(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ギア装置
(51)【国際特許分類】
F16H 57/031 20120101AFI20240109BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F16H57/031
H02K7/116
(21)【出願番号】P 2020138564
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】谷口 貢
(72)【発明者】
【氏名】芝田 真之
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060205(JP,A)
【文献】実開平05-012827(JP,U)
【文献】特開2015-175398(JP,A)
【文献】実開昭57-153839(JP,U)
【文献】実開平05-008118(JP,U)
【文献】特開2010-064619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 57/031
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギアを収容するハウジングと、
前記ハウジングの開口部を覆うカバーと、
前記ハウジングに対して前記カバーの位置を決める位置決め部とを備え、
前記カバーは、前記複数のギアに設けられる軸のうちの、第1軸を受ける第1軸受と、第2軸を受ける第2軸受とを有し、
前記位置決め部は、前記カバーを前記ハウジングにおける所定位置にガイドするものであり、前記ハウジングおよび前記カバーの一方から前記第1軸または前記第2軸に沿うように突出する突出部と、前記ハウジングおよび前記カバーの他方に形成されて前記突出部が嵌る嵌合孔とを有し、
前記突出部の長さは、前記カバーを前記ハウジングに取り付ける際、前記第1軸が前記第1軸受に挿通された状態で、前記第2軸の先端が前記第2軸受に入る以前に、前記突出部が前記嵌合孔に入るように設定されている
ギア装置。
【請求項2】
前記突出部の先端にはテーパー部が形成されている
請求項1に記載のギア装置。
【請求項3】
前記第2軸の長さは、前記突出部の前記テーパー部が前記嵌合孔に位置するときに前記第2軸の先端が前記第2軸受に嵌るように設定されている
請求項2に記載のギア装置。
【請求項4】
前記突出部と前記嵌合孔との間の隙間において、前記第1軸を中心とした回転方向に沿う方向における第1隙間は、前記第1軸を中心とした径方向に沿う方向における第2隙間よりも小さい
請求項1~3のいずれか一項に記載のギア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギアを有するギア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ギア装置の一例として、特許文献1に記載の技術が知られている。
特許文献1に記載のギア装置は、ハウジングと、ハウジングに収容されるギアと、ハウジングの開口部を覆うカバーとを備える。カバーは、ヘリカルギアを支持する軸を受ける軸受と、平歯車を支持する軸が通る貫通孔とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、カバーが複数の軸に係合する場合、カバーの取り付けは、軸を介して行われることになる。このような場合、ハウジングへのカバーの取り付けや位置決めは、軸の寸法ばらつきおよび組付ばらつきの影響を受けるようになり、カバーを意図した取付位置へ誘導し難くなる。そこで、カバーを取付位置に誘導し易いギア装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)上記課題を解決するギア装置は、複数のギアを収容するハウジングと、前記ハウジングの開口部を覆うカバーと、前記ハウジングに対して前記カバーの位置を決める位置決め部とを備え、前記カバーは、前記複数のギアに設けられる軸のうちの、第1軸を受ける第1軸受と、第2軸を受ける第2軸受とを有し、前記位置決め部は、前記カバーを前記ハウジングにおける所定位置にガイドするものであり、前記ハウジングおよび前記カバーの一方から前記第1軸または前記第2軸に沿うように突出する突出部と、前記ハウジングおよび前記カバーの他方に形成されて前記突出部が嵌る嵌合孔とを有し、前記突出部の長さは、前記カバーを前記ハウジングに取り付ける際、前記第1軸が前記第1軸受に挿通された状態で、前記第2軸の先端が前記第2軸受に入る以前に、前記突出部が前記嵌合孔に入るように設定されている。この構成によれば、カバーをハウジングに取り付ける際、第1軸が第1軸受に挿通された状態で、第2軸の先端が第2軸受に入るとき、または前記第2軸の先端が前記第2軸受に入るまでに、突出部が嵌合孔に入る。このようにして、ハウジングにおいてカバーを取付位置に誘導できる。
