(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】センサ装置、および、センサ装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01K 17/20 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
G01K17/20
(21)【出願番号】P 2021001433
(22)【出願日】2021-01-07
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】郷古 倫央
(72)【発明者】
【氏名】谷口 敏尚
(72)【発明者】
【氏名】岡本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】井村 友弘
【審査官】松山 紗希
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-004475(JP,A)
【文献】特開2019-066385(JP,A)
【文献】特開2020-067430(JP,A)
【文献】実開昭54-081382(JP,U)
【文献】特開2017-072401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能であって、弾性変形により発熱または吸熱する弾性部(40、50)と、
前記弾性部の変形により生じた熱流を検出可能な熱流センサであるセンサ本体(11、16)、および、前記センサ本体と配線接続部(139)で接続される配線部(13)を有するセンサ部(10、15)と、
を備え、
前記センサ本体および前記配線接続部は、前記弾性部により直接的に封止されており、前記配線部の一端側が前記弾性部から取り出されているセンサ装置。
【請求項2】
前記弾性部の外側に設けられ、導電材料で形成されている保護プレート(20、25、30、35)をさらに備え、
前記配線部は、前記センサ本体を接続される信号線(131、132)、外部グランドと接続されるアース線(138)、ならびに、前記信号線および前記アース線を覆う被膜(135)を有し、
前記センサ本体側にて前記被膜から取り出された前記アース線は、前記保護プレートと導通可能に当接している請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記保護プレートは、前記センサ本体を保持するセンサ保持部(21、26、31、36)、および、前記センサ保持部から突出し、前記配線部を囲むように折り曲げられている折曲部(24、34)が形成される配線保持部(22、27、32、37)を有し、
前記センサ本体側にて前記被膜から取り出された前記アース線は、折り返されて、前記被膜と前記折曲部との間に配置される請求項2に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記弾性部は、前記センサ本体側から前記折曲部の少なくとも一部に至る領域に形成されている請求項3に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記保護プレートには、スリット(211、261、311、361)が形成されており、
前記弾性部は、前記スリットに入り込んでいる請求項2~4のいずれか一項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
弾性変形可能であって、弾性変形により発熱または吸熱する弾性部(40、50)と、
前記弾性部の変形により生じた熱流を検出可能な熱流センサであるセンサ本体(11、16)、および、前記センサ本体と配線接続部(139)で接続される配線部(13)を有するセンサ部(10、15)と、
を備えるセンサ装置の製造方法であって、
弾性材プレート(41~47)に挟まれ、前記配線部が外部に取り出された状態にて、前記センサ本体を型(80、85)に配置する部品配置工程と、
真空環境下において熱プレスを行い、複数の前記弾性材プレートを一体化させることで前記弾性部を形成し、前記センサ本体および前記配線接続部を前記弾性部でモールドする熱プレス工程と、
を含むセンサ装置の製造方法。
【請求項7】
前記弾性材プレートには、前記センサ本体を挟んで配置される底面プレート(41)および上面プレート(46)、ならびに、前記センサ本体の側面に配置される側面プレート(42~45)が含まれる請求項6に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項8】
前記弾性材プレートには、前記センサ本体に対応する凹部(471)が形成されている箱形プレート(47)、および、上面プレート(46)が含まれる請求項6に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項9】
前記部品配置工程において、スリット(211、261、311、361)が設けられている保護プレート(20、25、30、35)を前記弾性材プレートの外側に配置し、
前記熱プレス工程において、前記弾性材プレートが軟化し前記スリットに入り込むことで、前記弾性部および前記保護プレートが一体化される請求項7または8に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項10】
