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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】走行車システム
(51)【国際特許分類】
   B61B 13/00 20060101AFI20240109BHJP
   B65G 1/04 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B61B13/00 C
B65G1/04 555Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022561316
(86)(22)【出願日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2021035402
(87)【国際公開番号】W WO2022102265
(87)【国際公開日】2022-05-19
【審査請求日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】P 2020189775
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107836
【弁理士】
【氏名又は名称】西 和哉
(72)【発明者】
【氏名】虎澤 政佳
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/090254(WO,A1)
【文献】特開昭59-096057(JP,A)
【文献】特開平05-097032(JP,A)
【文献】特開平06-239451(JP,A)
【文献】特開2004-268827(JP,A)
【文献】特開2013-099990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道と、前記軌道を走行する走行車と、を備える走行車システムであって、
前記軌道は、第1方向に沿って設けられた複数の第1軌道と、前記第1方向と直交する第2方向に沿って設けられた複数の第2軌道と、前記第1軌道の延長線と前記第2軌道の延長線とが交差する部分に設けられた部分軌道と、を備え、
前記走行車は、前記軌道の上側を走行する走行部と、前記軌道の下方に位置する本体部と、前記走行部と前記本体部とを連結する連結部と、を備え、
前記第1軌道と前記部分軌道との間、及び前記第2軌道と前記部分軌道との間には、前記走行車が走行するときに前記連結部が通過する隙間が形成されており、
前記走行部は、前記軌道を走行する4つの車輪と、前記4つの車輪の各車軸に直交する4つの回転軸まわりに前記車輪をそれぞれ回転させることで前記走行車の走行方向を前記第1方向と前記第2方向とに切り替える方向転換機構と、を備え、
平面視において前記4つの回転軸を頂点として形成される四角形は、いずれの辺も前記第1軌道及び前記第2軌道に平行でない、走行車システム。
【請求項2】
前記四角形は、平面視において菱形である、請求項1に記載の走行車システム。
【請求項3】
前記4つの車輪は、それぞれ対応する前記回転軸までの長さが等しい位置に設けられ、
前記菱形の鋭角の頂点にあたる前記回転軸に対応する前記車輪は、平面視において前記回転軸よりも前記走行車の内側に設けられ、
前記菱形の鈍角の頂点にあたる前記回転軸に対応する前記車輪は、平面視において前記回転軸よりも前記走行車の外側に設けられる、請求項2に記載の走行車システム。
【請求項4】
前記菱形の第1対角の頂点にある2つの前記回転軸に対応する2つの前記車輪は、それぞれ対応する前記回転軸まで第1距離離れており、
前記菱形の前記第1対角と異なる第2対角の頂点にある2つの前記回転軸に対応する2つの前記車輪は、それぞれ対応する前記回転軸まで、前記第1距離と異なる第2距離離れており、
走行方向における前後の前記車輪は、略直線上に並んでいる、請求項2に記載の走行車システム。
【請求項5】
前記軌道は、前記第1軌道と前記第2軌道とにより格子状に形成されており、
前記本体部は、平面視において、格子状の前記軌道における1マス内に収まるように設けられる、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の走行車システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
