(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】空気処理装置および空気処理方法
(51)【国際特許分類】
H05B 6/64 20060101AFI20240109BHJP
H05B 6/76 20060101ALI20240109BHJP
H05B 6/78 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H05B6/64 G
H05B6/64 H
H05B6/76 Z
H05B6/78 Z
(21)【出願番号】P 2021056288
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2020060714
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 有理
(72)【発明者】
【氏名】田中 健二
(72)【発明者】
【氏名】奥野 大樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 雄二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 知
(72)【発明者】
【氏名】小澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】椿 俊太郎
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-053793(JP,A)
【文献】国際公開第2015/083733(WO,A1)
【文献】特開2011-252387(JP,A)
【文献】特開平11-197443(JP,A)
【文献】特開平07-000750(JP,A)
【文献】特開2005-134097(JP,A)
【文献】特開2018-055940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/64-6/80
F24F 3/00-3/167
B01D 53/26-53/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材と、
少なくとも特定の周波数のマイクロ波を出力する半導体式発振器により前記吸着部材を加熱して前記分子の吸着前の状態に前記吸着部材を再生する再生手段と、
前記半導体式発振器のマイクロ波がアンテナによって内部に放射され、前記特定の周波数のマイクロ波で共振が発生し、かつ、当該特定の周波数帯のマイクロ波を遮蔽する構造を有する加熱炉と、
前記加熱炉内に前記吸着部材を搬送する搬送機構と、を備え、
前記アンテナは、前記吸着部材の対向面、もしくは、前記加熱炉の内面近傍に配置され、
前記加熱炉は、前記吸着部材を板面に配置し、回転軸方向に通気空洞が形成されている多孔質ハニカム構造を有する円柱状の部材の一部を、送風路を介して流入した前記空気を加熱して前記円柱状の部材の板面に案内する入力側部材と、前記円柱状の部材の通気空洞を介した空気を外部へ出力する出力側部材とで覆い、
前記搬送機構は、前記円柱状の部材を周方向に回転することで前記吸着部材を前記加熱炉に搬送する、
ことを特徴とする空気処理装置。
【請求項2】
空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材と、
少なくとも特定の周波数のマイクロ波を出力する半導体式発振器により前記吸着部材に吸着した前記分子を加熱して前記吸着部材を前記分子の吸着前の状態に再生する再生手段と、
前記半導体式発振器のマイクロ波がアンテナによって内部に放射され、前記特定の周波数のマイクロ波で共振が発生し、かつ、当該特定の周波数帯のマイクロ波を遮蔽する構造を有する加熱炉と、
前記加熱炉内に前記吸着部材を搬送する搬送機構と、を備え、
前記アンテナは、前記吸着部材の対向面、もしくは、前記加熱炉の内面近傍に配置され、
前記加熱炉は、前記吸着部材を板面に配置し、回転軸方向に通気空洞が形成されている多孔質ハニカム構造を有する円柱状の部材の一部を、送風路を介して流入した前記空気を加熱して前記円柱状の部材の板面に案内する入力側部材と、前記円柱状の部材の通気空洞を介した空気を外部へ出力する出力側部材とで覆い、
前記搬送機構は、前記円柱状の部材を周方向に回転することで前記吸着部材を前記加熱炉に搬送する、
ことを特徴とする空気処理装置。
【請求項3】
前記半導体式発振器は、前記吸着部材の加熱、前記分子の加熱、または、前記分子の分解を促すことに対応する周波数のマイクロ波を出力する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記半導体式発振器を制御する制御部をさらに備え、
前記半導体式発振器は、前記制御部の制御に基づき、複数の周波数の中のいずれかの周波数のマイクロ波を出力する、
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の空気処理装置。
【請求項5】
前記吸着部材の状態を取得する状態取得部と、
前記半導体式発振器を制御する制御部と、をさらに備え、
前記制御部は、取得した前記吸着部材の状態に基づいて前記半導体式発振器による加熱を制御する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項6】
前記状態取得部は、前記半導体式発振器が前記吸着部材に対して出力したマイクロ波の反射状態を検出することで前記吸着部材の状態を取得する、
ことを特徴とする請求項
5に記載の空気処理装置。
【請求項7】
空気に含まれる特定の分子を吸着部材が吸着し、
前記分子を吸着した吸着部材を少なくとも特定の周波数のマイクロ波を出力する半導体式発振器により加熱し、前記分子の吸着前の状態に前記吸着部材を再生
し、
前記半導体式発振器のマイクロ波がアンテナによって内部に放射され、前記特定の周波数のマイクロ波で共振が発生し、かつ、当該特定の周波数帯のマイクロ波を遮蔽する構造を有する加熱炉内に前記吸着部材を搬送する、処理を含み、
前記アンテナは、前記吸着部材の対向面、もしくは、前記加熱炉の内面近傍に配置され、
前記加熱炉は、前記吸着部材を板面に配置し、回転軸方向に通気空洞が形成されている多孔質ハニカム構造を有する円柱状の部材の一部を、送風路を介して流入した前記空気を加熱して前記円柱状の部材の板面に案内する入力側部材と、前記円柱状の部材の通気空洞を介した空気を外部へ出力する出力側部材とで覆い、
前記搬送は、前記円柱状の部材を周方向に回転することで前記吸着部材を前記加熱炉に搬送する、
ことを特徴とする空気処理方法。
【請求項8】
空気に含まれる特定の分子を吸着部材が吸着し、
前記吸着部材に吸着した前記分子を少なくとも特定の周波数のマイクロ波を出力する半導体式発振器により加熱し、前記分子の吸着前の状態に前記吸着部材を再生
し、
前記半導体式発振器のマイクロ波がアンテナによって内部に放射され、前記特定の周波数のマイクロ波で共振が発生し、かつ、当該特定の周波数帯のマイクロ波を遮蔽する構造を有する加熱炉内に前記吸着部材を搬送する、処理を含み、
前記アンテナは、前記吸着部材の対向面、もしくは、前記加熱炉の内面近傍に配置され、
前記加熱炉は、前記吸着部材を板面に配置し、回転軸方向に通気空洞が形成されている多孔質ハニカム構造を有する円柱状の部材の一部を、送風路を介して流入した前記空気を加熱して前記円柱状の部材の板面に案内する入力側部材と、前記円柱状の部材の通気空洞を介した空気を外部へ出力する出力側部材とで覆い、
前記搬送は、前記円柱状の部材を周方向に回転することで前記吸着部材を前記加熱炉に搬送する、
ことを特徴とする空気処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空気処理装置および空気処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸着部材を設けたデシカントローターを用いて除湿や脱臭などの空気処理を行う吸着方式の空気処理装置が知られている。この吸着方式では、吸着後の吸着部材を加熱して再生処理(例えば水分の脱離)を行うために、マグネトロンによるマイクロ波で吸着部材を加熱する従来技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-750号公報
