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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】エアバッグ装置の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/206 20110101AFI20240109BHJP
   F16B 19/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B60R21/206
F16B19/10 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021041598
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141349
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】酒井 康行
(72)【発明者】
【氏名】安井 善彦
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-224057(JP,A)
【文献】特開2002-316607(JP,A)
【文献】特開2001-277985(JP,A)
【文献】特開2001-277986(JP,A)
【文献】特開2005-132309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0176399(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
F16B 17/00-19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグ装置と、
前記エアバッグ装置を覆う第1パネルと、
前記第1パネルと別体をなす第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの取り付けを行う取付クリップとを備えたエアバッグ装置の取付構造であって、
前記第1パネル及び前記第2パネルの一方は、前記取付クリップが一体に設けられた特定パネルとされ、
前記第1パネル及び前記第2パネルの他方には、前記取付クリップが進入する取付孔が形成され、
前記取付クリップは、前記取付孔に向かって延びる基部と、
前記取付孔に進入可能であるとともに、弾性変形によって係合状態と非係合状態とに変形可能な係合爪が形成されたクリップ本体と、
前記クリップ本体よりも前記特定パネルから離隔して配置され、前記係合爪とともに前記取付孔に進入する規制部とを有し、
前記係合爪は、前記係合状態では前記取付孔の周縁部と係合することにより、前記第1パネルと前記第2パネルとを固定する一方、前記非係合状態では前記周縁部と非係合となることにより、前記第1パネルと前記第2パネルとが分離することを許容し、
前記規制部は、前記エアバッグ装置が作動した際の衝撃によって前記周縁部と係合することにより、前記第1パネルと前記第2パネルとが分離することを防止し、
前記規制部は、前記基部に凹設されていることを特徴とするエアバッグ装置の取付構造。
【請求項2】
前記規制部は複数である請求項1記載のエアバッグ装置の取付構造。
【請求項3】
前記基部は、前記特定パネルに一体に形成され
前記クリップ本体は、前記基部に取り付けられいる請求項1又は2記載のエアバッグ装置の取付構造。
【請求項4】
前記規制部は、前記周縁部の板厚よりも大きい請求項1乃至3のいずれか1項記載のエアバッグ装置の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグ装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のエアバッグ装置の取付構造(以下、単に取付構造という。)が開示されている。この取付構造は、エアバッグ装置と、第1パネルと、第2パネルと、取付クリップとを備えている。エアバッグ装置は、具体的にはカーテンエアバッグ装置である。
【0003】
第1パネルはエアバッグ装置を覆っている。第2パネルは第1パネルとは別体をなしている。第2パネルには、取付孔が形成されている。取付クリップは、第1パネル及び第2パネルとは別体に形成されている。そして、取付クリップは、紐状部材を通じて第1パネルに接続されている。
【0004】
この取付構造では、取付クリップが取付孔に挿通されて取付孔に固定される。これにより、この取付構造では、第1パネルと第2パネルとの間にエアバッグ装置を設けつつ、第1パネルと第2パネルとが固定されている。
【0005】
しかし、この取付構造では、取付クリップが第1パネル及び第2パネルと別体であるため部品点数が増加し、コストが増大化する。また、この取付構造では、第1パネルと第2パネルとを固定するに当たって、紐状部材によって取付クリップを第1パネルに接続する必要があるため、第1パネルと第2パネルと容易に固定し難い。
【0006】
そこで、このような取付クリップに換えて、特許文献2に示された取付クリップを採用することが考えられる。特許文献2の取付クリップは、第1パネルに一体に形成されており、取付孔に向かって延びている。また、この取付クリップは係合爪を有している。
【0007】
こうして、特許文献2の取付クリップを採用することにより、部品点数の増加を抑制できる。また、この場合には、取付クリップの係合爪が取付孔に進入しつつ取付孔の周縁部と係合することにより、第1パネルと第2パネルとを固定できる。これらのため、コストの増大化を抑制しつつ、第1パネルと第2パネルとを容易に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-316607号公報
【文献】特開2012-224261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、エアバッグ装置の保守作業の他、エアバッグ装置以外の部品の取付作業や交換作業等を行うため、第1パネルと第2パネルとの固定を解除して、第1パネルと第2パネルとを取り外す必要が生じる場合があり得る。
【0010】
しかし、特許文献2の取付クリップは、一度固定した第1パネルと第2パネルとを取り外すことについて必ずしも想定されているとはいえない。このため、特許文献2の取付クリップでは、第1パネルと第2パネルとを取り外すに当たって、専用の工具を用いて係合爪と取付孔の周縁部との係合を解除する必要がある。これにより、第1パネルと第2パネルとを容易に取り外すことができない。
