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  • 特許-温度計測装置及びバーナ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】温度計測装置及びバーナ
(51)【国際特許分類】
   G01K 1/08 20210101AFI20240109BHJP
   G01K 7/02 20210101ALI20240109BHJP
   F23D 11/44 20060101ALI20240109BHJP
   F23N 5/02 20060101ALI20240109BHJP
   F23N 5/10 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
G01K1/08 C
G01K7/02 F
F23D11/44 B
F23N5/02 342Z
F23N5/02 342A
F23N5/10 330
F23N5/10 310D
F23N5/10 310Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020090578
(22)【出願日】2020-05-25
(65)【公開番号】P2021188897
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】須古 敏行
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-83076(JP,A)
【文献】特開平1-155117(JP,A)
【文献】特開昭47-24380(JP,A)
【文献】特開昭58-66705(JP,A)
【文献】特開2021-38446(JP,A)
【文献】特開2006-183114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
F23D 11/44
F23N 5/02,5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料を燃焼空間へと噴射して火炎を形成すると共に燃焼ガスの循環流が内部に形成されるバーナに設けられる温度計測装置であって、
前記バーナの外面に設置される温度センサと、
前記温度センサの外側を覆う温度センサカバーと
を備えることを特徴とする温度計測装置。
【請求項2】
前記温度センサカバーは、前記バーナの外周面から立設されると共に前記温度センサを囲う側周壁と、前記側周壁に接合される上壁とを有し、
前記側周壁は、前記上壁と当接するフランジ状の接合部が設けられることを特徴とする請求項1記載の温度計測装置。
【請求項3】
前記温度センサカバーは、前記温度センサに対して、前記燃料の流れ方向下流側が開放されていることを特徴とする請求項1または2記載の温度計測装置。
【請求項4】
前記温度センサカバーには、耐熱材が充填されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の温度計測装置。
【請求項5】
前記温度センサは、前記バーナにおいて複数設けられ、
前記温度センサカバーは、前記燃焼ガスの循環流と接触する部位に設置された温度センサに設けられることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の温度計測装置。
【請求項6】
燃料を燃焼空間へと噴射すると共に燃焼ガスの循環流が内部に形成される予熱チャンバと、
前記予熱チャンバの外周面に設置される温度センサと、
前記温度センサの外側を覆う温度センサカバーと
を備えることを特徴とするバーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度計測装置及びバーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃焼器等の高温燃焼が行われる装置においては、燃焼状態の制御や、各部材の保護のために、熱電対等を用いて温度を計測することがある。例えば、特許文献1には、加熱炉の炉内温度を計測する温度計測装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平11-281494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、現在では、オイルコークスを燃料として火炎を形成するバーナが考えられており、このようなバーナにおいても、表面温度を計測することが求められている。しかしながら、オイルコークスは、燃焼させることにより燃焼ガス中にバナジウム等の腐食性の物質が生じる。このような腐食性の物質は、温度センサを腐食させ、継続的な温度計測を阻害する。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、温度センサの腐食を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための温度計測装置に係る第1の手段として、燃料を燃焼空間へと噴射して火炎を形成すると共に燃焼ガスの循環流が内部に形成されるバーナに設けられる温度計測装置であって、前記バーナの外面に設置される温度センサと、前記温度センサの外側を覆う温度センサカバーとを備える、という構成を採用する。
【0007】
温度計測装置に係る第2の手段として、上記第1の手段において、前記温度センサカバーは、前記バーナの外周面から立設されると共に前記温度センサを囲う側周壁と、前記側周壁に接合される上壁とを有し、前記側周壁は、前記上壁と当接するフランジ状の接合部が設けられる、という構成を採用する。
