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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】エンジンのEGR装置取付構造
(51)【国際特許分類】
   F02M 26/12 20160101AFI20240109BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F02M26/12
F02F1/24 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020077663
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021173221
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 泰隆
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-157800(JP,A)
【文献】特開2019-190393(JP,A)
【文献】特開2005-098171(JP,A)
【文献】特開2011-247226(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 26/12
F02F 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドの前部に取り付けられる排気管と、
前記シリンダヘッドの後部に取り付けられる吸気マニホールドと、
前記排気管から前記吸気マニホールドに排気ガスを還流するEGR装置と、を備え、
前記EGR装置が、前記シリンダヘッドの気筒列方向の端部を構成する端部壁の側方を通って前記排気管と前記吸気マニホールドとを連絡するEGR配管と、前記EGR配管の途中に設けられるEGRクーラと、前記EGRクーラの下流側に連結されるEGRバルブと、を有するエンジンのEGR装置取付構造において、
前記EGRクーラの下流端に、前記EGRバルブが上方から取り付けられるクーラ出口側フランジ部が設けられ、
前記EGRクーラは、前記下流端がその上流端より上方かつ後方に位置するように傾斜した姿勢で前記端部壁の側方に配置され、
前記EGRバルブは、前記クーラ出口側フランジ部に接合されるバルブ入口側フランジ部と、前記バルブ入口側フランジ部から上方に延びる筒状のハウジングと、前記ハウジングにおける前記バルブ入口側フランジ部より上側の部位に設けられるバルブ出口側フランジ部と、を有し、
前記EGRクーラの下部と前記端部壁の下部とに連結され、前記EGRクーラを支持する下部ブラケットと、
前記ハウジングにおける前記バルブ入口側フランジ部より上側の部位と前記端部壁の上部とに連結され、前記EGRバルブを支持する上部ブラケットと、を備え
前記バルブ出口側フランジ部は、前記気筒列方向に交差する交差方向における前記吸気マニホールド側を向いて開口し、
前記EGR配管は、前記バルブ出口側フランジ部と前記吸気マニホールドとを連絡する出口側EGR配管を有し、
前記上部ブラケットは、前記ハウジングの周方向で前記バルブ出口側フランジ部とは反対側に配置され、かつ、前記出口側EGR配管を前記バルブ出口側フランジ部に取り付ける締結部材を共用して前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とするエンジンのEGR装置取付構造。
【請求項2】
前記上部ブラケットは、前記端部壁に沿って上下方向に延びる板状の基部と、前記基部から前記気筒列方向に突出する突出部と、を有し、
前記基部は、
第1固定部と、第2固定部と、第3固定部と、によって前記端部壁に固定され、
前記突出部は、
前記基部の前記第1固定部、前記第2固定部および前記第3固定部に囲まれる領域から前記気筒列方向に突出し、かつ、上下方向に延びるリブ部と、
前記リブ部の上端部から前記気筒列方向にさらに突出し、前記ハウジングが取り付けられるEGRバルブ取付部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のエンジンのEGR装置取付構造。
【請求項3】
前記第1固定部は、前記端部壁の後端かつ上部に固定され、
前記第2固定部は、前記端部壁の後端かつ前記第1固定部より下側に固定され、
前記第3固定部は、前記端部壁の上端かつ前記第1固定部よりも前側に固定されることを特徴とする請求項2に記載のエンジンのEGR装置取付構造。
【請求項4】
前記端部壁は、前記シリンダヘッドの前記気筒列方向の一端部を構成する一端側端部壁であり、
前記シリンダヘッドは、前記気筒列方向の他端部を構成する他端側端部壁と、前記他端側端部壁から前記気筒列方向に延びて前記一端側端部壁と連絡し、その内部に油路が形成されたボス部とを有し、
