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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】発光素子パッケージ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/52 20100101AFI20240109BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240109BHJP
   G09F 9/33 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
H01L33/52
G09F9/00 338
G09F9/33
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022580686
(86)(22)【出願日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2022005402
(87)【国際公開番号】W WO2022173005
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2021021309
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 真俊
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋介
【審査官】八木 智規
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-88381(JP,A)
【文献】特開2018-135494(JP,A)
【文献】特表2020-535635(JP,A)
【文献】特開2018-107258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/277725(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
G09F 9/00
G09F 9/30
G09F 9/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極及び第2電極を備えており、光を出射する発光面を有する複数個の発光素子を、第1接着層が積層された第1基材を含む積層構造体である第1の支持体のうちの該第1の接着層の表面に、前記第1電極及び前記第2電極が接触するように、かつ前記発光面が露出するように配列して、少なくとも前記発光面を覆うように、光透過部を形成する工程と、
前記第1の支持体に配置された複数個の前記発光素子及び前記光透過部を一体的に埋め込む前駆光学補助層を形成する工程と、
前記前駆光学補助層の露出している主表面を覆うように、第2基材と該第2基材に接合している第2接着層を備える第2の支持体を設け、前記第1の支持体を剥離して除去し、前記第1電極及び/又は前記第2電極に電気的に接続されている複数の配線を含む1層以上の配線層を含む配線構造部を形成する工程と、
前記前駆光学補助層を厚さ方向に研削して、前記光透過部のうちの少なくとも前記発光面上の領域を露出させる光学補助層を形成する工程と
を含む、画素を構成しうる複数個の発光素子を含む発光素子パッケージの製造方法。
【請求項2】
前記発光素子が、厚さ方向の一方から見たときの平面サイズが100μm角未満であるLED素子であり、
前記配線構造部を形成する工程が、セミアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により前記配線層を形成する工程である、請求項1に記載の発光素子パッケージの製造方法。
【請求項3】
前記光学補助層が黒色層であり、該黒色層への波長450nmの入射光の透過率が、5%以下である、請求項1又は2に記載の発光素子パッケージの製造方法。
【請求項4】
前記光透過部及び前記光学補助層を形成する工程が、樹脂組成物を硬化する工程を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の発光素子パッケージの製造方法。
【請求項5】
前記樹脂組成物を硬化した硬化物の硬化収縮率が0.5%以下である、請求項4に記載の発光素子パッケージの製造方法。
【請求項6】
前記光学補助層を形成するための前記樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む、請求項4又は5に記載の発光素子パッケージの製造方法。
【請求項7】
前記光透過部の可視光透過率が90%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の発光素子パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子パッケージ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
厚さ方向の一方から見たときの平面サイズ(チップサイズ)が、例えば200μm角以下である微小なLED素子を画素(サブピクセル)の構成要素として用いるディスプレイが知られており、一般に、100μm角~200μm角のLED素子が用いられる場合には、ミニLEDディスプレイと称され、100μm角未満のLED素子が用いられる場合には、マイクロLEDディスプレイと称されている。
【0003】
従来、例えば、表示装置向けの発光素子パッケージにおいては、複数の個片化されたLED素子を、はんだボール(バンプ)を介して配線基板に実装するフリップチップボールグリッドアレイ(FCBGA)と称される態様が採用されていた(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-129496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディスプレイ向けの発光素子パッケージにおいては、通常、発光素子から出射された光を、光学的に補正するなどの機能を有する光学補助層が含まれる。ここで、光学補助層の例としては、発光素子が出射した光を反射して輝度を向上させる白色層や、発光素子が出射した光を吸収してコントラストを向上させる黒色層等が挙げられる。
【0006】
しかしながら、発光素子パッケージにおいて、LED素子の発光面上に光学補助層が存在すると、発光効率が低下してしまう。また、発光素子パッケージの製造方法において、光学補助層を設けた後、光学補助層を研磨等により薄くする工程が実施され、これによりLED素子の発光面を露出させた場合には、LED素子の発光面が損傷してしまったり、発光面上に光学補助層が残存することにより、発光素子パッケージの発光効率が低下したり、光学的な特性が損なわれたりするおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものである。本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めたところ、発光素子パッケージの製造方法において、所定の工程を実施することにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、下記〔1〕~〔8〕を提供する。
〔1〕 第1電極及び第2電極を備えており、光を出射する発光面を有する複数個の発光素子を、前記発光面が露出するように配列して、少なくとも前記発光面を覆うように、光透過部を形成する工程と、
複数個の前記発光素子及び前記光透過部を埋め込む前駆光学補助層を形成する工程と、
前記第1電極及び/又は前記第2電極に電気的に接続されている複数の配線を含む1層以上の配線層を含む配線構造部を形成する工程と、
前記前駆光学補助層を厚さ方向に研削して、前記光透過部のうちの少なくとも前記発光面上の領域を露出させる光学補助層を形成する工程と
を含む発光素子パッケージの製造方法。
〔2〕 前記発光素子が、厚さ方向の一方から見たときの平面サイズが100μm角未満であるLED素子であり、
前記配線構造部を形成する工程が、セミアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により前記配線層を形成する工程である、〔1〕に記載の発光素子パッケージの製造方法。
〔3〕 前記光学補助層が黒色層であり、該黒色層への波長450nmの入射光の透過率が、5%以下である、〔1〕又は〔2〕に記載の発光素子パッケージの製造方法。
〔4〕 前記光透過部及び前記光学補助層を形成する工程が、樹脂組成物を硬化する工程を含む、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の発光素子パッケージの製造方法。
〔5〕 前記樹脂組成物を硬化した硬化物の硬化収縮率が0.5%以下である、〔4〕に記載の発光素子パッケージの製造方法。
〔6〕 前記光学補助層を形成するための前記樹脂組成物がエポキシ樹脂を含む、〔4〕又は〔5〕に記載の発光素子パッケージの製造方法。
〔7〕 前記光透過部の可視光透過率が90%以上である、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の発光素子パッケージの製造方法。
〔8〕 第1電極及び第2電極を備えており、光を出射する発光面を有する複数個の発光素子と、
少なくとも前記発光面を覆っており、該発光面から出射する光を透過させることができる光透過部と、
前記光透過部のうちの少なくとも前記発光面上の領域が露出するように、前記光透過部及び前記発光素子を覆っている光学補助層と、
前記第1電極及び/又は前記第2電極に電気的に接続されている複数の配線を含む1層以上の配線層を含む配線構造部と
を含む、発光素子パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本発明の発光素子パッケージの製造方法によれば、製造される発光素子パッケージに含まれる発光素子の発光効率を向上させることができ、既存の設備を用いて簡便に、安価に、発光素子パッケージを製造することができ、さらには製造される発光素子パッケージの歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、厚さ方向で切断した第1の実施形態の発光素子パッケージの切断端面を示す概略的な図である。
図2図2は、厚さ方向で切断した第2の実施形態の発光素子パッケージの切断端面を示す概略的な図である。
図3図3は、厚さ方向で切断した第3の実施形態の発光素子パッケージの切断端面を示す概略的な図である。
図4A図4Aは、発光素子パッケージの製造方法を説明するための概略的な図である。
図4B図4Bは、発光素子パッケージの製造方法を説明するための概略的な図である。
図4C図4Cは、発光素子パッケージの製造方法を説明するための概略的な図である。
図4D図4Dは、発光素子パッケージの製造方法を説明するための概略的な図である。
図4E図4Eは、発光素子パッケージの製造方法を説明するための概略的な図である。
図4F図4Fは、発光素子パッケージの製造方法を説明するための概略的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお各図は、発明が理解できる程度に、構成要素の形状、大きさ及び配置について概略的に示している。
また、本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
さらに、以下の説明に用いる各図において、同様の構成要素については同一の符号を付して示し、重複する説明を省略する場合がある。
【0011】
本実施形態の発光素子パッケージは、第1電極及び第2電極を備えており、光を出射する発光面を有する複数個の発光素子と、少なくとも発光面を覆っており、該発光面から出射する光を透過させることができる光透過部と、光透過部のうちの少なくとも発光面上の領域が露出するように、光透過部及び前記発光素子を覆っている光学補助層と、第1電極及び/又は第2電極に電気的に接続されている複数の配線を含む1層以上の配線層を含む配線構造部とを含む。
【0012】
以下、発光素子パッケージの実施形態、発光素子パッケージの構成要素及び発光素子パッケージの製造方法について具体的に説明する。
【0013】
1.発光素子パッケージの構成例
(1)第1実施形態
図1を参照して、本発明の第1実施形態にかかる発光素子パッケージの構成例について説明する。
【0014】
図1は、厚さ方向で切断した第1実施形態の発光素子パッケージの切断端面を示す概略的な図である。
【0015】
第1実施形態の発光素子パッケージ1は、光透過部50が複数の発光素子10(10a、10b及び10c)それぞれの発光面19の直上の領域のみを覆う態様を有している(詳細については後述する。)。以下、第1実施形態の発光素子パッケージを構成し得る構成要素について、具体的に説明する。
【0016】
図1に示されるように、第1実施形態にかかる発光素子パッケージ1は、複数個の発光素子10を含んでいる。発光素子10の構成は特に限定されない。発光素子10としては、例えば、市場にて入手可能な従来公知の任意の構成を有する発光素子を用いることができる。発光素子10の例としては、発光材料が無機化合物であるLED素子、発光材料が有機化合物であるOLED素子が挙げられる。
【0017】
発光素子10は、発光素子パッケージ1が特に表示装置に適用される場合には、厚さ方向の一方から見たときの平面サイズが、通常、100μm角以上200μm角以下である。発光素子10としては、100μm角以上150μm角以下であるミニLED素子又は100μm角未満であるマイクロLED素子であることが好ましい。
【0018】
発光素子10は、光を出射する発光面19aを有している。この構成例では、発光面19aの形状は四辺形(正方形)状であるがこれに限定されない。ここで、発光面19aのサイズは、発光素子10を厚さ方向の一方から見たときの平面サイズと略一致している。
【0019】
図1においては、3個の発光素子10が図示されている。具体的には、発光素子10として、赤色発光素子である第1発光素子10a、緑色発光素子である第2発光素子10b及び青色発光素子である第3発光素子10cが設けられている。第1発光素子10a、第2発光素子10b及び第3発光素子10cは、それぞれがいわゆるサブピクセルに相当する素子であり、通常、これら3個が1組となって、1個の画素(ピクセル)を構成している。
【0020】
本発明にかかる実施形態では、発光素子10はLED素子であることが想定されている。よって、ここではLED素子である発光素子10の構成例について説明する。
【0021】
発光素子10は、図示されていない第1導電型半導体層と、第1導電型半導体層に接合している第2導電型半導体層とを通常含んでいる。ここで、第1導電型半導体層がn型半導体層である場合には、第2導電型半導体層は、p型半導体層である。逆に、1導電型半導体層がp型半導体層である場合には、第2導電型半導体層は、n型半導体層である。
【0022】
第2導電型半導体層の第1導電型半導体層と接合している表面と反対側の対向する側の表面には第2電極が第1導電型半導体層に接合するように設けられており、第2導電型半導体層には第1電極16が接合するように設けられている。
【0023】
第1導電型半導体層の第2導電型半導体層及び第2電極18が接合している表面とは反対側の対向している表面には、図示されていないサファイア基板の一方の主表面が接合するように設けられている。サファイア基板の第2導電型半導体層が接合されている主表面とは反対側の対向する他方の主表面は、発光面19aとされている。この構成例では、発光素子10はいわゆる水平構造のLED素子である。しかしながら、これに限定されず、本実施形態に用いられ得る発光素子10としては、例えば、垂直構造のLED素子を用いることもできる。
【0024】
発光素子パッケージ1は、光学補助層20を含んでいる。光学補助層20は、発光素子10から出射された光を、光学的に補正するなどの機能を有している。光学補助層20は、例えば、発光素子パッケージ1が適用される表示装置において、コントラストをより向上させたり、輝度をより向上させたりすることができる機能を有する。
【0025】
光学補助層20の具体例としては、発光素子10が出射した光を反射させることにより輝度を向上させることができる白色層、発光素子10が出射した光を吸収することによりコントラストを向上させることができる黒色層が挙げられる。本実施形態の発光素子10に適用される光学補助層20は、黒色層であることが好ましい。以下、光学補助層20である黒色層について具体的に説明する。
【0026】