格子状の軌道と、軌道を走行する走行車と、を備える走行車システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の走行車システムにおいて、走行車は、軌道の上側を走行する走行部と、軌道の下方に位置する本体部と、走行部と本体部を連結する連結部とを備えている。また、軌道は、第1方向に沿って設けられた複数の第1軌道と、第1方向と直交する第2方向に沿って設けられた複数の第2軌道と、第1軌道の延長線と第2軌道の延長線とが交差する部分に設けられた部分軌道と、を備えている。第1軌道と部分軌道との間、及び第2軌道と部分軌道との間には、走行車が走行するときに連結部が通過する隙間が形成されている。走行部は、軌道を走行する4つの車輪を上下方向の回転軸まわりにそれぞれ回転させることで、走行車の走行方向を第1方向と第2方向とに切り替えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第WO2017/150005号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の走行車システムでは、走行部において、走行方向における左右の車輪が走行方向にずれていないので、走行部が隙間を通過する際、左右の車輪が同時に隙間を通過することになる。車輪が隙間を通過する際には、走行車への振動が左右同時に生じ、走行車への振動大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、走行車に対する振動を抑制可能な走行車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様においては、走行車システムが提供される。走行車システムは、軌道と、軌道を走行する走行車と、を備える走行車システムであって、軌道は、第1方向に沿って設けられた複数の第1軌道と、第1方向と直交する第2方向に沿って設けられた複数の第2軌道と、第1軌道の延長線と第2軌道の延長線とが交差する部分に設けられた部分軌道と、を備え、走行車は、軌道の上側を走行する走行部と、軌道の下方に位置する本体部と、走行部と本体部とを連結する連結部と、を備え、第1軌道と部分軌道との間、及び第2軌道と部分軌道との間には、走行車が走行するときに連結部が通過する隙間が形成されており、走行部は、軌道を走行する4つの車輪と、4つの車輪の各車軸に直交する4つの回転軸まわりに車輪をそれぞれ回転させることで走行車の走行方向を第1方向と第2方向とに切り替える方向転換機構と、を備え、平面視において4つの回転軸を頂点として形成される四角形は、いずれの辺も第1軌道及び第2軌道に平行でない。
【発明の効果】
【0007】
上記した走行車システムによれば、走行方向における左右の車輪が、走行方向にずれた状態となっている。したがって、走行車が第1軌道及び第2軌道のいずれを走行している場合でも、左右の車輪が隙間に進入するタイミングが異なる。なお、隙間を通過するときに要する時間は、左右の車輪で一部重複することもあれば、完全にずれることもある。その結果、車輪が隙間を通過する際に生じる振動及び騒音が左右の車輪で同時に生じることを防止できるため、走行車への振動の増加を抑制して円滑な走行を実現しつつ、周囲への騒音が大きくなるのを抑制できる。
【0008】
四角形は、平面視において菱形であってよい。この構成によれば、走行部を構成する車輪等の部品の対称性が高くなるので、製造が容易であり、走行車における重量バランスを確保できる。
【0009】
4つの車輪は、それぞれ対応する回転軸までの長さが等しい位置に設けられてよい。菱形の鋭角の頂点にあたる回転軸に対応する車輪は、平面視において回転軸よりも走行車の内側に設けられてよい。菱形の鈍角の頂点にあたる回転軸に対応する車輪は、平面視において回転軸よりも走行車の外側に設けられてよい。この構成によれば、走行車が第1方向及び第2方向のいずれを走行している場合でも、走行方向における前後の車輪が略一直線に揃うので、軌道において走行輪が通過する領域を小さくすることができる。また、この構成によれば、4つの車輪は、回転軸まわりに回転するときの摩耗が均一化される。
【0010】
菱形の第1対角の頂点にある2つの回転軸に対応する2つの車輪は、それぞれ対応する回転軸まで第1距離離れていてよい。菱形の第1対角と異なる第2対角の頂点にある2つの回転軸に対応する2つの車輪は、それぞれ対応する回転軸まで、第1距離と異なる第2距離離れていてよい。走行方向における前後の車輪は、略直線上に並んでいてよい。この構成によれば、走行車が第1方向及び第2方向のいずれを走行している場合でも、走行方向における前後の車輪が略一直線に揃うので、軌道において走行輪が通過する領域を小さくすることができる。
