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  • 特許-蛍光標識剤、及び蛍光色素 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】蛍光標識剤、及び蛍光色素
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20240109BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240109BHJP
   C07F 7/02 20060101ALI20240109BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20240109BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01N21/64 F
C09K11/06 640
C07F7/02 Z
C07F5/06 E
C07F7/18 X
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020099441
(22)【出願日】2020-06-08
(65)【公開番号】P2021193353
(43)【公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】横倉 梨乃
(72)【発明者】
【氏名】皆嶋 英範
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-023676(JP,A)
【文献】特開2007-016203(JP,A)
【文献】特開平05-163439(JP,A)
【文献】特開平06-200177(JP,A)
【文献】特開2017-105805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/64
C09K 11/06
C07F 7/02
C07F 5/06
C07F 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される蛍光色素を含む蛍光標識剤。

一般式(1)
【化1】

(R~R16は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換の複素環基、-AB、-SO、-COOM、-Z-L-C(=O)-Xを表す。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に1価のカチオンを表す。
~R16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。
17は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン元素、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリールオキシ基、-OP(=O)R1819、-OC(=O)R20、-OS(=O)21、-OSiR222324、-Z-L-C(=O)-Xを表す。R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R20は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R21は、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R22~R24は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。
1は、2価~5価の金属原子を表し、M1が2価の金属原子である場合はnは0であり、M1が3価の金属原子である場合はnは1であり、M1が4価の金属原子である場合はnは2である。
ただし、R~R17の少なくとも1つは-Z-L-C(=O)-Xである。
Zは直接結合、-O-、-OP(=O)L-、-OC(=O)-、-OS(=O)-、-OSiL-、-C(=O)-、-C(=O)NH-を表す。Lは、直接結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。Xはリン脂質の残基を表す。Lは、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。L、Lは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。)
【請求項2】
リン脂質集積型蛍光標識剤である、請求項1に記載の蛍光標識剤。
【請求項3】
一般式(1)のR17が-Z-L-C(=O)-Xである、請求項1または2に記載の蛍光標識剤。
【請求項4】
一般式(2)で表される化合物。

一般式(2)
【化2】

(R~R16は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換の複素環基、-AB、-SO、-COOM、-Z-L-C(=O)-Xを表す。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に1価のカチオンを表す。
~R16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。
17は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン元素、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリールオキシ基、-OP(=O)R1819、-OC(=O)R20、-OS(=O)21、-OSiR222324、-Z-L-C(=O)-Xを表す。R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R20は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R21は、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R22~R24は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。
1は、2価~5価の金属原子を表し、M1が2価の金属原子である場合はnは0であり、M1が3価の金属原子である場合はnは1であり、M1が4価の金属原子である場合はnは2である。
ただし、R~R17の少なくとも1つは-Z-(Ln-C(=O)-Xである。
Zは直接結合、-O-、-OP(=O)L-、-OC(=O)-、-OS(=O)-、-OSiL-、-C(=O)-、-C(=O)NH-を表す。Lは、直接結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。Xはリン脂質の残基を表す。Lは、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。L、Lは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。)


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光標識剤と、それに用いられる蛍光色素に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオイメージングは、生体内分子や細胞、生体組織の動態及び機能を可視化する技術であり、生体内分子・細胞機能の解明や創薬の研究等、生物学、医学の研究領域で幅広く活用されている。中でも蛍光バイオイメージングは、現象の動的な観察、多色観察、高感度観察が可能な手法である。
【0003】
蛍光バイオイメージングは、標的物質と特異的に結合する、あるいは、標的部位に集積する蛍光色素を用い、その蛍光色素に光を照射した際に色素が発する蛍光を検出することにより、標的を可視化する手法である。
【0004】
蛍光色素の細胞集積性を高める手段として、例えば特許文献1では、蛍光分子にリン脂質構造を導入した蛍光色素が開発されている。これにより、蛍光色素が細胞膜上に良好に固定化され、高い蛍光標識能を示す。
【0005】
特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載の細胞膜集積型蛍光色素は吸収・蛍光波長を可視域に持つ。しかしながら、可視域の吸収波長を持つ蛍光色素では、タイムラプスイメージング中に励起光によって細胞損傷を引き起こすため、長期観察のための蛍光色素として適切でない。また可視光は、生体内物質や生体中の水による、光の吸収・散乱が大きいため、生体組織下や臓器内部のイメージングに適用できない等の制約があった。
【0006】
上述の課題は、近赤外領域の光を用いることで解決できる。近赤外蛍光色素は、シアニンを基本骨格としたものが広く利用されている。しかし、シアニン骨格は光照射により生じる活性酸素により分解しやすいため、蛍光観察中に色素が退色してしまうという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO 2006/093252 号公報
【文献】WO 2010/132428 号公報
【文献】US 2012/0128596 号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、リン脂質への集積性が高く、イン・ビトロ(in vitro)およびイン・ビボ(in vivo)イメージングに用いる蛍光標識剤に適した蛍光強度を有する蛍光色素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記諸問題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、上記課題を解決するための優れた蛍光色素を見出し、本発明をなしたものである。
【0010】
すなわち、本発明は、一般式(1)で表される蛍光色素を含む蛍光標識剤に関する。

