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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】歯車装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/40 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
F16H3/40
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020106197
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022001768
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東 健
(72)【発明者】
【氏名】有田 直之
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-250410(JP,A)
【文献】特開2006-103487(JP,A)
【文献】米国特許第5983741(US,A)
【文献】特開2018-080737(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の歯を有し、回転中心軸方向に移動不能に設けられた固定歯車と、回転中心軸方向に摺動することにより、前記固定歯車の前記複数の歯のそれぞれに噛み合う複数の歯を有する摺動歯車とを備え、
前記摺動歯車の各歯が、前記摺動歯車の回転中心軸方向の一端部に形成されるチャンファと、前記各歯の両側面に形成され、前記チャンファから前記摺動歯車の回転中心軸方向の他端部に向かって前記各歯の歯厚が薄くなるように傾斜する傾斜面とを有する歯車装置であって、
前記摺動歯車の前記各歯の両側面に形成されるそれぞれの傾斜面は、前記チャンファ側に形成される第1の傾斜面と、前記摺動歯車の回転中心軸方向で前記第1の傾斜面に対して前記チャンファと反対側に形成される第2の傾斜面とを有し、
前記摺動歯車の回転中心軸に対する前記第1の傾斜面の傾斜角度よりも前記第2の傾斜面の傾斜角度が大きく形成されていることを特徴とする歯車装置。
【請求項2】
前記摺動歯車の回転中心軸方向の前記第1の傾斜面の長さは、前記摺動歯車の回転中心軸方向の前記第2の傾斜面の長さよりも長く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の歯車装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯車装置を有する変速機としては、特許文献1に記載されるものが知られている。この変速機は、歯車装置として後退速用ギヤ列を有し、後退速用ギヤ列は、プライマリシャフトに固設されたリバースプライマリギヤと、セカンダリシャフトに固設されたリバースセカンダリギヤと、アイドラシャフトに遊嵌合されたリバースアイドラギヤとで構成されている。
【0003】
後退速への変速操作時には、シフトレバーの操作に連動してリバースアイドラギヤが、リバースプライマリギヤとリバースセカンダリギヤとに噛み合わされて後退速用ギヤ列が動力伝達状態となる、所謂、選択摺動式から構成されている。
【0004】
ところで、選択摺動式の後退速用ギヤ列においては、動力伝達状態で各ギヤの抜けを抑制するためにギヤの回転中心軸方向の両側面にバックテーパを形成することが知られているが、バックテーパを設けると、各歯の歯厚がギヤの後端側で薄くなってギヤの強度が低下する。
【0005】
一方、選択摺動式の後退速用ギヤ列においては、シャフト自体の撓み等により、動力伝達時にリバースプライマリギヤの各歯とリバースアイドラギヤの各歯およびリバースセカンダリギヤの各歯とが、それぞれ相対的に傾いた状態で噛み合うことがある。
【0006】
この場合には、バックテーパにおいて不利な位置(例えば、ギヤ歯の薄い位置)で歯同士が接触すると、強度の弱い歯の部分に荷重が集中し、ギヤの耐久性が悪化するおそれがある。
【0007】
従来の変速機では、各歯の両側の歯面のうち、抜け方向の力が作用する側の歯面にのみバックテーパを設けることにより、各歯の両側の歯面にバックテーパを設ける場合に比べて、ギヤの歯の強度が低下することを抑制してギヤ抜けを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2018-80737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来の変速機にあっては、各歯の両側の歯面のうち、抜け方向の力が作用する側の歯面にのみバックテーパを設けているが、バックテーパは、先端側(チャンファ側)から後端側に向かって傾斜しているので、後端側に向かってギヤの歯の厚みが減少して各歯の強度が低下することには変わりがない。