前記一端側端部壁は、前記第3固定部と前記ボス部とを連結する連結部を有することを特徴とする請求項2または請求項3に記載のエンジンのEGR装置取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのEGR装置取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンのEGR装置取付構造として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1に記載のものは、エンジン本体における触媒コンバータが取付けられた側面と同じ側に、EGR装置が配置されている。EGR装置は、EGR通路と、このEGR通路に設けられたEGRクーラおよびEGRバルブと、を有している。EGR装置は、排気ガスを、EGRクーラにより冷却し、EGRバルブによりその流量を調整しながら、EGR通路によって排気経路から吸気経路に還流させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-14345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、排ガス規制に適合するためにはEGRガスの還流量を増加させる必要がある。EGRガスの還流量を増加させるためには、EGRクーラの冷却性能も向上させる必要があり、そのためにEGRクーラの大型化が要求される。EGRクーラを大型化するためには、エンジンルームにおけるEGRクーラの配置スペースを確保する必要がある。また、大型化したEGRクーラをエンジンに装着するにあたっては、重量の大きくエンジンの振動の影響を受けやすいEGRバルブの防振対策を検討する必要がある。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のエンジンにおいて、EGRクーラの大型化のために、EGRバルブをエンジン本体から離れた位置に配置する場合の、EGRバルブの防振対策について検討の余地があった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、EGRクーラを大型化でき、かつ、EGRバルブの振動を抑制できるエンジンのEGR装置取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリンダヘッドの前部に取り付けられる排気管と、前記シリンダヘッドの後部に取り付けられる吸気マニホールドと、前記排気管から前記吸気マニホールドに排気ガスを還流するEGR装置と、を備え、前記EGR装置が、前記シリンダヘッドの気筒列方向の端部を構成する端部壁の側方を通って前記排気管と前記吸気マニホールドとを連絡するEGR配管と、前記EGR配管の途中に設けられるEGRクーラと、前記EGRクーラの下流側に連結されるEGRバルブと、を有するエンジンのEGR装置取付構造において、前記EGRクーラの下流端に、前記EGRバルブが上方から取り付けられるクーラ出口側フランジ部が設けられ、前記EGRクーラは、前記下流端がその上流端より上方かつ後方に位置するように傾斜した姿勢で前記端部壁の側方に配置され、前記EGRバルブは、前記クーラ出口側フランジ部に接合されるバルブ入口側フランジ部と、前記バルブ入口側フランジ部から上方に延びる筒状のハウジングと、前記ハウジングにおける前記バルブ入口側フランジ部より上側の部位に設けられるバルブ出口側フランジ部と、を有し、前記EGRクーラの下部と前記端部壁の下部とに連結され、前記EGRクーラを支持する下部ブラケットと、前記ハウジングにおける前記バルブ入口側フランジ部より上側の部位と前記端部壁の上部とに連結され、前記EGRバルブを支持する上部ブラケットと、を備え、前記バルブ出口側フランジ部は、前記気筒列方向に交差する交差方向における前記吸気マニホールド側を向いて開口し、前記EGR配管は、前記バルブ出口側フランジ部と前記吸気マニホールドとを連絡する出口側EGR配管を有し、前記上部ブラケットは、前記ハウジングの周方向で前記バルブ出口側フランジ部とは反対側に配置され、かつ、前記出口側EGR配管を前記バルブ出口側フランジ部に取り付ける締結部材を共用して前記ハウジングに取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、EGRクーラを大型化でき、かつ、EGRバルブの振動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの左側面図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの上部の左側面図である。
