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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】測定方法及び測定システム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/06 20060101AFI20240109BHJP
   C12Q 1/6813 20180101ALI20240109BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20240109BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20240109BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20240109BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
C12Q1/06
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6837 Z
C12M1/34 B
C12N15/09 200
C12M1/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021030947
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131809
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2022-03-03
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】宮内 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】田口 朋之
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-531211(JP,A)
【文献】特開平08-131199(JP,A)
【文献】特開2003-038199(JP,A)
【文献】特開2015-043702(JP,A)
【文献】特開2015-181356(JP,A)
【文献】特開2004-309405(JP,A)
【文献】特表2004-518422(JP,A)
【文献】特表2001-512303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12M 1/00- 3/10
C12N 15/00-15/90
C12N 1/00- 7/08
C12N 9/00- 9/99
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体試料に含まれる微生物の存在量を測定する測定方法であって、
濃縮精製した前記微生物から抽出した核酸に、前記抽出した核酸のハイブリダイズ反応に必要な塩類及び界面活性剤を含むハイブリダイズ反応液を添加して前記ハイブリダイズ反応に供するステップと、
ハイブリダイズした核酸の発光量を測定するステップと、
前記核酸の発光量の測定値に基づいて前記抽出した核酸の量を推定するステップと、
前記抽出した核酸の量の推定値に基づいて、前記検体試料に含まれる微生物の存在量を算出するステップと
を含み、
前記ハイブリダイズ反応に供するステップで、マイクロアレイが有する複数のスポットそれぞれにおいて前記抽出した核酸をハイブリダイズ反応に供して前記マイクロアレイが有する各スポットの固相面に固定化させ、かつ、蛍光分子で修飾されているプローブに前記核酸を捕捉させ、
前記ハイブリダイズした核酸の発光量を測定するステップで、複数の時点で、前記マイクロアレイが有する各スポットにおける発光量を測定し、
前記抽出した核酸の量を推定するステップで、前記複数の時点のそれぞれで測定した発光量に基づいて前記核酸の量を推定する、測定方法。
【請求項2】
検体試料に含まれる微生物の存在量を測定する測定システムであって、
濃縮精製した前記微生物から抽出した核酸に、前記抽出した核酸のハイブリダイズ反応に必要な塩類及び界面活性剤を含むハイブリダイズ反応液を添加して、マイクロアレイが有する複数のスポットそれぞれにおいて前記抽出した核酸をハイブリダイズ反応に供して前記マイクロアレイが有する各スポットの固相面に固定化させ、かつ、蛍光分子で修飾されているプローブに前記核酸を捕捉させるハイブリダイズ反応装置と、
前記ハイブリダイズ反応装置でプローブにハイブリダイズした核酸の、前記マイクロアレイが有する各スポットにおける発光量を測定し、前記核酸の発光量の測定値に基づいて前記抽出した核酸の量を推定する核酸検出装置と
を備え、
前記核酸検出装置は、演算装置に前記抽出した核酸の量の推定値に基づいて、前記検体試料に含まれる微生物の存在量を算出させ、前記演算装置の算出結果を前記微生物の存在量の測定結果として取得
