(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】車両管理システム
(51)【国際特許分類】
B60R 25/25 20130101AFI20240109BHJP
B60R 25/24 20130101ALI20240109BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240109BHJP
B60K 28/06 20060101ALN20240109BHJP
【FI】
B60R25/25
B60R25/24
E05B49/00 J
E05B49/00 R
B60K28/06 B
(21)【出願番号】P 2021035482
(22)【出願日】2021-03-05
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-140426(JP,A)
【文献】特開2010-126949(JP,A)
【文献】特開2008-291535(JP,A)
【文献】特開2020-035285(JP,A)
【文献】特開2009-202655(JP,A)
【文献】特開2013-234520(JP,A)
【文献】特開2009-083712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 25/00-25/40
E05B 49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両を管理する車両管理システム(10)であって、
前記車両の電子キーを管理する電子キー管理サーバ(20)と、
前記車両の運転者によって所持され、前記車両の運転を許可するための前記電子キーが記憶される携帯端末(50)と、
前記車両に搭載され、前記携帯端末に記憶される前記電子キーを認証して、前記車両の運転の可否を判断する車両用制御部(61)と、
車外に設けられ、前記運転者のアルコール量を検出する検出部(41)と、
検出されたアルコール量を用いて前記運転者が飲酒状態であるか否かを判断し、前記運転者が飲酒状態でない場合には、前記電子キーの発行を許可する許可情報を前記電子キー管理サーバに送信する判断部(43)と、
前記車両に設けられ、運転席に着座する前記運転者の生体情報を取得する車両用認証部(62)と、を含み、
前記車両用制御部は、前記携帯端末に記憶される前記電子キーと前記車両用認証部が取得した前記生体情報とを認証して、前記車両の運転の可否を判断し、
前記電子キー管理サーバは、前記許可情報に基づいて、前記車両の運転を許可するための前記電子キーを前記運転者によって所持される前記携帯端末に送信する車両管理システム。
【請求項2】
複数の車両を管理する車両管理システム(10)であって、
前記車両の電子キーを管理する電子キー管理サーバ(20)と、
前記車両の運転者によって所持され、前記車両の運転を許可するための前記電子キーが記憶される携帯端末(50)と、
前記車両に搭載され、前記携帯端末に記憶される前記電子キーを認証して、前記車両の運転の可否を判断する車両用制御部(61)と、
車外に設けられ、前記運転者のアルコール量を検出する検出部(41)と、
検出されたアルコール量を用いて前記運転者が飲酒状態であるか否かを判断し、前記運転者が飲酒状態でない場合には、前記電子キーの発行を許可する許可情報を前記電子キー管理サーバに送信する判断部(43)と、を含み、
複数の建物に前記検出部と前記判断部とが設けられており、
前記判断部は、前記許可情報とともに、前記検出部によって検出されたアルコール量に関する検出情報を前記電子キー管理サーバに送信し、
前記電子キー管理サーバは、前記検出部の検出結果の履歴と、前記判断部の判断履歴と、前記運転者に関する個人情報とを関連付けて記憶する履歴記憶部(21)を有し、
前記電子キー管理サーバは、前記許可情報に基づいて、前記車両の運転を許可するための前記電子キーを前記運転者によって所持される前記携帯端末に送信する車両管理システム。
【請求項3】
前記電子キーを管理する管理者によって操作される管理端末(30)をさらに含み、
前記管理端末は、
前記電子キー管理サーバの前記履歴記憶部に記憶されている履歴情報を取得する取得部(33)と、
前記管理者の操作によって特定の運転者の運転を許可または禁止する運転条件が設定されると、前記運転条件を前記電子キー管理サーバに送信する設定部(32)と、を有し、
前記電子キー管理サーバは、前記履歴記憶部に記憶されている前記履歴情報、前記許可情報および前記運転条件を用いて、前記電子キーを生成するか否かを判断する請求項
2に記載の車両管理システム。
【請求項4】