前記部品配置工程には、前記保護プレートを折り曲げることで前記配線部を挟持するプレート折り曲げ工程が含まれる請求項9に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項11】
前記配線部は、前記センサ本体と接続される信号線(131、132)、外部グランドと接続されるアース線(138)、ならびに、前記信号線および前記アース線を覆う被膜(135)を有し、
前記保護プレートは、導電性材料により形成されており、
前記プレート折り曲げ工程において、前記配線部の前記被膜で覆われている部分とともに前記センサ本体側にて前記被膜から取り出された前記アース線を挟持する請求項10に記載のセンサ装置の製造方法。
【請求項12】
前記センサ本体および前記弾性材プレートには、位置決めピン(88)が挿通される孔部(165、515、525)が形成されており、
前記部品配置工程において、前記センサ本体と、前記型(85)および前記位置決めピンとの間には、隙間が形成されている請求項6~11のいずれか一項に記載のセンサ装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、および、センサ装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基準に対する部材の位置変化を検出可能な位置検出装置が知られている。例えば特許文献1では、弾性部材の発熱または吸熱による熱流束の変化を検出することで、被検出体のベースに対する位置変化を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
熱流束変化による位置検出装置では、弾性体として熱弾性係数の大きい樹脂が用いられることが多く、例えば両面テープや接着剤等の接着部材を用いて弾性体と熱流センサとが接着される。弾性体と熱流センサとを接着部材を用いて接着した場合、接着部材が熱の流れを阻害するため、応答性が低下する。また、接着部材が徐々に圧縮されて厚みが変化するため、変化が終わりきるまで、センサ出力が安定しない。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、接着部材を使用せずに製造可能なセンサ装置、および、センサ装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセンサ装置は、弾性部(40)と、センサ部(10、15)と、を備える。弾性部は、弾性変形可能であって、弾性変形により発熱または吸熱する。センサ部は、弾性部の変形によって生じた熱流を検出可能な熱流センサであるセンサ本体(11、16)、および、センサ本体と配線接続部(139)で接続される配線部(13)を有する。センサ本体および配線接続部は、弾性部により直接的に封止されており、配線部の一端側が弾性部から取り出されている。
【0007】
本発明のセンサ装置の製造方法は、部品配置工程と、熱プレス工程と、を含む。部品配置工程では、センサ本体が弾性材プレート(41~47)に挟まれ、配線部が外部に取り出された状態にて、型(80、85)に配置する。熱プレス工程は、真空条件下において熱プレスを行い、複数の弾性材プレートを一体化させることで弾性部を形成し、センサ本体および配線接続部を弾性部でモールドする。これにより、接着剤等の接着部材を用いることなく、センサ部および配線接続部を直接的にモールドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態による状態監視センサの平面図である。
【
図9】第1実施形態によるモールドされていない状態のセンサ部を示す平面図である。
【
図12】第1実施形態による折り曲げ前の下保護プレートを示す平面図である。
【
図13】第1実施形態による折り線を折り曲げた状態の下保護プレートを示す平面図である。
【
図16】第1実施形態による折り曲げ前の上保護プレートを示す平面図である。
【
図17】第1実施形態による折り線を折り曲げた状態の上保護プレートを示す平面図である。
【
図20】第1実施形態による状態監視センサの製造方法を説明するフローチャートである。
【
図21】第1実施形態による型を示す斜視図である。
【
図22】第1実施形態による型を示す平面図である。
【
図25】第1実施形態による下押さえブロックを示す平面図である。
【
図26】第1実施形態において、型に下押さえブロックを配置した状態を示す平面図である。
【
図29】第1実施形態において、型に下保護プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図32】第1実施形態において、型に底面プレートおよび側面プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図35】第1実施形態において、型にセンサ部を配置した状態を示す平面図である。
【
図38】第1実施形態において、下保護プレートの折り線f3を折り曲げた状態を示す平面図である。
【