一般式(1)
【化1】

(R~R16は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換の複素環基、-AB、-SO、-COOM、-Z-L-C(=O)-Xを表す。R~R16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に1価のカチオンを表す。
17は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン元素、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリールオキシ基、-OP(=O)R1819、-OC(=O)R20、-OS(=O)21、-OSiR222324、-Z-L-C(=O)-Xを表す。R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R20は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R21は、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R22~R24は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。
1は、2価~5価の金属原子を表し、M1が2価の金属原子である場合はnは0であり、M1が3価の金属原子である場合はnは1であり、M1が4価の金属原子である場合はnは2である。
ただし、R~R17の少なくとも1つは-Z-L-C(=O)-Xである。
Zは直接結合、-O-、-OP(=O)L-、-OC(=O)-、-OS(=O)-、-OSiL-、-C(=O)-、-C(=O)NH-を表す。Lは、直接結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。Xはリン脂質の残基を表す。Lは、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。L、Lは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。)
【0011】
また、本発明は、リン脂質集積型蛍光標識剤である、前記蛍光標識剤に関する。
【0012】
また、本発明は、一般式(1)のR17が-Z-L-C(=O)-Xである、前記蛍光標識剤に関する。
【0013】
また、本発明は、一般式(2)で表される化合物に関する。

一般式(2)
【化2】

(R~R16は、それぞれ独立に、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換の複素環基、-AB、-SO、-COOM、-Z-L-C(=O)-Xを表す。R~R16は、隣接する置換基同士が互いに連結して、環を形成してもよい。Aは、16族元素を表す。Bは、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。M、Mはそれぞれ独立に1価のカチオンを表す。
17は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン元素、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアリールオキシ基、-OP(=O)R1819、-OC(=O)R20、-OS(=O)21、-OSiR222324、-Z-L-C(=O)-Xを表す。R18及びR19は、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R20は、水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R21は、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。R22~R24は、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。
1は、2価~5価の金属原子を表し、M1が2価の金属原子である場合はnは0であり、M1が3価の金属原子である場合はnは1であり、M1が4価の金属原子である場合はnは2である。
ただし、R~R17の少なくとも1つは-Z-L-C(=O)-Xである。
Zは直接結合、-O-、-OP(=O)L-、-OC(=O)-、-OS(=O)-、-OSiL-、-C(=O)-、-C(=O)NH-を表す。Lは、直接結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。Xはリン脂質の残基を表す。Lは、水素原子、水酸基、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、置換もしくは無置換のアリールオキシ基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。L、Lは、それぞれ独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、置換もしくは無置換の複素環基を表す。)
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、リン脂質への集積性が高く、イン・ビトロ(in vitro)およびイン・ビボ(in vivo)イメージングに用いる蛍光標識剤に適した蛍光強度を有する蛍光色素を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、蛍光標識剤1、22の蛍光強度評価結果である。
図2図2は、蛍光標識剤1で標識した細胞の蛍光顕微鏡写真である。
図3図3は、蛍光標識剤22で標識した細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の蛍光標識剤は、一般式(1)で表される化合物を含む。一般式(1)で表され
る化合物は、フタロシアニン色素骨格を有する蛍光色素である。