【0011】
また、特許文献2の取付クリップでは、取付孔が形成された位置によっては、たとえ専用の工具を用いても係合爪と周縁部との係合を解除させることができない場合があり得る。このため、このような場合には、係合爪を破壊して周縁部との係合を解除した上で、第1パネルと第2パネルとを取り外す必要がある。ここで、係合爪、ひいては取付クリップは第1パネルに一体化されているため、係合爪を破壊した場合には、新たな第1パネルに交換して第2パネルと固定し直す必要がある。このため、コストの増大化を招いてしまう。
【0012】
また、エアバッグ装置が作動した際には、その衝撃が第1パネル及び第2パネルに作用する。このため、たとえ取付クリップによって第1パネルと第2パネルを固定していても、エアバッグ装置が作動した際の衝撃によって取付孔から取付クリップが抜けることにより、第1パネルと第2パネルとが意図せずに分離してしまうおそれがある。
【0013】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、低コスト化を実現しつつ、第1パネルと第2パネルとを容易に着脱可能であり、かつ、エアバッグ装置が作動した際に第1パネルと第2パネルとが分離することを確実性高く防止可能なエアバッグ装置の取付構造を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のエアバッグ装置の取付構造は、エアバッグ装置と、
前記エアバッグ装置を覆う第1パネルと、
前記第1パネルと別体をなす第2パネルと、
前記第1パネルと前記第2パネルとの取り付けを行う取付クリップとを備えたエアバッグ装置の取付構造であって、
前記第1パネル及び前記第2パネルの一方は、前記取付クリップが一体に設けられた特定パネルとされ、
前記第1パネル及び前記第2パネルの他方には、前記取付クリップが進入する取付孔が形成され、
前記取付クリップは、前記取付孔に向かって延びる基部と、
前記取付孔に進入可能であるとともに、弾性変形によって係合状態と非係合状態とに変形可能な係合爪が形成されたクリップ本体と、
前記クリップ本体よりも前記特定パネルから離隔して配置され、前記係合爪とともに前記取付孔に進入する規制部とを有し、
前記係合爪は、前記係合状態では前記取付孔の周縁部と係合することにより、前記第1パネルと前記第2パネルとを固定する一方、前記非係合状態では前記周縁部と非係合となることにより、前記第1パネルと前記第2パネルとが分離することを許容し、
前記規制部は、前記エアバッグ装置が作動した際の衝撃によって前記周縁部と係合することにより、前記第1パネルと前記第2パネルとが分離することを防止し、
前記規制部は、前記基部に凹設されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の取付構造では、取付クリップが一体に設けられた第1パネル又は第2パネルが特定パネルとされる。このため、この取付構造では、第1パネルと、第2パネルと、取付クリップとが別体である場合に比べて、部品点数を削減することができる。
【0016】
また、取付クリップは係合爪と規制部とを有している。これらの係合爪及び規制部は、取付孔に進入可能である。ここで、係合爪は弾性変形によって、係合状態と非係合状態とに変形可能である。
【0017】
そして、係合爪は、係合状態では取付孔の周縁部と係合する。これにより、係合爪は第1パネルと第2パネルとを固定する。一方、係合爪は、非係合状態では周縁部と非係合となる。これにより、係合爪は第1パネルと第2パネルとの取り外しを許容する。
【0018】
こうして、この取付構造では、取付孔に取付クリップを進入させて、係合状態にある係合爪を取付孔の周縁部と係合させれば、第1パネルと第2パネルとを容易に固定することができる。また、この取付構造では、エアバッグ装置の保守作業等を行う際には、係合爪を弾性変形させて非係合状態とすれば、第1パネルと第2パネルとを容易に取り外すことが可能となる。また、この取付構造では、係合爪と周縁部とを非係合にするために係合爪を破壊する必要がない。このため、この取付構造では、第1パネルと第2パネルとを取り外した後、再度、第1パネルと第2パネルとを固定するに当たって、取付クリップが形成された新たな第1パネル又は第2パネル、すなわち新たな特定パネルを用意する必要がない。
【0019】
また、取付クリップにおいて、規制部は係合爪が形成されたクリップ本体よりも特定パネルから離隔して配置されており、クリップ本体とともに取付孔に進入する。つまり、規制部は、係合爪よりも取付孔の奥側に進入する。そして、規制部は、エアバッグ装置が作動した際の衝撃によって周縁部と係合する。これにより、この取付構造では、たとえエアバッグ装置が作動した際の衝撃によって係合爪と周縁部との係合が解除されて取付孔から係合爪が脱出したとしても、規制部が周縁部と係合する。こうして、この取付構造では、第1パネルと第2パネルとが分離することを規制部が防止する。つまり、この取付構造では、エアバッグ装置が作動した際に、取付孔から取付クリップが完全に抜け出てしまうことが防止される。
【0020】
したがって、本発明のエアバッグ装置の取付構造によれば、低コスト化を実現しつつ、第1パネルと第2パネルとを容易に着脱可能であり、かつ、エアバッグ装置が作動した際に第1パネルと第2パネルとが分離することを確実性高く防止できる。
【0021】
規制部は複数であることが好ましい。この場合には、取付クリップが規制部を1つだけ有している場合に比べて、エアバッグ装置が作動した際に規制部が周縁部と係合し易くなる。このため、この取付構造では、第1パネルと第2パネルとが分離することをより確実性高く防止できる。
【0022】
取付クリップは、付孔に向かって延びる基部と、係合爪が形成されクリップ本体とを有している。また、基部は特定パネルに一体に形成され、クリップ本体は、基部に取り付けられいることが好ましい。
【0023】
れにより、たとえ係合爪が損傷したり劣化したりした場合であっても、クリップ本体のみを交換することにより、取付クリップ全体、ひいては特定パネル全体を交換する必要がない。このため、この取付構造では、コストをより低減させることができる。また、係合爪が弾性変形し易くなるように、基部とクリップ本体とを異なる材質で形成することも容易となる
【0024】
