(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】空調システム、空調制御方法および空調制御プログラム
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20240109BHJP
F25D 23/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
F25D11/00 101F
F25D23/00 301D
(21)【出願番号】P 2022500253
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2020048189
(87)【国際公開番号】W WO2021161670
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2020021748
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】榎本 敦之
(72)【発明者】
【氏名】冨田 典之
(72)【発明者】
【氏名】水間 郁夫
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105172532(CN,A)
【文献】特開2004-251508(JP,A)
【文献】特開2001-215136(JP,A)
【文献】特開平11-201825(JP,A)
【文献】特開平11-201824(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 11/00
F25D 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷庫(3)を有する移動体(2)に搭載されている空調装置(10)と、
前記保冷庫内の温度である庫内温度を計測する庫内温度センサ(52)と、
前記空調装置のエラーを報知するための報知装置(45、390)と、
空調運転に関する制御を行う制御部(70)とを備え、
前記制御部は、
前記庫内温度を取得する取得部(71)と、
前記保冷庫における適正温度範囲を設定する設定部(72、382)と、
前記庫内温度が前記適正温度範囲内か否かを判定する判定部(73、383)と、
前記報知装置を用いたエラー報知を制御する報知制御部(75、385)とを備え、
前記報知制御部は、
前記移動体が荷下ろし地に到着する前であり、かつ前記空調装置による前記空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まった後である予冷完了後であって、前記庫内温度が前記適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、
前記空調装置による前記空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まるまでの予冷完了前は、前記温度エラー報知を行わず、
前記移動体が荷下ろし地に到着した後
以降は、前記温度エラー報知を行わない空調システム。
【請求項2】
前記制御部の一部を構成し、前記設定部と前記判定部と前記報知制御部とを有するサーバ(380)と、
前記移動体に搭載され、前記サーバと通信する空調用通信装置(360)とを備え、
前記報知装置は、前記移動体の外部に設けられ、前記移動体の状況を前記移動体の外部から管理する管理者に対してエラー報知を行う管理者用端末(390)を備え、
前記
報知制御部は、前記管理者用端末を用いて前記温度エラー報知を行う請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記報知装置は、前記移動体に搭載され、前記移動体の乗員に対してエラー報知を行う乗員用報知装置(45)を備え、
前記報知制御部は、前記乗員用報知装置を用いて前記温度エラー報知を行う請求項1または請求項2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記報知制御部は、
空調運転を開始してから所定時間内に前記庫内温度が前記適正温度範囲内に収まらない場合には、予冷エラー報知を行う請求項1から請求項3のいずれかに記載の空調システム。
【請求項5】
前記報知制御部は、前記
温度エラー報知を行わないタイミングであって、前記庫内温度が前記適正温度範囲外である場合には、予備エラー報知を行う請求項1から請求項4のいずれかに記載の空調システム。
【請求項6】
前記報知制御部は、
前記予備エラー報知を行う場合には、
前記温度エラー報知を行う場合に比べて、抑制したエラー報知を行う請求項5に記載の空調システム。
【請求項7】
前記保冷庫のドアである保冷庫ドア(3d)の開閉を検知するドア開閉センサ(55)を備え、
前記報知制御部は、
前記保冷庫ドアが開いたことを検知した後は、前記保冷庫ドアが閉じたことを検知してから前記庫内温度が前記適正温度範囲内に収まるまで前記温度エラー報知を行
わない請求項1から請求項6のいずれかに記載の空調システム。
【請求項8】
移動体(2)に設けられた保冷庫(3)の内部を空調する空調装置(10)の空調制御方法であって、
前記保冷庫内の温度である庫内温度を取得する温度取得ステップ(S111、S371)と、
前記保冷庫における適正温度範囲を設定する温度設定ステップ(S101、S375)と、
前記庫内温度が前記適正温度範囲内か否かを判定する温度判定ステップ(S117、S376)と、
前記空調装置が空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まるまでの運転である予冷中か否かを判定する予冷判定ステップ(S118A、S398A)と、
報知装置(45、390)を用いたエラー報知を制御する報知ステップ(S105、S119、S139、S229、S379、S399、S489、S589)とを備え、
前記報知ステップは、前記移動体が荷下ろし地に到着する前であり、かつ前記空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まった後である予冷完了後、かつ、前記庫内温度が前記適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、前記空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まるまでの予冷完了前は、前記温度エラー報知を行わず、
前記移動体が荷下ろし地に到着した後
以降は、前記温度エラー報知を行わない空調制御方法。
【請求項9】
前記
温度設定ステップは、空調制御の一部を担うサーバ(380)において、前記適正温度範囲を設定し、
前記温度判定ステップは、前記サーバにおいて、前記温度取得ステップで取得した前記庫内温度が前記温度設定ステップで設定した前記適正温度範囲内か否かを判定し、
前記報知ステップは、前記移動体の状況を前記移動体の外部から管理する管理者に対してエラー報知を行う管理者用端末(390)を用いて前記温度エラー報知を行
う請求項8に記載の空調
制御方法。
【請求項10】
前記報知ステップは、前記
移動体の乗員に対してエラー報知を行う乗員用報知装置(45)を用いて前記温度エラー報知を行
う請求項8または請求項9に記載の空調制御方法。
【請求項11】
前記報知ステップは、
空調運転を開始してから所定時間内に前記庫内温度が前記適正温度範囲内にならない場合には、
予冷エラー報知を行う請求項8から請求項10のいずれかに記載の空調制御方法。
【請求項12】
前記報知ステップは、前記
温度エラー報知を行わないタイミングであって、前記庫内温度が前記適正温度範囲外である場合には、
予備エラー報知を行う請求項8から請求項11のいずれかに記載の空調制御方法。
【請求項13】
前記報知ステップは、前記
予備エラー報知を行う場合には、前記温度エラー報知を行う場合に比べて、抑制したエラー報知を行う請求項
12に記載の空調制御方法。
【請求項14】
前記報知ステップは、前記
保冷庫のドアである保冷庫ドア(3d)が開いたことを検知した後は、前記保冷庫ドアが閉まったことを検知してから前記庫内温度が前記適正温度範囲内に収まるまで前記温度エラー報知を行
わない請求項
8から請求項13のいずれかに記載の空調制御方法。
【請求項15】
移動体(2)に設けられた保冷庫(3)の内部を空調する空調装置(10)の空調制御を行うための空調制御プログラムであって、
前記保冷庫内の温度である庫内温度を取得する処理と、
前記保冷庫における適正温度範囲を設定する処理と、
前記庫内温度が前記適正温度範囲内か否かを判定する処理と、
前記空調装置が空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まるまでの運転である予冷中か否かを判定する処理と、
報知装置(45、390)を用いたエラー報知を制御する処理であって、前記移動体が荷下ろし地に到着する前であり、かつ前記空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まった後である予冷完了後、かつ、前記庫内温度が前記適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、前記空調運転を開始してから前記庫内温度が最初に前記適正温度範囲内に収まるまでの予冷完了前は、前記温度エラー報知を行わず、前記移動体が荷下ろし地に到着した後
以降は、前記温度エラー報知を行わない処理とを含む空調制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2020年2月12日に日本に出願された特許出願第2020-21748号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
この明細書における開示は、空調システム、空調制御方法および空調制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、車両の荷室温度が適正設定値から逸脱した場合に、警報を発する警報発生手段を備えた温度記録装置を開示している。この温度記録装置は、荷室の温度が適正範囲から外れた場合であっても、荷室ドアが開放されている場合には警報を発しないまたは抑制している。先行技術文献の記載内容は、この明細書における技術的要素の説明として、参照により援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
先行技術文献の構成では、荷室ドアが開状態である場合に、警報音を抑止している。これにより、温度異常があらかじめ想定される荷積や荷下ろしの状況下での煩雑な警報音を抑止している。しかしながら、荷室ドアの開状態が想定される荷積や荷下ろし以外にも温度異常があらかじめ想定される状況が存在する。このため、空調システムは、温度異常があらかじめ想定される様々な状況に広く対応して、効果的にエラー報知を行う必要がある。上述の観点において、または言及されていない他の観点において、空調システムにはさらなる改良が求められている。
【0006】
開示される1つの目的は、効果的にエラーを報知可能な空調システムを提供することにある。
【0007】
ここに開示された1つの態様である空調システムは、保冷庫を有する移動体に搭載されている空調装置と、保冷庫内の温度である庫内温度を計測する庫内温度センサと、空調装置のエラーを報知するための報知装置と、空調運転に関する制御を行う制御部とを備え、制御部は、庫内温度を取得する取得部と、保冷庫における適正温度範囲を設定する設定部と、庫内温度が適正温度範囲内か否かを判定する判定部と、報知装置を用いたエラー報知を制御する報知制御部とを備え、報知制御部は、移動体が荷下ろし地に到着する前であり、かつ空調装置による空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まった後である予冷完了後であって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、空調装置による空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まるまでの予冷完了前は、温度エラー報知を行わず、移動体が荷下ろし地に到着した後以降は、温度エラー報知を行わない。
【0008】
また、ここに開示された1つの態様である空調制御方法は、移動体に設けられた保冷庫の内部を空調する空調装置の空調制御方法であって、保冷庫内の温度である庫内温度を取得する温度取得ステップと、保冷庫における適正温度範囲を設定する温度設定ステップと、庫内温度が適正温度範囲内か否かを判定する温度判定ステップと、空調装置が空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まるまでの運転である予冷中か否かを判定する予冷判定ステップと、報知装置を用いたエラー報知を制御する報知ステップとを備え、報知ステップは、移動体が荷下ろし地に到着する前であり、かつ空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まった後である予冷完了後、かつ、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まるまでの予冷完了前は、温度エラー報知を行わず、移動体が荷下ろし地に到着した後以降は、温度エラー報知を行わない。
