(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ショートアーク型放電ランプ
(51)【国際特許分類】
H01J 61/073 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01J61/073 B
(21)【出願番号】P 2020111398
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊池 康郎
(72)【発明者】
【氏名】山根 巧
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-069078(JP,A)
【文献】特開2004-259639(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0211130(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 61/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光管の内部に一対の電極が対向して配置されているショートアーク型放電ランプにおいて、
前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極の外表面には、鱗状構造が形成され、
前記鱗状構造は、前記外表面の法線方向に対して傾斜する方向に前記外表面から突出して、前記外表面とのなす角度が鈍角である表面および前記外表面とのなす角度が鋭角である裏面を有する複数の鱗片状の突起を含み、
前記鱗状構造が形成された前記外表面は、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物、および金属窒化物のうち少なくとも一つを含む被膜で覆われており、
前記裏面と前記外表面とで挟まれる空間に前記被膜の一部が入り込んでいることを特徴とするショートアーク型放電ランプ。
【請求項2】
前記鱗状構造が形成された前記外表面は、円柱状の胴部を有する前記電極の外周面であることを特徴とする請求項1に記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項3】
前記突起は、前記外周面の法線方向に対して前記電極の周方向に傾斜する方向に突出することを特徴とする請求項2に記載のショートアーク型放電ランプ。
【請求項4】
前記被膜の膜厚は、5μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載のショートアーク型放電ランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ショートアーク型放電ランプに関し、特にランプ点灯時に電極温度を低下させるために電極の外表面に放熱層が形成されているショートアーク型放電ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体素子、液晶表示素子等の製造工程に用いられる露光装置や、種々の映写機においては、光源としてショートアーク型放電ランプ(以下、単に「ランプ」ともいう)が用いられている。このショートアーク型放電ランプは、発光管内に陽極および陰極が互いに対向して配置されると共に、当該発光管内に、水銀、キセノンガス等の発光物質が封入されて構成されている。
【0003】
このようなショートアーク型放電ランプにおいては、点灯時に陽極にかかる熱的負荷が高いことから、陽極の過熱等に起因する電極材料の蒸発が生じ、この蒸発物が発光管の内壁に付着して光透過率が低下する、いわゆる黒化が生じることが知られている。
【0004】
このような問題を解決するため、電極表面に放熱層を形成して電極の温度上昇を抑制する技術が知られており、下記特許文献1には電極の先端近傍を除く外表面に金属の酸化物を少なくとも1種含む放熱層が形成されているランプが開示されている。
【0005】
このような放熱層は、製造時において電極表面に付着させ難く、また剥がれやすいという問題があり、特に、金属の酸化物などのセラミックスは、高温でも安定なものであるためにこの問題が顕著に生じる。
【0006】
また、電極を構成するタングステンの熱膨張係数が4.5×10-6/Kであるのに対して、例えば放熱層を構成する酸化ジルコニウムの熱膨張係数は10.5×10-6/Kと差が大きく、ランプの点灯と消灯による電極の膨張及び収縮により放熱層が剥がれてしまう場合があるという問題があった。
【0007】
このような問題の解決手段として、ブラスト処理等によって、電極表面の凹凸を増やし、アンカー効果により剥離強度を高める試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、電極表面の切削加工による溝加工、ブラスト処理等で形成される凹凸は、電極表面に窪みを形成したにすぎず、電極表面に対して水平方向の力にはある程度のアンカー効果はあるが、電極表面の法線方向に引き剥がす力に対するアンカー効果は強いとは言えず、剥がれが生じる場合があった。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑み、発光管の内部に一対の電極が対向して配置され、前記一対の電極のうちの少なくとも一方の電極の外表面に放熱層が形成されているショートアーク型放電ランプにおいて、放熱性に優れ、かつ膜剥がれが生じることのない長寿命のショートアーク型放電ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るショートアーク型放電ランプは、発光管の内部に一対の電極が対向して配置されているショートアーク型放電ランプにおいて、