【0008】
温度計測装置に係る第3の手段として、上記第1または第2の手段において、前記温度センサカバーは、前記温度センサに対して、前記燃料の流れ方向下流側が開放されている、という構成を採用する。
【0009】
温度計測装置に係る第4の手段として、上記第1~3のいずれかの手段において、前記温度センサカバーには、耐熱材が充填される、という構成を採用する。
【0010】
温度計測装置に係る第5の手段として、上記第1~4のいずれかの手段において、前記温度センサは、前記バーナにおいて複数設けられ、前記温度センサカバーは、前記燃焼ガスの循環流と接触する部位に設置された温度センサに設けられる、という構成を採用する。
【0011】
バーナに係る第1の手段として、燃料を燃焼空間へと噴射すると共に燃焼ガスの循環流が内部に形成される予熱チャンバと、前記予熱チャンバの外周面に設置される温度センサと、前記温度センサの外側を覆う温度センサカバーとを備える、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、温度センサの腐食を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態に係るバーナの模式的な全体図である。
図2】本発明の一実施形態に係る温度計測装置を示す模式図である。
図3】本発明の一実施形態に係る温度計測装置を示す模式図である。
図4】本発明の一実施形態に係る温度計測装置における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係るバーナの一実施形態について説明する。
【0015】
本実施形態に係るバーナ1が設けられる火炉壁100には、内側と外側とを連通する火炉開口110が形成されている。この火炉開口110には、火炉の内部へと向けて拡径するようにスロートが形成されている。
【0016】
バーナ1は、燃焼器の火炉壁100に設けられ、オイルコークスを燃焼させ、燃焼器に火炎を形成する装置である。バーナ1は、予熱チャンバ2と、オイルガン3と二次空気供給部4と、二次空気旋回器5と、熱電対6(温度センサ)と、熱電対カバー7(温度センサカバー)と、キャスタ金具8とを備えている。また、熱電対6、熱電対カバー7及びキャスタ金具8は、本実施形態に係る温度計測装置Sを形成している。
【0017】
予熱チャンバ2は、略円筒形とされると共に、上流側端部において、鉛直方向下側に偏心した位置に燃料供給口が形成されている。燃料供給口からは、燃料であるオイルコークスと、オイルコークスを搬送する一次空気とが予熱チャンバ2内へと噴射される。これにより、予熱チャンバ2においては、内部に一次空気流路R1が形成されている。また、予熱チャンバ2には、上流側端部において、鉛直方向上側に偏心した位置に三次空気供給口が形成されている。このような予熱チャンバ2においては、燃焼ガスが吐出口より内部へと流入する循環流R2が、一次空気流路R1の鉛直方向上側の空間において形成されている。なお、予熱チャンバ2へと供給されるオイルコークスは、不図示のヒータにより、一次空気と共に数百℃程度まで加熱された状態とされる。
【0018】
オイルガン3は、予熱チャンバ2において鉛直方向上側に設けられ、重油を予熱チャンバ2中に吐出するノズルである。オイルガン3は、例えば、軸方向において移動可能とされており、バーナ1の点火時において軸方向下流側へと向けて突出された状態で重油等の着火性の高い液体燃料を吐出する。
【0019】
二次空気供給部4は、予熱チャンバ2の外周側において軸心L上に設けられ、予熱チャンバ2の外周において火炉壁100との間に二次空気流路R3を形成する。この二次空気供給部4は、火炎に対して径方向外側から燃焼用の空気を供給する。
【0020】
二次空気旋回器5は、軸心Lを中心とした周方向に配列された複数の翼部によって形成された翼列である。二次空気旋回器5は、二次空気供給部4の下流端側に設けられており、噴射される二次空気に軸心Lを中心として旋回する流れを形成する。すなわち、燃焼空間へと噴射される二次空気は、軸心Lを中心とする旋回流とされる。
【0021】
熱電対6は、先端部に熱電対パッド6aを有する温度センサである。この熱電対6は、バーナ1の予熱チャンバ2に対して3箇所に設けられており、熱電対パッド6aが予熱チャンバ2の外周面に溶接により固定されている。熱電対6は、予熱チャンバ2において、吐出口付近であって一次空気流路R1側の側方と、循環流R2の上方とに設けられている。このような熱電対6は、予熱チャンバ2の表面温度に基づく電気信号を、外部の制御装置へと送信している。
【0022】
熱電対カバー7は、図2~4に示すように、熱電対6が配置された予熱チャンバ2の外周面において、熱電対6を覆って設けられる金属製の部材である。また、熱電対カバー7と予熱チャンバ2の外周面との間、すなわち熱電対6の周囲には、モルタル状の耐熱性キャスタ(耐熱材)が充填されており、熱電対6を完全に覆うものとされる。熱電対カバー7は、図2に示すように、2つの隣接する熱電対6を覆うものと、図3に示すように、1つの熱電対6を覆うものとが存在している。このような熱電対カバー7は、側周壁7aと、側周壁7aの端部に当接して熱電対6を覆う上壁7bとを有している。
【0023】
側周壁7aは、予熱チャンバ2の外周面から径方向に立設され、熱電対6の上流側及び側方を囲う部材である。すなわち、側周壁7aは、熱電対6の下流側に壁部が形成されておらず、開放されている。この側周壁7aは、予熱チャンバ2の外周面と当接していない側の端部、すなわち上端部の全周において、外側に向けて突出したフランジ状の接合部7a1を有している。なお、側周壁7aは、予熱チャンバ2の外周面に対して溶接されることで固定されている。
