(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20240109BHJP
F04D 29/16 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F04D29/44 P
F04D29/16
(21)【出願番号】P 2020176573
(22)【出願日】2020-10-21
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 文也
(72)【発明者】
【氏名】今東 昇一
(72)【発明者】
【氏名】小田 修三
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3011693(US,A)
【文献】中国実用新案第210440276(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0200187(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D1/00-13/16
F04D17/00-19/02
F04D21/00-25/16
F04D29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送風機において、
空気を吸い込む吸込口(6)を形成するベルマウス(20)を有するケース(2)と、
前記ケースの内側に回転可能に設けられ、軸芯(CL)周りに配置される複数の翼(30)、前記翼のうち軸芯方向前記吸込口側の部位(301)に接続されるシュラウド環状部(31)、前記シュラウド環状部のうち径方向内側の部位から前記ベルマウス側に向けて筒状に延びるシュラウド筒部(32)、および、前記翼のうち前記シュラウド環状部とは反対側の部位に接続される主板(33)を有するファン(3)と、
前記ベルマウスの径方向内側の領域から前記シュラウド筒部の径方向内側の領域に亘り設けられ、前記ベルマウス側から前記シュラウド筒部側に向かい次第に縮径する筒状の吸気ノズル(5)と、を備え、
前記吸気ノズルと前記ベルマウスとの間に形成される第1流路(11)と、前記吸気ノズルと前記シュラウド筒部の間に形成される第2流路(12)と、前記シュラウド筒部および前記シュラウド環状部と前記ケースの内壁との間に形成される隙間流路(13)とが連通しており、
前記シュラウド筒部のうち前記吸込口側の端部(38)と前記吸気ノズルのうち前記主板側の端部(54)との軸芯方向の距離をH1、前記吸気ノズルのうち前記主板側の端部と前記翼の前縁(35)のうち前記吸込口側の端部(39)との軸芯方向の距離をH2としたとき、H1>H2の関係を有して
おり、
前記ケースは、前記ベルマウスから前記主板側に筒状に延びるケース筒部(22)と、前記ケース筒部のうち前記主板側の部位から前記シュラウド環状部に沿って径方向外側に拡がるケース環状部(23)とを有しており、
前記隙間流路は、前記ケース筒部と前記シュラウド筒部との間に形成される筒流路(15)と、前記ケース環状部と前記シュラウド環状部と間に形成される環状流路(16)とを有している、送風機。
【請求項2】
前記シュラウド環状部は前記ケース環状部側に突出する筒状突起(60)を有し、
前記ケース環状部は前記筒状突起に対応する位置に筒状溝部(24)を有し、
前記筒状突起は、前記筒状溝部の内側に所定の隙間をあけて嵌り込み、前記筒状突起と前記筒状溝部により、前記隙間流路にラビリンス部(17)が形成されている、請求項
1に記載の送風機。
【請求項3】
前記筒状突起のうち前記筒状溝部側の先端部(61)は鋭角に形成された先尖り形状となっている、請求項
2に記載の送風機。
【請求項4】
前記シュラウド筒部と前記シュラウド環状部との接続箇所は、前記ファンの軸芯を含む平面で切断して得られる断面視が複数の前記翼同士の間に形成される流路側に凸となる曲面形状となっている、請求項1ないし
3のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項5】
前記翼の回転方向から視て、前記翼の前縁は、前記吸込口から複数の前記翼同士の間に形成される流路へ吸い込まれる主流の上流側に向けて凸となる形状であり、
前記翼の前縁のうち前記吸込口側の端部は、前記シュラウド筒部に接続している、請求項1ないし
4のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項6】
前記翼の前縁は、前記シュラウド筒部に接続する前記吸込口側の端部から前記主板側の端部に向けて径方向内側に傾斜しており、前記主板側の端部(40)が前記吸気ノズルの最内径(D
IN)よりも径方向内側で前記主板に接続している、請求項1ないし
5のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項7】
前記吸気ノズルは、軸芯方向の一方の端部側から中央部に亘る部位の板厚が軸芯方向の他方の端部側の部位の板厚より厚く、且つ、径方向内外側の面に沿った軸芯方向の長さが径方向内側の面に沿った軸芯方向の長さよりも長い翼形状となっている、請求項1ないし