また規制部は、基部に凹設されてい。このため、この取付構造では、取付孔に取付クリップを進入させるに当たって、規制部が妨げとなり難い。
【0025】
また、規制部は、周縁部の板厚よりも大きいことが好ましい。これにより、この取付構造では、規制部の内部に周縁部を好適に進入させつつ、規制部が周縁部と係合するため、規制部と周縁部とを十分に係合させることが可能となる。
【発明の効果】
【0026】
本発明のエアバッグ装置の取付構造によれば、本発明のエアバッグ装置の取付構造によれば、低コスト化を実現しつつ、第1パネルと第2パネルとを容易に着脱可能であり、かつ、エアバッグ装置が作動した際に第1パネルと第2パネルとが分離することを確実性高く防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、実施例1の取付構造が用いられたインスツルメントパネルの一部を示す斜視図である。
図2図2は、実施例1の取付構造に係り、図1のX領域を第2パネルの前方から見た背面図である。
図3図3は、実施例1の取付構造に係り、図1のA-A断面を示す要部拡大断面図である。
図4図4は、実施例1の取付構造に係り、取付クリップを示す拡大断面図である。
図5図5は、実施例1の取付構造に係り、クリップ本体を示す斜視図である。
図6図6は、実施例1の取付構造に係り、取付クリップの分解図である。
図7図7は、実施例1の取付構造に係り、第1パネルと第2パネルとを固定する際の図3と同様の要部拡大断面図である。
図8図8は、実施例1の取付構造に係り、第1パネルと第2パネルとの取り外しを行う際の図3と同様の要部拡大断面図である。
図9図9は、実施例1の取付構造に係り、規制部が取付孔の周縁部に係合する状態を示す図3と同様の要部拡大断面図である。
図10図10は、実施例2の取付構造に係り、取付クリップを示す拡大断面図である。
図11図11は、実施例3の取付構造に係り、取付クリップを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を具体化した実施例1~3を図面を参照しつつ説明する。
【0029】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1の取付構造1は、車両(図示略)に採用されている。より具体的には、取付構造1は、車両のインスツルメントパネル100に用いられている。インスツルメントパネル100は、車室CR内に配置されている。
【0030】
本実施例では、図1に示す矢印によって、車両及び車室CRの上下方向、左右方向及び前後方向を規定している。そして、図2以降では、図1に対応して上下方向、左右方向及び前後方向を規定している。これらの上下方向、左右方向及び前後方向は互いに直交している。
【0031】
取付構造1は、図1に示すニーエアバッグ装置3と、第1パネル5と、第2パネル7と、第3パネル9と、図2に示す取付クリップ11とを備えている。ニーエアバッグ装置3は、本発明における「エアバッグ装置」の一例である。
【0032】
図1に示すニーエアバッグ装置3は公用品であり、図示しないニーエアバッグ本体及びインフレータ等で構成されている。ニーエアバッグ装置3は、インスツルメントパネル100内に配置されており、インスツルメントパネル100の下部に位置している。なお、図1及び図3等では、説明を容易にするため、ニーエアバッグ装置3を簡略化して図示している。また、図示を省略しているものの、インスツルメントパネル100内には、ニーエアバッグ装置3の他にも、車両の走行に必要な他の装置が配置されている。
【0033】
第1パネル5は、上下方向及び左右方向に延びる略板状に形成されている。第1パネル5は樹脂製である。第1パネル5は、インスツルメントパネル100の下部であって、ニーエアバッグ装置3の後方に位置している。これにより、第1パネル5は、インスツルメントパネル100の下部を構成している。また、第1パネル5は、ニーエアバッグ装置3から後方に離隔しつつ、ニーエアバッグ装置3を後方から覆っている。
【0034】
図3に示すように、第1パネル5は、第1パネル本体51と、リブ52~54とを有している。第1パネル本体51は上下方向及び左右方向に延びている。第1パネル本体51は、第1表面51aと、第1裏面51bとを有している。第1表面51aは、第1パネル5の意匠面、ひいては、インスツルメントパネル100の下部の意匠面を構成している。第1裏面51bは、第1表面51aの反対側に位置しており、ニーエアバッグ装置3と対向している。
【0035】
第1パネル本体51における左側は前方に向かって屈曲している。また、第1パネル本体51の左端には、取付孔55が形成されている。取付孔55は、第1パネル本体51を第1表面51aから第1裏面51bまで前後方向に貫通している。また、第1パネル本体51において、取付孔55の周囲となる箇所は、取付孔55の周縁部55aを構成している。換言すれば、第1パネル本体51において、後述する第1、2係合爪31、33及び第1、2規制部21、22と係合する個所が周縁部55aである。この周縁部55aの板厚の大きさは、第1板厚T1に設定されている。第1板厚T1の値は適宜設計可能である。なお、図示を省略するものの、第1パネル本体51の右端にも、取付孔55と同様の取付孔が形成されている。
【0036】
リブ52~54は、それぞれ第1パネル本体51の第1裏面51bに一体に形成されており、第1裏面51bから前方に向かって延びている。これにより、リブ52~54は、第1パネル本体51、ひいては第1パネル5の剛性を確保している。なお、リブ52~54の形状や個数は適宜設計可能である。
【0037】
図1に示すように、第2パネル7は第1パネル5とは別体に形成されている。第2パネル7は、上下方向及び左右方向に延びる略板状をなしている。第1パネル5と同様、第2パネル7も樹脂製である。第2パネル7は、第1パネル5の左方に配置されており、インスツルメントパネル100の左部を構成している。
【0038】
図3に示すように、第2パネル7は、第2パネル本体71と、取付台座73とを有している。第2パネル本体71は上下方向及び左右方向に延びている。第2パネル本体71は、第2表面71aと、第2裏面71bとを有している。第2表面71aは、第2パネル7の意匠面、ひいては、インスツルメントパネル100の左部分の意匠面を構成している。第2裏面71bは、第2表面71aの反対側に位置している。
【0039】
