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  • 特許-ガスクロマトグラフ質量分析装置 図1
  • 特許-ガスクロマトグラフ質量分析装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】ガスクロマトグラフ質量分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20240109BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20240109BHJP
   H01J 49/14 20060101ALI20240109BHJP
   H01J 49/26 20060101ALI20240109BHJP
   H01J 49/10 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G01N27/62 C
G01N30/72 A
H01J49/14 700
H01J49/26
H01J49/10
G01N27/62 G
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022536141
(86)(22)【出願日】2021-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2021016773
(87)【国際公開番号】W WO2022014119
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2020120450
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 茂捻
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/102224(WO,A1)
【文献】特開2002-329475(JP,A)
【文献】特開2018-032481(JP,A)
【文献】特開2001-357816(JP,A)
【文献】特開昭51-063683(JP,A)
【文献】国際公開第2016/092696(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/086393(WO,A1)
【文献】米国特許第10497548(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/60-G01N 27/70
G01N 30/72
H01J 49/00ーH01J 49/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入された試料から試料ガスを生成し、前記試料ガス中の成分を分離カラムによって分離するガスクロマトグラフ部と、
前記ガスクロマトグラフ部の前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するためのイオン化部、及び前記イオン化部でイオン化された成分を検出するための検出部を有する質量分析部と、
少なくとも前記イオン化部の制御を行なう制御部と、を備え、
前記質量分析部の前記イオン化部は、
前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するための空間を内部に有するイオン源ボックスと、
前記イオン源ボックスの温度を調節するためのヒータと、
前記イオン源ボックスの外側に配置され、前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するための電子を生成するフィラメントと、を備え、
前記制御部は、分析が開始されて前記フィラメントへの電圧印加が開始されると、前記フィラメントへの印加電圧の大きさ、前記フィラメントを流れる電流の大きさ、及び、前記フィラメントから発せられる電子量であるエミッション電流の大きさ、のいずれかに応じて、前記フィラメントから発せられる熱による前記イオン源ボックスの温度上昇を打ち消すように前記ヒータの出力を補正するように構成されている、ガスクロマトグラフ質量分析装置。
【請求項2】
前記フィラメントへの印加電圧の大きさ、前記フィラメントを流れる電流の大きさ、及び、前記フィラメントから発せられる電子量であるエミッション電流の大きさ、のいずれかと前記フィラメントから前記イオン源ボックスの温度が受ける影響を打ち消すために必要な前記ヒータの出力の補正量との相関データを保持する相関データ保持部を備え、
前記制御部は、前記相関データ保持部に保持されている前記相関データを用いて前記イオン源ボックスの温度が前記フィラメントから受ける影響を打ち消すように前記ヒータの出力を補正するように構成されている、請求項1に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記分離カラムの前記出口からの溶媒の流出が終了した後で前記フィラメントへの電圧印加を開始するように構成されている、請求項1に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記ガスクロマトグラフ部において試料の注入が行われてからの経過時間に基づいて前記分離カラムの前記出口から溶媒の流出が終了したことを検知するように構成されている、請求項3に記載のガスクロマトグラフ質量分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ質量分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスクロマトグラフ質量分析装置は、試料ガス中の成分を分離カラムによって分離するガスクロマトグラフ部と、ガスクロマトグラフ部で分離された成分をイオン化し、イオン化された成分の質量mと電荷zの比m/zを用いて分析する質量分析部と、を備えた装置である(特許文献1参照。)。