一般式(1)

【化1】

【0017】
アルキル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。アルキル基の炭素数は1~30の範囲内であることが好ましい。
【0018】
上記アルキル基における置換基としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基等の他、上述したアルキル基、後述するアリール基、シクロアルキル基、複素環基が挙げられる。また、構造の一部が、アミド結合(-NHCO-)やエステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、ウレア結合(-NHCONH-)、ウレタン結合(-NHCOO-)で置換されている場合、その置換部分も「置換基」として含めるものとする。
【0019】
したがって、置換アルキル基としては、上記の置換基で置換されたアルキル基を意味する。一つ又は二つ以上の置換基で置換されたものであっても良い。例えば、ハロゲン原子で置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、-(CFCF、トリクロロメチル基2,2-ジブロモエチル基等を挙げることができる。
【0020】
また、アミド結合で置換されたアルキル基の具体例としては、-CH-CH-CH-NHCO-CH-CH、-CH-CH(-CH)-CH-NHCO-CH-CH、-CH-CH-CH-NHCO-CH-CH、-CH-CH-CH-CH-NHCO-CH-CH(CH-CH)-CH-CH-CH-CH、-(CH)-NHCO-(CH11-CH、-CH-CH-CH-C(-NHCO-CH-CH)等を挙げることができる。アミド結合で置換されたアルキル基の炭素数は、2~30の範囲内であることが好ましい。
【0021】
また、エステル結合で置換されたアルキル基の具体例としては、-CH-CH-CH-COO-CH-CH、-CH-CH(-CH)-CH-COO-CH-CH、-CH-CH-CH-OCO-CH-CH、-CH-CH-CH-CH-COO-CH-CH(CH-CH)-CH-CH-CH-CH、-(CH)-COO-(CH11-CH、-CH-CH-CH-CH-(COO-CH-CH)等を挙げることができる。エステル結合で置換されたアルキル基の炭素数は、2~30の範囲内であることが好ましい。
【0022】
また、エーテル結合で置換されたアルキル基の具体例としては、-CH-O-CH、-CH-CH-O-CH-CH、-CH-CH-CH-O-CH-CH、-(CH-CH-O)-CH(ここでnは1から8の整数である)、-(CH-CH-CH-O)-CH(ここでmは1から5の整数である)、-CH-CH(CH)-O-CH-CH-、-CH-CH-(OCH等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。エーテル結合で置換されたアルキル基の炭素数は、2~30の範囲内であることが好ましい。
【0023】
また、ウレア結合(-NHCONH-)で置換されたアルキル基の具体例としては、-CH-NHCONH-CH、-CH-CH-NHCONH-CH-CH、-CH-CH-CH-NHCONH-CH-CH、-(CH-CH-NHCONH)-CH(ここでnは1から8の整数である)、-(CH-CH-CH-NHCONH)-CH(ここでmは1から5の整数である)、-CH-CH(CH)-NHCONH-CH-CH-、-CH-CH-(NHCONHCH等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。エーテル結合で置換されたアルキル基の炭素数は、2~30の範囲内であることが好ましい。
【0024】
また、ウレタン結合で置換されたアルキル基の具体例としては、-CH-CH-CH-NHCOO-CH-CH、-CH-CH(-CH)-CH-NHCOO-CH-CH、-CH-CH-CH-NHCOO-CH-CH、-CH-CH-CH-CH-NHCOO-CH-CH(CH-CH)-CH-CH-CH-CH、-(CH)-NHCOO-(CH11-CH、-CH-CH-CH-CH-(NHCOO-CH-CH)等を挙げることができる。エステル結合で置換されたアルキル基の炭素数は、2~30の範囲内であることが好ましい。
【0025】
また、アミド結合(-NHCO-)、エステル結合(-COO-)、およびエーテル結合(-O-)、ウレア結合(-NHCONH-)、ウレタン結合(-NHCOO-)のうち2種以上の置換基で置換されたアルキル基の具体例としては、-CH-CH-NHCO-CH-CH-O-CH-CH(CH-CH)-CH-CH-CH-CH、-CH-CH-COO-CH-CH-O-CH-CH-NHCOO-CH-CH(CH-CH)-CH-CH-CH-CHを挙げることができる。アミド結合(-NHCO-)、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、ウレア結合(-NHCONH-)、およびウレタン結合(-NHCOO-)のうち2種以上の置換基で置換されたアルキル基の炭素数は、3~30の範囲内であることが好ましい。
【0026】
シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基、2,5-ジメチルシクロペンチル基、4-tert-プチルシクロヘキシル基等が挙げられる。また、シクロアルキル基の炭素数は5~12の範囲内であることが好ましい。置換シクロアルキル基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
