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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】電磁接触器
(51)【国際特許分類】
   H01H 50/00 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
H01H50/00 F
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021008121
(22)【出願日】2021-01-21
(65)【公開番号】P2022112328
(43)【公開日】2022-08-02
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中 康弘
(72)【発明者】
【氏名】足立 日出央
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 充哉
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/038769(WO,A1)
【文献】特開平02-161664(JP,A)
【文献】特開2017-203508(JP,A)
【文献】実開昭61-057442(JP,U)
【文献】国際公開第2007/060945(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 3/00 - 7/16
H01H 33/28 - 33/68
H01H 45/00 - 45/14
H01H 50/00 - 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定接点を有する一対の固定接触子、前記固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する可動接触子及び前記可動接触子に接続された駆動軸を有する接点機構と、
前記固定接点に前記可動接点が接離する接離方向に前記駆動軸を介して接続された可動プランジャを有する電磁石ユニットと、
前記接点機構及び前記可動プランジャを収容する収容空間と、を備え、
前記収容空間は、前記接点機構を収容する接点機構収容空間と、前記可動プランジャを収容する可動プランジャ収容空間とが仕切り部材によって仕切られ、前記駆動軸が、前記仕切り部材に形成した貫通孔に挿通されて前記可動接触子及び前記可動プランジャに接続され
前記駆動軸の外周と前記仕切り部材の前記貫通孔との間の隙間を閉塞する異物侵入防止部材が、前記駆動軸の軸振れ状態で前記駆動軸の外周及び前記仕切り部材に摺動自在に配置されているとともに、
前記異物侵入防止部材は、押し付け部材により前記仕切り部材に向けて押し付けられながら前記隙間を閉塞していることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記押し付け部材は、前記駆動軸の外周に配置されたコイルスプリングであることを特徴とする請求項記載の電磁接触器。
【請求項3】
前記電磁石ユニットは、
スプールに巻装した励磁コイルを囲む磁気ヨークと、
前記可動接触子に前記駆動軸を介して連結され、プランジャ本体及び前記プランジャ本体の一端に形成した周鍔部を備え、前記プランジャ本体が前記スプール内に軸方向に可動自在に配置され、前記周鍔部が前記可動接触子側に配置されている前記可動プランジャと、
前記周鍔部を囲むように配置された永久磁石と、
前記永久磁石に吸着されて前記周鍔部が接触し、前記駆動軸が挿通する前記貫通孔が形成された補助ヨークと、
前記可動接触子の下部の前記駆動軸の外周に配置され、前記補助ヨークに対して前記永久磁石に向う方向に付勢する復帰スプリングと、を備えており、
前記仕切り部材を、前記磁気ヨークと、前記永久磁石と、前記駆動軸が挿通する前記貫通孔を形成した前記補助ヨークと、前記駆動軸の外周に配置された異物侵入防止部材と、で構成し、
前記押し付け部材として機能する前記復帰スプリングが、前記異物侵入防止部材を前記補助ヨーク側に付勢することを特徴とする請求項記載の電磁接触器。
【請求項4】
前記異物侵入防止部材は、座金で構成されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項5】
前記可動プランジャ収容空間の前記仕切り部材の前記貫通孔の近くに、異物回収ポケットが形成されていることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の電磁接触器。
【請求項6】