図41】第1実施形態において、型に上面プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図43】第1実施形態において、型に上保護プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図46】第1実施形態において、型に上押さえブロックを配置した状態を示す平面図である。
【
図49】第1実施形態において、真空熱プレスを行う状態を示す模式図である。
【
図50】第1実施形態において、真空熱プレス後の状態を示す平面図である。
【
図53】(a)は第1実施形態のセンサ部の状態を示す模式図であり、(b)は参考例によるセンサ部の状態を示す模式図である。
【
図54】第2実施形態による箱形プレートの成形に用いる上押さえブロックを示す平面図である。
【
図57】第2実施形態において、型に上押さえブロックを配置した状態を示す側面図である。
【
図58】第2実施形態の箱形プレートの成形において、真空熱プレスを行う状態を示す模式図である。
【
図59】第2実施形態による箱形プレートを示す平面図である。
【
図62】第3実施形態による状態監視センサの平面図である。
【
図65】第3実施形態によるモールドされていない状態のセンサ部を示す平面図である。
【
図67】第3実施形態による折り曲げ前の下保護プレートを示す平面図である。
【
図68】第3実施形態による折り線を折り曲げた状態の下保護プレートを示す側面図である。
【
図69】第3実施形態による折り曲げ前の上保護プレートを示す平面図である。
【
図70】第3実施形態による折り線を折り曲げた状態の上保護プレートを示す側面図である。
【
図71】第3実施形態による樹脂プレートを示す平面図である。
【
図72】第3実施形態による型を示す平面図である。
【
図73】(a)は上押さえブロックおよび下押さえブロックを示す平面図であり、(b)は位置決めピンを示す平面図である。
【
図74】第3実施形態において、型に下押さえブロックを配置した状態を示す平面図である。
【
図76】第3実施形態において、型に位置決めピンを配置した状態を示す平面図である。
【
図78】第3実施形態において、型に下保護プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図79】第3実施形態において、型に樹脂プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図80】第3実施形態において、型にセンサ部を配置した状態を示す平面図である。
【
図82】第3実施形態において、下保護プレートの折り線f8を折り曲げた状態を示す平面図である。
【
図84】第3実施形態において、型に樹脂プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図85】第3実施形態において、型に上保護プレートを配置した状態を示す平面図である。
【
図86】第3実施形態において、型に上押さえブロックを配置した状態を示す平面図である。
【
図88】第3実施形態において、真空熱プレスを行う状態を示す模式図である。
【
図89】第3実施形態において、真空熱プレス後の状態を示す平面図である。
【
図91】参考例による状態監視センサを示す平面図である。
【
図92】参考例による状態監視センサを示す側面図である。
【
図93】参考例による状態監視センサが設備に配置された状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本発明による状態監視センサ、および、その製造方法を図面に基づいて説明する。第1実施形態を
図1~
図53に示す。
図1~
図5に示すように、状態監視センサ1は、センサ部10、下保護プレート20、上保護プレート30、および、弾性部40等を備える。
【0010】
図9~
図11に示すように、センサ部10は、センサ本体11、および、配線部13を有する熱流センサであって、熱の流れを電圧信号に変換して出力する。本実施形態のセンサ部10は、平面視略矩形に形成され、熱プレス加工工程を経て製造されたものを用いる。センサ本体11は、弾性部40により封止されている(
図1~
図5参照)。弾性部40は、センサ本体11の全面を封止している。弾性部40には、熱弾性係数が大きい樹脂、例えばUPE(超高分子ポリエチレン)が用いられる。
【0011】
図7および
図8に示すように、配線部13は、所謂2芯シールド線であって、それぞれ被膜133、134で覆われた信号線131、132、配線外被膜135、および、アース線138を有する。信号線131、132は、センサ部10側の先端にて被膜133~135が剥かれ、配線接続部139にてセンサ本体11に接続される。本実施形態では、はんだにより、信号線131、132とセンサ本体11とが接続される。
【0012】
アース線138は、配線外被膜135の内側にて網状に形成されている。アース線138は、センサ部10側にて、配線外被膜135から取り出され、撚って線状に形成される。センサ部10側にて取り出されたアース線138は、折り返されて、配線外被膜135で覆われている配線部13とともに保護プレート20、30に挟持される。これにより、アース線138は、保護プレート20、30と導通可能な状態にて当接する。