前記一対の電極のうち少なくとも一方の電極の外表面には、鱗状構造が形成され、
前記鱗状構造は、前記外表面の法線方向に対して傾斜する方向に前記外表面から突出して、前記外表面とのなす角度が鈍角である表面および前記外表面とのなす角度が鋭角である裏面を有する複数の鱗片状の突起を含み、
前記鱗状構造が形成された前記外表面は、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物、および金属窒化物のうち少なくとも一つを含む被膜で覆われており、
前記裏面と前記外表面とで挟まれる空間に前記被膜の一部が入り込んでいるものである。
【0012】
この構成によれば、電極の外表面は、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物、および金属窒化物のうち少なくとも一つを含む放射率が高い被膜(放熱層)で覆われているため、放射性に優れる。また、被膜の一部が、鱗片状の突起の裏面と電極の外表面とで挟まれる空間に入り込んでいることで、外表面の法線方向に被膜を引き剥がす力に対するアンカー効果が効果的に得られるため、本発明のショートアーク型放電ランプは膜剥がれが生じることがなく長寿命である。
【0013】
本発明のショートアーク型放電ランプにおいて、前記鱗状構造が形成された前記外表面は、円柱状の胴部を有する前記電極の外周面であるという構成でもよい。また、前記突起は、前記外周面の法線方向に対して前記電極の周方向に傾斜する方向に突出するという構成でもよい。また、前記被膜の膜厚は、5μm以上200μm以下であるという構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るショートアーク型放電ランプの構成を示す説明図
【
図2】
図1に示すショートアーク型放電ランプのP領域拡大図
【
図3A】被膜を形成する前の陽極の外表面の拡大写真(表面の像)
【
図3B】被膜を形成する前の陽極の外表面の拡大写真(断面の像)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るショートアーク型放電ランプの実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比は必ずしも実際の寸法比と一致しておらず、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0016】
以下において、XYZ座標系を適宜参照して説明される。また、本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。また、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。
【0017】
図1は、本実施形態に係るショートアーク型放電ランプの構成を示す説明図である。ショートアーク型放電ランプ100(以下、「ランプ100」という)は、発光管1と、発光管1の内部に対向配置された陽極2および陰極3と、陽極2および陰極3を支持するリード棒4と、を備える。
【0018】
本実施形態のランプ100は、半導体素子、液晶表示素子等の製造工程で使用される露光装置等において用いられる大型のランプであり、例えば定格電力が2kW~35kWである。
【0019】
発光管1は、ガラス管の中央を膨らませて形成される。発光管1は、X方向の両端から、それぞれ中央に向かうにつれて、その内径が大きくなるガラス管の領域である。発光管1の外形は、球体または楕円球体である。
【0020】
発光管1は、発光管1のX方向の両端からそれぞれ反対方向に連続して延びる一対の封止管部11を有する。発光管1は、封止管部11とともに例えば石英ガラスにより一体として形成される。一対の封止管部11がそれぞれ有する中心軸は互いに重なり、
図1の軸X1で示される。
【0021】
発光管1の内部には、発光空間S1が形成される。発光空間S1には、水銀などの発光物質の他、アルゴンガスやキセノンガスなどの始動補助用バッファガスが適宜封入されている。
【0022】
発光管1の内部には、陽極2および陰極3がX方向に互いに対向して配置されている。本実施形態において、ショートアーク型放電ランプとは、陽極2と陰極3とが40mm以下の間隔(熱膨張をしていない常温時の値)を空けて、互いに対向配置される放電ランプである。本実施形態において、陽極はタングステン、陰極はトリエーテッドタングステンで形成されている。
【0023】
リード棒4は、陽極2および陰極3に接続され、封止管部11内をX方向に延びる。陽極2および陰極3は、リード棒4の先端に固定されている。リード棒4の中心軸は、軸X1と重なるとよい。リード棒4には、高融点金属、例えばタングステンを含む材料が使用される。
【0024】
口金7は、封止管部11の陽極2および陰極3から遠ざかる側を覆う。口金7は、リード棒4に電気的に接続される。