【文献】特表2014-517171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術では、装置の小型化と吸着部材の効率的な加熱再生処理の両立を行うことが困難であった。例えば、マイクロ波を発生するマグネトロンは、駆動電源として1kV必要であり、その生成には高圧トランスや高圧コンデンサーが付随するため、必然的に装置が大型化する傾向にあった。マイクロ波で加熱効率を上げるためには、被加熱物が吸収しやすい周波数において、照射するマイクロ波の、電界強度を高めることが有効であるが、マグネトロン式で電界強度を高めるためには、必然的にマグネトロン自身や高圧トランスやコンデンサー、あるいはインバーター回路の付加といった装置の大型化につながってしまう。装置の大型化をせず加熱効率を上げる方法としては、加熱炉内の一定領域にマイクロ波の電磁波を閉じ込め、共振構造を取ることで電界強度を高める方法も考えられるが、マグネトロンは、発振スペクトラムが広帯域(例えば電子レンジに用いられるものにおいては2.45GHz±20MHz)であり、加熱炉内で共振構造を取ることが極めて困難であるという課題があった。
【0005】
本発明の1つの側面では、比較的小型で、かつエネルギー効率のよい空気処理を行う空気処理装置および空気処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの案では、空気処理装置は、空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材と、吸着部材を加熱して分子を吸着する前の状態に再生する再生手段と、を備える。再生手段は、少なくとも特定の周波数のマイクロ波を出力する半導体式発振器により吸着部材を加熱する。
【発明の効果】
【0007】
エネルギー効率のよい空気処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる空気処理装置の処理機構を例示するブロック図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる空気処理の流れの模式図である。
【
図3A】
図3Aは、実施形態にかかる空気処理装置の外観を例示する斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、実施形態にかかる空気処理装置の外観を例示する斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、実施形態にかかる空気処理装置の内部を例示する斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、実施形態にかかる空気処理装置の内部を例示する斜視図である。
【
図5】
図5は、加熱器の外観を例示する斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、入力側組品の外観を例示する斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、入力側外郭部材の外観を例示する斜視図である。
【
図6D】
図6Dは、入力側共振部材の外観を例示する斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、出力側組品の外観を例示する斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、出力側外郭部材の外観を例示する斜視図である。
【
図7C】
図7Cは、出力側共振部材の外観を例示する斜視図である。
【
図8】
図8は、TEMモードの加熱炉構造を例示する断面概略図である。
【
図9】
図9は、入力側共振部材および出力側共振部材構造の概要を説明する断面概略図である。
【
図10】
図10は、デシカントローターの一例を説明する説明図である。
【
図12A】
図12Aは、別実施形態にかかる加熱炉内の電場モードを説明する説明図である。
【
図12B】
図12Bは、別実施形態にかかる加熱炉内の電場モードを説明する説明図である。
【
図12C】
図12Cは、別実施形態にかかる加熱炉内の電場モードを説明する説明図である。
【
図13A】
図13Aは、別実施形態にかかる加熱炉内の電場モードとアンテナ配置とを説明する説明図である。
【
図13B】
図13Bは、別実施形態にかかる加熱炉における電場、磁場、インピーダンスを説明する説明図である。
【
図14】
図14は、別実施形態にかかる加熱炉の筐体とアンテナ部との構成を説明する説明図である。
【
図15】
図15は、別実施形態にかかる加熱炉のアンテナ部分の拡大図である。
【
図16】
図16は、発振器から加熱炉にマイクロ波を取り入れる構成例を説明する説明図である。
【
図18】
図18は、ポールアンテナの形状例を説明する説明図である。
【
図19】
図19は、ポールアンテナの形状による周波数特性の違いを説明する説明図である。
【
図20】
図20は、別実施形態にかかる加熱炉の形状を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施形態にかかる空気処理装置および空気処理方法を説明する。実施形態において同一の機能を有する構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。なお、以下の実施形態で説明する空気処理装置および空気処理方法は、一例を示すに過ぎず、実施形態を限定するものではない。また、以下の各実施形態は、矛盾しない範囲内で適宜組みあわせてもよい。
【0010】
図1は、実施形態にかかる空気処理装置の処理機構を例示するブロック図である。
図2は、実施形態にかかる空気処理の流れの模式図である。
図1および
図2に示すように、空気処理装置1は、デシカントローター16に設けられた吸着部材を用いて空気中の水分子を吸着することで除湿を行う装置である。
【0011】
具体的には、空気処理装置1は、管理部10、状態取得部11、加熱器12、ステッピングモータ13、送風用ファン14、エアフィルタ15、デシカントローター16、再生用ファン17、凝縮器18、ポンプ19、水浄化フィルタ20および水受タンク21を有する。ここで、エアフィルタ15、デシカントローター16および水浄化フィルタ20は、空気処理部材に含まれる。
【0012】
送風用ファン14は、
図1および
図2に示すように、外部の空気を吸気してエアフィルタ15を介してデシカントローター16に向けて空気Bを送り、デシカントローター16に水分(水分子)を吸着させる。デシカントローター16に向けて送られた空気Bは、デシカントローター16を通過して外部へ排気される。
【0013】
また、送風用ファン14は、
図1および
図2に示すように、凝縮器18に向けて室温の空気Rを送る。送風用ファン14から送られた空気Rが凝縮器18に吹き付けられることで、凝縮器18が冷却されて水分Wが結露して水となる。送風用ファン14は、管理部10からの制御を受けて回転数が変化する。送風用ファン14の回転数が変化することで、空気Rの量が変化し、凝縮器18の凝縮能力が変化する。
【0014】
エアフィルタ15は、送風用ファン14が吸い込む空気Bを濾過するフィルタである。エアフィルタ15は、予め設けられた空気汚染の閾値毎に複数種類存在する。空気汚染の度合いは、例えば、PM(Particulate Matter)2.5、砂及び花粉などの汚染物質の量によって決定される。空気汚染の閾値は、それらの汚染物資の量に基づいて決定される。
【0015】
デシカントローター16は、耐熱性を有する紙(ガラスペーパー等)の表面に吸着部材の一例であるデシカント材を添着させ、回転軸方向に通気空洞が形成されている多孔質ハニカム構造を有する円柱状の部材(円柱部材)である。デシカント材は、多数の細孔を有し、その細孔を空気が通過する際、空気中に含まれる水分子を吸着する吸着部材である。
【0016】
デシカントローター16は、駆動手段の一例であるステッピングモータ13により駆動され、
図2に示すように、円柱の軸を中心とする周方向の矢印Cの方向に回転する。デシカントローター16は、エアフィルタ15で濾過された空気Bが通過する。これにより、デシカントローター16を通過した空気Bに含まれる水分が吸着される。
【0017】
ステッピングモータ13は、例えば
図2の矢印Cのように、送風用ファン14から送られる空気Bの流れに直交する方向(円柱状のデシカントローター16の中心を軸とする周方向)にデシカントローター16を回転させる。これにより、空気Bが通過するデシカントローター16の領域が変化する。ステッピングモータ13は、管理部10の制御を受けて回転数が変化する。ステッピングモータ13の回転数が変化することで、デシカントローター16の回転速度も変化する。