6のいずれか1つに記載の送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気の吸込口となるベルマウスが形成されたケースの内側に遠心ファンを配置した送風機が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の送風機は、遠心ファンが有するシュラウドの空気吸込口側の円筒部よりも径方向内側にベルマウスの内周縁が配置されている。そして、この送風機は、そのベルマウスの内周縁の径方向外側の部位に、断面がU字状に形成された環状のシール壁を備えている。そのシール壁は、シュラウドの空気吸込口側の端部に所定の隙間をあけて被さっている。シール壁は、遠心ファンの空気出口から吹き出された空気の一部がシュラウドとシール壁との隙間に形成される隙間流路を通り再び翼前縁側へ逆流する流量を低減するためのものである。特許文献1には、その逆流空気の流量を低減することで、ベルマウスからファンに吸い込まれる主流と逆流空気との干渉により生じる騒音が低減されると記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、シュラウドとシール壁との隙間に形成される隙間流路と、翼の前縁付近との圧力差が大きいため、その隙間流路から翼の前縁側に吹き出される逆流空気の流量を十分に低減することが困難である。
【0006】
また、特許文献1に記載の構成では、隙間流路から翼の前縁側に吹き出される逆流空気は、ファンの回転方向の速度成分が大きいものとなっている。そのため、この構成では、隙間流路から翼の前縁側に吹き出される逆流空気と、ベルマウスからファンに吸い込まれる主流との交差角度が大きいため、主流と逆流空気との干渉により生じる騒音を十分に低減することが困難である。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、ファンの空気出口側から空気吸込口側へ逆流する空気の流量を低減することで騒音を低減し、且つ、送風効率を向上することの可能な送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明の送風機は、ケース(2)、ファン(3)および吸気ノズル(5)を備える。ケースは、空気を吸い込む吸込口(6)を形成するベルマウス(20)を有する。ケースの内側に回転可能に設けられるファンは、軸芯(CL)周りに配置される複数の翼(30)、その翼のうち軸芯方向吸込口側の部位(301)に接続されるシュラウド環状部(31)、そのシュラウド環状部のうち径方向内側の部位からベルマウス側に向けて筒状に延びるシュラウド筒部(32)、および、翼のうちシュラウド環状部とは反対側の部位に接続される主板(33)を有する。吸気ノズルは、ベルマウスの径方向内側の領域からシュラウド筒部の径方向内側の領域に亘り設けられ、ベルマウス側からシュラウド筒部側に向かい次第に縮径する筒状に形成されている。
この構成において、吸気ノズルとベルマウスとの間に形成される第1流路(11)と、吸気ノズルとシュラウド筒部の間に形成される第2流路(12)と、シュラウド筒部およびシュラウド環状部とケースの内壁との間に形成される隙間流路(13)とが連通している。
そして、この送風機は、シュラウド筒部のうち吸込口側の端部(38)と吸気ノズルのうち主板側の端部(54)との軸芯方向の距離をH1、吸気ノズルのうち主板側の端部と翼の前縁(35)のうち吸込口側の端部(39)との軸芯方向の距離をH2としたとき、H1>H2の関係を有している。
さらに、ケースは、ベルマウスから主板側に筒状に延びるケース筒部(22)と、ケース筒部のうち主板側の部位からシュラウド環状部に沿って径方向外側に拡がるケース環状部(23)とを有しており、
隙間流路は、ケース筒部とシュラウド筒部との間に形成される筒流路(15)と、ケース環状部とシュラウド環状部と間に形成される環状流路(16)とを有している。
【0009】
これによれば、吸気ノズルはベルマウス側からシュラウド筒部側に向かい次第に縮径する形状である。これにより、吸気ノズルの径方向外側の面が正圧面となり、その正圧面に沿って第1流路を流れる空気の圧力は、吸気ノズルの負圧面に沿ってファンに流入する主流の圧力より高くなる。そのため、第1流路と第2流路と隙間流路とが合流する合流部の圧力と、ファンの空気出口側の圧力との差圧が小さくなり、ファンの空気出口側から合流部側へ隙間流路を逆流する空気流量を低減することができる。また、第1流路を流れる空気と隙間流路を流れる空気とが合流部で合流することで、その合流した空気はファンの回転方向の速度成分が小さくなる。したがって、第2流路から翼前縁側に吹き出される空気と、主流との交差角度が小さくなるので、騒音を低減することができる。
【0010】