図8では、アース線138が網状に構成されている状態を、二点鎖線の斜線にて示した。
【0013】
下保護プレート20を
図12~
図15に示す。
図12は折り曲げ前の状態を示しており、
図13~
図15は折り線f1、f2を折り曲げた状態を示している。なお
図13~
図15では、折り線f3は折り曲げられていない。本実施形態では、下保護プレート20は、例えば厚さ0.1mmのアルミまたはステンレス等の導電性の金属により形成される。下保護プレート20の厚みは、弾性部40の弾性変形を阻害せず、かつ、弾性部40の変形により破断しない程度の厚みに設計される。上保護プレート30も同様である。
【0014】
下保護プレート20は、本体保持部21、配線保持部22、折曲部23、24を有する。本体保持部21は、センサ部10のセンサ本体11に応じた形状(本実施形態では略矩形)に形成される。配線保持部22は、センサ本体11に対する配線部13の配置に応じ、本体保持部21から突出して形成される。
【0015】
折曲部23は、本体保持部21の各辺に突出して形成され、折り線f1にて折り曲げられる。折曲部24は、配線保持部22の両側に突出して形成され、折り線f2、f3にて略垂直に折り曲げられる。図中、折り線を一点鎖線で示した。
【0016】
上保護プレート30を
図16~
図19に示す。
図16は折り曲げ前の状態を示しており、
図17~
図19は折り曲げ後の状態を示している。上保護プレート30は、例えば厚さ0.1mmのアルミまたはステンレス等の導電性の金属により形成される。上保護プレート30は、本体保持部31、配線保持部32、および、折曲部33を有する。
【0017】
本体保持部31は、センサ部10のセンサ本体11に応じた形状(本実施形態では略矩形)に形成され、スリット311が形成される。配線保持部32は、センサ本体11に対する配線部13の配置に応じ、本体保持部31から突出して形成される。配線保持部32は、配線保持部22より短く、積層したときに先端が折曲部24よりもセンサ本体11側となる。
【0018】
折曲部33は、本体保持部31の各辺に突出して形成され、折り線f4にて略垂直に折り曲げられる。折曲部34は、配線保持部32の両側に突出して形成され、折り線f5にて略垂直に折り曲げられる。折曲部23、33は、それぞれが折り曲げたときに干渉しないように形成されており、弾性部40の4側面を支える役目を果たす。また、折曲部24、24は、折り曲げることで配線部13を挟持する。ここで、折曲部34は、下保護プレート20側が開放された状態となっているが、このような状態も「配線部を囲むように折り曲げられている」の概念に含むものとする(
図7参照)。
【0019】
本実施形態の状態監視センサ1は、熱プレスにより、センサ本体11が弾性部40により封止されており、弾性部40の外側に保護プレート20、30が設けられている。状態監視センサ1は、弾性部40が若干圧縮された状態にて、設備や治具の隙間に配置される。例えば、状態監視センサ1の厚みが3mmであれば、弾性部40を0.5mm圧縮し、2.5mmの隙間に配置する、といった具合である。
【0020】
状態監視センサ1が配置された設備や治具の構造が歪むと、弾性部40が圧縮または膨張し、熱弾性効果により発熱または吸熱する。このときに発生する熱の流れを熱流センサであるセンサ部10により検出し、電圧信号に変換する。状態監視センサ1は、例えば0.1μm以下の歪みに対して、数μVの電圧信号を出力する。これにより、稼働中の設備の状態を、僅かな構造体の変形で捉えることで、設備状態の異常や機械寿命のような長期的な変化が検出可能となる。
【0021】
ところで、
図91~
図93に示す参考例による状態監視センサ90では、センサ部91と弾性部92とが、両面テープや接着剤等である接着部材93により固定されている。センサ部91への弾性部92の取り付けに接着部材93を用いると、接着部材93が熱の流れを阻害するため、応答性が低下する虞がある。また、ブロック矢印および破線で示すように、設備100の構造が歪むと、接着部材93が徐々に圧縮され厚みが変化するため、接着部材93の変化が終わりきるまでの期間(例えば数時間~1日)、センサの出力が安定しない。
【0022】
また、センサ部91の端子911と配線95の信号線951とをはんだ96で接続する場合、端子911、信号線951やはんだ96が設備100の金属部に触れると、ノイズの原因となるため、絶縁処理が必要となる。
【0023】
さらにまた、熱流センサは、特性上、取り付ける相手の電波ノイズを受けやすい。そのため、配線95にはシールド線を用い、アース線952の一端をセンサ部91に可及的近い箇所に接触させ、他端をアンプ等のグランドに接続することで、電波ノイズをキャンセルすることが望ましい。しかしながら、センサ部91の周囲の空間は限られていることが多く、センサ部91に近い箇所でアース線952を接触させることが構造上困難な場合がある。また、センサ部91から離れた箇所にアース線952を接触させた場合、センサ部91との電位差によりノイズをキャンセルすることができない。
【0024】
そこで本実施形態では、センサ部10を弾性部40および保護プレート20、30でモールドすることで、接着部材を使用せずにセンサ本体11に弾性部40を密着させるとともに、端子部分も弾性部40でモールドすることで端子の絶縁を確保する。また、保護プレート20、30を導電性の金属で形成し、アース線138と接触させることで、ノイズをキャンセル可能である。