【0027】
アルケニル基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルケニル基が挙げられる。アルケニル基はその構造中に一つの二重結合を一般的に指すが、本明細書においては複数の二重結合を有するものもアルケニル基に含めるものとする。具体例としては、ビニル基、1-プロペニル基、アリル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、イソプロペニル基、イソブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基、4-ヘキセニル基、1,3-ブタジエニル基等を挙げることができる。アルケニル基の炭素数は2~18の範囲内であることが好ましい。置換アルケニル基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
【0028】
アリール基としては、単環または縮合多環のアリール基が挙げられる。例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、2-アントリル基、9-アントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、9-フェナントリル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、9-フルオレニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、3-ペリレニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、4-メチルビフェニル基、ターフェニル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-tert-ブチル-1-ナフチル基、4-ナフチル-1-ナフチル基、6-フェニル-2-ナフチル基、10-フェニル-9-アントリル基、スピロフルオレニル基、2-ベンゾシクロブテニル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は6~18の範囲内であることが好ましい。
置換アリール基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
【0029】
複素環基としては、脂肪族複素環基や芳香族複素環基が挙げられる。具体例としては、ピリジル基、ピラジル基、ピペリジノ基、ピラニル基、モルホリノ基、アクリジニル基等が挙げられる。また、下記構造式で表される基も挙げられる。複素環基の炭素数は、4~12であることが好ましい。環員数は、5~13であることが好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
置換複素環基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。例えば、複素環基3-メチルピリジル基、N-メチルピペリジル基、N-メチルピローリル基等が挙げられる。
【0032】
アルコキシ基としては、直鎖状または分岐鎖状のアルコキシル基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ基、n-へキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシル基の炭素数は1~6の範囲内であることが好ましい。置換アルコキシル基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
【0033】
置換アルコキシ基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。具体例としては、トリクロロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ基、2,2-ビス(トリフルオロメチル)プロポキシ基、2-エトキシエトキシ基、2-ブトキシエトキシ基、2-ニトロプロポキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0034】
アリールオキシ基としては、単環または縮合多環のアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基は、単環のアリールオキシ基が好ましい。また、炭素数6~12のアリールオキシ基が好ましい。
【0035】
置換アリールオキシ基の置換基としては、上述したアリール基における置換基と同じ置換基が挙げられる。例えば、p-ニトロフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基、2,4-ジクロロフェノキシ基、ペンタフルオロフェノキシ基、2-メチル-4-クロロフェノキシ基等が挙げられる。
【0036】
アルキレン基としては、アルキル基から一つの水素原子を除いた二価の基が挙げられる。
置換もしくは無置換のアルキレン基の具体例としては、-CH-CH-、-CH-CH-CH-NHCO-CH-CH-、-CH-CH-CH-OCO-CH-CH-、-CH-CH-CH-O-CH-CH-等が挙げられる。
【0037】
アリーレン基としては、アリール基から一つの水素原子を除いた二価の基が挙げられる。置換もしくは無置換のアリーレン基の具体例としては、下記構造式で表される基が挙げられる。
【0038】
【化5】