【0018】
加熱器12は、デシカントローター16を加熱する機器である。具体的には、加熱器12は、少なくとも特定の周波数帯のマイクロ波MWを出力する発振器12aを有し、この発振器12aが出力するマイクロ波MWによりデシカントローター16の吸着部材またはデシカントローター16に吸着した水分子を加熱する。
【0019】
発振器12aは、マイクロ波の発振方式が例えばシリコン(Si)、窒化ガリウム(GaN)半導体などを用いた半導体方式の発振器(半導体式発振器)であり、ISMバンドとして認められている915MHzまたは2450MHzなど特定の周波数のマイクロ波MWを出力する。また、発振器12aは、半導体方式でマイクロ波MWを出力することから、出力するマイクロ波の周波数の制御が可能である。
【0020】
例えば、加熱器12において、電熱線などのヒーターにより高温の空気(例えば200℃~)を作り出してデシカントローター16を加熱する場合は、加熱量の大きなヒーターが必要となり、結果的に消費電力が大きくなる。また、ヒーターで加熱した高温の空気をデシカントローター16に当てる場合は、デシカントローター16への熱の伝わりが遅くなる(熱が表面からしか伝わらないため)。特に、デシカントローター16の厚み方向への熱の伝わりが遅く、性能向上の妨げともなる。また、ヒーターからデシカントローター16以外の部品や空気への熱の逃げ(例えば、ヒーターを覆う金属からの熱伝達、熱放射による熱の逃げ)が多く発生する。このように、加熱器12においてヒーターで加熱した高温の空気をデシカントローター16に当てる場合は、熱ロスが多く発生し、エネルギー効率が悪くなる。
【0021】
これに対し、発振器12aが出力するマイクロ波MWで加熱する場合は、デシカントローター16が吸着した水分子を直接加熱できるので、熱ロスが少なく高効率で加熱することができ、加熱スピードも早くなる。
【0022】
また、発振器12aでは、マグネトロン方式ではなく、半導体方式によりマイクロ波MWを発生させる。マグネトロン方式の発振器は、高圧トランス等を含めた電源重量が大きく(例えば、1kW出力で6kg程度)、加熱に必要な印加電圧が大きい(1kVなど)、また発振周波数のコントロールが困難で、発振スペクトラムが広帯域、であるという特徴がある。これに対し、半導体方式の発振器12aでは、電源重量が軽量(例えば、50W出力で1kg程度)、加熱に必要な印加電圧が小さい(50Vなど)、発振周波数のコントロールが可能で、スペクトラムが狭帯域、発振器出力がマグネトロンと比較して小さい(~250W程度)と言った特徴が挙げられる。
【0023】
このように、それぞれマグネトロン、半導体式発振器に一長一短があり、用途に応じて使い分けが必要であると考えられるが、装置の大型化をせず加熱効率を上げる方法としては、加熱炉内の一定領域にマイクロ波の電磁波を閉じ込め、共振構造を取ることで電界強度を高める方法が考えられる。上記の特徴から、マイクロ波を加熱炉内の一定領域内に閉じ込めるにあたっては、スペクトラムが狭帯域である半導体式発振器が向いており、かつ装置の小型化を図ることができる。また、半導体式発振器12aでは、マグネトロンと比較して出力が小さい特徴があるが、加熱炉内で特定の周波数のマイクロ波MWを出力してマイクロ波を共振させ、加熱炉内での部分的な電界強度を高めることで、マグネトロンと同等かそれ以上の電界強度を低消費電力で維持することが可能になる。この部分的に電界強度が高い位置に被加熱物である誘電体を配置し加熱を行うので、誘電体のマイクロ波吸収電力(加熱効率)の式(1)より、マグネトロン方式と比較して、装置の大型化を防ぎつつ、再生処理におけるエネルギー効率を向上させることができる。
【0024】
【0025】
加熱器12は、発振器12aを制御する制御部としての機能を有する管理部10からの制御を受けて発振器12aが出力するマイクロ波MWの強度を変化させることで、デシカントローターの温度が変化する。デシカントローターの温度が変化することで、デシカントローター16からの単位時間あたりの水分Wの離脱量が変化する。
【0026】
また、加熱器12は、管理部10からの制御を受けて発振器12aが出力するマイクロ波MWについて、複数の周波数の中のいずれかの周波数のマイクロ波MWを出力する。周波数を変化させることにより、誘電特性を変化させることが可能となる。例えば、2450MHzの周波数では反射が大きくなり加熱効率が悪くなる場合、周波数をISMバンド内で変化(2450±50MHz)させることで、加熱効率の低下を抑えられる。
【0027】
物質の誘電特性(比誘電率、誘電損失)は物質固有の値であり、加熱の前後(温度変化、吸着物質の放出等)で誘電特性の値が変化する。半導体方式の発振器12aでは、管理部10の制御のもと、出力するマイクロ波MWについて、発振周波数のコントロールが可能である。温度変化に伴い、物質の誘電特性が変化すると、それまで加熱に使用していた発振周波数での反射が大きくなる。この反射が大きいままで加熱を続けることは、エネルギー効率の観点から無駄が多く(反射エネルギー=熱として放射)、また過大な反射が起きることで半導体式発振器の破壊につながる恐れがある。したがって、加熱器12では、被加熱物質に対し発振周波数をコントロールすることで、常に効率よく加熱することが可能である。例えば、マグネトロン方式では、発振周波数のコントロールが困難であるため、半導体方式と同等レベルに加熱する場合は、加熱電力増加で対応する他なく、必然的に装置が大きくなる。
【0028】
デシカントローター16に吸着された水分は、
図1および
図2に示すように、加熱器12でマイクロ波MWにより加熱されて蒸発し、デシカントローター16から離脱する。この離脱した水分を含む高湿の再生空気HA’は凝縮器18へ送られる。凝縮器18内で再生空気HA’は水分Wと低湿空気LAとに分けられ、水分Wはポンプ19へ、低湿空気LAは再生用ファン17へ送られる。
【0029】
再生用ファン17は、凝縮器18から送られた低湿空気LAを加熱器12へ向けて送風する。この後、低湿空気LAは、加熱器12内で加熱されたデシカントローターからの熱と、デシカントローター16から離脱した水分を含む再生空気HA’となる。すなわち、再生用ファン17は、前述のように凝縮器18、再生用ファン17、加熱器12、デシカントローター16で構成される循環システム内で循環される空気を送風する役割を有する。
【0030】
凝縮器18は、送風用ファン14から送られた室温の空気Rにより冷やされ、凝縮器18において水分Wは結露して水となる。ポンプ19は、凝縮器18において水となった水分Wを吸い込んで吐出し、水浄化フィルタ20を経由させて水受タンク21へ送る。水浄化フィルタ20は、ポンプ19から吐出された水分Wを濾過する。水受タンク21は、ポンプ19から吐出され水浄化フィルタ20により浄化された水分Wを貯水する。水受タンク21は、殺菌灯211が取り付けられる。
【0031】
状態取得部11は、各種センサなどにより空気処理装置1の状態を取得する。例えば、状態取得部11は、送風用ファン14が吸気する外部の空気の温度(室温)、湿度など取得する温度センサや湿度センサなどである。また、状態取得部11は、デシカントローター16を通過して外部へ排気される空気Bの湿度などを取得する湿度センサなどである。
【0032】
また、状態取得部11は、デシカントローター16に吸着された水分子の量など、デシカントローター16の状態を検出する水分量の検出センサなどである。より具体的には、状態取得部11は、発振器12aから出力されたマイクロ波MWがデシカントローター16で反射される反射状態を検出するマイクロ波受信器などである。状態取得部11は、発振器12aが出力した特定の周波数のマイクロ波MWの強度と、マイクロ波受信器で受信したマイクロ波MWの受信強度との差分である、デシカントローター16の吸着部材や吸着した水分子の加熱によるマイクロ波の減衰量をもとに、デシカントローター16の状態を検出する。
【0033】
なお、状態取得部11は、マイクロ波MWの受信用アンテナを兼ねており、この受信用アンテナで受信したマイクロ波MWの強度を測定することで、デシカントローター16の吸着部材の状態を取得してもよい。その取得データを元に、例えば、管理部10は、状態取得部11が取得した吸着部材の状態が乾燥状態である場合、マイクロ波照射強度を弱める、あるいはデシカントローター16の回転速度を一時的に早くするといった制御変更が考えられる。また、管理部10は、状態取得部11が取得した吸着部材の状態が乾燥状態である場合、送風用ファンの回転速度を一時的に早くすることも考えられる。これらの制御変更のメリットは、ローターが乾燥状態下において、マイクロ波加熱されることによる異常加熱防止、及び過剰なマイクロ波照射や、反射を抑制し、消費電力を削減することにある。
