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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】グロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20240109BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240109BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20240109BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H02G3/22
B60R16/02 622
F16L5/02 A
H01B17/58 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020090086
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184685
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小林 泰輝
【審査官】鈴木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-289726(JP,A)
【文献】特開2018-133962(JP,A)
【文献】特開2004-187354(JP,A)
【文献】特開平07-042878(JP,A)
【文献】特開2003-111249(JP,A)
【文献】特開2011-193557(JP,A)
【文献】特開2011-166906(JP,A)
【文献】特開平08-336224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
B60R 16/02
F16L 5/02
H01B 17/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔を有する取付対象における前記挿通孔の周囲の部分に固定される環状の装着部と、
前記装着部の内周縁部から前記装着部の軸方向の一方側に延出された筒状の側壁及び前記側壁の先端を閉塞する底壁を有する有底筒状の応力吸収部と、
前記底壁に一体に設けられるとともに、前記挿通孔に挿通されるワイヤハーネスの外周面に接触して前記ワイヤハーネスの外周を覆う筒状の挿通部と、を備え、
前記装着部は、前記取付対象における前記挿通孔の周囲の部分もしくは前記挿通孔の内周面に密着する環状のシール部を有し、
前記側壁は可撓性を有し、
前記挿通部は、前記底壁から前記側壁の基端側に向かって前記応力吸収部の内側で突出しており、
前記側壁は、前記側壁の軸方向と直交する方向から見て、前記側壁の中心軸線と交差する方向に沿って延びる複数の襞部を有し、
前記複数の襞部は、前記側壁の軸方向における位置が互いにずれており、
前記挿通部の全体は、前記装着部の軸方向において、前記底壁の外側面よりも前記装着部側に位置しており、
前記装着部の軸方向において、前記装着部側にある前記挿通部の先端は、前記襞部の内側に位置している、グロメット。
【請求項2】
前記挿通部は、前記挿通部の中心軸線を含む平面で切った断面において前記挿通部の中心軸線と直交する方向に前記側壁と重なる部分を有する請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
各前記襞部は、前記側壁の中心軸線を囲む環状をなしており、
複数の前記襞部は、前記装着部側から前記底壁側に向かって並ぶとともに隣り合う前記襞部同士が連続して連なった蛇腹部を構成している請求項1又は請求項2に記載のグロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、グロメットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車体パネルに設けられた挿通孔にワイヤハーネスが挿通される場合には、挿通孔における止水を行うためにグロメットが用いられることがある。このようなグロメットは、車体パネルにおける挿通孔の周囲の部分に固定される環状の装着部と、ワイヤハーネスの外周面に接触して同ワイヤハーネスの外周を覆う筒状の挿通部とを備えている。そして、装着部は、車体パネルにおける挿通孔の周囲の部分もしくは挿通孔の内周面に密着する環状のシール部を有する。
【0003】
例えば特許文献1に記載されたグロメットは、装着部と挿通部との間を閉塞するように当該装着部と当該挿通部とを連結する可撓部を有する。可撓部は、挿通部の軸方向の両端部のうち、グロメットが車体パネルに装着されたときに車体パネル側となる一端部から装着部の内周縁部にわたって設けられている。更に、可撓部は、グロメットが車体パネルに装着された状態において車体パネルとは反対側に突出する山状をなす1つの襞によって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-210214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワイヤハーネスは、挿通孔に対して傾斜した状態で同挿通孔に挿通されることがある。また、車両において、ワイヤハーネスの配置位置に誤差が生じる場合がある。このような場合には、グロメットにおいて、装着部に対して挿通部が装着部の軸方向に大きく引っ張られたり、装着部に対して挿通部が大きく傾斜されたりすることがある。すると、連結部だけでは挿通部の姿勢の変化や位置の変化に伴う応力を吸収しきれずに、装着部まで変形される可能性が生じる。装着部が変形すると、装着部と車体パネルとの間に隙間が発生する可能性がある。装着部と車体パネルとの間に隙間が発生すると、その隙間から水が浸入する可能性が生じるため、グロメットによる止水性能の低下が懸念される。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に記載されたグロメットにおいて、可撓部が有する襞の数を増やすことにより、装着部に対する挿通部の相対移動によって発生したより大きな応力を可撓部において吸収することが考えられる。しかしながら、装着部の中心軸線に対し直交する方向に並ぶ複数の襞を可撓部が有する構成とすると、装着部の中心軸線に対し直交する方向にグロメットが大型化されてしまう。車両において、グロメットを配置するためのスペースは限られているため、グロメットが大型化されることは好ましくない。そのため、グロメットの大型化を抑制しつつ同グロメットの止水性能の低下を抑制することが望まれている。