【0039】
第16族元素としては、酸素、硫黄、セレン、テルル等が挙げられる。この内、酸素、硫黄、セレンが好ましく、合成の容易さや安定性の点で酸素、硫黄がより好ましい。
【0040】
の2価の金属原子としては、Mg、Cu、Zn等が挙げられる。3価の金属原子としては、Al、Ga、In等が挙げられる。4価の金属原子としては、Si、Mn、Sn、Cr、Zr等が挙げられる。蛍光強度の観点からは、Mg、Al、Si、Znが好ましく、耐光性の観点からは、Al、Siがより好ましい。
【0041】
リン脂質としては、特に限定されないが、ホスファチジルエタノールアミン類、ホスファチジルコリン類、ホスファチジルセリン類、スフィンゴミエリン類、セラミドホスホリルエタノールアミン類、1,2-ジミリストイル-1,2-デオキシホスファチジルコリン類、又はプラスマロゲン類などを採用できる。
これらのリン脂質における脂肪酸残基は特に限定されない。例えば、炭素数12~20個程度の飽和又は不飽和の脂肪酸残基を1個又は2個有するリン脂質を用いることができ、具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸等の脂肪酸由来のアシル基を1個又は2個以上有するリン脂質を用いることができる。
【0042】
リン脂質の残基とは、リン脂質の親水性末端にあるアミノ基または第4級アンモニウム基から水素原子または置換基を除いた残基を表す。
【0043】
一般式(1)において、R~R17の少なくとも1つは-Z-L-C(=O)-Xであり、R17が-Z-L-C(=O)-Xであることが好ましい。
【0044】
本発明の蛍光標識剤は、生化学研究から医療診断までの幅広い分野におけるバイオイメージング用蛍光標識として応用可能であり、例えば、遺伝子診断分野、免疫診断分野、医療開発分野、再生医療分野、環境試験分野、バイオテクノロジー分野、蛍光検査等における蛍光標識等として使用することができる。
【0045】
なかでも、本発明の蛍光標識剤は、リン脂質集積型蛍光標識剤として好適に使用できる。リン脂質集積型蛍光標識剤は、細胞膜の染色、エクソソームの追跡、ドラッグデリバリーシステム(DDS)のためのリポソームイメージングなどにおける蛍光標識剤として好適に使用できる。
【0046】
本発明の蛍光色素の濃度は特に限定されないが、例えば、細胞を扱う場合、細胞の機能障害や増殖阻害等への影響から、濃度は低い方が好ましく、本発明の蛍光色素の濃度は100μM以下であることが好ましい。
【0047】
本発明における蛍光標識剤は、本発明の蛍光色素を含有していれば、必要に応じてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、水や有機溶剤、両親媒性物質等が挙げられる。
【0048】
本発明の蛍光色素のうち、フタロシアニンの合成方法としては特に限定されないが、例えば、フタロニトリル誘導体を原料として公知の方法でアルミニウムフタロシアニンを合成した後、対応する軸成分とジメチルスルホキシド溶媒中で加熱撹拌することで得ることができる。
【0049】
原料であるフタロニトリル誘導体が非対称の構造である場合、得られるフタロシアニンは置換基の位置が異なる異性体の混合物として得られる。本明細書においては、異性体の構造のうち一例を示す。
【0050】
本発明の蛍光色素の具体例としては、以下の蛍光色素が挙げられるが、本発明の蛍光色素はこれらに限定されない。
【0051】
【表1】





