【0010】
このため、噛み合うギヤ同士の位置関係がばらついて各歯が噛み合った場合に、強度的に不利な位置や角度で各歯が噛み合うおそれがあり、ギヤの耐久性が悪化するおそれがある。
【0011】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、摺動歯車と固定歯車の位置関係がばらついて各歯が噛み合った場合であっても、摺動歯車の耐久性が悪化することを抑制できる歯車装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、複数の歯を有し、回転中心軸方向に移動不能に設けられた固定歯車と、回転中心軸方向に摺動することにより、前記固定歯車の前記複数の歯のそれぞれに噛み合う複数の歯を有する摺動歯車とを備え、前記摺動歯車の各歯が、前記摺動歯車の回転中心軸方向の一端部に形成されるチャンファと、前記各歯の両側面に形成され、前記チャンファから前記摺動歯車の回転中心軸方向の他端部に向かって前記各歯の歯厚が薄くなるように傾斜する傾斜面とを有する歯車装置であって、前記摺動歯車の前記各歯の両側面に形成されるそれぞれの傾斜面は、前記チャンファ側に形成される第1の傾斜面と、前記摺動歯車の回転中心軸方向で前記第1の傾斜面に対して前記チャンファと反対側に形成される第2の傾斜面とを有し、前記摺動歯車の回転中心軸に対する前記第1の傾斜面の傾斜角度よりも前記第2の傾斜面の傾斜角度が大きく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように上記の本発明によれば、摺動歯車と固定歯車の位置関係がばらついて各歯が噛み合った場合であっても、摺動歯車の耐久性が悪化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の一実施例に係る歯車装置を備えた変速機の骨子図である。
図2図2は、本発明の一実施例に係る歯車装置の噛み合いの位置関係を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施例に係る歯車装置のリバースアイドラギヤの歯の構成を示す図である。
図4図4(a)から図4(d)は、一般的な形状のリバースアイドラギヤの歯とリバースカウンタギヤの歯の噛み合い状態を示す図である。
図5図5(a)は、一般的な形状のリバースアイドラギヤにリバースカウンタギヤが点接触した状態を示し、図5(b)は、本発明の一実施例に係る歯車装置のリバースアイドラギヤにリバースカウンタギヤが面接触した状態を示す図である。
図6図6(a)、(b)は、傾斜面の深さを変更した一般的な形状のリバースアイドラとリバースカウンタギヤの噛み合い状態を示す図であり、図6(c)は、本発明の一実施例に係る歯車装置のリバースアイドラギヤのリバースカウンタギヤの噛み合い状態を示す図である。
図7図7(a)から図7(d)は、本発明の一実施例に係る歯車装置のリバースアイドラギヤの歯とリバースカウンタギヤの歯の噛み合い状態を示す図である。
図8図8は、本発明の一実施例に係る歯車装置のリバースアイドラギヤの歯とリバースカウンタギヤの歯とリバース入力軸の歯との噛み合い状態を示す図であり、図8(a)は、リバースアイドラギヤが一方に傾いた状態、図8(b)は、リバースアイドラギヤが一方に傾いた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施の形態に係る歯車装置は、複数の歯を有し、回転中心軸方向に移動不能に設けられた固定歯車と、回転中心軸方向に摺動することにより、固定歯車の複数の歯のそれぞれに噛み合う複数の歯を有する摺動歯車とを備え、摺動歯車の各歯が、摺動歯車の回転中心軸方向の一端部に形成されるチャンファと、各歯の両側面に形成され、チャンファから摺動歯車の回転中心軸方向の他端部に向かって各歯の歯厚が薄くなるように傾斜する傾斜面とを有する歯車装置であって、摺動歯車の各歯の両側面に形成されるそれぞれの傾斜面は、チャンファ側に形成される第1の傾斜面と、摺動歯車の回転中心軸方向で第1の傾斜面に対してチャンファと反対側に形成される第2の傾斜面とを有し、摺動歯車の回転中心軸に対する第1の傾斜面の傾斜角度よりも第2の傾斜面の傾斜角度が大きく形成されている。
【0016】
これにより、本発明の一実施の形態に係る歯車装置は、摺動歯車と固定歯車の位置関係がばらついて各歯が噛み合った場合であっても、摺動歯車の耐久性が悪化することを抑制できる。
【実施例
【0017】
以下、本発明の一実施例に係る歯車装置について、図面を用いて説明する。
まず、構成を説明する。
【0018】
図1において、車両には変速機1が搭載されており、変速機1には発進用のクラッチ3を介してエンジン2に接続されている。