さらに、この送風機は、H1>H2の関係を有しているので、シュラウド筒部のうち吸込口側の端部を翼前縁から遠くするか、または、吸気ノズルのうち主板側の端部を翼前縁に近づける構成となる。シュラウド筒部のうち吸込口側の端部と翼前縁との距離を遠くすることで、シュラウド筒部のうち吸込口側の端部が吸気ノズルのうち大気側の端部に近づくので、合流部の圧力が翼前縁付近の負圧に対して高くなる。また、吸気ノズルのうち主板側の端部を翼前縁に近づけることで第2流路が長くなり、第2流路の圧力損失が増加するので、合流部の圧力が翼前縁付近の負圧に対して高くなる。そのため、ファンの空気出口側の圧力と合流部の圧力との差圧が小さくなるので、ファンの空気出口側から合流部側に隙間流路を逆流する空気流量をより低減することが可能である。したがって、この送風機は、第2流路から翼前縁側に吹き出される空気流量をより低減し、騒音をより低減することができる。また、この送風機は、ファンの空気出口側から複数の翼同士の間に形成される流路へ逆流する空気流量が低減するので、送風機の送風効率を向上することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る送風機を軸芯を含む仮想面で切断した断面図である。
【
図3】第1実施形態に係る送風機が備えるファンの斜視図である。
【
図5】第1実施形態の送風機と比較例の送風機に関し、流量係数に対する騒音レベルを測定した実験結果を示すグラフである。
【
図6】第2実施形態に係る送風機の一部を示す断面図であり、
図4に対応する図である。
【
図7】第3実施形態に係る送風機の一部を示す断面図であり、
図4に対応する図である。
【
図8】第4実施形態に係る送風機の一部を示す断面図であり、
図4に対応する図である。
【
図9】比較例の送風機の一部を示す断面図であり、
図4に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付し、その説明を省略する。また、各図面に記載した送風機の各構成の形状などは、説明を分かりやすくするために模式的に記載したものであり、本発明を限定するものではない。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。第1実施形態の送風機1は、例えば空調装置または換気装置などに用いられる遠心送風機である。
【0015】
図1および
図2に示すように、送風機1は、ケース2、ファン3、駆動部4、吸気ノズル5などを備えている。なお、以下の説明では、ファン3の軸芯CLを単に「軸芯CL」ということがある。その軸芯CLは、ファン3の回転軸と一致している。また、送風機1の空気吸込口6側を「軸芯CL方向の一方」とし、送風機1の空気吸込口6とは反対側を「軸芯CL方向の他方」として説明する。以下、空気吸込口6を単に吸込口6という。
【0016】
ケース2は、空気を吸い込む吸込口6を形成するベルマウス20を有している。ベルマウス20は、軸芯CL方向の一方から他方に向けて内径が次第に小さくなる曲面形状となっている。また、ベルマウス20は、ファン3の軸芯CLを含む平面で切断して得られる断面視(以下、「縦断面視」という)において略円弧状に形成されている。
【0017】
ケース2は、ベルマウス20の軸芯CL方向一方側の部位から径方向外側に形成される正面部21を有している。正面部21は、ファン3の軸芯CLに対して略垂直な平面状に形成されている。なお、正面部21は、ファン3の軸芯CLに対して傾斜するように形成されていてもよい。
【0018】
また、ケース2は、ベルマウス20の軸芯CL方向他方側の部位からさらに軸芯CL方向他方側に筒状に延びるケース筒部22と、そのケース筒部22のうち軸芯CL方向他方側の部位から径方向外側に拡がるケース環状部23とを有している。ケース筒部22は、後述するファン3の有するシュラウド筒部32の径方向外側の領域にシュラウド筒部32から所定の隙間をあけて設けられている。ケース筒部22の軸方向の長さH3と、シュラウド筒部32の軸方向の長さ(すなわち、H1+H2)とは対応したものとなっている。すなわち、ケース筒部22の軸方向の長さH3と、シュラウド筒部32の軸方向の長さ(すなわち、H1+H2)とは概ね一致している。ケース筒部22とシュラウド筒部32とは略平行に形成されている。
【0019】
ケース環状部23は、後述するファン3の有するシュラウド環状部31の軸芯CL方向の一方側の領域にシュラウド環状部31から所定の隙間をあけて設けられている。ケース環状部23とシュラウド環状部31も略平行に形成されている。
【0020】
図1および
図3に示すように、ファン3は、遠心ファンであり、ケース2の内側に回転可能に設けられている。ファン3は、複数の翼30、シュラウド環状部31、シュラウド筒部32および主板33を有している。なお、以下の説明では、シュラウド環状部31とシュラウド筒部32とを纏めてシュラウド34と呼ぶことがある。ファン3は、複数の翼30とシュラウド34と主板33とが一体に形成されたクローズドファンである。このファン3は、例えば、樹脂射出成形により一体に形成されるものである。
【0021】
複数の翼30は、主板33とシュラウド34との間で、軸芯CL周りに所定の間隔で配置されている。複数の翼30は、軸芯CL方向の一方の部位301がシュラウド34に接続され、軸芯CL方向の他方の部位302が主板33に接続されている。これにより、シュラウド34と主板33の間において隣り合う翼30同士の間に流路が形成される。以下の説明では、その流路を翼間流路と呼ぶこととする。ファン3が回転すると、吸込口6から吸いこまれた空気は、翼30の前縁35側から翼間流路を通り、翼30の後縁36側に形成される空気出口7から吹き出される。なお、第1実施形態のファン3は、複数の翼30が、前縁35側から後縁36側に向かい回転方向後ろ向きに延びるターボファンである。