【実施例
【0052】
以下に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。なお、実施例中「部」とは、「質量部」を表す。
【0053】
[製造例1]
<化合物A-1の製造方法>
スルホラン200部、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン(DBU)15.7部に1,3-ジイミノイソインドリン5部および四塩化ケイ素8.8部を加え、160~170℃で8時間加熱撹拌後、室温(25℃)まで冷却した。メタノール200部を加え、析出した沈澱を濾別して、メタノール:水(質量比4:1)混合溶液で洗浄後、乾燥して、収率63.6%で表2に示す化合物A-1を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=575.99(理論値575.97)に分子イオンピークが検出され、表2に示す化合物A-1の構造を有することが同定された。
【0054】
[製造例2~5]
<化合物A-2~A-5の製造方法>
化合物A-1の製造方法で使用した1,3-ジイミノイソインドリンを、表2に示すイソインドリン誘導体に変更した以外は、化合物A-1の製造と同様にして、表2に示す化合物A-2~A-5をそれぞれ製造した。尚、イソインドリン誘導体は、化合物A-1の製造における1,3-ジイミノイソインドリンと同モル量使用した。得られた化合物A-2~A-5の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表2に示した構造を有することが確認された。表2にマススペクトルの分析結果を示した。
【0055】
【表2】






【0056】
[製造例6]
<化合物A-6の製造方法>
キノリン50部および無水塩化アルミニウム1部の溶液にアンモニアガスを導入し、フタロニトリルを5部添加した。180℃で7時間反応させた。これを室温まで冷却した後、メタノール200部と10%塩酸水溶液200部を加え、析出した固体をろ取し、水200部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率86.0%で表3に示す化合物A-6を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=575.99(理論値575.97)に分子イオンピークが検出され、表3に示す化合物A-6の構造を有することが同定された。
【0057】
[製造例7~10]
<化合物A-7~A-10の製造方法>
化合物A-7の製造方法で使用したフタロニトリルを、表3に示すフタロニトリル誘導体に変更した以外は、化合物A-6の製造と同様にして、表3に示す化合物A-7~A-10をそれぞれ製造した。尚、フタロニトリル誘導体は、化合物A-6の製造におけるフタロニトリルと同モル量使用した。得られた化合物A-7~A-10の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表3に示した構造を有することが確認された。表3にマススペクトルの分析結果を示した。

【0058】
【表3】

【0059】
[製造例11]
<化合物B-1の製造方法>
化合物A-1を1部と3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン0.6部をピリジンに溶解させ、115℃で3時間還流した。エバポレーターでピリジンを除去した後、エタノール10部と水50部の混合溶液を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率54.5%で表4に示す化合物B-1を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=806.15(理論値806.14)に分子イオンピークが検出され、表4に示す化合物B-1の構造を有することが同定された。
【0060】
[製造例12~20]
<化合物B-2~B-10の製造方法>
化合物B-1の製造方法で使用した化合物A-1を、表4示す化合物A-2~A-10に変更した以外は、化合物A-1の製造と同様にして、表4に示す化合物B-2~B-10をそれぞれ製造した。尚、化合物A-2~A-10は、化合物B-1の製造における化合物A-1と同モル量使用した。得られた化合物B-2~B-10の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表4に示した構造を有することが確認された。表4にマススペクトルの分析結果を示した。

【0061】
【表4】



【0062】
[製造例21]
<化合物C-1の製造方法>
化合物A-1を0.7部と4-アミノ酪酸0.4部をジメチルスルホキシド50部に溶解させ、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン0.3部を添加した後、90℃で5時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水100部と食塩10部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率40.2%で表5に示す化合物C-1を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=745.83(理論値745.85)に分子イオンピークが検出され、表5に示す化合物C-1の構造を有することが同定された。
【0063】
[製造例22~24]
<化合物C-2~C-4の製造方法>
化合物C-1の製造方法で使用した化合物A-1と4-アミノ酪酸を、表5に示す化合物Aと軸配位子に変更した以外は、化合物C-1の製造と同様にして、表5に示す化合物C-2~C-4をそれぞれ製造した。尚、化合物Aおよび軸配位子は、化合物C-1の製造における化合物A-1および4-アミノ酪酸と同モル量使用した。得られた化合物C-2~C-4の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表5に示した構造を有することが確認された。表5にマススペクトルの分析結果を示した。
【0064】
【表5】


【0065】
[製造例25]
<化合物D-1の製造方法>
クロロホルム6部に化合物B-1を4部、無水コハク酸を1部溶解させた。これにトリエチルアミンを3部加え、室温で2時間攪拌した。エバポレーターでクロロホルムを除去した後、水5部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率72.8%で表6に示す化合物D-1を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=1006.28(理論値1006.28)に分子イオンピークが検出され、表6に示す化合物D-1の構造を有することが同定された。
【0066】
[製造例26~38]
<化合物D-2~D~14の製造方法>
化合物D-1の製造方法で使用した化合物B-1を、化合物B-2~B-10、化合物C-1~C-4のいずれかに変更した以外は、化合物D-1の製造と同様に、表6に示す化合物D-2~D-14をそれぞれ製造した。尚、化合物B-2~B-10、化合物C-1~C-4は、化合物B-1と同モル量使用した。得られた化合物D-2~D-14の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表6に示した構造を有することが確認された。表6にマススペクトルの分析結果を示した。
【0067】
【表6】