【0009】
また、ここに開示された1つの態様である空調制御プログラムは、移動体に設けられた保冷庫の内部を空調する空調装置の空調制御を行うための空調制御プログラムであって、保冷庫内の温度である庫内温度を取得する処理と、保冷庫における適正温度範囲を設定する処理と、庫内温度が適正温度範囲内か否かを判定する処理と、空調装置が空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まるまでの運転である予冷中か否かを判定する処理と、報知装置を用いたエラー報知を制御する処理であって、移動体が荷下ろし地に到着する前であり、かつ空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まった後である予冷完了後、かつ、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、空調運転を開始してから庫内温度が最初に適正温度範囲内に収まるまでの予冷完了前は、温度エラー報知を行わず、移動体が荷下ろし地に到着した後以降は、温度エラー報知を行わない処理とを含む。
【0010】
開示された複数の態様によると、予冷完了後、かつ、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、予冷完了前は、温度エラー報知を行わない。このため、庫内温度が適正温度範囲外となることがあらかじめ想定される予冷中に、無用なエラー報知を行うことを抑制できる。したがって、効果的にエラーを報知可能な空調システム等を提供できる。
【0019】
この明細書における開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】保冷庫を備えた車両の概略構成を示す斜視図である。
【
図2】保冷庫と空調装置の概略構成を示す断面図である。
【
図3】空調システムの制御に関するブロック図である。
【
図5】空調システムの制御に関するフローチャートである。
【
図6】
図5のステップS110の処理に関するフローチャートである。
【
図7】エラー報知を含む場合の庫内温度の時間変化を示すグラフである。
【
図8】第2実施形態における空調システムの制御に関するフローチャートである。
【
図9】
図8のステップS210の処理に関するフローチャートである。
【
図10】第2実施形態におけるエラー報知を含む場合の庫内温度の時間変化を示すグラフである。
【
図11】第3実施形態における空調システムの制御に関するブロック図である。
【
図12】第3実施形態における空調装置の制御に関するフローチャートである。
【
図13】
図12のステップS310の処理に関するフローチャートである。
【
図14】第3実施形態における空調用通信装置の制御に関するフローチャートである。
【
図15】第3実施形態におけるサーバの制御に関するフローチャートである。
【
図16】第4実施形態におけるサーバの制御に関するフローチャートである。
【
図17】第5実施形態におけるサーバの制御に関するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的におよび/または構造的に対応する部分および/または関連付けられる部分には同一の参照符号、または百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分および/または関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0022】
第1実施形態
図1において、車両2は、保冷庫3を備えた冷凍車や冷蔵車などと呼ばれる移動体である。保冷庫3は、外部との熱のやり取りを低減するために、断熱性能の高い断熱パネルで構成されている。保冷庫3の内部には被冷却物が収蔵され、保冷庫3ごと被冷却物が目的地に低温輸送されることとなる。車両2は、低温輸送が必要な様々な被冷却物の輸送に用いることができる。車両2は、例えば、精密な温度管理が求められる医薬品の低温輸送に用いることができる。車両2は、例えば、冷蔵温度の維持が求められる農産物や畜産物などの低温輸送に用いることができる。車両2は、例えば、冷凍温度の維持が求められる冷凍食品などの低温輸送に用いることができる。車両2は、移動体の一例を提供する。
【0023】
保冷庫3の内部は、庫内温度が設定温度付近を維持するように空調装置10によって温度制御される。空調装置10の一部をなす圧縮機11は、電動圧縮機11aとエンジン駆動圧縮機11bとを備えている。電動圧縮機11aは、電源制御ユニット41から電力が供給されて駆動する圧縮装置である。エンジン駆動圧縮機11bは、車両2の走行に用いるエンジンから動力を得て駆動する圧縮装置である。ただし、圧縮機11を電動圧縮機11aとエンジン駆動圧縮機11bとのどちらか一方で構成してもよい。また、圧縮機11を電動圧縮機11aとエンジン駆動圧縮機11b以外に別の圧縮装置を含んで構成してもよい。
【0024】
保冷庫3には、保冷庫3の内部と外部との連通を切り替えるための保冷庫ドア3dが設けられている。保冷庫ドア3dは、左右に観音開き式に開閉するドアである。保冷庫ドア3dは、保冷庫3における空調装置10が設置されている位置とは反対側に設けられている。このため、保冷庫3内部は、空調装置10に近い前方部分と保冷庫ドア3dに近い後方部分とを有している。保冷庫3において、カーテンなどを用いて保冷庫3内部を前後に仕切ることで、保冷庫3の前方部分と後方部分とで温度差をつけることが可能である。
【0025】
図2は、電動圧縮機11aを冷凍サイクル装置10rの圧縮機11として用いた場合の空調装置10付近を示す断面図である。圧縮機11として、エンジン駆動圧縮機11bを用いた場合には、電源制御ユニット41に代えて、エンジンからエンジン駆動圧縮機11bに動力が供給されて圧縮機11が駆動することとなる。
【0026】
空調装置10は、圧縮機11と凝縮器12と膨張弁14と蒸発器15とを有する冷凍サイクル装置10rを備えている。圧縮機11は、気相冷媒を圧縮して気相冷媒を高温高圧の状態にする装置である。凝縮器12は、圧縮機11で圧縮された気相冷媒の温度を低下させるとともに、液相冷媒に凝縮させる装置である。凝縮器12は、冷媒と周囲の空気とを熱交換して周囲の空気を加熱する熱交換器である。
【0027】
膨張弁14は、凝縮器12で凝縮された液相冷媒を膨張させて、温度と圧力が低く蒸発しやすい状態にする装置である。膨張弁14のような可変絞り弁の代わりに、キャピラリチューブやオリフィス等の固定絞りを用いて冷媒を減圧してもよい。膨張弁14は、減圧装置の一例を提供する。蒸発器15は、膨張弁14で膨張された液相冷媒を蒸発させる装置である。蒸発器15は、冷媒と周囲の空気とを熱交換して周囲の空気を冷却する熱交換器である。
【0028】
冷凍サイクル装置10rは、圧縮機11から凝縮器12と膨張弁14までをつないで冷媒の流路を形成している高圧配管16を備えている。高圧配管16には、圧縮機11で圧縮されて膨張弁14で減圧されるまでの高圧冷媒が流れている。冷凍サイクル装置10rは、膨張弁14から蒸発器15と圧縮機11までをつないで冷媒の流路を形成している低圧配管17を備えている。低圧配管17には、膨張弁14で減圧されて圧縮機11で圧縮されるまでの低圧冷媒が流れている。高圧配管16と低圧配管17とによって、冷媒の流路が環状に形成されている。
【0029】
高圧配管16のうち、凝縮器12から膨張弁14までの間には受液器13が設けられている。受液器13は、気相冷媒と液相冷媒とを分離する装置である。このため、受液器13よりも冷媒流れの下流に位置している膨張弁14には、液相冷媒のみが流れることとなる。
【0030】
空調装置10は、圧縮機11を駆動した際に低温となる蒸発器15を周囲から区画する蒸発器ケース31を備えている。蒸発器ケース31は、断熱性能の高い断熱パネルを用いて構成されている。蒸発器ケース31は、保冷庫3の前壁3wの上部に設けられた開口部3hに嵌め込まれて固定されている。膨張弁14は、蒸発器ケース31の内部に位置している。
【0031】
蒸発器ケース31の内部には、蒸発器ファン15fが設けられている。蒸発器ファン15fは、蒸発器15の周囲に空気を流して熱交換を促進させるための装置である。蒸発器ケース31には、内気吸い込み口32と内気吹き出し口33とが形成されている。内気吸い込み口32と内気吹き出し口33とは、蒸発器ケース31の内部と保冷庫3の内部とを連通している。蒸発器ファン15fが回転している際には、保冷庫3内部の空気である内気が内気吸い込み口32から蒸発器ケース31内部に吸い込まれる。蒸発器ファン15fが回転している際には、蒸発器ケース31内部の空気が内気吹き出し口33から保冷庫3内部に吹き出される。蒸発器ファン15fは、蒸発器15と熱交換した後の冷風を保冷庫3内部に送風する機能を備えている。
【0032】
空調装置10は、圧縮機11を駆動した際に高温となる凝縮器12を周囲から区画する凝縮器ケース36を備えている。凝縮器ケース36は、蒸発器ケース31に隣接して蒸発器ケース31よりも前方に設けられている。言い換えると、凝縮器ケース36は、蒸発器ケース31の保冷庫3内部と連通している面とは反対の面に設けられている。
【0033】
凝縮器ケース36の内部には、凝縮器ファン12fが設けられている。凝縮器ファン12fは、凝縮器12の周囲に空気を流して熱交換を促進させるための装置である。凝縮器ケース36には、外気吸い込み口37と外気吹き出し口38とが形成されている。外気吸い込み口37と外気吹き出し口38とは、凝縮器ケース36の内部と外部空間とを連通している。凝縮器ファン12fが回転している際には、外部空間の空気である外気が外気吸い込み口37から凝縮器ケース36内部に吸い込まれることとなる。凝縮器ファン12fが回転している際には、凝縮器ケース36内部の空気が外気吹き出し口38から外部空間に吹き出されることとなる。外気吸い込み口37は、車両2の走行中において、車両2の進行方向とは反対方向に流れる空気を凝縮器ケース36内部に吸い込む吸い込み口として機能する。
【0034】
空調装置10は、除霜装置20を備えている。除霜装置20は、ホットガス配管21とホットガス弁22とを備えている。ホットガス配管21は、高圧配管16と蒸発器15とを接続する配管であって、凝縮器12を流れる前の高温高圧の気相冷媒を蒸発器15の内部に導く配管である。ホットガス弁22は、ホットガス配管21を流通可能な冷媒の流量を調整するための弁装置である。ホットガス弁22は、電気的に開度を調整可能な電磁弁である。
【0035】
ホットガス弁22を開いた状態で圧縮機11を駆動することで、蒸発器15に高温高圧のガス冷媒を流すことができる。これにより、蒸発器15の表面に発生した霜を溶かして除霜することができる。また、除霜が必要ない場合には、ホットガス弁22を閉じることで、ホットガス配管21における冷媒の流れを遮断する。これにより、蒸発器15に凝縮器12と膨張弁14とを通過した低温低圧の液相冷媒を流すことができる。言い換えると、ホットガス弁22の開度を制御することで、蒸発器15を温度の高い状態と、温度の低い状態とに切り替えることができる。
【0036】
除霜装置20は、ホットガス配管21とホットガス弁22を用いて、蒸発器15に高温高圧の気相冷媒を流す構成に限られない。除霜装置20は、例えば、蒸発器15の付近に備えた電気ヒータを採用可能である。この場合、ホットガス配管21やホットガス弁22を用いた場合に比べて、除霜装置20を小型に設計しやすい。また、電気ヒータの出力を制御することで、除霜能力を調整できる。このため、ホットガス配管21やホットガス弁22を用いた場合に比べて、除霜に要する時間を短くしやすい。除霜方法として、ホットガスを用いる方法と電気ヒータを用いる方法との2つの方法やその他の除霜方法を併用してもよい。
【0037】
空調装置10は、電源制御ユニット41と電源ケーブル42を備えている。電源制御ユニット41は、車両2や空調装置10に供給する電力を制御する装置である。電源ケーブル42は、外部電源から電力供給を受けるための装置である。電源ケーブル42は、商用交流電源に接続可能に構成されている。電源制御ユニット41は、電源ケーブル42を用いて供給された交流電力を直流電力に変換する機能を備えている。電源制御ユニット41は、供給された電圧の大きさを昇圧あるいは降圧して所望の電圧に変換する機能を備えている。
【0038】
