(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】端子構造
(51)【国際特許分類】
H01R 4/48 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01R4/48 A
(21)【出願番号】P 2020205994
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 栄治郎
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-041002(JP,Y1)
【文献】特開2020-181716(JP,A)
【文献】実開昭58-062573(JP,U)
【文献】実開昭53-133192(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに対して固定される端子台の端子構造であって、
電線孔から挿入される電線に沿うように配置された導電性の端子板と、
挿入された前記電線に対して挿入方向と鋭角をなして当接して前記端子板とともに前記電線を挟持して固定する板ばねと、
挿入される棒状工具が前記板ばねを押圧して前記板ばねを前記電線から離間させるように案内する工具孔と、
を有し、
前記板ばねは、前記パネルの面直方向に沿う基端部、先端が前記電線に接触する作用板、および前記基端部と前記作用板との間の円弧部を備え、
前記電線孔および前記工具孔は、前記パネルの側に向かって前記基端部に近づくように傾斜しており、
前記板ばねが前記電線に当接している状態で、
前記工具孔内における前記棒状工具の傾斜可能角度全範囲において、前記板ばねと前記工具孔から挿入された前記棒状工具との為す角度が45°以上であることを特徴とする端子構造。
【請求項2】
前記工具孔は前記棒状工具が所定の角度範囲内で挿入可能であって、
前記板ばねが前記電線に当接している状態で、前記板ばねと前記工具孔から挿入された前記棒状工具との為す角度の最小値が45°以上であることを特徴とする請求項1に記載の端子構造。
【請求項3】
前記板ばねは前記棒状工具によって押圧されることにより、前記電線に対する傾斜角度が小さくなるように構成され、
前記棒状工具が前記板ばねを押圧して最大変位させた状態で、前記板ばねと前記棒状工具との為す角度が45°以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の端子構造。
【請求項4】
前記作用板と前記円弧部との間で前記棒状工具が接する箇所には、前記作用板よりも傾斜が緩やかな面が設けられていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の端子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじを用いずに電線を固定することのできる端子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電線を端子台に接続する際に、ねじを用いずに電線を固定することができる端子構造が知られている。このような端子構造では、板ばねが挿入された電線に対して挿入方向と鋭角をなして当接し、端子板とともに電線を挟持して固定する。
【0003】
特許文献1には、ドライバーなどの工具を所定の工具孔に差し込むことにより、工具は板ばねを押圧するように案内され、該板ばねが電線から離間して電線が固定状態から解除される端子台が開示されている。特許文献1に記載の端子台は、工具孔に挿入された工具をそのまま保持しておく構造となっている。また、特許文献2には、工具の代わりに解除ボタンが同様の作用を行う端子台が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-162579号公報
【文献】特開2000-251968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の端子台では、工具孔に挿入されたドライバーを作業終了後にもそのまま抜き忘れて放置してしまう懸念があり、抜き忘れ防止のためにはむしろ作業後にドライバーが抜やすくなっていることが望ましい場合もある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、工具孔に挿入された棒状工具を抜けやすくすることのできる端子構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる端子構造は、挿入される電線に沿うように配置された導電性の端子板と、挿入された前記電線に対して挿入方向と鋭角をなして当接して前記端子板とともに前記電線を挟持して固定する板ばねと、挿入される棒状工具が前記板ばねを押圧して前記板ばねを前記電線から離間させるように案内する工具孔と、を有し、前記板ばねが前記電線に当接している状態で、前記板ばねと前記工具孔から挿入された前記棒状工具との為す角度が45°以上であることを特徴とする。