【0025】
図2は、
図1に示すランプ100のP領域拡大図である。陽極2の外表面には、放熱層としての被膜5が設けられている。ここで、陽極2の外表面とは、陰極3に対向する先端面2aを除く外表面である。陽極2の先端面2aは、ランプ100の点灯時に被膜5の融点以上にまで温度が上昇する場合があるため、本実施形態においては陽極2の先端面2aには被膜5を設けていない。本実施形態では、陽極2の外表面のうち、軸X1を中心とした円柱状の胴部の外周面2bに被膜5が設けられているが、外周面2bと先端面2aの間に位置するテーパ面2cにも被膜5を設けても構わない。さらに、陽極2の外周面2bの+X側に位置する後部テーパ面2dに被膜5を設けても構わない。
【0026】
被膜5の材料としては、融点、蒸気圧、放射率、熱膨張率等が重要となる。陽極2の温度を下げるためには、被膜5は、放熱量が多くなるように放射率が高い材料で構成されるのが好ましい。すなわち、被膜5は、放熱性を向上させるための高輻射膜であり得る。
【0027】
被膜5の材料は、金属酸化物、金属炭化物、金属ホウ化物、金属ケイ化物、および金属窒化物のうち少なくとも一つを含む。被膜5の材料は、融点が2000℃以上の材料が好適に使用でき、例えばアルミナ、ジルコニア、炭化ジルコニウム、ホウ化ジルコニウム、ケイ化タンタル、窒化ジルコニウムが挙げられる。
【0028】
図3A、Bは、被膜5を形成する前の陽極2の外表面の拡大写真(SEM像)であり、
図3Aが表面、
図3Bが断面の像である。陽極2の外表面に、微細な鱗状構造が形成されている。鱗状構造は、外表面の表面状態を鱗状にした構造であり、複数の鱗片状突起6が含まれる。鱗片状突起6は、陽極2の外表面の法線方向に対して傾斜する方向に陽極2の外表面から突出している。
【0029】
図4は、鱗片状突起6の形成方向を示す図である。また、
図5は、鱗状構造の拡大図であり、(a)は陽極2の軸方向断面の拡大図、(b)は陽極2の平面の拡大図、(c)は陽極2の周方向断面の拡大図である。なお、
図5では、陽極2の軸方向をX方向、周方向(周方向の接線方向)をY方向、法線方向をZ方向としている。
【0030】
鱗片状突起6は、例えば旋盤加工により電極表面を鋭角にめくり上げるようにして形成される。より具体的には、鱗片状突起6は、陽極2を周方向に回転させながら外周面2bに切削工具を押し当てることにより形成される。
図4に示すように、複数の鱗片状突起6はすべて同じ向きに突出するように形成される。本実施形態の鱗片状突起6は、外周面2bの法線方向(外周面2bの径方向)に対して陽極2の周方向(Y方向)に傾斜する方向に突出している。
【0031】
鱗片状突起6は、外周面2bとのなす角度が鈍角である表面61と、外周面2bとのなす角度が鋭角である裏面62と、を有する(
図5(c)参照)。なお、外周面2bとのなす角度は、外周面2bが曲面状であれば、鱗片状突起6が位置する部位における外周面2bの接線方向とのなす角度である。
【0032】
図6は、
図3Bに示す陽極2のQ領域拡大図である。鱗片状突起6の裏面62と外周面2bとのなす角度θは5~30°であった。
【0033】
また、外周面2bから鱗片状突起6の裏面62の突出端62aまでの高さHは3~15μmであった。
【0034】
また、外周面2bの法線方向(Z方向)から見た鱗片状突起6の裏面62の突出長さLは10~50μmであった。なお、突出長さLは、裏面62の基端62bから突出端62aまでのY方向における長さである。
【0035】
また、鱗片状突起6のX方向の幅は、最小で10μm程度、最大で0.4mm程度であった。
【0036】
被膜5は、被膜5を構成する材料の粒子(例えば、粒径10μm以下の酸化ジルコニウムの粒子)を溶媒(例えば、ニトロセルロースと酢酸ブチルからなる溶媒)に分散させて、これを陽極2の外周面2bに筆で塗布し、150℃で30分間乾燥した後、真空雰囲気中で1900℃、120分の熱処理を行うことにより形成される。この塗布の際、被膜5を構成する粒子は鱗片状突起6の裏面62と外周面2bとの間の隙間に入り込む(
図5において、被膜5の粒子を円で模式的に示している)。その結果、被膜5は、
図5に示すように、一部が裏面62と外周面2bとで挟まれる空間に入り込んだ状態で形成される。なお、鱗片状突起6同士がZ方向に部分的に重なる場合には、被膜5の一部が一方の鱗片状突起6の裏面62と他方の鱗片状突起6の表面61との隙間に入り込んだ状態となることもある。被膜5の膜厚は、5μm以上200μm以下であるのが好ましい。被膜5の膜厚が薄いと十分な放射率が得られず、厚いと剥がれやすくなる。本実施形態の被膜5の膜厚は、10~50μm程度であった。
【0037】
被膜5を構成する材料の粒子の平均粒径は、1~10μmであるのが好ましい。例えば、平均粒径が2μmの粒子と平均粒径が5μmの粒子を組み合わせるなど、平均粒径が異なる複数の材料を用いても構わない。
【0038】
複数の鱗片状突起6を有する鱗状構造によるアンカー効果について、
図5を参照して説明する。
図7は、従来構造(サンドブラスト加工により形成された構造)によるアンカー効果の説明図であり、
図5(c)の周方向断面の拡大図に対応する。なお、従来構造の窪み9の断面は、Y方向も同様となっている。
【0039】