【0006】
(2)上記ギア装置において、前記突出部の先端にはテーパー部が形成されている。この構成によれば、ハウジングにおいてカバーを円滑に取付位置に誘導できる。これによって、取付作業の効率を向上できる。
【0007】
(3)上記ギア装置において、前記第2軸の長さは、前記突出部の前記テーパー部が前記嵌合孔に位置するときに前記第2軸の先端が前記第2軸受に嵌るように設定されている。この構成によれば、テーパー部が嵌合孔に位置するとき、ハウジングに対するカバーの移動が許容されているため、第2軸と第2軸受との嵌合がスムーズになる。
【0008】
(4)上記ギア装置において、前記突出部と前記嵌合孔との間の隙間において、前記第1軸を中心とした回転方向に沿う方向における第1隙間は、前記第1軸を中心とした径方向に沿う方向における第2隙間よりも小さい。
【0009】
この構成によれば、ハウジングに対するカバーの移動を規制できる。特に、第1軸を中心とした回転方向に沿う方向において、カバーの移動を規制できる。これによって、取付位置に対するカバーの位置ずれを抑制できる。また、第1軸を中心とした径方向に沿う方向における第2隙間によってカバーの移動がある程度許容されるようになり、部品の寸法ばらつきに起因する組付け難さを抑制できる。これによって、カバーを円滑に取付位置に誘導できる。
【発明の効果】
【0010】
ギア装置は、カバーを取付位置に誘導し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】
図2のIII-III線に沿うギア装置の断面図。
【
図7】
図2のVII-VII線に沿うギア装置の断面図。
【
図10】カバーをハウジングに取り付ける際のギア装置の断面図。
【
図11】カバーをハウジングに取り付ける際のギア装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図11を参照して、ギア装置1について説明する。ギア装置1は、モータ2および各種アクチュエータに取り付けられる。一例では、ギア装置1は、モータ2に取り付けられる。ギア装置1を有する装置の一例として、モータユニット3が挙げられる。
【0013】
図1は、モータユニット3の斜視図である。
図2は、モータユニット3の平面図である。例えば、モータユニット3は、車両のシートに取り付けられる。一例では、モータユニット3は、車両のシートの傾斜角度を変更するためのアクチュエータの動力発生部を構成する。他の例では、モータユニット3は、車両のシートを上下方向または前後方向に移動させるためのアクチュエータの動力発生部を構成する。モータユニット3は、モータ2と、ギア装置1とを備える。本実施形態のギア装置1は、モータ2の出力軸の回転速度を減速する。
【0014】
図3は、
図2のIII-III線に沿うギア装置1の断面図である。
図4は、ハウジング12の平面図であり、
図5は、ハウジング12の側面図である。
図6は、カバー13の平面図である。
【0015】
ギア装置1は、複数のギア11と、複数のギア11を収容するハウジング12と、ハウジング12の開口部15を覆うカバー13と、位置決め部14とを備える。
【0016】
ギア装置1は、ギア11として、モータ2の出力軸に連結されるウォーム21と、ウォーム21に連動するウォームホイール22と、ウォームホイール22に連動する駆動ギア23と、出力ギア28と、中間ギア29とを備える。ギア装置1は、さらに、駆動ギア23を支持する駆動軸24と、ウォームホイール22を支持するウォームホイール軸26とを備える。駆動軸24には、出力ギア28が設けられる。ウォームホイール軸26には、中間ギア29が設けられる。
【0017】
ここで、駆動軸24およびウォームホイール軸26のようにカバー13を貫通する部材について、カバー13をハウジング12に取り付ける際に、第1番目にカバー13を通る部材を第1軸25と定義し、第2番目にカバー13を通る部材を第2軸27と定義する。本実施形態では、カバー13をハウジング12に取り付ける際、第1番目にカバー13を通る部材は、駆動軸24であることから、以下では、駆動軸24を第1軸25と呼ぶ。第2番目にカバー13を通る部材は、ウォームホイール軸26であることから、以下では、ウォームホイール軸26を第2軸27と呼ぶ。