前記異物回収ポケットは、前記駆動軸の外周の一部を縮径して形成した凹環形状の部位であることを特徴とする請求項記載の電磁接触器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流路の開閉を行う電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
電流路の開閉を行う電磁接触器として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている(引用文献1ではリレーと称している)。
【0003】
特許文献1の電磁接触器は、接点装置と、電磁石ユニット(引用文献1では駆動装置と称している)と、接点装置及び電磁石ユニットを収納する絶縁体で形成したハウジングとを備えている。
【0004】
接点装置は、固定接点を有する一対の固定接触子と、固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する可動接触子と、可動接触子に接続された駆動軸と、を備えている。電磁石ユニットは、接点装置の駆動軸に接続して固定接点と可動接点とが接離するように可動接触子を移動させる可動鉄心と、可動鉄心を可動する電磁コイルと、を備えている。ハウジングは、隔壁を間に設けて第1収納室及び第2収納室が形成され、隔壁には、第1収納室及び第2収納室を連通させる連通路が設けられている。
【0005】
そして、接点装置の固定接触子及び可動接触子が第1収納室に配置され、接点装置の駆動軸が第1収容室から連通路を通過して第2収容室に延在しているとともに、電磁石ユニットの可動鉄心が第2収納室に配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-87538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電磁接触器の接点機構が開閉操作を行い、一対の固定接触子の固定接点に可動接触子の一対の可動接点が接触する際には、摩耗粉、スス、溶融飛散粒子などの異物が発生する。
【0008】
特許文献1の電磁接触器は、駆動軸と連通路との間の隙間(特許文献1では第1の隙間と称している)を小さくし、第1収納室で発生した異物が第2収納室に侵入するのを防止することで、電磁石ユニットの駆動動作を安定して行うことができる。
【0009】
ところで、接点機構4が閉極状態から開極状態に移行するときに、駆動軸が軸振れする場合があり、上述したように異物の侵入防止のために駆動軸と連通路との間の隙間を小さくすると、軸振れした駆動軸が連通路の内面に接触することで、接点機構の開閉動作に悪影響を与えてしまうおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、駆動軸が軸振れしても接点機構の開閉動作を安定して行うことができ、電磁石ユニット側への異物の侵入を防止することで電磁石ユニットの駆動動作を安定して行うことができる電磁接触器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電磁接触器は、固定接点を有する一対の固定接触子、固定接点に接離可能な一対の可動接点を有する可動接触子及び可動接触子に接続された駆動軸を有する接点機構と、固定接点に可動接点が接離する接離方向に駆動軸を介して接続された可動プランジャを有する電磁石ユニットと、接点機構及び可動プランジャを収容する収容空間と、を備え、収容空間は、接点機構を収容する接点機構収容空間と、可動プランジャを収容する可動プランジャ収容空間とが仕切り部材によって仕切られ、駆動軸が、仕切り部材に形成した貫通孔に挿通されて可動接触子及び可動プランジャに接続され駆動軸の外周と仕切り部材の貫通孔との間の隙間を閉塞する異物侵入防止部材が、駆動軸の軸振れ状態で駆動軸の外周及び仕切り部材に摺動自在に配置されているとともに、異物侵入防止部材は、押し付け部材により仕切り部材に向けて押し付けられながら前記隙間を閉塞している。ここで、異物とは、接点機構の固定接点に可動接点が接触するときに発生する摩耗粉、スス、溶融飛散粒子である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電磁接触器は、駆動軸の外周と仕切り部材の貫通孔との間の隙間を閉塞する異物侵入防止部材が、駆動軸の軸振れ状態で駆動軸の外周及び仕切り部材に摺動自在に配置されていることから、駆動軸が軸振れしても電磁石ユニット側への異物の侵入するのを防止するとともに、接点機構の開閉動作と電磁石ユニットの駆動動作を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る一実施形態の電磁接触器を示す断面図である。