図5(a)に示すように、鱗状構造において鱗片状突起6がめくれ上がる高さは一様ではなく、ばらつきがある。このため、
図7に示す従来構造と同様、粒子をX方向に拘束する。
【0040】
また、
図5(b)に示すように、鱗片状突起6はY方向に連続して設けられ、かつ、めくれ上がる高さにばらつきがある。このため、
図7に示す従来構造と同様、粒子をY方向に拘束する。
【0041】
さらに、
図5(c)に示すように、粒子が鱗片状突起6の裏面62と外周面2bとの間の隙間に入り込み、かつ、粒子同士はそれぞれ結合しているため、粒子をZ方向に拘束する。他方、
図7に示す従来構造においては、上記のようにX方向およびY方向(陽極2の軸方向および周方向)のアンカー効果は得られるが、Z方向(法線方向)に拘束する力は弱く、強いアンカー効果は得られない。
【0042】
以上より、本発明の鱗状構造では、従来構造よりも強いアンカー効果を得ることができ、陽極2の外表面(本実施形態では外周面2b)に設けられる被膜5の剥離強度が高められる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における評価は、下記のような試験により行った。
【0044】
(1)テープ引き剥がし試験
焼結後の被膜5の付着性の評価として、JIS K 6854に準拠して剥離接着強さ試験を行った。具体的には、まず、被膜5を塗布して焼結した後のφ29mmの陽極2の外周面2bの周方向に、15mm幅のセロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製:CT405AP、付着力3.93N/10mm)を貼り付け、急速に引き剥がし、テープの粘着面に被膜5の付着が有るかどうかを目視で確認した。
【0045】
(2)昇降温繰り返し試験
熱による電極の膨張及び収縮に対する被膜5の付着性の評価として、被膜5を塗布して焼結した陽極2を搭載したランプ100を定格電力の6000Wで1時間点灯した後に、30分消灯する点滅点灯試験を50回繰り返し、被膜5の剥がれについて目視で確認した。このとき、陽極2の外周面2bの被膜5のうち最も先端面2aに近い部分は約2,000℃に達している。
【0046】
[実施例1]
以下の仕様の陽極2を作製し、実施例1とした。陽極2の外周面2bの鱗状構造は、旋盤加工により形成させた。旋盤加工には、超硬合金のバイト(切削チップ)を用い、下記条件で切削した。
図8は、旋盤加工の様子を模式的に示す図である。旋盤加工では、陽極2を周方向に回転させながらバイトを軸方向に移動させて切削する。被膜5の材料はZrO
2(ジルコニア)とした。形成させた被膜5の膜厚は約50μmである。
・バイト(切削チップ):超硬合金製、ノーズR(チップ先端のR処理)0.4mm
・旋盤の回転速度:346rpm
・刃物突っ込み量:50μm
・すくい角度:20°~30°
【0047】
[比較例1]
外周面2bに微細な凹凸を形成していない陽極2を比較例1とした。被膜5の材料と膜厚は実施例1と同様である。
【0048】
[比較例2]
外周面2bにアルミナの粉を吹き付け、微細な凹凸を形成した(サンドブラスト加工した)陽極2を比較例2とした。これは、
図7を参照して上述した構造を模擬したものである。また、被膜5の材料と膜厚は実施例1と同様である。
【0049】
上記試験による評価結果を
図9に示す。テープ引き剥がし試験にてテープの粘着面に被膜5の付着が有った場合を「A」、被膜5の付着が無かった場合を「B」とする。また、昇降温繰り返し試験にて被膜5の剥がれが有った場合を「C」、被膜5の剥がれが無かった場合を「D」とする。
【0050】
図9に示すように、比較例1は、テープ引き剥がし試験にてテープの粘着面に被膜5の付着が見られた。なお、テープ引き剥がし試験で「A」のため、昇降温繰り返し試験は行っていない。
【0051】
比較例2は、テープ引き剥がし試験で「B」であったが、昇降温繰り返し試験にて目視で被膜5の剥がれが見られた。さらに、比較例2では、ランプ100を水平点灯した状態で、発光管1の内部に被膜5の剥がれによる異物が確認された。
【0052】
実施例1では、テープ引き剥がし試験および昇降温繰り返し試験の何れにおいても被膜5の剥がれが生じなかった。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよい。
【0055】
(1)上記の実施形態では、陽極2の外表面のみに被膜5が設けられているが、陰極3の外表面にも被膜を設けてもよく、陰極3の外表面のみに被膜を設けても構わない。
【0056】
(2)上記の実施形態では、旋盤加工により鱗状構造を形成しているが、これに限定されない。例えば、シェーパー加工(セーパー加工)により鱗状構造を形成してもよい。
図10に示すように、シェーパー加工では、電極を周方向に所定のピッチで回転させながらバイトを軸方向に移動させて切削する。シェーパー加工により形成された鱗片状突起は、外周面の法線方向に対して電極の軸方向に傾斜する方向に突出する。
【符号の説明】
【0057】
1 :発光管
2 :陽極
2b :陽極の外周面
3 :陰極
4 :リード棒
5 :被膜
6 :鱗片状突起
61 :鱗片状突起の表面
62 :鱗片状突起の裏面
62a :突出端
62b :基端
100 :ショートアーク型放電ランプ(ランプ)
S1 :発光空間
θ :角度
H :高さ
L :突出長さ