【0011】
軌道は、第1軌道と第2軌道とにより格子状に形成されていてよい。本体部は、平面視において、格子状の軌道における1マス内に収まるように設けられてよい。この構成によれば、格子状の軌道において複数の走行車が走行する場合、隣り合うマスにそれぞれ走行車が位置しても走行車同士が干渉することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態に係る走行車システムの一例を示す。
図2】第1実施形態に係る走行車システムの一例を示す。
図3】走行方向に対して直交する平面により走行車を切断した断面の一例を示す。
図4】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
図5】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
図6】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
図7】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
図8】上部ユニットの他の例を示す。
図9】走行車システムにおいて2台の走行車が隣り合っているときの一例を示す。
図10】第2実施形態に係る走行車システムにおいて、走行車の一例を模式的に示す。
図11】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
図12】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
図13】第3実施形態に係る走行車システムにおいて、走行車の一例を模式的に示す。
図14】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
図15】走行車が走行方向を第1方向から第2方向に変更する動作の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載する等、適宜縮尺を変更して表現しており、実際の製品とは寸法、外形が異なる場合がある。以下の各図において、XYZ直交座標系を用いて図中の方向を説明する場合がある。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をXY平面とする。本実施形態ではX方向を第1方向D1とし、Y方向を第2方向D2としている。また、XY平面に垂直な上下方向はZ方向と表記する。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の指す方向が+方向であり、矢印の指す方向とは反対の方向が-方向であるものとして説明する。
【0014】
図1及び図2は、第1実施形態に係る走行車システムSYSの一例を示す。図3は、走行方向Tに対して直交する平面により走行車Vを切断した断面の一例を示す。走行車システムSYSは、半導体デバイスの製造工場等に設けられ、レチクル等を収容したレチクルポッド、半導体デバイスの製造に用いられる半導体ウエハを収容したFOUP等の物品を搬送するシステムである。走行車システムSYSは、半導体製造分野以外の設備に適用可能である。物品は、走行車システムSYSで保管可能な他の物品でもよい。
【0015】
走行車システムSYSは、軌道Rと、走行車Vとを備える。軌道Rは、第1軌道R1と、第2軌道R2と、部分軌道R3と、を有する格子状軌道である。第1軌道R1は、第1方向D1に沿って延在する。第2軌道R2は、第2方向D2に沿って延在する。本実施形態では、第1方向D1と第2方向D2とが直交しており、複数の第1軌道R1と複数の第2軌道R2とは、互いに直交する方向に沿って設けられるが、互いに直接交差しないように設けられている。部分軌道R3は、第1軌道R1の延長戦と第2軌道R2の延長戦とが交差する部分に配置される。部分軌道R3は、第1軌道R1に対して第1方向D1に隣り合うと共に第2軌道R2に対して第2方向D2に隣り合っている。部分軌道R3は、第1軌道R1と第2軌道R2とを接続する。軌道Rは、第1軌道R1と第2軌道R2とが直交する方向に設けられることで、平面視で複数のグリッドセルCが隣り合う状態となっている。1つのグリッドセルCは、平面視において、第2方向D2において隣り合った2つの第1軌道R1と、第1方向D1において隣り合った2つの第2軌道R2と、に囲まれた部分である。なお、軌道Rは、第1方向D1及び第2方向D2に同様の構成が連続して形成されている。