【0022】
翼30の前縁35は、翼30の回転方向から視て、吸込口6から吸い込まれる主流の上流側に向けて凸となる形状である。翼30の前縁35は、吸込口6側の端部39がシュラウド筒部32に接続している。そして、翼30の前縁35は、そのシュラウド筒部32に接続している吸込口6側の端部39から主板33側の端部40に向けて径方向内側に傾斜し、主板33側の端部40が後述する吸気ノズル5の最内径DINよりも径方向内側で主板33に接続している。なお、以下の説明では、翼30の前縁35を、翼前縁35ということがある。
【0023】
シュラウド34は、複数の翼30のうち軸芯CL方向の一方の部位301に接続される環状のシュラウド環状部31と、そのシュラウド環状部31のうち径方向内側の部位からベルマウス20側に向けて筒状に延びるシュラウド筒部32とを有している。言い換えれば、シュラウド34は、吸込口6側に形成される筒状のシュラウド筒部32と、そのシュラウド筒部32のうち軸芯CL方向の他方側の部位から径方向外側に拡がる環状のシュラウド環状部31とを有している。シュラウド環状部31とシュラウド筒部32とは連続して形成されている。シュラウド環状部31とシュラウド筒部32との接続箇所は、縦断面視が翼間流路側に凸となる滑らかな曲面形状となっている。これにより、翼間流路を流れる空気は、シュラウド34の翼間流路側の面から剥離することが抑制され、そのシュラウド34の翼間流路側の面に沿って流れる。
【0024】
主板33は、略円盤状に形成されている。主板33は、その中央部に軸孔37を有している。その軸孔37の中心は、ファン3の軸芯CLに一致している。主板33の有する軸孔37に対し、駆動部4から延びるシャフト41が圧入固定されている。主板33は、軸孔37から径方向外側に向かい軸芯CL方向他方側に傾斜している。言い換えれば、主板33は、外縁部から軸芯CL側に向かい吸込口6側に凸となる形状となっている。
【0025】
駆動部4は、通電によりトルクを出力する電動モータである。駆動部4は、例えば空調装置の筐体などに固定される。駆動部4から突出するシャフト41は、駆動部4が出力するトルクによりそのシャフト41の軸芯周りに回転する。
【0026】
駆動部4としての電動モータに通電されると、その駆動部4の出力するトルクによりシャフト41とファン3が回転する。ファン3が回転すると、ベルマウス20の内側の吸込口6から吸い込まれた空気は、翼30の前縁35側から翼間流路を流れ、翼30の後縁36側に形成される空気出口7へ吹き出される。
【0027】
図1、
図2および
図4に示すように、吸気ノズル5は、筒状に形成され、ベルマウス20の径方向内側の領域からシュラウド筒部32の径方向内側の領域に亘り設けられている。
図2に示すように、吸気ノズル5は、ケース2のベルマウス20または正面部21から径方向内側に突出する複数の支持部50よってケース2に固定され、静翼として機能する。
【0028】
図1および
図4に示すように、吸気ノズル5は、ベルマウス20側からシュラウド筒部32側に向かい次第に縮径する形状である。言い換えれば、吸気ノズル5は、軸芯CL方向の一方から他方に向かい内径および外径が次第に小さくなる形状である。また、吸気ノズル5の軸芯CL方向の一方の端部51は、ケース2の正面部21よりも軸芯CL方向の一方側に突出している。そのため、
図4の矢印F2に示すように、ケース2の正面部21に沿ってファン3に吸い込まれる空気は、吸気ノズル5の径方向外側の面に衝突し、その吸気ノズル5の径方向外側の面に沿って流れて翼前縁35側から翼間流路に吸い込まれる。そのため、吸気ノズル5は、径方向外側の面が正圧面52となり、径方向内側の面が負圧面53となる。
【0029】
また、吸気ノズル5は、縦断面視において、軸芯CL方向の一方の端部51から中央部に亘る部位の板厚が厚く、軸芯CL方向の他方の端部54側の部位の板厚が薄い翼形状となっている。そして、吸気ノズル5は、径方向内外側の面に沿った軸芯CL方向の長さが、径方向内側の面に沿った軸芯CL方向の長さよりも長い翼形状となっている。この翼形状によっても、吸気ノズル5は、径方向外側の面が正圧面52となり、径方向内側の面が負圧面53となる。
【0030】
図1および
図4に示すように、第1実施形態の送風機1では、吸気ノズル5とベルマウス20との間に第1流路11が形成されている。また、吸気ノズル5とシュラウド筒部32との間に第2流路12が形成されている。また、ケース2の内壁(すなわちケース筒部22およびケース環状部23)と、シュラウド34(すなわち、シュラウド筒部32およびシュラウド環状部31)との間に隙間流路13が形成されている。そして、第1流路11と第2流路12と隙間流路13とは連通している。以下の説明では、第1流路11と第2流路12と隙間流路13とが連通する箇所を合流部14と呼ぶ。また、以下の説明では、隙間流路13のうち、ケース筒部22とシュラウド筒部32との間に形成される流路を筒流路15と呼び、ケース環状部23とシュラウド環状部31と間に形成される流路を環状流路16と呼ぶことがある。
【0031】
ファン3が回転すると、