図3図3は、図1に示すエンジンのIII-III方向の矢視断面図である。
図4図4は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの平面図である。
図5図5は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンのシリンダヘッドの平面図である。
図6図6は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの上部の背面図である。
図7図7は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンのシリンダヘッドの背面図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの上部ブラケットの斜視図である。
図9図9は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの上部ブラケットの正面図である。
図10図10は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの上部ブラケットの左側面である。
図11図11は、本発明の一実施例に係るEGR装置取付構造を有するエンジンの上部ブラケットの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るエンジンのEGR装置取付構造は、シリンダヘッドの前部に取り付けられる排気管と、シリンダヘッドの後部に取り付けられる吸気マニホールドと、排気管から吸気マニホールドに排気ガスを還流するEGR装置と、を備え、EGR装置が、シリンダヘッドの気筒列方向の端部を構成する端部壁の側方を通って排気管と吸気マニホールドとを連絡するEGR配管と、EGR配管の途中に設けられるEGRクーラと、EGRクーラの下流側に連結されるEGRバルブと、を有するエンジンのEGR装置取付構造において、EGRクーラの下流端に、EGRバルブが上方から取り付けられるクーラ出口側フランジ部が設けられ、EGRクーラは、下流端がその上流端より上方かつ後方に位置するように傾斜した姿勢で端部壁の側方に配置され、EGRバルブは、クーラ出口側フランジ部に接合されるバルブ入口側フランジ部と、バルブ入口側フランジ部から上方に延びる筒状のハウジングと、ハウジングにおけるバルブ入口側フランジ部より上側の部位に設けられるバルブ出口側フランジ部と、を有し、EGRクーラの下部と端部壁の下部とに連結され、EGRクーラを支持する下部ブラケットと、ハウジングにおけるバルブ入口側フランジ部より上側の部位と端部壁の上部とに連結され、EGRバルブを支持する上部ブラケットと、を備えたことを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るエンジンのEGR装置取付構造は、EGRクーラを大型化でき、かつ、EGRバルブの振動を抑制できる。
【実施例
【0011】
以下、本発明の一実施例に係るエンジンのEGR装置取付構造について、図面を用いて説明する。図1から図11は、本発明の一実施例に係るエンジンのEGR装置取付構造を示す図である。図1から図11において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態のエンジンの上下前後左右方向とし、前後方向に対して直交する方向が左右方向、エンジンの高さ方向が上下方向である。
【0012】
まず、構成を説明する。図1において、エンジン1はエンジン本体1Aを備えている。エンジン本体1Aは、シリンダブロック3と、シリンダブロック3の上部に連結されたシリンダヘッド2と、シリンダヘッド2の上部に設けられたヘッドカバー4と、シリンダブロック3の下部に連結されたオイルパン5とを備えている。また、エンジン本体1Aはチェーンカバー8(図7参照)を備えており、チェーンカバー8は、シリンダヘッド2およびシリンダブロック3の右端部に設けられている。
【0013】
シリンダブロック3には、図示しないピストンを上下動自在に収容する図示しない複数(3つ)の気筒が形成されている。シリンダブロック3には、ピストンの上下運動を回転運動に変換するクランク軸11が収容されており、クランク軸11は左右方向に延びている。複数の気筒は、クランク軸11の延伸する左右方向(以下、気筒列方向ともいう)に並んで配置されている。
【0014】
シリンダヘッド2の底部には、図示しない複数の燃焼室が設けられている。燃焼室は各気筒の上部に設けられている。本実施例では、シリンダヘッド2には、3つの燃焼室が左右方向に一列に並んで設けられている。
【0015】
シリンダヘッド2の前部には図面に表れない排気出口が設けられており、排気出口には、排気管としての触媒ケース10が取付けられている。
