転軸心C1方向の一側と他側とに千鳥状にずれて形成されているが、千鳥状にずれて形成されていなくてもよい。
【0078】
また、本発明の実施形態では、圧砕用凹部53が回転軸心C1方向から見て周方向に対称の形状をなしているが、周方向に対称の形状でなくてもよい。
【0079】
また、本発明の実施形態では、圧砕用凹部53の底部に1つの突起部53aが形成されているが、圧砕用凹部53の底部に2つ以上の突起部53aが形成されていてもよい。
【0080】
また、本発明の実施形態では、第1電極ロール5における各圧砕用凹部53の間にローレット加工が施された湾曲面部54が設けられているが、ローレット加工が施されてることが必須要件ではなく、小径穀粒10Aを圧砕できるのであれば、ローレット加工が施されてなくてもよい。
【0081】
また、本発明の実施形態では、突起部53aは先端尖鋭の断面山形状をなしているが、大径穀粒10Bを圧砕する際に当該大径穀粒10Bに応力を集中させることができるのであれば、その他の形状であっても構わない。
【0082】
また、本発明の実施形態では、制御盤9の検出部9aが第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間に流れる電流値を検出して穀粒10の含有水分値を換算して得るようになっているが、これに限らず、検出部9aが第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間の電圧の値を検出して穀粒10の含有水分値を換算して得るようにしてもよいし、第1電極ロール5及び第2電極ロール6の間の抵抗の値を検出して穀粒10の含有水分値を換算して得るようにしてもよく、電流、電圧及び抵抗の少なくとも1つの値を検出して穀粒10の含有水分値を換算して得るようにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、乾燥機で乾燥させる穀粒の含有水分値を測定可能な水分計に適している。
【符号の説明】
【0084】
1 水分計
5 第1電極ロール
6 第2電極ロール
9a 検出部
10A 小径穀粒
10B 大径穀粒
53 圧砕用凹部(第2領域)
53a 突起部
53b 傾斜面
54 湾曲面部(第1領域)
C1 回転軸心
図1
図2
図3
図4
図5