前記車両に設けられ、運転席に着座する前記運転者の生体情報を取得する車両用認証部(62)をさらに含み、
前記車両用制御部は、前記携帯端末に記憶される前記電子キーと前記車両用認証部が取得した前記生体情報とを認証して、前記車両の運転の可否を判断する請求項
2または
3に記載の車両管理システム。
【請求項5】
前記検出部は、前記運転者のアルコール量を検出するとき、さらに前記運転者の生体情報を取得し、
前記判断部は、取得した前記生体情報を前記許可情報とともに前記電子キー管理サーバに送信し、
前記電子キー管理サーバは、
前記運転者の前記生体情報と前記運転者の前記携帯端末とを関連付けて記憶しており、
前記許可情報に基づいて、前記車両の運転を許可するための前記電子キーを生成し、生成した前記電子キーを前記生体情報に関連付けられた前記運転者の前記携帯端末に送信する請求項1
~3のいずれか1つに記載の車両管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、電子キーを用いて車両を管理する車両管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両のハンドルにアルコール検知センサを設け、ドライバーの息から検出されるアルコール濃度が基準値を超える場合に、エンジンの始動を禁止する飲酒運転防止システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、車両のハンドルにアルコール検知センサがあるので、飲酒者であっても、車内には入ることができる。車内に入ることができるので、アルコール検知センサおよびエンジンを始動するための構成を不正に改造し、飲酒者が運転するおそれがある。
【0005】
そこで、開示される目的は前述の問題点を鑑みてなされたものであり、飲酒運転を抑制することができる車両管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は前述の目的を達成するために以下の技術的手段を採用する。
【0007】
ここに開示された車両管理システムは、複数の車両を管理する車両管理システム(10)であって、車両の電子キーを管理する電子キー管理サーバ(20)と、車両の運転者によって所持され、車両の運転を許可するための電子キーが記憶される携帯端末(50)と、車両に搭載され、携帯端末に記憶される電子キーを認証して、車両の運転の可否を判断する車両用制御部(61)と、車外に設けられ、運転者のアルコール量を検出する検出部(41)と、検出されたアルコール量を用いて運転者が飲酒状態であるか否かを判断し、運転者が飲酒状態でない場合には、電子キーの発行を許可する許可情報を電子キー管理サーバに送信する判断部(43)と、車両に設けられ、運転席に着座する運転者の生体情報を取得する車両用認証部(62)と、を含み、車両用制御部は、携帯端末に記憶される電子キーと車両用認証部が取得した生体情報とを認証して、車両の運転の可否を判断し、電子キー管理サーバは、許可情報に基づいて、車両の運転を許可するための電子キーを運転者によって所持される携帯端末に送信する車両管理システムである。
またここに開示された車両管理システムは、複数の車両を管理する車両管理システム(10)であって、車両の電子キーを管理する電子キー管理サーバ(20)と、車両の運転者によって所持され、車両の運転を許可するための電子キーが記憶される携帯端末(50)と、車両に搭載され、携帯端末に記憶される電子キーを認証して、車両の運転の可否を判断する車両用制御部(61)と、車外に設けられ、運転者のアルコール量を検出する検出部(41)と、検出されたアルコール量を用いて運転者が飲酒状態であるか否かを判断し、運転者が飲酒状態でない場合には、電子キーの発行を許可する許可情報を電子キー管理サーバに送信する判断部(43)と、を含み、複数の建物に検出部と判断部とが設けられており、判断部は、許可情報とともに、検出部によって検出されたアルコール量に関する検出情報を電子キー管理サーバに送信し、電子キー管理サーバは、検出部の検出結果の履歴と、判断部の判断履歴と、運転者に関する個人情報とを関連付けて記憶する履歴記憶部(21)を有し、電子キー管理サーバは、許可情報に基づいて、車両の運転を許可するための電子キーを運転者によって所持される携帯端末に送信する車両管理システムである。
【0008】
このような車両管理システムに従えば、運転者は車両を運転するためには、自身が所持する携帯端末に車両用制御部によって認証される電子キーが必要となる。電子キー管理サーバは、車外にある検出部によって検出されるアルコール量によって運転者が飲酒状態でない場合には、電子キーを生成し、携帯端末に送信する。これによって飲酒状態である場合には、運転者は電子キーを持たないので、車内に入ることができない。したがって車両を不正に改造することによって、運転することを防ぐことができる。これによって飲酒運転を抑制することができる。