取付台座73は、第2裏面71bの右端に一体に形成されており、第2裏面71bから前方に向かって突出している。なお、図示を省略するものの、第2パネル7についても、剛性を確保するための複数のリブを有している。
【0040】
図1に示すように、第3パネル9は、第1パネル5及び第2パネル7とは別体に形成されている。第3パネル9は、上下方向及び左右方向に延びる略板状をなしている。第1、2パネル5、7と同様、第3パネル9も樹脂製である。第3パネル9は、第1パネル5の右方に配置されており、インスツルメントパネル100において、第1パネル5よりも右側部分を構成している。
【0041】
第3パネル9は、第3パネル本体91と、第1取付部93と、第2取付部95とを有している。第3パネル本体91は、第3表面91aと、第3裏面91bとを有している。第3表面91aは、第3パネル9の意匠面、ひいては、インスツルメントパネル100における第1パネル5よりも右側部分の意匠面を構成している。第3裏面91bは、第3表面91aの反対側に位置している。
【0042】
第1取付部93及び第2取付部95は、第3パネル本体91の右端に一体に形成されている。第1取付部93及び第2取付部95は、インスツルメントパネル100において、第3パネル9よりも右側に位置する他のパネルやコンソールボックス(いずれも図示略)に対する第3パネル9の取り付けを行う。なお、第1~3パネル5、7、9の各形状は、インスツルメントパネル100の形状に応じて適宜設計可能である。
【0043】
図2に示すように、取付クリップ11は、第2パネル7に一体に設けられており、第2パネル7から前方に向かって延びている。これにより、第2パネル7は、本発明における「特定パネル」となっている。
【0044】
より具体的には、取付クリップ11は、基部11aと、クリップ本体11bとで構成されている。基部11aは、第2パネル7の取付台座73に一体に形成されている。これにより、第2パネル7と同様、基部11aは樹脂製となっている。また、基部11aが第2パネル7の取付台座73に一体に形成されることにより、基部11a、ひいては取付クリップ11は、第2パネル本体71の第2裏面71b側であって、第2パネル本体71の右端となる個所に位置している。
【0045】
基部11aは、図4に示す基部本体110と、第1延在部111と、図2に示す第2延在部112とを有している。
【0046】
図4に示すように、基部本体110は、取付台座73から取付孔55に向かって前方に延びている。また、基部本体110には、係合孔113が形成されている。係合孔113は、基部本体110を左右方向に貫通している。
【0047】
図2に示すように、第1延在部111と第2延在部112とは、同一の形状である。第1延在部111は、基部本体110の下方に位置しており、取付台座73から前方に向かって延びている。第1延在部111は、基部本体110の下端と一体をなしている。第2延在部112は、基部本体110の上方に位置しており、取付台座73から前方に向かって延びている。第2延在部112は、基部本体110の上端と一体をなしている。こうして、第1延在部111と第2延在部112とは、互いの間に基部本体110を挟みつつ、上下に配置されている。
【0048】
また、第1延在部111には第1規制部21が形成されており、第2延在部112には第2規制部22が形成されている。これらの第1規制部21及び第2規制部22は、本発明における「規制部」の一例である。第1規制部21と第2規制部22とは、同一の形状である。以下、第1規制部21を基に構成を説明する。
【0049】
図4に示すように、第1規制部21は、第1延在部111において、右端から左方に向かって略区形状に凹設されている。これにより、第1規制部21は、右方に臨んでいる。また、第1規制部21における前後方向の幅は、第1幅W1となっている。ここで、第1幅W1は、周縁部55aの第1板厚T1よりも長く設定されている。これにより、第1規制部21は、周縁部55aの第1板厚T1よりも大きく形成されている。
【0050】
また、第1規制部21は、第1延在部111において、クリップ本体11bよりも前方となる位置に形成されている。図2に示すように、第2規制部22は、第2延在部112において、クリップ本体11bよりも前方となる位置に形成されている。これにより、取付クリップ11において、第1規制部21及び第2規制部22は、第1係合爪31及び第2係合爪33、ひいてはクリップ本体11bよりも第2パネル7の第2パネル本体71から前方に離隔して配置されている。また、第1規制部21と第2規制部22とは上下方向で整列している。なお、第1規制部21及び第2規制部22の形状や個数は適宜設計可能である。
【0051】
クリップ本体11bは樹脂製である。ここで、クリップ本体11bは、基部11a、ひいては、第2パネル7よりも軟質の樹脂で形成されている。図5に示すように、クリップ本体11bは、第1係合爪31と、第2係合爪33と、第1固定片35と、第2固定片37とを有している。第1係合爪31及び第2係合爪33は、本発明における「係合爪」の一例である。
【0052】
第1係合爪31は、第1部位31aと、第2部位31bと、第3部位31cと、第1操作部31dとで構成されている。第1部位31aは、前端から後方に向かうにつれて第2係合爪33から右方に離隔するように延びている。これにより、第1部位31aの後端は、第2係合爪33から右方に最も離隔している。また、第1部位31aには、第2係合爪33に向かって突出する第1突起311が形成されている。
【0053】
第2部位31bは、第1部位31aの後端と接続している。第2部位31bは、第2係合爪33に近づくように左方に向かいつつ後方に延びている。第3部位31cは、第2部位31bの後端と接続しており、後方に向かって直線状に延びている。第1操作部31dは、第3部位31cの後端と接続しており、第3部位31cの右方に向かって突出している。
【0054】
第2係合爪33は、前端で第1係合爪31と一体をなしている。第2係合爪33は、第4部位33aと、第5部位33bと、第6部位33cと、第2操作部33dとで構成されている。第2係合爪33は、第1係合爪31と左右対称の形状である。これにより、第4部位33aは、第1部位31aと左右対称の形状となっており、第5部位33bは、第2部位31bと左右対称の形状となっている。また、第6部位33cは、第3部位31cと左右対称の形状となっており、第2操作部33dは、第1操作部31dと左右対称の形状となっている。また、第4部位33aは、前端で第1部位31aの前端と一体をなしている。さらに、第4部位33aには、第1係合爪31に向かって突出する第2突起331が形成されている。