図4の矢印F1に示すように、吸気ノズル5の径方向内側の領域からファン3に空気が吸い込まれる。この矢印F1に示す空気の流れを主流と呼ぶ。その主流の一部は、吸気ノズル5の径方向内側の負圧面53に沿って流れる。それと共に、
図4の矢印F2に示すように、ケース2の正面部21およびベルマウス20に沿ってファン3に吸い込まれる空気は、吸気ノズル5の径方向外側の正圧面52に衝突し、その正圧面52に沿って第1流路11を流れる。
【0032】
また、ファン3が回転すると、ファン3の空気出口7の圧力がファン3の吸込口6側の圧力より高くなる。そのため、
図4の矢印F3、F4に示すように、隙間流路13には、空気出口7側から吸込口6側へ逆流する空気が流れる。そして、隙間流路13を流れる空気と第1流路11を流れる空気とは合流部14で合流した後、矢印F5に示すように第2流路12を流れ、その第2流路12から翼30の前縁35側に吹き出される。
【0033】
ここで、吸気ノズル5の正圧面52に沿って第1流路11を流れる空気の圧力は、吸気ノズル5の負圧面53に沿ってファン3に流入する主流の圧力より高いものとなる。そのため、この第1実施形態の送風機1の構成では、上述した特許文献1に記載の送風機のように第1流路11が存在しない構成に比べて、合流部14の圧力とファン3の空気出口7側の圧力との差圧が小さくなる。そのため、第1実施形態の送風機1の構成によれば、ファン3の空気出口7側から隙間流路13を通り合流部14側へ逆流する空気流量が低減する。また、第1流路11を流れる空気と隙間流路13を逆流した空気とが合流部14で合流することで、その合流した空気はファン3の回転方向の速度成分が小さくなる。したがって、第2流路12から翼前縁35側に吹き出される空気と、主流との交差角度が小さくなり、騒音が低減される。
【0034】
さらに、第1実施形態の送風機1は、シュラウド筒部32と吸気ノズル5とが次のように設定されている。すなわち、
図4に示すように、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38と、吸気ノズル5のうち主板33側の端部54との軸芯CL方向の距離をH1とする。また、吸気ノズル5のうち主板33側の端部54と、翼前縁35のうち吸込口6側の端部39との軸芯CL方向の距離をH2とする。このとき、第1実施形態の送風機1は、シュラウド筒部32と吸気ノズル5とが、H1>H2の関係を有するように形成されている。すなわち、シュラウド筒部32を軸芯CL方向の一方側に延伸し、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38を翼前縁35から遠くすることで、H1>H2の関係が成立する。
【0035】
ここで、一般に、ファン3の回転時には、翼前縁35の負圧面側の圧力が最も低く、そこから軸芯CL方向の一方(すなわち吸込口6側)に向かうほど圧力は大気圧に近づくために高くなる。そのため、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38と翼前縁35との距離を遠くするほど、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなる。
さらに、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38と翼前縁35との距離を遠くすることで、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38が吸気ノズル5の正圧面52のうち軸芯CL方向の一方の端部51側の部位(すなわち、湾曲した部位)に近づく。そのため、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなる。したがって、合流部14の圧力とファン3の空気出口7側の圧力との差圧を小さくすることが可能となる。
【0036】
あるいは、吸気ノズル5を主板33側に延伸し、吸気ノズル5のうち主板33側の端部54を翼前縁35に近づけることによっても、H1>H2の関係が成立する。吸気ノズル5のうち主板33側の端部54を翼前縁35に近づけることで第2流路12が長くなり、第2流路12の圧力損失が増加するので、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなる。これによっても、合流部14の圧力とファン3の空気出口7側の圧力との差圧を小さくすることが可能である。
【0037】
このように、第1実施形態の送風機1は、シュラウド筒部32と吸気ノズル5とがH1>H2の関係を有することで、ファン3の空気出口7側の圧力と合流部14の圧力との差圧を小さくすることが可能である。これにより、ファン3の空気出口7側から合流部14側に隙間流路13を逆流する空気流量が低減する。したがって、この送風機1は、第2流路12から翼前縁35側に吹き出される空気流量をより低減し、騒音をより低減することができる。また、この送風機1は、ファン3の空気出口7側から翼間流路へ逆流する空気流量が低減するので、送風機1の送風効率を向上することができる。
【0038】
ここで、上述した第1実施形態の送風機1と比較するため、比較例の送風機100について説明する。
【0039】