【0034】
管理部10は、空気処理装置1における各種動作の管理(制御)を行う処理部である。具体的には、管理部10は、状態取得部11が取得した状態に基づき、送風用ファン14および再生用ファン17の送風量、ステッピングモータ13におけるデシカントローター16の駆動量、加熱器12における発振器12aが出力するマイクロ波MWの強度を制御する。
【0035】
例えば、管理部10は、外部の空気の温度(室温)、湿度や、外部へ排気される空気Bの湿度に対応する、除湿効率のよい送風用ファン14、再生用ファン17の風量、ステッピングモータ13におけるデシカントローター16の駆動量などを示す制御情報をメモリなどに保持する。管理部10は、この制御情報を参照し、状態取得部11が取得した状態(外部の空気の温度(室温)および湿度、外部へ排気される空気Bの湿度)に対応する制御量で、送風用ファン14および再生用ファン17の送風量、ステッピングモータ13におけるデシカントローター16の駆動量を制御する。
【0036】
また、管理部10は、デシカントローター16の状態(例えばデシカントローター16に吸着した水分子の量)に対応する、加熱効率のよい発振器12aにおけるマイクロ波MWの強度や、発振器12aが出力するマイクロ波MWの周波数などを制御情報としてメモリに保持してもよい。管理部10は、この制御情報を参照し、状態取得部11が取得したデシカントローター16の状態(例えばデシカントローター16に吸着した水分子の量)に対応する制御量(マイクロ波MWの強度、周波数帯)で加熱器12の加熱量を制御する。これにより、空気処理装置1では、デシカントローター16の状態に応じた、効率のより再生処理を行うことが可能となる。
【0037】
また、管理部10は、乾燥状態と判断した場合、ステッピングモータ13の駆動量を変更し、デシカントローター16の回転速度を一時的に変更してもよい。例えば、管理部10は、ステッピングモータ13の単位時間あたりの駆動量を大きく(速く)し、デシカントローター16の加熱(再生)部分が加熱される時間を短くしてもよい。あるいは、送風用ファン14の単位時間あたりの回転数を上げて、より多くの水分を吸着ができるようにする、といった制御の連動が考えられる。これらの制御変更のメリットは、ローターが乾燥状態下において、マイクロ波加熱されることによる異常加熱防止、及び過剰なマイクロ波照射や、反射を抑制し、消費電力を削減することにある。
【0038】
図3A、
図3Bは、実施形態にかかる空気処理装置1の外観を例示する斜視図である。
図3Aおよび
図3Bに示すように、空気処理装置1は、筐体背部30よび筐体前部32により内部を覆う構成となっている。また、水受タンク21は、取手22により前面(+Z方向)により引き出すことができる。ユーザーは、水受タンク21を筐体から引き出すことで、水受タンク21が内部に貯留した水分Wを取り除くことができる。
【0039】
筐体背部30の上部(+Y方向)には、空気処理後の空気を排気するための通風口31が設けられている。また、筐体前部32には、吸気を行う通風口33が前面(+Z方向)に設けられている。これにより、空気処理装置1は、通風口33より吸気した空気に対して除湿などの空気処理を行い、処理後の空気を通風口31より排気する。
【0040】
図4A、
図4Bは、実施形態にかかる空気処理装置1の内部を例示する斜視図である。
図4A、
図4Bに示すように、送風用ファン14、加熱器12、デシカントローター16、再生用ファン17、凝縮器18などの
図2に例示した空気処理に関連する構成部品は、内部の内部フレーム40により支持されている。
【0041】
具体的には、デシカントローター16は、通風口33より吸気される空気が送風用ファン14より背面(-Z方向)に抜ける間に除湿されるように、板面をZ方向と直交する向きで、中心を軸として回転可能に内部フレーム40により支持されている。また、加熱器12は、デシカントローター16の上部の一部分を覆うように内部フレーム40により支持されている。
【0042】
図4Bに示すように、加熱器12には、再生用ファン17からの空気を加熱器12に送風する送風路41が接続されている。また、
図4Aに示すように、加熱器12には、デシカントローター16から離脱した水分を含む高湿の再生空気HA’を凝縮器18の上部に導く送風路42が接続されている。これにより、デシカントローター16から離脱した水分を含む高湿の再生空気HA’は、外部に漏らされることなく、凝縮器18に導かれることとなる。この凝縮器18の下部には、凝縮器18で凝縮した水分Wを水受タンク21に導く水路43が接続されている。これにより、空気処理で除湿された水分Wは、水受タンク21に貯留される。また、加熱器12と、発振器12aとは、同軸ケーブルで接続されており、この同軸ケーブル12bにより加熱器12の中にマイクロ波MWが送られる。
【0043】
図5は、加熱器12の外観を例示する斜視図である。
図5に示すように、加熱器12は、入力側組品50と、出力側組品60とによりデシカントローター16の円板面の一部を扇状に覆う構成である。入力側組品50は、再生用ファン17からの空気の入力を送風路41と接続する通風孔511より内部に受け付け、その空気をデシカントローター16の板面に吹き当てる。出力側組品60は、入力側組品50によりデシカントローター16の板面に吹き当てられ、デシカントローター16から離脱した水分を含む高湿の再生空気HA’を回収し、凝縮器18へ出力する。
【0044】
図6Aは、入力側組品50の外観を例示する斜視図である。
図6Aに示すように、入力側組品50は、入力側外郭部材51、制限板52、入力側共振部材53および通風板54より構成される。入力側組品50において、入力側外郭部材51、制限板52、入力側共振部材53および通風板54で覆われた内部は中空となっており、入力側外郭部材51の側面に設けられた通風孔511より再生用ファン17からの空気が流入する。
【0045】
図6Bは、入力側外郭部材51の外観を例示する斜視図である。
図6Cは、制限板52の外観を例示する斜視図である。
図6Dは、入力側共振部材53の外観を例示する斜視図である。
図6Eは、通風板54の外観を例示する斜視図である。
【0046】
図6Bに示すように、入力側外郭部材51は、底板512と、底板512の縁と直交する側面壁513とを有する。側面壁513には、再生用ファン17からの空気を取り入れる通風孔511を設けている。この通風孔511は、通風かつ電磁波(マイクロ波MW)漏洩防止のために、例えば直径3mm穴の中心同士が5mmピッチなどのメッシュのある金属板を設けている。このメッシュのある金属板は、加熱器12側に固定されるものでも、送風路41側に固定されるものでもいずれでもよい。
【0047】
また、この通風孔511の専有面積の大きさは、電磁波遮断のために、例えば矩形の場合はEIAJ規格の方形導波管WRI-40サイズ、扁平形状の場合は扁平導波管WFI-40サイズといった、一辺のサイズaがマイクロ波の自由空間波長λに対しa<λ/2の関係を満たすものであることが望ましい。通風孔511の位置は、例えば入力側外郭部材51の下方側面や入力側外郭部材51のデシカントローター16対向面の反対側に設けることが望ましいが、特に限定されるものではなく、装置全体のレイアウトを考慮して決定すればよい。
【0048】
図6Cに示すように、制限板52は、例えばアルミなどの金属で形成され、入力側組品50のデシカントローター16対向面に配置される。望ましくは、制限板52は、デシカントローター16の回転方向に対し上流側(前段側)で、通風孔511に近い部分に配置することが望ましい。この制限板52の役割は、通風孔511より流入した再生用の空気がデシカントローター16に直接吹き付けられることを抑制する役割を担う。これにより、再生用空気がデシカントローターに直接吹き付けられた事による、ローター内部温度の低下による、加熱効率低下を抑制する効果がある。
【0049】