本実施形態の発光素子パッケージ1において、黒色層に対する波長450nmの入射光の透過率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは30%以下であり、さらに好ましくは10%以下であり、特に好ましくは5%以下である。また、黒色層に対する波長450nmの入射光の反射率は、好ましくは30%以下であり、より好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは10%以下である。
【0027】
黒色層に対する入射光の透過率および反射率は、分光光度計によって測定することができる。
【0028】
黒色層に対する入射光の透過率および反射率の測定は、具体的には、まず、例えば、PETフィルムなどの支持体に樹脂組成物を厚さ50マイクロメートルになるように塗布して樹脂組成物層を形成し、200℃にて90分間加熱することにより樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離することで、硬化物フィルムを得る。
【0029】
次いで、得られた硬化物フィルムから幅50mm、長さ50mmの切片を切り出し、φ80mm積分球(型名:SRS-99-010、反射率99%)を装着したファイバー式分光光度計(MCPD-7700、型式311C、大塚電子社製、外部光源ユニット:ハロゲンランプMC-2564(24V、150W仕様))を用いて、反射率スペクトルを測定することにより、450nmの波長における反射率を算出することができる。このようにして黒色層の反射率を測定することができる。
【0030】
また、硬化物フィルムを上記のファイバー式分光光度計に設置し、透過率スペクトルを測定することにより、450nmの波長における入射光の透過率を算出することができる。このようにして黒色層の透過率を測定することができる。
【0031】
なお、上記測定にあたっては、積分球と測定用シートとの距離を0mmとし、リファレンスは大気とすればよい。
【0032】
黒色層は、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、黒色顔料、カーボンブラック及びチタンブラックを成分として含むことができる。光学補助層20である黒色層は、耐熱性及び微細配線加工性の観点から、熱硬化性樹脂(例、エポキシ樹脂)、カーボンブラックを含む樹脂組成物を硬化した硬化物を成分として含むことが好ましい。
【0033】
以下、黒色層に含まれ得る成分、すなわち黒色層を形成するための樹脂組成物の成分について、具体的に説明する。
【0034】
<黒色層形成用の樹脂組成物>
黒色層形成用の樹脂組成物としては、波長450nmの入射光の透過率が30%以下でありさえすればどのような態様であっても問題ない。黒色層形成用の樹脂組成物は、熱硬化樹脂を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂は、グリシジル基と水酸基とを有するシラン系カップリング剤との組合せにより、諸特性を維持しつつ高温絶縁抵抗性を高める観点から、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0035】
熱硬化性樹脂としてのエポキシ樹脂は、耐熱性を付与するための成分であり、芳香族骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族骨格を有するエポキシ化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。耐熱性が優れるため、エポキシ樹脂としては、ノボラック型エポキシ樹脂を用いることが好ましい。硬化物の密着性をより高める観点からは、エポキシ樹脂は、脂環式骨格を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。脂環式骨格を有するエポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。また、変性エポキシ樹脂を併用してもよい。
【0036】
芳香族骨格を有するエポキシ化合物の例としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、芳香族骨格を有する多塩基酸化合物とエピクロロヒドリンとを反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ化合物及び芳香族骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ化合物が挙げられる。硬化物の強度及び耐熱性をより高める観点から、芳香族骨格を有するエポキシ化合物は、ビスフェノール骨格又はノボラック骨格を有することが好ましい。
【0037】
芳香族骨格を有するエポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは100以上1000以下である。該エポキシ当量が100以上であれば、熱可塑性組成物の成形性がより良好になる。該エポキシ当量が1000以下であれば、硬化物の強度をより高めることができる。
【0038】
脂環式骨格を有するエポキシ化合物の具体例としては、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ-(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、ジシクロペンタジエンジオキシド、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9-ジエポキシリモネン、ε-カプロラクトン修飾テトラ(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)ブタンテトラカルボキシレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が挙げられる。硬化物の耐熱性をより高める観点から、脂環式骨格を有するエポキシ化合物としては、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物が好ましい。
【0039】
脂環式骨格を有するエポキシ化合物としては、ダイセル化学社製セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2000、セロキサイド3000等の脂環式エポキシ化合物、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物であるサイクロマーA200、サイクロマーM100、MGMA等のメチルグリシジル基を有するメタクリレート、ダウケミカル社製サイラキュア等が入手可能である。
【0040】
エポキシ化合物の配合量は、加熱処理により適度に硬化するように適宜調整することができ、特に限定されない。エポキシ化合物の配合量は。不揮発成分(固形分)換算で樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは5質量部以上60質量部以下であり、より好ましくは5質量部以上30質量部以下である。エポキシ化合物の配合量がこの範囲内であれば、加熱処理により樹脂組成物をより効果的に硬化させることができ、硬化物の耐熱性をより高くすることができる。
【0041】
本実施形態の黒色層形成用の樹脂組成物に用いられうるシランカップリング剤は、特に限定されない。
【0042】
シランカップリング剤としては、窒素原子を含まず、分子中に2つの異なった官能基を有する化合物を用いることができる。このようなシランカップリング剤としては、例えば、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、スチリルシラン系カップリング剤等が挙げられる。窒素原子を含まないシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。ここで、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤には、アクリルシラン系カップリング剤及びメタクリルシラン系カップリング剤の両方が含まれる。
【0043】
フェニルシラン系カップリング剤としては、例えば、フェニルトリメトキシシラン、及びフェニルトリエトキシシランが挙げられる。
【0044】
アルキルシラン系カップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、及び1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサンが挙げられる。
【0045】
エポキシシラン系カップリング剤としては、例えば、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0046】
ビニルシラン系カップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリエトキシシランが挙げられる。
【0047】
(メタ)アクリルシラン系カップリング剤としては、例えば、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及び3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0048】
スチリルシラン系カップリング剤としては、例えば、p-スチリルトリメトキシシランが挙げられる。
【0049】
シランカップリング剤としては、フェニルシラン系カップリング剤、アルキルシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリルシラン系カップリング剤、及びスチリルシラン系カップリング剤から選択される少なくとも1種であることが好ましく、フェニルシラン系カップリング剤、エポキシシラン系シランカップリング剤、及び(メタ)アクリルシラン系カップリング剤から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、フェニルシラン系カップリング剤であることがさらに好ましい。
【0050】
シランカップリング剤としては市販品を用いることができる。シランカップリング剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製の「KBM-103」、「KBE-103」(フェニルシラン系カップリング剤);「KBM-13」、「KBM-22」、「KBE-13」、「KBE-22」、「KBM-3033」、「KBE-3033」、「KBM-3063」、「KBE-3063」、「KBE-3083」、「KBM-3103C」、「KBM-3066」、「KBM-7103」(アルキルシラン系カップリング剤);「KBM-1003」、「KBE-1003」(ビニルシラン系カップリング剤);「KBM-303」、「KBM-402」、「KBM-403」、「KBE-402」、「KBE-403」(エポキシシラン系カップリング剤);「KBM-1403」(スチリルシラン系カップリング剤);「KBM-502」、「KBM-503」、「KBE-502」、「KBE-503」、「KBM-5103」((メタ)アクリルシラン系カップリング剤)等が挙げられる。
【0051】
また、黒色層形成用の樹脂組成物においては、上記以外の他のシランカップリング剤、例えば窒素原子を含むシランカップリング剤などを用いるか、又は併用して用いることもできる。
他のシランカップリング剤は特に限定されない。用いられうる他のシランカップリング剤としては、例えば、エポキシシランカップリング剤、アミノシランカップリング剤、カチオニックシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤、メルカプトシランカップリング剤及びこれらの複合系カップリング剤が挙げられる。
【0052】
他のシラン系カップリング剤としては、例えば、KA-1003、KBM-602、KBM-603、KBE-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103、KBM-9103、KBM-573、KBM-575、KBM-6123、KBE-585、KBM-703、KBM-802、KBM-803、KBE-846、KBE-9007(信越シリコーン社製、商品名)、Silquest A-186、Silquest A-187(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製、商品名)等の市販品が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
黒色層形成用の樹脂組成物に使用されるシリカ、酸化チタン、アルミナ(Al)、窒化ホウ素及びタルクからなる群から選ばれる少なくとも1種の絶縁性フィラーは、使用により、硬化物の高温絶縁抵抗性を改善するのみならず、表面平坦性を上昇させ、加工プロセスの加熱による変形を抑制し、表面平坦性を維持するほか、かすり傷やマイクロクラックを有効に防止することができる。また、マイクロクラックを防止する観点からは、タルク及びシリカのうちの少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0054】
上記絶縁性フィラーの合計配合量として、固形分換算で樹脂組成物全体の100質量部に対して、10~85質量部であることが、高温絶縁抵抗性を向上させる観点から、好ましく、10~82質量部であることがより好ましい。また、シリカ、タルクは市販の製品を使用してもよい。
【0055】
シリカの市販品の例としては、アエロジル50、アエロジル200、アエロジル380、アエロジルA300等のAシリーズ、RY300等のRYシリーズ(日本アエロジル社製)、WACKER HDK S13、WACKER HDK V15、WACKER HDK N20(いずれも旭化成社製)、「ファインシールB」(商品名、トクヤマ社製)、「ファインシール」(トクヤマ社製)、「サイリシア」(富士シリシア化学社製)、スノーテックスUP、スノーテックスOUP(日産化学工業社製)、Nipsil L-300、Nipsil KQ(日本シリカ工業社製)、「UFP-30」(デンカ社製)、「SP60-05」、「SP507-05」(いずれも日鉄ケミカル&マテリアル社製)、「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」(いずれもアドマテックス社製)、「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」(いずれもトクヤマ社製)、「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」(いずれもアドマテックス社製)、「シリナックス」(日鉄鉱業社製)、「セルスファーズNF」(太平洋セメント社製)が挙げられる。
【0056】
タルクの市販品の例としては、LMS-100、LMS-200、LMS-300、LMS-3500、LMS-400、LMP-100、PKP-53、PKP-80、PKP-81(富士タルク工業社製)、D-600、D-800、D-1000、P-2、P-3、P-4、P-6、P-8、SG-95(日本タルク社製)が挙げられる。これらは単独で又は複数種類を組み合わせて使用することができる。
【0057】
黒色層形成用の樹脂組成物に含まれる黒色着色剤は、黒色を十分に示し、上記エポキシ樹脂と化学的に反応しない着色剤であればよい。好適な黒色着色剤の例としては、C.I.Pigment black 6、7、9及び18等に示されるカーボンブラック系の着色剤、C.I.Pigment black 8、10等に示される黒鉛系の着色剤、C.I.Pigment black 11、12及び27,Pigment Brown 35等で示される酸化鉄系の着色剤:例えば戸田工業社製KN-370の酸化鉄、三菱マテリアル社製13Mのチタンブラック、C.I.Pigment black 20等で示されるアンスラキノン系の着色剤、C.I.Pigment black 13、25及び29等で示される酸化コバルト系の着色剤、C.I.Pigment black 15及び28等で示される酸化銅系の着色剤、C.I.Pigment black 14及び26等で示されるマンガン系の着色剤、C.I.Pigmentblack 23等で示される酸化アンチモン系の着色剤、C.I.Pigment black 30等で示される酸化ニッケル系の着色剤、C.I.Pigment black 31、32で示されるペリレン系の着色剤、Pigment Black 1で示されるアニリン系の着色剤及び硫化モリブデンや硫化ビスマスが挙げられる。これらの着色剤は、単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