【0016】
第1軌道R1、第2軌道R2、及び部分軌道R3は、吊り下げ部材Hによって天井に吊り下げられている。吊り下げ部材Hは、第1軌道R1を吊り下げるための第1部分H1と、第2軌道R2を吊り下げるための第2部分H2と、部分軌道R3を吊り下げるための第3部分H3と、を有する。第1部分H1及び第2部分H2は、それぞれ第3部分H3を挟んだ二か所に設けられている。
【0017】
第1軌道R1は、走行車Vが走行する走行面R1aを有する。第2軌道R2は、走行車Vが走行する走行面R2aを有する。部分軌道R3は、走行車Vが走行する走行面R3aを有する。第1軌道R1と部分軌道R3との間、第2軌道R2と部分軌道R3との間には、それぞれ隙間Dが形成される。隙間Dは、走行車Vが第1軌道R1を走行して第2軌道R2を横切る際、あるいは第2軌道R2を走行して第1軌道R1を横切る際に、走行車Vの一部である連結部30が通過する部分である。したがって、隙間Dは、連結部30が通過可能な幅に設けられている。第1軌道R1、第2軌道R2、及び部分軌道R3は、同一又はほぼ同一の水平面に沿って設けられる。本実施形態において、第1軌道R1、第2軌道R2、及び部分軌道R3においては、走行面R1a、R2a、R3aが同一又はほぼ同一の水平面上に配置される。
【0018】
走行車Vは、本体部10と、走行部20と、連結部30とを有する。本体部10は、軌道Rの下方に配置される。本体部10は、平面視で例えば矩形状に形成される。本体部10は、平面視で軌道Rにおける1つのグリッドセルCに収まる寸法に形成される。このため、隣り合う第1軌道R1又は第2軌道R2を走行する他の走行車Vとすれ違うスペースが確保される。本体部10は、上部ユニット17と、移載装置18とを備える。上部ユニット17は、連結部30を介して走行部20から吊り下げられる。上部ユニット17は、4つのコーナー部を有し、中央部が刳り貫かれたフレーム状のユニットである。移載装置18は、上部ユニット17の下方に設けられる。移載装置18は、Z方向まわりに回転可能である。
【0019】
走行部20は、車輪21と、補助車輪22とを有する。車輪21は、上部ユニット17の4つのコーナー部にそれぞれ配置される。車輪21のそれぞれは、連結部30に設けられた車軸に取り付けられている。車軸は、XY平面に沿って平行又はほぼ平行に設けられている。車輪21のそれぞれは、軌道Rにおいて、第1軌道R1の走行面R1a、第2軌道R2の走行面R2a、及び部分軌道R3の走行面R3aを転動し、走行車Vを走行させる。
【0020】
車輪21は、回転軸AXを中心としてθZ方向に回転可能に設けられる。車輪21は、方向転換機構34によってθZ方向に回転し、その結果、走行車Vの走行方向Tを変更することができる。補助車輪22は、車輪21の走行方向Tの前後にそれぞれ1つずつ配置される。補助車輪22のそれぞれは、車輪21と同様に、XY平面に沿って平行又はほぼ平行な車軸の軸周りに回転可能となっている。補助車輪22の下端は、車輪21の下端より高くなるように設定されている。したがって、車輪21が走行面R1a、R2a、R3aを走行しているとき、補助車輪22は、走行面R1a、R2a、R3aに接触しない。また、車輪21が隙間Dを通過する際には、補助車輪22が走行面R1a、R2a、R3aに接触して、車輪21の落ち込みを抑制している。なお、1つの車輪21に2つの補助車輪22を設けることに限定されず、例えば、1つの車輪21に1つの補助車輪22が設けられてもよいし、補助車輪22が設けられなくてもよい。
【0021】
連結部30は、本体部10の上部ユニット17と走行部20とを連結する。連結部30は、上部ユニット17の4つのコーナー部にそれぞれ設けられる。この連結部30によって本体部10は、走行部20から吊り下げられた状態となり、軌道Rより下方に配置される。連結部30は、支持部材31と、接続部材32とを有する。支持部材31は、車輪21の車軸及び補助車輪22の車軸を回転可能に支持する。支持部材31により、車輪21と補助車輪22との相対位置を保持する。支持部材31は、例えば板状に形成され、隙間Dを通過可能な厚さに形成される。
【0022】
接続部材32は、支持部材31から下方に延びて上部ユニット17に連結され、上部ユニット17を保持する。接続部材32は、回転軸AXを中心としてθZ方向に回転可能に設けられる。この接続部材32が回転軸AXを中心として回転することで、支持部材31を介して車輪21を回転軸AXまわりのθZ方向に回転させることができる。
【0023】