空調装置10は、操作パネル51と庫内温度センサ52と外気温度センサ53とを備えている。操作パネル51は、空調運転における設定温度などを乗員が設定するための装置である。操作パネル51は、除霜ボタンを備えている。除霜ボタンは、除霜中であるか否かをランプの点灯によって乗員に報知する。除霜中に乗員が除霜ボタンを操作することで、除霜を強制的に停止させることができる。除霜していない状態で乗員が除霜ボタンを操作することで、除霜を開始させることができる。庫内温度センサ52は、保冷庫3内部の温度である庫内温度を計測するためのセンサである。庫内温度センサ52は、内気吸い込み口32の近傍に設けられている。庫内温度センサ52の設置位置や個数は上述の例に限られない。例えば、庫内温度センサ52を保冷庫3の前方部分と後方部分との2箇所に設けて、複数の庫内温度を計測してもよい。外気温度センサ53は、外部空間の温度である外気温度を計測するためのセンサである。外気温度センサ53は、外気吸い込み口37の近傍に設けられている。
【0039】
図3において、制御部70は、操作パネル51と庫内温度センサ52と外気温度センサ53とに接続している。操作パネル51は、乗員の操作によって空調装置10のオンオフを切り替えるための空調スイッチ51sを備えている。制御部70は、操作パネル51で入力された空調運転における設定温度などの情報を取得する。制御部70は、庫内温度センサ52で計測した庫内温度を取得する。制御部70は、外気温度センサ53で計測した外気温度を取得する。
【0040】
制御部70は、位置検出装置54と速度検出装置57とドア開閉センサ55とキースイッチ56とに接続している。位置検出装置54は、GPSやGLONASSなどのGNSS(Global Navigation Satellite System)に用いられるGNSS受信機を備えている。位置検出装置54は、測位衛星から受信した測位信号をもとに、位置情報として車両2の現在位置を逐次検出する。現在位置は、緯度と経度を含む座標で表される。また、現在位置を示す座標に高度が含まれていてもよい。制御部70は、位置検出装置54で計測した現在位置を取得する。位置検出装置54は、車速センサやジャイロセンサや加速度センサといったGNSS受信機とは異なる方法で現在位置を検出する装置を採用してもよい。また、現在位置を検出可能な複数の装置を併用して位置検出装置54を構成してもよい。制御部70は、位置検出装置54で検出した車両2の現在位置を取得する。
【0041】
速度検出装置57は、車両2の移動速度を検出する車速センサである。速度検出装置57は、車両2が動いているか、止まっているかを判断できる程度の精度で車速を検出できればよい。制御部70は、速度検出装置57で検出した車両2の速度を取得する。
【0042】
ドア開閉センサ55は、保冷庫ドア3dが開閉の状態を検知するセンサである。制御部70は、ドア開閉センサ55で検知した保冷庫ドア3dの開閉の状態を取得する。制御部70は、例えば30秒ごとにドア開閉センサ55の検知結果を取得する。キースイッチ56は、車両2の状態をイグニッション状態とアクセサリ状態とオフ状態とに切り替えるためのスイッチである。制御部70は、キースイッチ56で切り替えた車両2の状態を取得する。
【0043】
制御部70は、圧縮機11と電源制御ユニット41と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとホットガス弁22とに接続している。制御部70は、圧縮機11の駆動を制御して、冷凍サイクル装置10rを循環する冷媒の量を制御する。制御部70は、電源制御ユニット41の駆動を制御する。制御部70は、凝縮器ファン12fの駆動を制御して、凝縮器12の周囲に流れる空気の量を制御する。制御部70は、蒸発器ファン15fの駆動を制御して、蒸発器15の周囲に流れる空気の量を制御する。制御部70は、ホットガス弁22の開度を制御して、蒸発器15を除霜する状態と蒸発器15を除霜しない状態とに切り替える。
【0044】
制御部70は、乗員用報知装置45に接続されている。乗員用報知装置45は、車両2の乗員に対して、空調運転に関するエラー報知などの報知を行うための装置である。エラー報知には、庫内温度が適正な温度でない状態であることを報知することが含まれる。乗員用報知装置45は、例えば設定温度に対して庫内温度が高すぎる場合や低すぎる場合に、エラー報知を行う。乗員用報知装置45は、例えば乗員に対して視覚的に報知を行う表示画面などの表示装置である。乗員用報知装置45は、例えば乗員に対して音で報知を行うブザーなどの発音装置である。乗員用報知装置45は、例えば乗員に対して振動で報知を行う振動発生装置である。乗員用報知装置45は、画面表示と音を組み合わせるなどして、複数の報知方法で報知を行ってもよい。乗員用報知装置45は、報知装置の一例を提供する。
【0045】
制御部70は、取得部71と設定部72と判定部73とを備えている。取得部71は、空調運転に関する様々な情報を取得する。取得部71は、例えば設定温度を取得する。取得部71は、例えば庫内温度を取得する。取得部71は、例えば外気温度を取得する。取得部71は、例えば車両2の現在位置を取得する。取得部71は、例えば保冷庫ドア3dの開閉の状態を取得する。取得部71は、例えば車両2がイグニッション状態かアクセサリ状態かオフ状態かを取得する。
【0046】
設定部72は、報知制御に関する様々な条件を設定する。設定部72は、例えば設定温度に基づいて庫内温度の適正温度範囲を設定する。判定部73は、報知制御に関する判定を行う。言い換えると、判定部73は、取得部71で取得した車両2の情報に基づいて、設定部72で設定した条件を満たしているか否かを判定する。
【0047】
制御部70は、報知制御部75を備えている。報知制御部75は、判定部73での判定結果に基づき、乗員用報知装置45を用いた報知を制御する。報知制御部75は、例えば、エラー報知を行うべきと判定された場合、エラー報知を停止すべきと判定されるまでエラー報知を行う。
【0048】
グラフを用いて、エラー報知を含まない場合の空調装置10の空調運転の一例を以下に説明する。エラー報知を含む場合の空調装置10の空調運転の一例については、後に説明する。
図4において、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示している。空調装置10の設定温度が5℃、外気温度が20℃程度である場合を例にグラフを示している。
【0049】
空調運転を開始するタイミングであるTc0では、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを駆動することで冷却運転を開始している。これにより、外気温度相当の温度であった庫内温度が低下し、徐々に設定温度である5℃に近づくことになる。その後、設定温度よりも低い温度に設定されている冷却終了温度まで庫内温度が低下したことを検知して、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとの駆動を停止することで冷却運転を停止する。冷却終了温度は、例えば3℃である。
【0050】
冷却運転の停止中は、庫内温度よりも高い温度である外気温度の影響により徐々に庫内温度が上昇する。冷却運転の停止中には、必要に応じて蒸発器15が除霜される。その後、設定温度よりも高い温度に設定されている冷却開始温度まで庫内温度が上昇したことを検知した場合に、冷却運転を再開する。冷却開始温度は、例えば7℃である。Tc0よりも後であって、最初に冷却運転を再開するタイミングがTc1である。
【0051】
その後も冷却運転の実行と停止を繰り返して、庫内温度が冷却終了温度から冷却開始温度までの温度範囲内に収まるように空調運転を行う。ただし、冷却負荷に応じて圧縮機11の回転数を適宜変化させるインバータ制御で空調装置10の空調運転を行ってもよい。この場合、冷却運転の実行と停止を繰り返すのではなく、庫内温度が設定温度を維持するように冷却能力を調整しながら冷却運転を実行し続けることとなる。
【0052】
低温輸送を終了する場所である最終荷下ろし地に到着したタイミングがTeである。このTeのタイミングで、乗員によって操作パネル51が操作され、空調装置10の電源がオフされている。空調装置10の電源がオフされた後は、空調装置10による冷却運転を行わない。このため、Te以降は、庫内温度が冷却開始温度を超えて上昇し、外気温度に近い温度まで上昇することとなる。最終荷下ろし地は、荷下ろし地の一例を提供する。
【0053】
フローチャートを用いて、空調装置10の空調制御の一例を以下に説明する。
図5において、乗員による操作パネル51の入力によって空調運転が開始されると、ステップS101で適正温度範囲を設定する。適正温度範囲とは、保冷庫3の内部において許容される温度範囲のことである。庫内温度が適正温度範囲内であれば、空調装置10などが正常な状態である。一方、庫内温度が適正温度範囲外であれば、空調装置10などに異常が発生している可能性がある。このため、庫内温度が適正温度範囲外であれば、乗員に対してエラー報知を行う場合がある。ステップS101は、温度設定ステップの一例を提供する。
【0054】
適正温度範囲は、上限値と下限値とによって規定されている。上限値は、例えば冷却開始温度よりも高い温度である。下限値は、例えば冷却終了温度よりも低い温度である。乗員によって設定された設定温度は、適正温度範囲内に含まれている。仮に設定温度が5℃、冷却開始温度が7℃、冷却終了温度が3℃である場合、上限値は9℃、下限値は1℃に設定できる。ただし、設定温度などの値は、低温輸送の目的や外気温度などの外部環境に応じて乗員が適宜設定可能である。適正温度範囲を設定した後、ステップS102に進む。
【0055】
ステップS102では、予冷開始時刻を記憶する。予冷開始時刻とは、庫内温度を適正温度範囲内にするために空調運転を開始した時刻のことである。予冷には、低温輸送を開始するために外気温度相当の庫内温度を上限値未満の温度まで下げる空調運転が含まれる。予冷には、荷下ろしを行うために保冷庫ドア3dを開放したことで一時的に外気温度相当まで上昇した庫内温度を、上限値未満の温度まで下げる空調運転が含まれる。空調運転を維持した状態で開いていた保冷庫ドア3dを閉じたタイミングが、予冷の開始タイミングとみなすことができる。空調運転において、予冷中である場合と予冷中でない場合とで、同じ制御を行ってもよく、異なる制御を行ってもよい。予冷を開始した時点ですでに庫内温度が適正温度範囲内である場合には、記憶すべき予冷開始時刻が存在しない状態となる。予冷開始時刻が記憶されていることで、予冷中であると判断できる。予冷開始時刻を記憶した後、ステップS104に進む。
【0056】
ステップS104では、予冷開始時刻から所定時間経過したか否かを判定する。ここで、所定時間とは、例えば30分である。予冷開始時刻から所定時間経過している場合には、空調装置10が適切に機能していない可能性がある判断として、ステップS105に進む。一方、予冷開始時刻から所定時間経過していない場合には、空調装置10は適切に機能していると判断してステップS106に進む。また、予冷開始時刻が記憶されていない場合には、予冷開始時刻から所定時間経過していない場合と同様、空調装置10は適切に機能していると判断してステップS106に進む。
【0057】
ステップS105では、予冷エラー報知を行う。予冷エラー報知とは、予冷が所定時間内に完了しなかったことを報知するエラー報知である。予冷エラー報知は、エラー報知の一例である。予冷が所定時間内に完了しない原因としては、様々な理由が想定される。1つの理由としては、保冷庫ドア3dが開放されており、保冷庫3の内部に温度の高い外気が流入してしまっていることが想定される。他の理由としては、空調装置10が故障してしまい、冷却を開始できていないことが想定される。他の理由としては、外気温度に対して適正温度範囲が低すぎることで、空調装置10の冷却能力を超えてしまっていることが想定される。ステップS105は、報知ステップの一例を提供する。
【0058】
予冷エラー報知では、所定時間内に予冷が完了していないことを示す警告メッセージを乗員用報知装置45の表示画面に表示する。さらに、乗員用報知装置45の発音装置から警告音を発音する。これにより、乗員に対して、エラーが発生していることと発生しているエラーの内容を報知する。乗員は、予冷エラー報知を受けて、保冷庫ドア3dが閉じているか否かの確認や、空調装置10の電源がオンの状態であるか否かの確認を行うことで、温度異常に対処することができる。また、空調装置10以外の冷却方法がある場合には、その冷却方法を用いて被冷却物の冷却を行う対処も可能である。空調装置10以外の冷却方法としては、例えば、保冷庫3と冷凍倉庫とを連通し、冷凍倉庫の冷気を保冷庫3内部に流入させる方法である。予冷エラー報知を行った後、ステップS110に進む。
【0059】
ステップS106では、予冷エラー報知を停止する。言い換えると、予冷エラー報知が行われている場合には、予冷エラー報知を停止する。一方、予冷エラー報知が行われていない場合には、予冷エラー報知が行われていない状態を維持する。予冷エラー報知を停止した後、ステップS110に進む。
【0060】
ステップS110では、通常冷却モードを実行する。通常冷却モードを実行した後、通常冷却モードを維持してステップS141に進む。通常冷却モードの詳細について、以下に説明する。