図2】本発明に係る一実施形態の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明に係る実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0015】
また、以下に示す複数の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
なお、以下の説明で記載されている「上」、「下」、「左」、「右」、「底」、「前」、「後」、「長尺方向」、「短尺方向」等の方向を示す用語は、添付図面の方向を参照して用いられている。
【0017】
図1及び図2は、本発明に係る実施形態の電磁接触器を示すものである。
【0018】
図1は、本実施形態の電磁接触器1を示す断面図であり、この電磁接触器1は、接点機構4と、この接点機構4を駆動する電磁石ユニット5とを備えている。
【0019】
接点機構4は接点収納ケース6に収納されている。接点収納ケース6は、金属製の角筒体7と、この角筒体7の上端を閉塞する例えばセラミックや合成樹脂材などの絶縁材料により形成した絶縁基板8とを備えている。
【0020】
角筒体7は、下部に形成した角筒体フランジ部7aが電磁石ユニット5の後述する上部磁気ヨーク21にシール接合された状態で固定されている。絶縁基板8には、貫通孔9,10が所定間隔をあけて形成されている。
【0021】
接点機構4は、絶縁基板8に導体部11,12を介して固定されている一対の固定接触子13,14(以下、第1固定接触子13、第2固定接触子14と称する)と、これら第1及び第2固定接触子13,14に設けた第1及び第2固定接点13a,14aと対向する第1及び第2可動接点15a,15bを有する可動接触子15とを備えている。
【0022】
第1固定接触子13は、導電性のある材料からなる側面視C字形状の導電板であり、可動接触子15の長手方向の両端側に離間し、絶縁基板8に導体部11,12を介して固定されている。
【0023】
第1固定接触子13は、可動接触子15の第1可動接点15a側に配置されており、可動接触子15の第1可動接点15aに下側から対向し、第1固定接点13aを上面に設けた第1導電板部13bと、可動接触子15から離れた第1導電板部13bの端部から折り曲げられて上方に延在している第2導電板部13cと、第2導電板部13cの上端から折り曲げられて可動接触子15の上方に延在している第3導電板部13dと、を備えている。
【0024】
また、第2固定接触子14は、可動接触子15の第2可動接点15b側に配置されており、可動接触子15の第2可動接点15bに下側から対向し、第2固定接点14aを上面に設けた第1導電板部14bと、可動接触子15から離れた第1導電板部14bの端部から折り曲げられて上方に延在している第2導電板部14cと、第2導電板部14cの上端から折り曲げられて可動接触子15の上方に延在している第3導電板部14dと、を備えている。
【0025】
第1固定接触子13には、アークの発生を規制する合成樹脂製のアークバリア16が装着されている。第2固定接触子14にも、アークの発生を規制する合成樹脂製のアークバリア17が装着されている。これにより、第1固定接触子13の内周面は、第1固定接点13a及び第1導電板部13bが露出し、第2固定接触子14の内周面は、第2固定接点14a及び第1導電板部14bが露出している。
【0026】
また、第1固定接触子13の第2導電板部13cの内側面及び第2固定接触子14の第2導電板部14cの内側面を覆うように、平面から見てC字状の磁性体板19a,19bが装着されている。これにより、第2導電板部13c、14cを流れる電流によって発生する磁場をシールドすることができる。
【0027】
可動接触子15は、導電性材料により図1の左右方向に長尺な直線状の導電板であり、長手方向中央に、駆動軸23を挿通する貫通孔24が形成されており、長手方向の両端部の下面に第1可動接点15a及び第2可動接点15bが形成されている。
【0028】
駆動軸23の長手方向の中央部には外方に突出する円形状の駆動軸フランジ部25が形成されており、可動接触子15の貫通孔24に駆動軸23を挿入することで、可動接触子15の中央下部が駆動軸フランジ部25に当接し、駆動軸23の上部から接触スプリング26を挿入する。そして、駆動軸23の上端に固定したスプリング受け27aとCリング27bとで接触スプリング26の上端を固定することで、接触スプリング26が可動接触子15に対して所定の付勢力を付与している。
【0029】