特に好ましい黒色着色剤は、カーボンブラックである。カーボンブラックの例としては、三菱化学社製のカーボンブラック、M-40、M-45、M-50、MA-8、MA-100、コロンビアケミカルカンパニー社製のカーボンブラック1255が挙げられる。
【0059】
黒色着色剤の配合量は、好ましくは、固形分換算で樹脂組成物全体の100質量部に対して1~25質量部であり、より好ましくは、2~20質量部である。
【0060】
光学補助層20、すなわち黒色層に用いられる樹脂組成物を硬化した硬化物の硬化収縮率は、クラック等の劣化を抑止する観点から、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.4%以下である。硬化物の硬化収縮率は、以下の方法により測定することができる。
【0061】
<硬化収縮率の測定>
(i-1)樹脂付ポリイミドフィルムの調製
黒色層形成用の樹脂組成物を含むワニスをアルキド樹脂系離型剤(リンテック社製「AL-5」)で離型処理したPETフィルム(東レ社製「ルミラーR80」、厚み38μm、軟化点130℃、以下「離型PET」という。)上に、乾燥後の樹脂組成物層の厚さが170μmとなるようにダイコーターにて塗布し、80℃~120℃(平均100℃)で10分間乾燥し、樹脂シートを得る。この樹脂シートを200mm角になるように切り取る。作製した樹脂シートの切片(200mm角)を、バッチ式真空加圧ラミネーター(ニッコー・マテリアルズ社製、2ステージビルドアップラミネーター、CVP700)を用いて、樹脂組成物層がポリイミドフィルム(宇部興産社製ユーピレックス25S、25μm厚、240mm角)の平滑面の中央と接するように、片面にラミネートする。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とした後、100℃、圧力0.74MPaにて30秒間圧着させることにより実施する。このようにして、樹脂付ポリイミドフィルムを得る。
【0062】
(i-2)初期長の測定
得られた樹脂付ポリイミドフィルムの離型PET上から、樹脂組成物層の4角から20mm程度の部分に、貫通穴(直径約6mm)を、パンチングによって4つ形成し(形成した貫通穴を時計回りにA、B、C、Dと称する。)、離型PETを剥離後、形成した各貫通穴の中心軸同士間の長さL(LAB、LBC、LCD、LDA、LAC、LBD)を非接触型画像測定器(ミツトヨ社製、Quick Vision、「QVH1X606-PRO III BHU2G」)で測定する。
【0063】
(i-3)樹脂組成物層の熱硬化
初期長の測定が終了した樹脂付ポリイミドフィルムのポリイミドフィルム面を、255mm×255mmサイズのガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板(0.7mm厚、松下電工社製「R5715ES」)上に設置し、四辺をポリイミド接着テープ(幅10mm)で固定し、180℃で90分間加熱して、樹脂組成物層を熱硬化して、硬化物層を得る。
【0064】
(i-4)熱硬化収縮率の測定
熱硬化後、ポリイミド接着テープを剥がし、硬化物層付ポリイミドフィルムをガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板から取り外し、さらに硬化物層をポリイミドフィルムから剥離して、(1-2)で形成した各貫通穴の中心軸同士間の硬化後の長さL’(L’AB、L’BC、L’CD、L’DA、L’AC、L’BD)を、長さLと同じように非接触型画像測定器で測定する。
【0065】
貫通穴Aと貫通穴Bとの間の長さLABの硬化後の収縮率s1ABを下記式(1)により求める。同様にしてLBC、LCD、LDA、LAC及びLBDの硬化後の収縮率s1BC、s1CD、s1DA、s1AC及びs1DAを求める。
s1AB=(LAB-L’AB)/LAB (1)
【0066】
硬化物層の熱硬化収縮率は、下記式(2)により算出する。
熱硬化収縮率[x-y方向の収縮率:S1](%)
={(s1AB+s1BC+s1CD+s1DA+s1AC+s1DA)/6}×100 (2)
【0067】
光学補助層20の厚さは、例えば発光素子10のサイズ、特に厚さを勘案して、任意好適な厚さとすることができる。光学補助層20の厚さは、好ましくは5μm~300μmであり、より好ましくは10μm~100μmである。
【0068】
図1に示されるように、第1実施形態においては、光学補助層20は、複数個の発光素子10(10a、10b及び10c)及び光透過部50を一体的に埋め込むように設けられており、かつ発光素子10それぞれの発光面19aの直上の領域のみを覆っている光透過部50の表面50aが露出するように設けられている。
【0069】
この構成例では、光透過部50の表面50aは、光学補助層20の表面である第1表面20aと一体的に揃っている。しかしながら、発光面19aと第1表面20aとは、互いに揃っておらず、段差が構成されていてもよい。
【0070】
光学補助層20の第2表面20b側からは、発光素子10(10a、10b及び10c)の第1電極16及び第2電極18がそれぞれ露出している。
【0071】
発光素子パッケージ1は、複数個の発光素子10それぞれが有する第1電極16及び/又は第2電極18に電気的に接続されている複数の配線(配線部)を含む1層以上の配線層(再配線層)を含む配線構造部30を含んでいる。配線構造部30は、1層以上の絶縁層(層間絶縁膜)を含み得る。
【0072】
配線構造部30は、いわゆる再配線層であるか、又は再配線層を含む配線構造である。配線構造部30に含まれる再配線層は、従来公知の任意好適な材料及び形成方法により形成することができ、設計に応じた任意好適な態様(配線ピッチ、配線の厚さ)とすることができる。以下、配線構造部30の構成例について説明する。
【0073】
複数個の発光素子10それぞれの発光面19aとは反対側の対向面である光学補助層20の第2表面20bには、配線構造部30に含まれる第1配線層32が設けられている。第1配線層32は、第2表面20bに延在する複数の配線を含む第1配線部32aを含んでいる。
【0074】
第1配線層32は、複数個の発光素子10それぞれの第1電極16及び第2電極18に、バンプ(はんだボール)を用いることなく電気的に接続されている。第1配線層32は、第1電極16及び/又は第2電極18と直接的に接続されていてもよく、さらには例えば、光学補助層20に設けられている図示されていないヴィアホール内に形成されてヴィアホール内配線を介して接続されていてもよい。
【0075】
この構成例では、光学補助層20の第2表面20bには、第1配線層32を覆うように、第1絶縁層34が設けられている。
【0076】
第1絶縁層34の材料及び製造方法は特に限定されない。第1絶縁層34は、例えば、プリント配線板が備える絶縁層(層間絶縁膜)であるビルドアップ層と同様の材料である樹脂組成物、特に発光素子パッケージの反りを防止する観点からはガラス繊維基材を用いて、ビルドアップ層の形成工程と同様の工程により形成することができる。
【0077】
第1絶縁層34を形成するための樹脂組成物(第1絶縁層形成用の樹脂組成物)としては、従来公知の任意好適な樹脂組成物を用いることができる。第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、例えば、(a)エポキシ樹脂及び(b)硬化剤を含む。第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、必要に応じて、さらに、(c)無機充填材、(d)熱可塑性樹脂、(e)硬化促進剤、(f)難燃剤及び(g)有機充填材等の添加剤を含み得る。以下、第1絶縁層形成用の樹脂組成物に含まれ得る成分について説明する。
【0078】
<(a)成分:エポキシ樹脂>
(a)成分であるエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が挙げられる。エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ビスフェノール型エポキシ樹脂は、ビスフェノール構造を有するエポキシ樹脂を指し、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂が挙げられる。ビフェニル型エポキシ樹脂とは、ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂を意味しており、ビフェニル構造は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基等の置換基を有していてもよい。したがって、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂もビフェニル型エポキシ樹脂に含まれる。上記エポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
エポキシ樹脂としては、芳香族系のエポキシ樹脂が好ましい。ここで、芳香族系のエポキシ樹脂とは、その分子内に芳香環を有するエポキシ樹脂を意味する。芳香環には、ベンゼン環等の単環構造だけでなく、ナフタレン環等の多環芳香族構造及び芳香族複素環構造も含まれる。芳香族系のエポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂及びナフトール型エポキシ樹脂からなる群より選ばれる1種類以上が好ましい。
【0080】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ基を有することが好ましい。エポキシ樹脂の不揮発成分を100質量%とした場合、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂の割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0081】
エポキシ樹脂には、20℃で液状のエポキシ樹脂(以下「液状エポキシ樹脂」ともいう。)と、20℃で固体状のエポキシ樹脂(以下「固体状エポキシ樹脂」ともいう。)とが含まれる。
【0082】
第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、液状エポキシ樹脂を単独で含んでいてもよく、固体状エポキシ樹脂を単独で含んでいてもよく、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて含んでいてもよい。中でも、樹脂組成物は、固体状エポキシ樹脂を含むことが好ましく、固体状エポキシ樹脂を単独で、又は、固体状エポキシ樹脂と液状エポキシ樹脂とを組み合わせて含むことが好ましい。
【0083】
固体状エポキシ樹脂としては、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する固体状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に3個以上のエポキシ基を有する芳香族系の固体状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0084】
固体状エポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂及びビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0085】
固体状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032H」(ナフタレン型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-4700」、「HP-4710」(ナフタレン型4官能エポキシ樹脂);DIC社製の「N-690」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「N-695」(クレゾールノボラック型エポキシ樹脂);DIC社製の「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂);DIC社製の「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP6000」、「HP6000L」(ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「EPPN-502H」(トリスフェノール型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC7000L」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);日本化薬社製の「NC3000H」、「NC3000」、「NC3000L」、「NC3100」(ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN475V」(ナフトール型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ESN485」(ナフトールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000H」、「YX4000」、「YL6121」(ビフェニル型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX4000HK」(ビキシレノール型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8800」(アントラセン型エポキシ樹脂);大阪ガスケミカル社製の「PG-100」、「CG-500」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX7760」(ビスフェノールAF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YL7800」(フルオレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1010」(固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER1031S」(テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂);が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
液状エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する液状エポキシ樹脂が好ましく、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する芳香族系の液状エポキシ樹脂がより好ましい。
【0087】
液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂が好ましく、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂及びナフタレン型エポキシ樹脂がより好ましい。
【0088】
液状エポキシ樹脂の具体例としては、DIC社製の「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(ナフタレン型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「828US」、「jER828US」、「jER828EL」、「825」、「エピコート828EL」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「YX8000」(水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER807」、「1750」(ビスフェノールF型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「jER152」(フェノールノボラック型エポキシ樹脂);三菱ケミカル社製の「630」、「630LSD」(グリシジルアミン型エポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1059」(ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品);ナガセケムテックス社製の「EX-721」(グリシジルエステル型エポキシ樹脂);ダイセル社製の「セロキサイド2021P」(エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂);ダイセル社製の「PB-3600」(ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂);新日鉄住金化学社製の「ZX1658」、「ZX1658GS」(液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂);などが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0089】