連結部30には、方向転換機構34が設けられる。方向転換機構34は、連結部30の接続部材32を、回転軸AXを中心として回転させることにより、車輪21を回転軸AXまわりのθZ方向に回転させる。車輪21をθZ方向に回転させることにより、走行車Vの走行方向Tを第1方向D1とする第1状態から走行方向Tを第2方向D2とする第2状態に切り替えることができる。また、車輪21をθZ方向に回転させることにより、走行方向Tを第2方向D2とする第2状態から走行方向Tを第1方向D1とする第1状態に切り替えることができる。
【0024】
方向転換機構34の回転により、上部ユニット17の4つのコーナー部に配置された車輪21及び補助車輪22のそれぞれが回転軸AXを中心としてθZ方向に90度の範囲で回転する。方向転換機構34の駆動は、車載コントローラによって制御される。車載コントローラは、4つの車輪21の回転動作を同一のタイミングで行うように指示してもよいし、異なるタイミングで行うように指示してもよい。車輪21及び補助車輪22を回転させることにより、車輪21の車軸の方向が第1方向D1及び第2方向D2の一方とされた状態から他方とされる状態に移行する。このため、走行車Vの走行方向Tを第1方向D1とする第1状態と、走行方向Tを第2方向D2とする第2状態とで切り替えることができる。
【0025】
ここで、平面視において4つの回転軸AXを頂点P1~P4とする四角形QDを考える。四角形QDは、4つの頂点P1~P4、及び4つの辺S1~S4を有する。四角形QDは、いずれの辺S1~S4も第1軌道R1及び第2軌道R2に平行でない状態で配置される。この構成において、4つの車輪21は、走行方向Tにおける左右の2つの車輪21が、走行方向Tにずれた状態で配置される。
【0026】
本実施形態において、四角形QDは、平面視において菱形である。この場合、走行部20を構成する車輪21等の部品の対称性が高くなるので、製造が容易であり、走行車Vにおける重量バランスが確保される。
【0027】
菱形の鋭角の頂点P1、P4にあたる回転軸AX1、AX4に対応する車輪21A、21Dは、平面視において回転軸AX1、AX4よりも走行車Vの内側に設けられる。菱形の鈍角の頂点P2、P3にあたる回転軸AX2、AX3に対応する車輪21B、21Cは、平面視において回転軸AX2、AX3よりも走行車Vの外側に設けられる。4つの車輪21は、それぞれ対応する回転軸AXまでの長さが等しい位置に設けられる。4つの車輪21が回転軸AXまわりに回転する際の回転半径が等しいため、車輪21の摩耗を、4つの車輪21で均一化できる。
【0028】
図3では、頂点P1、P2に対応する車輪21を例に挙げて示している。走行方向Tに対する左右方向の車輪21A、21Bは、平面視における走行車Vの中心軸Oに対して等しい距離L1に配置される。また、菱形の鋭角の頂点P1にあたる回転軸AX1から車輪21Aまでの長さ、及び菱形の鈍角の頂点P2にあたる回転軸AX2から車輪21Bまでの長さは、等しい距離L2である。
【0029】
図4から図7は、走行車Vが走行方向Tを第1方向D1から第2方向D2に変更する場合の動作の一例を示す。走行方向Tが第1方向D1である場合、つまり、走行車Vが第1軌道R1を走行する場合、車輪21Aと車輪21Cとが走行方向Tにおける左右に並び、車輪21Bと車輪21Dとが走行方向Tにおける左右に並ぶ。走行方向Tにおける左右の2つの車輪21A、21Cは、走行方向Tに距離L3ずれた状態で配置される。また、走行方向Tにおける左右の2つの車輪21B、21Dは、走行方向Tに距離L3ずれた状態で配置される。したがって、走行車Vが第1軌道R1を走行している場合、左右の車輪21A、21Cは、異なるタイミングで隙間Dを通過し、左右の車輪21B、21Dは、異なるタイミングで隙間Dを通過する。その結果、4つの車輪21が隙間Dを通過する際に生じる振動及び騒音が、左右の車輪21で同時に生じることを防止できるため、走行車Vへの振動の増加が抑制される。また、4つの車輪21は、走行方向Tにおける前後の車輪21A、21Bが略一直線に揃った状態で配置される。同様に、走行方向Tにおける前後の車輪21C、21Dが略一直線に揃った状態で配置され、このため、軌道Rにおいて車輪21が通過する領域を小さくすることができる。
【0030】