図9に示すように、比較例の送風機100は、シュラウド筒部32と吸気ノズル5とが、H1<H2の関係を有するように形成されている。比較例の送風機100と第1実施形態の送風機1とは、H2の距離が同一とされている。なお、この比較例の送風機100は出願人が創作したものであり、従来技術ではない。
【0040】
比較例の送風機100は、第1実施形態の送風機1に比べて、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38と翼前縁35との距離が近いことで、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に比較的近いものとなる。また、比較例の送風機100は、第1実施形態の送風機1に比べて、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38が吸気ノズル5の正圧面52のうち湾曲した部位から遠いことで、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に比較的近いものとなる。また、比較例の送風機100は、第1実施形態の送風機1に比べて、第2流路12が短いことで、第2流路12の圧力損失が少なく、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に比較的近いものとなる。そのため、比較例の送風機100は、第1実施形態の送風機1に比べて、ファン3の空気出口7側の圧力と合流部14の圧力との差圧が大きく、ファン3の空気出口7側から合流部14側に隙間流路13を逆流する空気流量が比較的大きいものとなる。
【0041】
ここで、上述した第1実施形態の送風機1と比較例の送風機100において、流量係数を変化させた際の騒音レベルを測定した実験結果を
図5に示す。なお、ファン3の出口周速[m/s]をUとし、ファン3の吸込口6を通過する空気の平均流速[m/s]をVとしたときに、流量係数Φは、Φ=V/Uが成立する係数である。
【0042】
図5のグラフでは、第1実施形態の送風機1と比較例の送風機100に関し、流量係数と騒音レベルとの関係を測定した結果をプロットし、それを実線で繋げたものを示している。
図5のグラフでは、第1実施形態の送風機1に関する測定結果を実線Aに示し、比較例の送風機100に関する測定結果を実線Bに示している。このグラフに示すように、第1実施形態の送風機1は、比較例の送風機100に比べて、全ての流量係数域において騒音レベルを低減できていることが確認できる。具体的には、第1実施形態の送風機1は、比較例の送風機100に比べて、所定の流量係数域で騒音レベルを1dB以上低下できる結果が得られた。
【0043】
以上説明した第1実施形態の送風機1は、次の作用効果を奏するものである。
【0044】
(1)第1実施形態の送風機1が備える吸気ノズル5は、ベルマウス20側からシュラウド筒部32側に向かい次第に縮径する形状とされている。これにより、吸気ノズル5の径方向外側の面が正圧面52となり、その正圧面52に沿って第1流路11を流れる空気の圧力は、吸気ノズル5の負圧面53に沿ってファン3に流入する主流の圧力より高くなる。そのため、合流部14の圧力とファン3の空気出口7側の圧力との差圧が小さくなり、隙間流路13を逆流する空気流量を低減することができる。
また、第1流路11を流れる空気と隙間流路13を流れる空気とが合流部14で合流することで、その合流した空気はファン3の回転方向の速度成分が小さくなる。したがって、第2流路12から翼前縁35側に吹き出される空気と、主流との交差角度が小さくなるので、騒音を低減することができる。
【0045】
さらに、第1実施形態の送風機1は、シュラウド筒部32と吸気ノズル5とが、H1>H2の関係を有するように形成されている。すなわち、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38と翼前縁35との距離を遠くすることで、シュラウド筒部32のうち吸込口6側の端部38が吸気ノズル5のうち大気側の端部51に近づくので、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなる。または、吸気ノズル5のうち主板33側の端部54を翼前縁35に近づけることによっても、第2流路12の伸長に伴って第2流路12の圧力損失が増加するので、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなる。そのため、ファン3の空気出口7側の圧力と合流部14の圧力との差圧がより小さくなるので、隙間流路13を逆流する空気流量をより低減することが可能である。したがって、この送風機1は、第2流路12から翼前縁35側に吹き出される空気流量をより低減し、騒音をより低減することができる。
また、この送風機1は、ファン3の空気出口7側から翼間流路へ逆流する空気流量が低減するので、ファン3の空気出口7から所定の空気流量を吹き出す条件において翼間流路を流れる空気流量を低減することが可能である。したがって、この送風機1は、送風効率を向上することができる。
【0046】