【0007】
本開示の目的は、大型化を抑制しつつ止水性能の低下を抑制できるグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のグロメットは、挿通孔を有する取付対象における前記挿通孔の周囲の部分に固定される環状の装着部と、前記装着部の内周縁部から前記装着部の軸方向の一方側に延出された筒状の側壁及び前記側壁の先端を閉塞する底壁を有する有底筒状の応力吸収部と、前記底壁に一体に設けられるとともに、前記挿通孔に挿通されるワイヤハーネスの外周面に接触して前記ワイヤハーネスの外周を覆う筒状の挿通部と、を備え、前記装着部は、前記取付対象における前記挿通孔の周囲の部分もしくは前記挿通孔の内周面に密着する環状のシール部を有し、前記側壁は可撓性を有し、前記挿通部は、前記底壁から前記側壁の基端側に向かって前記応力吸収部の内側で突出しているグロメットである。
【発明の効果】
【0009】
本開示のグロメットによれば、大型化を抑制しつつ止水性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態における車体パネルに装着されたグロメットの断面図である。
図2図2は、一実施形態におけるグロメットの斜視図である。
図3図3は、一実施形態におけるグロメットの断面図である。
図4図4は、一実施形態におけるグロメットの平面図である。
図5図5は、変更例におけるグロメットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のグロメットは、
[1]挿通孔を有する取付対象における前記挿通孔の周囲の部分に固定される環状の装着部と、前記装着部の内周縁部から前記装着部の軸方向の一方側に延出された筒状の側壁及び前記側壁の先端を閉塞する底壁を有する有底筒状の応力吸収部と、前記底壁に一体に設けられるとともに、前記挿通孔に挿通されるワイヤハーネスの外周面に接触して前記ワイヤハーネスの外周を覆う筒状の挿通部と、を備え、前記装着部は、前記取付対象における前記挿通孔の周囲の部分もしくは前記挿通孔の内周面に密着する環状のシール部を有し、前記側壁は可撓性を有し、前記挿通部は、前記底壁から前記側壁の基端側に向かって前記応力吸収部の内側で突出しているグロメットである。
【0012】
この構成によれば、挿通部は、応力吸収部の底壁に一体に設けられている。更に、応力吸収部の側壁は可撓性を有する。そのため、ワイヤハーネスの配置位置の誤差や、ワイヤハーネスの長さのばらつき等によって、装着部に対して挿通部が相対移動した場合、当該相対移動によって発生した応力は、側壁が撓むことにより吸収可能である。このように、装着部に対する挿通部の相対移動によって発生した応力を、装着部の内周縁部から同装着部の軸方向の一方側に延出された側壁において吸収する。従って、装着部の軸方向と直交する方向にグロメットを大型化しなくとも、装着部に対する挿通部の相対移動によって発生した応力が装着部まで伝達されることを抑制できる。そして、装着部に対して挿通部が相対移動した場合に装着部まで変形されることを抑制できるため、シール部が変形されることを抑制できる。その結果、グロメットの大型化を抑制しつつ、同グロメットの止水性能の低下を抑制できる。
【0013】
また、挿通部は、応力吸収部の底壁に一体に設けられている。更に、挿通部は、底壁から側壁の基端側に向かって応力吸収部の内側で突出している。そのため、挿通部の全体が応力吸収部の外部に突出する場合に比べて、側壁の軸方向におけるグロメットの大型化を抑制できる。従って、側壁が装着部の内周縁部から同装着部の軸方向の一方側に延出された構成であっても、側壁の軸方向におけるグロメットの大型化を抑制できる。
【0014】
[2]前記挿通部は、前記挿通部の中心軸線を含む平面で切った断面において前記挿通部の中心軸線と直交する方向に前記側壁と重なる部分を有することが好ましい。
この構成によれば、応力吸収部の内側で側壁の基端側に突出する挿通部を容易に設けることができる。
【0015】
[3]前記側壁は、前記側壁の軸方向と直交する方向から見て、前記側壁の中心軸線と交差する方向に沿って延びる複数の襞部を有し、複数の前記襞部は、前記側壁の軸方向における位置が互いにずれていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、複数の襞部は、側壁の軸方向における位置が互いにずれている。そのため、装着部の軸方向と直交する方向に複数の襞部が並ぶ場合に比べて、装着部の軸方向と直交する方向における応力吸収部の大型化を抑制しつつ同応力吸収部に複数の襞部を設けることができる。そして、複数の襞部が開くように変形したり閉じるように変形したりすることにより、装着部に対する挿通部の相対移動によって発生した応力を、複数の襞部を有する側壁においてより吸収しやすくなる。従って、装着部に対する挿通部の相対移動に伴って、装着部まで変形されることをより抑制できるため、シール部が変形されることをより抑制できる。その結果、グロメットの止水性能の低下をより抑制できる。
【0017】
[4]各前記襞部は、前記側壁の中心軸線を囲む環状をなしており、複数の前記襞部は、前記装着部側から前記底壁側に向かって並ぶとともに隣り合う前記襞部同士が連続して連なった蛇腹部を構成していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、側壁が有する複数の襞部は蛇腹部を構成している。そのため、複数の襞部が開くように変形したり閉じるように変形したりすることに加えて、隣り合う襞部と襞部との間の部分が開くように変形したり閉じるように変形したりすることができる。従って、装着部に対する挿通部の相対移動によって発生した応力を、蛇腹部を有する側壁においてより吸収しやすくなる。よって、装着部に対する挿通部の相対移動に伴って、装着部まで変形されることを更に抑制できるため、シール部が変形されることを更に抑制できる。その結果、グロメットの止水性能の低下を更に抑制できる。また、装着部に対する挿通部の更に大きな相対移動を側壁において許容可能となるため、グロメットの止水性能の低下を一層抑制できる。