図6において、通常冷却モードが開始されると、ステップS111で庫内温度を取得する。庫内温度は、庫内温度センサ52で計測した温度を取得する。庫内温度を取得した後、ステップS112に進む。ステップS111は、温度取得ステップの一例を提供する。
【0061】
ステップS112では、庫内温度が適正温度範囲内であるか否かを判定する。庫内温度が適正温度範囲内である場合には、予冷が完了していると判断してステップS113に進む。一方、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、予冷中であると判断してステップS115に進む。
【0062】
ステップS113では、予冷開始時刻を削除する。言い換えると、予冷開始時刻が記憶されている場合には、予冷開始時刻を削除して予冷開始時刻が記憶されていない状態とする。これにより、予冷が終了し、予冷中ではないということになる。一方、予冷開始時刻が記憶されていなければ、予冷開始時刻が記憶されていない状態を維持する。また、もし予冷エラーを報知している場合には、予冷エラー報知を停止する。予冷開始時刻を削除した後、ステップS115に進む。
【0063】
ステップS115では、庫内温度が冷却開始温度以上であるか否かを判定する。庫内温度が冷却開始温度以上である場合には、保冷庫3を冷やすために冷房する必要があると判断して、ステップS116に進む。一方、庫内温度が冷却開始温度未満である場合には、保冷庫3を冷房する必要があるか否かにさらなる判定が必要と判断してステップS125に進む。
【0064】
ステップS116では、圧縮機11を駆動する。仮に圧縮機11が停止状態であれば、新たに駆動を開始する。一方、すでに圧縮機11が駆動中である場合には、圧縮機11が駆動している状態を維持する。圧縮機11を駆動するとともに、凝縮器ファン12fを駆動する。これにより、凝縮器12による周囲の空気への放熱を促進する。また、圧縮機11を駆動するとともに、蒸発器ファン15fを駆動する。これにより、蒸発器15による周囲の空気からの吸熱を促進するとともに、保冷庫3内部に冷風を吹き出させる。圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを駆動した状態を維持して、ステップS117に進む。
【0065】
ステップS117では、庫内温度が上限値以上であるか否かを判定する。庫内温度が上限値以上である場合には、ステップS118Aに進む。一方、庫内温度が上限値未満である場合には、報知すべきエラーが発生していない状態であると判断してステップS139に進む。ステップS117は、温度判定ステップの一例を提供する。
【0066】
ステップS118Aでは、予冷中か否かを判定する。予冷中か否かは、予冷開始時刻が記憶されているか否かによって判定できる。予冷を開始してから庫内温度が適正温度範囲内に収まるまでの間は、予冷開始時刻が記録された状態が維持される。一方、庫内温度が適正温度範囲内に収まった後は、予冷開始時刻が削除され、予冷開始時刻が記録されていない状態が維持される。このため、予冷開始時刻が記憶されている場合には、予冷中すなわち予冷完了前であると判断できる。一方、予冷開始時刻が記憶されていない場合には、予冷中ではない、すなわち予冷完了後であると判断できる。予冷中であれば、エラー報知を行う必要がないと判断し、ステップS139に進む。一方、予冷中でなければ、ステップS118Bに進む。ステップS118Aは、予冷判定ステップの一例を提供する。
【0067】
予冷中であれば、庫内温度が上限値以上であってもエラー報知をする必要がないと判断できる理由について、以下に説明する。低温輸送に使われる保冷庫3は、被冷却物を収蔵している間に庫内温度を低温に保てばよく、被冷却物を収蔵していない状態では、庫内温度を低温に保つ必要がない。このため、低温輸送を開始する前や、低温輸送を終了した後などの被冷却物が収蔵されていない状態では、庫内温度が外気温度相当の温度であることが一般的である。ここで、被冷却物は、保冷庫3内部に収蔵される時点で、温度管理がなされていることが好ましい。したがって、保冷庫3内部に被冷却物を収蔵する前には、予め保冷庫3の内部を冷却しておく予冷を行う必要がある。
【0068】
予冷は、空調装置10を駆動して空調運転を開始することで実行できる。また、保冷庫3を冷凍倉庫に連通させて、冷凍倉庫の冷気を保冷庫3内部に流すことで予冷を実行してもよい。また、空調装置10による空調運転と、冷凍倉庫の冷気の流入との両方を用いて予冷を実行してもよい。
【0069】
予冷は、庫内温度が適正温度範囲内に収まるまで継続することになる。このため、空調装置10を駆動して予冷を実行している間は、当然庫内温度が上限値以上となる。予冷中に庫内温度が上限値以上となることは、予冷を実行している空調装置10のユーザである乗員も当然認識可能である。したがって、すでに乗員が認識している内容をエラーとして改めて報知する必要がないといえる。
【0070】
ステップS118Bでは、車両2が停車中であるか否かを判定する。言い換えると、車両2が移動しているか否かを判定する。車両2が停車中であるか否かは、速度検出装置57で検出した車速から判定できる。車速がゼロであれば、停車中であると判定できる。一方、車速がゼロでなければ停車中ではないと判定できる。停車中であるか否かの判定方法は、速度検出装置57を用いる方法に限られない。例えば、位置検出装置54で検出した現在位置が直前の位置と同じ位置であれば、停車中であると判定できる。例えば、キースイッチ56がオフの状態であれば、停車中であると判定できる。例えば、車両2のシフトレバーがパーキングの状態であれば、停車中であると判定できる。車両2が停車中である場合には、エラー報知を行う必要がないと判断し、ステップS139に進む。一方、車両2が停車中でなければ、ステップS119に進む。ステップS118Bは、移動判定ステップの一例を提供する。
【0071】
車両2が停車中であれば、庫内温度が上限値以上であってもエラー報知をする必要がないと判断できる理由について、以下に説明する。車両2は、低温輸送を開始する出発地点から移動を開始し、複数の荷下ろし地を経由しながら最終荷下ろし地に移動する場合がある。この場合、最終荷下ろし地に到着する前の複数の荷下ろし地において、被冷却物を搬出する荷下ろしを行うこととなる。荷下ろし中は、車両2を停車させ、保冷庫ドア3dを開放する必要がある。このため、荷下ろし中に保冷庫3内部に外気が流入しやすく、庫内温度が上昇しやすい。
【0072】
荷下ろしのために停車している車両2の乗員は、荷下ろしによって庫内温度が上昇し得ることを当然に認識している。したがって、すでに乗員が認識している荷下ろしに伴う庫内温度の上昇をエラーとして改めて報知する必要がないといえる。
【0073】
ステップS125では、庫内温度が冷却終了温度未満か否かを判定する。庫内温度が冷却終了温度未満である場合には、保冷庫3を冷やすために冷房する必要がないと判断して、ステップS126に進む。一方、庫内温度が冷却終了温度未満である場合には、現在の状態を維持すべきであると判断して、ステップS136に進む。
【0074】
ステップS126では、圧縮機11を停止する。仮に圧縮機11が駆動状態であれば、停止する。一方、すでに圧縮機11が停止中である場合には、圧縮機11が停止している状態を維持する。圧縮機11を停止するとともに、凝縮器ファン12fを停止する。これにより、凝縮器12と周囲の空気との熱交換が少ない状態とする。また、圧縮機11を停止するとともに、蒸発器ファン15fを停止する。これにより、蒸発器15と周囲の空気との熱交換が少ない状態とするとともに、保冷庫3内部への冷風吹き出しを停止させる。圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを停止した状態を維持して、ステップS127に進む。
【0075】
ステップS127では、庫内温度が下限値未満であるか否かを判定する。庫内温度が下限値未満である場合には、ステップS119に進む。一方、庫内温度が下限値以上である場合には、報知すべきエラーが発生していない状態であると判断してステップS139に進む。
【0076】
ステップS136では、圧縮機11の状態を維持する。仮に圧縮機11が駆動状態であれば、圧縮機11の駆動状態を維持する。一方、圧縮機11が停止状態であれば、圧縮機11の停止状態を維持する。さらに、凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fについても、圧縮機11と同様に直前の状態を維持する。圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを直前の状態を維持して、ステップS139に進む。
【0077】
ステップS119では、温度エラー報知を行う。温度エラー報知とは、庫内温度が適正温度範囲内に収まっていないことを示すエラー報知である。温度エラー報知には、庫内温度が上限値を超えて高い温度であることの報知が含まれる。温度エラー報知には、庫内温度が下限値を超えて低い温度であることの報知が含まれる。温度エラー報知は、エラー報知の一例である。ステップS119は、報知ステップの一例を提供する。
【0078】
温度エラー報知が行われる例としては、乗員による空調スイッチ51sの操作ミスが想定される。より詳細には、荷下ろし地で荷下ろしを行う際に、空調装置10の電源を切り、冷凍倉庫からの冷風を保冷庫3内部に流入させることで保冷庫3内部を冷却することがある。その後、荷下ろしを完了し、空調装置10の電源を入れ忘れた状態で、次の荷下ろし地に移動を開始した場合に、外気温度の影響で庫内温度が徐々に上昇してしまう。その結果、庫内温度が上限値を超えてしまい、温度エラー報知が行われることが想定される。
【0079】
温度エラー報知では、現在の庫内温度が適正温度範囲内にないことを示す警告メッセージを乗員用報知装置45の表示画面に表示する。さらに、乗員用報知装置45の発音装置から警告音を発音する。これにより、乗員に対して、保冷庫3の温度に関するエラーが発生していることを報知する。乗員は、温度エラー報知を受けて、保冷庫ドア3dが閉じているか否かの確認や、空調装置10の電源がオンの状態であるか否かの確認を行うことで、温度異常に対処することができる。温度エラー報知を行った後、圧縮機11の状態や温度エラー報知を行っている状態を維持して通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。
【0080】
操作パネル51の操作によって、エラー報知を抑制あるいは、強制的に停止可能に構成してもよい。これによると、乗員が異常を解消するための対処を行った後で、実際に庫内温度が適正温度範囲内に収まるまでの間、エラー報知が維持されてしまうことを抑制できる。
【0081】
ステップS139では、温度エラー報知を停止する。言い換えると、温度エラー報知を行っている場合には、温度エラー報知を停止する。一方、温度エラー報知を行っていない場合には、温度エラー報知を行っていない状態を維持する。温度エラー報知を停止した後、圧縮機11の状態や温度エラー報知を停止した状態を維持して通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。ステップS139は、報知ステップの一例を提供する。
【0082】
図5のステップS141では、車両2の現在位置を取得する。車両2の現在位置は、位置検出装置54を用いて検出した位置情報から取得できる。車両2の現在位置を取得した後、ステップS142に進む。
【0083】
ステップS142では、車両2が最終荷下ろし地に到着した後か否かを判定する。車両2が最終荷下ろし地に到着している場合には、エラー報知を行う必要がないと判断してステップS143に進む。一方、車両2が最終荷下ろし地に到着していない場合には、ステップS104に戻って、車両2が最終荷下ろし地に到着するまで空調運転を維持する。ステップS142は、位置判定ステップの一例を提供する。
【0084】
車両2が最終荷下ろし地に到着した後であれば、庫内温度が適正温度範囲内に収まっていなくてもエラー報知をする必要がないと判断できる理由について、以下に説明する。車両2は、最終荷下ろし地に到着して荷下ろしを完了した時点で保冷庫3内部に被冷却物が収蔵されていない状態となる。言い換えると、低温輸送の温度管理対象が存在していない状態である。このため、乗員に対して庫内温度の上昇をエラーとして報知する必要がないといえる。
【0085】
ステップS143では、空調装置10による空調運転を停止する。ただし、空調装置10を停止する前に除霜運転を実行するなどして、次回の空調運転に向けた制御を完了した後に空調運転を停止するなどしてもよい。空調運転を停止した後、ステップS169に進む。
【0086】
ステップS169では、エラー報知を停止する。温度エラー報知が行われている場合には、温度エラー報知を停止する。一方、温度エラー報知が行われていない場合には、温度エラー報知が行われていない状態を維持する。エラー報知を停止した後、空調装置10を用いた一連の空調制御を終了する。ステップS169は、報知ステップの一例を提供する。