前記核酸検出装置は、複数の時点で前記発光量を測定し、前記演算装置に前記複数の時点のそれぞれで測定した発光量に基づいて前記核酸の量を推定させる、測定システム。
【請求項3】
陰電荷膜法によって前記検体試料に含まれる微生物を濃縮精製する微生物濃縮装置を更に備える、請求項2に記載の測定システム。
【請求項4】
前記演算装置は、前記マイクロアレイの各スポットの輝度値を前記発光量の絶対値として算出し、前記発光量の絶対値と標識の理論光量とに基づいてハイブリダイズした核酸の数を算出する、請求項2又は3に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、微生物の定量的な測定方法及び測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、サンプルに対して遺伝子の増幅を行い、増幅後の遺伝子を検出する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-43702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遺伝子の検出結果に基づいて微生物量を測定する場合における利便性の向上が求められる。
【0005】
本開示は、微生物量測定における利便性を向上できる測定方法及び測定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
幾つかの実施形態に係る測定方法は、検体試料に含まれる微生物の存在量を測定する測定方法であって、前記検体試料に含まれる微生物を濃縮精製するステップと、濃縮精製した微生物から核酸を抽出するステップと、抽出した核酸に、前記抽出した核酸のハイブリダイズ反応に必要な塩類及び界面活性剤を含むハイブリダイズ反応液を添加して前記ハイブリダイズ反応に供するステップと、ハイブリダイズした核酸の発光量を測定するステップと、前記核酸の発光量の測定値に基づいて前記抽出した核酸の量を推定するステップと、前記抽出した核酸の量の推定値に基づいて、前記検体試料に含まれる微生物の存在量を算出するステップとを含む。このようにすることで、PCR(Polymerase Chain Reaction)工程を実施せずに核酸の量が推定される。PCR工程を実施せずに核酸の量を推定することによって、核酸の量の推定値に対するPCR反応効率の影響が低減される。PCR反応効率の影響の低減によって、核酸の量の推定値に基づいて実施される標的微生物の定量的な測定精度が高まる。その結果、微生物測定における利便性が向上する。
【0007】
一実施形態において、前記測定方法は、前記ハイブリダイズ反応に供するステップで、マイクロアレイが有する複数のスポットそれぞれにおいて前記抽出した核酸をハイブリダイズ反応に供し、前記ハイブリダイズした核酸の発光量を測定するステップで、前記マイクロアレイが有する各スポットにおける発光量を測定してよい。このようにすることで、同時に多種類の微生物が定量的かつ高感度に測定される。その結果、微生物測定における利便性が向上する。
【0008】
一実施形態において、前記測定方法は、前記ハイブリダイズ反応に供するステップで、前記マイクロアレイが有する各スポットの固相面に固定化され、かつ、蛍光分子で修飾されているプローブに前記核酸を捕捉させてよい。このようにすることで、各スポットに接液した検体サンプルに含まれる核酸の量が各スポットの輝度値として測定される。その結果、微生物の定量測定の精度が高められる。
【0009】
幾つかの実施形態に係る測定システムは、検体試料に含まれる微生物の存在量を測定する。前記測定システムは、検体試料に含まれる微生物を濃縮精製する微生物濃縮装置と、前記微生物濃縮装置で濃縮精製した微生物から核酸を抽出する核酸抽出装置と、前記核酸抽出装置で抽出した核酸を前記ハイブリダイズ反応に供するハイブリダイズ反応装置と、前記ハイブリダイズ反応装置でプローブにハイブリダイズした核酸の発光量を測定し、前記核酸の発光量の測定値に基づいて前記抽出した核酸の量を推定する核酸検出装置とを備える。前記核酸検出装置は、演算装置に前記抽出した核酸の量の推定値に基づいて、前記検体試料に含まれる微生物の存在量を算出させ、前記演算装置の算出結果を前記微生物の存在量の測定結果として取得する。このようにすることで、PCR(Polymerase Chain Reaction)工程を実施せずに核酸の量が推定される。PCR工程を実施せずに核酸の量を推定することによって、核酸の量の推定値に対するPCR反応効率の影響が低減される。PCR反応効率の影響の低減によって、核酸の量の推定値に基づいて実施される標的微生物の定量的な測定精度が高まる。その結果、微生物測定における利便性が向上する。
【0010】
一実施形態に係る前記測定システムにおいて、前記微生物濃縮装置が陰電荷膜法によって前記検体試料に含まれる微生物を濃縮精製してよい。このようにすることで、標的微生物より小さい孔径のフィルタによる通常のフィルタリングに対して、目詰まり等の影響が小さく、大容量のサンプルが処理できて濃縮率を高めることが期待される。
【発明の効果】
【0011】