【0055】
第1固定片35は、第1係合爪31に一体に形成されており、第1係合爪31よりも左側に位置している。第2固定片37は、第2係合爪33に一体に形成されており、第2係合爪33よりも右側に位置している。これにより、第1固定片35と第2固定片37とは、第1係合爪31と第2係合爪33との間に位置しており、左右方向で対向している。
【0056】
より具体的には、第1固定片35は、第1係合爪31を切欠きつつ、第1係合爪31における上下方向の中央部分を左方に屈曲させることで形成されている。同様に、第2固定片37は、第2係合爪33を切欠きつつ、第2係合爪33における上下方向の中央部分を右方に屈曲させることで形成されている。
【0057】
また、第1固定片35には、第2固定片37に向かって突出する第1保持突起35aが形成されており、第2固定片37には、第1固定片35に向かって突出する第2保持突起37aが形成されている。第1保持突起35aと第2保持突起37aとは対向している。
【0058】
さらに、第1固定片35と第2固定片37とは、互いの間に収容部39を形成している。収容部39は、第1保持突起35a及び第2保持突起37aよりも前方に位置している。
【0059】
クリップ本体11bでは、第1係合爪31及び第2係合爪33は、弾性変形することにより、図3図7及び図9に示す係合状態と、図8示す非係合状態とに変形可能となっている。そして、このクリップ本体11bでは、通常の状態では、第1係合爪31及び第2係合爪33が図3等に示す係合状態を維持するようになっている。
【0060】
係合状態にある第1係合爪31及び第2係合爪33を非係合状態に変形させるに当たっては、例えば図8に示す黒色矢印で示すように、第1操作部31dを左方に向けて押圧するとともに、第2操作部33dを右方に向けて押圧する。これにより、第1係合爪31と第2係合爪33とは、互いに接近するように弾性変形することにより、係合状態から非係合状態となる。なお、第1部位31aを左方に向けて押圧し、第4部位33aを右方に向けて押圧することで第1係合爪31及び第2係合爪33を非係合状態に変形させても良い。
【0061】
一方、第1、2操作部31d、33dや第1、4部位31a、33aに対する押圧を解除すれば、第1固定片35と第2固定片37とは係合状態に変形する。つまり、第1固定片35と第2固定片37とは、非係合状態から係合状態に復帰する。
【0062】
ここで、第1係合爪31及び第2係合爪33は、第1固定片35と第2固定片37とは独立して係合状態と非係合状態とに弾性変形する。つまり、このクリップ本体11bでは、第1係合爪31及び第2係合爪33が係合状態や非係合状態に弾性変形するに当たって、第1固定片35及び第2固定片37は弾性変形することがない。
【0063】
また、詳細な図示を省略するものの、このクリップ本体11bでは、第1保持突起35aと第2保持突起37aとが左右方向に離隔するように、第1固定片35と第2固定片37とを弾性変形させることも可能となっている。
【0064】
図4に示すように、取付クリップ11では、基部11aにクリップ本体11bが取り付けられている。基部11aにクリップ本体11bを取り付けるに当たっては、図6に示すように、基部11aの基部本体110に対して、クリップ本体11bを前方に位置させる。そして、図6の破線矢印で示すように、クリップ本体11b後方に移動させてクリップ本体11bを基部本体110に接近させる。これにより、第1保持突起35a及び第2保持突起37aと、基部本体110とが当接する。この状態でさらにクリップ本体11b後方に移動させることにより、第1固定片35と第2固定片37とが弾性変形し、第1保持突起35a及び第2保持突起37aを含め、第1固定片35と第2固定片37とが左右方向に離隔するように弾性変形する。このため、基部本体110の先端部分、すなわち、基部本体110において係合孔113よりも前方側となる部分が収容部39内に進入し始める。
【0065】
そして、第1保持突起35a及び第2保持突起37aが係合孔113内に至ることにより、第1固定片35と第2固定片37との弾性変形が解除される。このため、図4に示すように、第1保持突起35a及び第2保持突起37aは、係合孔113内に位置して係合孔113に係合する。また、基部本体110の先端部分が収容部39内に収容される。こうして、基部11aにクリップ本体11bが取り付けられている。
【0066】
また、この取付クリップ11では、基部11aに対してクリップ本体11bを前方に移動させることにより、第1固定片35と第2固定片37とが弾性変形しつつ、第1保持突起35a及び第2保持突起37aが係合孔113内から脱出する。これにより、基部11aに対してクリップ本体11bを前方に引き抜くことができる。このように、この取付クリップ11では、基部11aに対してクリップ本体11bが着脱可能となっている。
【0067】
ここで、図2等では、第2パネル7に設けられた取付クリップ11を1つだけ図示しているが、第2パネル7には、取付クリップ11が複数設けられている。そして、第1パネル5には、取付クリップ11の個数及び取付クリップ11の位置に対応して、取付孔55が形成されている。なお、図示を省略するものの、第3パネル9にも第2パネル7と同様に取付クリップ11が設けられている。
【0068】
以上のように構成された取付構造1では、以下のようにして、第1パネル5と第2パネル7とを固定する。まず初めに、第2パネル7を第1パネル5の左後方に配置する。そして、第1パネル5の取付孔55に対して取付クリップ11を後方に位置させて、取付孔55と取付クリップ11とを前後方向で対向させる。なお、この際、取付クリップ11では、基部11aにクリップ本体11bが取り付けられている。
【0069】
次に、図7の白色矢印で示すように、第2パネル7を第1パネル5に向けて前方に移動させて、取付孔55内に取付クリップ11を前方から進入させる。ここで、取付クリップ11では、基部11aの第1、2延在部111、112に対して第1、2規制部21、22がそれぞれ形成されており、第1、2規制部21、22は、クリップ本体11bよりも取付クリップ11における前方側に位置している。このため、取付孔55内に取付クリップ11を前方から進入させることにより、取付クリップ11では、第1、2規制部21、22がクリップ本体11bよりも先に取付孔55内に進入する。
【0070】