【0009】
なお、前述の各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態の車両管理システム10を示すブロック図。
【
図3】電子キー管理サーバ20の処理を示すフローチャート。
【
図5】第2実施形態の管理端末30の処理を示すフローチャート。
【
図6】第2実施形態の電子キー管理サーバ20の処理を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態を、複数の形態を用いて説明する。各実施形態で先行する実施形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付すか、または先行の参照符号に一文字追加し、重複する説明を略する場合がある。また各実施形態にて構成の一部を説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している実施形態と同様とする。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態に関して、
図1~
図4を用いて説明する。第1実施形態の車両管理システム10は、複数の車両の電子キーを管理する。車両管理システム10は、
図1に示すように、電子キー管理サーバ20、管理端末30、検査装置40、携帯端末50および車載装置60を含んで構成される。
【0013】
電子キー管理サーバ20、管理端末30、検査装置40および携帯端末50は、それぞれ記憶媒体に記憶されているプログラムを実行し、各部を制御する制御部を有する。制御部は、少なくともひとつの演算処理装置(CPU)と、プログラムとデータとを記憶する記憶媒体とを有する。各装置の制御部は、たとえばコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を備えるマイクロコンピュータによって実現される。記憶媒体は、コンピュータによって読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体である。記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって実現される。以下、それぞれの制御部を明示せず制御部に換えて、電子キー管理サーバ20、管理端末30、検査装置40および携帯端末50と表記する場合がある。
【0014】
検査装置40は、運転者のアルコール量を検出して、飲酒運転のおそれがある場合には、電子キーの発行の禁止する装置である。検査装置40は、車外に設けられ、たとえば店舗、事業所などの建物に設けられる。検査装置40は、たとえば複数の建物にそれぞれ設けられている。検査装置40は、電子キー管理サーバ20と通信可能である。検査装置40は、アルコール検出部41、生体情報取得部42、および検査制御部43を含んで構成される。
【0015】
検査装置40は、たとえば輸送業者の事業所、具体的には貨物ドライバーおよびバスドライバーの場合は勤務先営業所などに設置される。また検査装置40は、たとえば車両サービス業者の事業所、具体的にはレンタカー利用者は出発営業所などに設置される。さらに検査装置40は、たとえば酒類提供者の事業所、具体的にはレストラン利用者は会計後出発時に利用したレストラン店舗などに設置される。
【0016】
アルコール検出部41は、検出部であって、車外に設けられる。アルコール検出部41は、運転者のアルコール量を検出する。アルコール検出部41は、たとえば運転者の呼気のアルコール濃度を検出する。アルコール検出部41は、検出したアルコール濃度を検査制御部43に与える。
【0017】
生体情報取得部42は、検出部であって、運転者のアルコール量を検出するとき、さらに運転者の生体情報を取得する。生体情報は、運転者の身体的特徴によって運転者を特定することができる情報である。生体情報は、たとえば顔、指紋、虹彩、静脈パターンおよび声紋などである。生体情報取得部42は、取得した生体情報を検査制御部43に与える。
【0018】
検査制御部43は、検査装置40を制御する制御部である。検査制御部43は、判断部としても機能し、検出されたアルコール量を用いて運転者が飲酒状態であるか否かを判断する。具体的には、検査制御部43は、アルコール検出部41が検出したアルコール濃度が所定の閾値以上の場合には、飲酒状態であると判断する。閾値は、たとえば道路交通法で酒気帯び運転と定められている値、具体的には呼気1リットル中のアルコール濃度0.15ミリグラムである。