【0019】
変速機1は、入力軸4、カウンタ軸5およびリバース軸6を有する。入力軸4は、発進用のクラッチ3を介してエンジン2に接続されており、入力軸4には発進用のクラッチ3を介してエンジン2の動力が伝達される。
【0020】
入力軸4には1速用の入力ギヤ4A、2速用の入力ギヤ4B、3速用の入力ギヤ4C、4速用の入力ギヤ4D、5速用の入力ギヤ4Eおよびリバース入力ギヤ4Rが設けられている。
【0021】
1速用の入力ギヤ4A、2速用の入力ギヤ4Bおよびリバース入力ギヤ4Rは、入力軸4に固定されており、3速用の入力ギヤ4C、4速用の入力ギヤ4Dおよび5速用の入力ギヤ4Eは、入力軸4と相対回転自在となっている。
【0022】
カウンタ軸5には1速用のカウンタギヤ5A、2速用のカウンタギヤ5B、3速用のカウンタギヤ5C、4速用のカウンタギヤ5D、5速用のカウンタギヤ5Eおよびファイナルドライブギヤ5Fが設けられており、カウンタギヤ5Aからカウンタギヤ5Eは、同一の変速段を構成する入力ギヤ4Aから入力ギヤ4Eに噛み合っている。
【0023】
3速用のカウンタギヤ5C、4速用のカウンタギヤ5D、5速用のカウンタギヤ5Eおよびファイナルドライブギヤ5Fは、カウンタ軸5に固定されており、1速用のカウンタギヤ5Aおよび2速用のカウンタギヤ5Bは、カウンタ軸5と相対回転自在となっている。
【0024】
リバース軸6にはリバースアイドラギヤ6Rが設けられており、リバースアイドラギヤ6Rは、リバース軸6の回転中心軸方向に摺動自在となっている。
【0025】
変速機1には1速-2速用の同期装置10、3速-4速用の同期装置11および5速用の同期装置12が設けられている。
【0026】
1速-2速用の同期装置10は、ハブ13およびスリーブ14を備えている。ハブ13は、カウンタ軸5に取付けられており、カウンタ軸5と一体で回転する。スリーブ14は、ハブ13にスプライン嵌合されており、カウンタ軸5の回転中心軸方向に移動自在となっている。
【0027】
スリーブ14は、シフト操作によって変速段が1速段または2速段にシフトされると、中立位置から図示しないシフトフォークによって1速用のカウンタギヤ5A側または2速用のカウンタギヤ5B側に移動される。
【0028】
スリーブ14が1速用のカウンタギヤ5A側に移動されると、1速用のカウンタギヤ5Aがハブ13を介してカウンタ軸5に連結され、1速用のカウンタギヤ5Aがカウンタ軸5と一体で回転される。
【0029】
これにより、エンジン2の動力が発進用のクラッチ3を介して入力軸4に伝達された後、1速用の入力ギヤ4Aから1速用のカウンタギヤ5Aを介してカウンタ軸5に伝達される。
【0030】
カウンタ軸5にはファイナルドライブギヤ5Fが設けられており、ファイナルドライブギヤ5Fは、ディファレンシャル装置15のファイナルドリブンギヤ15Fに噛み合っている。
【0031】
ディファレンシャル装置15は、図示しない左右のドライブシャフトを介して図示しない左右の駆動輪に連結されている。
【0032】
エンジン2から変速機1に入力される動力は、変速機1によって1速段に変速され、ファイナルドライブギヤ5Fからファイナルドリブンギヤ15Fに伝達された後、ディファレンシャル装置15によって左右のドライブシャフトを介して左右の駆動輪に分配される。
【0033】
また、スリーブ14が2速用のカウンタギヤ5B側に移動されると、2速用のカウンタギヤ5Bがハブ13を介してカウンタ軸5に連結され、2速用のカウンタギヤ5Bがカウンタ軸5と一体で回転される。
【0034】
これにより、エンジン2から変速機1に入力される動力は、変速機1によって2速段に変速され、ファイナルドライブギヤ5Fからファイナルドリブンギヤ15Fに伝達された後、ディファレンシャル装置15によって左右のドライブシャフトを介して左右の駆動輪に分配される。
【0035】
なお、3速-4速用の同期装置11および5速用の同期装置12は、1速-2速用の同期装置10と同一の構成を有するので、具体的な説明を省略する。
【0036】
1速-2速用の同期装置10のスリーブ14にはリバースカウンタギヤ14Rが一体に設けられており、リバースカウンタギヤ14Rは、スリーブ14と一体で回転する。
【0037】
車両の後退時にリバースアイドラギヤ6Rが図示しない駆動部材によってリバース軸6の回転中心軸方向でリバース入力ギヤ4R側に摺動されると、リバースアイドラギヤ6Rがリバース入力ギヤ4Rとリバースカウンタギヤ14Rに噛み合う。
【0038】
これにより、エンジン2の動力が発進用のクラッチ3を介して入力軸4に伝達された後、リバース入力ギヤ4Rからリバースアイドラギヤ6Rおよびリバースカウンタギヤ14Rを介してカウンタ軸5に伝達される。
【0039】