そして、取付孔55内に取付クリップ11をさらに進入させることにより、クリップ本体11bでは、第1係合爪31の第1部位31aと、第2係合爪33の第4部位33aとがそれぞれ、取付孔55の周縁部55aに当接する。これにより、第1係合爪31及び第2係合爪33は、周縁部55aから押圧されることで、非係合状態に弾性変形する。そして、この状態のまま第1係合爪31及び第2係合爪33、ひいてはクリップ本体11bは、取付孔55内に進入する。また、第1、2規制部21、22は、取付孔55内を越えて、取付孔55よりも前方に位置する。つまり、第1、2規制部21、22は、第1係合爪31及び第2係合爪33よりも取付孔55の奥側に位置する。
【0071】
そして、クリップ本体11bが取付孔55内をさらに進入し、第1部位31a及び第4部位33aが取付孔55を越えれば、第1係合爪31及び第2係合爪33に対する周縁部55aからの押圧が解除される。このため、第1係合爪31及び第2係合爪33は、非係合状態から係合状態に弾性変形する。これにより、図3に示すように、第1係合爪31及び第2係合爪33は、周縁部55aと係合する。こうして、この取付構造1では、取付クリップ11によって、第1パネル5と第2パネル7とを固定することが可能となっている。また、図示を省略するものの、第1パネル5と第3パネル9とについても同様にして固定されている。
【0072】
こうして、図1に示すように、インスツルメントパネル100において、第1パネル5は、第2パネル7と第3パネル9との間に配置される。これにより、第1パネル5は、インスツルメントパネル100内に設けられたニーエアバッグ装置3を後方から覆う状態となっている。
【0073】
ところで、ニーエアバッグ装置3やインスツルメントパネル100内に設けられた他の装置の保守作業を行なったり、インスツルメントパネル100内に新たな装置を取り付けたりするため、第1パネル5と第2、3パネル7、9とを取り外す必要が生じ得る。そこで、このような場合、この取付構造1では、以下のようにして、第1パネル5と第2パネル7とを取り外す。
【0074】
第1パネル5と第2パネル7とを取り外すに当たっては、図8に示す黒色矢印で示すように、第1操作部31dを左方に向けて押圧するとともに、第2操作部33dを右方に向けて押圧する。または、第1部位31aを左方に向けて押圧し、第4部位33aを右方に向けて押圧する。これにより、係合状態にある第1係合爪31及び第2係合爪33を非係合状態に弾性変形させる。こうして、第1係合爪31及び第2係合爪33と、周縁部55aとの係合を解除させる。
【0075】
そして、第1係合爪31及び第2係合爪33を非係合状態に維持しつつ、図8の白色矢印で示すように、第1パネル5に対して第2パネル7を後方に移動させて、取付孔55内から取付クリップ11を後方に移動させる。この際、取付クリップ11が取付孔55に対して傾斜しないように、第1パネル5に対して、第2パネル7を前後方向に平行な状態で後方に移動させる。
【0076】
こうして、取付孔55内から、第1係合爪31及び第2係合爪33を含めクリップ本体11bが取付孔55内から後方に脱出するとともに、第1、2規制部21、22を含め第1、2延在部111、112が取付孔55内から後方に脱出する。つまり、取付孔55内から取付クリップ11が後方に脱出する。そして、取付孔55内から取付クリップ11が後方に完全に脱出することにより、第1パネル5と第2パネル7との取り外しが完了する。なお、クリップ本体11bが取付孔55内から後方に脱出した後は、第1係合爪31及び第2係合爪33を係合状態に復帰させても良い。
【0077】
このように、第1パネル5と第2パネル7との取り外しが完了することにより、第1パネル5と第2パネル7とを分離させることが可能となる。また、図示を省略するものの、第1パネル5と第3パネル9とについても同様にして取り外しを行うことで、第1パネル5と第3パネル9とを分離させることが可能となる。こうして、この取付構造1では、ニーエアバッグ装置3の保守作業等を行なうことが可能となっている。
【0078】
ニーエアバッグ装置3の保守作業等が完了した後は、先に説明した手順によって、第1パネル5と第2パネル7とを再度固定するとともに、第1パネル5と第3パネル9とを再度固定する。
【0079】
このように、この取付構造1では、第2パネル7の第2パネル本体71に対して、取付クリップ11の基部11aが一体に形成されている。このため、この取付構造1では、第2パネル本体71と基部11aとが別体である場合に比べて、部品点数を削減することが可能となっている。また、この取付構造1では、第2パネル本体71に対し、基部11aを含め、取付クリップ11を取り付けるための作業を行う必要がない。さらに、第2パネル本体71に対する取付クリップ11の位置決めを行う必要もない。この結果、第1パネル5と第2パネル7との固定や第1パネル5と第3パネル9との固定を容易に行うことが可能となっている。
【0080】
そして、この取付構造1では、一度固定された第1パネル5と第2、3パネル7、9とについて、取り外しが行われることが予め想定されており、第1係合爪31及び第2係合爪33が係合状態と非係合状態とに弾性変形することが可能となっている。
【0081】
このため、この取付構造1では、例えば第1パネル5と第2パネル7との取り外しを行うに当たって、第1、2係合爪31、33と周縁部55aとを非係合にするために第1、2係合爪31、33を破壊する必要がない。このため、この取付構造1では、第1パネル5と第2パネル7とを取り外した後、再度、第1パネル5と第2パネル7とを固定するに当たって、取付クリップ11が形成された新たな第2パネル7を用意する必要がない。
【0082】
ここで、インスツルメントパネル100内に設けられたニーエアバッグ装置3は、例えば車両が衝突体に衝突した場合等に作動する。これにより、ニーエアバッグ装置3では、インフレータがニーエアバッグ本体を展開させる。これにより、ニーエアバッグ本体は、第1パネル5の一部を破壊しつつ、インスツルメントパネル100の下部で車室CRに展開し、車両の乗員(図示略)の膝を保護する。
【0083】
そして、図9に示すように、ニーエアバッグ本体が展開する際の衝撃、すなわち、ニーエアバッグ装置3が作動した際の衝撃Fは、第1~3パネル5、7、9にそれぞれ作用する。より具体的は、図9の白色矢印で示すように、衝撃Fは、ニーエアバッグ装置3から後方に向かって放射状に広がりつつ、第1~3パネル5、7、9に作用する。また、この衝撃Fは非常に大きいため、第1~3パネル5、7、9は、衝撃Fによって、後方に強く押圧される状態となる。