また、この制限板52の実施例としては、管理部10の制御のもとで稼働する電熱線などのヒーターによる加熱機能を持たせてもよい。この制限板52の加熱機能により、加熱効率の向上が見込める。これは、デシカントローター16の回転方向に対し、前段に制限板52のヒーターによる加熱、後段に加熱器12内の加熱共振部材(入力側共振部材53ないし出力側共振部材62)を設けることで、デシカントローター16をヒーター(加熱板)によりプレヒート(加温)した後に、マイクロ波MWで加熱する構成である。この場合、プレヒートにかかる電力は必要最小限の電力で加温することが望ましい(目標加温温度:室温+20℃など)。このように、プレヒートによる加温状態から加熱器12内の加熱共振部材(入力側共振部材53ないし出力側共振部材62)によるマイクロ波加熱を行うことで、極力短い時間のマイクロ波照射かつ小さな電界強度での水分脱離が可能になり、マクロは照射にかかる電力とプレヒートにかかる電力を加味しても低消費電力化が見込める。
【0050】
また、他の利点として、マイクロ波MWによる加熱時において、誘電体の誘電特性が温度とともに変化するため、予め目標の温度に加温されておくと、マイクロ波MWによる加熱制御がしやすいという点がある。更に、本配置では、ヒーターから外郭方向への(空気の通過ルート)への熱伝達、熱放射があるため、入力側共振部材53あるいは通風板54へ至る空気を加温することができ、水分の脱着効率が向上する。加えて、制限板52において、PTCヒーターなどの発熱体を固定するだけの簡単な構造にでき、低コストにできること、ヒーターの加熱部分をごく小規模に限定できるため、消費電力を抑えられることがメリットとしてあげられる。
【0051】
入力側共振部材53は、出力側共振部材62(
図7A参照)と対となってデシカントローター16の板面を両面から挟み、内部に出力(発振)したマイクロ波MWを内面で反射して共振させてデシカントローター16を加熱する加熱炉を構成する。
【0052】
具体的には、
図6Dに示すように、入力側共振部材53は、金属板で構成され、通風しかつ電磁波(マイクロ波MW)漏洩防止のために、内部の一面に例えば直径3mm穴の中心同士が5mmピッチなどの通風孔531を設けている。この通風孔531は、再生用の空気の入力側の通風口511の近傍に設けられていることが望ましい。また、通風孔531の変形例としては、矩形状のスリットを設ける形状が考えられる。このスリットの向きは電界方向と平行(例えば
図6Dでは53の長辺と平行な向き)にであり、大きさは、例えば3~5mm×90mmで、5~7mmピッチ等が考えられる。このような通風孔531の形状は、入力側共振部材53のQ値と、通過させたい風量の大きさに応じて適宜調整すればよい。
【0053】
図6Eに示すように、通風板54は、通風しかつ電磁波(マイクロ波MW)漏洩防止のために、例えば直径3mm穴の中心同士が5mmピッチなどの通風孔541のある金属板である。この通風孔541の専有面積の大きさは、電磁波遮断のために、例えば矩形の場合はEIAJ規格の方形導波管WRI-40サイズ、扁平形状の場合は扁平導波管WFI-40サイズといった、一辺のサイズaがマイクロ波の自由空間波長λに対しa<λ/2の関係を満たすものであることが望ましい。
【0054】
図7Aは、出力側組品60の外観を例示する斜視図である。
図7Aに示すように、出力側組品60は、出力側外郭部材61および出力側共振部材62より構成される。
図7Bは、出力側外郭部材61の外観を例示する斜視図である。
図7Cは、出力側共振部材62の外観を例示する斜視図である。
【0055】
図7Bに示すように、出力側外郭部材61は、底板612と、底板612の縁と直行する側面壁613とを有する。側面壁613には、回収した再生空気HA’を凝縮器18へ出力する通風孔611が設けられている。
【0056】
この通風孔611は、通風しかつ電磁波(マイクロ波MW)漏洩防止のために、例えば直径3mm穴の中心同士が5mmピッチなどのメッシュのある金属板を設けている。このメッシュのある金属板は、加熱器12側に固定されるものでも、出力側外郭部材61に接続される送風路42側に固定されるものでもいずれでもよい。
【0057】
また、この通風孔611の専有面積の大きさは、電磁波遮断のために、例えば矩形の場合はEIAJ規格の方形導波管WRI-40サイズ、扁平形状の場合は扁平導波管WFI-40サイズといった、長辺のサイズaがマイクロ波の自由空間波長λに対しa<λ/2の関係を満たすものであることが望ましい。通風孔611の位置は、例えば出力側外郭部材61の上方、もしくは出力側外郭部材61のデシカントローター16対向面の反対側に設けることが望ましいが、特に限定されるものではなく、装置全体のレイアウトを考慮して決定すればよい。
【0058】
また、側面壁613の上端部分には、デシカントローター16を通過して出力側外郭部材61の内部に入った再生空気HA’を逃さないようにするための風向制御板614が設けられている。この風向制御板614により、再生空気HA’が外部に漏れないようにその風向が制限されることから、出力側外郭部材61は、回収した再生空気HA’を効率よく通風孔611より外部へ出力することができる。
【0059】
図7Cに示すように、出力側共振部材62は、金属板で形成され、通風しかつ電磁波(マイクロ波MW)漏洩防止のために、内部の一面に例えば直径3mm穴の中心同士が5mmピッチなどの通風孔621を設けている。この通風孔621は、出力側外郭部材61の通風孔611の近傍に設けられていることが望ましい。また、通風孔621の変形例としては、矩形状のスリットを設ける形状が考えられる。このスリットの向きは電界方向と平行(例えば
図6Dでは53の長辺と平行な向き)にであり、大きさは、例えば3~5mm×90mmで、5~7mmピッチ等が考えられる。このような通風孔531の形状は、入力側共振部材53のQ値と、通過させたい風量の大きさに応じて適宜調整すればよい。
【0060】
なお、
図7A~
図7Cには図示しないが、入力側組品50の制限板52と同様に通風方向を制御するための制限板を設けてもよい。この制限板は、例えばアルミなどの金属で形成され、出力側組品60のデシカントローター16対向面に配置される。望ましくは、デシカントローター16の回転方向に対し上流側(前段側)に配置することが望ましい。この制限板の変形例として上記の制限板52と同様に加熱機能をもたせてもよい。
【0061】
また、入力側組品50および出力側組品60の組品例は、あくまで一例であり、例えば風向板、外郭、共振器などが一体となって成形されたものでも構わない。また、入力側組品50および出力側組品60(の一部)が一体となって成形されたものでも構わない。
【0062】
以上で説明した入力側組品50および出力側組品60を踏まえ、加熱器12における空気の流れについて説明する。まずは入力側組品50の内部での空気の流れについて
図6Aを用いて説明する。
【0063】
通風孔511より流入した空気は、デシカントローター16には直接行かず、入力側共振部材53の側面(ないし背面)の通風孔531に流入する。この入力側共振部材53の通風孔531より流入した空気は、デシカントローター16に吹き付けられる。
【0064】
一方、入力側外郭部材51と、入力側共振部材53の間(デシカント対向面の反対側)には空隙を設けてあり、通風孔511より入力された空気の一部は、この空隙を通過する。空隙を通過した空気は、その先にある通風板54を通過し、デシカントローター16に吹き付けられる。
【0065】
デシカントローター16に吹き付けられた空気は、デシカントローターのハニカム構造の空隙を通過し、出力側組品60に到達する。入力側共振部材53および出力側共振部材62による共振器内部を通過するルートでは、入力側共振部材53の一面に設けられた通風孔531を介し、デシカントローター16→出力側共振部材62→通風孔611→出力側外郭部材61という流れで再生空気HA’を回収する。
【0066】
また、入力側組品50にある通風板54を通過するルートでは、通風板54→デシカントローター16→出力側外郭部材61という流れで再生空気HA’を回収する。出力側外郭部材61で回収した再生空気HA’は、通風孔611を介して凝縮器18側へ出力される。
【0067】
ここで、加熱器12では、入力側共振部材53および出力側共振部材62が対となってデシカントローター16の板面を両面から挟んで構成する加熱炉内に発振器12aからのマイクロ波MWが出力される。この加熱炉内部に出力されたマイクロ波MWが、入力側共振部材53および出力側共振部材62の内面で反射して共振し、デシカントローター16を加熱する。この加熱炉の内部にはアンテナによってマイクロ波MWが放射される。このアンテナは、発振器12aと加熱炉内部とを接続する電力導入部を介し、例えば、デシカントローター16の対向面、もしくは、加熱炉の内面近傍に配置される。
【0068】
また、加熱炉内のマイクロ波MWの共振モードはTM(Transverse Magnetic)、TE(Transverse Electric)モードなどが考えられる。これらのモードは、加熱炉内のマイクロ波MWにおける定在波の閉じ込め方に依存する。例えば、