このとき、カウンタ軸5が車両の前進方向と反対方向に回転し、エンジン2の動力がファイナルドライブギヤ5Fからファイナルドリブンギヤ15Fに伝達された後、ディファレンシャル装置15によって左右のドライブシャフトを介して左右の駆動輪に分配される。これにより、車両が後退する。
【0040】
本実施例のリバース入力ギヤ4Rとリバースカウンタギヤ14Rは、入力軸4とカウンタ軸5の回転中心軸方向に移動不能に設けられている。リバースアイドラギヤ6Rは、リバース軸6の回転中心軸方向に移動自在に設けられ、車両の後退時に歯6rがリバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rに噛み合う選択摺動式のギヤである(図2参照)。
【0041】
本実施例のリバースアイドラギヤ6Rは、本発明の摺動歯車を構成し、リバース入力ギヤ4Rとリバースカウンタギヤ14Rは、本発明の固定歯車を構成する。
【0042】
図2に示すように、リバースアイドラギヤ6Rは、円周方向に等間隔に歯6rが形成されている。
【0043】
図3に示すように、リバースアイドラギヤ6Rの歯6rは、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の一端部(左端部)に形成されるチャンファ6aと、歯6rの両側面に形成され、チャンファ6aからリバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の他端部(右端部)に向かって歯6rの歯厚が薄くなるように傾斜する第1の傾斜面6bと第2の傾斜面6cを有する。
【0044】
すなわち、第1の傾斜面6bおよび第2の傾斜面6cは、歯6rの両側面に形成されており、回転中心軸Lの方向に対して同一の形状に形成されている。第1の傾斜面6bおよび第2の傾斜面6cは、バックテーパに相当する。
【0045】
なお、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lは、リバース軸6の回転中心軸と同一である。また、歯6rの両側面とは、回転中心軸Lの方向に沿った面である。
【0046】
第1の傾斜面6bは、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向でチャンファ6a側に形成されており、第2の傾斜面6cは、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向で第1の傾斜面6bに対してチャンファ6aと反対側に形成されている。
【0047】
チャンファ6aは、回転中心軸Lの方向でリバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rと噛み合う側に形成されている。
【0048】
第2の傾斜面6cは、回転中心軸Lの方向でリバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rとの噛み合いが解除される側に形成されている。なお、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向とリバースアイドラギヤ6Rの摺動方向とは同一方向である。また、各歯4r、6r、14rは同一形状である。
【0049】
第1の傾斜面6bは、リバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rと正常に噛み合った場合に面接触となるように、歯4r、14rの傾斜面(バックテーパ)と同一の傾斜角に形成されている。
【0050】
図3に示すように、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lに対する第1の傾斜面6bの傾斜角度αよりも第2の傾斜面6cの傾斜角度βが大きく形成されている。
【0051】
これにより、第1の傾斜面6bの歯厚は、チャンファ6aからリバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の他端部に向かって歯厚が厚い状態で傾斜した後、第2の傾斜面6cで薄くなる。
【0052】
図3に示すように、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の第1の傾斜面6bの長さS1は、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の第2の傾斜面6cの長さS2よりも長く形成されており、第1の傾斜面6bの面積は、第2の傾斜面6cの面積よりも大きい。
【0053】
図3に示すように、歯6rの外周面には歯6rの耐磨耗性を向上させるために焼き入れによる硬化層7が形成されており、硬化層7は、歯6rの外周面を覆っている。
【0054】