【0019】
[5]前記挿通部の全体は、前記装着部の軸方向において、前記底壁の外側面よりも前記装着部側に位置することが好ましい。
この構成によれば、挿通部が底壁から応力吸収部の外部に突出する部分を有する場合に比べて、装着部の軸方向におけるグロメットの大型化を抑制しやすい。従って、側壁が装着部の内周縁部から同装着部の軸方向の一方側に延出された構成であっても、装着部の軸方向におけるグロメットの大型化をより抑制しやすくなる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のグロメットの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
以下、グロメットの一実施形態について説明する。なお、添付図面は、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0022】
図1に示す本実施形態のグロメット20は、自動車の室内と室外とを隔てる車体パネル11に形成された挿通孔12における止水を行うためのものである。即ち、挿通孔12と同挿通孔12に挿通されるワイヤハーネス13,14との間の止水性を確保するためのものである。また、グロメット20は、ワイヤハーネス13,14を保護する役割も果たす。
【0023】
車体パネル11は、例えば、車両における床下の空間とエンジンルームとを仕切るパネルである。挿通孔12は、車体パネル11を貫通している。本実施形態では、挿通孔12は、同挿通孔12の貫通方向から見た形状が円形状をなしている。
【0024】
(グロメット20の構成)
図1及び図2に示すように、グロメット20は、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に固定される環状の装着部21と、装着部21の内周縁部に一体に設けられた応力吸収部22とを有する。更に、グロメット20は、挿通孔12に挿通されるワイヤハーネス13の外周面を覆う筒状の第1挿通部23と、挿通孔12に挿通されるワイヤハーネス14の外周面を覆う筒状の第2挿通部24とを有する。グロメット20は、可撓性を有する材料からなる。グロメット20の材料としては、例えば、可撓性が高いEPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)などのエラストマを用いることができる。
【0025】
(装着部21の構成)
図1図2及び図4に示すように、装着部21は、外形が円形状をなす環状をなしている。なお、以下、装着部21の中心軸線L1と平行な方向、即ち装着部21の軸方向を軸方向X1と記載する。また、単に「径方向」と記載した場合には、装着部21の径方向であって中心軸線L1と直交する方向を意味する。また、単に「周方向」と記載した場合には、装着部21の周方向であって中心軸線L1回りの周方向を意味する。
【0026】
装着部21の内周縁部は、軸方向X1から見て装着部21の外形と同心となる楕円形状をなしている。装着部21の外径は、挿通孔12の内径よりも大きい。装着部21は、グロメット20が車体パネル11に装着された場合に、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分と対向する。
【0027】
図1及び図3に示すように、装着部21は、装着部21における軸方向X1の一側面にシール部31を有する。当該一側面は、装着部21において、グロメット20が車体パネル11に装着された場合に車体パネル11と軸方向X1に対向する側面である。シール部31は、グロメット20が車体パネル11に装着された場合に、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に密着するものである。なお、図3は、図4における3-3断面図である。
【0028】
シール部31は、第1リップ部32及び第2リップ部33を有する。第1リップ部32及び第2リップ部33の各々は、装着部21における軸方向X1の一側面から軸方向X1に突出している。また、第1リップ部32及び第2リップ部33の各々は、周方向に沿って連続して延びる突条をなしている。第1リップ部32は、挿通孔12の内径よりも一回り大きい環状をなしている。第2リップ部33は、第1リップ部32よりも一回り大きい環状をなしている。中心軸線L1を含む平面で切ったグロメット20の断面において、第1リップ部32と第2リップ部33とは径方向に並んでいる。なお、図1及び図3に示すグロメット20の断面図は、中心軸線L1を含む平面で切ったグロメット20の断面図である。
【0029】
(応力吸収部22の構成)
図1図3に示すように、応力吸収部22は、装着部21の内周縁部から軸方向X1の一方側に延出された筒状の側壁41、及び側壁41の先端を閉塞する底壁42を有する有底筒状をなしている。側壁41及び底壁42は可撓性を有する。
【0030】
側壁41は、装着部21の内周縁部から、グロメット20が車体パネル11に装着された場合に車体パネル11から遠ざかる方向、即ち装着部21からの第1リップ部32及び第2リップ部33の突出方向と反対方向に延出されている。本実施形態では、側壁41は、装着部21と同軸状に形成されている。即ち、側壁41の中心軸線L2は、装着部21の中心軸線L1と同一直線上に位置する。このため、側壁41の軸方向は、軸方向X1と同方向である。
【0031】
側壁41は、装着部21の内周縁部から軸方向X1に沿って延出された筒状をなす第1筒部51と、側壁41における第1筒部51と反対側の軸方向の端部に位置する第2筒部52と、第1筒部51と第2筒部52とを連結するように設けられた蛇腹部53とを有する。なお、第1筒部51は、側壁41の基端部を構成するとともに、第2筒部52は、側壁41の先端部を構成している。
【0032】