図6A~
図7Cに例示した入力側共振部材53および出力側共振部材62の形状では、電界強度の高い部分がデシカントローター16の半径方向に向かって発生するモードとなる。
【0069】
図8は、TEMモードで加熱する場合の構造を例示する断面概略図である。
図10に示すように、入力側共振部材53および出力側共振部材62で覆われた加熱炉内において、電力導入部70を介して外部の発振器12aと接続する中心導体71と、接地側の中心導体72とは、デシカントローター16に対して互いに向き合うように配置され、TEMモードの共振構造としてもよい。
【0070】
ここで、入力側共振部材53および出力側共振部材62の高さL1、L2は、入力側共振部材53および出力側共振部材62の中心にあるデシカントローター16をマイクロ波で加熱する観点から、中心導体71より出力するマイクロ波の周波数の管内波長(λg)に対してλg/4であることが望ましい。また、入力側共振部材53および出力側共振部材62における隙間(加熱炉内の入口)の幅L3は、マイクロ波の漏洩防止の観点から、λg/16以下であることが望ましい。
【0071】
また、加熱炉の、特定の周波数のマイクロ波MWを遮蔽する構造(
図10中の53、62)の一部は、特定の周波数帯のマイクロ波MWを遮蔽する大きさのパンチングメタルやスリットを有する構成であってもよい。また、マイクロ波MWを遮蔽する構造の一部は、特定の周波数のマイクロ波MW(管内波長λgとする)を遮蔽する意図で、加熱炉(共振構造を含む)の、外周にλg/4以上の大きさの金属遮蔽板を設けてもよい。
【0072】
また、上記の加熱炉、すなわちマイクロ波MWで共振させるために設けられた入力側共振部材53および出力側共振部材62(キャビティ)は、デシカントローター16を完全に覆わないことを特徴とし、デシカントローター16を挟み込むようなそれぞれ独立した組み合わせで成り立つことを特徴とする。そして、このキャビティは、特定の周波数帯のマイクロ波MWを遮蔽する構造を有することが望ましい。
【0073】
図9は、入力側共振部材53および出力側共振部材62における電磁波漏洩抑制のための構造の概要を説明する断面概略図である。
図9に示すように、入力側共振部材53および出力側共振部材62との間の間隙(L12)は、内部に放射されるマイクロ波MW(誘電体内波長:λdg)に対し、λdg/4未満である(これは下記フランジ部材部を含む)。また、入力側共振部材53の縁より外部に向けて設けられたフランジ部材532と、出力側共振部材62の縁より外務に向けて設けられたフランジ部材622とは、内部の電磁波の漏れ防止のために、幅L10、L11がともにλdg/4よりも長くなっている。また、デシカントローターの厚みをdとすると、(L12-d)>0の関係が常に成り立つ。これは、デシカントローター16は回転するため、摺動によるデシカントローターの損傷や回転停止を避けるためである。つまりλdg/4>L12>dの関係が成り立つようにする。なお、入力側共振部材53の底部から出力側共振部材62の底部までの高さL13は、(自由空間波長:λ)λ/2以上であることが望ましい。これはλ/2未満であれば、実質遮断条件となりマイクロ波が入射しないためである。このような共振構造とフランジ部材を追加した構造により、特定の周波数帯のマイクロ波を加熱炉の内部から外部に漏らさないようにすることができる。
【0074】
なお、この加熱炉内には、デシカントローター16に接しない程度の位置に、マイクロ波透過性の物質でできた板を配置してもよい。このマイクロ波透過性物質の例としては、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、テフロン(登録商標)、ポリスチレンなどが挙げられる。このようなマイクロ波透過性物質を配置することで、空気との比誘電率の差により波長短縮が起きるため、透過物質を配置しない場合と比較して、加熱炉の小型化ができる。
【0075】
また、上記のデシカントローター16の厚み制約に加え、デシカントローター16の内部からの電波漏洩は少ないほうが望ましい。
図10は、デシカントローター16の一例を説明する説明図である。
【0076】
また、
図10に示すように、デシカントローター16は、回転軸より支持する内径部材162と、デシカントローター16との間に、円状の金属プレートを挿入してもよい。また、デシカントローター16を覆う外径部材163の外壁面は、アルミ等の金属製としてもよい。この反射板により、加熱炉内の反射板と合わせて加熱効率を向上させてもよい。
【0077】
以上のように、空気処理装置1は、空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材を備えたデシカントローター16と、デシカントローター16の吸着部材または吸着した分子(例えば水分子)を加熱して分子の吸着前の状態に吸着部材を再生する再生手段の一例である加熱器12とを有する。加熱器12は、少なくとも特定の周波数帯のマイクロ波MWを出力する半導体式の発振器12aにより吸着部材または吸着した分子を加熱する。
【0078】
したがって、空気処理装置1では、特定の周波数帯のマイクロ波MWを出力して、加熱炉内の一定領域にマイクロ波の電磁波を閉じ込め、共振構造を取ることでマグネトロン以上に電界強度を高めることで、装置の大型化をせず、加熱に要するエネルギー効率を上げることができ、効率よく空気処理を行うことができる。
【0079】
なお、上記の空気処理装置1では、空気に含まれる特定の分子を吸着する吸着部材を備えたデシカントローター16により、水分子を吸着して除湿する構成を例示したが、空気処理装置1の空気処理は除湿に限定しない。例えば、デシカントローター16は臭い成分の元となる特定の分子を吸着する吸着部材を備えてもよい。このような空気処理装置1では、上記の加熱器12と同様の構成により、吸着部材が吸着した特定の分子を加熱して吸着部材を分子の吸着前の状態に再生する。このように、空気処理装置1は、空気より臭い成分の元となる特定の分子を除去する空気処理を行ってもよい。
【0080】
また、空気処理装置1における加熱器12は、空気中に含まれる特定の分子を分解する空気処理部材における分子の分解を促す手段として用いてもよい。具体的には、「マイクロ波加熱を利用したアンモニア分解による水素製造」(矢崎総業)毛利安希、豊田和弘、戸羽辰夫、植松正一、(産総研)佐藤剛一、西岡将輝、宮沢 哲、石油学会 年会・秋季大会講演要旨集 2018f(0), 110, 2018、「マイクロ波照射光触媒による迅速水処理技術」、堀越智、静電気学会誌,38,2(2014)95-100の文献に例示されたような触媒に対し加熱器12を適用してもよい。すなわち、空気処理装置1は、少なくとも特定の周波数帯のマイクロ波を出力する発振器12aのマイクロ波によって空気処理部材における分子の分解を促す励起手段として加熱器12を用い、空気中に含まれる特定の分子の分解を行う空気処理を行ってもよい。
【0081】
以上で説明した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0082】
次に、空気処理装置1の加熱器12に関連する加湿炉の別実施形態について、具体的な形状を説明する。
図11A~
図11Cは、別実施形態にかかる加熱炉の形状を説明する説明図である。なお、
図11A~
図11Cに記載の寸法は、ケース内の内寸を示している。
【0083】
図11A~
図11Cに示すように、加熱炉300A~Cは、TE101モードなど、加熱炉内部の形状、デシカントローター16の誘電率、マイクロ波MWの波長(周波数)によって決まる電場モード(共振モード)が成り立つものであり、様々なパターンがあり得る。
【0084】
図11Aに示すように、加熱炉300Aは、内寸(X×Y×Z)が224.5mm×70.6mm×92.7mmの筐体301Aと、25mm幅(漏れ防止機構)のフランジ部302Aとで構成される。筐体301Aの上部には、X方向の内壁面より中心線に沿って42.3mmずれたところに、内部にマイクロ波MWを出力するアンテナ部303Aが設けられている。加熱炉300Aでは、アンテナ部303Aから筐体301Aの内部に出力したマイクロ波MWにより、内径90mm、外径180mmのデシカントローター16を加熱する。
【0085】
図11Bに示すように、加熱炉300Bは、内寸(X×Y×Z)が147.7mm×70.5mm×83.5mmの筐体301Bと、25mm幅(漏れ防止機構)のフランジ部302Bとで構成される。筐体301Bの上部には、X方向の内壁面より中心線に沿って47.3mmずれたところに、内部にマイクロ波MWを出力するアンテナ部303Bが設けられている。