【0008】
多くの場合、棒状工具と板ばねとの間の摩擦係数μは0.52であり、さらに工具孔と棒状工具との間の摩擦係数μは一般的数値として0.3と想定される。これらから求められる合計の摩擦角θ0は余裕をみてθ0=45°程度に設定することができる。上記の端子構造では、板ばねと棒状工具との為す角度θが45°以上に設定されており、棒状工具と板ばねとの間には滑りが生じ得る状態となり、該棒状工具には外に押し出される力が生じ、抜けやすくすることができる。
【0009】
前記工具孔は前記棒状工具が所定の角度範囲内で挿入可能であって、前記板ばねが前記電線に当接している状態で、前記板ばねと前記工具孔から挿入された前記棒状工具との為す角度の最小値が45°以上であってもよい。これにより、棒状工具を一層抜けやすくすることができる。
【0010】
前記板ばねは前記棒状工具によって押圧されることにより、前記電線に対する傾斜角度が小さくなるように構成され、前記棒状工具が前記板ばねを押圧して最大変位させた状態で、前記板ばねと前記棒状工具との為す角度が45°以上であってもよい。これにより、板ばねと棒状工具との為す角度が最も小さい場合であっても、棒状工具を抜けやすくすることができる。
【0011】
上記の端子構造は、人によって押圧操作される制御盤スイッチに設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
多くの場合、棒状工具と板ばねとの摩擦係数μは0.52であり、摩擦角θ0は余裕をみてθ0=45°程度に設定することができる。上記の端子構造では、板ばねと棒状工具との為す角度θが45°以上に設定されており、棒状工具と板ばねとの間には滑りが生じ得る状態となり、該棒状工具には外に押し出される力が生じ、抜けやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態にかかる端子構造が適用された制御盤スイッチの斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態にかかる端子構造が適用された制御盤スイッチの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態にかかる端子構造が適用された制御盤スイッチの断面側面図である。
【
図4】
図4は、ノーマルクローズ式の端子台の分解斜視図である。
【
図5】
図5は、端子アセンブリの分解斜視図である。
【
図6】
図6は、ノーマルオープン式の端子台の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、電線が挿入された状態の端子台の断面側面図である。
【
図8】
図8は、棒状工具が板ばねに当接するまで挿入された状態の端子台の断面側面図である。
【
図9】
図9は、板ばねが最大変位するまで棒状工具が挿入された状態の端子台の断面側面図である。
【
図10】
図10は、変形例にかかる端子台の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる端子構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
図1は、本発明の実施形態にかかる端子構造10が適用された制御盤スイッチ11の斜視図である。後述するように端子構造10は制御盤スイッチ11における端子台14,16に適用されている。
図2は、制御盤スイッチ11の分解斜視図である。
図3は、制御盤スイッチ11の断面側面図である。
【0016】
制御盤スイッチ11は、スイッチ本体12と、2つの端子台14,16とを有する。スイッチ本体12は、ベース体18と該ベース体18から突出する保持筒20と、保持筒20内に設けられた操作ボタン22と、ナット24とを有する。制御盤スイッチ11は、図示しない制御盤パネルに対して保持筒20とナット24とにより挟持して固定される。制御盤スイッチ11では、操作ボタン22の操作により、端子台14の所定の接点がノーマルオープン式に動作し、端子台16の所定の接点がノーマルクローズ式に動作する。
【0017】