【0025】
本実施形態の状態監視センサ1の製造方法を
図20のフローチャート、および、
図21~
図52に基づいて説明する。フローチャートにおいて、ステップS1の「ステップ」を省略し、単に記号「S」と記す。他のステップも同様である。
【0026】
S1では、型80の貫通穴801に下押さえブロック81を配置する。
図21~
図24に示すように、型80には、貫通穴801、および、配線取出溝802が形成されている。貫通穴801は、センサ本体11に応じた形状に形成される。配線取出溝802は、型80に配置されたセンサ部10の配線部13を位置決め可能に設けられ、配線部13の先端側を型80の外部に取り出す。
【0027】
図25に示すように、下押さえブロック81は、貫通穴801に嵌まり合う形状に形成される。例えば、センサ本体11の厚みが薄い場合には高さが大きいものを用いる、といった具合に、センサ本体11の大きさに応じたものを用いる。型80に下押さえブロック81を配置した状態を、
図26~
図28に示した。
【0028】
S2では、下押さえブロック81が配置された型80に、下保護プレート20を配置する。型80に下保護プレート20を載せた状態を
図29~
図31に示す。下保護プレート20は、本体保持部21が下押さえブロック81の上、配線保持部22が配線取出溝802となるように、型80に配置される。このとき、下保護プレート20は、折り線f1、f2が折り曲げられており、折り線f3は折り曲げられていない。折り線f2を折り曲げることで、折曲部24は、配線取出溝802の側壁に沿った状態で配置される。
【0029】
S3では、5枚の樹脂プレートである底面プレート41および側面プレート42~45を下保護プレート20内に配置する。型80にプレート41~45が配置された状態を
図32~
図34に示す。底面プレート41は本体保持部21に載せ置かれ、側面プレート42~45は折曲部23に沿うように側面に配置される。
【0030】
S4では、センサ部10を型80に配置する。型80にセンサ部10が配置された状態を
図35~
図37に示す。センサ本体11は底面プレート41の上に載せ置かれ、センサ本体11の外縁に側面プレート42~45が配置される。すなわち、センサ本体11の下側および4側面は、5枚のプレート41~45により囲まれている状態となる。また、配線部13は、配線保持部22に載せ置かれるとともに、配線取出溝802により型80の外部へ延びた状態となる。
【0031】
配線外被膜135から取り出されたアース線138は、Uターンするように、配線外被膜135に沿い、先端が配線外被膜135と下保護プレート20の折曲部24との間に挟まれる。
【0032】
S5では、折り線f3にて、折曲部24を折り曲げ、折曲部24を配線部13に巻き付ける。折り線f3を折り曲げて折曲部24が配線部13に巻き付けられた状態を
図38~
図40に示した。このとき、アース線138も一緒に折曲部24により巻き付けられることで、アース線138と下保護プレート20とが当接する。これにより、アース線138と下保護プレート20とが電気的に接続される。
【0033】
S6では、上面プレート46をセンサ本体11の上に配置する。上面プレート46が配置された状態を
図41および
図42に示す。これにより、センサ本体11は6面がプレート41~46で囲まれた状態となる。また、上面プレート46は、信号線131、132とセンサ本体11とを接続するはんだの高さにより、斜めになっている。
【0034】
S7では、折り線f4、f5が折り曲げられた状態の上保護プレート30を上面プレート46の上に配置する。上保護プレート30が配置された状態を、
図43~
図45に示す。プレス前において、配線保持部32は、配線部13から浮いた状態となっている。
【0035】
S8では、上押さえブロック82を上保護プレート30の上に置く。上押さえブロックが配置された状態を
図46~
図48に示す。上押さえブロック82は、プレス前において、型80から突出する。この突出部分がプレスにより押し込まれることで、樹脂が隙間に埋まる。また、状態監視センサ1が設置される設備の隙間寸法等に応じ、寸法を変更したい場合は、下押さえブロック81および上押さえブロック82に加え、シムプレート等を適宜用いてもよい。
【0036】
S9では、真空熱プレスを行う。
図49に示すように、真空環境下で熱プレスをかけることで、6枚のプレート41~46が隙間を埋めて一体の弾性部40となる。プレス装置Pにて熱プレスを行う状態をブロック矢印で示した。
図58および
図88も同様である。弾性部40により、センサ本体11の全面が樹脂により封止される。熱プレス後の状態を
図50~
図52に示した。S10では、熱プレスにより形成された状態監視センサ1を型80から取り出す。
【0037】
本実施形態では、センサ部10自体も熱プレスにより製造されており、状態監視センサ1のモールド加工における熱プレス条件は、センサ部10の製造条件よりも緩やかな条件とする。また、プレート41~46の融点を超えると、スリット211等から樹脂が抜けてしまうため、プレート41~46が軟化する程度の条件(例えば150℃、1kNにて150秒)にて熱プレスを行う。