本開示に係る測定方法及び測定システムによれば、微生物量測定における利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】比較例に係るqPCR法による定量測定の手順例を示すフローチャートである。
図2】比較例に係るマルチプレックスqPCRの前工程の手順例を示すフローチャートである。
図3】比較例に係るマイクロアレイ法による定量測定の手順例を示すフローチャートである。
図4】比較例に係るマイクロアレイ法の前工程の手順例を示すフローチャートである。
図5】一実施形態に係る測定方法の手順例を示すフローチャートである。
図6】一実施形態に係る測定システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る実施形態が図面を参照して説明される。本開示の一実施形態に係る測定方法は、検体試料に含まれる少なくとも2種類の微生物の存在量を測定する方法である。
【0014】
(比較例)
まず、本実施形態に係る測定方法に対する比較例が説明される。検体試料中の微生物量を複数種同時に定量測定する方法の比較例として、以下、マルチプレックスqPCR(quantitative Polymerase Chain Reaction)法、及び、マイクロアレイ法が説明される。
【0015】
<qPCR法による定量測定>
図1に、qPCR法による定量測定の手順例が示される。検体試料から核酸が抽出されて精製される(ステップS901)。精製された試料に反応液が添加される(ステップS902)。検体試料と別に、既知の濃度の標準核酸に反応液を添加することによって検量用試料が調製される(ステップS903)。検体試料からの核酸及び標準核酸のリアルタイムPCR測定が行われる(ステップS904)。既知の濃度の標準核酸のリアルタイムPCR測定のCt値と、検体試料からの核酸のCt値とを比較するデータ解析が行われる(ステップS905)。データ解析によって推定された検体試料の核酸量に基づいて、微生物量が算出される(ステップS906)。
【0016】
ステップS903の検量用の濃度既知の標準核酸の調製は、例えば1/10希釈系列を調製したり、検体試料からの核酸濃度が含まれる範囲で調製したりすることによって実行される。検量用の濃度既知の標準核酸の調製は、qPCR装置の検出下限以上の濃度、かつ、反応阻害により定量性が失われないようにあらかじめ装置仕様に応じた濃度範囲になるように実行される必要がある。
【0017】
検体試料からの核酸は、qPCR装置の検出下限以上の濃度、かつ、反応阻害により定量性が失われるようにあらかじめ装置仕様に応じた濃度範囲に調製されるように、希釈系列をサンプルとすることがよい。
【0018】
qPCR反応において、核酸増幅の測定のためにインターカレータ(非特異的に2本鎖核酸を染色する蛍光試薬)又は蛍光核酸プローブが用いられる。蛍光核酸プローブは、TaqManプローブとも称される。
【0019】
図2に、qPCR法をベースとして複数核酸を同時検出するためのマルチプレックスqPCRを実施するために必要となる前工程としてプライマセットを構築する手順例が示される。まず、標的微生物が有している遺伝子又はその他の核酸の中から、標的微生物に特有の核酸が標的核酸として選定される(ステップS911)。次に、ステップS911の手順で選定された標的核酸の核酸配列が取得される(ステップS912)。標的核酸の核酸配列は、公開されている核酸配列データベース等に含まれる核酸配列から取得されてよいし、核酸シーケンス等の手法によって取得されてもよい。
【0020】
次に、ステップS912の手順で取得された標的核酸配列に基づいて、標的核酸を増幅させるために必要なプライマ配列が設計される(ステップS913)。プライマ配列は、プライマ長がフォワードプライマとリバースプライマとでTm値が同等になるように設計される。Tm値は、融解温度とも称され、プライマがターゲット配列と50%の割合で2本鎖を形成する温度を表す。また、設計されたプライマによって標的核酸を効率的に増幅させることができるか確認するために、PCR増幅反応が実行される。PCR増幅反応は、公知の情報に基づいて反応に必要となる鋳型核酸、塩基類及び伸長酵素、並びに、酵素反応に必要となる塩類を添加した緩衝液中で実行される。また、PCR増幅反応は、アニーリング、伸長、及び、熱変性解離の3つのステップで構成される、使用する酵素に適した温度サイクルで制御される。温度サイクルは、伸長と熱変性解離とを同一の温度で実行する2つのステップで構成されてもよい。
【0021】
PCR増幅反応に続いて、ゲル電気泳動等によってPCR増幅産物が生成されたか確認するために、確認項目が満たされたかが判定される(ステップS914)。確認項目として、増幅量、増幅長、非特異産物の増幅の有無、又は、プライマダイマの生成の有無等が挙げられる。確認項目が条件を満たさない場合、プライマの改良又は再設計が実行される。そして、改良又は再設計されたプライマが標的核酸を増幅させることができるか確認する。確認項目が条件を満たすように設計されたプライマが、個別単独プライマとして決定される。