【0019】
そして検査制御部43は、運転者が飲酒状態でない場合には、電子キーの発行を許可する許可情報を電子キー管理サーバ20に送信する。また検査制御部43は、取得した生体情報を許可情報とともに電子キー管理サーバ20に送信する。さらに検査制御部43は、アルコール検出部41によって検出されたアルコール量に関する検出情報を電子キー管理サーバ20に送信する。
【0020】
管理端末30は、電子キーを管理する管理者によって操作される情報端末である。管理端末30は、電子キー管理サーバ20と通信可能である。管理者は、複数の車両を管理する。管理端末30は、端末出力部31、端末設定部32および端末制御部33を含んで構成される。管理端末30は、たとえば外部と通信可能なパーソナルコンピュータ(Personal Computer:略称PC)およびスマートフォンなどの携帯型情報端末によって実現される。
【0021】
端末設定部32は、設定部として機能し、管理者の操作によって、特定の運転者の運転を許可または禁止する運転条件が設定されると、運転条件を電子キー管理サーバ20に送信する。運転条件には、たとえば時間的制限および場所的制限がある。運転条件の時間的制限として、たとえば飲酒の常習者には、アルコール検出部41の検出結果にかかわらず、18時以降の運転を禁止するなどである。また運転条件の場所的制限は、たとえば繁華街などに設置された検査装置40の場合には、アルコール検出部41の検出結果にかかわらず運転を禁止するなどである。運転者を特定するための情報として、たとえば氏名、運転免許証の番号、および生体認証などに用いられる生体情報などである。
【0022】
端末制御部33は、制御部であって、管理端末30の各部を制御する。端末制御部33は、管理者の操作によって、電子キー管理サーバ20に対する情報開示の要求があると、要求を電子キー管理サーバ20に送信するように制御する。また端末制御部33は、電子キー管理サーバ20などから情報を受信すると、端末出力部31から出力するように制御する。端末制御部33は、取得部としても機能し、電子キー管理サーバ20に記憶されている履歴情報を取得する。
【0023】
端末出力部31は、出力部として機能し、各種の情報を出力する。端末出力部31は、たとえば表示装置によって実現され、各種の情報を画像で表示することで出力する。端末出力部31は、たとえば電子キー管理サーバ20から取得した履歴情報を出力する。
【0024】
管理端末30は、管理者のみの操作を許可するように、個人認証を行うことが好ましい。たとえば生体認証などによって、管理者によって入力がされたことが認証された場合にのみ、運転条件を送信することが好ましい。
【0025】
電子キー管理サーバ20は、車両の電子キーを管理する。電子キー管理サーバ20は、管理端末30、検査装置40および携帯端末50と通信可能である。電子キー管理サーバ20は、電子キーを発行する機能、および電子キーを携帯端末50に送信する機能を有する。電子キー管理サーバ20は、サーバ記憶部21およびサーバ制御部22を含んで構成される。
【0026】
電子キーは、有形物である物理鍵とは異なり、無形物である電子情報である。電子キーは、携帯端末50に記憶されることで使用可能となる。そして携帯端末50と車載装置60とが通信して、電子キーが認証されることによって、車両の運転が許可される。したがって電子キーは、車両のいわゆる鍵として機能する。
【0027】
電子キーには、車両を特定する車両情報も含まれる。車両情報は、車両を一意に特定できる情報であれば良く、たとえば車両のナンバー、メーカやディーラで管理している車両ID、および車検証番号などである。
【0028】
サーバ記憶部21は、車両を管理するための情報が保存されている。サーバ記憶部21には、運転者管理データベース、車両管理データベースおよび車両利用管理データベースなどが含まれる。運転者管理データベースには、検出結果の履歴である履歴情報、判断履歴、運転可能な車両、運転記録および個人情報などが記憶されている。運転者管理データベースは、履歴情報、判断履歴および個人情報などを記憶する履歴記憶部としても機能する。また運転者管理データベースは、運転者の生体情報と運転者の携帯端末50とを関連付けて記憶している。履歴情報は、過去スコアともいう。
【0029】
車両管理データベースには、車両のサイズおよび車両の排気量などの車両の情報、ならびに冷凍車、クレーン車、牽引車など車両のタイプ情報などである。車両利用管理データベースには、運転者毎の電子キーの適用可否、運転者と車両と運行との紐付け状況などが記録されている。
【0030】