以下の説明では、スイッチ本体12が設けられる側を上方、その反対を下方とする。また、端子台14の側を前方、端子台16の側を後方とする。ただし、これらの方向付けは説明の便宜上のものであり、制御盤スイッチ11の取り付け向きは特に限定されない。
【0018】
端子台14,16はベース体18に対して下側面に並列して取り付けられる。端子台14,16はいずれか一方だけを取り付けてもよいし、端子台14だけを2台、または端子台16だけを2台取り付けてもよい。さらに、
図1の仮想線で示すように、端子台14,16は複数台を直列状に接続することも可能である。
【0019】
図4は、ノーマルクローズ式の端子台14の分解斜視図である。
図5は、端子アセンブリ33の分解斜視図である。
【0020】
端子台14は、メインのフレーム30と、該フレーム30の蓋となるベース32とによって筐体が形成されている。この筐体の内部には一対の端子アセンブリ33が設けられている。端子アセンブリ33は、それぞれ固定接点体34と、板ばね体36とから構成されている。また、筐体の内部には可動接点アセンブリ38と、コイルばね40とが設けられている。
【0021】
固定接点体34は、所定の厚みの導電性板から形成されており中央の縦板42と、該縦板42から上方の前方屈曲部45を介して2つに分岐して前方斜め下方向に延在する固定接点板(端子板)46と、縦板42の下方部から突出する後方屈曲部44とを有する。後方屈曲部44の先端近傍には接点44aが設けられている。固定接点板46の先端近傍には筋状突起46aが形成されている。筋状突起46aは後述する電線Wに噛み込んで該電線Wを抜けにくくする。
【0022】
板ばね体36は適度な厚みのある金属の弾性板から形成されており、具体的には鉄またはSUSなどである。板ばね体36は、縦板48と、該縦板48の下方から分岐した2本の板ばね50を有する。板ばね50は、縦板48とつながる基端部50aと、基端部50aから略270°の円弧を形成して折れ曲がる円弧部50bと、該円弧部50bから前方斜め上方向に突出する作用板50cとを有する。
【0023】
可動接点アセンブリ38は、上方に突出するロッド38aと、該ロッド38aから両側の斜め下方に突出する可動接点板38bと、ロッド38aの中間部から突出しているばね受座38cとを有する。可動接点板38bの両端近傍には接点38baが設けられている。ばね受座38cの下面にはコイルばね40の一端が当接し、可動接点アセンブリ38が上方に付勢される。
【0024】
可動接点アセンブリ38は、操作ボタン22の非操作時にはコイルばね40からの付勢力によって上方に変位しており、2つの接点38baが2つの固定接点体34における各接点44aに対して下方から接触する。これにより2つの板ばね体36同士は導通する。可動接点アセンブリ38は、操作ボタン22の操作時にはロッド38aを介し、コイルばね40からの付勢力に抗して下方に押し下げられ、2つの接点38baは2つの板ばね体36における各接点44aから離間する。これにより2つの固定接点体34同士は絶縁される。
【0025】
図6は、ノーマルオープン式の端子台16の分解斜視図である。端子台16は上記と同様にフレーム30とベース32とによって筐体が形成されている。この筐体の内部には一対の端子アセンブリ51が設けられている。また、筐体の内部には可動接点アセンブリ54と、コイルばね40とが設けられている。
【0026】
端子アセンブリ51は、それぞれ固定接点52と、板ばね体36とから構成されている。固定接点52は上記の固定接点体34における接点44aの構造が接点52aで置き換えられたものであり、それ以外は共通である。板ばね体36、コイルばね40は上記のものと同じである。
【0027】
可動接点アセンブリ54は、上方に突出するロッド54aと、該ロッド54aから両側の斜め上方に突出する可動接点板54bと、ロッド54aの中間部から突出しているばね受座54cとを有する。可動接点板54bの両端近傍には接点54baが設けられている。ばね受座54cの下面にはコイルばね40の一端が当接し、可動接点アセンブリ54は上方に付勢される。
【0028】
可動接点アセンブリ54は、操作ボタン22の非操作時にはコイルばね40からの付勢力によって上方に変位しており、2つの接点54baが2つの固定接点体52における各接点44aから離間している。これにより2つの板ばね体36同士は絶縁される。可動接点アセンブリ54は、操作ボタン22の操作時にはロッド54aを介し、コイルばね40からの付勢力に抗して下方に押し下げられ、2つの接点54baは2つの固定接点体52における各接点44aに対して上方から接触する。これにより2つの板ばね体36同士は導通する。