図1図2に示すように、本実施例の入力軸4、カウンタ軸5、リバース軸6、入力ギヤ4Aから入力ギヤ4E、リバース入力ギヤ4R、カウンタギヤ5Aからカウンタギヤ5E、ファイナルドライブギヤ5Fおよびリバースアイドラギヤ6Rは、歯車装置20を構成する。
【0055】
次に、作用を説明する。
まず、図4を用いて一般的な形状のリバースアイドラギヤ21とリバースカウンタギヤ22の噛み合いについて説明する。
【0056】
リバースアイドラギヤ21の歯21Aは、リバース軸の回転中心軸Lの方向の一端部に形成されるチャンファ21aと、歯21Aの両側面に形成される傾斜面(バックテーパ)21bとを有する。リバースカウンタギヤ22の歯22Aは、リバースカウンタギヤ22の回転中心軸Lの一端部に形成されるチャンファ22aと、チャンファ22aの両側面に形成される傾斜面(バックテーパ)22bを有する。
【0057】
図4では、リバースアイドラギヤ21の回転方向Rを紙面の下方から上方側とする。回転方向Rに回転するリバースアイドラギヤ21をリバース軸に対して摺動させることにより、リバースアイドラギヤ21の歯21Aをリバースカウンタギヤ22の歯22Aに噛み合わせる。
【0058】
このとき、リバースアイドラギヤ21の歯21Aのチャンファ21aが、リバースカウンタギヤ22の歯22Aのチャンファ22aを掻き分けることにより、リバースアイドラギヤ21とリバースカウンタギヤ22の角度にずれがあった場合でも、歯21Aと歯22Aの噛み合いを開始できる。
【0059】
リバースアイドラギヤ21の歯21Aとリバースカウンタギヤ22の歯22Aの噛み合いが完了すると、リバースアイドラギヤ21からリバースカウンタギヤ22に動力が伝達される。
【0060】
リバースアイドラギヤ21の歯21Aとリバースカウンタギヤ22の歯22Aの噛み合い時には傾斜面21bと傾斜面22bとが接触する。
【0061】
傾斜面21b、22bは、リバースアイドラギヤ21とリバースカウンタギヤ22の回転中心軸Lの方向に対して傾斜する傾斜面であり、リバースアイドラギヤ21からリバースカウンタギヤ22に動力を伝達する際の反力Fを歯21Aと歯22Aの抜けを抑制する方向に向けることにより、歯21Aと歯22Aの噛み合いを保ち、ギヤ抜けを抑制する。
【0062】
図4(a)に示すように、歯21Aと歯22Aが正常な噛み合い位置で、かつ、正常な角度で噛み合う場合には、リバースアイドラギヤ21の歯21Aの歯厚の厚い部位31aに歯22Aが面接触しているので、歯21Aから歯22Aに加わる荷重を分散でき、歯21Aの強度が低下することを抑制できる。
【0063】
選択摺動式のリバースアイドラギヤ21は、リバースアイドラギヤ21が回転中心軸Lの方向に移動することにより、歯21Aがリバースカウンタギヤ22の歯22Bに噛み合う。
【0064】
このため、歯21Aと歯22Aの噛み合い位置のばらつきが発生することや、カウンタ軸やリバース軸の撓みや噛み合い部のクリアランス(歯21Aと歯22Aが噛み合ったときに生じる回転方向のクリアランス)によって歯21Aと歯22Aが傾いた状態で噛み合うことがある。
【0065】
例えば、図4(b)に示すように、歯21Aと歯22Aが正常な噛み合い位置で、かつ、不利な角度で噛み合う場合には、歯厚が厚い部位32aで歯21Aと歯22Aが噛み合うが、歯21Aと歯22Aが面接触ではなく点接触で噛み合うため、歯21Aの強度が低下する。
【0066】
また、図4(c)に示すように、歯21Aと歯22Aが不利な噛み合い位置で、かつ、正常な角度で噛み合う場合には、歯21Aと歯22Aが面接触で噛み合うので、歯21Aから歯22Aに加わる荷重を分散できるが、歯22Aが歯21Aの歯厚が薄い部位33aで噛み合うため、歯21Aの強度が低下する。
【0067】
また、図4(d)に示すように、歯21Aと歯22Aが不利な噛み合い位置で、かつ、不利な角度で噛み合う場合には、歯22Aが歯21Aの歯厚が薄い部位34aで、かつ、点接触で噛み合うため、歯21Aの強度がより一層低下する。
【0068】
また、図5(a)に示すように、リバースアイドラギヤ21の歯21Aの外周面には歯21Aの耐磨耗性を向上させるために焼き入れによる硬化層23(ハッチングで示す)が形成されており、硬化層23は、歯21Aの外周面を覆っている。
【0069】
焼き入れによる硬化層23は、硬度が高いが靱性が低下した脆い組織である。歯21Aの傾斜面21bの他端部は、歯厚が減少して強度が低下しており、また、焼き入れは傾斜面21bの他端部からチャンファ21aに向かって処理されることから、歯21Aの傾斜面21bの他端部は、硬化層の占める割合が高くなる。
【0070】
図5(a)に示すように、リバースアイドラギヤ21の回転中心軸Lの方向で靱性を有する歯21Aの範囲を矢印21cで示し、脆弱個所を矢印21dで示す。
【0071】
歯21Aの傾斜面21bの他端部の矢印21dで示す脆弱個所は、靱性が低下して強度に関して脆弱な個所となる。