【0022】
また、複数の種類の核酸を同時に検出しようとする場合、各種類の核酸について個別単独プライマが構築される必要がある。全ての標的核酸について個別単独プライマを構築した後、各種類の核酸について構築した個別単独プライマを混合したプライマセットにおいてPCR増幅が実行される。そして、プライマセットによるPCR増幅でPCR増幅産物が生成されたか確認するために、確認項目が満たされたが判定される。プライマセットによるPCR増幅の確認項目は、個別単独プライマによるPCR増幅の確認項目と同じであってよい。
【0023】
プライマセットにおけるPCR増幅で、例えば、非特異産物が生じること等によって確認項目が条件を満たさない場合(ステップS914:NO)、ステップS913の手順に戻って、個別単独プライマが再設計される。確認項目が条件を満たした場合(ステップS914:YES)、非特異産物が生じないプライマセットの構築が完了する(ステップS915)。
【0024】
以上述べてきたqPCR法は、以下の問題点を有する。標的核酸種ごとに異なる波長で検出されるため、蛍光波長の制限によって同時に検出される種類数が6種類程度に制限される。非特異PCR増幅産物が生じないプライマを作製するために実行する設計、試作及び評価に費やされる開発コスト及び時間が増大する。特にマルチプレックスqPCRにおいて複数種類のプライマの交差反応の確認のために費やされる開発コスト及び時間が増大する。希釈系列で複数の検量用標準サンプルを同時に反応に供することによる反応数の増大が試薬等の消耗品コスト及び手間を増大させる。標的核酸ごとにPCR反応効率が異なることによって、検量用標準サンプルが標的核酸ごとに必要となる。そのため反応数が多くなる。反応数の増大が試薬等の消耗品コスト及び手間を増大させる。例えば、5種類の菌を検出する場合、5つの検体試料と5点検量のための標準サンプルとを組み合わせた25種類の反応が必要になる。プライマセットを構築した後で標的微生物を追加するために費やされる開発コスト及び時間が増大する。未知検体のコンタミによる非特異産物の増幅の有無、又は、プライマダイマの生成の有無によって、擬陽性検出又は定量性の低下が生じる。サンプル中に含まれる酵素反応の阻害物質によってPCR反応効率が変化する。PCR反応効率の変化がqPCRの定量性を低下させる。
【0025】
<マイクロアレイ法による定量測定>
図3に、マイクロアレイ法による定量測定の手順例が示される。検体試料から核酸が抽出されて精製される(ステップS921)。精製された試料にPCR反応液が添加される(ステップS922)。試料がPCR増幅反応に供され、ラベル化される(ステップS923)。PCR増幅された試料にハイブリダイズ反応液が添加される(ステップS924)。マイクロアレイ上のプローブにおいて、検体試料からの核酸がハイブリダイズ反応に供される(ステップS925)。反応液が洗浄によって除去される(ステップS926)。ハイブリダイズ反応に供されたプローブの画像を取得するために、マイクロアレイ上のプローブがスキャンされる(ステップS927)。プローブにハイブリダイズ固定されたラベルの光量を数値化し、あらかじめ取得した既知濃度の標準核酸におけるラベルの光量と比較するデータ解析が実行される(ステップS928)。データ解析によって推定された核酸量に基づいて、微生物量が算出される(ステップS929)。
【0026】
ステップS923で試料をPCR増幅反応に供するために、qPCR法に関する説明でも述べたように、プライマセットの構築工程が必要となる。一般的に、マイクロアレイで使用されるプライマにおいて、PCR増幅産物がラベル化されるように蛍光分子等のラベルが標識されている。
【0027】
図4に、マイクロアレイ法をベースとして複数核酸を同時検出するために必要となる前工程としてのプローブ構築手順例が示される。まず、標的微生物が有している遺伝子又はその他の核酸から、標的微生物に特異的な標的核酸が選定される(ステップS931)。次に、選定された標的核酸の核酸配列が入手される(ステップS932)。次に、核酸配列から標的核酸を検出させるために必要なプローブ配列が設計され試作される(ステップS933)。試作されたプローブを個別の核酸に対してハイブリダイズ反応に供することによって、試作されたプローブが検出能を有するか判定される(ステップS934)。試作されたプローブが個別の核酸に対して検出能を有しない場合(ステップS934:NO)、ステップS933の手順に戻って、プローブ配列が再設計される。試作されたプローブが個別の核酸に対して検出能を有する場合(ステップS934:YES)、試作されたプローブが複数の核酸を含む試料に対して検出能を有するか判定される(ステップS935)。試作されたプローブが複数の核酸を含むに対して検出能を有しない場合(ステップS935:NO)、ステップS933の手順に戻って、プローブ配列が再設計される。試作されたプローブが複数の核酸を含む試料に対して検出能を有する場合(ステップS935:YES)、プローブセットの構築が完了する(ステップS936)。
【0028】