【0029】
図7は、電線Wが挿入された状態の端子台14の断面側面図である。上記のとおり端子台14には本実施の形態にかかる端子構造10が含まれている。なお、端子構造10は端子台16にも含まれているが、同様の構成、作用および効果を有していることから、以下の説明では端子台14の場合を例にして説明する。
【0030】
図7に示すように、端子台14の内部では、フレーム30の中板56とベース32の中板58とが当接し合っており、その前方の第1室60と後方の第2室62とを仕切っている。第1室60の前方部はベース32の一部である斜め壁64が隔壁を形成している。斜め壁64は前方斜め下方に延在している。ベース32の背板66とフレーム30の背板67とは当接し合って第2室62の背面壁を形成している。
【0031】
第2室62には、可動接点アセンブリ54およびコイルばね40が収納されている。第1室60には、端子アセンブリ33のほぼ全てが収納されており、後方屈曲部44だけが第2室62に突出している。2つの端子アセンブリ33は、
図7における紙面垂直方向に並列して設けられている。第1室60には、板ばね50の変位を規制する規制板65が設けられている。
【0032】
端子アセンブリ33における固定接点体34は、縦板42が中板58に当接して支持され、固定接点板46が斜め壁64に当接して支持されている。端子アセンブリ33における板ばね体36は、縦板48が固定接点体34の縦板48に対して固定されており、円弧部50bが下方に配置され、作用板50cが前方斜め上方向を指向するように延在している。
【0033】
電線Wの非挿入時(
図3参照)には作用板50cの先端50caが固定接点板46に当接し、軽く弾性付勢している。このとき、作用板50cと固定接点板46とは、電線Wが挿入可能なように鋭角を形成している。作用板50cの略中間部にはわずかに曲がった屈曲部50cbが形成されており、作用板50cの先端側と固定接点板46との為す角が小さくなり電線Wが挿入されやすくなっている。一方、作用板50cの基端側は棒状工具T(
図8参照)がより大きい角度で当接するようになっている。
【0034】
フレーム30の前方部分には、電線Wを第1室60内に案内する電線孔68と、ドライバーなどの棒状工具Tを第1室60内に案内する工具孔70とが形成されている。電線孔68は各固定接点板46に応じて設けられ、工具孔70は各板ばね50に応じて設けられている。したがって、端子台14には電線孔68および工具孔70がそれぞれ4つずつ設けられている。
【0035】
電線孔68および工具孔70はほぼ並列してそれぞれ前方斜め下方に開口している。具体的には、電線孔68は、工具孔70よりもやや前方に設けられており前面壁で開口している。電線孔68は前面壁14aで開口していることから電線Wを挿入する操作が容易である。電線Wは、例えばフェルール端子である。電線孔68には、フェルール端子の先端導電部だけが第1室60内に挿入可能となるように小径部68aが形成されている。
【0036】
固定接点板46は、挿入される電線Wに沿うように配置されている。板ばね50は、挿入された電線Wに対して挿入方向と鋭角をなして当接して固定接点板46とともに電線Wを挟持して固定する。電線Wは、第1室60内で固定接点板46と板ばね50とによって一旦固定されるとそのままでは引き抜き不能となることから、ねじを用いずに固定することができる。
【0037】
図8は、棒状工具Tが板ばね50に当接するまで挿入された状態の端子台14の断面側面図である。
図9は、板ばね50が最大変位するまで棒状工具Tが挿入された状態の端子台14の断面側面図である。
【0038】
工具孔70は挿入される棒状工具Tが板ばね50を押圧して該板ばね50を電線Wから離間させるように案内する。板ばね50は棒状工具Tによって押圧されることにより、電線Wに対する傾斜角度が小さくなるように構成されており、板ばね50が電線Wから離間することにより電線Wは固定状態から解除される。
【0039】
工具孔70は電線孔68との位置関係から下面壁14bで開口している。下面壁14bは棒状工具Tを挿入することは比較的容易であるが、解除ボタンなどを設けて操作することはやや熟練を要す。特に、制御盤スイッチ11に適用される端子台14では人手による操作が容易な位置の操作ボタン22とは逆側にあり、この場合では解除ボタン式よりは工具孔70に棒状工具Tを挿入する形式が好ましい。また、解除ボタンは操作変位量を十分大きく確保できない場合があり、安定かつ確実な解除動作の実現が困難となり得るが、工具孔70からは棒状工具Tが十分深く挿入され、安定かつ確実な解除操作が可能となる。