(2)第1実施形態の送風機1が備えるケース2は、ベルマウス20から主板33側に筒状に延びるケース筒部22と、そのケース筒部22のうち主板33側の部位からシュラウド環状部31に沿って径方向外側に拡がるケース環状部23とを有している。そして、隙間流路13は、ケース筒部22とシュラウド筒部32との間に形成される筒流路15と、ケース環状部23とシュラウド環状部31と間に形成される環状流路16とを有している。
これによれば、隙間流路13が筒流路15と環状流路16とを有することで、隙間流路13を長くすることが可能である。そのため、隙間流路13の圧力損失が増加し、隙間流路13を逆流する空気流量を低減することが可能となる。また、ケース筒部22の軸方向の長さH3およびシュラウド筒部32の軸方向の長さ(H1+H2)を伸ばすことで筒流路15の長さを長くすれば、合流部14と翼前縁35との距離を遠ざけることも可能となる。そのため、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなり、隙間流路13を逆流する空気流量がより低減する。したがって、この送風機1は、第2流路12から翼前縁35側に吹き出される空気流量を低減することで騒音を低減すると共に、送風効率を向上することができる。
【0047】
(3)第1実施形態の送風機1では、シュラウド筒部32とシュラウド環状部31との接続箇所が、縦断面視が翼間流路側に凸となる曲面形状となっている。
これによれば、翼間流路を流れる空気は、シュラウド34の翼間流路側の面から剥離することが抑制され、そのシュラウド34の翼間流路側の面に沿って流れる。そのため、翼間流路の全領域を効率的に使用することが可能となり、送風機1の送風効率を向上することができる。
【0048】
(4)第1実施形態の送風機1では、翼前縁35は、その回転方向から視て、吸込口6から翼間流路へ吸い込まれる主流の上流側に向けて凸となる形状である。そして、翼30の前縁35のうち吸込口6側の端部39は、シュラウド筒部32に接続している。
これによれば、複数の翼30とシュラウド34と主板33を有するファン3を樹脂射出成形により一体に形成することが可能である。すなわち、ファン3を射出成形する際、ファン3の軸芯CL方向に移動可能な不図示の第1金型により、シュラウド筒部32のうち径方向内側を向く面や翼前縁35などを形成することが可能である。また、ファン3の径方向および周方向に移動可能な不図示の第2金型より、翼30のうち回転方向を向く面、シュラウド環状部31のうち主板33側を向く面、および、主板33のうちシュラウド34側を向く面などを形成することが可能である。なお、第1金型の型抜きのため、シュラウド筒部32は、軸方向他方側から軸方向一方側に向かい内径が次第に大きくなる形状とすることが好ましい。
【0049】
(5)第1実施形態の送風機1では、翼前縁35は、シュラウド筒部32に接続する端部39から主板33側の端部40に向けて径方向内側に傾斜し、主板33側の端部40が吸気ノズル5の最内径DINよりも径方向内側で主板33に接続している。
これによれば、翼前縁35の主板33側の端部40を吸気ノズル5の最内径DINよりも径方向内側に配置することで、翼前縁35付近に形成される負圧により、吸気ノズル5の径方向内側に主流を引き込むことが可能である。そのため、吸気ノズル5の負圧面に沿ってファン3に流入する主流の圧力に比べて、吸気ノズル5の径方向外側の正圧面52に沿って第1流路11を流れる空気の圧力がより高くなる。そのため、合流部14の圧力とファン3の空気出口7側の圧力との差圧をより小さくし、隙間流路13を逆流する空気流量をより低減することができる。
【0050】
(6)第1実施形態の送風機1が備える吸気ノズル5は、軸芯CL方向の一方の端部51側から中央部に亘る部位の板厚が、軸芯CL方向の他方の端部54側の板厚より厚い形状となっている。また、吸気ノズル5は、径方向内外側の面に沿った軸芯CL方向の長さが径方向内側の面に沿った軸芯CL方向の長さよりも長い形状となっている。すなわち、吸気ノズル5は、翼形状となっている。
これにより、吸気ノズル5の径方向外側の面が正圧面52となり、その正圧面52に沿って第1流路11に流入する空気の圧力は、吸気ノズル5の負圧面53に沿ってファン3に流入する主流の圧力より高くなる。そのため、合流部14の圧力とファン3の空気出口7側の圧力との差圧をより小さくし、隙間流路13を逆流する空気流量をより低減することができる。
【0051】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態は、第1実施形態に対してシュラウド34とケース2の構成の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0052】
図6に示すように、第2実施形態では、シュラウド環状部31はケース環状部23側に突出する筒状突起60を有している。一方、ケース環状部23は筒状突起60に対応する位置に筒状溝部24を有している。筒状突起60と筒状溝部24はいずれもファン3の軸芯CL周りに筒状に形成されている。筒状突起60は、筒状溝部24の内側に所定の隙間をあけて嵌り込んでいる。そして、筒状突起60と筒状溝部24により、隙間流路13にラビリンス部17が形成されている。すなわち、ラビリンス部17も、ファン3の軸芯CL周りに形成されている。なお、
図6では、2個の筒状突起60と2個の筒状溝部24が示されているが、これに限らず、筒状突起60と筒状溝部24の数は任意に設定することが可能である。