ステップS934及びS935の判定において確認する項目は、例えば、プローブにハイブリダイズ固定されたラベルの光量を含む。確認する項目は、これに限られず、標的核酸以外の核酸がハイブリダイズ固定されないか、又は、プライマがハイブリダイズ固定される交差反応がないか等の擬陽性要因を排除するための項目を含む。
【0029】
ステップS932の核酸配列の入手において、公的に公開されている核酸配列データベース等から対応する核酸配列が入手されてよい。また、標的核酸配列は、独自に核酸シーケンス等の手法によって入手されてもよい。ステップS933のプローブ配列の設計において、プローブ長は、プローブセットの各プローブのTm値が同等になるように設計される。ステップS934及びS935で実行されるハイブリダイズ反応は、公知の情報に基づいて反応に必要となる塩類又は界面活性剤を添加した緩衝液中で実施される。また、ハイブリダイズ反応は、設計したプローブのTm値に適した温度でインキュベートすることによって実施される。
【0030】
他に、蛍光分子が付加された蛍光プローブと、蛍光分子の蛍光を消光する消光分子が付加された消光プローブとが検出プローブとして設けられた核酸配列計測用デバイス(DNAチップ)を用いてターゲットを計測する方法が考えられる。この方法によって、ターゲットに対する蛍光分子の付加、及びDNAチップの洗浄(捕集されていないターゲット等を除去するための洗浄)を行うことなくターゲットを計測することが可能である。
【0031】
以上述べてきたマイクロアレイ法は、以下の問題点を有する。PCR工程を含むマイクロアレイ検出において、標的核酸以外の核酸のハイブリダイズ固定、又は、プライマがハイブリダイズ固定される交差反応がないプローブを作製するための設計、試作及び評価に費やされる開発コスト及び時間が増大する。PCR工程を含むマイクロアレイ検出において、標的核酸ごとにPCR反応効率が異なることが微生物量の算出の定量性に影響を及ぼす。PCR工程を含むマイクロアレイ検出において、サンプル中に含まれる酵素反応の阻害物質によってPCR反応効率が変化する。PCR反応効率の変化が微生物量の算出の定量性を低下させる。洗浄工程によって、ハイブリダイズした標的核酸の損失又はマイクロアレイ上で隣接するサンプルのコンタミネーションによる擬陽性が生じる。擬陽性の発生は、定量性を低下させる。マイクロアレイの感度はqPCRに対して低い。そのため、PCR工程を除いた場合の検出下限が高い。
【0032】
以上述べてきたように、検体試料に含まれる微生物量を測定する方法の比較例として、種々の方法が考えられる。各種の方法は、上述したように問題点を有する。上述してきた問題点に鑑みて、以下、本開示に係る測定方法が説明される。
【0033】
(本開示に係る実施形態)
本開示の一実施形態に係る測定方法は、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、同時に多種類の微生物を定量的かつ高感度に測定できる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、検体試料の濃縮精製工程を含むPCR工程を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、標的微生物を高感度に測定できる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、PCR反応効率の影響を排除し標的微生物を定量的に測定できる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、ラベル化を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、ラベル化効率の影響を排除し標的微生物を定量的に測定できる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、マイクロアレイ検出を実行することによって、標的微生物種が増えた場合においても、qPCRに比して検査コストが増大しないように測定できる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、プライマの開発コストと時間を減少させる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、PCR反応の試薬等の消耗品コスト及び手間を減少させる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、プローブ開発にかかるプライマとの交差反応をなくし開発を容易にする結果、開発コストを低減できる。また、本開示の一実施形態に係る測定方法は、洗浄工程を除いたマイクロアレイ検出を実行することによって、洗浄による擬陽性リスク又は定量性低下リスクを低減できる。
【0034】
(測定方法の手順例)
本開示の一実施形態に係る測定方法は、図5及び図6に例示されるフローチャートの手順として実行される。まず、図5を参照して、マイクロアレイ検出の実施例の工程が説明される。
【0035】