【0087】
グラフを用いて、温度エラー報知を含む空調装置10の空調運転の一例を以下に説明する。
図7において、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示している。空調装置10の設定温度が5℃、外気温度が20℃程度である場合を例にグラフを示している。
【0088】
Tc0は、低温輸送を開始したタイミング、あるいは、空調運転を実行しながら荷下ろしを行うために開放した保冷庫ドア3dを閉じたタイミングである。言い換えると、保冷庫ドア3dが開放され、庫内温度が上限値を超えた外気温度相当まで上昇した後であって、最初に空調運転を開始したタイミングである。Tsは、通常冷却モードを開始してから、最初に庫内温度が適正温度範囲内になったタイミングである。言い換えると、Tsは、通常冷却モードを開始してから、最初に庫内温度が上限値を下回ったタイミングである。Tc0からTsまでの間は、予冷の状態である。このため、庫内温度が上限値を超えているが、温度エラー報知を行わない。予冷完了後であるTsからTe1までの間は、庫内温度が冷却開始温度から冷却終了温度までの温度範囲内で変動している。
【0089】
Te1は、乗員の操作ミスにより空調スイッチ51sがオフにされたタイミングである。このため、Te1からTc4までの間は、冷却開始温度を超えても空調運転が開始されず、庫内温度が上昇を続けている。庫内温度の上昇が続いた結果、庫内温度が上限値を超え、温度エラー報知が開始される。この温度エラー報知を受けて、乗員が空調スイッチ51sをオンに切り替える操作を行い、Tc4で空調運転が再開されている。これにより、空調装置10の通常冷却モードが再開される。
【0090】
Tc4からTe2までの間は、通常冷却モードによる空調運転が実行されている。Tc4で空調運転を再開した直後から庫内温度が上限値を下回るまでの間、温度エラー報知が維持されている。その後は、庫内温度が適正温度範囲内に収まっている状態が維持されており、温度エラー報知が停止した状態である。Te2は、最終荷下ろし地に到着し、空調スイッチ51sがオフに切り替えられたタイミングである。Te2以降は、空調装置10が空調運転を行わない。このため、庫内温度が冷却開始温度を超えて上昇し、外気温度に近い温度まで上昇することとなる。Te2以降は、庫内温度が上限値を超えた状態であっても、温度エラー報知を行うことがない。
【0091】
上述した実施形態によると、報知制御部75は、空調運転を開始してから庫内温度が適正温度範囲内に収まった後であって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行う。加えて、報知制御部75は、空調運転を開始してから庫内温度が適正温度範囲内に収まるまでの間は、温度エラー報知を行わない。言い換えると、予冷完了前は、庫内温度が上限値を超えていても温度エラー報知を行わない。このため、予冷完了前であって庫内温度が上限値よりも高いという乗員が認識済みの状況を改めて温度エラー報知によって報知することがない。したがって、温度エラー報知において、乗員が認識済みの理由によるエラー報知の割合を減らし、操作ミスや空調装置10の故障といった乗員が認識していない理由によるエラー報知の割合を高めることができる。言い換えると、温度エラー報知において、乗員による対処が不要なエラー報知の割合を減らし、乗員による対処が必要なエラー報知の割合を高めることができる。よって、効果的にエラーを報知可能な空調システム1を提供できる。
【0092】
報知制御部75は、車両2が荷下ろし地に到着する前であって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、車両2が荷下ろし地に到着した後は、温度エラー報知を行わない。このため、荷下ろし地に到着後であって、被冷却物が存在しないなどの理由により庫内温度が上限値よりも高くても問題ない状況で温度エラー報知を行うことがない。したがって、温度エラー報知において、乗員による対処が不要なエラー報知の割合を減らし、乗員による対処が必要なエラー報知の割合を相対的に高めることができる。よって、効果的にエラーを報知可能な空調システム1を提供できる。
【0093】
報知制御部75は、車両2が移動中であって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、車両2が移動を停止している間は、温度エラー報知を行わない。このため、荷下ろし中などの庫内温度が上限値よりも高いという乗員が認識済みの状況を改めて温度エラー報知によって報知することがない。したがって、温度エラー報知において、乗員による対処が不要なエラー報知の割合を減らし、乗員による対処が必要なエラー報知の割合を高めることができる。よって、効果的にエラーを報知可能な空調システム1を提供できる。
【0094】
報知制御部75は、乗員用報知装置45を用いて温度エラー報知を行う。また、報知ステップは、乗員用報知装置45を用いて温度エラー報知を行う。このため、乗員に対して温度エラー報知を行い、乗員に対して直接的にエラーへの対処を促すことができる。したがって、乗員が容易に対処可能な理由で温度エラー報知されている場合に、速やかにエラーの状態を解消することができる。乗員が容易に対処可能な理由としては、空調スイッチ51sの操作ミスや、保冷庫ドア3dの閉め忘れなどが想定される。
【0095】
報知制御部75は、空調運転を開始してから所定時間内に庫内温度が適正温度範囲内に収まらない場合には、予冷エラー報知を行う。また、報知ステップは、空調運転を開始してから所定時間内に庫内温度が適正温度範囲内に収まらない場合には、予冷エラー報知を行う。このため、予冷中に起きている異常を乗員が認識できる。特に、予冷中に温度エラー報知を行わない設定である場合には、温度エラー報知の代わりに予冷エラー報知を行うことになる。このため、温度エラー報知を行わない予冷中であっても、エラー報知すべき異常を予冷エラー報知によって報知できる。
【0096】
報知制御部75は、保冷庫ドア3dが開いたことを検知した後は、保冷庫ドア3dが閉じたことを検知してから庫内温度が適正温度範囲内に収まるまで温度エラー報知を行わない。また、報知ステップは、保冷庫ドア3dが開いたことを検知した後は、保冷庫ドア3dが閉じたことを検知してから庫内温度が適正温度範囲内に収まるまで温度エラー報知を行わない。このため、保冷庫ドア3dを開く必要のある荷下ろし中に温度エラー報知することがない。また、保冷庫ドア3dを閉じた後の予冷完了後に温度異常が生じた場合には温度エラー報知を行う。したがって、温度エラー報知において、乗員による対処が不要なエラー報知の割合を減らし、乗員による対処が必要なエラー報知の割合を高めることができる。よって、効果的にエラーを報知可能な空調システム1を提供できる。特に、保冷庫ドア3dを閉じた後であっても、庫内温度が上限値を下回る温度になるまでには、時間がかかる。このように、乗員による対処が完了している温度異常について温度エラー報知を行わないことで、重要度の高い異常へのエラー報知の効果を相対的に高めることができる。
【0097】
空調装置10の空調制御方法は、予冷完了後、かつ、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、予冷完了前は、温度エラー報知を行わない報知ステップを備えている。また、空調装置10の空調制御を行うための空調制御プログラムは、予冷完了後、かつ、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、予冷完了前は、温度エラー報知を行わない処理を備えている。このため、乗員が認識済みの状況を改めて温度エラー報知によって報知することがない。したがって、温度エラー報知において、乗員が認識済みの理由によるエラー報知の割合を減らし、乗員が認識していない理由によるエラー報知の割合を高めることができる。よって、効果的にエラーを報知可能な空調制御方法および空調制御プログラムを提供できる。
【0098】
空調装置10の空調制御方法は、車両2が荷下ろし地に到着する前、かつ、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、車両2が荷下ろし地に到着した後は、温度エラー報知を行わない報知ステップを備えている。また、空調装置10の空調制御を行うための空調制御プログラムは、車両2が荷下ろし地に到着する前、かつ、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、車両2が荷下ろし地に到着した後は、温度エラー報知を行わない処理を備えている。このため、庫内温度が上限値よりも高くても問題ない状況で温度エラー報知を行うことがない。したがって、温度エラー報知において、乗員による対処の不要なエラー報知の割合を減らし、乗員による対処の必要なエラー報知の割合を相対的に高めることができる。よって、効果的にエラーを報知可能な空調制御方法および空調制御プログラムを提供できる。
【0099】
空調装置10の空調制御方法は、車両2が移動中であって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、車両2が移動を停止している間は、温度エラー報知を行わない報知ステップを備えている。また、空調装置10の空調制御を行うための空調制御プログラムは、車両2が移動中であって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度エラー報知を行い、車両2が移動を停止している間は、温度エラー報知を行わない処理を備えている。このため、乗員が認識済みの状況を改めて温度エラー報知によって報知することがない。したがって、温度エラー報知において、乗員の対処が不要なエラー報知の割合を減らし、乗員の対処が必要なエラー報知の割合を高めることができる。よって、効果的にエラーを報知可能な空調制御方法および空調制御プログラムを提供できる。
【0100】
第2実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、温度エラー報知を行わないタイミングであって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、予備エラー報知を行う。
【0101】
フローチャートを用いて、空調装置10の空調制御の一例を以下に説明する。
図8において、乗員による操作パネル51の入力によって空調運転が開始されると、ステップS101で適正温度範囲を設定し、ステップS102に進む。ステップS102では、予冷開始時刻を記憶し、ステップS104に進む。
【0102】
ステップS104では、予冷開始時刻から所定時間経過したか否かを判定する。予冷開始時刻から所定時間経過している場合には、空調装置10が適切に機能していない可能性がある判断として、ステップS105に進み、予冷エラー報知を行う。その後、ステップS210に進む。一方、予冷開始時刻から所定時間経過していない場合および予冷開始時刻が記憶されていない場合には、空調装置10は適切に機能していると判断してステップS106に進み、予冷エラー報知を停止する。その後、ステップS210に進む。
【0103】
ステップS210では、通常冷却モードを実行する。通常冷却モードを実行した後、通常冷却モードの状態を維持してステップS141に進む。通常冷却モードの詳細について、以下に説明する。
図9において、通常冷却モードが開始されると、ステップS111で庫内温度を取得し、ステップS112に進む。ステップS112では、庫内温度が適正温度範囲内であるか否かを判定する。庫内温度が適正温度範囲内である場合には、予冷が完了していると判断してステップS113に進み、予冷開始時刻を削除する。その後、ステップS214に進む。一方、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、予冷中であると判断してステップS115に進む。
【0104】
ステップS214では、予備エラー報知を停止する。予備エラー報知とは、温度エラー報知を行わないタイミングであって、庫内温度が適正温度範囲外である場合に行うエラー報知である。予備エラー報知の詳細については、後に説明する。予備エラー報知が行われている場合には、予備エラー報知を停止する。一方、予備エラー報知が行われていない場合には、予備エラー報知が行われていない状態を維持する。予備エラー報知を停止した後、ステップS115に進む。
【0105】
ステップS115では、庫内温度が冷却開始温度以上であるか否かを判定する。庫内温度が冷却開始温度以上である場合には、ステップS116に進む。一方、庫内温度が冷却開始温度未満である場合には、ステップS125に進む。
【0106】