【0018】
第1軸25は、駆動ギア23と一体に回転する。第1軸25は、ハウジング12の第1底壁41とカバー13とによって回転可能に支持される。第1軸25は、第1端部25aと、第1端部25aの反対側の第2端部25bと、第1端部25aと第2端部25bとの中間部分に位置する中間部25cとを有する。
【0019】
第1軸25の第1端部25aは、ハウジング12の第1ハウジング軸受45で受けられる。第1ハウジング軸受45の深さDAは、第2ハウジング軸受49の深さDBよりも深い。第1軸25の中間部25cは、カバー13の第1軸受63で受けられる。
【0020】
第1軸25および第2軸27がハウジング12に取り付けられた状態で、第1軸25は、第2軸27に対して平行に配置される。第1軸25は、第2軸27よりも長い。駆動ギア23の回転軸心(以下、第1回転軸心CA)に沿う方向において、第1軸25の第2端部25bは、第2軸27の第2端部27bよりもハウジング12の開口部側端面12aから遠い位置に配置される。
【0021】
出力ギア28は、第1軸25と一体に回転する。出力ギア28は、第1軸25と一体に形成されてもよい。出力ギア28は、第1軸25においてハウジング12の外側に露出した部分に設けられる。具体的には、出力ギア28は、第1軸25において中間部25cと第2端部25bとの間の部分に設けられる。出力ギア28は、駆動ギア23の第1回転軸心CAと同じ回転軸心を有する。出力ギア28の直径は、駆動ギア23の直径よりも小さい。出力ギア28は、他の装置に回転動力を伝える。
【0022】
第2軸27は、ウォームホイール22と一体に回転する。第2軸27は、ハウジング12の第2底壁46とカバー13とによって回転可能に支持される。第2軸27は、第1端部27aと、第1端部27aの反対側の第2端部27bとを有する。第2軸27の第1端部27aは、ハウジング12の第2ハウジング軸受49で受けられる。第2軸27の第2端部27bは、カバー13の第2軸受65で受けられる。
【0023】
中間ギア29は、ウォームホイール22と一体に回転する。中間ギア29は、ウォームホイール22の回転軸心(以下、第2回転軸心CB)と同じ回転軸心を有する。中間ギア29は、第2軸27と一体に形成されてもよい。中間ギア29は、駆動ギア23に噛み合う。中間ギア29の直径は、ウォームホイール22の直径よりも小さい。
【0024】
モータ2の出力軸の回転動力は、ウォーム21を介してウォームホイール22に伝えられ、さらに、ウォームホイール22と一体に回転する中間ギア29を介して駆動ギア23に伝えられる。駆動ギア23の回転に伴って出力ギア28が回転する。
【0025】
図4に示されるように、ハウジング12は、駆動ギア23の少なくとも一部分を収容する第1収容部31と、ウォームホイール22を収容する第2収容部32と、ウォーム21を収容する第3収容部33とを備える。ハウジング12は、さらに、モータ2が取り付けられるモータ取付部34を備える。モータ2は、ボルトによって、モータ取付部34に取り付けられる。
【0026】
第1収容部31は、第1底壁41と、第1周壁42とを備える。第1収容部31において、駆動ギア23の第1回転軸心CAに沿う方向おける第1底壁41の反対側の端部は、開口し、第1開口部43を構成する。第1開口部43は、駆動ギア23が挿入できる大きさに構成される。
【0027】
第1周壁42は、駆動ギア23の歯面に面するように筒状に構成される。第1周壁42には、切欠部44が設けられる。第1収容部31は、切欠部44を介して第2収容部32に繋がる。駆動ギア23は、切欠部44を介して中間ギア29と噛み合う。第1底壁41には、第1軸25の第1端部25aを受ける第1ハウジング軸受45が設けられる。
【0028】
第2収容部32は、第2底壁46と、第2周壁47とを備える。第2収容部32において、ウォームホイール22の第2回転軸心CBに沿う方向おける第2底壁46の反対側の端部は、開口し、第2開口部48を構成する。第2開口部48は、ウォームホイール22が挿入できる大きさに構成される。第2開口部48は、第1開口部43に繋がっている。第1開口部43と第2開口部48とによってハウジング12の開口部15が構成される。第2周壁47は、ウォームホイール22の歯面に面するように、筒状に構成される。第2底壁46には、第2軸27の第1端部27aを受ける第2ハウジング軸受49が設けられる。