検体試料から標的微生物を回収するために、検体試料が濃縮精製される(ステップS1)。濃縮精製された標的微生物から核酸が抽出される(ステップS2)。核酸を抽出した試料にハイブリダイズ反応液が添加される(ステップS3)。ハイブリダイズ反応液を添加した核酸抽出液がハイブリダイズ反応に供される(ステップS4)。ステップS4の手順において、核酸抽出液は、マイクロアレイ上にスポット状に固定化されたプローブに接液させられる。ハイブリダイズ反応後のマイクロアレイの各プローブの蛍光画像を取得するために、マイクロアレイがマイクロアレイスキャンされる(ステップS5)。蛍光画像は、ハイブリダイズした核酸の発光量の測定のために取得される。蛍光画像から得られる各スポットの輝度値と、あらかじめ取得した既知濃度の標準核酸におけるスポットの輝度値とを比較するデータ解析が実行される(ステップS6)。輝度値は、核酸の発光量の測定値に対応する。データ解析によって推定された核酸の量に基づいて、微生物量が算出される(ステップS7)。データ解析によって推定された核酸の量は、抽出した核酸の量の推定値に対応する。
【0036】
図6に例示されるように、本実施形態に係る測定方法を実行する測定システム1は、微生物濃縮装置10と、核酸抽出装置20と、ハイブリダイズ反応装置30と、核酸検出装置40とを備える。図6において、各構成要素を結合する実線の矢印は、標的微生物又は標的核酸を含む試料の流れを表している。測定システム1は、試料の流れの上流から下流に向けて、微生物濃縮装置10、核酸抽出装置20、ハイブリダイズ反応装置30及び核酸検出装置40の順に備える。図6において、破線の矢印は、核酸検出装置40から測定結果が出力されることを表している。
【0037】
微生物濃縮装置10は、標的微生物を陰電荷膜法によって濃縮精製を実施する。濃縮精製する検体サンプルは、微生物が含まれる液体または固体に付着した微生物を液体に分散させたものであるとする。細菌及びウイルス等を含む水中の微生物は、表面電荷が弱酸性である領域において等電点が存在し、中性からアルカリ性の水域において負電荷を帯び、酸性の水域において正電荷を帯びる性質を有する。陰電荷膜法は、この性質を利用して水中から微生物を捕捉できる。陰電荷膜法は、標的微生物より小さい孔径のフィルタによる通常のフィルタリングに対して、目詰まり等の影響が小さく、大容量のサンプルが処理できて濃縮率を高めることが期待されるなどの効果を奏する。
【0038】
陰電荷膜法は、下記の文献に記載されている方法に基づいて実行されてもよい。
文献:H.Katayama他 2002. Development of a Virus concentration Method and Its Application to Detection of Enterovirus and Norwalk Virus from Coastal Seawater. Applied and Environmental Microbiology 2002 Vol. 68. p.1033-1039
【0039】
核酸抽出装置20は、一般に実施される市販キットを用いた化学的又は物理的な処理によって抽出精製を実施できる。化学的な核酸抽出処理は、フェノール、微生物の細胞膜を分解する酵素、界面活性剤、核酸を安定化させるための塩類、ヌクレアーゼを不活性化して核酸の分解を防ぐキレート剤、若しくは、pH緩衝液が含まれるバッファ等による作用、又は、これらの作用に熱処理等を加えることによって実施されてよい。物理的な核酸抽出処理は、ホモジナイザーペッスル、超音波装置、凍結破砕装置、ビーズ振盪、又は、高圧式ホモジナイザ等によって実施されてよい。抽出した核酸は、必要に応じてフェノールクロロホルム抽出、クロロホルム抽出、エタノール沈殿、市販キット化もされているスピンカラム法、又は、磁性ビーズ法等の手法によって精製されてよい。核酸抽出液にハイブリダイズ反応液が添加される。ハイブリダイズ反応液は、核酸のハイブリダイズに必要な塩類及び界面活性剤を含む。例えば終濃度5×SSC等の緩衝液が用いられてよい。
【0040】
ハイブリダイズ反応装置30は、ハイブリダイズ反応液が添加された核酸抽出液を、プローブに接液させた状態でハイブリダイズ反応に供する。ハイブリダイズ反応装置30において、マイクロアレイ上に設定された複数種類のプローブのスポット集合体である1つ又は複数のブロックと1対1で設置されたサンプルを保持するチャンバ等に核酸抽出液が入れられ、核酸抽出液がマイクロアレイ上のブロックに接液させられる。
【0041】
マイクロアレイは、複数のスポットを有する。蛍光分子で修飾されているプローブが各スポットの固相面に固定化されている。核酸抽出液は、マイクロアレイ上にスポット状に固定化されたプローブに接液させられる。核酸抽出液に含まれる核酸は、接液したプローブとハイブリダイズすることによって捕捉される。つまり、ハイブリダイズ反応装置30は、ハイブリダイズ反応によって核酸をプローブに捕捉させる。
【0042】