エポキシ樹脂として、液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂とを組み合わせて用いる場合、それらの質量比(液状エポキシ樹脂:固体状エポキシ樹脂)は、好ましくは1:0.1~1:15であり、より好ましくは1:0.5~1:10であり、特に好ましくは1:1~1:8である。液状エポキシ樹脂と固体状エポキシ樹脂との量比をかかる範囲とすることにより、i)接着シートの形態で使用する場合に適度な粘着性とすることができ、ii)接着シートの形態で使用する場合に十分な可撓性を得ることができ、取り扱い性が向上し、さらにはiii)十分な破断強度を有する絶縁層を得ることができる。
【0090】
エポキシ樹脂のエポキシ当量(g/eq.)は、通常5000以下であり、好ましくは50~5000であり、より好ましくは50~3000であり、さらに好ましくは80~2000であり、特に好ましくは110~1000である。エポキシ樹脂のエポキシ当量が上記範囲にあれば、樹脂組成物の硬化物の架橋密度が十分となり、表面粗さの小さい絶縁層を得ることができる。なお、エポキシ当量は、1当量のエポキシ基を含む樹脂の質量であり、JIS K7236に従って測定することができる。
【0091】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは100~5000であり、より好ましくは250~3000であり、さらに好ましくは400~1500である。エポキシ樹脂等の樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0092】
エポキシ樹脂の含有量は、良好な機械強度、絶縁信頼性を示す絶縁層を得る観点から、樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上である。エポキシ樹脂の含有量の上限は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下であり、特に好ましくは30質量%以下である。
【0093】
<(b)成分:硬化剤>
(b)成分である硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有する限り特に限定されない。硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤、ナフトール系硬化剤、活性エステル系硬化剤、ベンゾオキサジン系硬化剤、シアネートエステル系硬化剤及びカルボジイミド系硬化剤が挙げられる。硬化剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤としては、耐熱性及び耐水性を向上させる観点から、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤、又はノボラック構造を有するナフトール系硬化剤が好ましい。また、導体層(配線層)との密着強度(ピール強度)を向上させる観点から、含窒素フェノール系硬化剤又は含窒素ナフトール系硬化剤が好ましく、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤又はトリアジン骨格含有ナフトール系硬化剤がより好ましい。中でも、耐熱性、耐水性、及び導体層との密着強度をより高める観点から、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂が好ましい。フェノール系硬化剤及びナフトール系硬化剤の具体例としては、明和化成(株)製の「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、日本化薬(株)製の「NHN」、「CBN」、「GPH」、新日鉄住金化学(株)製の「SN-170」、「SN-180」、「SN-190」、「SN-475」、「SN-485」、「SN-495」、「SN-375」、「SN-395」、DIC(株)製の「LA-7052」、「LA-7054」、「LA-3018」、「LA-1356」、「TD2090」が挙げられる。
【0095】
活性エステル系硬化剤としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する樹脂を用いることができる。中でも、活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましく用いられる。当該活性エステル系硬化剤としては、カルボン酸化合物及び/又はチオカルボン酸化合物とヒドロキシ化合物及び/又はチオール化合物との縮合反応によって得られる化合物が好ましい。特に耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及び/又はナフトール化合物とから得られる活性エステル系硬化剤がより好ましい。カルボン酸化合物としては、例えば安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸が挙げられる。フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラックが挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物を意味する。
【0096】
活性エステル系硬化剤の好適な具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンタレン-フェニレンからなる2価の構造単位を意味する。
【0097】
活性エステル系硬化剤の市販品の例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」、「EXB-8100L-65T」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系化合物として「DC808」(三菱ケミカル社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物である活性エステル化合物として「YLH1026」(三菱ケミカル社製)、「YLH1030」(三菱ケミカル社製)、「YLH1048」(三菱ケミカル社製);が挙げられる。
【0098】
ベンゾオキサジン系硬化剤の具体例としては、JFEケミカル社製の「JBZ-OD100」(ベンゾオキサジン環当量218)、「JBZ-OP100D」(ベンゾオキサジン環当量218)、「ODA-BOZ」(ベンゾオキサジン環当量218);四国化成工業社製の「P-d」(ベンゾオキサジン環当量217)、「F-a」(ベンゾオキサジン環当量217);昭和高分子社製の「HFB2006M」(ベンゾオキサジン環当量432)が挙げられる。
【0099】
シアネートエステル系硬化剤としては、例えば、ビスフェノールAジシアネート、ポリフェノールシアネート(オリゴ(3-メチレン-1,5-フェニレンシアネート))、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルフェニルシアネート)、4,4’-エチリデンジフェニルジシアネート、ヘキサフルオロビスフェノールAジシアネート、2,2-ビス(4-シアネート)フェニルプロパン、1,1-ビス(4-シアネートフェニルメタン)、ビス(4-シアネート-3,5-ジメチルフェニル)メタン、1,3-ビス(4-シアネートフェニル-1-(メチルエチリデン))ベンゼン、ビス(4-シアネートフェニル)チオエーテル、及びビス(4-シアネートフェニル)エーテル等の2官能シアネート樹脂、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等から誘導される多官能シアネート樹脂、これらシアネート樹脂が一部トリアジン化したプレポリマーが挙げられる。シアネートエステル系硬化剤の具体例としては、ロンザジャパン(株)製の「PT30」及び「PT60」(いずれもフェノールノボラック型多官能シアネートエステル樹脂)、「ULL-950S」(多官能シアネートエステル樹脂)、「BA230」(ビスフェノールAジシアネートの一部又は全部がトリアジン化され三量体となったプレポリマー)が挙げられる。
【0100】
カルボジイミド系硬化剤の具体例としては、日清紡ケミカル社製のカルボジライト(登録商標)V-03(カルボジイミド基当量:216)、V-05(カルボジイミド基当量:216)、V-07(カルボジイミド基当量:200);V-09(カルボジイミド基当量:200);ラインケミー社製のスタバクゾール(登録商標)P(カルボジイミド基当量:302)が挙げられる。
【0101】
(a)エポキシ樹脂と(b)硬化剤との量比は、[エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数]:[硬化剤の反応基の合計数]の比率で、1:0.2~1:2の範囲が好ましく、1:0.3~1:1.5がより好ましく、1:0.4~1:1.2がさらに好ましい。ここで、硬化剤の反応基とは、活性水酸基、活性エステル基等であり、硬化剤の種類によって異なる。また、エポキシ樹脂のエポキシ基の合計数とは、エポキシ樹脂の固形分質量をエポキシ当量で除した値をすべてのエポキシ樹脂について合計した値であり、硬化剤の反応基の合計数とは、各硬化剤の固形分質量を反応基当量で除した値をすべての硬化剤について合計した値である。エポキシ樹脂と硬化剤との量比をこのような範囲とすることにより、得られる絶縁層の耐熱性がより向上する。
【0102】
硬化剤の含有量は、第1絶縁層形成用樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、さらに好ましくは15質量%以上である。硬化剤の含有量の上限は、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下、又は30質量%以下である。本発明において、「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する不揮発成分のうち、後述する(c)成分である無機充填材を除いた成分をいう。
【0103】
<(c)成分:無機充填材>
第1絶縁層形成用樹脂組成物は、(c)成分として、無機充填材をさらに含むことが好ましい。無機充填材を含むことにより、線熱膨張係数及び誘電正接がより低い絶縁層とすることができる。
【0104】
無機充填材の材料は特に限定されない。無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ガラス、コーディエライト、シリコン酸化物、硫酸バリウム、炭酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、酸化亜鉛、ハイドロタルサイト、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化マンガン、ホウ酸アルミニウム、炭酸ストロンチウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸バリウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、リン酸ジルコニウム、及びリン酸タングステン酸ジルコニウムが挙げられる。これらの中でもシリカが好適である。シリカとしては、例えば、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ、中空シリカが挙げられる。また、シリカとしては、球状シリカが好ましい。無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0105】
無機充填材の市販品としては、例えば、デンカ社製の「UFP-30」;日鉄ケミカル&マテリアル社製の「SP60-05」、「SP507-05」、「SPH516-05」;アドマテックス社製の「YC100C」、「YA050C」、「YA050C-MJE」、「YA010C」;トクヤマ社製の「シルフィルNSS-3N」、「シルフィルNSS-4N」、「シルフィルNSS-5N」;アドマテックス社製の「SC2500SQ」、「SO-C4」、「SO-C2」、「SO-C1」;が挙げられる。
【0106】
無機充填材の比表面積は、好ましくは1m/g以上であり、より好ましくは2m/g以上であり、特に好ましくは3m/g以上である。上限に特段の制限は無いが、好ましくは60m/g以下であり、より好ましくは50m/g以下又は40m/g以下である。比表面積は、BET法に従って、比表面積測定装置(マウンテック社製「Macsorb HM-1210」)を使用して試料表面に窒素ガスを吸着させ、BET多点法を用いて比表面積を算出することができる。
【0107】
無機充填材の平均粒径は、好ましくは4μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは2.5μm以下であり、さらにより好ましくは2μm以下であり、特に好ましくは1μm以下であり、0.7μm以下、又は0.5μm以下である。無機充填材の平均粒径の下限は、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.03μm以上であり、さらに好ましくは0.05μm以上であり、0.07μm以上、又は0.1μm以上である。
【0108】
無機充填材の平均粒径は、ミー(Mie)散乱理論に基づくレーザー回折・散乱法により測定することができる。具体的には、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により、無機充填材の粒径分布を体積基準で作成し、そのメディアン径を平均粒径とすることで測定することができる。測定サンプルは、無機充填材100mg、メチルエチルケトン10gをバイアル瓶に秤取り、超音波にて10分間分散させたものを使用することができる。測定サンプルを、レーザー回折式粒径分布測定装置を使用して、使用光源波長を青色及び赤色とし、フローセル方式で無機充填材の体積基準の粒径分布を測定し、得られた粒径分布からメディアン径として平均粒径を算出できる。レーザー回折式粒径分布測定装置としては、例えば堀場製作所社製「LA-960」が挙げられる。
【0109】
無機充填材は、耐湿性及び分散性を高める観点から、表面処理剤で処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、例えば、ビニルシラン系カップリング剤、(メタ)アクリル系カップリング剤、フッ素含有シランカップリング剤、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、シラン系カップリング剤、アルコキシシラン、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤が挙げられる。表面処理剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。表面処理剤の市販品としては、例えば、信越化学工業社製「KBM1003」(ビニルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM503」(3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM403」(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM803」(3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBE903」(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM573」(N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「SZ-31」(ヘキサメチルジシラザン)、信越化学工業社製「KBM103」(フェニルトリメトキシシラン)、信越化学工業社製「KBM-4803」(長鎖エポキシ型シランカップリング剤)、信越化学工業社製「KBM-7103」(3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン)が挙げられる。