【0086】
図11Cに示すように、加熱炉300Cは、内寸(X×Y×Z)が70.5mm×67mm×87mmの筐体301Cと、25mm幅(漏れ防止機構)のフランジ部302Cとで構成される。筐体301Cの上部には、X方向の内壁面より中心線に沿って28.5mmずれたところに、内部にマイクロ波MWを出力するアンテナ部303Cが設けられている。
【0087】
なお、以後の説明において、加熱炉300A、300B、300Cおよびそれらに関連する部材(筐体301A、301B…など)を特に区別しない場合は、加熱炉300、筐体301…と称するものとする。
【0088】
加熱炉300の筐体301については、脱離物質(水蒸気など)を取り出す、あるいは内部の加熱状況を観察するためのパンチング穴が設けられてもよい(
図11B参照)。このようなパンチング穴は、筐体301の内部に放射されるマイクロ波MWがもれない寸法の穴であれば自由に開けることができる。
【0089】
図12A~
図12Cは、別実施形態にかかる加熱炉内の電場モードを説明する説明図である。
図12A~
図12Cにおいて、網掛け部分は共振によって電界強度が集中している部分を示し、点線は電界に関するグラフを示す。なお、これら電界状態は、有限要素法などを用いた公知の電磁場解析により得られた解析結果である。
【0090】
図12Aに示すように、加熱炉300Aは、筐体301Aにおいて、TE103と呼ばれる電場モードで共振するように設計されている。
図12Bに示すように、加熱炉300Bは、筐体301Bにおいて、TE102と呼ばれる電場モードで共振するように設計されている。
図12Cに示すように、加熱炉300Cは、筐体301Cにおいて、TE101と呼ばれる電場モードで共振するように設計されている。
【0091】
TE101は、筐体301Cの内部に出力されたマイクロ波MWにより、1箇所で電界が集中して共振する電場モードである(グラフにおける“波の腹”が1箇所)。TE102は、筐体301Bの内部に出力されたマイクロ波MWにより、2箇所で電界が集中して共振する電場モードである。TE103は、筐体301Aの内部に出力されたマイクロ波MWにより、3箇所で電界が集中して共振する電場モードである。なお、上記の電場モードは一例であり、加熱炉300では、筐体301の内寸を適宜設計することで様々電場モードを適用できる。
【0092】
また、筐体301において、アンテナ部303はどこに設置されていてもよい。ただし、アンテナ部303の設置位置によっては電場の向きなどが変わるため、アンテナ部303は、どの設置位置であっても電場が共振しており、筐体301外にマイクロ波MWが漏れない状態となるように加熱炉300を設計することが望ましい。
【0093】
図13Aは、別実施形態にかかる加熱炉300A内の電場モードとアンテナ配置とを説明する説明図である。TE103モードで共振する加熱炉300Aでは、
図13Aに示すような位置のアンテナ部303Aが配置されている。基本的には、アンテナ部303Aは、筐体301Aにおけるいずれの面のどの位置であっても、筐体301A内に存在する誘電物(被加熱物)であるデシカントローター16の影響を考慮した内部寸法を設計すれば、共振によるマイクロ波MWでの加熱は実現可能である。
【0094】
ただし、アンテナを差し込む面によっては、図とは異なる向きに電場が立つことも考えられる。したがって、筐体301Aの内部寸法や、デシカントローター16の挿入穴(フランジ部302Aの開口部分)などは、電場を考慮しながらマイクロ波MWが漏れないように設計する。
【0095】
図13Bは、別実施形態にかかる加熱炉300Aにおける電場、磁場、インピーダンスを説明する説明図である。
図13Bにおいて、グラフG1は電場、グラフG2は磁場、グラフG3はインピーダンスを示す。
図13Bに示すように、電場と磁場がそれぞれ最大となっている地点間でインピーダンスも変動しており、50Ωとなる位置(インピーダンス0付近)でのアンテナ部303Aの配置でインピーダンスマッチングが取り易いと考えられる。
【0096】
ただし、インピーダンスマッチングは、アンテナ部303Aを筐体301Aの内部に差し込む深さで調整可能である。例えば、インピーダンスが0に近い位置でなくとも、アンテナ部303Aの差し込む深さでインピーダンスマッチングが可能である。これは、アンテナ部303Aの差し込む深さで、可変抵抗のようにインピーダンスを調整できることを示している。したがって、アンテナ部303Aについては、設計状況に応じて、配置する場所を任意に決定できる。
【0097】
ここで、加熱炉300の筐体301とアンテナ部303との構成を参照して、加熱炉300におけるインピーダンスマッチングを説明する。
図14は、別実施形態にかかる加熱炉300の筐体301とアンテナ部303との構成を説明する説明図である。
図15は、別実施形態にかかる加熱炉300のアンテナ部分の拡大図である。
【0098】
図14に示すように、アンテナ部303は、筐体301の接続コネクタ311を介して発振器12a側の同軸ケーブル310と、筐体301内部のポールアンテナ312とが接続する構成である。また、同軸ケーブル310とポールアンテナ312とが連結された接続部分の様子は
図15に示すようになっており、ポールアンテナ312の接続部分において、アンテナ直径(α)に対し、アンテナ周囲の空洞部分の内径(β)は、β>αである。
【0099】
ポールアンテナ312の周囲の空洞部分については、例えばテフロン(登録商標)樹脂などを充填してもよい。例えば、ポールアンテナ312の周囲の空洞部分にテフロン(登録商標)樹脂を充填する場合は、通風口31に後付けとして、鉛筆のキャップのようにテフロン(登録商標)樹脂を嵌めてもよい。または、予めポールアンテナ312を差し込める穴が空いたテフロン(登録商標)樹脂を、筐体301側に固定してもよい。
【0100】
ポールアンテナ312の差し込み深さを変えたい場合(後述する)は、テフロン(登録商標)樹脂を別のものに取り替えてもよい。また、ポールアンテナ312の稼働範囲をカバーする長さのちくわ状に貫通されたテフロン(登録商標)樹脂を設け、ポールアンテナ312がどの位置に制御されても、テフロン(登録商標)樹脂からはみ出さないようにしてもよい。また、ポールアンテナ312の先端部分にキャップ状のテフロン(登録商標)樹脂が固定され、ポールアンテナ312の稼働に合わせて、先端部分のテフロン(登録商標)樹脂も可動させてもよい(ポールアンテナ312全体をテフロン(登録商標)樹脂が覆っていなくてもよい)。
【0101】
発振器12aにおけるインピーダンスは、例えば量産されているもので通常50Ωである。このため、加熱炉300では、アンテナ部303および筐体301内の空洞部分が50Ωでマッチングするように設計する。
【0102】
同軸ケーブル310から接続されるアンテナ部分は、同軸ケーブル310と同じインピーダンスに設計するのが一般的である。インピーダンスZ0は、同軸ケーブル310のインピーダンス計算式であるZ0=138/√εr×log10(β/α)のように、αと、βによって計算できることが既知である。εrは、同軸ケーブル310周りに充填される誘電体であり、例えば、空気ならば1、テフロン(登録商標)ならば2.06である。
【0103】
ここで、ポールアンテナ312は、筐体301の壁に囲まれた領域A1と、筐体301の空洞部分の領域A2の2つの領域に分けられる。ポールアンテナ312の形状を既知の理論式で50Ωに設計した上で、単純に筐体301に差し込むだけでは、インピーダンスマッチングしないこともある。この場合、A1とA2との割合によってインピーダンスの調整が可能であるため、ポールアンテナ312について丁度よい差し込み量(深さ)を探り、インピーダンスマッチングさせてもよい。接続コネクタ311においては、例えばネジ込み式でポールアンテナ312と接続することで、ポールアンテナ312が筐体301の内部に突出する長さを調整可能になる。
【0104】
ポールアンテナ312の長さLは、ポールアンテナ312より出力する電磁波の波長をλとすると、通常λ/4で設計される。このため、ポールアンテナ312よりマイクロ波MWを出力する場合は、Lは30.5mm前後である。ただし、管内波長λgは、自由空間波長λと異なり、筐体301内の寸法に依存する。
【0105】
また、ポールアンテナ312の周囲に誘電率の高い物質(例えばテフロン(登録商標)樹脂)が充填された場合は、ポールアンテナ312の長さLを短く設計できる。具体的には、充填する物質の誘電率をεr、誘電体内の波長をλdとした場合、λd=λg/√εrとなる。