【0003】
ガスクロマトグラフ部で分離された成分をイオン化するための方式の1つとして、EI(Electron Ionization)法が知られている。EI法は、ガスクロマトグラフ部からの成分に熱電子を衝突させてイオン化する方法である。EI法を採用するイオン化部には、イオン源ボックスと呼ばれる金属製のボックスが設けられ、イオン源ボックスの外側にイオン源ボックスを挟んでフィラメントとエミッション電極が配置されている。フィラメントに電圧を印加するとフィラメントで熱電子が生成され、その熱電子がイオン源ボックスの内部を横切ってエミッション電極に向かうように移動する。このとき、イオン源ボックス内に放出されたガスクロマトグラフ部からの成分に熱電子が衝突することで、ガスクロマトグラフ部からの成分がイオン化する。
【0004】
ところで、ガスクロマトグラフ部に注入される試料には溶媒が含まれており、ガスクロマトグラフ部からは分析対象の成分よりも先に溶媒成分が出てくる。ガスクロマトグラフ部からの溶媒成分がイオン源ボックス内に放出されている間にフィラメントに電圧を印加していると、フィラメントがダメージを受けることがわかっている。そのため、ガスクロマトグラフ部からイオン源ボックス内への溶媒成分の放出が終了してから、フィラメントへの電圧印加を開始することが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-007927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
イオン源ボックスの温度は、イオン源ボックス内でのイオン化効率に影響を与える。そのため、イオン源ボックスにはヒータと温度センサが取り付けられており、イオン源ボックスの温度が設定温度で維持されるように、フィードバック制御等の制御が行われる。
【0007】
ガスクロマトグラフ部からイオン源ボックス内への溶媒成分の放出が終了した後でフィラメントへの電圧印加を開始すると、イオン源ボックスの温度がフィラメントから発せられる熱の影響を受けて上昇する。イオン源ボックスの温度がフィードバック制御されている場合でも、イオン源ボックスの温度が一時的に設定温度よりも高い温度にまで上昇することは避けられず、その間はイオン化効率が変動してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、イオン源ボックスの温度安定性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガスクロマトグラフ質量分析装置は、注入された試料から試料ガスを生成し、前記試料ガス中の成分を分離カラムによって分離するガスクロマトグラフ部と、前記ガスクロマトグラフ部の前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するためのイオン化部、及び前記イオン化部でイオン化された成分を検出するための検出部を有する質量分析部と、少なくとも前記イオン化部の制御を行なう制御部と、を備え、前記質量分析部の前記イオン化部は、前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するための空間を内部に有するイオン源ボックスと、前記イオン源ボックスの温度を調節するためのヒータと、前記イオン源ボックスの外側に配置され、成分をイオン化するための電子を前記空間へ向かって放出するフィラメントと、を備え、前記制御部は、前記フィラメントへの電圧を印加した後で、前記フィラメントの発熱の大きさに関連して前記ヒータの出力を制御することにより、前記フィラメントから発せられる熱の影響を受けた前記イオン源ボックスの温度を所定温度に調節するように構成されている。
【0010】
ここで、「前記フィラメントの発熱の大きさに関連して」前記ヒータの出力を制御することは、前記フィラメントへの印加電圧の大きさ、前記フィラメントを流れる電流の大きさ、及び、エミッション電流の大きさ、のいずれかに基づいて前記ヒータの出力を制御することを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガスクロマトグラフ質量分析装置によれば、フィラメントへ電圧を印加した後で、前記フィラメントの発熱の大きさに関連してヒータの出力を制御することにより、前記フィラメントから発せられる熱の影響を受けたイオン源ボックスの温度を所定温度に調節するので、イオン源ボックスの温度安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ガスクロマトグラフ質量分析装置の一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例の分析時におけるイオン源ボックスの温度制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明に係るガスクロマトグラフ質量分析装置の実施形態について説明する。
【0014】
図1に示されているように、ガスクロマトグラフ質量分析装置1は、ガスクロマトグラフ部2、質量分析部4及び制御装置6を備えている。質量分析部4は、イオン化部14及び検出部16からなる。なお、ガスクロマトグラフ部2及び質量分析部4は図示されていない筐体の内部に収容されており、少なくとの質量分析部4は真空状態に置かれている。
【0015】
ガスクロマトグラフ部2は、インジェクタ8、試料気化部10及び分離カラム12を備えている。インジェクタ8は、図示しない試料バイアルから試料を採取し、試料気化部10へ注入するものである。試料気化部10は、インジェクタ8によって注入された試料を気化させて試料ガスを生成し、キャリアガスによって分離カラム12へ試料ガスを搬送する。分離カラム12では、試料ガス中の成分が分離される。分離カラム12の出口12aは、後述するイオン化部14のイオン源ボックス18に配置されており、分離カラム12において分離された成分がイオン源ボックス18内の空間に放出される。