【0038】
保護プレート20、30には、スリット211、311が形成されており、スリット211、311に軟化した樹脂が流れ込むことで、保護プレート20、30は、弾性部40と密着する。スリット211、311は、成形条件にて樹脂が入り込めるように形成されていればよく、形状や数は、任意に設計可能である。
【0039】
また、軟化した樹脂は、配線取出溝802側まで吹き流れ、折曲部33まで到達するように、プレート41~46の容積を設計する。これにより、配線接続部139、および、被膜133~135から銅線が露出している箇所が弾性部40で覆われるので、絶縁を確保することができる。また、配線強度を高めることができる。
【0040】
図53(b)に示す参考例のように、センサ本体11の一部が弾性部40から露出していると、弾性部40に覆われていない箇所から樹脂が剥離したり、油等の異物が弾性部40とセンサ本体11との間に侵入したりする虞がある。本実施形態では、プレート41~46を6面に配置して熱プレスを行うことで、センサ本体11の全体が確実に弾性部40で封止されるようにしている(
図51(a)参照)。
【0041】
また、弾性部40とセンサ本体11との間に空気が入り込むと、センサ本体11への熱伝導が阻害され、センサ性能が低下する虞がある。そこで本実施形態では、センサ本体11と弾性部40との間に空気が入り込まないように、真空下での熱プレスを行うことで、空気の混入によるセンサ性能の低下を防ぐことができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のセンサ装置としての状態監視センサ1は、弾性部40と、センサ部10と、を備える。弾性部40は、熱弾性効果を有し、弾性変形可能であって、弾性変形により発熱または吸熱する。センサ部10は、弾性部40の変形により生じた熱流を検出可能な熱流センサであるセンサ本体11、および、センサ本体11と配線接続部139で接続される配線部13を有する。
【0043】
センサ本体11および配線接続部139は、弾性部40により直接的に封止されており、配線部13の一端側が弾性部40から取り出されている。ここで、「直接的に封止されている」とは、接着剤等の接着部材を用いることなく、弾性部40にて封止されている、ということである。本実施形態では、接着剤等の接着部材を用いることなく、センサ本体11および配線接続部139を弾性部により直接的に封止しているので、接着剤等を用いる場合と比較し、応答性や検出精度を向上させることができる。また、配線接続部139をモールドすることで、絶縁を確保することができる。
【0044】
状態監視センサ1は、弾性部40の外側に設けられ、導電材料で形成される保護プレート20、30をさらに備える。配線部13は、センサ本体11と接続される信号線131、132、外部グランドと接続されるアース線138、ならびに、信号線131、132およびアース線138を覆う被膜135を有する。センサ本体11側にて被膜135から取り出されたアース線138は、保護プレート20、30と導通可能に当接している。これにより、状態監視センサ1を検出対象の装置や治具に設置したとき、アース線138は、保護プレート20、30を経由して検出対象の装置等と導通するため、電波ノイズを適切にキャンセルすることができる。
【0045】
保護プレート20、30は、センサ本体11を保持する本体保持部21、31、および、本体保持部21、31から突出し、配線部13を囲むように折り曲げられている折曲部24、34が形成される配線保持部22、32を有する。センサ本体11側にて被膜135から取り出されたアース線138は、折り返されて、被膜135と折曲部24、34との間に配置される。また、弾性部40は、センサ本体11側から折曲部24、34の少なくとも一部に至る領域に形成されている。
【0046】
これにより、アース線138と保護プレート20、30との導通を確保しつつ、配線部13を適切に保持することができる。また、弾性部40が折曲部34まで形成されていることで、配線部13が引っ張られた場合であっても、信号線131、132が被膜133~135から露出している箇所や配線接続部139に加わる力を低減可能である。
【0047】
保護プレート20、30には、スリット211、311が形成されている。弾性部40は、スリット211、311に入り込んでいる。これにより、保護プレート20、30と弾性部40とを密着させることができる。
【0048】
本実施形態における状態監視センサ1の製造方法は、部品配置工程と、熱プレス工程と、を含む。部品配置工程では、プレート41~46に挟まれ、配線部13が外部に取り出された状態にて、センサ本体11を型80に配置する。熱プレス工程では、真空条件下において熱プレスを行い、複数のプレート41~46を一体化させることで弾性部40を形成し、センサ本体11および配線接続部139を弾性部40でモールドする。これにより、接着剤等の接着部材を用いることなく、熱流センサであるセンサ本体11と弾性部40とを直接的に封止することができる。また、真空条件下で熱プレス工程を行うことで、センサ本体11と弾性部40との間に空気が入らない状態にて密着させることができる。