【0016】
図7において、シリンダヘッド2の後部には、3つの気筒にそれぞれ対応する3つの吸気ポート38が設けられている。エンジン1は、吸気ポート38から取入れた空気と燃料とからなる混合気を図示しない点火プラグによって点火して燃焼させ、燃焼後の排気ガスを排気出口から排出する。
【0017】
図1において、エンジン1は吸気マニホールド15を備えている。吸気マニホールド15はシリンダヘッド2の後部に取り付けられている。エンジン1はEGR装置20を備えており、EGR装置20は、触媒ケース10から吸気マニホールド15に排気ガスを還流する。
【0018】
EGR装置20は、EGR配管としての入口側EGR配管21および出口側EGR配管22と、入口側EGR配管21と出口側EGR配管22の間に設けられるEGRクーラ23と、EGRクーラ23の下流側に連結されるEGRバルブ24と、を有している。
【0019】
図2図5において、シリンダヘッド2は一端側端部壁31を有しており、一端側端部壁31は、シリンダヘッド2の気筒列方向の端部(本実施例では左端部)を構成している。入口側EGR配管21および出口側EGR配管22は、シリンダヘッド2の一端側端部壁31の側方を通って、シリンダヘッド2の前側の触媒ケース10と、シリンダヘッド2の後側の吸気マニホールド15とを連絡している。
【0020】
図1図2において、EGRクーラ23は、排気ガスを冷却する本体部23Bと、この本体部23Bの下端部に設けられたクーラ入口側フランジ部23Aと、本体部23Bの上端部に設けられたクーラ出口側フランジ部23Cとを有している。
【0021】
EGRクーラ23の本体部23Bは、冷却水との熱交換によって排気ガスを冷却する。本体部23Bには、エンジン本体1Aとの間で冷却水が循環している。ここで、EGRクーラ23の上端部は、EGRクーラ23の排気流れ方向の下流端である。一方、EGRクーラ23の下端部は、EGRクーラ23の排気流れ方向の上流端である。クーラ出口側フランジ部23Cには、EGRバルブ24が上方から取り付けられている。
【0022】
入口側EGR配管21の上流端にはフランジ部21Aが設けられており、フランジ部21Aは、触媒ケース10に連結されている。入口側EGR配管21の下流端にはフランジ部21Cが設けられている。フランジ部21CはEGRクーラ23のクーラ入口側フランジ部23Aと連結されている。出口側EGR配管22の上流端にはフランジ部22Aが設けられている。出口側EGR配管22の下流端にはフランジ部22Cが設けられている。
【0023】
EGRクーラ23は、その下流端(上端部)がその上流端(下端部)より上方かつ後方に位置するように傾斜した姿勢で、一端側端部壁31の側方に配置されている。
【0024】
EGRバルブ24は、クーラ出口側フランジ部23Cに接合されるバルブ入口側フランジ部24Aと、バルブ入口側フランジ部24Aから上方に延びる筒状のハウジング24Bと、バルブ出口側フランジ部24Cと、を有している。
【0025】
バルブ出口側フランジ部24Cは、ハウジング24Bにおけるバルブ入口側フランジ部24Aより上側の部位に設けられている。ハウジング24Bは、図示しない弁体を収容しており、EGRバルブ24の本体に相当する。
【0026】
エンジン1は、EGRクーラ23を支持する下部ブラケット40を備えている。下部ブラケット40は、EGRクーラ23の下部と、一端側端部壁31の下部とに連結されている。言い換えれば、EGRクーラ23は、下部ブラケット40を介して、シリンダヘッド2の一端側端部壁31の下部に支持されている。
【0027】
エンジン1は、EGRバルブ24を支持する上部ブラケット50を備えている。上部ブラケット50は、EGRバルブ24のハウジング24Bにおけるバルブ入口側フランジ部24Aより上側の部位と、一端側端部壁31の上部とに連結されている。言い換えれば、EGRバルブ24は、上部ブラケット50を介して、シリンダヘッド2の一端側端部壁31の上部に支持されている。
【0028】
シリンダヘッド2の一端側端部壁31には、冷却水出口18が設けられており、冷却水出口18には図示しない冷却水配管を介して図示しないラジエータが接続されている。シリンダヘッド2内を冷却した冷却水は、冷却水出口18から排出され、ラジエータで冷却された後、再びエンジン1に戻される。
【0029】
EGRクーラ23は、冷却水出口18との干渉を避けるため、シリンダヘッド2の一端側端部壁31における冷却水出口18よりも後方かつ下方の部位に沿って配置されている。EGR装置20を備える本実施例のエンジン1において、EGRクーラ23およびEGRバルブ24の設置位置および設置姿勢は、冷却水出口18の設置位置によっても制約を受けている。
【0030】