図4に示すように、軸方向X1から見て、第1筒部51は、装着部21の内周縁部に対応した楕円状をなす筒状に形成されている。第2筒部52は、第1筒部51の外形よりも小さい外形を有する筒状をなしている。このため、応力吸収部22における底壁42側の端部の外形は、応力吸収部22における同応力吸収部22の開口部側の端部における外形よりも小さい。軸方向X1から見て、第2筒部52は、第1筒部51よりも径方向内側に位置している。第2筒部52は、軸方向X1から見た形状が角丸長方形状(即ち競走路形状)をなす筒状に形成されている。なお、軸方向X1から見て、第1筒部51と第2筒部52とは同心状に形成されている。
【0033】
図2図4に示すように、底壁42は、第2筒部52における蛇腹部53と反対側の端部を閉塞している。底壁42は、軸方向X1と直交する板状をなしている。底壁42は、軸方向X1から見た形状が側壁41の先端部の形状に対応した角丸長方形状をなしている。
【0034】
蛇腹部53は、中心軸線L2に対して傾斜した複数の第1壁部54と、中心軸線L2に対して第1壁部54とは異なる角度で傾斜した複数の第2壁部55とを有する。本実施形態では、蛇腹部53は、第1壁部54を4つ備えるとともに、第2壁部55を4つ備えている。第1壁部54及び第2壁部55の各々は中心軸線L2を囲む環状をなしている。本実施形態では、第1壁部54及び第2壁部55の各々は、軸方向X1から見て、楕円状もしくは角丸長方形状をなしている。中心軸線L2を含む平面で切ったグロメット20の断面において、第1壁部54と第2壁部55とは装着部21側から底壁42側に向かって交互に並んでいる。即ち、第1壁部54と第2壁部55とは、中心軸線L2方向、即ち側壁41の軸方向に沿って交互に並んでいる。
【0035】
ここで、4つの第1壁部54を、側壁41の基端側に位置するものから順に第1壁部54a,54b,54c,54dとする。また、4つの第2壁部55を、側壁41の基端側に位置するものから順に第2壁部55a,55b,55c,55dとする。4つの第1壁部54及び4つの第2壁部55は、側壁41の基端側から先端側に向かって、第1壁部54a、第2壁部55a、第1壁部54b、第2壁部55b、第1壁部54c、第2壁部55c、第1壁部54d、第2壁部55dの順に並んでいる。第1壁部54aは、第1筒部51における装着部21と反対側の軸方向X1の端部から延出されている。また、第2壁部55dは、第2筒部52における底壁42と反対側の軸方向X1の端部から延出されている。
【0036】
第1壁部54a~54dの各々は、側壁41の軸方向(本実施形態では軸方向X1に同じ)に沿って底壁42に近づくにつれて拡径するように中心軸線L2に対して傾斜している。一方、第2壁部55a~55dの各々は、側壁41の軸方向に沿って底壁42に近づくにつれて縮径するように中心軸線L2に対して傾斜している。このように、各第1壁部54と各第2壁部55とは、傾斜の向きが反対になっている。そして、側壁41の軸方向に隣り合う第1壁部54と第2壁部55とは、側壁41の軸方向の一方側の端部同士もしくは側壁41の軸方向の他方側の端部同士が繋がっている。
【0037】
側壁41の軸方向に隣り合う第1壁部54と第2壁部55とは、側壁41の軸方向と直交する方向から見て、中心軸線L2と交差する方向に沿って延びる襞部56を形成している。具体的には、最も装着部21側に位置する第1壁部54aと、同第1壁部54aと底壁42との間に位置し且つ同第1壁部54aと側壁41の軸方向に隣り合う第2壁部55aとが、襞部56aを形成している。第1壁部54aと第2壁部55aとは、側壁41の内側に開口した環状の溝を形成するとともに、側壁41の外側に突出した環状の突条を形成している。このため、襞部56aは、突条の裏側に同突条と同方向に延びる溝を有する形状をなしている。なお、本実施形態では、襞部56aは、側壁41の軸方向と直交する方向から見て、中心軸線L2と直交する方向に沿って延びている。更に、本実施形態では、襞部56aは、中心軸線L2を含む平面で切った断面、即ち周方向と直交する平面で切った断面がV字状をなしている。また、襞部56aは、中心軸線L2を囲むように切れ目なく連続して延びており、側壁41の軸方向から見た形状が楕円状をなしている。即ち、襞部56aは、中心軸線L2を囲む環状をなしている。
【0038】
同様に、側壁41の軸方向に隣り合う第1壁部54bと第2壁部55bとは、襞部56aと同様の襞部56bを形成している。また、側壁41の軸方向に隣り合う第1壁部54cと第2壁部55cとは、襞部56aと同様の襞部56cを形成している。更に、側壁41の軸方向に隣り合う第1壁部54dと第2壁部55dとは、襞部56aと同様の襞部56dを形成している。そして、装着部21側から底壁42側に向かって、襞部56a、襞部56b、襞部56c、襞部56dの順に並んでいる。襞部56a~56dは、側壁41の軸方向における位置が互いにずれている。
【0039】
また、側壁41の軸方向に隣り合う第2壁部55a及び第1壁部54bの軸方向X1の一端部同士が繋がっているため、側壁41の軸方向に隣り合う襞部56aと襞部56bとは連続して設けられている。同様に、側壁41の軸方向に隣り合う第2壁部55b及び第1壁部54cの軸方向X1の一端部同士が繋がっているため、側壁41の軸方向に隣り合う襞部56bと襞部56cとは連続して設けられている。更に、側壁41の軸方向に隣り合う第2壁部55c及び第1壁部54dの軸方向X1の一端部同士が繋がっているため、側壁41の軸方向に隣り合う襞部56cと襞部56dとは連続して設けられている。そして、これら襞部56a~56dによって、隣り合う襞部56同士が連続して連なった蛇腹部53が構成されている。
【0040】
複数の襞部56は、中心軸線L2を含む平面で切ったグロメット20の断面において、底壁42に近い襞部56ほど、中心軸線L2と直交する方向における襞部56の長さが短い。なお、中心軸線L2を含む平面で切ったグロメット20の断面において、中心軸線L2と直交する方向における襞部56の長さは、図3において、襞部56の左右方向の長さに該当する。
【0041】
(挿通部23,24の構成)