【0049】
樹脂プレートには、センサ本体11を挟んで配置される底面プレート41および上面プレート46、ならびに、センサ本体11の側面に配置される側面プレート42~45が含まれる。本実施形態では、センサ本体11の6面にプレート41~46を配置した状態にて熱プレスを行うことで、プレス中にセンサ本体11が型80の中で動いて端に寄って弾性部40からはみ出るのを防ぎ、センサ本体11の全面を弾性部40にて確実に封止することができる。
【0050】
部品配置工程において、スリット211、311が設けられている保護プレート20、30をプレート41~46の外側に配置する。熱プレス工程において、プレート41~46が軟化しスリットに入り込むことで、弾性部40と保護プレート20、30とが一体化される。これにより、保護プレート20、30と弾性部40とを適切に密着させることができる。
【0051】
部品配置工程には、保護プレート20を折り曲げることで配線部13を挟持するプレート折り曲げ工程が含まれる。センサ部10を配置後に折り線f3を折り曲げることで、保護プレート20により配線部13を適切に保持することができる。
【0052】
保護プレート20、30は、導電材料により形成されており、プレート折り曲げ工程において、配線部13の被膜135で覆われている部分とともにセンサ本体11側にて被膜135から取り出されたアース線138を挟持する。これにより、保護プレート20、30とアース線138とが導通し、ノイズを適切にキャンセルすることができる。
【0053】
(第2実施形態)
第2実施形態を
図54~
図61に示す。本実施形態では、センサ本体11の底面および側面に配置される5枚のプレート41~45に替えて、予めセンサ本体11の形状に応じて成形された箱形プレート47を用いる。
【0054】
図54~
図56に示すように、箱形プレート47の成形には、センサ部10の形状に応じた凸部831が形成されている上押さえブロック83を用いる。
図57に示すように、型80に下押さえブロック81、板状の樹脂プレート475、および、上押さえブロック83を設置する。そして、
図58に示すように、プレス装置Pにより真空熱プレスを行う。
図58では(a)が熱プレス前、(b)が熱プレス後の状態を示している。
【0055】
図59~
図61に示すように、成形後の箱形プレート47は、センサ部10の形状に応じた凹部471が形成された箱形プレートである。センサ本体11が、例えば三角形、台形、または、くびれのある形状等、複数のプレートで側面を囲うことが難しい場合であっても、本実施形態のように、予めセンサ形状に応じて成形された箱形プレート47を用いることで、上記実施形態と同様に状態監視センサ1を製造することができる。また、センサ本体11の保護プレート30側には、上記実施形態と同様の上面プレート46を配置して熱プレスを行う。
【0056】
本実施形態の樹脂プレートには、センサ本体11に対応する凹部471が形成されている箱形プレート47、および、上面プレート46が含まれる。これにより、形状に応じ、センサ本体11を弾性部40により適切に封止することができる。また、上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
(第3実施形態)
第3実施形態を
図62~
図90に示す。
図62~
図64に示すように、本実施形態のセンサ装置としての状態監視センサ2は、センサ部15、下保護プレート25、上保護プレート35、および、弾性部50等を備える。
【0058】
図65および
図66に示すように、センサ部15は、センサ本体16、および、配線部13を有する。センサ本体16は、平面視略円形に形成される。センサ本体16には、位置決めピン88(
図72(b)参照)が挿入される孔部165が略中央に形成される。センサ本体16は、全面が弾性部50に封止される。センサ部15は、センサ本体16の形状が異なる点を除き、上記実施形態のセンサ部10と概ね同様である。弾性部50は、センサ本体16の全面を封止している。
【0059】
図67および
図68に示すように、下保護プレート25は、本体保持部26、配線保持部27、および、折曲部28を有する。本体保持部26には、スリット261、および、位置決めピン88が挿入される孔部265が形成される。配線保持部27は、本体保持部26から突出して形成される。折曲部28は、配線保持部27の両側から突出して形成され、折り線f7、f8にて折り曲げられる。なお、
図68では、折り線f7が折り曲げられており、折り線f8が折り曲げられていない状態を示している。
【0060】
図69および
図70に示すように、上保護プレート35は、本体保持部36、配線保持部37、および、折曲部38を有する。本体保持部36には、スリット361、および、位置決めピン88が挿入される孔部365が形成される。配線保持部37は、本体保持部36から突出して形成される。折曲部38は、配線保持部37の両側から突出して形成され、折り線f9にて折り曲げられる。保護プレート25、35は、本体保持部26、36が略円形である点、および、本体保持部26、36の外縁に折曲部が設けられていない点を除き、上記実施形態の保護プレート20、30と概ね同様である。
【0061】