【0068】
[製造例39]
<化合物E-1の製造方法>
化合物A-1を0.5部と(2-カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸0.29部をジメチルスルホキシド20部に溶解させ、80℃で8時間反応させた。これを室温まで冷却した後、水50部と食塩10部を加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率74.4%で0.46部の表7に示す化合物E-1を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=967.94(理論値967.92)に分子イオンピークが検出され、表7に示す化合物E-1の構造を有することが同定された。
【0069】
[製造例39~42]
<化合物E-2~E-4の製造方法>
化合物E-1の製造方法で使用した化合物A-1と(2-カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸を、表7に示す化合物Aと軸配位子に変更した以外は、化合物E-1の製造と同様にして、表7に示す化合物E-2~E-4をそれぞれ製造した。尚、化合物Aおよび軸配位子は、化合物E-1の製造における化合物E-1および(2-カルボキシエチル)フェニルホスフィン酸と同モル量使用した。得られた化合物F-2~F-4の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表7に示した構造を有することが確認された。表7にマススペクトルの分析結果を示した。
【0070】
【表7】




【0071】
[製造例43]
<化合物F-1の製造方法>
脱水N,N-ジメチルホルムアミド7000部に化合物D-1を47部、N-ヒドロキシコハク酸イミドを16部、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩を31部溶解させ、窒素雰囲気下、室温で3時間攪拌した。水を10000部加え、析出した固体をろ取し、水50部で洗浄を行った。80℃で乾燥させ、収率51.4%で表8に示す化合物F-1を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=1200.41(理論値1200.43)に分子イオンピークが検出され、表8に示す化合物F-1の構造を有することが同定された。
【0072】
[製造例44~60]
<化合物F-2~F-18の製造方法>
化合物F-1の製造方法で使用した化合物D-1を、化合物D-2~D-14、E-1~E-4のいずれかに変更した以外は、化合物F-1の製造と同様に、表8に示す化合物F-2~F-18をそれぞれ製造した。尚、化合物D-2~D-14、E-1~E-4は、化合物D-1と同モル量使用した。得られた化合物F-2~F-18の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表8に示した構造を有することが確認された。表8にマススペクトルの分析結果を示した。
【0073】
【表8】



【0074】
[実施例1]
<蛍光色素1の製造方法>
クロロホルム3000部に化合物F-1を10部溶解させた。これに1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DPPE)11.5部とジイソプロピルアミノエタノール1部を溶解させたクロロホルム4000部を少しずつ加えた。室温で3日攪拌した。エバポレーターでクロロホルムを留去した後、粗製物を中圧分取液体クロマトグラフ(バイオタージ製フラッシュ自動精製システム、Isorela One)を用いて逆相シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、収率75.8%で表1に示す蛍光色素1を得た。質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)により分析した結果m/z=2354.21(理論値2354.20)に分子イオンピークが検出され、表1に示す蛍光色素1の構造を有することが同定された。
【0075】
[実施例2~21]
<蛍光色素2~21の製造方法>
蛍光色素1の製造方法で使用した化合物F-1とDPPEを、表9に示す化合物F-2~F-18とリン脂質に変更し、蛍光色素1の製造と同様にして、表1に示す蛍光色素2~21をそれぞれ製造した。化合物F-1~F-18は、蛍光色素1の製造における化合物F-1と同モル量使用した。リン脂質は、蛍光色素1の製造におけるDPPEと同モル量使用した。得られた蛍光色素2~21の構造は、質量分析装置(TOF-MS:ブルカー・ダルトニクス社製 autoflexII)によって同定し、表1に示した構造を有することが確認された。表9にマススペクトルの分析結果を示した。
【0076】
【表9】