電磁石ユニット5は、側面から見て扁平なU字形状の下部磁気ヨーク28を有し、この下部磁気ヨーク28の底板部の中央部に固定プランジャ29が配置され、この固定プランジャ29の外側にスプール30が配置されている。
【0030】
スプール30は、固定プランジャ29を挿通する中央円筒部31と、この中央円筒部31の下端部から半径方向外方に突出する下フランジ部32と、中央円筒部31の上端より僅かに下側から半径方向外方に突出する上フランジ部33とで構成されている。そして、中央円筒部31、下フランジ部32及び上フランジ部33で構成される収納空間に励磁コイル34が巻装されている。
【0031】
下部磁気ヨーク28の開放端となる上端に固定した上部磁気ヨーク21には、中央部にスプール30の中央円筒部31に対向する貫通孔21aが形成されている。
【0032】
スプール30の中央円筒部31内に挿入された固定プランジャ29の上部は、有底筒状に形成されたキャップ35で覆われ、このキャップ35の開放端に半径方向外方に延長して形成されたフランジ部35aが配置されている。このフランジ部35aは、上部磁気ヨーク21の下面にシール接合されている。
【0033】
そして、キャップ35の内部に、可動プランジャ22を構成する円筒形状のプランジャ本体22aが上下に摺動可能に挿入される。可動プランジャ22は、上部磁気ヨーク21から上方に突出するプランジャ本体22aの上端部から半径方向外方に突出する周鍔部22bが形成されている。
【0034】
上部磁気ヨーク21の上面には、環状に形成された駆動用永久磁石37が可動プランジャ22の周鍔部22bを囲むように固定されている。この駆動用永久磁石37は上下方向すなわち厚み方向に例えば上端側をN極とし、下端側をS極とするように着磁されている。
【0035】
駆動用永久磁石37の上端面に、駆動用永久磁石37と同一外径で可動プランジャ22の周鍔部22bの外径より小さい内径の貫通孔38を有する補助ヨーク39が固定されており、この補助ヨーク39の下面に、可動プランジャ22の周鍔部22bが接触する。
【0036】
そして、駆動軸23の下方から復帰スプリング36及び座金40を挿通し、復帰スプリング36の一端が駆動軸フランジ部25に当接し、復帰スプリング36の他端が座金40に当接した状態で、駆動軸23の外周に復帰スプリング36及び座金40を装着する。
【0037】
そして、復帰スプリング36及び座金40を装着した駆動軸23の下部を、補助ヨーク39の貫通孔38に挿通し、可動プランジャ22に挿通した後に固定すると、復帰スプリング36は、駆動軸23の駆動軸フランジ部25と座金40との間に配置される。そして、復帰スプリング36は、座金40及び補助ヨーク39を駆動用永久磁石37に押し付ける方向に所定の付勢力を作用する。
【0038】
図2に示すように、駆動軸23の外周に装着した座金40は、貫通孔aの内径が駆動軸23の外径より僅かに大きい寸法に設定されている。また、座金40は、駆動軸23と貫通孔38との間の隙間を閉塞しながら、復帰スプリング36の付勢力を受けて補助ヨーク39の上面に当接している。
【0039】
そして、駆動軸23が挿通されている可動プランジャ22の周鍔部22bの上面開口部は、下方に向うに従い縮径されたテーパ面22cが形成されている。
【0040】
このテーパ面22cに対向する駆動軸23の外周位置には、軸方向に所定長さだけ縮径された凹環形状の異物回収ポケット41が形成されている。
【0041】
図1に戻り、接点収納ケース6の内部には、有底筒形状の絶縁ホルダー18が配置されている。絶縁ホルダー18は、溶融したときに水素ガスが発生する絶縁性の合成樹脂によって形成されている。絶縁ホルダー18は、接点収納ケース6の角筒体7の内側に沿って延在する筒状絶縁壁18aと、筒状絶縁壁18aの下部に形成されて上部磁気ヨーク21、駆動用永久磁石36及び補助ヨーク39の上面を覆う絶縁底18bと、を備えている。そして、絶縁底18bには、駆動軸23及び駆動軸23の外周に装着した復帰スプリング36が遊挿された挿通孔18cが形成されている。
【0042】
そして、絶縁ホルダー18の絶縁底18bの下面と補助ヨーク39の上面との間には、絶縁ホルダー固定用スプリング42が配置されている。この絶縁ホルダー固定用スプリング42は、絶縁底18bの一部を、第1及び第2固定接触子13,14の第1導電板部13b、14bに所定の付勢力で押し付けることで、絶縁ホルダー18を絶縁基板8側に固定する部材である。
【0043】