ハイブリダイズ反応は、プローブのTm値に対して適宜温度設定された状態でインキュベートすることで促進可能である。また、ハイブリダイズ反応は、インキュベート中のサンプル中の核酸の拡散を補助するために振盪又は回転を行うことでも促進される。ハイブリダイズ反応は、例えば60℃で30分間にわたって遮光状態でインキュベートすることで促進され得る。
【0043】
核酸検出装置40は、マイクロアレイスキャナ50と、記録装置60と、演算装置70とを備える。
【0044】
マイクロアレイスキャナ50は、マイクロアレイのプローブが固定化されたスポットの蛍光画像を取得する。マイクロアレイスキャナ50は、蛍光画像を検出信号として記録装置60又は演算装置70に出力する。マイクロアレイが透明の基材である場合、マイクロアレイスキャナ50は、ハイブリダイズ反応後にマイクロアレイのスポット面と反対の面からスポットをスキャンする。マイクロアレイが不透明の基材である場合、マイクロアレイスキャナ50は、ハイブリダイズ反応後にチャンバの底面からスポットをスキャンする。この場合、上述したチャンバのマイクロアレイと平行の面が透明である必要がある。
【0045】
演算装置70は、マイクロアレイスキャナ50から出力された蛍光画像信号に基いてスポット輝度値を算出する。スポット輝度値は、スポット部の画像認識による画像上のエリア指定及びスポット部の各ピクセルの輝度値の平均値から算出され得る。また、演算装置70は、あらかじめ任意のハイブリダイズ反応時間後に取得した既知濃度の標準核酸におけるスポットの輝度値と核酸濃度の検量線から検体サンプルの核酸濃度を推定する。演算装置70は、蛍光画像の輝度値を算出可能な任意の演算素子又は演算モジュールを含んでよい。スポット輝度値は、マイクロアレイスキャナ50の装置仕様に基づいて、光量等の任意の値に変換されてもよい。スポット輝度値は、ハイブリダイズ反応装置30によって実行される標的核酸とプローブとのハイブリダイズ反応における複数の時点の輝度値として測定されてもよい。ハイブリダイズ反応の進行中の輝度値は、反応の進行に応じて増加し得る。輝度値の増加は、標的核酸とプローブとのハイブリダイズ反応が平衡状態に達した時点で止まる。輝度値の増加が止まった状態における定量は不可能になる。演算装置70は、複数の時点で輝度値を取得することによって、標的核酸が高濃度である場合にハイブリダイズ反応が平衡状態に達する前の輝度値から核酸濃度を推定できる。
【0046】
また、演算装置70は、複数の時点の輝度値に基づいて検量線によって標的核酸を定量化してもよい。演算装置70は、輝度値を算出せずに、画像の生データ(Raw Data)、又は、画像にフィルタ処理若しくは演算処理を行って得られる信号に基づいて、標的核酸を定量化してもよい。この場合、信号に基づく標的核酸の定量は、多変量解析又は機械学習による定量モデルからの算出結果の取得として実行されてもよい。また、標的核酸の定量は、本手法による定量結果と同時に参照値を取得して定量モデルにフィードバックされてもよい。
【0047】
演算装置70は、標的核酸の定量結果から既報の1細胞当たりの核酸数の文献値等を参考にして微生物量を算出してよい。演算装置70は、定量モデル構築においてあらかじめ既知濃度の標準微生物に対して本開示の測定方法を実施した際のスポットの輝度値と微生物濃度の検量線を取得し、検量線に基づいて検体試料の微生物濃度を算出してもよい。微生物量の算出は、多変量解析又は機械学習による定量モデルからの算出結果の取得として実行されてもよい。微生物量の算出は、本手法による定量結果と同時に参照値を取得して定量モデルにフィードバックされてもよい。
【0048】
微生物量は、演算装置70に限られず、演算装置70の外付け装置で算出されてもよい。つまり、核酸検出装置40は、内部に備える演算装置70又は外付けの装置に微生物量を算出させ、その算出結果を微生物の存在量の測定結果として取得してもよい。
【0049】
記録装置60は、マイクロアレイスキャナ50からの画像信号を適宜保存し、演算装置70に出力する。また、記録装置60は、演算装置70からの標的核酸の定量結果、又は、微生物の定量結果を適宜保存できる。
【0050】
測定システム1は、表示装置を更に備えてもよい。表示装置は、標的核酸又は微生物の定量結果を演算装置70又は記録装置60から取得して表示してもよい。
【0051】
使用するプローブは、特許文献1(特開2015-43702号公報)に記載されているプローブを使用することができる。具体的には、プローブは、蛍光分子が付加された蛍光プローブと、消光分子が付加された消光プローブとを有し、蛍光分子の蛍光が消光分子によって消光されるように蛍光プローブと消光プローブとが結合されたものであってよい。このように構成されたプローブは、計測対象であるターゲットが添加された場合に、ハイブリダイゼーションによって蛍光プローブと消光プローブとの結合が解消されて蛍光が発せられるようにされている。蛍光プローブは、蛍光色素等の標識を任意に設定可能である。蛍光プローブで使用される蛍光色素の吸収波長及び蛍光波長特性に基づいて、マイクロアレイスキャナ50の励起波長及び蛍光検出波長が選択される。
【0052】