【0072】
このため、図4(d)に示すように、歯21Aと歯22Aが不利な噛み合い位置で、かつ、不利な角度で噛み合う場合には、図5(a)に示すように、歯22Aが歯21Aの脆弱個所において点接触で噛み合い、脆弱個所に荷重が集中し、歯21Aの強度がより一層低下することになる。
【0073】
このような点を考慮し、歯21Aと歯22Aが傾いた状態で噛み合うことを見越して、図6(a)に示すように、不利な噛み合い位置で、かつ不利な角度となっても歯21Aと22Aが面接触となるように、リバースアイドラギヤ21の歯21Aの傾斜面21bの傾斜角を深くする、すなわち、リバースアイドラギヤ21の回転中心軸Lに対する傾斜面21bの傾斜角を大きくすることが考えられる。
【0074】
しかしながら、歯21Aの傾斜面21bの傾斜角を深くすると、歯21Aの前端部の歯厚が必要以上に大きくなり、歯21Aと歯22Aの間の隙間aが小さくなる。
【0075】
このため、図6(a)の仮想線で示すように歯21Aのチャンファ21aと歯22Aのチャンファ22aが衝突してリバースアイドラギヤ21が摺動できずに歯21Aと歯22Aが噛み合わないおそれがある。
【0076】
これに対して、歯21Aと歯22Aが噛み合うようにするために、図6(b)に示すように、歯21Aと歯22Aの間の隙間を小さくせずに、傾斜面21bの傾斜角度を深くすると、歯21Aの歯厚が小さくなり、歯21Aの強度が大きく低下する。
【0077】
したがって、傾斜面21bの深さを変更して歯21Aの強度が低下することを抑制するには限界がある。
【0078】
本実施例の変速機1は、複数の歯4r、14rを有し、回転中心軸Lの方向に移動不能に設けられたリバース入力ギヤ4Rおよびリバースカウンタギヤ14Rと、回転中心軸Lの方向に摺動することにより、リバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rとにそれぞれ噛み合う複数の歯6rを有するリバースアイドラギヤ6Rとを備えている。
【0079】
リバースアイドラギヤ6Rの歯6rは、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の一端部に形成されるチャンファ6aと、歯6rの両側面に形成され、チャンファ6aからリバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の他端部に向かって歯6rの歯厚が薄くなるように傾斜する傾斜面とを有する。
【0080】
歯6rの両側面に形成されるそれぞれの傾斜面は、チャンファ6a側に形成される第1の傾斜面6bと、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向で第1の傾斜面6bに対してチャンファ6aと反対側に形成される第2の傾斜面6cとを有する。
【0081】
これに加えて、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lに対する第1の傾斜面6bの傾斜角度αよりも第2の傾斜面6cの傾斜角度βが大きく形成されている。
【0082】
図7を用いて、本実施例のリバースアイドラギヤ6Rとリバースカウンタギヤ14Rの噛み合いについて説明する。
【0083】
本実施例のリバースアイドラギヤ6Rは、歯6rの第1の傾斜面6bの傾斜角度αをリバースカウンタギヤ14Rの歯14rと正常な角度で噛み合う傾斜角度に設定し、第2の傾斜面6cの傾斜角度βを歯14rと不利な角度で噛み合う傾斜角度に設定している。
【0084】
図7(a)に示すように、リバースアイドラギヤ6Rの歯6rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rが正常な噛み合い位置で、かつ、正常な角度で噛み合う場合には、歯6rの歯厚が厚く、かつ、靱性を有する第1の傾斜面6bで歯6rと歯14rが面接触する。これにより、歯6rから歯14rに加わる荷重を分散でき、歯6rの強度が低下することを抑制できる。
【0085】
また、図7(b)に示すように、歯6rと歯14rが正常な噛み合い位置で、かつ、不利な角度で噛み合う場合には、歯6rが歯14rに点接触するが、歯6rの歯厚の厚く、かつ、靱性を有する第1の傾斜面6bで歯6rと歯14rが噛み合うので、歯6rの強度が低下することを抑制できる。
【0086】
また、図7(c)に示すように、歯6rと歯14rが不利な噛み合い位置で、かつ、正常な角度で噛み合う場合には、歯4rと歯14rが点接触で噛み合うが、歯6rの歯厚が厚く、かつ、靱性を有する第1の傾斜面6bで歯6rと歯14rが噛み合う。これにより、歯6rの強度が低下することを抑制できる。
【0087】