図1に示すように、第1挿通部23及び第2挿通部24は、底壁42に一体に設けられている。側壁41の軸方向から見て、第1挿通部23及び第2挿通部24は、底壁42の長手方向に並んでいる。第1挿通部23及び第2挿通部24の各々は、側壁41の軸方向に沿って延びる円筒状をなしている。本実施形態では、第1挿通部23及び第2挿通部24の各々は、軸方向X1に沿って延びる円筒状をなしている。更に、第1挿通部23及び第2挿通部24の各々は、底壁42から側壁41の基端側に向かって応力吸収部22の内側で突出している。そして、第1挿通部23は、同第1挿通部23の中心軸線L3を含む平面で切ったグロメット20の断面において同中心軸線L3と直交する方向に側壁41と重なる。第2挿通部24は、同第2挿通部24の中心軸線L4を含む平面で切ったグロメット20の断面において同中心軸線L4と直交する方向に側壁41と重なる。なお、図1及び図3に示すグロメット20の断面は、中心軸線L3を含む平面で切った断面であるとともに、中心軸線L4を含む平面で切った断面である。第1挿通部23の全体は、軸方向X1において、底壁42の外側面42aよりも装着部21側に位置する。第2挿通部24の全体は、軸方向X1において、底壁42の外側面42aよりも装着部21側に位置する。
【0042】
第1挿通部23は、同第1挿通部23に挿通されたワイヤハーネス13の外周面に接触して同ワイヤハーネス13の外周を覆う。また、第2挿通部24は、同第2挿通部24に挿通されたワイヤハーネス14の外周面に接触して同ワイヤハーネス14の外周を覆う。
【0043】
図3に示すように、第1挿通部23の先端部、即ち第1挿通部23における応力吸収部22の内側に突出した部分の先端部には、同第1挿通部23の外周に突出した鍔部23aが設けられている。鍔部23aは、中心軸線L3回りの周方向に沿って延びる突条をなしている。同様に、第2挿通部24の先端部、即ち第2挿通部24における応力吸収部22の内側に突出した部分の先端部には、同第2挿通部24の外周に突出した鍔部24aが設けられている。鍔部24aは、中心軸線L4回りの周方向に沿って延びる突条をなしている。本実施形態では、鍔部23a,24aは、円環状をなしている。
【0044】
第1挿通部23と同第1挿通部23に挿通されたワイヤハーネス13とは、固定部材61によって中心軸線L3方向における相対移動が抑制される。固定部材61は、例えば、第1挿通部23の外周面とワイヤハーネス13の外周面とにわたって巻き付けられる粘着テープや、第1挿通部23の外周面に装着される結束バンド等である。本実施形態では、固定部材61は、粘着テープである。固定部材61を第1挿通部23及びワイヤハーネス13に装着する際には、第1挿通部23を装着部21側に引っ張ることにより、第1挿通部23を応力吸収部22の開口部側に移動させる。このとき、側壁41が撓むことにより、第1挿通部23は容易に応力吸収部22の開口部側に移動される。この状態で、固定部材61を第1挿通部23及びワイヤハーネス13に装着する。なお、鍔部23aは、粘着テープである固定部材61を第1挿通部23に巻き始める際に、中心軸線L3方向における固定部材61の端部の第1挿通部23に対する位置決めに使用される。
【0045】
第2挿通部24と同第2挿通部24に挿通されたワイヤハーネス14とは、固定部材61と同様の固定部材62によって中心軸線L4方向における相対移動が抑制される。固定部材62は、固定部材61を第1挿通部23及びワイヤハーネス13に装着する際と同様にして、第2挿通部24及びワイヤハーネス14に装着される。そして、鍔部24aは、粘着テープである固定部材62を第2挿通部24に巻き始める際に、中心軸線L4方向における固定部材62の端部の第2挿通部24に対する位置決めに使用される。
【0046】
(ブラケット71の構成)
図1に示すように、グロメット20は、車体パネル11に固定されるブラケット71を用いて車体パネル11に取り付けられる。ブラケット71は金属板材よりなる。ブラケット71は、環状をなす挟持部72と、挟持部72の外周縁に同挟持部72と一体に設けられた固定部73とを有する。
【0047】
挟持部72の外径は、挿通孔12の内径よりも大きい。固定部73は、挟持部72の外周縁部において挟持部72の周方向に離れた複数箇所に設けられている。本実施形態では、固定部73は、挟持部72の外周縁部の2箇所に設けられている。そして、2つの固定部73は、挟持部72の周方向に180°離れている。各固定部73には、固定部73を貫通する固定孔74が形成されている。
【0048】
(グロメット20の車体パネル11への取り付け)
車体パネル11には、挿通孔12の周囲の部分に固定部73と同数の2つのボルト75が固定されている。ボルト75は、溶接等により頭部が車体パネル11に固定されている。2つのボルト75は、挿通孔12の周方向に180°離れている。
【0049】
グロメット20を車体パネル11に取り付ける際には、まず、グロメット20が、車体パネル11に対して配置される。グロメット20は、装着部21が車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分と軸方向X1に対向するように配置される。このとき、シール部31は、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に接触する。次に、ブラケット71が、車体パネル11に対して配置される。ブラケット71は、応力吸収部22が底壁42側から挟持部72の内側に挿入されるとともに、各固定孔74にボルト75が挿通されるように車体パネル11に対して配置される。すると、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分と挟持部72との間に、装着部21が配置される。
【0050】
その後、ボルト75の各々にナット76が螺合されることにより、ブラケット71が車体パネル11に固定される。これにより、グロメット20が車体パネル11に取り付けられる。ナット76が締め付けられると、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分と挟持部72との間に装着部21が挟持される。そして、ナット76は、第1リップ部32及び第2リップ部33が車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に液密に密着するまで締め付けられる。なお、図1は、第1リップ部32及び第2リップ部33が車体パネル11に押し付けられる直前の状態までナット76が締められた状態を示している。