ステップS116では、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを駆動して、ステップS117に進む。ステップS117では、庫内温度が上限値以上であるか否かを判定する。庫内温度が上限値以上である場合には、温度エラー報知か予備エラー報知のどちらかのエラー報知が必要であると判断して、ステップS118Aに進む。一方、庫内温度が上限値未満である場合には、ステップS139に進む。
【0107】
ステップS118Aでは、予冷中か否かを判定する。予冷中とは、予冷開始時刻が記憶されている状態のことである。予冷中であれば、温度エラー報知は不要だが、予備エラー報知を行う必要があると判断して、ステップS229に進む。一方、予冷中でなければ、ステップS118Bに進む。
【0108】
ステップS118Bでは、車両2が停車中であるか否かを判定する。車両2が停車中である場合には、温度エラー報知は不要だが、予備エラー報知を行う必要がないと判断して、ステップS229に進む。一方、車両2が停車中でなければ、ステップS119に進む。
【0109】
ステップS125では、庫内温度が冷却終了温度未満か否かを判定する。庫内温度が冷却終了温度未満である場合には、ステップS126に進み、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを停止する。その後、ステップS127に進む。一方、庫内温度が冷却終了温度未満である場合には、ステップS136に進み、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを直前の状態を維持する。その後、ステップS139に進む。
【0110】
ステップS119では、温度エラー報知を行い、圧縮機11の状態や温度エラー報知を行っている状態を維持して通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。
【0111】
ステップS229では、予備エラー報知を行う。予備エラー報知とは、温度エラー報知を行わないタイミングであって、庫内温度が適正温度範囲内に収まっていないことを示すエラー報知である。予備エラー報知には、庫内温度が上限値を超えて高い温度であることの報知が含まれる。予備エラー報知は、エラー報知の一例である。ステップS229は、報知ステップの一例を提供する。
【0112】
予備エラー報知が行われる例としては、乗員が認識済みの温度異常が想定される。より詳細には、低温輸送の出発地点で被冷却物を収蔵する前の予冷中の温度異常である。あるいは、車両2を停車し、荷下ろし作業を行っている最中の温度異常である。
【0113】
予備エラー報知では、現在の庫内温度が適正温度範囲内にないことを示す警告メッセージを乗員用報知装置45の表示画面に表示する。予備エラー報知は、温度エラー報知に比べて抑制されたエラー報知である。より詳細には、予備エラー報知では、表示画面に表示される警告メッセージの大きさが、温度エラー報知の場合に比べて小さく設定されている。これにより、乗員に対して、保冷庫3の温度に関するエラーが発生していることを温度エラー報知に比べて控えめに報知する。乗員は、予備エラー報知が予測していないエラー報知であった場合には、保冷庫ドア3dが閉じているか否かの確認や、空調装置10の電源がオンの状態であるか否かの確認を行うことで、温度異常に対処することができる。予備エラー報知を行った後、圧縮機11の状態や予備エラー報知を行っている状態を維持して通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。
【0114】
予備エラー報知を温度エラー報知に比べて抑制したエラー報知とする方法は、表示の大きさを小さくすることに限られない。例えば、予備エラー報知では、乗員用報知装置45の発音装置から発音される警告音の大きさを、温度エラー報知の場合に比べて小さくしてもよい。あるいは、予備エラー報知では、乗員用報知装置45の発音装置から発音しないようにしてもよい。例えば、温度エラー報知では、表示画面を点滅させ、予備エラー報知では、表示画面を点滅させないようにしてもよい。例えば、温度エラー報知では、赤色のランプを点灯させ、予備エラー報知では黄色のランプを点灯させるようにして色分けをしてもよい。
【0115】
ステップS139では、エラー報知を停止し、圧縮機11の状態やエラー報知を停止した状態を維持して通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。
【0116】
図8のステップS141では、車両2の現在位置を取得し、ステップS142に進む。ステップS142では、車両2が最終荷下ろし地に到着した後か否かを判定する。車両2が最終荷下ろし地に到着している場合には、ステップS143に進む。一方、車両2が最終荷下ろし地に到着していない場合には、ステップS104に戻って、車両2が最終荷下ろし地に到着するまで空調運転を続ける。
【0117】
ステップS143では、空調装置10による空調運転を停止し、ステップS251に進む。
【0118】
ステップS251では、庫内温度を取得する。空調運転を停止した後であるため、徐々に外気温度に近づいている庫内温度が計測されることとなる。庫内温度を取得した後、ステップS252に進む。
【0119】
ステップS252では、庫内温度が適正温度範囲内であるか否かを判定する。庫内温度が適正温度範囲内である場合には、ステップS253に進む。一方、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、ステップS254に進む。
【0120】
ステップS253では、予備エラー報知を停止する。予備エラー報知が行われている場合には、予備エラー報知を停止する。一方、予備エラー報知が行われていない場合には、予備エラー報知を行わない状態を維持する。予備エラー報知を停止した後、ステップS261に進む。
【0121】
ステップS254では、予備エラー報知を行う。予備エラー報知により、乗員に対して、最終荷下ろし地に到着して空調運転を停止した後ではあるが、庫内温度が適正温度範囲内に収まっていないことを報知する。予備エラー報知を行った後、ステップS261に進む。ステップS254は、報知ステップの一例を提供する。
【0122】
ステップS261では、空調管理要求の有無を判定する。空調管理要求とは、空調装置10の電源のオンオフとは無関係に、庫内温度が適正温度範囲内か否かをチェックして管理する要求のことである。例えば、被冷却物の有無に関わらず、常に庫内温度をチェックして記録したい場合などには、常に空調管理要求がある状態となる。空調管理要求がある場合には、ステップS251に戻って、最新の庫内温度を取得する。一方空調管理要求がない場合には、ステップS269に進む。
【0123】
ステップS269では、エラー報知を停止する。温度エラー報知が行われている場合は、温度エラー報知を停止する。一方、温度エラー報知が行われていない場合は、温度エラー報知が行われていない状態を維持する。エラー報知を停止した後、空調装置10を用いた一連の空調制御を終了する。
【0124】
グラフを用いて温度エラー報知を含む空調装置10の空調運転の一例を以下に説明する。
図10において、横軸は時間を示し、縦軸は温度を示している。空調装置10の設定温度が5℃、外気温度が20℃程度である場合を例にグラフを示している。
【0125】
Tc0は、低温輸送の開始タイミング、あるいは、空調運転を実行しながら荷下ろしを行うために開放した保冷庫ドア3dを閉じたタイミングである。Tsは、通常冷却モードの開始から、最初に庫内温度が適正温度範囲内になったタイミングである。Tc0からTsまでの間は、予冷中の状態である。このため、温度エラー報知を行わず、予備エラー報知を行う。TsからTe1までの間は、庫内温度が冷却開始温度から冷却終了温度までの温度範囲内で変動している。
【0126】
Te1は、乗員の操作ミスによって空調スイッチ51sがオフにされたタイミングである。このため、Te1からTc4までの間は、冷却開始温度を超えても空調運転が開始されず、庫内温度が上昇し続けている。庫内温度の上昇が続いた結果、庫内温度が上限値を超え、温度エラー報知が開始されている。この温度エラー報知を受けて、乗員が空調スイッチ51sをオンに切り替える操作を行い、Tc4で空調運転が再開している。
【0127】
Tc4からTe2までの間は、通常冷却モードが実行されている。Tc4で空調運転を再開した直後から庫内温度が上限値を下回るまで、温度エラー報知が維持されている。その後は、庫内温度が適正温度範囲内に収まっている状態が維持され、温度エラー報知が停止した状態である。Te2は、最終荷下ろし地に到着して、空調スイッチ51sがオフに切り替えられたタイミングである。
【0128】
Te2以降は、空調装置10が空調運転を行わないため、庫内温度が冷却開始温度を超えて上昇し、外気温度に近い温度まで上昇することとなる。Te2以降は、庫内温度が上限値を超えた状態であっても、温度エラー報知を行わないが、予備エラー報知が行われている。予備エラー報知は、庫内温度が適正温度範囲内に収まるか、空調管理要求がなくなるまで維持されることとなる。ただし、操作パネル51の操作によって、予備エラー報知を強制的に停止させるなどしてもよい。
【0129】
上述した実施形態によると、報知制御部75は、温度エラー報知を行わないタイミングであって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、予備エラー報知を行う。また、報知ステップは、温度エラー報知を行わないタイミングであって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、予備エラー報知を行う。このため、温度エラー報知と予備エラー報知との2つのエラー報知を使い分けて、乗員にエラー報知を行うことができる。特に、重要度の高い異常を温度エラー報知とし、重要度の低い異常を予備エラー報知とするなどして、異常の重要度に合わせて異なるエラー報知を使い分けることができる。したがって、乗員がどのような異常が起きているかを容易に認識できる。よって、乗員に対して異常への対処を行う動機付けを効果的に与えることができる。
【0130】
報知制御部75は、予備エラー報知を行う場合には、温度エラー報知を行う場合に比べて、抑制したエラー報知を行う。また、報知ステップは、予備エラー報知を行う場合には、温度エラー報知を行う場合に比べて、抑制したエラー報知を行う。このため、エラー報知において、予備エラー報知よりも温度エラー報知の方が相対的に乗員に対して強く報知されることとなる。したがって、すぐに対処すべき温度異常であるか、すぐに対処する必要のない温度異常であるかを、エラー報知を受けた乗員が判断しやすい。
【0131】
第3実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、空調システム1が空調用通信装置360とサーバ380とを備えている。空調システム1は、車両2に搭載された空調用通信装置360を用いて、外部のサーバ380と通信する。この通信を用いて、空調制御におけるエラー報知を行っている。
【0132】
図11において、車両2には、空調スイッチ51sを有する操作パネル51と庫内温度センサ52と外気温度センサ53が設けられている。車両2には、位置検出装置54と速度検出装置57とドア開閉センサ55とキースイッチ56が設けられている。車両2には、圧縮機11と電源制御ユニット41と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとホットガス弁22とが設けられている。
【0133】
車両2には、制御部70と空調用通信装置360とが設けられている。空調用通信装置360は、空調装置10の空調運転に関する情報を車両2の外部に設けられたサーバ380と通信するための装置である。空調用通信装置360は、送信部361と受信部362とを備えている。送信部361は、制御部70から取得した空調運転に関する情報、および位置検出装置54、速度検出装置57、ドア開閉センサ55、キースイッチ56のそれぞれの状態の情報を、一定時間ごとにサーバ380に送信する機能を有する。送信部361の送信間隔は、例えば30秒である。受信部362は、空調運転に関する情報を一定時間ごとにサーバ380から受信する機能を有する。より詳細には、受信部362は、サーバ380における信号の有無を確認し、信号がある場合には、受信した信号を制御部70に伝えることとなる。信号は、例えば空調装置10の電源をオフとする信号などである。受信部362の受信間隔は、例えば30秒である。
【0134】
空調用通信装置360は、受信すべき信号の有無によらず、空調運転に関する信号を取得するためにサーバ380との通信を所定時間ごとに繰り返し行う。制御部70は、空調用通信装置360に接続している。制御部70は、空調用通信装置360を制御して、外部との通信を行う。空調用通信装置360は、車両2に搭載された車載器である。
【0135】