【0077】
[実施例22]
<蛍光標識剤1の作製>
ジメチルスルホキシド10部に蛍光色素1を0.00047部溶解した。0.2μmナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、RPMI1640培地で100倍希釈し、蛍光色素1を含む蛍光標識剤1を作製した。
【0078】
[実施例23~42]
<蛍光標識剤2~21の作製>
蛍光標識剤1の作製で使用した蛍光色素1を蛍光色素2~21に変更し、蛍光標識剤2~21をそれぞれ作製した。ただし、蛍光色素2~21は蛍光色素1と同モル量使用した。
【0079】
[比較例1~10]
<蛍光標識剤22~31の作製>
蛍光標識剤1の作製で使用した蛍光色素1を化合物A-1~A-10に変更し、比較例1~10である蛍光標識剤22~31をそれぞれ作製した。ただし、化合物1~10は蛍光色素1と同モル量使用した。
【0080】
<蛍光標識剤の細胞毒性評価>
ヒト類上皮がん細胞A431を96ウェルプレートに播種(1×10cell/well)し、10%Fetal Bovine Serum(FBS)および1%ペニシリン―ストレプトマイシンを含ませたRPMI1640培地を用いて、インキュベーター(37℃、5%CO含有Air、加湿環境)内で24時間培養した。その後、培地を取り除き、実施例22~42、比較例1~10にて作製した蛍光標識剤と、リファレンスとして1%ジメチルスルホキシドを含むRPMI1640培地(DMSO培地溶液)をそれぞれ添加した。これをインキュベーター内に1時間静置した後、RPMI1640培地で洗浄した。各wellにセルカウンティングキット-8(同仁化学製)を10μLずつ添加し、インキュベーター(37℃、5%CO含有Air、加湿環境)内で1時間静置した。プレートリーダー(TECAN社製、SPARK)を用いて、450nmにおける吸光度を測定した。リファレンスの吸光度を1として各々の蛍光標識剤の吸光度の相対値を算出し、下記の基準に基づいて評価した。評価が〇であれば細胞毒性を示さないといえる。尚、蛍光標識剤の吸光度の相対値を算出際には、測定した吸光度からセルカウンティングキット-8(同仁化学製)添加前の吸光度を差し引いた値を用いた。

〇:0.9以上
×:0.9未満
【0081】
以下、評価結果を表10中の「細胞毒性」に示す。
【0082】
<蛍光標識剤の蛍光強度評価>
ヒト類上皮がん細胞A431を96ウェルプレートに播種(1×10cell/well)し、10%Fetal Bovine Serum(FBS)および1%ペニシリン―ストレプトマイシンを含ませたRPMI1640培地を用いて、インキュベーター(37℃、5%CO含有Air、加湿環境)内で24時間培養した。その後、培地を取り除き、実施例22~42、比較例1~10にて作製した蛍光標識剤を添加し、インキュベーター内に1時間静置した後、RPMI1640培地で洗浄した。プレートリーダー(TECAN社製、SPARK、励起波長670nm(バンド幅:40nm)、測定波長740nm(バンド幅:40nm))を用いて、表17に示す蛍光波長の範囲内での蛍光強度評価を行い、下記の基準に基づいて評価した。実施例22~42は、比較例1~10に比べ蛍光強度が高く、DPPE基の導入によって細胞集積能が向上していることが確認された。

3:1000以上
2:200以上~1000未満
1:200未満
【0083】
図1に蛍光標識剤1、及び22の蛍光強度評価結果を示す。
【0084】
以下、評価結果を表10中の「蛍光強度」に示す。
【0085】
<細胞の視認性評価>
ヒト類上皮がん細胞A431を96ウェルプレートに播種(1×10cell/well)し、10%Fetal Bovine Serum(FBS)および1%ペニシリン―ストレプトマイシンを含ませたRPMI1640培地を用いて、インキュベーター(37℃、5%CO含有Air、加湿環境)内で24時間培養した。その後、培地を取り除き、実施例22~42、比較例1~10にて作製した蛍光標識剤を添加し、インキュベーター内に1時間静置した後、RPMI1640培地で洗浄した。適切な波長の励起フィルターおよび蛍光フィルターを設置した蛍光顕微鏡(キーエンス社製、BZ-X800、励起波長710nm(バンド幅:75nm)、測定波長810nm(バンド幅:90nm))を用いて、細胞の暗視野像と蛍光像を観察し、下記の基準に基づいて評価した。蛍光顕微鏡観察の結果から、実施例22~42は比較例1~10に比べ明瞭に細胞標識できていることから、DPPE基の導入によって細胞集積能が向上していることが確認された。

〇:明瞭
×:不明瞭
【0086】
図2に蛍光標識剤1で標識した細胞、図3に蛍光標識剤22で標識した細胞の視認性評価結果を示す(倍率:10倍、蛍光取り込み時間:2秒)。
【0087】
以下、評価結果を表10中の「視認性」に示す。
【0088】
【表10】
図1
図2
図3