図3において、クーラ出口側フランジ部23Cは最大突出部23Dを有している。最大突出部23Dは、入口側EGR配管21から半径方向の外側への突出量が最大となる部位である。本実施例では、クーラ出口側フランジ部23Cは、互いに反対方向に突出する1対の最大突出部23Dを有している。
【0031】
最大突出部23Dは、入口側EGR配管21から気筒列方向に交差する交差方向(前後方向)に突出している。なお、クーラ出口側フランジ部23Cと接合するバルブ入口側フランジ部24Aも、クーラ出口側フランジ部23Cと同形状に形成されており、最大突出部23Dに相当する部位を有している。
【0032】
図4において、バルブ出口側フランジ部24Cは、気筒列方向に交差する交差方向における吸気マニホールド15側(後側)を向いて開口している。出口側EGR配管22は、バルブ出口側フランジ部24Cと吸気マニホールド15とを連絡しており、排気ガスをバルブ出口側フランジ部24Cから吸気マニホールド15に導いている。
【0033】
図4図6において、吸気マニホールド15は、空気を一時的に貯留するサージタンク15Aと、このサージタンク15Aから分岐して吸気ポート38(図7参照)に連結される3つの多岐部15Bと、を有している。
【0034】
吸気マニホールド15は分配管15Cを有している。分配管15Cは、出口側EGR配管22と3つの多岐部15Bとを接続しており、出口側EGR配管22から受け入れた排気ガスを多岐部15Bに分配している。
【0035】
図1において、出口側EGR配管22のフランジ部22Aは、締結部材17によってEGRバルブ24のバルブ出口側フランジ部24Cに取り付けられている。締結部材17は本実施例ではボルトである。フランジ部22Aは、2つの締結部材17によってバルブ出口側フランジ部24Cに取り付けられている。
【0036】
上部ブラケット50は、ハウジング24Bに対してバルブ出口側フランジ部24Cとは反対側に配置されている。詳しくは、バルブ出口側フランジ部24Cはハウジング24Bの後方に配置されており、上部ブラケット50はハウジング24Bの前方に配置されている。
【0037】
上部ブラケット50は、締結部材17によってハウジング24Bに取り付けられている。つまり、上部ブラケット50は、出口側EGR配管22をバルブ出口側フランジ部24Cに取り付ける締結部材17を共用してハウジング24Bに取り付けられている。言い換えれば、共通の締結部材17を「とも締め」することにより、上部ブラケット50はハウジング24Bに取付けられている。
【0038】
図8図9図10図11において、上部ブラケット50は、一端側端部壁31に沿って上下方向に延びる板状の基部54と、基部54から気筒列方向に突出する突出部55と、を有している。ここで、一端側端部壁31に沿う方向とは、気筒列方向(左右方向)に直交する方向(前後方向)である。
【0039】
したがって、基部54は、一端側端部壁31と平行な平面に沿って広がっており、突出部55は、この基部54に直交する方向に突出している。このため、上部ブラケット50の全体形状は、上方から見た場合にT字形になっている。
【0040】
基部54は、一端側端部壁31の後端かつ上部に固定される第1固定部51と、一端側端部壁31の後端かつ第1固定部51より下側に固定される第2固定部52と、一端側端部壁31の上端かつ第1固定部51よりも前側に固定される第3固定部53と、を有している。
【0041】
第1固定部51、第2固定部52および第3固定部53は、締結部材16(図2参照)が挿通される孔を有する円筒形状(ボス形状)に形成されており、基部54の他の部位よりも剛性が高い。このように、上部ブラケット50は、板状の基部54の第1固定部51、第2固定部52および第3固定部53の3箇所で、シリンダヘッド2の一端側端部壁31に強固に、固定されている。
【0042】
突出部55は、気筒列方向に突出するリブ部56と、リブ部56の上端部から気筒列方向にさらに突出するEGRバルブ取付部57と、を有している。リブ部56は、基部54の第1固定部51、第2固定部52および第3固定部53に囲まれる部位から気筒列方向に突出している。
【0043】
また、リブ部56は、上下方向に直線状に延びている。EGRバルブ取付部57には、ハウジング24Bが取り付けられている。EGRバルブ取付部57には、ボス形状部57A、57Bを有している。
【0044】
ボス形状部57A、57Bは、締結部材17が挿通される孔を有する円筒形状(ボス形状)に形成されており、EGRバルブ取付部57における他の部よりも剛性が高い。ボス形状部57AはEGRバルブ取付部57の突出方向の先端部の近傍に形成されており、ボス形状部57BはEGRバルブ取付部57の突出方向の基端部(基部54の近傍領域)に形成されている。
【0045】