また、図7(d)に示すように、歯6rと歯14rが不利な噛み合い位置で、かつ、不利な角度で噛み合う場合には、歯6rの第2の傾斜面6cに歯14rが面接触する。
【0088】
また、図5(b)に示すように、第2の傾斜面6cの他端部は、靱性が低下して強度的に脆弱な個所であるが、歯6rの第2の傾斜面6cに歯14rが面接触することにより、歯6rから歯14rに加わる荷重を分散でき、歯6rの強度が低下することを抑制できる。
【0089】
図5(b)に示すように、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向で靱性を有する6Rの範囲を矢印6dで示し、脆弱個所を矢印6eで示す。
【0090】
このように本実施例のリバースアイドラギヤ6Rは、チャンファ6a側に形成される第1の傾斜面6bと、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向で第1の傾斜面6bに対してチャンファ6aと反対側に形成される第2の傾斜面6cとを有し、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lに対する第1の傾斜面6bの傾斜角度αよりも第2の傾斜面6cの傾斜角度βが大きく形成されている。
【0091】
これにより、リバースアイドラギヤ6Rの第1の傾斜面6bの傾斜角度αをリバースアイドラギヤ21の傾斜面21bの傾斜角度よりも小さくでき、チャンファ6aから第2の傾斜面6cまでの歯厚を厚くできる。
【0092】
このため、リバースアイドラギヤ6Rとリバースカウンタギヤ14Rの位置関係がばらついてリバースアイドラギヤ6Rの歯6rにリバースカウンタギヤ14Rの歯14rが点接触した場合に、歯14rを歯6rの歯厚の厚い第1の傾斜面6bに接触させることができる。
【0093】
このため、歯6rの強度不足によってリバースアイドラギヤ6Rの耐久性が悪化することを抑制できる。
【0094】
また、靱性が低下して強度的に脆弱な歯6rの他端部において、不利な角度で歯6rと歯14rが接触した場合に、歯6rの第2の傾斜面6cに歯14rが面接触することにより、歯6rから歯14rに加わる荷重を分散できる。
【0095】
これにより、歯6rの強度が低下することを抑制でき、歯6rの強度不足によってリバースアイドラギヤ6Rの耐久性が悪化することを抑制できる。
【0096】
一方、上述したように、従来形状のリバースアイドラギヤ21は、傾斜面21bの深さを変更して歯21Aの強度が低下することを抑制するには限界があった。
【0097】
これに対して、本実施例のリバースアイドラギヤ6Rは、図6(c)に示すように、リバースアイドラギヤ6Rが摺動を行うための歯6rの隙間bを確保しつつ、歯6rの他端側(第2の傾斜面6cよりチャンファ6a側)の歯6rの歯厚を確保できる。
【0098】
すなわち、本実施例のリバースアイドラギヤ6Rは、第1の傾斜面6bの深さを自由に変更して歯6rの強度(歯厚)が低下することを抑制できる。
【0099】
この結果、リバースアイドラギヤ6Rの摺動を確実に行って歯6rと歯14rを確実に噛み合わせることができるとともに、歯6rの強度不足によってリバースアイドラギヤ6Rの耐久性が悪化することを抑制できる。
【0100】
なお、詳細な説明は省略するが、リバースアイドラギヤ6Rの歯6rとリバース入力ギヤ4Rの歯4rの噛み合いに関しても、図7(a)から図7(d)の噛み合いと同様の噛み合いとなり、上述した効果と同じ効果を得ることができる。
【0101】
また、本実施例の変速機1によれば、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の第1の傾斜面6bの長さS1を、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の第2の傾斜面6cの長さS2よりも長く形成したので、第1の傾斜面6bの面積は、第2の傾斜面6cの面積よりも大きくできる。
【0102】
リバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rは、正常な噛み合い位置で正常な角度で噛み合うことが多い。
【0103】
このため、リバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rが正常に噛み合った場合に歯6rと歯14rを面接触させて、歯6rから歯14rに加わる荷重を分散でき、歯6rの強度が低下することを抑制できる。この結果、リバースアイドラギヤ6Rの耐久性が低下することをより効果的に抑制できる。
【0104】
本実施例のリバースアイドラギヤ6Rは、第1の傾斜面6bと第2の傾斜面6cが同一形状に形成されているが、これに限定されるものではない。
【0105】
例えば、リバースアイドラギヤ6Rの第1の傾斜面6bおよび第2の傾斜面6cは、リバース入力ギヤ4Rに対して従動側となり、リバースアイドラギヤ6Rに対しては駆動側となる。