【0110】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の分散性向上の観点から、所定の範囲に収まることが好ましい。具体的には、無機充填材100質量部は、0.2質量部~5質量部の表面処理剤で表面処理されていることが好ましく、0.2質量部~3質量部で表面処理されていることが好ましく、0.3質量部~2質量部で表面処理されていることが好ましい。
【0111】
表面処理剤による表面処理の程度は、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量によって評価することができる。無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、無機充填材の分散性向上の観点から、0.02mg/m以上であることが好ましく、0.1mg/m以上であることがより好ましく、0.2mg/m以上であることがさらに好ましい。他方、樹脂ワニスの溶融粘度及び接着シート形態での溶融粘度の上昇を抑制する観点から、1mg/m以下であることが好ましく、0.8mg/m以下であることがより好ましく、0.5mg/m以下であることがさらに好ましい。
【0112】
無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量は、表面処理後の無機充填材を溶剤(例えば、メチルエチルケトン(MEK))により洗浄処理した後に測定することができる。具体的には、溶剤として十分な量のMEKを表面処理剤で表面処理された無機充填材に加えて、25℃で5分間超音波洗浄する。次いで上澄液を除去し、固形分を乾燥させた後、カーボン分析計を用いることで、無機充填材の単位表面積当たりのカーボン量を測定することができる。カーボン分析計としては、堀場製作所社製「EMIA-320V」を使用することができる。
【0113】
線熱膨張係数及び誘電正接の低い絶縁層を得る観点から、第1絶縁層形成用樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、第1絶縁層形成用樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは30質量%以上であり、より好ましくは40質量%以上又は50質量%以上である。無機充填材の含有量が高すぎる樹脂組成物を用いると、得られる絶縁層の表面の起伏が大きくなり易い傾向にある。しかしながら、接着シートを用いて第1絶縁層を形成する場合においては、形成される第1絶縁層の表面の凹凸の発生を抑制しつつ、樹脂組成物中の無機充填材の含有量をさらに高めることができる。このようにすれば、例えば、第1絶縁層形成用樹脂組成物中の無機充填材の含有量は、55質量%以上、60質量%以上、65質量%以上又は70質量%以上にまで高めることができる。
【0114】
第1絶縁層形成用樹脂組成物中の無機充填材の含有量の上限は、十分な機械強度を有する絶縁層を得る観点から、第1絶縁層形成用樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0115】
<(d)成分:熱可塑性樹脂>
第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、(d)成分として、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、1種単独で用いてもよく、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
熱可塑性樹脂のポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは8000以上であり、より好ましくは10000以上であり、さらに好ましくは20000以上又は30000以上である。上限は、好ましくは100000以下であり、より好ましくは70000以下であり、さらに好ましくは60000以下である。
【0117】
フェノキシ樹脂(エポキシ樹脂に該当する樹脂は除く。)としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格、及びトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂の末端は、フェノール性水酸基、エポキシ基等のいずれの官能基であってもよい。フェノキシ樹脂は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。フェノキシ樹脂の具体例としては、三菱ケミカル社製の「1256」及び「4250」(いずれもビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、「YX8100」(ビスフェノールS骨格含有フェノキシ樹脂)、及び「YX6954」(ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製の「FX280」及び「FX293」、三菱ケミカル社製の「YL7500BH30」、「YX6954BH30」、「YX7553」、「YX7553BH30」、「YL7769BH30」、「YL6794」、「YL7213」、「YL7290」及び「YX7482」が挙げられる。
【0118】
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、例えば、電気化学工業社製の「電化ブチラール4000-2」、「電化ブチラール5000-A」、「電化ブチラール6000-C」、「電化ブチラール6000-EP」、積水化学工業社製のエスレックBHシリーズ、BXシリーズ(例えばBX-5Z)、KSシリーズ(例えばKS-1)、BLシリーズ、BMシリーズが挙げられる。
【0119】
ポリイミド樹脂の具体例としては、新日本理化社製の「リカコートSN20」及び「リカコートPN20」に加え、2官能性ヒドロキシル基末端ポリブタジエン、ジイソシアネート化合物及び四塩基酸無水物を反応させて得られる線状ポリイミド(特開2006-37083号公報記載のポリイミド)、ポリシロキサン骨格含有ポリイミド(特開2002-12667号公報及び特開2000-319386号公報等に記載のポリイミド)等の変性ポリイミドが挙げられる。
【0120】
ポリアミドイミド樹脂の具体例としては、東洋紡社製の「バイロマックスHR11NN」及び「バイロマックスHR16NN」に加え、日立化成工業社製の「KS9100」、「KS9300」(ポリシロキサン骨格含有ポリアミドイミド)等の変性ポリアミドイミドが挙げられる。
【0121】
ポリエーテルスルホン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「PES5003P」が挙げられる。ポリフェニレンエーテル樹脂の具体例としては、三菱ガス化学社製のオリゴフェニレンエーテル・スチレン樹脂「OPE-2St 1200」及び「OPE-2St 2200」が挙げられる。ポリエーテルエーテルケトン樹脂の具体例としては、住友化学社製の「スミプロイK」が挙げられる。ポリエーテルイミド樹脂の具体例としては、GE社製の「ウルテム」が挙げられる。
【0122】
ポリスルホン樹脂の具体例としては、ソルベイアドバンストポリマーズ社製のポリスルホン「P1700」、「P3500」が挙げられる。
【0123】
ポリオレフィン樹脂としては、例えば低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体等のエチレン系共重合樹脂;ポリプロピレン、エチレン-プロピレンブロック共重合体等のポリオレフィン系エラストマーが挙げられる。
【0124】
ポリエステル樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンナフタレート樹脂、ポリシクロヘキサンジメチルテレフタレート樹脂が挙げられる。
【0125】
熱可塑性樹脂としては、とりわけフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂が好ましく、重量平均分子量が30000以上のフェノキシ樹脂がより好ましい。
【0126】
熱可塑性樹脂の含有量は、第1絶縁層形成用の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上である。上限は、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは4質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0127】
<(e)成分:硬化促進剤>
第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、(e)成分として、さらに硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、グアニジン系硬化促進剤、金属系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤が挙げられる。中でも、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、過酸化物系硬化促進剤が好ましい。硬化促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
硬化促進剤を使用する場合、第1絶縁層形成用の樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、第1絶縁層形成用の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.005質量%~1質量%であり、より好ましくは0.01質量%~0.5質量%である。
【0129】
<(f)成分:難燃剤>
第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、(f)成分として、難燃剤をさらに含んでいてもよい。難燃剤としては、例えば、有機リン系難燃剤、有機系窒素含有リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、金属水酸化物が挙げられる。難燃剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。難燃剤を使用する場合、第1絶縁層形成用の樹脂組成物中の難燃剤の含有量は特に限定はされない。難燃剤の含有量は、第1絶縁層形成用の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは0.1質量%~15質量%であり、より好ましくは0.5質量%~10質量%である。
【0130】
<(g)成分:有機充填材>
第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、有機充填材をさらに含んでいてもよい。有機充填材としては、プリント配線板の絶縁層を形成するに際し使用し得る任意好適な有機充填材を使用することができる。有機充填材としては、例えば、ゴム粒子、ポリアミド微粒子、シリコーン粒子が挙げられ、ゴム粒子が好ましい。
【0131】
ゴム粒子としては、ゴム弾性を示す樹脂に化学的架橋処理を施し、有機溶剤に不溶かつ不融とした樹脂の微粒子体である限り特に限定されない。ゴム粒子としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、ブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子が挙げられる。ゴム粒子としては、具体的には、XER-91(日本合成ゴム(株)製)、スタフィロイドAC3355、AC3816、AC3816N、AC3832、AC4030、AC3364、IM101(以上、アイカ工業(株)製)パラロイドEXL2655、EXL2602(以上、呉羽化学工業(株)製)が挙げられる。
【0132】
有機充填材の平均粒子径は、好ましくは0.005μm~1μmの範囲であり、より好ましくは0.2μm~0.6μmの範囲である。有機充填材の平均粒子径は、動的光散乱法を用いて測定することができる。例えば、適当な有機溶剤に有機充填材を超音波などにより均一に分散させ、濃厚系粒径アナライザー(大塚電子(株)製「FPAR-1000」)を用いて、有機充填材の粒度分布を質量基準で作成し、そのメディアン径を平均粒子径とすることで測定することができる。有機充填材を使用する場合、第1絶縁層形成用の樹脂組成物中の有機充填材の含有量は、第1絶縁層形成用の樹脂組成物中の不揮発成分を100質量%とした場合、好ましくは1質量%~10質量%であり、より好ましくは2質量%~5質量%である。
【0133】
<(h)成分:他の任意の成分>
第1絶縁層形成用の樹脂組成物は、必要に応じて、他の任意の成分である(h)成分を含んでいてもよい。他の任意の成分の例としては、有機銅化合物、有機亜鉛化合物及び有機コバルト化合物等の有機金属化合物、並びに増粘剤、消泡剤、レベリング剤、密着性付与剤、着色剤等の樹脂添加剤が挙げられる。
【0134】
第1絶縁層34には、第1配線層32に含まれる第1配線部32aの一部分を露出させるヴィアホール36が設けられている。ヴィアホール36は、発光素子10の第1電極16及び/又は第2電極18の少なくとも一部分を露出させるように設けられていてもよい。
【0135】
第1絶縁層34には、第2配線層38が設けられている。第2配線層38は、複数の第2配線部38aを含んでいる。
【0136】
第2配線層38は、ヴィアホール36に設けられるヴィアホール内配線を介して、第1配線層32(並びに第1電極16及び第2電極18)に電気的に接続されている。
【0137】
図1に示されるように、本実施形態では、第1絶縁層40のみが設けられている。しかしながら、発光素子パッケージ1は、既に説明した第1絶縁層40と同様の材料を用いて同様にして形成することができる図示されていない第2絶縁層、第3絶縁層といった複数のさらなる絶縁層(層間絶縁膜、ビルドアップ層)を備えていてもよい。
【0138】
加えて、さらなる絶縁層(第2絶縁層等)には、より下層の配線等(第1電極16、第2電極18、第1配線層32及び第2配線層38)に電気的に接続される、図示されていないさらなる配線層(第3配線層)及びさらなる配線層をより下層の配線等に電気的に接続するための図示されていないさらなるヴィアホールが設けられていてもよい。
【0139】
発光素子パッケージ1は、既に説明したとおり、発光素子10それぞれの少なくとも発光面19aを覆っており、発光面19aから出射する光を透過させることができる光透過部50を備えている。
【0140】
第1実施形態においては、光透過部50が複数の発光素子10(10a、10b及び10c)それぞれの発光面19aの直上の領域のみを覆う態様を有している。すなわち、第1実施形態においては、発光素子パッケージ1に含まれる複数の発光素子10ごとに、複数の光透過部50を有している。図示例では、第1発光素子10a、第2発光素子10b及び第3発光素子10cの発光面19aそれぞれを、3つの光透過部50が個別に覆うように設けられている。
【0141】
光透過部50は、発光素子10の発光面19aから出射する光を透過させることができる機能部である。光透過部50の可視光透過率は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。ここで、可視光透過率とは、波長380nm~780nmの光を封止部に照射したときに光が透過した割合(%)を意味している。
【0142】
光透過部50の可視光透過率は、従来公知の任意好適な分光光度計により測定することができる。具体的には、まず、光透過部50に用いられる樹脂組成物をPETフィルムなどの支持体に厚さ50マイクロメートルになるように塗布して樹脂組成物層を形成し、200℃にて90分間加熱して樹脂組成物層を熱硬化させた後、支持体を剥離することで、可視光透過率測定用シートを得る。
【0143】
次いで、得られた可視光透過率測定用シートを既に説明したファイバー式分光光度計に設置し、可視光透過率スペクトルを測定し、波長380nm~780nmにおける可視光透過率スペクトルを算出することにより光透過部50の可視光透過率を測定することができる。
なお、積分球と可視光透過率測定用シートとの距離は0mmとし、リファレンスは大気とすることができる。
【0144】
光透過部50は、上記所定の可視光透過率に加えて、所定の耐摩耗性(耐候性、耐UV性、耐水性、及び/又は耐薬品性)を備えることが好ましい。
【0145】
耐摩耗性(耐候性)の尺度としては、例えば、HAST試験における透過率を挙げることができ、例えば、130℃、85%Rh雰囲気下に100時間静置した後の波長380nm~780nmの光の透過率が、初期の透過率に対して、95%以上であることが好ましい。