走行方向Tが第2方向D2である場合、つまり、走行車Vが第2軌道R2を走行する場合、車輪21Aと車輪21Bとが走行方向Tにおける左右に並び、車輪21Cと車輪21Dとが走行方向Tにおける左右に並ぶ。走行方向Tにおける左右の2つの車輪21A、21Bは、走行方向Tに距離L3ずれた状態で配置される。また、走行方向Tにおける左右の2つの車輪21C、21Dは、走行方向Tに距離L3ずれた状態で配置される。したがって、走行車Vが第2軌道R2を走行している場合、左右の車輪21A、21Bは、異なるタイミングで隙間Dを通過し、左右の車輪21C、21Dは、異なるタイミングで隙間Dを通過する。その結果、第2軌道R2を走行する場合においても、4つの車輪21が隙間Dを通過する際に生じる振動及び騒音が、左右の車輪21で同時に生じることを防止できるため、走行車Vへの振動の増加が抑制される。また、4つの車輪21は、走行方向Tにおける前後の車輪21A、21Cが略一直線に揃った状態で配置される。同様に、走行方向Tにおける前後の車輪21B、21Dが略一直線に揃った状態で配置され、このため、軌道Rにおいて車輪21が通過する領域を小さくすることができる。
【0031】
図8は、上部ユニット17の他の例を示す。上部ユニット17Aは、例えば平面視において菱形に形成され、中央部が刳り貫かれていない板状の構成であってもよい。この場合、上部ユニット17Aは、平面視において四角形QDを内包する構成となり、変形しにくい構成となる。
【0032】
図9は、走行車システムSYSにおいて2台の走行車Vが隣り合っているときの一例を示す。本体部10が、平面視において、格子状の軌道Rにおいて1マスとなる1つのグリッドセルC内に収まるように設けられる。この構成では、格子状の軌道Rにおいて複数の走行車Vが走行する場合、隣り合うグリッドセルCにそれぞれ走行車Vが位置しても走行車V同士が干渉することを防止できる。
【0033】
以上の説明のように、本実施形態の走行車システムSYSは、走行方向Tにおける左右の車輪21が、走行方向Tにずれた状態となっている。したがって、走行車Vが第1軌道R1及び第2軌道R2のいずれを走行している場合でも、左右の車輪21は、異なるタイミングで隙間Dを通過することになる。その結果、車輪21が隙間Dを通過する際に生じる振動及び騒音が左右の車輪21で同時に生じることを防止できるため、走行車Vへの振動の増加を抑制して円滑な走行を実現しつつ、周囲への騒音を抑制できる。
【0034】
第2実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を適宜省略あるいは簡略化する。また、本明細書の実施形態において説明する事項のうち、本実施形態に適用可能な構成は、適宜本実施形態でも適用する。
【0035】
図10から図12は、第2実施形態に係る走行車システムSYS2において、走行車V2の一例を模式的に示す平面図であり、走行車V2が走行方向Tを第1方向D1から第2方向D2に変更する動作の一例を示す。
【0036】
本実施形態における四角形QD2は、例えば平面視において菱形であり、4つの頂点P5~P8、及び4つの辺S5~S8を有する。四角形QD2は、いずれの辺S5~S8も第1軌道R1及び第2軌道R2に平行でない状態で配置される。この構成において、4つの車輪21は、走行方向Tにおける左右の2つの車輪21が、走行方向Tに距離L6ずれた状態で配置される。
【0037】
四角形QD2は、菱形の第1対角α1の頂点P5、P8にある2つの回転軸AX5、AX8に対応する2つの車輪21A、21Dが、それぞれ対応する回転軸AX5、AX8まで第1距離L4離れている。四角形QD2は、菱形の第2対角α2の頂点P6、P7にある2つの回転軸AX6、AX7に対応する2つの車輪21B、21Cが、それぞれ対応する回転軸AX6、AX7まで、第2距離L5離れている。
【0038】
走行方向Tが第1方向D1である場合、走行方向Tにおける前後の車輪21Aと車輪21Bとが略直線上に並んでおり、走行方向Tにおける前後の車輪21Cと車輪21Dとが略直線上に並んでいる。走行方向Tが第2方向D2である場合、四角形QD2は、走行方向Tにおける前後の車輪21Aと車輪21Cとが略直線上に並んでおり、走行方向Tにおける前後の車輪21Bと車輪21Dとが略直線上に並んでいる。
【0039】
このように、第2実施形態に係る走行車システムSYS2では、走行車V2が第1方向D1及び第2方向D2のいずれを走行している場合でも、走行方向Tにおける前後の車輪21が略一直線に揃うことになる。したがって、軌道Rにおいて車輪21が通過する領域を小さくすることができる。
【0040】
第3実施形態について説明する。本実施形態において、上述の実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を適宜省略あるいは簡略化する。また、本明細書の実施形態において説明する事項のうち、本実施形態に適用可能な構成は、適宜本実施形態でも適用する。