【0084】
このため、第1パネル5と第2パネル7とを例に挙げて説明すると、この取付構造1では、たとえ取付クリップ11によって、第1パネル5と第2パネル7とが固定されていても、第2パネル7が衝撃Fによって後方に強く押圧されることで、第1パネル5に対して第2パネル7が後方に移動し得る。ここで、上記のように、衝撃Fは後方に向かって放射状に広がりつつ、第1パネル5や第2パネル7に作用する。このため、衝撃Fによって、第2パネル7は、第1パネル5に対して前後方向に平行ではなく、図9の黒色矢印で示すように、一定程度傾斜した状態で後方に移動することになる。
【0085】
この結果、取付クリップ11では、第1、2係合爪31、33と周縁部55aとの係合が意図せずに解除されてしまい、第1、2係合爪31、33が取付孔55から後方に脱出してしまう場合があり得る。つまり、取付クリップ11が取付孔55から抜けようとする。
【0086】
しかし、この取付クリップ11では、仮に第1、2係合爪31、33と周縁部55aとの係合が意図せずに解除されてしまった場合であっても、第2パネル7が第1パネル5に対して一定程度傾斜した状態で後方に移動することで、第1延在部111において第1規制部21が周縁部55aに係合する。より具体的には、第1規制部21における第1幅W1は、周縁部55aの第1板厚T1よりも長いため、第1規制部21は、自己の内部に周縁部55aを進入させつつ、周縁部55aと係合する。また、図2に示す第2延在部112においても第2規制部22が第1規制部21と同様にして周縁部55aと係合する。
【0087】
これにより、第1規制部21及び第2規制部22は、第1延在部111及び第2延在部112が取付孔55から後方に脱出することを防止する。こうして、この取付構造1では、ニーエアバッグ装置3が作動した際の衝撃Fによって、第1パネル5と第2パネル7とが分離することを第1、2規制部21、22が防止する。なお、図示を省略するものの、この取付構造1では、ニーエアバッグ装置3が作動した際の衝撃Fによって、第1パネル5と第3パネル9とが分離することも同様に防止する。
【0088】
このように、この取付構造1では、第1、2係合爪31、33が取付孔55から後方に脱出することで、取付クリップ11において、クリップ本体11bが取付孔55から抜け出てしまったとしても、第1、2規制部21、22が周縁部55aと係合することで、基部11aの第1、2延在部111、111が取付孔55から抜け出ることは防止される。つまり、この取付構造1では、ニーエアバッグ装置3が作動した際に、取付孔55から取付クリップ11が完全に抜けてしまうことを防止できる。
【0089】
したがって、実施例1の取付構造1によれば、低コスト化を実現しつつ、第1パネル5と第2、3パネル7、9とを容易に着脱可能であり、かつ、ニーエアバッグ装置3が作動した際に第1パネル5と第2、3パネル7、9とが分離することを確実性高く防止できる。
【0090】
特に、この取付構造1では、取付クリップ11の基部11aにおいて、第1延在部111に第1規制部21が形成されており、第2延在部112に第2規制部22が形成されている。このため、この取付構造1では、第1規制部21と第2規制部22との2つがそれぞれ周縁部55aに係合することで、周縁部55aと係合し易くなっている。また、第1規制部21及び第2規制部22が周縁部55aに係合することにより、第1規制部21及び第2規制部22と周縁部55aとを強固に係合させることが可能となっている。
【0091】
また、このように、第1、2規制部21、22を第1、2延在部111、112、すなわち基部11aに形成することにより、第1、2規制部21、22をクリップ本体11bに形成する場合に比べて、第1、2規制部21、22の形成も容易となっている。
【0092】
さらに、この取付構造1では、取付クリップ11の基部11aとクリップ本体11bとが別体をなしており、基部11aに対してクリップ本体11bが着脱可能となっている。このため、例えば、クリップ本体11bについては公用品を用いることも可能となっている。また、この取付構造1では、仮に第1係合爪31や第2係合爪33が損傷したり劣化したりした場合であっても、クリップ本体11bのみを交換することが可能となっている。この点においても、この取付構造1では、低コスト化が可能となっている。
【0093】
また、この取付構造1では、基部11aとクリップ本体11bとを異なる材質で形成したり、基部11aとクリップ本体11bとを共に樹脂製としつつも、基部11aとクリップ本体11bとで剛性に差を設けたりすることも容易となっている。このため、取付クリップ11では、基部11aについては十分な剛性を確保しつつも、第1係合爪31や第2係合爪33については好適に弾性変形させることが可能となっている。
【0094】
また、この取付構造1では、第1、2規制部21、22が第1、2延在部111、112にそれぞれ凹設されている。このため、第1、2規制部21、22は、第1、2延在部111、112から外部に向かって突出することがない。これにより、この取付構造1では、取付孔55内に取付クリップ11を進入させるに当たって、第1、2規制部21、22が妨げとなり難くなっている。
【0095】
さらに、第1、2規制部21、22における第1幅W1は、周縁部55aの第1板厚T1よりも長なっており、第1、2延在部111、112に対して、第1、2規制部21、22は、周縁部55aの第1板厚T1よりも大きく形成されている。これにより、第1、2規制部21、22は、それぞれ自己の内部に周縁部55aを進入させることにより、周縁部55aと好適に係合することが可能となっている。
【0096】
(実施例2)
図10に示すように、実施例2の取付構造1では、取付クリップ11の第1延在部111に対して、第1規制部21の他に、第3規制部23が形成されている。第1規制部21と第3規制部23とは、第1延在部111の左右方向、すなわち取付クリップ11の幅方向に整列している。
【0097】
第3規制部23は、第1延在部111において、左端から右方に向かって略区形状に凹設されている。これにより、第3規制部23は、左方に臨んでいる。ここで、第1規制部21と第3規制部23とは非連通となっている。また、第1規制部21と同様、第3規制部23における前後方向の幅についても第1幅W1となっている。つまり、第1規制部21と第3規制部23とは左右対称の形状である。