【0016】
質量分析部4のイオン化部14は、イオン源ボックス18、フィラメント20、エミッション電極22、電流計23、イオン化電源24、温度センサ26及びヒータ28を備えている。イオン源ボックス18は金属製のボックスであり、イオン源ボックス18の内部の空間に分離カラム12の出口12aからの成分が放出されるようになっている。フィラメント20とエミッション電極22は、イオン源ボックス18の外部においてイオン源ボックス18を互いの間に挟むように配置されている。イオン化電源24は、フィラメント20に電圧を印加するためのものである。温度センサ26及びヒータ28は、イオン源ボックス18の温度を調節するためにイオン源ボックス18に取り付けられている。
【0017】
フィラメント20は、分離カラム12の出口12aから放出された成分分子をイオン化するための電子を生成するためのものである。フィラメント20で生成された電子はエミッション電極22へ向かってイオン源ボックス18内の空間を通過し、分離カラム12の出口12aからの放出された成分分子と衝突することによって成分分子をイオン化する。電流計23は、エミッション電極22に到達する電子量をエミッション電流として検出するためのものものである。一般的に、イオン化電源24によってフィラメント20に印加される電圧は、電流計23によって検出されるエミッション電流が所定値で一定になるように制御される。
【0018】
質量分析部4の検出部16は、イオンレンズ30、四重極マスフィルタ32及びイオン検出器34を備えている。イオン化部14のイオン源ボックス18内でイオン化された成分は、イオンレンズ30を経て四重極マスフィルタ32に導入され、四重極マスフィルタ32に印加されている電圧に応じた質量電化比を有するイオンのみが四重極マスフィルタ32を通り抜けてイオン検出器34により検出される。
【0019】
制御装置6は、ガスクロマトグラフ部2及び質量分析部4の動作制御を行なうためのものであって、CPU(中央演算装置)及び情報記憶装置を備えたコンピュータ回路によって実現される。制御装置6は、制御部36及び相関データ保持部38を備えている。制御部36は、CPUがプログラムを実行することによって得られる機能であり、相関データ保持部38は、情報記憶装置の一部の記憶領域によって実現される機能である。
【0020】
制御部36は、フィラメント20から発せられる熱の影響を考慮して、ヒータ28の出力を制御することにより、イオン源ボックス18の温度を所定温度に維持するように構成されている。この実施例では、フィラメント20を流れる電流の大きさと、フィラメント20からイオン源ボックス18の温度が受ける影響を打ち消すために必要なヒータ28の出力の補正量との相関が、予め行われた実験によって定義されており、その相関データが相関データ保持部38に保持されている。
【0021】
制御部36によって実現される分析時のイオン源ボックス18の温度制御を、図1とともに図2のフローチャートを用いて説明する。
【0022】
分析が開始される前の段階において、制御部36は、イオン源ボックス18の温度が設定された温度になるようにヒータ28の出力を制御しており、かつ、フィラメント20に電圧が印加されないようにイオン化電源24を制御している。なお、ヒータ28の出力の制御は、ヒータ28に印加される実効電圧を調節することにより行なう。
【0023】
分析が開始されると、制御装置6からインジェクタ8に対して試料を注入すべき指示が送信され、インジェクタ8が試料気化室10への試料を注入する(ステップ101)。制御部36は、試料注入が実行された後、所定時間が経過した後でフィラメント20への電圧印加を開始する(ステップ102、103)。試料注入が実行された後、フィラメント20への電圧印加が開始されるまでの時間は、注入された試料に含まれていた溶媒成分のすべてが分離カラム12の出口12aから放出されるまでの時間であって、試料気化室10から分離カラム12の出口12aまでの内部容量とキャリアガスの流量とで決定されるものである。
【0024】
フィラメント20への電圧印加が開始された後、制御部36は、フィラメント20を流れる電流の大きさを監視し、フィラメント20を流れる電流の大きさと、相関データ保持部38に保持されている相関データを用いて、フィラメント20から発せられる熱によるイオン源ボックス18の上昇温度を打ち消すために必要なイオン源ボックス18の温度制御の補正量を求める(ステップ104)。そして、制御部36は、求めた補正量を用いてイオン源ボックス18の温度制御の制御量(ヒータ28の出力)を補正する(ステップ105)。実際には、フィラメント20への電圧印加が開始された後の一定時間は、イオン源ボックス18の温度が徐々に上昇する。したがって、制御部36は、フィラメント20を流れる電流の大きさから求められる補正量を用いて、イオン源ボックス18の温度上昇を打ち消すように、ヒータ28に印加する実効電圧を徐々に低減する。
【0025】
なお、イオン源ボックス18の温度変動は、フィラメント20の発熱量に関連して発生するものであるため、ヒータ28の出力の補正は、フィラメント20の発熱量に関連する、フィラメント20への印加電圧の大きさ、又は、エミッション電流の大きさに基づいて行なうこともできる。特に、フィラメント20を流れる電流は、フィラメント20から放出される電子量であるエミッション電流が一定になるように制御されるので、電流計23によって検出されるエミッション電流をヒータ28の出力の補正に用いることができる。その場合、相関データ保持部38には、予め実験によって取得されたエミッション電流の大きさとイオン源ボックス18が受ける影響を打ち消すために必要な温度制御の補正量との相関データが保持される。