サーバ制御部22は、制御部であって、サーバ記憶部21から必要な情報を読み込み、電子キーを管理する。サーバ制御部22は、アルコール検出部41の検出結果の履歴と、検査制御部43の判断履歴と、運転者に関する個人情報とを関連付けてサーバ記憶部21に記憶する。サーバ制御部22は、許可情報に基づいて、車両の運転を許可するための電子キーを生成し、生成した電子キーを運転者によって所持される携帯端末50に送信する。携帯端末50は、生体情報に関連付けられた運転者の携帯端末50である。
【0031】
次に、車載装置60および携帯端末50に関して説明する。車載装置60および携帯端末50はそれぞれ、通信範囲が例えば最大でも数十メートル程度となる所定の近距離無線通信規格に準拠した近距離無線通信を実施可能に構成されている。近距離無線通信規格としては、例えばBluetooth Low Energy(Bluetoothは登録商標)や、Wi-Fi(登録商標)、ZigBee(登録商標)等を採用することができる。
【0032】
携帯端末50は、車両の運転者によって所持され、車両の運転を許可するための電子キーが記憶される。携帯端末50は、電子キー管理サーバ20と通信可能であり、かつ近距離通信機能を備えた運手者が携帯可能な装置であればよい。携帯端末50と電子キー管理サーバ20は、公衆通信網及び基地局等を介して、公衆通信網に接続されるサーバ等と通信を行う。公衆通信網としては、たとえばインターネットおよび携帯電話網等が挙げられる。
【0033】
携帯端末50は、専用機あってもよく、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブルデバイス、携帯用音楽プレーヤ、携帯用ゲーム機などに機能の一部として搭載してもよい。携帯端末50が近距離通信として送信する信号には、送信元情報が含まれている。送信元情報は、例えば携帯端末50に割り当てられた固有の識別情報(以降、端末IDとする)である。端末IDは他の通信端末と携帯端末50とを識別するための情報として機能する。
【0034】
携帯端末50は、所定の近距離無線通信を用いた電波を送受信する。携帯端末50は、運転者によって操作される入力部を有する。入力部が操作されると、操作内容に基づく信号が携帯端末50の制御部に与えられる。携帯端末50は、車両からリクエスト信号を受信した場合には、そのリクエスト信号に応答するレスポンス信号を送信する。このときレスポンス信号に電子キーおよび端末IDを含ませる。
【0035】
携帯端末50は、対応する運転者のみの操作を許可するように、個人認証を行うことが好ましい。たとえば生体認証などによって、対応する運転者によって入力がされたことが認証された場合にのみ、操作できることが好ましい。
【0036】
次に、車載装置60に関して説明する。車載装置60は、車両に設けられ、車両用制御部61、車両用認証部62、車両用アンテナ63および車両記憶部64を備える。車両用アンテナ63は、通信エリアが車内および車外となるように複数配置される。車両用アンテナ63は、近距離通信に用いられる周波数帯の電波を送受信するためのアンテナである。
【0037】
車両用認証部62は、運転席に着座する運転者の生体情報を取得し、取得した生体情報を電子キー管理サーバ20に送信して認証を行い、運転の可否を判断する。車両用認証部62は、生体情報として、たとえば前述したように運転者の身体的特徴によって運転者を特定することができる情報を取得する。
【0038】
車両用制御部61は、制御部であって、車両に設けられる。車両用制御部61は、無線通信によって携帯端末50と通信して、携帯端末50の電子キーの認証を行い、運転の可否を判断する。車両用制御部61は、認証が成立した場合に車両の制御を可能にする。
【0039】
車両用制御部61は、他の車載電子機器との連携し、車両制御を他のECUとの協働によって実現するECUである。車両用制御部61は、近距離通信を実施するための通信モジュールとしても機能する。車両用制御部61は、車両用アンテナ63で受信した信号を復調する。また車両用制御部61は、信号を変調して、車両用アンテナ63に出力し、電波として放射させる。
【0040】
車両用制御部61は、携帯端末50と鍵交換プロトコルの実行、いわゆるペアリングを対応する携帯端末50と実施済みである。ペアリングによって取得した携帯端末50の端末情報は、車両用制御部61が有する車両記憶部64に保存されている。端末情報とは、例えば、ペアリングによって交換した鍵情報および端末IDなどである。交換した鍵情報の保存はボンディングとも称される。車両が複数の運転者によって使用される場合には、各運転者が保有する携帯端末50の端末IDが保存される。
【0041】