空調システム1は、車両2の外部に設けられたサーバ380と管理者用端末390とを備えている。サーバ380は、制御部70の一部を構成している。サーバ380は、公衆通信網に接続されている。サーバ380は、空調用通信装置360から送信される情報を、公衆通信網を介して取得する。また、サーバ380は、公衆通信網を介して、空調用通信装置360に情報を送信する。
【0136】
サーバ380は、例えばプロセッサ、メモリ、I/O、これらを接続するバスを備えるマイクロコンピュータを主体として構成される。サーバ380は、メモリに記憶された制御プログラムを実行することで、各種の処理を実行する。ここで言うところのメモリは、コンピュータによって読み取り可能なプログラムおよびデータを非一時的に格納する非遷移的実体的記憶媒体(non-transitory tangible storage medium)である。また、非遷移的実体的記憶媒体は、半導体メモリまたは磁気ディスクなどによって実現される。
【0137】
サーバ380は、1つのサーバ装置からなるものであってもよいし、複数のサーバ装置からなっているものであってもよい。サーバ380は、クラウド上に配置されたサーバ装置であってもよい。
【0138】
サーバ380は、設定部382と判定部383と報知制御部385とを備えている。設定部382は、管理者用端末390内のWEBブラウザ391からの指示を受け、エラー報知に関する様々な条件を設定する。判定部383は、エラー報知を行うか否かを判定する。言い換えると、判定部383は、取得部71で取得した車両2の情報に基づいて、設定部382で設定した条件を満たしているか否かを判定する。報知制御部385は、判定部383で判定した判定結果に基づきエラー報知を制御する。報知制御部385は、管理者用端末390からの問い合わせに応じて、管理者に対して行うエラー報知の信号を出力する。管理者用端末390は、報知装置の一例を提供する。
【0139】
管理者用端末390は、サーバ380に接続されている。管理者用端末390は、サーバ380から取得した空調運転に関する情報を表示する。管理者用端末390は、サーバ380で判定したエラー報知に関する情報を表示する。管理者用端末390は、WEBブラウザ391を備えている。WEBブラウザ391は、空調運転の状態やエラー報知に関する情報を管理者に対して表示する表示画面として機能する。
【0140】
管理者用端末390は、サーバ380の設定部382におけるエラー報知の条件を更新する。例えば、適正温度範囲を変更する。例えば、予冷中や停車中を判定するための条件を変更する。仮に、停車中か否かの判定を車速に基づいていた場合に、車速ではなくシフトレバーがパーキングか否かに基づいて判定するように変更することができる。WEBブラウザ391は、エラー報知に関する条件を管理者が更新可能な操作画面として機能する。
【0141】
車両2に搭載されている空調装置10の制御について、以下に説明する。
図12において、空調運転を開始すると、ステップS310で通常冷却モードを実行する。通常冷却モードを実行した後、通常冷却モードの状態を維持して、ステップS342に進む。通常冷却モードの詳細について、以下に説明する。
図13において、通常冷却モードが開始されると、ステップS311で庫内温度を取得し、ステップS315に進む。
【0142】
ステップS315では、庫内温度が冷却開始温度以上であるか否かを判定する。庫内温度が冷却開始温度以上である場合には、ステップS316に進む。一方、庫内温度が冷却開始温度未満である場合には、ステップS325に進む。
【0143】
ステップS316では、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを駆動して、通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。
【0144】
ステップS325では、庫内温度が冷却終了温度未満か否かを判定する。庫内温度が冷却終了温度未満である場合には、保冷庫3を冷やすために冷房する必要がないと判断して、ステップS326に進む。一方、庫内温度が冷却終了温度未満である場合には、現在の状態を維持すべきであると判断して、ステップS336に進む。
【0145】
ステップS326では、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを停止して、通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。
【0146】
ステップS336では、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとを直前の状態を維持して、通常冷却モードにおける制御の変更を終了する。
【0147】
図12のステップS342では、空調スイッチ51sがオンかオフかを判定する。空調スイッチ51sがオフであればステップS343に進む。一方、空調スイッチ51sがオンであれば、ステップS310に戻って空調スイッチ51sがオフになるまで通常冷却モードを維持する。ここで、空調スイッチ51sは、乗員の操作だけでなく、サーバ380から出力された信号によってもオンオフを切り替え可能である。
【0148】
ステップS343では、空調運転を停止する。より詳細には、圧縮機11と凝縮器ファン12fと蒸発器ファン15fとの駆動を停止する。空調運転を停止した後、空調装置10における空調制御を終了する。
【0149】
車両2に搭載されている空調用通信装置360の制御について、以下に説明する。
図14において、空調運転を開始すると、ステップS355で前回の情報送信から所定時間経過したか否かを判定する。ここで、所定時間は、例えば30秒である。また、空調用通信装置360は、通信を行うたびに通信を行った時刻を記録している。前回の情報送信から所定時間が経過していれば、新たに情報送信すべきと判断して、ステップS356に進む。一方、前回の情報送信から所定時間が経過していなければ、新たに情報送信する必要はないと判断して、所定時間が経過するまで情報送信せずに待機する。
【0150】
ステップS356では、制御部70から情報を取得する。制御部70から取得する情報には、例えば庫内温度、外気温度、設定温度、空調装置10の運転状態などの情報が含まれる。ここで、空調装置10の運転状態には、例えば通常運転や除霜運転といった状態が含まれる。ただし、制御部70から取得する情報は、上述の情報に限られない。制御部70から情報を取得した後、ステップS357に進む。
【0151】
ステップS357では、位置検出装置54と速度検出装置57との検出装置から情報を取得する。位置検出装置54から取得する情報には、緯度、経度、高度などの現在位置を示す情報が含まれる。速度検出装置57から取得する情報には、車速の情報が含まれる。ただし、制御部70から取得する情報は、上述の情報に限られない。例えば、シフトレバーから車両2の現在のレンジの情報を取得するなどしてもよい。検出装置から情報を取得した後、ステップS358に進む。
【0152】
ステップS358では、サーバ380に情報を送信する。サーバ380に送信する情報には、庫内温度などの制御部70から取得した情報と、現在位置などの検出装置から取得した情報とが含まれる。また、サーバ380に情報を送信するとともに、サーバ380に保存されている車両2側に送信すべき信号を取得する。空調用通信装置360がサーバ380から信号を取得した場合には、取得した信号を制御部70に送ることとなる。サーバ380に情報を送信した後、ステップS361に進む。
【0153】
ステップS361では、空調管理要求の有無を判定する。空調管理要求があれば、ステップS355に戻って一連の通信を繰り返す。空調管理要求がなければ、空調用通信装置360を用いた通信を終了する。ただし、エラー報知に関する制御には、車両2の庫内温度などの情報が必須である。このため、基本的には空調管理要求がある状態が維持されることとなる。
【0154】
以上のように、車両2側では、エラー報知に関する制御は行わず、エラー報知以外の空調制御を行っている。このため、空調装置10や空調用通信装置360などの車両2側の装置では、エラー報知に関して複雑な演算処理を行う必要がない。
【0155】
車両2の外部に設けられているサーバ380のエラー報知に関する制御について、以下に説明する。
図15において、空調システム1としての空調運転を行う場合、サーバ380は、車両2側からの送信情報である信号を受信可能な状態である。この状態において、サーバ380は、車両2側から送信された信号を受信することで、サーバ380側でのエラー報知に関する制御フローが開始される。例えば、空調用通信装置360が30秒ごとにデータを送信している場合には、サーバ380が30秒ごとにデータを受信することとなる。この場合、サーバ380側では、30秒ごとに最新のデータに基づいて後述する制御フローが繰り返し実行されることとなる。
【0156】
図15において、空調用通信装置360から送信された信号をサーバ380が受信してエラー報知に関する制御を開始すると、ステップS371で受信データを記憶する。記憶する受信データには、空調用通信装置360が制御部70から取得した車両2の現在位置などの情報が含まれる。記憶する受信データには、検出装置から取得した車両2の車速などの情報が含まれる。受信データを記憶した後、ステップS372に進む。ステップS371は、温度取得ステップの一例を提供する。
【0157】
ステップS372では、前回のデータ受信時刻から所定時間経過しているか否かを判定する。ここで、所定時間は、例えば10分である。所定時間は、空調用通信装置360の送信間隔よりも十分に長い時間であればよく、上述の値に限られない。前回のデータ受信時刻から所定時間経過している場合には、低温輸送のための空調運転を開始したタイミングであるとみなしてステップS373に進む。一方、前回のデータ受信時刻から所定時間経過していない場合には、空調運転を連続して行っているとみなしてステップS374に進む。
【0158】
前回のデータ受信時刻から所定時間経過している場合に、低温輸送のための空調運転を開始したタイミングであるとみなすことのできる理由を以下に説明する。空調運転が行われている間は、例えば30秒ごとの短い送信間隔で空調用通信装置360からデータが送信される。このため、サーバ380側でも例えば30秒ごとの短い受信間隔でデータが受信されることになる。したがって、空調用通信装置360の送信間隔よりも十分に長い時間に設定されている所定時間の間データ受信がない場合には、しばらくの間、空調運転が行われていない状態であるとみなすことができる。すなわち、久しぶりにデータを受信したタイミングを低温輸送のための空調運転を開始したタイミングであるとみなすことができる。
【0159】
ステップS373では、サーバ380の内蔵時計から現在時刻を取得し、取得した現在時刻を予冷開始時刻とみなして記憶する。予冷開始時刻を記憶することで、予冷中の状態となる。予冷開始時刻を記憶した後、ステップS374に進む。
【0160】
ステップS374では、データ受信時刻を記憶する。データ受信時刻を記憶した後、ステップS375に進む。
【0161】
ステップS375では、設定データを読み込む。設定データとは、エラー報知を行うか否かの判定に用いられるデータである。設定データは、管理者による管理者用端末390の操作によって設定されたデータである。設定データには、適正温度範囲の情報が含まれる。適正温度範囲の情報とは、例えば適正温度範囲の上限値と下限値の情報である。設定データには、予冷中か否かを判定するための情報が含まれる。予冷中か否かを判定するための情報とは、例えば前回のデータ受信時刻からの経過時間の情報である。設定データには、停車中か否かを判定するための情報が含まれる。停車中か否かを判定するための情報とは、例えば速度が5km/h以下の場合は停車中とみなす等の条件を示す情報である。設定データには、最終荷下ろし地の情報が含まれる。設定データを読み込んだ後、ステップS376に進む。ステップS375は、温度設定ステップの一例を提供する。
【0162】
ステップS376では、庫内温度が適正温度範囲内か否かを判定する。庫内温度は、記憶している受信データの中から、最新の庫内温度を判定に用いる。庫内温度が適正温度範囲内である場合には、報知すべき温度異常が発生していないと判断してステップS377に進む。一方、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、温度異常を報知すべきか否かについてさらなる判定が必要と判断してステップS398Aに進む。ステップS376は、温度判定ステップの一例を提供する。
【0163】
ステップS377では、予冷開始時刻を削除する。これにより、予冷開始時刻が記憶されていない状態、つまり予冷中ではない状態とする。また、もし予冷エラーを報知している場合には、予冷エラー報知を停止する。予冷開始時刻を削除した後、ステップS379に進む。
【0164】
ステップS398Aでは、予冷中か否かを判定する。予冷中か否かは、予冷開始時刻が記憶されているか否かによって判定することができる。予冷中であれば、エラー報知を行う必要がないと判断し、ステップS379に進む。一方、予冷中でなければ、ステップS398Bに進む。ステップS398Aは、予冷判定ステップの一例を提供する。