【0051】
本実施形態の作用について説明する。
車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に密着した第1リップ部32及び第2リップ部33によって、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分とグロメット20との間を水等の液体が通り抜けることが抑制されている。
【0052】
図1及び図3に示すように、車体に対するワイヤハーネス13,14の位置ずれ等により第1挿通部23及び第2挿通部24が装着部21に対して相対移動した場合、側壁41が撓むことにより、装着部21に対する第1挿通部23及び第2挿通部24の相対移動によって発生した応力を当該側壁41において吸収できる。本実施形態では、各襞部56の開き具合が変化することにより、即ち、隣り合う第1壁部54と第2壁部55とのなす角度が変化することにより、装着部21に対する挿通部23,24の相対移動によって発生した応力を蛇腹部53において吸収できる。
【0053】
例えば、挿通部23,24が装着部21に近づくように軸方向X1に相対移動した場合には、各襞部56が閉じるように、即ち、隣り合う第1壁部54と第2壁部55とのなす角度が小さくなるように蛇腹部53が変形する。これにより、装着部21に対する挿通部23,24の軸方向X1における相対移動によって発生した応力を蛇腹部53において吸収できる。そのため、側壁41における挿通部23,24と反対側の端部に連結された装着部21が変形されることが抑制される。そして、装着部21に対する挿通部23,24の軸方向X1における相対移動が蛇腹部53において許容される。なお、挿通部23,24が装着部21から遠ざかるように軸方向X1に相対移動した場合には、各襞部56が開くように、即ち、隣り合う第1壁部54と第2壁部55とのなす角度が大きくなるように蛇腹部53が変形することにより、当該相対移動によって発生した応力を蛇腹部53において吸収できる。
【0054】
また例えば、ワイヤハーネス13,14が軸方向X1に対して傾斜した場合、即ち挿通部23,24が軸方向X1に対して傾斜した場合には、各襞部56の開き具合が変化することにより、即ち、隣り合う第1壁部54と第2壁部55とのなす角度が変化するように蛇腹部53が変形する。これにより、軸方向X1に対する挿通部23,24の傾斜によって発生した応力を蛇腹部53において吸収できる。そのため、装着部21が変形されることが抑制される。そして、軸方向X1に対する挿通部23,24の傾斜が蛇腹部53において許容される。
【0055】
本実施形態の効果について説明する。
(1)グロメット20は、挿通孔12を有する車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に固定される環状の装着部21を備えている。また、グロメット20は、装着部21の内周縁部から軸方向X1の一方側に延出された筒状の側壁41及び側壁41の先端を閉塞する底壁42を有する有底筒状の応力吸収部22を備えている。更に、グロメット20は、底壁42に一体に設けられるとともに、挿通孔12に挿通されるワイヤハーネス13の外周面に接触してワイヤハーネス13の外周を覆う筒状の第1挿通部23を備えている。また、グロメット20は、底壁42に一体に設けられるとともに、挿通孔12に挿通されるワイヤハーネス14の外周面に接触してワイヤハーネス14の外周を覆う筒状の第2挿通部24を備えている。装着部21は、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に密着する環状のシール部31を有する。側壁41は可撓性を有する。第1挿通部23は、底壁42から側壁41の基端側に向かって応力吸収部22の内側で突出している。第2挿通部24は、底壁42から側壁41の基端側に向かって応力吸収部22の内側で突出している。
【0056】
この構成によれば、挿通部23,24は、応力吸収部22の底壁42に一体に設けられている。更に、応力吸収部22の側壁41は可撓性を有する。そのため、車体に対するワイヤハーネス13,14の配置位置の誤差や、ワイヤハーネス13,14の長さのばらつき等によって、装着部21に対して挿通部23,24が相対移動した場合、当該相対移動によって発生した応力は、側壁41が撓むことにより吸収可能である。このように、装着部21に対する挿通部23,24の相対移動によって発生した応力を、装着部21の内周縁部から軸方向X1の一方側に延出された側壁41において吸収する。従って、軸方向X1と直交する方向にグロメット20を大型化しなくとも、装着部21に対する挿通部23,24の相対移動によって発生した応力が装着部21まで伝達されることを抑制できる。そして、装着部21に対して挿通部23,24が相対移動した場合に装着部21まで変形されることを抑制できるため、シール部31が変形されることを抑制できる。その結果、グロメット20の大型化を抑制しつつ、同グロメット20の止水性能の低下を抑制できる。
【0057】
また、挿通部23,24は、応力吸収部22の底壁42に一体に設けられている。更に、第1挿通部23は、底壁42から側壁41の基端側に向かって応力吸収部22の内側で突出している。同様に、第2挿通部24は、底壁42から側壁41の基端側に向かって応力吸収部22の内側で突出している。そのため、挿通部23,24の全体が応力吸収部22の外部に突出する場合に比べて、側壁41の軸方向におけるグロメット20の大型化を抑制できる。従って、側壁41が装着部21の内周縁部から軸方向X1の一方側に延出された構成であっても、側壁41の軸方向におけるグロメット20の大型化を抑制できる。
【0058】
(2)第1挿通部23は、第1挿通部23の中心軸線L3を含む平面で切ったグロメット20の断面において中心軸線L3と直交する方向に側壁41と重なる。また、第2挿通部24は、第2挿通部24の中心軸線L4を含む平面で切ったグロメット20の断面において中心軸線L4と直交する方向に側壁41と重なる。この構成とすることにより、応力吸収部22の内側で側壁41の基端側に突出する挿通部23,24を容易に設けることができる。
【0059】