【0024】
上壁7bは、図4に示すように、側周壁7aによって囲まれた熱電対6を上方(すなわち予熱チャンバ2の径方向外側)から覆う平板状の部材である。上壁7bは、接合部7a1の外形よりも僅かに小さな大きさとされている。上壁7bは、側周壁7aの接合部7a1と当接して設けられ、接合部7a1の外縁と溶接されている。
【0025】
キャスタ金具8は、図4に示すように、予熱チャンバ2の外周面に設けられ、予熱チャンバ2の径方向外側に向けて突出する略V字状の部材である。キャスタ金具8は、熱電対カバー7内において、複数(本実施形態においては、上流側の2箇所と下流側の2箇所との計4箇所)に設けられている。上流側の2箇所に設けられるキャスタ金具8は、立設された壁部が軸心Lに沿う方向に向けて配置されている。下流側の2箇所に設けられたキャスタ金具8は、立設された壁部が軸心Lに交差する方向に向けて配置されている。
【0026】
着火時においては、バーナ1のオイルガン3が下流側に向けて突出された状態で、液体燃料が燃焼空間へと噴射される。液体燃料は、燃焼空間へと噴射されると共に着火され、燃焼空間において火炎を形成する。
【0027】
また、通常燃焼時において、バーナ1では、オイルコークスと一次空気とが予熱チャンバ2内の一次空気流路R1を通過して燃焼空間へと噴射される。また、燃焼用空気である二次空気が外周側から同時に噴射される。また、三次空気は、予熱チャンバ2内上方より噴射される。これにより、燃焼空間において燃焼されることで1000℃以上の高温となった燃焼ガスは、予熱チャンバ2内へと流入する。なお、燃焼ガスは、オイルコークスが燃焼されることにより発生するガスであり、二酸化バナジウム等の腐食性の物質を含んでいる。
【0028】
そして、予熱チャンバ2においては、一次空気流路R1内を流れる一次空気及びオイルコークスと、循環流R2の燃焼ガスとが接触、混合され、相対的に温度の低い一次空気及びオイルコークスの温度が上昇する。そして、燃焼ガスは、一次空気流路R1より一次空気及びオイルコークスと共に再び燃焼空間へと噴射される。これにより、オイルコークスは、高温状態で燃焼空間へと供給されることとなり、燃焼空間において揮発しやすくなり、燃焼が容易となる。
【0029】
このような温度計測装置Sにおいて、熱電対6が予熱チャンバ2の外周面の温度を計測し、外部の制御装置へと送信する。熱電対6は、予熱チャンバ2において燃焼ガスの循環流R2近傍に配置されているため、高温の燃焼ガスに晒されることとなる。これに対して、熱電対6は、熱電対カバー7により覆われていることで、熱電対6に直接燃焼ガスが接触することがない。したがって、燃焼ガスに含まれる二酸化バナジウム等の腐食性の物質により、熱電対6が腐食されることを防止できる。
【0030】
また、本実施形態に係る温度計測装置Sにおいては、熱電対カバー7の側周壁7aに接合部7a1が設けられている。したがって、接合部7a1と上壁7bとの溶接が容易となり、熱電対カバー7は熱電対6を完全に覆うことが可能とされている。これにより、熱電対6に燃焼ガスが直接接触することをより確実に防止することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る温度計測装置Sにおいては、熱電対6の下流側に側周壁7aが形成されておらず、開放状態とされている。したがって、上記開放された部位から熱電対6の配線を行うことが容易である。
【0032】
また、本実施形態に係る温度計測装置Sにおいては、熱電対カバー7の内部にモルタル状のキャスタが充填されている。これにより、熱電対6に対して、予熱チャンバ2の外周に高温の燃焼ガスとの接触を確実に防止できる。したがって、燃焼ガスに含まれる二酸化バナジウム等の腐食性の物質により、熱電対6が腐食されることを、より確実に防止できる。
【0033】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0034】
上記実施形態においては、熱電対6を複数設けるものとし、全ての熱電対6に対して熱電対カバー7を設けるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、熱電対6は、予熱チャンバ2の吐出口近傍であって、燃焼ガスの循環流R2に最も近い部位(図1における上側の部位)に設置される熱電対6にのみ、熱電対カバー7を設けるものとしてもよい。
【0035】
また、上記実施形態においては、熱電対カバー7内にキャスタを充填するものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、熱電対カバー7において、下流側の面が十分に封止されている場合には、キャスタを充填せず、熱電対カバー7内を空洞としてもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、温度計測装置Sは、バーナ1が備えるものとしたが、本発明はこれに限定されない。温度計測装置Sは、既存のバーナ1に対して取り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 バーナ
2 予熱チャンバ
3 オイルガン
4 二次空気供給部
5 二次空気旋回器
6 熱電対
6a 熱電対パッド
7 熱電対カバー
7a 側周壁
7a1 接合部
7b 上壁
8 キャスタ金具
100 火炉壁
110 火炉開口
L 軸心
S 温度計測装置
図1
図2
図3
図4