【0029】
第3収容部33は、ウォーム21を覆う第3周壁51を有する。第3周壁51は、第2収容部32の第2周壁47に接するように設けられる(
図3参照)。第3収容部33には、第2収容部32に繋がる連通部52が設けられる(
図3参照)。第3収容部33は、連通部52を介して第2収容部32に繋がる。ウォーム21は、連通部52から第2収容部32に露出して、ウォームホイール22と噛み合う。第3収容部33は、モータ取付部34に繋がる。
【0030】
ハウジング12は、カバー取付部53を有する。カバー取付部53は、カバー13を取り付ける締結部材が挿通される3個の挿通部(以下、それぞれを第1挿通部54~第3挿通部56という。)を含む。
【0031】
第1挿通部54は、平面視において、第1収容部31の第1周壁42の外周面と、駆動ギア23の第1回転軸心CAとウォームホイール22の第2回転軸心CBとを通る線(以下、中心連結線LA)とが交差する交差点の付近に設けられる。第2挿通部55は、平面視において、第2収容部32の第2周壁47の外周面に沿う部分であって、モータ取付部34の近くに設けられる。第3挿通部56は、平面視において、第2収容部32の第2周壁47の外周面に沿う部分であって、中心連結線LAに対して第2挿通部55の反対側に設けられる。第1挿通部54と第2挿通部55と第3挿通部56とは、第1挿通部54と第2挿通部55と第3挿通部56によって形成される3角形の領域内に、第1ハウジング軸受45と第2ハウジング軸受49とが位置するように、ハウジング12に設けられる。
【0032】
図6に示されるように、カバー13は、第1収容部31の第1開口部43を覆う第1カバー部61と、第2収容部32の第2開口部48を覆う第2カバー部62とを備える。カバー13は、ウォームホイール22および駆動ギア23に設けられる軸のうちの、第1軸25を受ける第1軸受63と、第2軸27を受ける第2軸受65とを有する(
図3参照)。
【0033】
図3に示されるように、第1軸受63は、第1カバー部61に設けられる。第1軸受63は、第1軸25の中間部25cを受ける。第1軸受63は、第1軸25の中間部25cに摺接するように構成される。
図3に示されるように、第2軸受65は、第2カバー部62に設けられる。第2軸受65は、第2軸27の第2端部27bを受ける。第2軸受65は、第2軸27の第2端部27bに摺接するように構成される。第2軸受65は、カバー13に設けられる貫通孔67に嵌められる筒部材66を有する。
【0034】
図7~
図9を参照して、位置決め部14について説明する。位置決め部14は、ハウジング12に対してカバー13の位置を決める。位置決め部14は、突出部71と、突出部71が嵌る嵌合孔73とを有する。突出部71および嵌合孔73は、突出部71と嵌合孔73との互いの接触によって、カバー13をハウジング12における所定位置にガイドするように構成される。
【0035】
突出部71は、ハウジング12およびカバー13の一方に設けられる。嵌合孔73は、ハウジング12およびカバー13の他方に形成される。本実施形態では、突出部71は、ハウジング12に設けられ、嵌合孔73は、カバー13に設けられる。
【0036】
突出部71は、ハウジング12から第1軸25または第2軸27に沿うように突出する。突出部71は、第2収容部32の第2周壁47において第2挿通部55の近くに設けられる。好ましくは、突出部71の先端にはテーパー部72が形成される。
【0037】
突出部71の長さは、カバー13をハウジング12に取り付ける際、カバー13をハウジング12に向けて移動する場合において、第1軸25が第1軸受63に挿通された状態で、第2軸27の先端が第2軸受65に入る以前に、突出部71が嵌合孔73に入るように設定されている(
図11参照)。
【0038】
「第2軸27の先端が第2軸受65に入る以前」とは、カバー13をハウジング12に取り付けるために、カバー13をハウジング12に向けて移動する場合において、第2軸27の先端が第2軸受65に入り始める位置にカバー13が配置される時点、および、当該時点にカバー13が配置されるまでの期間を含む。
【0039】
具体的には、第2軸27がハウジング12に取り付けられた状態で、ウォームホイール22の第2回転軸心CBに沿う方向において、第2軸27の第2端部27bの先端は、突出部71の先端と同じ位置、または、突出部71の先端よりもハウジング12の第2底壁46に近い位置に配置される。