【0053】
以上説明した第2実施形態では、隙間流路13にラビリンス部17を形成することで、隙間流路13を長くし、且つ、隙間流路13を湾曲させることが可能である。そのため、隙間流路13の圧力損失が増加することで、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなる。したがって、第2実施形態の構成によれば、隙間流路13を逆流する空気流量をより低減することができる。
【0054】
なお、第2実施形態は、第1実施形態と同様の構成から、第1実施形態と同様の作用効果を奏することも可能である。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、第2実施形態に対してシュラウド環状部31の有する筒状突起60の構成の一部を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0056】
図7に示すように、第3実施形態でも、シュラウド環状部31の有する筒状突起60と、ケース環状部23の有する筒状溝部24により、隙間流路13にラビリンス部17が形成されている。これにより、隙間流路13の圧力損失が増加することで、合流部14の圧力が翼前縁35付近の負圧に対して高くなるので、隙間流路13を逆流する空気流量を低減することができる。
【0057】
さらに、第3実施形態では、筒状突起60のうち筒状溝部24側の先端部61が先尖り形状となっている。詳細には、筒状突起60は、シュラウド環状部31側から筒状溝部24側に向かい板厚が次第に小さくなり、その先端部61が鋭角に形成された先尖り形状となっている。これにより、隙間流路13の空気流れを筒状突起60の先端部61で剥離させて渦を発生させることが可能である。一般に、渦の領域には空気が流れにくい。そのため、第3実施形態の構成によれば、隙間流路13(具体的にはラビリンス部17)の流路面積が仮想的に縮小されるので、隙間流路13の圧力損失をより増加することで、合流部14の圧力を翼前縁35付近の負圧に対してより高くすることが可能である。したがって、第3実施形態では、第1、第2実施形態に比べて、隙間流路13を逆流する空気流量をより低減することができる。
【0058】
なお、第3実施形態の送風機1も、第1、第2実施形態と同様の構成から、第1、第2実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0059】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、第1実施形態に対して吸気ノズル5の形状の一部を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
図8に示すように、第4実施形態の送風機1が備える吸気ノズル5は、縦断面視において、板厚が一定の形状とされている。なお、第4実施形態の吸気ノズル5も、上述した第1実施形態で説明したものと同様に、筒状に形成され、ベルマウス20の径方向内側の領域からシュラウド筒部32の径方向内側の領域に亘り設けられている。そして、吸気ノズル5は、軸芯CL方向の一方から他方(すなわち、ベルマウス20側からシュラウド筒部32側)に向かい次第に縮径する形状である。また、吸気ノズル5の軸芯CL方向の一方の端部51は、ケース2の正面部21よりも軸芯CL方向の一方側に突出している。これにより、第4実施形態の吸気ノズル5の構成においても、吸気ノズル5の径方向外側の面が正圧面52となるので、その正圧面52に沿って第1流路11を流れる空気の圧力は、吸気ノズル5の負圧面53に沿ってファン3に流入する主流の圧力より高くなる。
【0061】
そして、第4実施形態においても、シュラウド筒部32と吸気ノズル5とが、H1>H2の関係を有するように形成されている。そのため、合流部14の圧力とファン3の空気出口7側の圧力との差圧が小さくなり、隙間流路13を逆流する空気流量が低減する。したがって、第4実施形態の送風機1も、第1実施形態と同様の構成から、第1実施形態と同様の作用効果を奏することが可能である。
【0062】
(他の実施形態)
(1)上記各実施形態では、送風機1は例えば空調装置または換気装置などに用いられるものとして説明したが、これに限らず、送風機1は種々の用途に用いることができる。
【0063】
(2)上記各実施形態では、送風機1の備えるファン3は例えばターボファンとして説明したが、これに限らず、そのファン3は例えばラジアルファン、シロッコファンなど種々の遠心ファンとすることができる。
【0064】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内において適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
1:送風機、2:ケース、3:ファン、5:吸気ノズル、6:吸込口、11:第1流路、12:第2流路、13:隙間流路、20:ベルマウス、30:翼、31:シュラウド環状部、32:シュラウド筒部、33:主板、38:シュラウド筒部のうち吸込口側の端部、39:翼の前縁のうち吸込口側の端部、54:吸気ノズルのうち主板側の端部、CL:軸芯