【0098】
また、詳細な図示を省略するものの、第2延在部112に対しても第2規制部22の他に、第4規制部が形成されている。第4規制部は第3規制部23と同一の構成である。この取付構造1における他の構成は実施例1の取付構造と同一であり、同一の構成については同一の符号を付して構成に関する詳細な説明を省略する。
【0099】
この取付構造1では、仮に第1、2係合爪31、33と周縁部55aとの係合が意図せずに解除されてしまった場合、第1延在部111において第1規制部21又は第2規制部22のいずれかが周縁部55aに係合する。ここで、第1規制部21又は第2規制部22のいずれが周縁部55aに係合するかは、第2パネル7が第1パネル5に対して後方に移動する際の傾斜角度によって決定される。
【0100】
これにより、この取付構造1では、第2パネル7が第1パネル5に対して後方に移動する際の傾斜角度によって、たとえ第1規制部21が周縁部55aと係合し得ない場合であっても、第3規制部23が周縁部55aと係合できる。これにより、この取付構造1では、第1パネル5と第2パネル7とが分離することを防止できる。
【0101】
また、第2延在部112においても第2規制部22又は第4規制部のいずれかが周縁部55aと係合する。ここで、第1規制部21が周縁部55aと係合した場合には、第2規制部22が周縁部55aと係合することになる。一方、第3規制部23が周縁部55aと係合した場合には、第4規制部が周縁部55aと係合することになる。
【0102】
こうして、この取付構造1においても、ニーエアバッグ装置3が作動した際の衝撃Fによって、第1パネル5と第2パネル7とが分離することが確実性高く防止される。なお、この取付構造1では、ニーエアバッグ装置3が作動した際の衝撃Fによって、第1パネル5と第3パネル9とが分離することも確実性高く防止される。この取付構造1における他の作用は、実施例1の取付構造1と同様である。
【0103】
(実施例3)
図11に示すように、実施例3の取付構造1では、実施例2の取付構造と異なり、取付クリップ11の第1延在部111において、第1規制部21と第3規制部23とが前後方向に整列している。つまり、実施例3の取付構造1では、第3規制部23が第1規制部21と同様に、右方に臨んでいる。また、第1規制部21と第3規制部23とは前後方向で非連通となっている。
【0104】
また、詳細な図示を省略するものの、第2延在部112に対しても第2規制部22と第4規制部とが前後方向に整列している。この取付構造における他の構成は、実施例1、2の取付構造1同様である。
【0105】
この取付構造1では、たとえ第1規制部21が周縁部55aと係合し得なかった場合であっても、第3規制部23が周縁部55aと係合することができる。また、第2延在部112においても、たとえ第2規制部22が周縁部55aと係合し得なかった場合であっても、第4規制部が周縁部55aと係合することができる。
【0106】
この結果、この取付構造1でも、ニーエアバッグ装置3が作動した際の衝撃Fによって、第1パネル5と第2パネル7とが分離することが確実性高く防止される。なお、この取付構造1では、ニーエアバッグ装置3が作動した際の衝撃Fによって、第1パネル5と第3パネル9とが分離することも確実性高く防止される。この取付構造1における他の作用は、実施例1の取付構造1と同様である。
【0107】
以上において、本発明を実施例1~3に即して説明したが、本発明は上記実施例1~3に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0108】
例えば、実施例1の取付構造1では、第2パネル7の第2パネル本体71に取付クリップ11を一体で設けることにより、第2パネル7を本発明における「特定パネル」としている。しかし、これに限らず、第1パネル5の第1パネル本体51に取付クリップ11を一体で設けることにより、第1パネル5を本発明における「特定パネル」としても良い。実施例2、3の取付構造1についても同様である。
【0109】
また、実施例1の取付構造1において、取付クリップ11の基部11aを金属製とし、取付台座73から基部11aを前方に突出させた状態で基部11aを第2パネル7にインサート成形することによって、第2パネル7に基部11aを一体に設けても良い。また、クリップ本体11b金属製としても良い。実施例2、3の取付構造1についても同様である。
【0110】
さらに、実施例1の取付構造1において、第2延在部112及び第2規制部22を省略して取付クリップ11を形成しても良い。実施例2、3の取付構造1についても同様である。
【0112】
さらに、実施例1の取付構造1において、基部11aに第1係合爪31及び第2係合爪33を一体に形成しても良い。実施例2、3の取付構造1についても同様である。
【0113】
また、実施例1の取付構造1において、クリップ本体11bに第1規制部21及び第2規制部22を一体に形成しても良い。実施例2、3の取付構造1についても同様である。
【0114】
さらに、実施例1の取付構造1において、第1パネル5と第3パネル9とは、取付クリップ11以外によって固定されても良い。実施例2、3の取付構造1についても同様である。
【0115】
また、実施例1の取付構造1では、ニーエアバッグ装置3を本発明における「エアバッグ装置」としているが、これに限らず、カーテンエアバッグ装置やサイドエアバッグ装置等を本発明における「エアバッグ装置」としても良い。さらに、エアバッグ装置は、第1パネルと第2パネルとの間に設けられても良い。また、本発明における「第1パネル」や「第2パネル」は、車両のボディパネル等であっても良い。実施例2、3の取付構造1についても同様である。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、乗用自動車の他、運送車両や産業車両等の車両に利用可能である。
【符号の説明】
【0117】
1…取付構造(エアバッグ装置の取付構造)
3…ニーエアバッグ装置(エアバッグ装置)
5…第1パネル
7…第2パネル(特定パネル)
11…取付クリップ
11a…基部
11b…クリップ本体
21…第1規制部(規制部)
22…第2規制部(規制部)
23…第3規制部(規制部)
31…第1係合爪(係合爪)
33…第2係合爪(係合爪)
55…取付孔
55a…周縁部
F…衝撃
T1…第1板厚(板厚)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11