【0040】
第2軸27の長さは、カバー13をハウジング12に取り付ける際、突出部71のテーパー部72がカバー13の嵌合孔73に位置するときに第2軸27の先端が第2軸受65に嵌るように設定されている。
【0041】
具体的には、第2軸27がハウジング12に取り付けられた状態で、ウォームホイール22の第2回転軸心CBに沿う方向において、第2軸27の第2端部27bの先端は、突出部71のテーパー部72の先端と同じ位置、または、突出部71のテーパー部72の先端よりもハウジング12の開口部側端面12aに近い位置に配置される。
【0042】
図8および
図9を参照して、突出部71および嵌合孔73の構造を説明する。
カバー13をハウジング12に取り付けて、ハウジング12をウォームホイール22の第2回転軸心CBに沿う方向から見たとき、突出部71と嵌合孔73との間には隙間が設けられる。
【0043】
突出部71と嵌合孔73との間の隙間において、第1軸25を中心とした回転方向DCに沿う方向における第1隙間SAは、第1軸25を中心とした径方向DDに沿う方向における第2隙間SBよりも小さい。第1隙間SAは、第1軸25を中心とした回転方向DCに沿う方向における突出部71の側面と嵌合孔73の孔面との間の間隔と定義される。第2隙間SBは、第1軸25を中心とした径方向DDに沿う方向における突出部71の側面と嵌合孔73の孔面との間の間隔と定義される。第1軸25を中心とした径方向DDは、第1軸25の中心と突出部71の中心とを通る線に沿う方向として定義される。
【0044】
本実施形態では、
図8に示されるように、突出部71は、駆動ギア23の第1回転軸心CAに沿う方向からみて円形に構成される。嵌合孔73は、長孔に構成される。具体的には、嵌合孔73は、嵌合孔73の長手方向が径方向DDに沿うように構成される。
【0045】
他の例では、
図9に示されるように、嵌合孔73は、駆動ギア23の第1回転軸心CAに沿う方向からみて円形に構成される。突出部71は、断面楕円に構成される。具体的には、突出部71は、突出部71の短手方向が径方向DDに沿うように構成される。
【0046】
図10および
図11を参照してカバー13の取り付け方法を説明する。
カバー13が取り付けられる前に、ハウジング12には各種の部品が配置される。具体的には、ハウジング12には、出力ギア28が設けられている第1軸25、中間ギア29が設けられている第2軸27、ウォーム21、ウォームホイール22、および、駆動ギア23が配置される。ハウジング12にカバー13が取り付けられていない状態では、第1ハウジング軸受45の深さDAは、第2ハウジング軸受49の深さDBよりも深いことから、第1軸25の傾きは、第2軸27の傾きよりも小さい。第1軸25の中心軸心は、駆動ギア23の設計上における第1回転軸心CAと略一致する。
【0047】
次に、カバー13をハウジング12に取り付ける。具体的には、カバー13をハウジング12の開口部15に対して平行に配置する。そして、
図10に示されるように、第1軸25がカバー13の第1軸受63に入るように、カバー13をハウジング12に近づける。これにより、カバー13は、第1軸25を中心として回転可能な状態で位置決めされる。さらに、
図11に示されるように、ハウジング12の突出部71がカバー13の嵌合孔73に入るように、カバー13をハウジング12に近づける。ハウジング12の突出部71のテーパー部72がカバー13の嵌合孔73に入ると、カバー13がハウジング12に対して概ね位置決めされる。このとき、カバー13の位置を調整しつつ、カバー13の第2軸受65に第2軸27を入れることで第2軸27の傾きを調整する。その後、カバー13をハウジング12に接触させて、カバー13を締結する。
【0048】
本実施形態の作用を説明する。
カバー13は、第1軸25を受ける第1軸受63と、第2軸27を受ける第2軸受65を有する。カバー13の第1軸受63に第1軸25を入れて、第2軸受65に第2軸27を入れた後に、カバー13を取付位置に配置する場合、平面視において第1軸25および第2軸27が全方位において傾きが可能であることから、カバー13を取付位置に誘導し難い場合がある。この点で、本実施形態によれば、カバー13は、ハウジング12に設けられた突出部71と第1軸25とによってカバー13が取付位置に近い位置に概ね位置決めできる。このように、カバー13を取付位置に誘導できるため、カバー13の取り付けを円滑に行うことが出来る。
【0049】