【0106】
このため、従動側の第1の傾斜面6bと駆動側の第1の傾斜面6bの傾斜角度を異ならせてもよく、従動側の第2の傾斜面6cと駆動側の第2の傾斜面6cの傾斜角度を異ならせてもよい。
【0107】
また、リバースアイドラギヤ6Rに第1の傾斜面6bと第2の傾斜面6cの2つの傾斜面が形成されているが、傾斜面は、3つ以上であってもよい。
【0108】
この場合には、リバースアイドラギヤ6Rに、例えば、第1の傾斜面として傾斜角度が異なる1つの傾斜面を形成し、第2の傾斜面として傾斜角度が異なる2つの傾斜面を形成することや、第1の傾斜面として傾斜角度が異なる2つの傾斜面を形成し、第2の傾斜面として傾斜角度が異なる1つの傾斜面を形成することが考えられる。
【0109】
すなわち、本実施例の第1の傾斜面は、傾斜角度が異なる1つ以上の傾斜面であり、第2の傾斜面は、傾斜角度が異なる1つ以上の傾斜面を構成するものであり、いずれも1つの傾斜面に限定されるものではない。
【0110】
また、リバースアイドラギヤ6Rの側面において、第1の傾斜面6bと第2の傾斜面6cの境界(連絡部)は、リバースアイドラギヤ6Rのチャンファ6aから他端部までの間のどの部位であってもよい。
【0111】
すなわち、リバースアイドラギヤ6Rの回転中心軸Lの方向の第1の傾斜面6bの長さは、自由に設定可能である。また、第1の傾斜面6bと第2の傾斜面6cの境界を丸みがあってもよい。
【0112】
図8(a)、図8(b)は、リバースアイドラギヤ6Rの歯6rがリバース入力ギヤ4Rの歯4rとリバースカウンタギヤ14Rの歯14rに噛み合った状態を示す図である。
【0113】
リバースアイドラギヤ6Rの歯6rの第1の傾斜面6bの傾斜角度αを歯4r、14rと正常な角度で噛み合う傾斜角度に設定し、第2の傾斜面6cの傾斜角度βを歯4r、14rと不利な角度で噛み合う傾斜角度に設定した場合には、リバースアイドラギヤ6Rの傾く方向A1、A2によって図8(a)、図8(b)に示す噛み合いとなる。
【0114】
すなわち、図8(a)においては、リバースアイドラギヤ6Rの歯6rの第2の傾斜面6cがリバース入力ギヤ4Rの歯4rに面接触し、歯6rにリバースカウンタギヤ14Rの歯14rが点接触するので、歯6rは歯14rに対して不利な角度となる。
【0115】
また、図8(b)においては、歯6rの第2の傾斜面6cが歯4rに点接触し、歯6rに歯14rが面接触するので、歯6rは歯4rに対して不利な角度となる。
【0116】
歯6rの第2の傾斜面6cの傾斜角度を浅くすると、歯4r、6r、14rの噛み合い部でギヤ抜けを防ぐ方向の成分が減少する。
【0117】
この場合には、3つのギヤ4R、6R、14Rの歯4r、6r、14rが噛み合っていることを利用し、リバースアイドラギヤ6Rの歯6rにおいて、ギヤ抜けを防ぐ方向の成分が減少した側と反対側の噛み合い反力が大きくなるように、歯6rの第2の傾斜面6cの角度を設定することが好ましい。
【0118】
また、ギヤ抜けを防ぐ方向は、噛み合い位置が不利になる方向であるため、歯4rおよび歯14rのいずれか一方と噛み合う歯6rの第2の傾斜面6cの一方の噛み合い反力が大きくなったときには、歯4rおよび歯14rのいずれか他方と噛み合う歯6rの第2の傾斜面6cの他方の噛み合い反力が小さくなるように第2の傾斜面6cの傾斜角度を設定してもよい。
【0119】
このように第2の傾斜面6cの傾斜角度を設定できるのは、リバース入力ギヤ4Rとリバースカウンタギヤ14Rが摺動せずに位置関係が変わらないからである。
【0120】
ここで、回転中心軸Lの方向に対するリバースアイドラギヤ6Rの歯6rの長さは、リバース入力ギヤ4Rの歯4rの長さよりも短く、リバース入力ギヤ4Rの歯4rの長さよりも長く形成されている。
【0121】
そして、リバースアイドラギヤ6Rが回転中心軸Lの方向に摺動したときに、歯6rは、歯4rに噛み合った後に歯14rに噛み合う。これにより、歯6rは、歯4r、14rに円滑に噛み合う。なお、本実施の形態の歯車装置は、変速機1以外にも適用可能であることはいうまでもない。
【0122】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0123】
6a...チャンファ、6b...第1の傾斜面、6c...第2の傾斜面、6R...リバースアイドラギヤ(摺動歯車)、6r...歯(摺動歯車の歯)、14R...リバースカウンタギヤ(固定歯車)、14r...歯(固定歯車の歯)、L...摺動歯車の回転中心軸、S1...摺動歯車の回転中心軸方向の第1の傾斜面の長さ、S2...摺動歯車の回転中心軸方向の第2の傾斜面の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8