(3)側壁41は、側壁41の軸方向と直交する方向から見て、側壁41の中心軸線L2と交差する方向に沿って延びる複数の襞部56を有する。複数の襞部56は、側壁41の軸方向における位置が互いにずれている。
【0060】
この構成によれば、複数の襞部56は、側壁41の軸方向における位置が互いにずれている。そのため、軸方向X1と直交する方向に複数の襞部が並ぶ場合に比べて、軸方向X1と直交する方向における応力吸収部22の大型化を抑制しつつ同応力吸収部22に複数の襞部56を設けることができる。そして、複数の襞部56が開くように変形したり閉じるように変形したりすることにより、装着部21に対する挿通部23,24の相対移動によって発生した応力を、複数の襞部56を有する側壁41においてより吸収しやすくなる。従って、装着部21に対する挿通部23,24の相対移動に伴って、装着部21まで変形されることをより抑制できるため、シール部31が変形されることをより抑制できる。その結果、グロメット20の止水性能の低下をより抑制できる。
【0061】
(4)各襞部56は、側壁41の中心軸線L2を囲む環状をなしている。複数の襞部56は、装着部21側から底壁42側に向かって並ぶとともに隣り合う襞部56同士が連続して連なった蛇腹部53を構成している。
【0062】
この構成によれば、側壁41が有する複数の襞部56は蛇腹部53を構成している。そのため、複数の襞部56が開くように変形したり閉じるように変形したりすることに加えて、隣り合う襞部56と襞部56との間の部分が開くように変形したり閉じるように変形したりすることができる。従って、装着部21に対する挿通部23,24の相対移動によって発生した応力を、蛇腹部53を有する側壁41においてより吸収しやすくなる。よって、装着部21に対する挿通部23,24の相対移動に伴って、装着部21まで変形されることを更に抑制できるため、シール部31が変形されることを更に抑制できる。その結果、グロメット20の止水性能の低下を更に抑制できる。また、装着部21に対する挿通部23,24の更に大きな相対移動を側壁41において許容可能となるため、グロメット20の止水性能の低下を一層抑制できる。
【0063】
(5)挿通部23,24の全体は、軸方向X1において、底壁42の外側面42aよりも装着部21側に位置する。
この構成によれば、挿通部23,24が底壁42から応力吸収部22の外部に突出する部分を有する場合に比べて、軸方向X1におけるグロメット20の大型化を抑制しやすい。従って、側壁41が装着部21の内周縁部から軸方向X1の一方側に延出された構成であっても、軸方向X1におけるグロメット20の大型化をより抑制しやすくなる。
【0064】
(6)応力吸収部22における底壁42側の端部の外形は、応力吸収部22における応力吸収部22の開口部側の端部における外形よりも小さい。そのため、底壁42付近において、中心軸線L2と直交する方向における応力吸収部22の小型化を図ることができる。ひいては、中心軸線L2と直交する方向におけるグロメット20の小型化が可能となる。また、本実施形態では、グロメット20を車体パネル11に取り付ける際、挟持部72の内側に応力吸収部22を挿通しやすくなる。
【0065】
(7)グロメット20は、複数の挿通部23,24を備えている。一般的に、グロメット20に複数の挿通部23,24が備えられる場合には、挿通部23,24の軸方向から見て挿通部23,24と装着部21との間の部分がより狭くなりがちである。このような場合においても、本実施形態の構成とすることにより、軸方向X1と直交する方向のグロメット20の大型化を抑制しつつ、同グロメット20の止水性能の低下を抑制できる。
【0066】
(8)装着部21は、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分に対向し、車体パネル11と車体パネル11に固定されるブラケット71との間に挟持されるものである。即ち、本実施形態のグロメット20は、ブラケット71を用いて車体パネル11に装着されるものである。このようなグロメット20において、グロメット20の大型化を抑制しつつ、同グロメット20の止水性能の低下を抑制できる。
【0067】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、グロメット20は、ブラケット71を用いて車体パネル11に装着される。しかしながら、グロメット20は、ブラケット71を用いることなく車体パネル11に装着されるものであってもよい。この場合、装着部21は、同装着部21の外周面に径方向外側に開口した環状の装着溝を有する。そして、装着溝を有するグロメット20は、車体パネル11における挿通孔12の周囲の部分が装着溝に挿入されるように装着部21が挿通孔12に圧入されることにより車体パネル11に装着される。当該グロメット20においては、装着溝の底面が、挿通孔12の内周面に密着する環状のシール部に該当する。
【0068】
・上記実施形態では、グロメット20は、第1挿通部23と第2挿通部24との2つの挿通部を有する。しかしながら、グロメット20が有する挿通部の数はこれに限らない。例えば、グロメット20は、挿通部を1つのみ有するものであってもよい。また例えば、グロメット20は、挿通部を3つ以上有するものであってもよい。
【0069】
・応力吸収部22における底壁42側の端部の外形は、応力吸収部22における応力吸収部22の開口部側の端部における外形と同じ大きさであってもよい。
・上記実施形態では、軸方向X1において、挿通部23,24の全体が、底壁42の外側面42aよりも装着部21側に位置する。しかしながら、軸方向X1における挿通部23,24の位置はこれに限らない。第1挿通部23は、底壁42から側壁41の基端側に向かって応力吸収部22の内側で突出していればよい。即ち、第1挿通部23は、底壁42から側壁41の基端側に向かって突出するとともに応力吸収部22の内側に配置される部分を有するものであればよい。この場合、第1挿通部23は、中心軸線L3を含む平面で切った断面において中心軸線L3と直交する方向に側壁41と重なる部分を有することが好ましい。また、第2挿通部24は、底壁42から側壁41の基端側に向かって応力吸収部22の内側で突出していればよい。即ち、第2挿通部24は、底壁42から側壁41の基端側に向かって突出するとともに応力吸収部22の内側に配置される部分を有するものであればよい。この場合、第2挿通部24は、中心軸線L4を含む平面で切った断面において中心軸線L4と直交する方向に側壁41と重なる部分を有することが好ましい。ただし、第1挿通部23において固定部材61が装着される部分、及び第2挿通部24において固定部材62が装着される部分は、軸方向X1において、底壁42の外側面42aよりも装着部21側に位置する。例えば、挿通部23,24は、底壁42の外側面42aから突出する部分を有していてもよい。