マイクロアレイスキャナ50は、上述してきた実施形態に限定されず、マイクロアレイ上のスポットからの蛍光を検出するために、蛍光顕微鏡、共焦点顕微鏡、エバネッセント蛍光検出装置、薄膜斜光照明顕微鏡、シート照明顕微鏡、構造化照明顕微鏡、又は、多光子励起顕微鏡等を含んで構成されてよい。
【0053】
以上述べてきたように、本実施形態に係る測定方法によれば、マイクロアレイ検出によって、同時に多種類の微生物が定量的かつ高感度に測定される。また、検体試料の濃縮精製工程を含むマイクロアレイ検出によって、標的微生物が高感度に測定される。また、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出によって、PCR反応効率の影響が低減される。PCR反応効率の影響の低減によって、標的微生物の定量的な測定精度が高まる。また、マイクロアレイ検出によって、標的微生物種が増えた場合においてもqPCRに比して検査コストが増大しにくい。また、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出によって、プライマの開発に費やされるコスト及び時間が低減される。また、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出によって、PCR反応の試薬等の消耗品コスト及びPCR反応の手間が低減される。また、PCR工程を除いたマイクロアレイ検出によって、プローブ開発にかかるプライマとの交差反応がなくなる。交差反応がないことによって、開発が容易になるとともに、開発コストが低減される。また、ラベル化工程を除いたマイクロアレイ検出によって、ラベリング効率の影響が低減される。ラベリング効率の影響の低減によって、標的微生物を定量的な測定精度が高まる。また、洗浄工程を除いたマイクロアレイ検出によって、洗浄による擬陽性リスク又は定量性低下リスクが低減する。
【0054】
比較例として、マイクロアレイ検出の微生物量は、最終的にハイブリダイズした核酸量から、A:微生物の回収効率、B:核酸抽出精製効率、C:PCR反応効率、D:ハイブリダイズ効率、E:洗浄によるロス、及び、F:1細胞あたりの核酸量参照値の経過に基づいて算出される。本実施形態に係る測定方法においてPCR反応及び洗浄が実施されないことによって、サンプルに起因する効率変化が大きいC:PCR反応効率、及び、手技による差が生じやすいE:洗浄によるロスの影響が低減される。このようにすることで、定量的な測定精度が高まる。
【0055】
以上の結果として、本実施形態に係る測定方法によれば、微生物測定における利便性が向上する。
【0056】
(応用例)
本実施形態に係る測定方法は、以下のように応用され得る。例えば、本実施形態に係る測定方法は、蛍光量計測におけるドライ画像測定、バイオチップの蛍光量液中観察、又は、連続反応におけるリアルタイム観察等で使用されてよい。本実施形態に係る測定方法は、具体的な実施例として、核酸分析による菌種判別、がん遺伝子、動植物判別、又は、腸内細菌の検査等に用いられてよい。
【0057】
また、本実施形態に係る測定方法は、水道、食品、又は飲料水等の他分野へ水平展開されてよい。この場合、検体サンプルのサンプリング量は、各アプリケーションの微生物量に応じて設定されてよい。
【0058】
演算装置70は、あらかじめ任意のハイブリダイズ反応時間後に取得した既知濃度の標準核酸におけるスポットの輝度値と核酸濃度の検量線とに基づいて、検体サンプルの核酸濃度を推定できる。核酸濃度の推定方法は、これに限定されない。例えば、標的核酸とその標識の数が1:1など定量的な比率である場合、スポットの輝度値は、ハイブリダイズした核酸の数と相関する。また、特許文献1に記載のプローブを使用した場合にも同様にスポットの輝度値とハイブリダイズした核酸の数とが1:1で相関する。演算装置70は、スポットの輝度値を定量的に取得し、標識分子数が一定の標準スポットの輝度値と比較することによって核酸濃度を定量化できる。また、演算装置70は、スポットの輝度値を光量の絶対値として算出することによって、スポットの光量と標識の理論光量からハイブリダイズした核酸の数を算出できる。光量の絶対値の算出は、各装置パラメータとして設定されている必要があり、標準光源などを使用してセンサ又は光学系を規格化してセンサ輝度値に対する光量を値付けすることで可能となる。
【0059】
本開示は、上述した実施形態で特定された構成に限定されず、特許請求の範囲に記載した開示の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。例えば、各ステップに含まれる機能等は、論理的に矛盾しないように再構成可能である。また、複数のステップを1つに組み合わせたり、1つのステップを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 測定システム(10:微生物濃縮装置、20:核酸抽出装置、30:ハイブリダイズ反応装置、40:核酸検出装置、50:マイクロアレイスキャナ、60:記憶装置、70:演算装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6