図71に示すように、樹脂プレート51、52は、円環状に形成され、略中央に孔部515、525が形成される。樹脂プレート51、52は、熱プレスにより一体となり、弾性部50を構成する。
【0062】
図72に示すように、状態監視センサ2の製造に用いる型85には、貫通穴851、および、配線取出溝852が形成される。
図73(a)に示すように、下押さえブロック86には、
図73(b)に示す位置決めピン88が挿入される孔部865が形成される。また、上押さえブロック87には、位置決めピン88が挿入される孔部875が形成される。孔部865、875は、位置決めピン88が挿入されたとき、位置決めピン88との間に隙間がないように形成される。ここでは、軟化した樹脂が流れ出さない状態を、隙間がない、とみなす。
【0063】
図74および
図75に示すように、型85に下押さえブロック86を配置する。また、
図76および
図77に示すように、下押さえブロック86に形成される孔部865に、位置決めピン88を挿入する。これにより、位置決めピン88は下押さえブロック86に固定される。
【0064】
図78に示すように、下押さえブロック86および位置決めピン88が配置された型85に、下保護プレート25を配置する。位置決めピン88は、孔部265に挿通される。このとき、下保護プレート25は、折り線f7が折り曲げられており、折り線f8は折り曲げられていない。
【0065】
図79に示すように、孔部515に位置決めピン88を挿入し、樹脂プレート51を下保護プレート25に載置する。また、
図80および
図81に示すように、孔部165に位置決めピン88を挿入し、センサ部15を樹脂プレート51に載置する。孔部165の内径(例えば4mm)は、位置決めピン88の外径(例えば3mm)より大きいため、この段階では、センサ部15の位置は固定できない。また、型85の貫通穴851の内径は、センサ本体16の外径より大きく、センサ本体16と型85との間には隙間が形成される。
【0066】
図82および
図83に示すように、折り線f8にて折曲部28を折り曲げ、折曲部28を配線部13に巻き付ける。このとき、アース線138も一緒に巻き付けることで、アース線138と下保護プレート25とが当接する。これにより、アース線138と下保護プレート25とが電気的に接続される。
【0067】
また、折曲部28を配線部13に巻き付けることで、下保護プレート25に対し、センサ部15の位置が固定される。このとき、センサ部15の孔部165の中心と、位置決めピン88の中心とが合うように、センサ位置を合わせておく。
【0068】
図84に示すように、孔部525に位置決めピン88を挿入し、樹脂プレート52をセンサ部15に載置する。
図85に示すように、孔部356に位置決めピン88を挿入し、折り線f9を折り曲げた状態の上保護プレート35を樹脂プレート52に載置する。
【0069】
図86および
図87に示すように、孔部875に位置決めピン88を挿入し、上押さえブロック87を樹脂プレート52に載置する。上押さえブロック87は、プレス前において、型85から突出する。この突出部分がプレスにより押し込まれることで、樹脂が隙間に埋まる。
【0070】
図88に示すように、真空熱プレスを行うと、樹脂プレート51、52が隙間を埋めて、一体の弾性部50となり、センサ本体16は、弾性部50により隙間なく全面が封止される。また、センサ本体16の孔部165は、位置決めピン88より大きいため、孔部165と位置決めピン88と隙間にも樹脂が回り、内径側も弾性部50で封止される。熱プレス後の状態を
図89および
図90に示した。
【0071】
本実施形態では、センサ本体16および樹脂プレート51、52には、位置決めピン88が挿通される孔部165、515、525が形成されている。部品配置工程において、センサ本体11と、型85および位置決めピン88との間には、隙間が形成されている。熱プレスにおいて、この隙間に軟化した樹脂が流れ込むことで、センサ本体11を弾性部50にて、確実に封止することができる。また上記実施形態と同様の効果を奏する。
【0072】
(他の実施形態)
第1実施形態では、熱プレス工程前、センサ本体の6面に樹脂プレートを配置する。他の実施形態では、樹脂プレートは、センサの全面に回り込む容量があれば、上下2枚としてもよい。上記実施形態では、センサ本体は、平面視略矩形または略円形である。他の実施形態では、センサ本体の形状は異なっていてもよい。上記実施形態では、信号線とセンサ本体とは、はんだにより接続される。他の実施形態では、はんだ付け以外の方法にて、信号線とセンサ本体とを導通可能に接続してもよい。以上、本発明は、上記実施形態になんら限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0073】
1、2・・・状態監視センサ(センサ装置)
10、15・・・センサ部
11、16・・・センサ本体
13・・・配線部 131、132・・・信号線
138・・・アース線 139・・・配線接続部
20、25・・・下保護プレート(保護プレート)
24、28・・・折曲部
30、35・・・上保護プレート(保護プレート)
211、261、311、361・・・スリット
40、50・・・弾性部
80、85・・・型 88・・・位置決めピン