【0041】
図13から図15は、第3実施形態に係る走行車システムSYS3において、走行車V3の一例を模式的に示す平面図であり、走行車V3が走行方向Tを第1方向D1から第2方向D2に変更する場合の動作の一例を示す。
【0042】
本実施形態における四角形QD3は、4つの頂点P9~P12、及び4つの辺S9~S12を有する。四角形QD3は、いずれの辺S9~S12も第1軌道R1及び第2軌道R2に平行でない状態で配置される。この実施形態の四角形QD3は、対向する辺S9と辺S12とが平行であるが、対向する辺S10と辺S11とが平行ではなく、菱形ではない。なお、四角形QD3は、いずれの対向する辺も平行でなくてよい。この構成において、4つの車輪21は、走行方向Tにおける左右の2つの車輪21が、走行方向Tにずれた状態で配置される。
【0043】
頂点P9にある回転軸AX9に対応する車輪21Aは、回転軸AX9から距離L7離れている。頂点P10にある回転軸AX10に対応する車輪21Bは、回転軸AX10から距離L8離れている。頂点P11にある回転軸AX11に対応する車輪21Cは、回転軸AX11から距離L9離れている。頂点P12にある回転軸AX12に対応する車輪21Dは、回転軸AX12から距離L10離れている。
【0044】
走行方向Tが第1方向D1である場合、走行方向Tにおける前後の車輪21Aと車輪21Bとが略直線上に並んでおり、走行方向Tにおける前後の車輪21Cと車輪21Dとが略直線上に並んでいる。走行方向Tが第2方向D2である場合、走行方向Tにおける前後の車輪21Aと車輪21Cとが略直線上に並んでおり、走行方向Tにおける前後の車輪21Bと車輪21Dとが略直線上に並んでいる。
【0045】
このように、第3実施形態に係る走行車システムSYS3では、走行車V3が第1方向D1及び第2方向D2のいずれを走行している場合でも、走行方向Tにおける前後の車輪21が略一直線に揃うことになる。したがって、軌道Rにおいて車輪21が通過する領域を小さくすることができる。
【0046】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、技術的に矛盾しない範囲において、特定の実施形態について説明した事項を、他の実施形態に適用することができる。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。また、法令で許容される限りにおいて、日本特許出願である特願2020-189775、及び上述した実施形態などにおいて引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【0047】
例えば、走行車V、V2、V3は、4つの車輪21に対して車輪21を駆動する駆動源がそれぞれ設けられてもよいし、4つの車輪21のうちの2つ又は3つの車輪21に対して駆動源がそれぞれ設けられてもよい。例えば、走行方向Tにおける左右の車輪21が駆動輪であったとしても、走行方向Tにおける左右の2つの車輪21は、走行方向Tにずれた状態で配置されているため、隙間Dを同時に通過することがない。したがって、走行車V、V2、V3は、いずれか一方の駆動輪による走行を継続することができ、走行性が安定する。
【0048】
また、走行車システムは、平面視において4つの回転軸AXを頂点として形成される四角形のいずれの辺も第1軌道R1及び第2軌道R2に平行でなければよく、前後の2つの車輪21が略直線上に揃っていなくてもよい。このような走行車システムにおいても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0049】
10・・・本体部
17、17A・・・上部ユニット
20・・・走行部
21、21A~21D・・・車輪
22・・・補助車輪
30・・・連結部
34・・・方向転換機構
AX、AX1~AX12・・・回転軸
C・・・グリッドセル
D・・・隙間
D1・・・第1方向
D2・・・第2方向
L1~L10・・・距離
P1~P12・・・頂点
QD、QD2、QD3・・・四角形
R・・・軌道
R1・・・第1軌道
R2・・・第2軌道
R3・・・部分軌道
S1~S12・・・辺
SYS、SYS2、SYS3・・・走行車システム
V、V2、V3・・・走行車
α1・・・第1対角
α2・・・第2対角
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
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図15