図3図5において、一端側端部壁31は、シリンダヘッド2の気筒列方向の一端部(左端部)を構成している。シリンダヘッド2は他端側端部壁32を有しており、他端側端部壁32は、シリンダヘッド2の気筒列方向の他端部(右端部)を構成している。
【0046】
また、シリンダヘッド2はボス部35を有しており、このボス部35は、他端側端部壁32から気筒列方向に延びて一端側端部壁31と連絡している。ボス部35の内部には油路35Aが形成されている。
【0047】
本実施例において、シリンダヘッド2には、互いに平行に配置された2つのボス部35が設けられている。シリンダヘッド2の一端側端部壁31には連結部36が設けられている。連結部36の内部には、第3固定部53を挿通する締結部材16(図2参照)が締結される雌ねじが形成されている。
【0048】
連結部36は、第3固定部53とボス部35とを連結している。連結部36は、締結部材16を受けるボス部としての機能だけでなく、第3固定部53を固定する締結部材16からの荷重をボス部35に逃がす機能も有している。
【0049】
以上説明したように、本実施例では、EGRクーラ23の下流端には、EGRバルブ24が上方から取り付けられるクーラ出口側フランジ部23Cが設けられている。EGRクーラ23は、下流端がその上流端より上方かつ後方に位置するように傾斜した姿勢で一端側端部壁31の側方に配置されている。
【0050】
また、EGRバルブ24は、クーラ出口側フランジ部23Cに接合されるバルブ入口側フランジ部24Aと、バルブ入口側フランジ部24Aから上方に延びる筒状のハウジング24Bと、ハウジング24Bにおけるバルブ入口側フランジ部24Aより上側の部位に設けられるバルブ出口側フランジ部24Cと、を有している。
【0051】
エンジン1は、EGRクーラ23の下部と一端側端部壁31の下部とに連結され、EGRクーラ23を支持する下部ブラケット40と、ハウジング24Bにおけるバルブ入口側フランジ部24Aより上側の部位と一端側端部壁31の上部とに連結され、EGRバルブ24を支持する上部ブラケット50と、を備えている。
【0052】
このように、EGRクーラ23は、その下流端が上流端より上方かつ後方に位置するように傾斜した姿勢で、シリンダヘッド2の一端側端部壁31の側方に配置されているので、EGRクーラ23を上下方向に延伸させるように直立した姿勢、または前後方向に延伸させるように横転した姿勢で配置する場合と比較して、EGRクーラ23の長さを長くすることができる。
【0053】
ここで、仮に、クーラ出口側フランジ部23Cを前後方向に向けた場合、またはEGRバルブ24を横転した姿勢で配置した場合は、クーラ出口側フランジ部23CやEGRバルブ24によって、EGRクーラ23を配置可能なスペースが制限されてしまい、EGRクーラ23の寸法を上下方向に伸ばすことができない。
【0054】
そこで、本実施例において、EGRクーラ23の下流端にはクーラ出口側フランジ部23Cが設けられており、このクーラ出口側フランジ部23Cは上向きに開口している。クーラ出口側フランジ部23Cには、EGRバルブ24のバルブ入口側フランジ部24Aが連結されている。また、EGRバルブ24のハウジング24Bは、バルブ入口側フランジ部24Aから上方に伸びる姿勢(直立した姿勢)で配置されている。
【0055】
この構成により、EGRクーラ23の配置可能なスペースが制限されることがなく、EGRクーラ23の寸法を上下方向に伸ばすことができ、EGRクーラ23を大型化できる。
【0056】
また、EGRクーラ23の下部を下部ブラケット40により一端側端部壁31の下部に固定する一方、EGRバルブ24におけるハウジング24Bの上下方向中間部を、上部ブラケット50により一端側端部壁31の上部に連結したため、EGRクーラ23の下部とEGRバルブ24の上部をそれぞれ下部ブラケット40と上部ブラケット50により一端側端部壁31に固定でき、EGRクーラ23とEGRバルブ24の振動を低減できる。
【0057】
この結果、EGRクーラ23を大型化でき、かつ、EGRバルブ24の振動を抑制できる
【0058】
本実施例では、クーラ出口側フランジ部23Cは、入口側EGR配管21から半径方向の外側への突出量が最大となる最大突出部23Dを有している。ここで、仮に、最大突出部23Dが気筒列方向に突出するような姿勢でクーラ出口側フランジ部23Cを配置した場合、最大突出部23Dがシリンダヘッド2に接触することを回避するため、EGRバルブ24およびEGRクーラ23をシリンダヘッド2から気筒列方向に離して配置する必要がある。この場合、上部ブラケット50はシリンダヘッド2から離れた位置でEGRバルブ24を支持することになり、上部ブラケット50のアーム長が長くなるため、EGRバルブ24およびEGRクーラ23の振動を抑制する効果が低減してしまう。そこで、本実施例では、最大突出部23Dは、入口側EGR配管21から気筒列方向に交差する交差方向に突出している。