車両用制御部61は、携帯端末50からの信号を受信すると、保存済みの端末情報を用いて自動的に携帯端末50との通信接続を確立する。そして、車両用制御部61が携帯端末50とデータの送受信を実施する。車両用制御部61は、携帯端末50との通信接続を確立すると、通信接続している携帯端末50の端末IDを車両記憶部64に保存する。
【0042】
車両記憶部64には、運転者が所有する携帯端末50に割り当てられている端末IDが登録されている。また、車両記憶部64には、車両用制御部61の各種制御を実行するためのプログラムが格納されている。
【0043】
車両用制御部61は、電子キーと車両用認証部62が取得した生体情報とを認証し、認証の結果、電子キーが正規の電子キーであり、かつ生体情報が登録された正規の生体情報である場合には、各部の制御を許可する。車両用制御部61は、認証処理として、携帯端末50から送信された電子キーおよび端末IDと車両記憶部64に記憶されている正規の端末IDとを照合し、一致する場合には照合成功と判定する。車両用制御部61が認証処理を実施するタイミングは、適宜設計されれば良い。車両用制御部61は、たとえばドアハンドルボタンが運転者によって操作された場合、車両のスタートボタンが運転者によって操作された場合などに認証処理を実行する。
【0044】
認証処理の結果、正規の電子キーかつ正規の運転者である場合、ユーザが車両を利用するための車両制御、たとえばドアロック機構の施錠、開錠およびエンジンの始動などの動作を許可する。たとえばエンジンが停止している状態において認証処理が成功した場合、エンジンECUと連携してエンジンを始動させる。
【0045】
次に、検査装置40の処理について、
図2のフローチャートを用いて説明する。
図2の処理は、検査装置40が電源投入状態において、繰り返し実行される。ステップS11では、アルコール検出部41からアルコール濃度を取得し、ステップS12に移る。ステップS12では、アルコール濃度に基づいて、飲酒状態であるか否かを判断し、飲酒状態でない場合にはステップS13に移り、飲酒状態である場合にはステップS14に移る。飲酒状態であるか否かは、たとえばアルコール濃度が規定値以上であるか否かを判断する。
【0046】
ステップS13では、飲酒状態でないので、許可情報と生体情報取得部42が取得した生体情報とを電子キー管理サーバ20に送信するように制御し、本フローを終了する。ステップS14では、飲酒状態であるので、アルコール検出部41が検出した検出情報と生体情報とを電子キー管理サーバ20に送信するように制御し、本フローを終了する。したがって飲酒状態である場合には、許可情報が送信されない。
【0047】
次に、電子キー管理サーバ20の処理について、
図3のフローチャートを用いて説明する。
図3の処理は、電子キー管理サーバ20が電源投入状態におして、繰り返し実行される。ステップS21では、検査装置40から許可情報と生体情報とを受信したか否かを判断し、受信した場合にはステップS22に移り、受信していない場合には、本フローを終了する。
【0048】
ステップS22では、許可情報を受信したので、許可情報に基づいて、生体情報に対応する運転者の車両の運転を許可する電子キーを生成し、ステップS23に移る。ステップS23では、生成した電子キーを生体情報の運転者の携帯端末50に送信し、本フローを終了する。このように電子キー管理サーバ20は、許可情報を受信すると、電子キーを生成して、携帯端末50に送信する。換言すると、電子キー管理サーバ20は、許可情報を受信しないと電子キーを生成しない。
【0049】
次に、携帯端末50の処理について、
図4のフローチャートを用いて説明する。
図4の処理は、携帯端末50が電源投入状態において、繰り返し実行される。ステップS31では、電子キーを受信したか否かを判断し、受信があった場合にはステップS32に移り、受信がない場合には、本フローを終了する。ステップS32では、電子キーの受信があったので、電子キーを保存して、本フローを終了する。
【0050】
このように携帯端末50は、電子キーを受信すると、電子キーを保存する。これによって電子キーが使用可能な状態となる。運転者は、携帯端末50を用いて、対応する車両の近くで、所定の開錠操作することで、車両を開錠でき、運転が許可される。
【0051】