【0165】
ステップS398Bでは、車両2が停車中であるか否かを判定する。言い換えると、車両2が移動中か否かを判定する。車両2が停車中であるか否かは、受信データに含まれる車両2の車速の情報から判定することができる。車両2が停車中である場合には、エラー報知を行う必要がないと判断し、ステップS379に進む。一方、車両2が停車中でなければ、ステップS398Cに進む。ステップS398Bは、移動判定ステップの一例を提供する。
【0166】
ステップS398Cでは、車両2が最終荷下ろし地に到着した後か否かを判定する。車両2が最終荷下ろし地に到着した後か否かは、受信データに含まれる車両2の現在位置の情報から判定することができる。車両2が最終荷下ろし地に到着している場合には、エラー報知を行う必要がないと判断してステップS379に進む。一方、車両2が最終荷下ろし地に到着していない場合には、ステップS399に進む。ステップS398Cは、位置判定ステップの一例を提供する。
【0167】
ステップS399では、温度エラー報知を行う。温度エラー報知では、現在の庫内温度が適正温度範囲内にないことを示す警告メッセージを管理者用端末390の表示画面であるWEBブラウザ391に表示する。さらに、管理者用端末390の発音装置から警告音を発音する。これにより、管理者に対して、保冷庫3の温度に関するエラーが発生していることを報知する。管理者は、温度エラー報知を受けて、保冷庫ドア3dが閉じているか否かの確認や、空調装置10の電源がオンの状態であるか否かの確認を車両2の乗員に行うように指示を出すなどして、温度異常に対処することができる。温度エラー報知を行った後、温度エラー報知を行っている状態を維持してサーバ380の制御を終了する。ステップS399は、報知ステップの一例を提供する。
【0168】
ステップS379では、温度エラー報知を停止する。温度エラー報知を停止した後、温度エラー報知を停止した状態を維持してサーバ380の制御を終了する。ただし、車両2側から送信された信号を受信するたびに、一連の制御フローが繰り返される。このため、WEBブラウザ391に表示されるエラー報知は、定期的に最新の状態に更新されることとなる。温度エラー報知を停止した後、温度エラー報知を停止した状態を維持してサーバ380の制御を終了する。ステップS379は、報知ステップの一例を提供する。
【0169】
管理者による管理者用端末390の操作によって、エラー報知を抑制あるいは、強制的に停止可能に構成してもよい。これによると、管理者が乗員に対して異常を解消するための対処を行うよう指示した後で、実際に庫内温度が適正温度範囲内に収まるまでの間、エラー報知が維持されてしまうことを抑制できる。
【0170】
上述した実施形態によると、報知制御部385は、管理者用端末390を用いて温度エラー報知を行う。また、報知ステップは、管理者用端末390を用いて温度エラー報知を行う。このため、管理者に対して温度エラー報知を行うことができる。したがって、乗員以外の立場である管理者が庫内温度の管理を行うことで、低温輸送における乗員の負担を軽減できる。これにより、乗員が運転に専念でき、車両運行の安全性を高めることができる。また、複数の車両2を用いて低温輸送を行う場合に、庫内温度が適正か否かのチェックを管理者が容易に行うことができる。
【0171】
管理者用端末390を用いてエラー報知に関する設定データを更新できる。このため、車両2ごとに操作パネル51などを操作して適正温度範囲や最終荷下ろし地などの情報を更新する必要がない。したがって、データの更新における操作ミスを低減して、複数の車両2の庫内温度のチェックを正確に管理しやすい。
【0172】
サーバ380は、設定部382と判定部383と報知制御部385とを備えている。このため、サーバ380側で、エラー報知を行うか否かの判定を行い、エラー報知を制御することができる。したがって、エラー報知を行うか否かを判定する機能を車両2の外部に設けることができる。よって、サーバ380側でエラー報知を行うか否かの判定を高速に行い、エラー報知を適切に制御することができる。特に、エラー報知に関する一連の複雑な演算処理を高速に行うことで、エラー報知が必要か否かの判定を短い間隔で行うことができる。このため、温度異常が発生した場合に、素早くエラー報知を行い、乗員や管理者が温度異常に素早く対処することができる。
【0173】
第4実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、温度エラー報知を行わないタイミングであって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、報知制御部385が予備エラー報知を行う。
【0174】
空調システム1全体の構成については、第3実施形態で説明した構成と同様の構成を採用可能である。車両2側の制御については、第3実施形態で説明した制御と同様の制御を採用可能である。
【0175】
サーバ380のエラー報知に関する制御について、第3実施形態と異なる部分を中心に以下に説明する。
図16において、ステップS398Aで予冷中であると判定された場合には、ステップS379ではなく、ステップS489に進み、予備エラー報知を行う。また、ステップS398Bで停車中であると判断された場合には、ステップS379ではなく、ステップS489に進み、予備エラー報知を行う。また、ステップS398Cで最終荷下ろし地に到着後であると判定された場合には、ステップS379ではなく、ステップS489に進み、予備エラー報知を行う。
【0176】
ステップS489では、予備エラー報知を行う。予備エラー報知では、現在の庫内温度が適正温度範囲内にないことを示す警告メッセージを管理者用端末390のWEBブラウザ391に表示する。乗員用報知装置45を用いた温度エラー報知および予備エラー報知と同様、予備エラー報知は、温度エラー報知に比べて抑制されたエラー報知である。より詳細には、予備エラー報知では、WEBブラウザ391に表示される警告メッセージの大きさが、温度エラー報知の場合に比べて小さく設定されている。これにより、管理者に対して、保冷庫3の温度に関するエラーが発生していることを温度エラー報知に比べて控えめに報知する。管理者は、予備エラー報知が予測していないエラー報知であった場合には、保冷庫ドア3dが閉じているか否かの確認などを行うよう乗員に指示することで、温度異常に対処することができる。予備エラー報知を行った後、予備エラー報知を行っている状態を維持してサーバ380側の制御を終了する。ステップS489は、報知ステップの一例を提供する。
【0177】
予備エラー報知を温度エラー報知に比べて抑制したエラー報知にする方法は、表示の大きさを小さくすることに限られない。例えば、予備エラー報知では、管理者用端末390の発音装置から発音される警告音の大きさを、温度エラー報知の場合に比べて小さくしてもよい。あるいは、予備エラー報知では、管理者用端末390の発音装置から発音しないようにしてもよい。
【0178】
上述した実施形態によると、報知制御部385は、温度エラー報知を行わないタイミングであって、庫内温度が適正温度範囲外である場合には、予備エラー報知を行う。このため、温度エラー報知と予備エラー報知との2つのエラー報知を使い分けて、管理者にエラー報知を行うことができる。特に、重要度の高い異常を温度エラー報知とし、重要度の低い異常を予備エラー報知とするなどすることで、管理者がどのような異常が起きているかを容易に認識できる。よって、管理者が指示を出すことで乗員に対して異常への対処を行う動機付けを効果的に与えることができる。
【0179】
報知制御部385は、予備エラー報知を行う場合には、温度エラー報知を行う場合に比べて、抑制したエラー報知を行う。このため、エラー報知において、予備エラー報知よりも温度エラー報知の方が相対的に管理者に対して強く報知されることとなる。したがって、すぐに対処すべき温度異常であるか、すぐに対処する必要のない温度異常であるかを、エラー報知を受けた管理者が判断しやすい。
【0180】
第5実施形態
この実施形態は、先行する実施形態を基礎的形態とする変形例である。この実施形態では、報知制御部385が予冷エラー報知を行う。
【0181】
空調システム1の全体構成については、第3実施形態で説明した構成と同様の構成を採用可能である。車両2側で行う制御については、第3実施形態で説明した制御と同様の制御を採用可能である。
【0182】
サーバ380のエラー報知に関する制御について、第3実施形態と異なる部分を中心に以下に説明する。
図17において、ステップS398Aで予冷中であると判定された場合には、ステップS379ではなく、ステップS588に進む。
【0183】
ステップS588では、予冷開始時刻から所定時間経過したか否かを判定する。ここで、所定時間は、例えば30分である。予冷開始時刻から所定時間経過している場合には、空調装置10が適切に機能していない可能性がある判断として、ステップS589に進む。一方、予冷開始時刻から所定時間経過していない場合には、空調装置10は適切に機能していると判断してステップS379に進む。
【0184】
ステップS589では、予冷エラー報知を行う。予冷エラー報知では、所定時間内に予冷が完了していないことを示す警告メッセージを管理者用端末390のWEBブラウザ391に表示する。加えて、管理者用端末390の発音装置から警告音を発音する。これにより、管理者に対して、エラーが発生していることと発生しているエラーの内容を報知する。管理者は、予冷エラー報知を受けて、保冷庫ドア3dが閉じているか否かの確認など行うよう乗員に指示することで、温度異常に対処することができる。予冷エラー報知を行った後、予冷エラー報知を行っている状態を維持してサーバ380側の制御を終了する。ステップS589は、報知ステップの一例を提供する。
【0185】
上述した実施形態によると、報知制御部385は、予冷を開始してから所定時間内に庫内温度が適正温度範囲内に収まらない場合には、予冷エラー報知を行う。このため、予冷中に起きている異常を管理者が認識できる。特に、予冷中に管理者に対して温度エラー報知を行わない設定である場合には、温度エラー報知の代わりに予冷エラー報知を行うことになる。このため、管理者に対して温度エラー報知を行わない予冷中であっても、エラー報知すべき異常を予冷エラー報知によって報知できる。
【0186】
他の実施形態
乗員用報知装置45と管理者用端末390との両方を用いてエラー報知を行ってもよい。これによると、乗員と管理者との両者にエラー報知を行うことができる。このため、どちらか一方がエラー報知に気づかない場合であっても、他方がエラー報知によって異常が発生していることを認識して対処することができる。
【0187】
この明細書および図面等における開示は、例示された実施形態に制限されない。開示は、例示された実施形態と、それらに基づく当業者による変形態様を包含する。例えば、開示は、実施形態において示された部品および/または要素の組み合わせに限定されない。開示は、多様な組み合わせによって実施可能である。開示は、実施形態に追加可能な追加的な部分をもつことができる。開示は、実施形態の部品および/または要素が省略されたものを包含する。開示は、1つの実施形態と他の実施形態との間における部品および/または要素の置き換え、または組み合わせを包含する。開示される技術的範囲は、実施形態の記載に限定されない。開示されるいくつかの技術的範囲は、請求の範囲の記載によって示され、さらに請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内での全ての変更を含むものと解されるべきである。
【0188】
明細書および図面等における開示は、請求の範囲の記載によって限定されない。明細書および図面等における開示は、請求の範囲に記載された技術的思想を包含し、さらに請求の範囲に記載された技術的思想より多様で広範な技術的思想に及んでいる。よって、請求の範囲の記載に拘束されることなく、明細書および図面等の開示から、多様な技術的思想を抽出することができる。
【0189】
本開示に記載の制御部およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された1つないしは複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサを構成する専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の装置およびその手法は、専用ハードウェア論理回路により、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の装置およびその手法は、コンピュータプログラムを実行するプロセッサと1つ以上のハードウェア論理回路との組み合わせにより構成された1つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。