本実施形態の効果を説明する。
(1)ギア装置1の位置決め部14は、ハウジング12およびカバー13の一方から第1軸25または第2軸27に沿うように突出する突出部71と、ハウジング12およびカバー13の他方に形成されて突出部71が嵌る嵌合孔73とを有する。突出部71の長さは、カバー13をハウジング12に取り付ける際、第1軸25が第1軸受63に挿通された状態で、第2軸27の先端が第2軸受65に入る以前に、突出部71が嵌合孔73に入るように設定されている。
【0050】
この構成によれば、カバー13をハウジング12に取り付ける際、第1軸25が第1軸受63に挿通された状態で、第2軸27の先端が第2軸受65に入るとき、または第2軸27の先端が第2軸受65に入るまでに、突出部71が嵌合孔73に入る。このようにして、ハウジング12においてカバー13を取付位置に誘導できる。
【0051】
(2)上記ギア装置1において、突出部71の先端にはテーパー部72が形成されている。この構成によれば、ハウジング12においてカバー13を円滑に取付位置に誘導できる。これによって、取付作業の効率を向上できる。
【0052】
(3)上記ギア装置1において、第2軸27の長さは、突出部71のテーパー部72が嵌合孔73に位置するときに第2軸27の先端が第2軸受65に嵌るように設定されている。この構成によれば、テーパー部72が嵌合孔73に位置するとき、ハウジング12に対するカバー13の移動が許容されているため、第2軸27と第2軸受65との嵌合がスムーズになる。これによって、カバー13の取り付けをさらに円滑に行うことが出来る。
【0053】
(4)上記ギア装置1において、突出部71と嵌合孔73との間の隙間において、第1軸25を中心とした回転方向DCに沿う方向における第1隙間SAは、第1軸25を中心とした径方向DDに沿う方向における第2隙間SBよりも小さい。
【0054】
この構成によれば、ハウジング12に対するカバー13の移動を規制できる。特に、第1軸25を中心とした回転方向DCに沿う方向において、カバー13の移動を規制できる。これによって、取付位置に対するカバー13の位置ずれを抑制できる。また、第1軸25を中心とした径方向DDに沿う方向における第2隙間SBによってカバー13の移動がある程度許容されるようになり、ギア装置1を構成する部品の寸法ばらつきに起因する組付け難さを抑制でき、また、突出部71と嵌合孔73との位置ずれを吸収できる。これによって、カバー13を円滑に取付位置に誘導できる。
【0055】
<その他の実施形態>
上記実施形態は、上記構成の例に限定されない。上記実施形態は、以下のように変更され得る。なお、以下の変形例では、上記実施形態の構成と実質的に変更のない構成については、上記実施形態の構成と同一の符号をつけて説明する。
【0056】
・本実施形態に示されるギア装置1では、カバー13をハウジング12に取り付ける際、第1番目にカバー13を通る部材は駆動軸24であるから、駆動軸24を第1軸25と呼び、第2番目にカバー13を通る部材はウォームホイール軸26であるから、ウォームホイール軸26を第2軸27と呼んでいる。これに対して、ウォームホイール軸26が駆動軸24よりも長く、カバー13をハウジング12に取り付ける際、第1番目にカバー13を通る部材がウォームホイール軸26である場合、ウォームホイール軸26を第1軸25と定義される。そして、第2番目にカバー13を通る部材が駆動軸24である場合、駆動軸24を第2軸27と定義される。そして、突出部71および嵌合孔73は、このように定義された第1軸25および第2軸27を前提として本実施形態に示された手段と同じ手段によって構成される。
【0057】
・本実施形態では、位置決め部14の突出部71がハウジング12に設けられて、かつ、嵌合孔73がカバー13に設けられている。これに対して、突出部71がカバー13に設けられて、かつ、嵌合孔73がハウジング12に設けられてもよい。
【0058】
・ハウジング12に設けられる突出部71は、ハウジング12に一体に形成されてもよい。また、突出部71は、ハウジング12に設けられる挿通孔に圧入されるピンによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0059】
SA…第1隙間
SB…第2隙間
1…ギア装置
11…ギア
12…ハウジング
13…カバー
14…位置決め部
15…開口部
25…第1軸
27…第2軸
63…第1軸受
65…第2軸受
71…突出部
72…テーパー部
73…嵌合孔