以上説明したように本実施形態の車両管理システム10は、電子キーシステム技術とアルコール検出技術とを結び付け、飲酒検知時に車両のドアの解錠不可とし飲酒運転を防いでいる。具体的には、車両管理システム10は、運転者は車両を運転するためには、自身が所持する携帯端末50に車両用制御部61によって認証される電子キーが必要となる。電子キー管理サーバ20は、車外にあるアルコール検出部41によって検出されるアルコール量によって運転者が飲酒状態でない場合には、電子キーを生成し、携帯端末50に送信する。これによって飲酒状態である場合には、運転者は電子キーを持たないので、車内に入ることができない。したがって車両を不正に改造することによって、運転することを防ぐことができる。また車外にアルコール検出部41があり、運転者でない管理者によって検査装置40は管理されている。したがって運転者がアルコール検出部41を不正に改造することも困難である。これによって飲酒運転を抑制することができる。
【0052】
また本実施形態では、検査装置40は、運転者のアルコール量を検出するとき、さらに運転者の生体情報を生体情報取得部42によって取得する。そして、端末制御部33は、取得した生体情報を許可情報とともに電子キー管理サーバ20に送信する。電子キー管理サーバ20は、許可情報に基づいて電子キーを生成し、生成した電子キーを生体情報に関連付けられた運転者の携帯端末50に送信する。アルコール量を検出するときに生体情報も取得するので、携帯端末50の正規の所有者でないものが身代わりでアルコール検査を受けることを防ぐことができる。これによって身代わりによる不正を抑制することができる。
【0053】
さらに本実施形態では、車両用認証部62は、着座する運転者の生体情報を取得し、取得した生体情報を電子キー管理サーバ20に送信する。そして車両用制御部61は、携帯端末50に記憶される電子キーと車両用認証部62が取得した生体情報とを認証して、車両の運転の可否を判断する。これによって検査装置40で検査した人物と、運転席に着座している人物が同一人物であるか否かを判断することができる。したがって身代わりによる運転を抑制することができる。
【0054】
また本実施形態では、サーバ記憶部21にはアルコール検出部41の検出結果の履歴と、判断履歴と、運転者に関する個人情報とを関連付けて記憶している。これによって過去の情報もわかるので、たとえば検査装置40によって飲酒運転でないと判断した場合であっても、念のために電子キーを発行しない、または管理者に生成可否を問い合わせるなどの処理をすることができる。
【0055】
また本実施形態では、検査装置40は複数あり、それぞれ建物に設置される。検査装置40が取得した情報は、電子キー管理サーバ20に集約される。したがって建物毎の管理、地域毎の管理、検査装置40をグループ分けしておけばグループ毎の管理など、多様な管理を行うことができる。また電子キー管理サーバ20は、過去の履歴情報も集約して管理することができる。したがって個別および遠隔地などであっても、情報を閲覧が容易となる。
【0056】
たとえば輸送業者、レンタカー等の車両サービス業者、および酒類提供者等においてアルコールチェックおよび履歴情報および安全運転確認を事業所等のグループ単位にまとめた管理、または全社単位での管理することができる。これによって、たとえば輸送業者は、グループで統一した履歴管理ができ、運転者個別および事業所個別での不正改竄防止をすることができる。また、たとえば車両サービス業者および酒類提供者は、グループで統一した履歴管理、および事業所個別での不正改竄防止をすることができる。
【0057】
換言すると、本実施形態では、飲酒者に対して「運転したい車両の扉を開けられない」という物理的強制力を実現する。また本実施形態では、電子キーシステム技術を利用することで、電子キー管理サーバ20を必要とするが、電子キー管理サーバ20によって認証および判定にも利用することで改竄等の不正を防止することができる。また検出履歴等の周辺情報をも判定基準に加えることが可能であり、より確実に飲酒運転を防止することができる。
【0058】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態に関して、
図5および
図6を用いて説明する。本実施形態では、許可情報だけでなく、他の情報、たとえば運転条件なども用いて電子キーの生成可否を判断する点に特徴を有する。
【0059】
まず、管理端末30の処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
図5の処理は、管理端末30が電源投入状態において、繰り返し実行される。ステップS41では、運転条件の入力があったか否かを判断し、入力があった場合にはステップS42に移り、入力がない場合には、本フローを終了する。運転条件は、運転を許可する条件であって、たとえば指定した時間の運転を許可する、または検査装置40の指定場所における電子キーの発行を許可するなどの条件である。
【0060】