【0040】
工具孔70は、作業性を考慮して棒状工具Tが所定の角度範囲内で挿入可能となっている。
図8に示すように、工具孔70から挿入された棒状工具Tの先端が板ばね50に最初に当接する状態で、板ばね50と棒状工具Tとの為す角度θは、最小値が50°で最大値が60°となっている。また、
図9に示すように、板ばね50が規制板65に当接する最大変位となるまで棒状工具Tが挿入した状態では、角度θの最小値は
45°となっている。
【0041】
ここで、棒状工具Tに対する板ばね50の作用を説明すると、棒状工具Tが板ばね50に対して滑るようになるためには、まず、両者間の角度θが、面材同士の組成によって決定される摩擦角以上になっていることが望ましい。工具孔70に挿入される棒状工具Tとしては、鉄のドライバーが用いられることが非常に多い。一方、板ばね50はばね材であり、基本的には鉄と考えられる。また、板ばね50には、例えばSUS材が用いられることがあるが、SUS材の主成分は鉄であり、しかもその他の成分の摩擦係数も鉄と比較的近い値であることから(クロムの鉄に対する摩擦係数は0.53であり、ニッケルの鉄に対する摩擦係数は0.58である)、実用上的には鉄同士の摩擦係数を考慮すればよい。
【0042】
そうすると、鉄同士の摩擦係数μは0.52であることから、この間の摩擦角θ01との関係は、μ=tanθ01であり、θ01=27°と求めることができる。
【0043】
さらに、工具孔70と工具Tとが接していると、その間に摩擦が存在するため、一般的な摩擦係数μは0.3であることから、この間の摩擦角θ02との関係は、μ=tanθ02であり、θ02=17°と求めることができる。そうすると、摩擦角θ01と摩擦角θ02との合計の摩擦角θ0は、θ01+θ02=27°+17°=44°となる。実際上は面の状態、素材の種類等による影響や誤差を考慮するため多少の余裕をみて、θ0=45°程度に設定することが望ましい。
【0044】
すなわち、θ≧θ0=45° と設定することにより、棒状工具Tは板ばね50の表面上を滑りやすくなり、工具孔70内で保持されにくく、外へ押し出されやすくなる。
【0045】
本実施の形態にかかる端子構造10は、固定接点板46、板ばね50、電線孔68、工具孔70などから構成されており、板ばね50が電線Wに当接している状態(
図8参照)で、板ばね50と棒状工具Tとの為す角度θが最小値で50°あり、摩擦角θ
0=45°以上であることから板ばね50を少し押して電線Wから離間させたときに棒状工具Tと板ばね50との間には滑りが生じ得る状態となり、該棒状工具Tには外に押し出される力が生じ、抜けやすくすることができる。したがって、作業者には棒状工具Tが戻る感覚が得られ、棒状工具Tを手放さいように促され、該棒状工具Tを抜き忘れることが防止される。また、解除ボタンがないことから、棒状工具Tを深く挿入することができ、電線Wの固定解除時に確実な操作感が得られるとともに、部品点数の削減およびコストダウンを図ることができる。また、板ばね50と棒状工具Tとの為す角度θが最大値(
図8の例では60°)のときに45°以上あれば、少なくともその状態のときに相応の効果が得られる。
【0046】
さらに、端子構造10では、棒状工具Tを深く挿入するほど角度θは小さくなるが、該角度θが最も小さくなる状態、つまり、
図9のように板ばね50が最大変位するまで棒状工具Tが挿入された状態であっても角度θは45°以上が確保されており、棒状工具Tと板ばね50との間には滑りが生じ得るようにすることができる。
【0047】
図10は、変形例にかかる端子台14Aの断面側面図である。端子台14Aにおける板ばね体36Aおよび板ばね72は上記の板ばね体36および板ばね50に相当するものである。上記のとおり角度θは45°以上であれば相応の効果が得られるが、より大きい角度であることが好ましい。端子台14Aにおける板ばね72では、基端部72bが棒状工具Tとのなす角度θが90°程度になるように設定されており、両者間に滑りが生じやすい。また、先端部72aとの間の屈曲部72cは比較的大きい角度になっており、先端部72aは電線Wに対して適切な角度で当接する。
【0048】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
14,14A,16 端子台
22 操作ボタン
33,51 端子アセンブリ
34,52 固定接点体
36,36A 板ばね体
46 固定接点板
50b 円弧部
50a 基端部
50c 作用板
50ca 先端
68 電線孔
70 工具孔
T 棒状工具
W 電線
θ 角度