【0106】
一例として、λg=122mm、εr=2.06(テフロン(登録商標)樹脂)の場合、λd=85mmとなる。つまり、ポールアンテナ312の長さL=0.85/4≒21mmが、基本的な設計思想に基づくポールアンテナ312の長さ(数値)となる。
【0107】
なお、発明者における検証では、ポールアンテナ312の周囲に誘電体を充填しなくとも、ポールアンテナ312を短くした状態で、ポールアンテナ312の差し込み深さや、差し込む位置を調整することで、インピーダンスマッチングできることを電磁場解析および実験的に確認している。例えば、ポールアンテナ312の長さが約20mmであっても、問題なくインピーダンスマッチングが可能であることを確認している。ポールアンテナ312の周囲に誘電体を充填した場合は、更にポールアンテナ312を小さく設計することが可能であり、被加熱体(デシカントローター16)が大きい場合はポールアンテナ312が干渉しづらくなるというメリットがあり、ポールアンテナ312にかかる材料コストも削減可能である。
【0108】
図16は、発振器12aから加熱炉300にマイクロ波を取り入れる構成例を説明する説明図である。
図16のケースC1~C3に示すように、マイクロ波を取り入れる構成については、様々なパターンがある。ただし、発振器12aと加熱炉300との間に構成部品が多い程、その構成部品によるエネルギーロスが生じることから、可能な限り少ない構成部品でマイクロ波MWを出力させることが好ましい。
【0109】
ケースC1は、発振器12aと加熱炉300(アンテナ部303)とを同軸ケーブル310などで直接接続したものであり、最も損失が少なくなるケースである。尚、同軸ケーブル310は短い程損失が少なくなるため短い方が望ましい。ケースC1では、加熱炉300の内部空洞構造、誘電体条件、アンテナ配置条件を考慮して予め50Ωでインピーダンスマッチングが取れるように設計しておけば、中間の部品が不要になる。ただし、被加熱物は設計時のモノに限定され、全く違う物質や異なるサイズの被加熱体を加熱することが難しくなる(誘電体の状態変化には対応できない)。
【0110】
インピーダンスマッチングは、設計時点で合わせ込むことが望ましいが、設計時点での調整だけでは対応できない場合もある。例えば、被加熱体(デシカントローター16)の誘電率特性によってもインピーダンスがずれてしまい、マイクロ波MWの入射効率が悪化することがある。具体的には、被加熱体から水分など誘電率を持つ物質量が変化した場合、被加熱体の体積が変化する場合、被加熱体の種類を変更した場合などである。
【0111】
ケースC2では、加熱炉300におけるインピーダンスマッチングのずれを検知する検知手段320と、加熱炉300におけるインピーダンスを調整する整合器330とを有する構成である。
【0112】
検知手段320は、加熱炉300内に出力されたマイクロ波MWを検出する検出器などである。マイクロ波MWが加熱炉300内に上手く入射されているか(インピーダンスマッチングがとれているか)を確認する一般的な方法として、S11パラメータというマイクロ波MWの入射と反射の周波数特性カーブ(後述する)を取得し評価する手法がある。S11パラメータの周波数特性カーブから最も効率よくマイクロ波MWが加熱炉300内に入射されている最適な周波数が把握可能となる。検知手段320は、加熱炉300内に入射されたマイクロ波MWの強度を検出して最適な周波数における強度、あるいは予め設定した基準値などと比較することで、インピーダンスマッチングのずれを検知する。マイクロ波MWの強度が低下していれば、インピーダンスマッチングがずれていると判断できる。
【0113】
図17は、周波数シフトを説明する説明図である。
図17に示すグラフのカーブがS
11パラメータと呼ばれる特性カーブである。加熱炉300内に投入したエネルギー(マイクロ波MW)の内、何%が反射しているかの特性を表す。反射が最も少ない位置の周波数が、最も効率よく加熱炉300内にマイクロ波MWが照射されており、インピーダンスマッチングがほぼ50Ωになっていることになる。
【0114】
一般的に、反射特性を表す
図17の縦軸の単位はdBで、-10dBや-20dBというように表す。また、数値は小さい程(マイナスが大きい程)良く、設計上は目的の任意周波数帯で最低でも-10dB以下となるように設計することが多い(-10dB≒反射10%、-20dB≒反射1%、-30dB≒反射0.1%となる)。例えば、反射量が下がっているということは、
図17に示すように、インピーダンスマッチングがずれることによって周波数がシフトしている可能性がある。
【0115】
整合器330は、検知手段320による検知結果をもとに、インピーダンスの調整を行う。例えば、整合器330は、可変抵抗器などの電子回路やポールアンテナ312の差し込み深さを調節するアクチュエータなどである。整合器330は、検知手段320による検知結果をもとに、強制的にインピーダンスを合わせ、シフトした周波数を基に戻す。
【0116】
ケースC3では、整合器330の代わりに発振器12aが出力するマイクロ波MWの周波数を制御する周波数制御回路340を有する構成である。周波数制御回路340は、検知手段320による検知結果をもとに、発振器12aが出力するマイクロ波MWを制御することで、シフトした周波数を基に戻す。ケースC3のように、発振器12aから照射されるマイクロ波MWの周波数を、電磁波強度が高まる周波数に変更することで、被加熱体(デシカントローター16)の加熱状態を維持させてもよい。
【0117】
図18は、ポールアンテナの形状例を説明する説明図である。
図18に示すように、加熱炉300においてマイクロ波MWを出力するポールアンテナは、円筒形状の金属を基本とするポールアンテナ312Aの他、面取りまたはR加工を施したポールアンテナ312Bであってもよい。また、加熱炉300のポールアンテナは、先端部分の直径を大きくしたポールアンテナ312C、312Dや、先端部分をラッパ状(内部は金属などが充填される)に広げたポールアンテナ312Eなどであってもよい。
【0118】
図19は、ポールアンテナの形状による周波数特性の違いを説明する説明図である。
図19の左側のグラフは、ポールアンテナ312Aなどの円筒形状の場合の周波数特性を示している。右側のグラフは、ポールアンテナ312Dなどの先端部分の直径を大きく(太く)した場合の周波数特性を示している。
図19に示すように、ポールアンテナ312Aからポールアンテナ312Dのように先端を太くすることで、S11パラメータの反射特性カーブがブロードになる。
【0119】
また、加熱炉内部の形状は、
図11A~
図11Cのような直方体に限定しない。
図20は、別実施形態にかかる加熱炉の形状を説明する説明図である。
図20に示すように、加熱炉は、円筒形の筐体301Dにより、加熱炉内部の形状を円筒形としてもよい。図示例の筐体301Dは、TM010という電場モードでマイクロ波MWが共振するように設計されている。
【符号の説明】
【0120】
1…空気処理装置
10…管理部
11…状態取得部
12…加熱器
12a…発振器
13…ステッピングモータ
14…送風用ファン
15…エアフィルタ
16…デシカントローター
17…再生用ファン
18…凝縮器
19…ポンプ
20…水浄化フィルタ
21…水受タンク
22…取手
30…筐体背部
31、33…通風口
32…筐体前部
40…内部フレーム
41、42…送風路
43…水路
50…入力側組品
51…入力側外郭部材
52…制限版
53…入力側共振部材
54…通風板
60…出力側組品
61…出力側外郭部材
62…出力側共振部材
70…電力導入部
71、72…中心導体
162…内径部材
163…外径部材
211…殺菌灯
300、300A~300C…加熱炉
301、301A~301D…筐体
302A~302C…フランジ部
303、303A~303C…アンテナ部
310…同軸ケーブル
311…接続コネクタ
312、312A~312E…ポールアンテナ
320…検知手段
330…整合器
340…周波数制御回路
511、531、541、611、621…通風孔
512、612…底板
513、613…側面壁
532…フランジ部材
614…風向制御板
622…フランジ部材
B、R…空気
C…矢印
C1~C3…ケース
G1~G3…グラフ
d…デシカントローター厚み
HA‘…再生空気
LA…低湿空気
L1、L2、L13…高さ
L3、L10、L11…幅
L12、L20…間隔
MW…マイクロ波
W…水分