ステップS42では、運転条件の入力があったので、運転条件を電子キー管理サーバ20に送信するように制御し、本フローを終了する。このように管理端末30によって運転条件が入力されると、電子キー管理サーバ20に運転条件が送信される。
【0061】
次に、電子キー管理サーバ20の処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
図6の処理は、電子キー管理サーバ20が電源投入状態において、繰り返し実行される。ステップS51では、許可情報と生体情報とを受信したか否かを判断し、受信があった場合にはステップS52に移り、受信がない場合には、本フローを終了する。ステップS52では、許可情報と生体情報とを受信したので、サーバ記憶部21から生体情報に対応する履歴情報と運転条件を取得し、ステップS53に移る。
【0062】
ステップS53では、履歴情報、許可情報および運転条件を用いて、電子キーを生成するか否かを判断し、生成可と判断した場合は、ステップS54に移り、生成不可と判断した場合には、本フローを終了する。たとえば運転条件を満たしていない場合には、生成不可と判断する。また履歴情報に基づいて、たとえば飲酒運転の常習者としてブラックリストに載っているなど、電子キーを生成するに不適切と判断した場合には、生成不可と判断する。したがって許可情報よりも履歴情報および運転条件が判断材料として優先して用いられる。
【0063】
ステップS54では、許可情報に基づいて、生体情報に対応する運転者の車両の運転を許可する電子キーを生成し、ステップS55に移る。ステップS55では、生成した電子キーを生体情報の運転者の携帯端末50に送信し、本フローを終了する。
【0064】
このように電子キー管理サーバ20は、履歴記憶部に記憶されている履歴情報、許可情報および運転条件を用いて、電子キーを生成するか否かを判断する。電子キーの生成可否を様々な情報を用いて判断するので、より適切に判断することができる。また運転条件および履歴情報は、許可情報よりも優先して電子キーを生成する判断材料とするのが好ましい。また運転条件は、さらに履歴情報よりも優先して電子キーを生成する判断材料とするのが好ましい。換言すると、運転条件を満足しない限り、電子キーを生成しないのが好ましい。
【0065】
たとえば運転者に持病などがあり、家族が運転を禁止している場合など、いわゆるブラックリストに掲載されているときに、運転者が家族などに秘密で単独で運転することを防ぐことができる。またブラックリストに該当する運転者が、検査装置40を利用すると、家族および事業者などに通知することもできる。したがって運転者の運転行為をより適切に管理することができる。
【0066】
(その他の実施形態)
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に何ら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0067】
前述の実施形態の構造は、あくまで例示であって、本開示の範囲はこれらの記載の範囲に限定されるものではない。本開示の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むものである。
【0068】
前述の第1実施形態において、電子キー管理サーバ20、検査装置40、管理端末30、車載装置60および携帯端末50の制御部によって実現されていた機能は、前述のものとは異なるハードウェアおよびソフトウェア、またはこれらの組み合わせによって実現してもよい。各制御部は、たとえばこれらの制御部とは別の他の制御部と通信し、他の制御部が処理の一部または全部を実行してもよい。制御部が電子回路によって実現される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、またはアナログ回路によって実現することができる。
【0069】
前述の第1実施形態では、1つサーバである電子キー管理サーバ20によって管理しているが、このような構成に限るものではなく、他のサーバ、たとえば運行を管理する運行管理サーバを別途設け、複数のサーバで電子キーを管理してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10…車両管理システム 20…電子キー管理サーバ 21…サーバ記憶部(履歴記憶部) 22…サーバ制御部 30…管理端末 31…端末出力部 32…端末設定部(設定部) 33…端末制御部(取得部) 40…検査装置 41…アルコール検出部(検出部) 42…生体情報取得部 43…検査制御部(判断部) 50…携帯端末 60…車載装置 61…車両用制御部 62…車両用認証部 63…車両用アンテナ 64…車両記憶部