【0146】
光透過部50の材料は、既に説明した好適な可視光透過率を確保できることを条件として、特に限定されない。光透過部50は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、カップリング剤、無機充填材を含む樹脂組成物を硬化した硬化物を含むことが好ましい。光透過部50の材料として用いられる樹脂組成物を硬化した硬化物の硬化収縮率は、クラック等の劣化を効果的に抑止する観点から、好ましくは2.0%以下であり、より好ましくは1.5%以下である。ここで、硬化収縮率とは、樹脂組成物が硬化した硬化体とされる過程で生じる体積の収縮の割合を意味しており、既に説明した硬化収縮率の測定方法により測定することができる。
【0147】
光透過部50は、異なる材料から構成される複数の層を含む積層構造とされていてもよい。可視光透過率は、既に説明した可視光透過率の測定方法により測定することができる。以下、光透過部50を形成するための樹脂組成物(光透過部形成用の樹脂組成物)の成分について説明する。
【0148】
<熱硬化性樹脂>
光透過部50の材料である熱硬化性樹脂の例としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド-トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂としては、低温硬化性等の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
【0149】
エポキシ樹脂は、光透過部形成用の樹脂組成物の硬化物の屈折率が1.48~1.54となるようなエポキシ樹脂であれば特に限定されない。このようなエポキシ樹脂としては、平均して1分子あたり2個以上のエポキシ基を有し、かつ、可視光透過率の高いエポキシ樹脂を使用することができる。このようなエポキシ樹脂の例としては、水素添加エポキシ樹脂(例えば、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(例えば、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体が挙げられる。
【0150】
エポキシ樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂のエポキシ当量は、その反応性等の観点から、好ましくは50~5,000であり、より好ましくは50~3,000であり、さらに好ましくは80~2,000であり、特に好ましくは100~1,500である。なお、「エポキシ当量」とは、1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K 7236に規定された方法に従って測定される値である。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは5,000以下である。
【0151】
エポキシ樹脂は、液状又は固形状のいずれでもよく、液状エポキシ樹脂と固形エポキシ樹脂とを併用してもよい。ここで、「液状」及び「固形」とは、既に説明したとおり、25℃(常温)及び大気圧(常圧)でのエポキシ樹脂の状態をいう。塗工性、加工性、接着性の観点から、使用されるエポキシ樹脂全体の10質量%以上が液状エポキシ樹脂であることが好ましい。
【0152】
光透過部形成用の樹脂組成物が含み得るエポキシ樹脂は、水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂及びアルキルフェノール型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましく、水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂及び環状脂肪族型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であることがより好ましい。このような樹脂を使用することによって、可視光に対する透明性の高い硬化物からなる光透過部50とすることができる。
【0153】
「水素添加エポキシ樹脂」とは、芳香環含有エポキシ樹脂に水素添加することにより得られるエポキシ樹脂を意味する。水素添加エポキシ樹脂の水添化率は、好ましくは50%以上であり、より好ましくは70%以上である。「鎖状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、直鎖状又は分岐状のアルキル鎖、又はアルキルエーテル鎖を有するエポキシ樹脂を意味し、「環状脂肪族型エポキシ樹脂」とは、分子内に環状脂肪族骨格、例えばシクロアルカン骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。「アルキルフェノール型エポキシ樹脂」とは、置換基として1個以上のアルキル基及び1個以上のヒドロキシ基を有するベンゼン環骨格を有し、ヒドロキシ基がグリシジルエーテル基に変換されているエポキシ樹脂を意味する。
【0154】
水素添加エポキシ樹脂としては、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましい。なお、光透過部形成用の樹脂組成物の硬化物の屈折率が上記所定の数値範囲を満たすか、又は熱硬化性樹脂全体としての屈折率が上記特定の数値範囲を満たす限りにおいては、上記好適なエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂が熱硬化性樹脂中に含まれていてもよい。
【0155】
水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂の例としては、液状水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8000」(三菱化学社製、エポキシ当量:約205)、「デナコールEX-252」(ナガセケムテックス社製、エポキシ当量:約213))、固形水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(例えば、「YX8040」(三菱化学社製、エポキシ当量:約1000))が挙げられる。
【0156】
フッ素含有エポキシ樹脂としては、例えば、WO2011/089947に記載のフッ素含有エポキシ樹脂を用いることができる。
【0157】
鎖状脂肪族型エポキシ樹脂の例としては、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-512」、「デナコールEX-521」、ナガセケムテックス社製)、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-411」、ナガセケムテックス社製)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-421」、ナガセケムテックス社製)、グリセロールポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-313」、「デナコールEX-314」、ナガセケムテックス社製)、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-321」、ナガセケムテックス社製)、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-211」、ナガセケムテックス社製)、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-212」、ナガセケムテックス社製)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-810」、「デナコールEX-811」、ナガセケムテックス社製)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-850」、「デナコールEX-851」、ナガセケムテックス社製)、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-821」、「デナコールEX-830」、「デナコールEX-832」、「デナコールEX-841」、「デナコールEX-861」、ナガセケムテックス社製)、プロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-911」、ナガセケムテックス社製)、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(例えば、「デナコールEX-941」、「デナコールEX-920」、「デナコールEX-931」、ナガセケムテックス社製)が挙げられる。
【0158】
環状脂肪族型エポキシ樹脂の例としては、ダイセル化学工業社製「EHPE-3150」が挙げられる。
【0159】
アルキルフェノール型エポキシ樹脂の例としては、DIC社製「HP-820」;新日鉄住金化学工業社製「YDC-1312」;ナガセケムテックス社製「EX-146」が挙げられる。
【0160】
一態様において、分子内に芳香環を含有するエポキシ樹脂(芳香環含有エポキシ樹脂)を含むことが好ましい。熱硬化性樹脂の屈折率は例えば、臨界角法やプリズムカプラ法、分光エリプソメトリー法を用いて測定することができる。分子内に芳香環構造を含むエポキシ樹脂を用いれば、樹脂組成物の反応性、硬化物のガラス転移温度、密着性のいずれか又は全てが向上する傾向となるため好ましい。このような熱硬化性樹脂の例としては、アルキルフェノール型エポキシ樹脂、フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0161】
また、さらに別の一態様において、熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂(a1)(以下「樹脂(a1)」という。)、及び芳香環含有エポキシ樹脂(a2)(以下「樹脂(a2)」という。)を含む。樹脂(a1)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。同様に、樹脂(a2)は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0162】
芳香環含有エポキシ樹脂を用いれば、反応性、並びに硬化物のガラス転移温度及び密着性のいずれか又は全てを向上させる傾向とできる。樹脂(a1)と樹脂(a2)とを組み合わせて用いれば、樹脂組成物の反応性並びに硬化物のガラス転移温度及び密着性の向上を、両立させることができる。
【0163】
樹脂(a1)及び樹脂(a2)の合計の含有量は、上記効果が達成される範囲であれば特に限定されない。樹脂(a1)及び樹脂(a2)の合計の含有量は、熱硬化性樹脂全体あたり、好ましくは60~100質量%であり、より好ましくは70~100質量%であり、さらに好ましくは80~100質量%であり、特に好ましくは90~100質量%であり、最も好ましく100質量%である。
【0164】
樹脂(a1)としては、エポキシ樹脂であれば特に限定されない。このような屈折率を有するエポキシ樹脂は、一般に、芳香環構造を含まないことが多い。樹脂(a1)は、好ましくは水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、鎖状脂肪族型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂及びアルキルフェノール型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上である。
【0165】
樹脂(a2)としては、芳香環を含むエポキシ樹脂であれば特に限定されない。反応性、硬化物のガラス転移温度及び又は密着性の向上の観点から、樹脂(a2)は、好ましくは、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂及びフッ素含有芳香族型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上である。また芳香環含有エポキシ樹脂である芳香環含有エポキシ樹脂も、樹脂(a2)として用いることができる。
【0166】
ここで、「ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂」とは、ノボラック構造及び2価のビフェニル構造が結合した主鎖を有するエポキシ樹脂を意味する。「フルオレン型エポキシ樹脂」とは、フルオレン骨格を有するエポキシ樹脂を意味する。「フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂」とは、芳香環を含むフッ素含有エポキシ樹脂を意味する。フッ素含有芳香族型エポキシ樹脂としては、例えば、国際公開第2011/089947号公報に記載のフッ素含有芳香族型エポキシ樹脂を用いることができる。
【0167】
樹脂(a1)及び樹脂(a2)を併用する態様において、樹脂(a1)は、より好ましくは水素添加エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂及びアルキルフェノール型エポキシ樹脂であり、さらに好ましくは水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂及びフッ素含有エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であり、特に好ましくは水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であり、最も好ましくは水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂である。また、前記態様において、樹脂(a2)は、より好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂及びフッ素含有芳香族型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上であり、さらに好ましくはビスフェノール型エポキシ樹脂であり、さらに好ましくはビスフェノールA型エポキシ樹脂及びビスフェノールF型エポキシ樹脂から選ばれる1種以上である。
【0168】
樹脂(a1)及び樹脂(a2)を併用する態様において、樹脂(a2)の量は、樹脂(a1)及び樹脂(a2)の合計あたり、0.5~40質量%が好ましく、1~35質量%がより好ましく、2~30質量%がさらに好ましい。
【0169】
ビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「828EL」、「1001」及び「1004AF」;DIC社製「840」及び「850-S」;日鉄ケミカル&マテリアル社製「YD-128」が挙げられる。また、液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂及び液状ビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合物としては、例えば、日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX-1059」(エポキシ当量:約165)が挙げられる。
【0170】
ビスフェノールF型エポキシ樹脂としては、例えば、三菱ケミカル社製「807」;DIC社製「830」;日鉄ケミカル&マテリアル社製「YDF-170」が挙げられる。
【0171】
フェノールノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、DIC社製「N-730A」、「N-740」、「N-770」及び「N-775」;三菱ケミカル社製「152」及び「154」が挙げられる。
【0172】
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂としては、例えば、日本化薬社製「NC-3000」、「NC-3000L」及び「NC-3100」が挙げられる。
【0173】
フルオレン型エポキシ樹としては、例えば、大阪ガスケミカル社製「OGSOL PG-100」、「CG-500EG-200」及び「EG-280」が挙げられる。
【0174】
熱硬化性樹脂の量は、不揮発成分全体あたり、10~95質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、30~85質量%がさらに好ましい。
【0175】