【0059】
そのため、最大突出部23Dを気筒列方向に交差する交差方向に突出させることにより、EGRバルブ24およびEGRクーラ23をシリンダヘッド2に近づけることができるので、EGRバルブ24およびEGRクーラ23の振動を抑制することができる。
【0060】
本実施例では、バルブ出口側フランジ部24Cは、気筒列方向に交差する交差方向における吸気マニホールド15側を向いて開口している。
【0061】
EGR配管は、バルブ出口側フランジ部24Cと吸気マニホールド15とを連絡する出口側EGR配管22を有している。
【0062】
上部ブラケット50は、ハウジング24Bに対してバルブ出口側フランジ部24Cとは反対側に配置されている。また、上部ブラケット50は、出口側EGR配管22をバルブ出口側フランジ部24Cに取り付ける締結部材17を共用してハウジング24Bに取り付けられている。
【0063】
これにより、共通の締結部材17によって、ハウジング24Bの吸気マニホールド15側とその反対側とに、出口側EGR配管22と上部ブラケット50と、いわゆるとも締めの態様で取付けることができるので、EGRバルブ24の支持剛性を高めることができ、EGRバルブ24の振動を抑制することができる。
【0064】
本実施例では、上部ブラケット50は、一端側端部壁31に沿って上下方向に延びる板状の基部54と、基部54から気筒列方向に突出する突出部55と、を有している。基部54は、一端側端部壁31の後端かつ上部に固定される第1固定部51と、一端側端部壁31の後端かつ第1固定部51より下側に固定される第2固定部52と、一端側端部壁31の上端かつ第1固定部51よりも前側に固定される第3固定部53と、を有する。
【0065】
突出部55は、基部54の第1固定部51、第2固定部52および第3固定部53に囲まれる部位から気筒列方向に突出し、かつ、上下方向に延びるリブ部56と、リブ部56の上端部から気筒列方向にさらに突出し、ハウジング24Bが取り付けられるEGRバルブ取付部57と、を有する。
【0066】
これにより、上部ブラケット50の板状の基部54を、その第1固定部51、第2固定部52および第3固定部53の複数の固定部において、シリンダヘッド2の剛性の高い部分である一端側端部壁31の後端または上端に対して強固に取りつけることができる。このため、上部ブラケット50の支持剛性を高めることができる。
【0067】
また、上部ブラケット50のリブ部56の上端部から気筒列方向にEGRバルブ取付部57を突出させたことにより、上部ブラケット50によってEGRバルブ24を高い位置で支持することができる。このため、EGRバルブ24をより上方に配置してEGRクーラ23の寸法を上下方向に延ばすことができ、かつ、EGRバルブ24を支持する上部ブラケット50の支持剛性を高めることができる。
【0068】
本実施例では、シリンダヘッド2の気筒列方向の一端部(左端部)に一端側端部壁31が設けられ、気筒列方向の他端部(右端部)に他端側端部壁32が設けられている。シリンダヘッド2は、他端側端部壁32から気筒列方向に延びて一端側端部壁31と連絡し、その内部に油路35Aが形成されたボス部35を有している。一端側端部壁31は、第3固定部53とボス部35とを連結する連結部36を有する。
【0069】
このように、油路35Aが内部に形成されていることにより剛性の高められたボス部35に、一端側端部壁31の連結部36を介して第3固定部53を連結することにより、上部ブラケット50の第3固定部53での支持剛性を高めることができる。
【0070】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0071】
1...エンジン、2...シリンダヘッド、10...触媒ケース(排気管)、15...吸気マニホールド、17...締結部材、20...EGR装置、21...入口側EGR配管(EGR配管)、22...出口側EGR配管(EGR配管)、23...EGRクーラ、23C...クーラ出口側フランジ部、23D...最大突出部、24...EGRバルブ、24A...バルブ入口側フランジ部、24B...ハウジング、24C...バルブ出口側フランジ部、31...一端側端部壁(端部壁)、32...他端側端部壁、35...ボス部、35A...油路、36...連結部、40...下部ブラケット、50...上部ブラケット、51...第1固定部、52...第2固定部、53...第3固定部、54...基部、55...突出部、56...リブ部、57...EGRバルブ取付部
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