【0070】
・蛇腹部53を構成する襞部56の数は、4つに限らず、複数であればよい。
・上記実施形態では、複数の襞部56は、隣り合う襞部56同士が連続して連なることにより蛇腹部53を構成している。しかしながら、複数の襞部56は、必ずしも蛇腹部53を構成しなくてもよい。例えば、側壁41の軸方向に隣り合う襞部56と襞部56とは、側壁41の一部であって軸方向X1に延びるとともに襞状をなさない筒状の部分によって連結されてもよい。
【0071】
・側壁41は、装着部21の内周縁部から軸方向X1の一方側に延出された筒状をなすのであれば、その形状は上記実施形態の形状に限らない。例えば、側壁41は、側壁41の軸方向から見た形状が円形状、多角形状等をなす筒状であってもよい。また例えば、側壁41は、装着部21から底壁42まで段差のない1つの筒状の壁よりなるものであってもよい。
【0072】
また例えば、図5に示すグロメット20Aの応力吸収部22Aは、階段状をなす階段部81を有する側壁41Aを備えている。なお、図5では、上記実施形態と同一もしくは対応する構成に同一の符号を付している。階段部81は、装着部21側から底壁42側に向かうにつれて段階的に縮径されるように形成されている。階段部81は、軸方向X1と垂直な平板状の環状をなす複数の第1壁部82と、軸方向X1と平行に延びる筒状をなす複数の第2壁部83とを有する。第1壁部82と第2壁部83とは、装着部21側から底壁42側に向かって交互に設けられている。軸方向X1に隣り合う第1壁部82と第2壁部83とによって、側壁41Aを一回り縮径する縮径する段差状の襞部84が形成されている。図5に示す例では、階段部81は、4つの襞部84によって構成されている。各襞部84は、側壁41Aの中心軸線L21を囲む環状をなしている。
【0073】
・上記実施形態では、各襞部56は、必ずしも中心軸線L2を囲む環状をなさなくてもよい。襞部56は、側壁41の軸方向と直交する方向から見て、中心軸線L2と交差する方向に沿って延びていればよい。
【0074】
・上記実施形態では、側壁41は、4つの襞部56を有する。しかしながら、側壁41が有する襞部56の数は、4つに限らない。また、側壁41は、必ずしも襞部56を備えなくてもよい。
【0075】
・軸方向X1から見た装着部21の外形形状は、円形状に限らない。例えば、装着部21は、軸方向X1から見て、外形が楕円状、角丸長方形状、前方後円形状、多角形状等をなす環状であってもよい。
【0076】
・鍔部23aは、中心軸線L3を囲む環状に限らず、中心軸線L3回りの周方向に沿って延びる円弧状であってもよい。鍔部24aは、中心軸線L4を囲む環状に限らず、中心軸線L4回りの周方向に沿って延びる円弧状であってもよい。また、第1挿通部23は、鍔部23aを備えなくてもよい。第2挿通部24は、鍔部24aを備えなくてもよい。
【0077】
・挿通部23,24は、円筒状に限らず、筒状であればよい。例えば、挿通部23,24は、挿通部23,24の軸方向から見た形状が楕円状、角丸長方形状、多角形状等をなす筒状であってもよい。
【0078】
・上記実施形態では、取付対象の一例として車体パネル11を挙げた。しかしながら、取付対象は、ワイヤハーネスが挿通される挿通孔を有する部材であれば、車体パネル11に限らない。
【0079】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記グロメットであって、前記応力吸収部における前記底壁側の端部の外形は、前記応力吸収部における前記応力吸収部の開口部側の端部における外形よりも小さいこと。
【0080】
この構成によれば、底壁付近において、側壁の中心軸線と直交する方向における応力吸収部の小型化を図ることができる。ひいては、側壁の中心軸線と直交する方向におけるグロメットの小型化が可能となる。
【0081】
(ロ)前記グロメットであって、前記挿通部を複数備えたこと。
この構成によれば、グロメットに挿通部が複数備えられる場合には、挿通部の軸方向から見て挿通部と装着部との間の部分がより狭くなりがちである。このような場合においても、装着部の軸方向と直交する方向のグロメットの大型化を抑制しつつ、同グロメットの止水性能の低下を抑制できる。
【0082】
(ハ)前記グロメットであって、前記装着部は、前記取付対象における前記挿通孔の周囲の部分に対向し、前記取付対象と前記取付対象に固定されるブラケットとの間に挟持されるものであること。
【0083】
この構成によれば、ブラケットを用いて取付対象に装着されるグロメットにおいて、グロメットの大型化を抑制しつつ、同グロメットの止水性能の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0084】
11 車体パネル(取付対象)
12 挿通孔
13 ワイヤハーネス
14 ワイヤハーネス
20 グロメット
20A グロメット
21 装着部
22 応力吸収部
22A 応力吸収部
23 第1挿通部(挿通部)
23a 鍔部
24 第2挿通部(挿通部)
24a 鍔部
31 シール部
32 第1リップ部
33 第2リップ部
41 側壁
41A 側壁
42 底壁
42a 外側面
51 第1筒部
52 第2筒部
53 蛇腹部
54 第1壁部
54a~54d 第1壁部
55 第2壁部
55a~55d 第2壁部
56 襞部
56a~56d 襞部
61 固定部材
62 固定部材
71 ブラケット
72 挟持部
73 固定部
74固定孔
75 ボルト
76 ナット
81 階段部
82 第1壁部
83 第2壁部
84 襞部
L1 中心軸線(装着部の中心軸線)
L2 中心軸線(側壁の中心軸線)
L3 中心軸線(挿通部の中心軸線)
L4 中心軸線(挿通部の中心軸線)
L21 中心軸線(側壁の中心軸線)
X1 軸方向
図1
図2
図3
図4
図5