エポキシ樹脂の量は、不揮発成分全体あたり、10~95質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、30~85質量%がさらに好ましい。
【0176】
<硬化剤及び硬化促進剤>
光透過部形成用の樹脂組成物は、硬化剤を含有する。すなわち光透過部50は、光透過部形成用の樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物である。硬化剤は、光透過部形成用の樹脂組成物を硬化する機能を有するものであれば特に限定されない。硬化処理時における熱劣化を抑制する観点から、硬化剤としては、200℃以下(好ましくは180℃以下)の温度下で、光透過部形成用の樹脂組成物を硬化し得る硬化剤が好ましい。硬化剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0177】
以下、熱硬化性樹脂として特に好ましいエポキシ樹脂の硬化剤について説明する。このような硬化剤としては、例えば、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、アミンアダクト化合物、有機酸ジヒドラジド化合物、有機ホスフィン化合物、ジシアンジアミド化合物、1級アミン又は2級アミン系化合物が挙げられる。
【0178】
硬化剤は、好ましくはイオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物及びアミンアダクト化合物から選ばれる1種以上であり、より好ましくはイオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、及びジメチルウレア化合物から選ばれる1種以上である。
【0179】
硬化剤としては、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度条件下で熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)を硬化し得るイオン液体、すなわち、140℃以下(好ましくは120℃以下)の温度領域で融解しうる塩であって、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)の硬化作用を有する塩が好ましい。イオン液体は、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)に均一に溶解している状態で使用されることが望ましい。
【0180】
本発明における硬化剤としてのイオン液体を構成するカチオンとしては、例えば、イミダゾリウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピラゾニウムイオン、グアニジニウムイオン、ピリジニウムイオン等のアンモニウム系カチオン;テトラアルキルホスホニウムカチオン(例えば、テトラブチルホスホニウムイオン、トリブチルヘキシルホスホニウムイオン)等のホスホニウム系カチオン;トリエチルスルホニウムイオン等のスルホニウム系カチオンが挙げられる。
【0181】
硬化剤としてのイオン液体を構成するアニオンとしては、例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物系アニオン;メタンスルホン酸イオン等のアルキル硫酸系アニオン;トリフルオロメタンスルホン酸イオン、ヘキサフルオロホスホン酸イオン、トリフルオロトリス(ペンタフルオロエチル)ホスホン酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、トリフルオロ酢酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン等の含フッ素化合物系アニオン;フェノールイオン、2-メトキシフェノールイオン、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオン等のフェノール系アニオン;アスパラギン酸イオン、グルタミン酸イオン等の酸性アミノ酸イオン;グリシンイオン、アラニンイオン、フェニルアラニンイオン等の中性アミノ酸イオン;N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオン等の下記式(IV)で示されるN-アシルアミノ酸イオン;ギ酸イオン、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸系アニオンが挙げられる。
【0182】
上述の中でも、カチオンとしては、アンモニウム系カチオン、ホスホニウム系カチオンが好ましく、イミダゾリウムイオン、ホスホニウムイオンがより好ましい。イミダゾリウムイオンは、より具体的には、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムイオン等である。
【0183】
また、アニオンとしては、フェノール系アニオン、N-アシルアミノ酸イオン又はカルボン酸系アニオンが好ましく、N-アシルアミノ酸イオン又はカルボン酸系アニオンがより好ましい。
【0184】
フェノール系アニオンの具体例としては、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールイオンが挙げられる。また、カルボン酸系アニオンの具体例としては、酢酸イオン、デカン酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、α-リポ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオンが挙げられ、中でも、酢酸イオン、2-ピロリドン-5-カルボン酸イオン、ギ酸イオン、乳酸イオン、酒石酸イオン、馬尿酸イオン、N-メチル馬尿酸イオンが好ましく、酢酸イオン、デカン酸イオン、N-メチル馬尿酸イオン、ギ酸イオンがより好ましい。また、N-アシルアミノ酸イオンの具体例としては、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、アスパラギン酸イオン、グリシンイオン、N-アセチルグリシンイオンが挙げられ、中でも、N-ベンゾイルアラニンイオン、N-アセチルフェニルアラニンイオン、N-アセチルグリシンイオンが好ましく、N-アセチルグリシンイオンがより好ましい。
【0185】
具体的なイオン液体としては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム-2-ピロリドン-5-カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα-リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N-メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル-DL-アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L-アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)塩、N-アセチルグリシン1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が好ましく、テトラブチルホスホニウムデカノエート、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩がより好ましい。
【0186】
上記イオン液体の合成法としては、例えば、アルキルイミダゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルアンモニウム及びアルキルスルホニウムイオン等のカチオン部位と、ハロゲンを含むアニオン部位から構成される前駆体とに、NaBF、NaPF、CFSONaやLiN(SOCF等を反応させるアニオン交換法、アミン系物質と酸エステルとを反応させてアルキル基を導入しつつ、有機酸残基が対アニオンになるような酸エステル法、及びアミン類を有機酸で中和して塩を得る中和法が挙げられる。しかしながら、これらに限定されない。アニオンとカチオンと溶媒による中和法では、アニオンとカチオンとを等量使用し、得られた反応液中の溶媒を留去して、そのまま用いることも可能であるし、さらに有機溶媒(メタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン等)を差し液濃縮してもよい。
【0187】
硬化剤としての酸無水物化合物としては、例えば、テトラヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物が挙げられる。酸無水物化合物の具体例としては、リカシッドTH、TH-1A、HH、MH、MH-700、MH-700G(いずれも新日本理化社製)が挙げられる。
【0188】
硬化剤及び硬化促進剤としてのイミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチル-イミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)-イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-イミダゾール、2-ドデシル-イミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチル-イミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)が挙げられる。
【0189】
光透過部形成用の樹脂組成物は、硬化剤に加え、硬化時間を調整する等の目的で硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。硬化促進剤として、熱硬化性樹脂として特に好ましいエポキシ樹脂の硬化促進剤につき、例示する。硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、及びアミンアダクト化合物が挙げられる。硬化促進剤は、好ましくはイミダゾール化合物、3級アミン系化合物、及びジメチルウレア化合物から選ばれる1種以上である。
【0190】
硬化剤及び硬化促進剤としての3級アミン系化合物の具体例としては、DBN(1,5-diazabicyclo[4.3.0]non-5-ene)、DBU(1,8-diazabicyclo[5.4.0]undec-7-ene)、DBUの2-エチルヘキサン酸塩、DBUのフェノール塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、U-CAT SA 102(サンアプロ社製:DBUのオクチル酸塩)、DBUのギ酸塩等のDBU-有機酸塩、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)等が挙げられる。
【0191】
硬化剤及び硬化促進剤としてのジメチルウレア化合物の具体例としては、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレアが挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0192】
硬化剤及び硬化促進剤としてのアミンアダクト化合物としては、例えば、エポキシ樹脂への3級アミンの付加反応を途中で止めることによって得られるエポキシアダクト化合物が挙げられる。アミンアダクト系化合物の具体例としては、アミキュアPN-23、アミキュアMY-24、アミキュアPN-D、アミキュアMY-D、アミキュアPN-H、アミキュアMY-H、アミキュアPN-31、アミキュアPN-40、アミキュアPN-40J(いずれも味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
【0193】
硬化剤としての有機酸ジヒドラジド化合物の具体例としては、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアLDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。
【0194】
硬化剤及び硬化促進剤としての有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボランが挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(北興化学工業社製)が挙げられる。
【0195】
硬化剤としてのジシアンジアミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。ジシアンジアミド化合物の具体例としては、ジシアンジアミド微粉砕品であるDICY7、DICY15(いずれも三菱化学社製)が挙げられる。
【0196】
硬化剤としての1級アミン、2級アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミンであるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ジプロプレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等、脂環式アミンであるN-アミノエチルピベラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等、芳香族アミンである、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミンが挙げられる。1級アミン、2級アミン系化合物の具体例としては、カヤハードA-A(日本化薬社製:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン)が挙げられる。
【0197】
硬化剤の量は、不揮発成分全体あたり、0.1~40質量%が好ましく、0.5~38質量部がより好ましく、1~35質量部がさらに好ましい。この量が0.1質量%よりも少ないと、十分な硬化性が得られないおそれがあり、この量が40質量%より多いと、保存安定性が損なわれることがある。なお、硬化剤としてイオン液体を使用する場合、硬化物の水分遮断性等の観点から、イオン液体の量は、樹脂組成物の不揮発成分全体あたり、0.1~20質量%が好ましく、0.5~18質量%がより好ましく、1~15質量%がさらに好ましい。
【0198】
硬化促進剤を含む場合には、硬化促進剤の量は、樹脂組成物の不揮発成分全体あたり、0.05~10質量%が好ましく、0.1~8質量%がより好ましく、0.5~5質量%がさらに好ましい。硬化促進剤の量が0.05質量%未満であると、硬化が遅くなり熱硬化時間が長くなる傾向にあり、10質量%を超えると樹脂組成物の保存安定性が低下する傾向となる。
【0199】
硬化剤と硬化促進剤とは組み合わせて使用することが好ましい。硬化剤及び硬化促進剤の組み合わせとしては、イオン液体、酸無水物化合物、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、及びアミンアダクト化合物から選ばれる2種以上の組み合わせが好ましい。
【0200】
<熱可塑性樹脂>
光透過部50に対する可撓性の付与、光透過部50を形成するための樹脂組成物(ワニス)の塗工性(はじき防止)等の観点から、樹脂組成物には、さらに熱可塑性樹脂を含有させてもよい。
【0201】
熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、(メタ)アクリル系ポリマー、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂、ブテン系樹脂、イソブチレン系樹脂、等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また単独重合体でもよく、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体でもよい。熱可塑性樹脂は、優れた物性(例えば、接着性等)を光透過部に付与する観点から、好ましくは酸無水物基やグリシジル基を有していてもよい。
【0202】
光透過部50への可撓性の付与、樹脂組成物の塗工性(はじき防止)等の観点から、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、500以上であることが好ましく、700以上であることがより好ましい。熱可塑性樹脂の重量平均分子量が大きすぎると、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂(特に、エポキシ樹脂)との相溶性が低下する傾向がある。そのため、熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、1,000,000以下であることが好ましく、800,000以下であることがより好ましい。