そして、貫通孔21aを形成した上部磁気ヨーク21と、上部磁気ヨーク21の上面に接合され、内部に接点機構4を収容する接点収納ケース6と、上部磁気ヨーク21の下面に接合され、内部に可動プランジャ22のプランジャ本体22aを収納するキャップ35とにより、接点機構4、駆動軸23及び可動プランジャ22を収容する密閉された収容空間Rが形成されている。この密閉された収容室Rに、水素ガス、窒素ガス、水素及び窒素の混合ガス、空気、SF等のガスが封入されている。
【0044】
収容空間Rは、駆動軸23を挿通した仕切り部材によって接点機構4を収容する接点機構収容空間R1と、可動プランジャ22を収容する可動プランジャ収容空間R2とが仕切られている。
【0045】
上述した仕切り部材は、上部磁気ヨーク21と、駆動用永久磁石37と、駆動軸23が挿通する貫通孔38を形成した補助ヨーク39と、駆動軸23の外周に装着されて補助ヨーク39の上面に当接し駆動軸23と貫通孔38との間の隙間を閉塞する座金40と、で構成されている。
【0046】
次に、本実施形態の電磁接触器1の動作及び作用について説明する。
【0047】
今、電磁石ユニット5の励磁コイル34が無励磁状態にあって、電磁石ユニット5で可動プランジャ22を下降させる励磁力を発生していない釈放状態にあるものとする。
【0048】
この釈放状態では、可動プランジャ22が復帰スプリング36によって、上部磁気ヨーク21から離れる上方向に付勢される。これと同時に、駆動用永久磁石37の磁力による吸引力が補助ヨーク39に作用し、可動プランジャ22の周鍔部22bが吸引される。このため、可動プランジャ22の周鍔部22bの上面が補助ヨーク39の下面に接触している。
【0049】
可動プランジャ22に駆動軸23を介して連結されている接点機構4の可動接触子15の第1可動接点15a,第2可動接点15bが、第1固定接触子13の第1固定接点13a、第2固定接触子14の第2固定接点14aに対して離間している。これにより、第1固定接触子13及び第2固定接触子14の間の電流路が遮断状態にあり、接点機構4が開極状態となっている。
【0050】
この接点機構4が開極状態から、電磁石ユニット5の励磁コイル34に通電すると、この電磁石ユニット5で励磁力が発生し、可動プランジャ22を復帰スプリング36の付勢力及び駆動用永久磁石37の吸引力に抗して下方に押し下げる。この可動プランジャ22の下降が、周鍔部22bの下面が上部磁気ヨーク21の上面に当たることで停止する。
【0051】
このように、可動プランジャ22が下降することにより、可動プランジャ22に駆動軸23を介して連結されている可動接触子15も下降し、接点機構4の可動接触子15の第1可動接点15a,第2可動接点15bが、第1固定接触子13の第1固定接点13a、第2固定接触子14の第2固定接点14aに対して接触スプリング26の接触圧で接触する。
【0052】
このため、電力供給源の大電流が、第1固定接触子13、可動接触子15、第2固定接触子14を通じて負荷装置に供給され閉極状態となる。
【0053】
この接点機構4の閉極状態から、負荷装置への電流供給を遮断する場合には、電磁石ユニット5の励磁コイル34への励磁を停止する。
【0054】
励磁コイル34への励磁を停止すると、電磁石ユニット5で可動プランジャ22を下方に移動させる励磁力がなくなることにより、可動プランジャ22が復帰スプリング36の付勢力によって上昇し、周鍔部22bが補助ヨーク39に近づくに従って駆動用永久磁石37の吸引力が増加する。
【0055】
この可動プランジャ22が上昇することにより、駆動軸23を介して連結された可動接触子15が上昇する。これに応じて接触スプリング26で接触圧を与えているときは、可動接触子15の第1可動接点15a,第2可動接点15bが第1固定接触子13の第1固定接点13a、第2固定接触子14の第2固定接点14aに接触している。その後、上昇する駆動軸23の駆動軸フランジ部25に可動接触子15の中央部の下面が当接した時点で、可動接触子15が第1固定接触子13及び第2固定接触子14に対して上方に離間した開極状態(釈放状態)となる。
【0056】
ここで、接点機構4が開極状態及び閉極状態を繰り返すと、可動接触子15の第1可動接点15a,第2可動接点15bと、第1固定接触子13の第1固定接点13a、第2固定接触子14の第2固定接点14aとの間で、摩耗粉、スス、溶融飛散粒子などの異物が発生する。
【0057】
この異物が、絶縁ホルダー18の挿通孔18cを通過し、駆動軸23と補助ヨーク39の貫通孔38との間の隙間から可動プランジャ22側に移動しようとすると、復帰スプリング36の付勢力を受けた状態で補助ヨーク39の上面に当接している座金40が、駆動軸23と貫通孔38との間の隙間を閉塞し、可動プランジャ22側への異物の侵入が抑制される。
【0058】