【0026】
本発明者が行なった実験により、フィラメント20への電圧印加を開始した後のイオン源ボックス18の温度変化の態様には再現性があることがわかっている。したがって、フィラメント20への印加電圧の大きさとイオン源ボックス18の温度変化のパターンを予め測定しておくことで、実際にフィラメント20へ電圧を印加し始めた後、イオン源ボックス18の温度がどのように変化していくのかを予測することができる。
【0027】
一般的に、イオン源ボックス18の温度を設定温度に維持するには、温度センサ26の信号に基づいたヒータ28の出力のフィードバック制御を行なう。しかし、フィラメント20に電圧が印加された後も温度センサ26の信号に基づいたヒータ28の出力のフィードバック制御を行なうと、イオン源ボックス18の温度は、一時的に上昇した後で設定温度に戻るという挙動を示し、一時的にでもイオン化効率の変動が発生することになる。これに対し、この実施例のガスクロマトグラフ質量分析装置1では、イオン化部14のフィラメント20に電圧が印加された後のイオン源ボックス18の温度がどのように変化するかを予め予測し、実際にイオン源ボックス18の温度が上昇する前にヒータ28の出力を低減するので、ヒータ28の出力の単純なフィードバック制御と比較して、イオン源ボックス18の温度安定性を向上させることができる。
【0028】
なお、フィラメント20への電圧印加を停止したときは、フィラメント20への電圧印加を開始したときとは逆に、イオン源ボックス18の温度が低下する。このときも、フィラメント20への電圧印加を開始したときと同様に、イオン源ボックス18の温度低下を予測してヒータ28の出力を補正し、イオン源ボックス18の温度を一定に保つことができる。この場合、相関データ保持部38には、フィラメント20への電圧印加を停止する直前の、フィラメント20への印加電圧の大きさ、フィラメント20を流れる電流の大きさ、及び、エミッション電流の大きさ、のいずれかとヒータ28の出力の補正量との相関を保持させておき、フィラメント20への電圧印加を停止されたときに、直前のフィラメント20への印加電圧の大きさ、フィラメント20を流れる電流の大きさ、及び、エミッション電流の大きさ、のいずれかと相関データ保持部38に保持された相関とを用いて、ヒータ28の出力を補正する。
【0029】
以上において説明した実施例は本発明の実施形態の一例を示したに過ぎない。本発明に係るガスクロマトグラフ質量分析装置の実施形態は、以下に示すとおりである。
【0030】
本発明に係るガスクロマトグラフ質量分析装置の一実施形態では、注入された試料から試料ガスを生成し、前記試料ガス中の成分を分離カラムによって分離するガスクロマトグラフ部と、前記ガスクロマトグラフ部の前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するためのイオン化部、及び前記イオン化部でイオン化された成分を検出するための検出部を有する質量分析部と、少なくとも前記イオン化部の制御を行なう制御部と、を備え、前記質量分析部の前記イオン化部は、前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するための空間を内部に有するイオン源ボックスと、前記イオン源ボックスの温度を調節するためのヒータと、前記イオン源ボックスの外側に配置され、前記分離カラムの出口から出てきた成分をイオン化するための電子を生成するフィラメントと、を備え、前記制御部は、前記フィラメントへ電圧を印加した後で、前記フィラメントの発熱の大きさに関連して前記ヒータの出力を制御することにより、前記フィラメントから発せられる熱の影響を受けた前記イオン源ボックスの温度を所定温度に調節するように構成されている。
【0031】
上記一実施形態の第1態様では、前記フィラメントへの印加電圧の大きさ、前記フィラメントを流れる電流の大きさ、及び、前記フィラメントから発せられる電子量であるエミッション電流、のいずれかと前記イオン源ボックスの温度が前記フィラメントから受ける影響を打ち消すために必要な前記ヒータの出力の補正量との相関データを保持する相関データ保持部を備え、前記制御部は、前記相関データ保持部に保持されている前記相関データを用いて前記フィラメントから前記イオン源ボックスの温度が受ける影響を打ち消すように前記ヒータの出力を補正するように構成されている。このような態様により、前記イオン源ボックスの温度が実際に変化する前に前記ヒータの出力が補正されるので、前記イオン源ボックスの温度安定性が向上する。
【0032】
上記一実施形態の第2態様では、前記制御部は、前記分離カラムの前記出口からの溶媒の流出が終了した後で前記フィラメントへの電圧印加を開始するように構成されている。このような態様により、気化した溶媒によって前記フィラメントが劣化することを防止できる。なお、この第2態様は、上記第1態様と組み合わせることができる。
【0033】
上記第2態様において、前記制御部は、前記ガスクロマトグラフ部において試料の注入が行われてからの経過時間に基づいて前記分離カラムの前記出口から溶媒の流出が終了したことを検知するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 ガスクロマトグラフ質量分析装置
2 ガスクロマトグラフ部
4 質量分析部
6 制御装置
8 インジェクタ
10 試料気化室
12 分離カラム
14 イオン化部
16 検出部
18 イオン源ボックス
20 フィラメント
22 エミッション電極
23 電流計
24 イオン化電源
26 温度センサ
28 ヒータ
30 イオンレンズ
32 四重極フィルタ
34 イオン検出器
36 制御部
38 相関データ保持部
図1
図2