また、例えば駆動軸23の外周と座金40の貫通孔40aとの僅かな隙間から微小の異物が可動プランジャ22側に侵入しても、補助ヨーク39の貫通孔38の下方位置の駆動軸23の外周に設けた異物回収ポケット41に微小の異物が回収される。このため、可動プランジャ22に侵入した微小の異物は、可動プランジャ22のプランジャ本体22aとキャップ35との摺動部などには侵入しない。
【0059】
ここで、接点機構4が閉極状態から開極状態に移行するときに、駆動軸23が軸振れする場合がある。駆動軸23が軸振れすると、駆動軸23の外周に装着されている座金40は、駆動軸23の外周を軸方向に摺動しながら、補助ヨーク39の上面を駆動軸23の軸振れ方向に沿って摺動する。
【0060】
座金40の貫通孔40aは駆動軸23の外径より僅かに大きい外径に設定されて駆動軸23の外周に遊挿されており、復帰スプリング36の付勢力で補助ヨーク39の上面に押し付けられているので、駆動軸23の軸振れの際に、座金40と駆動軸23の外周との間の摺動により発生する摩擦と、座金40と補助ヨーク39の上面との摺動により発生する摩擦は小さい値となる。
【0061】
このように、本実施形態は、接点機構収容空間R1に配置されている接点機構4で発生した異物が可動プランジャ収容空間R2側に移動しようとすると、仕切り部材を構成する駆動軸23に装着した座金40が、補助ヨーク39に形成した貫通孔38と駆動軸23との間の隙間を閉塞するので、可動プランジャ収容空間R2への異物の侵入を抑制することができる。
【0062】
また、駆動軸23の外周と座金40の貫通孔40aとの僅かな隙間などから微小の異物が可動プランジャ収容空間R2側に侵入すると、補助ヨーク39の貫通孔38の下方位置の駆動軸23に設けた異物回収ポケット41に微小の異物が回収されるので、接点機構4の開閉動作及び電磁石ユニット5の駆動動作を安定して行うことができる。
【0063】
また、接点機構4の開極動作及び閉極動作で駆動軸23が軸振れしても、駆動軸23の外周に遊挿され、復帰スプリング36の付勢力で補助ヨーク39の上面に押し付けられている座金は、駆動軸23の外周及び補助ヨーク39の上面との間に小さな摩擦しか発生せずに摺動し、摩擦による金属粉などが発生しない。
【0064】
したがって、本実施形態の電磁接触器1は、駆動軸23が軸振れしても接点機構4の開閉動作を安定して行うことができ、電磁石ユニット5側への異物の侵入を防止することで電磁石ユニット5の駆動動作を安定して行うことができる。
【0065】
なお、本実施形態では、補助ヨーク39に形成した貫通孔38と駆動軸23との間の隙間を閉塞する異物侵入防止部材として平板環状の座金40を使用したが、平板環状の形状に限るものではなく、金属材料以外の座金40を使用してもよい。
【0066】
また、本実施形態では、駆動軸23の外周に、補助ヨーク39の貫通孔38の下方位置となる異物回収ポケット41を設けたが、本発明の要旨がこれに限定されるものではなく、例えば、可動プランジャ22の周鍔部22bの上面開口部に、補助ヨーク39の貫通孔38の下方位置となる部位に、異物回収ポケットを設けてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 電磁接触器
2 収容室
2A 接点機構収容空間
2B 可動プランジャ収容空間
4 接点機構
5 電磁石ユニット
6 接点収納ケース
7 角筒体
7a 角筒体フランジ部
8 絶縁基板
9,10 貫通孔
11,12 導体部
13 第1固定接触子
13a,14a 第1及び第2固定接点
13b,14b 第1導電板部
13c,14c 第2導電板部
13d,14d 第3導電板部
14 第2固定接触子
15 可動接触子
15a,15b 第1及び第2可動接点
16,17 アークバリア
18 絶縁ホルダー
18a 筒状絶縁壁
18b 絶縁底
18c 挿通孔
18d 絶縁筒部
19a,19b 磁性体板
21 上部磁気ヨーク(磁気ヨーク)
21a 貫通孔
22 可動プランジャ
22a プランジャ本体
22b 周鍔部
22c テーパ面
23 駆動軸
24 貫通孔
25 駆動軸フランジ部
26 接触スプリング
27a スプリング受け
27b Cリング
28 下部磁気ヨーク
29 固定プランジャ
30 スプール
31 中央円筒部
32 下フランジ部
33 上フランジ部
34 励磁コイル
35 キャップ
35a フランジ部
36 復帰スプリング
37 駆動用永久磁石
38 貫通孔
39 補助ヨーク
40 座金
40a 貫通孔
41 異物回収ポケット
42 絶縁ホルダー固定用スプリング
R 収容空間
R1 接点機構収容空間
R2 可動プランジャ収容空間
図1
図2