【0203】
熱可塑性樹脂は、光透過部形成用の樹脂組成物の硬化物の屈折率が1.48~1.54となるような熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。熱可塑性樹脂の屈折率は、好ましくは1.40~1.70であり、より好ましくは1.40~1.65である。複数種類の熱可塑性樹脂を用いる場合には、熱可塑性樹脂の混合物全体の屈折率が上記範囲内であることが好ましい。
【0204】
熱可塑性樹脂としては、熱硬化性樹脂(特にエポキシ樹脂)との相溶性がよく、光透過部形成用樹脂組成物の硬化物の水分遮断性の向上に有利に作用し得る、フェノキシ樹脂が好ましい。
【0205】
フェノキシ樹脂も、エポキシ樹脂と同様に、エポキシ基を有し得る。フェノキシ樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000~500,000であり、より好ましくは20,000~300,000である。
【0206】
好適なフェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、及びノルボルネン骨格から選択される1種以上の骨格を含むフェノキシ樹脂が挙げられる。フェノキシ樹脂は1種又は2種以上を使用することができる。
【0207】
フェノキシ樹脂の市販品としては、例えば、YX7200B35(三菱化学社製:ビフェニル骨格含有フェノキシ樹脂)、1256(三菱化学社製:ビスフェノールA骨格含有フェノキシ樹脂)、YX6954BH35(三菱化学社製:ビスフェノールアセトフェノン骨格含有フェノキシ樹脂)が挙げられる。
【0208】
熱可塑性樹脂の含有量は、不揮発成分全体あたり、0.1~60質量%であり、3~60質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。
【0209】
<カップリング剤>
光透過部形成用の樹脂組成物は、カップリング剤を含有していてもよい。カップリング剤としては、シランカップリング剤、アルミネートカップリング剤、チタネートカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル(ジメトキシ)メチルシラン及び2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ系シランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン及び11-メルカプトウンデシルトリメトキシシラン等のメルカプト系シランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン及びN-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のアミノ系シランカップリング剤;3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド系シランカップリング剤;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン及びビニルメチルジエトキシシラン等のビニル系シランカップリング剤;p-スチリルトリメトキシシラン等のスチリル系シランカップリング剤;3-アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及び3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のアクリレート系シランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等のイソシアネート系シランカップリング剤;ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等のスルフィド系シランカップリング剤;フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシランを挙げることができる。これらの中でも、ビニル系シランカップリング剤、エポキシ系シランカップリング剤が好ましく、エポキシ系シランカップリング剤が特に好ましい。アルミネートカップリング剤としては、例えば、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート(例えば、「プレンアクトAL-M」味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。チタネート系カップリング剤の具体例としては、プレンアクトTTS、プレンアクト46B、プレンアクト55、プレンアクト41B、プレンアクト38S、プレンアクト138S、プレンアクト238S、プレンアクト338X、プレンアクト44、プレンアクト9SA(いずれも味の素ファインテクノ社製)が挙げられる。カップリング剤は1種又は2種以上を使用することができる。
【0210】
カップリング剤の量は、不揮発成分全体あたり、0~15質量%が好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。
【0211】
<無機充填材>
光透過部形成用の樹脂組成物は、その硬化物の水分遮断性、樹脂組成物の塗工性(はじき防止)等の観点から、無機充填材を含有させることができる。そのような無機充填材としては、特に光透過部50の光透過性を確保する観点から、透明性(可視光透過率)が高い(屈折率が小さい)材料を用いることが好ましく、具体的には、例えば、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、クレー、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、酸化ジルコニウム、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム、ケイ酸塩、半焼成ハイドロタルサイト、焼成ハイドロタルサイト、未焼成ハイドロタルサイトが挙げられる。無機充填材は1種又は2種以上を使用できる。なお、無機充填材の一次粒子の粒経は、光透過部50の光透過性を確保する観点から、5μm以下が好ましく、さらには3μm以下が好ましい。例えば、一次粒子の粒経が0.001~3μmであり、より好ましくは0.005~2μmである無機充填材を用いることができる。
【0212】
無機充填材の粒子形態は特に限定されず、略球状、直方体状、板状、繊維のような直線形状、分岐形状の無機充填材を用いることができる。無機充填材は、タルク、シリカ、ゼオライト、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、ケイ酸塩、マイカ、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が好ましく、タルク、シリカがより好ましく、タルクが特に好ましい。シリカとしては、無定形シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、合成シリカ湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカ(水分散型、有機溶剤分散型、気相シリカ等)が好ましく、沈殿、沈降しにくく、樹脂との複合化がしやすいという観点から、有機溶剤分散型コロイダルシリカ(オルガノシリカゾル)が特に好ましい。
【0213】
無機充填材は、市販品を使用できる。タルクの例として、日本タルク社製「FG-15」(平均粒径1.4μm)、「D-1000」(平均粒径1.0μm)、「D-600」(平均粒径0.6μm)が挙げられる。市販されている球状溶融シリカの例として、アドマテックス社製の真球シリカ「アドマファインシリーズ」(「SO-C2;平均粒径0.5μm」、「SC2500-SQ;平均粒子径0.5μm、シランカップリング処理」等)が挙げられる。フュームドシリカの例として、日本アエロジル(株)製の「アエロジルシリーズ」(「A-200:一次粒子径5~40nm」等)が挙げられる。有機溶剤分散型コロイダルシリカの例として、日産化学工業社製「MEK-EC-2130Y」(アモルファスシリカ粒径10~15nm、不揮発成分30質量%、MEK溶剤)、日産化学工業社製「PGM-AC-2140Y」(シリカ粒径10~15nm、不揮発成分40質量%、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)溶剤)、日産化学工業社製「MIBK-ST」(シリカ粒径10~15nm、不揮発成分30質量%、MIBK(メチルイソブチルケトン)溶剤)、扶桑化学工業社製コロイド状シリカゾル「PL-2L-MEK」(シリカ粒径15~20nm、不揮発成分20質量%、MEK(メチルエチルケトン)溶剤)が挙げられる。
【0214】
<その他の添加剤>
光透過部形成用の樹脂組成物は、本発明の効果が発揮される範囲であれば、上述の成分とは異なるその他の添加剤をさらに含有していてもよい。このようなその他の添加剤としては、例えば、ゴム粒子、シリコーンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素樹脂パウダー等の有機充填材;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤又はレベリング剤;トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤;を挙げることができる。
【0215】
(2)第2実施形態
図2を参照して、本発明の第2実施形態にかかる発光素子パッケージの構成例について説明する。
図2は、図1と同様にして示す第2実施形態の発光素子パッケージの切断端面を示す概略的な図である。
【0216】
図2に示されるとおり、第2実施形態の発光素子パッケージ1は、光透過部50が複数の発光素子10(10a、10b及び10c)にまたがる1枚の板状に構成されており、複数の発光素子10の複数の発光面19の直上の領域を一体的に覆う態様を有している。
【0217】
第2実施形態にかかる発光素子パッケージ1は、光透過部50の態様が上記のとおりとされている以外は、既に説明した第1実施形態の発光素子パッケージ1の構成と同様であり、構成要素それぞれの材料等についても同様であるので、第2実施形態にかかる発光素子パッケージ1の構成要素及びその材料等についての詳細な説明は省略する。
【0218】
(3)第3実施形態
図3を参照して、本発明の第3実施形態にかかる発光素子パッケージの構成例について説明する。
図3は、図1と同様にして示す第3実施形態の発光素子パッケージの切断端面を示す概略的な図である。
【0219】
図3に示されるとおり、第3実施形態の発光素子パッケージ1は、複数の光透過部50それぞれが、複数の発光素子10(10a、10b及び10c)それぞれを、発光面19a及び発光面19aを画成する発光素子10の側面を覆うように埋め込む態様を有している。
【0220】
第3実施形態にかかる発光素子パッケージ1は、光透過部50の態様が上記のとおりとされている以外は、既に説明した第1実施形態の発光素子パッケージ1の構成と同様であり、構成要素それぞれの材料等についても同様であるので、第3実施形態にかかる発光素子パッケージ1の構成要素及びその材料等についての詳細な説明は省略する。
【0221】
2.発光素子パッケージの製造方法
図4A図4B図4C図4D図4E及び図4Fを参照して、本発明の実施形態にかかる発光素子パッケージ1の製造方法について説明する。
【0222】
図4A図4B図4C図4D図4E及び図4Fは、発光素子パッケージの製造方法を説明するための概略的な図である。
【0223】
以下、既に説明した第1実施形態にかかる発光素子パッケージ1を例にとって、その製造方法について説明する。
【0224】
発光素子パッケージ1の製造方法は、第1電極及び第2電極を備えており、光を出射する発光面を有する複数個の発光素子を、前記発光面が露出するように配列して、少なくとも前記発光面を覆うように、光透過部を形成する工程(工程(1))と、
複数個の前記発光素子及び前記光透過部を埋め込む前駆光学補助層を形成する工程(工程(2))と、
前記第1電極及び/又は前記第2電極に電気的に接続されている複数の配線を含む1層以上の配線層を含む配線構造部を形成する工程(工程(3))と、
前記前駆光学補助層を厚さ方向に研削して、前記光透過部のうちの少なくとも前記発光面上の領域を露出させる光学補助層を形成する工程(工程(4))とを含む。
以下、本実施形態の発光素子パッケージの製造方法が含み得る各工程について具体的に説明する。
【0225】
-工程(1)-
工程(1)は、第1電極及び第2電極を備えており、光を出射する発光面を有する複数個の発光素子を、前記発光面が露出するように配列して、少なくとも前記発光面を覆うように、光透過部を形成する工程である。
【0226】
図4Aに示されるとおり、まず、第1接着層64aと、第1接着層64aが積層された第1基材62aを含む積層構造体である第1の支持体60Aと、複数個の発光素子10を用意する。
【0227】
第1の支持体60Aは、従来公知の発光素子パッケージの製造方法に適用することができる従来公知の任意好適な第1基材62a及び第1接着層64aにより構成することができる。
【0228】
第1基材62aは、具体的には、対向する2つの主表面を有する板状体であることが好ましい。第1基材62aの材料、形状及びサイズは、製造される発光素子パッケージ1の設計に応じて決定することができ、所定の発光素子パッケージ1を製造できることを条件として、特に限定されない。
【0229】
第1基材62aの材料は、後述する製造工程において適用される温度、圧力、雰囲気等の条件に耐えられることを条件として、限定されない。第1基材62aは、製造工程において反りの発生しない程度の強度(硬さ)を有するリジッドな基板であることが好ましい。第1基材62aとしては、例えば、ガラス基板、鉄板、ステンレス基板などの金属基板、ポリイミド樹脂基板が挙げられる。第1基材62aとしては、入手性、取り扱い性、平坦性の確保などの観点から、ガラス基板を用いることが好ましい。
【0230】
第1接着層64aは、図示例では、第1基材62aの一方の主表面の全面に設けられている。第1接着層64aは、複数の発光素子10を接着し、固定して発光素子10を第1基材62aに位置決めして搭載することができ、製造工程終了後に剥離及び除去することができることを条件として、第1基材62aの一部分のみに設ける態様としてもよい。第1接着層64aの厚さは、複数の発光素子10を第1基材62a上に接着して固定できることを条件として特に限定されない。
【0231】
第1接着層64aの材料は、発光素子10を第1接着層64aの表面あるいは厚さ内に接着して保持することができ、かつ所定の工程の工程において剥離及び除去することができる(着脱自在である)程度の粘度(接着性)を有することを条件として特に限定されない。第1接着層64aの材料としては、例えば耐熱性、耐候性、難燃性、電気絶縁性、耐寒性、粘度などの特性に優れるシリコーン粘着剤、フッ素系粘着剤を用いることができる。第1接着層64aの材料としては、硬化時間が短く、硬化収縮がほとんどないことから、シリコーン粘着剤を用いることが好ましく、中でも付加反応型の液状シリコーン粘着剤を用いることが好ましい。第1接着層64aの材料は、発光素子10、ひいては発光素子パッケージ1の機能を損なわないことを条件として、例えば、加熱処理等の任意好適な従来公知の処置により、第1接着層64a、ひいては第1の支持体60Aを剥離及び除去できる材料であってもよい。
【0232】
ここで、第1基材62aとその表面に接合している第1接着層64aとを含む第1の支持体60Aの製造方法の例について説明する。
【0233】
本実施形態の第1の支持体60Aは、第1基材62aと、第1基材62aに接合している第1接着層64aとを含む。
【0234】
第1基材62aとしては、従来公知の任意好適な基板、フィルム等を用いることができる。
【0235】
第1の支持体60Aは、例えば、有機溶剤に材料を溶解した樹脂ワニス(樹脂組成物)を調製し、この樹脂ワニスを、ダイコーター等を用いて支持体64Xに塗布し、さらに乾燥させて樹脂組成物層を形成することにより製造することができる。
【0236】
樹脂組成物層の形成に用いられる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)及びシクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びカルビトールアセテート等の酢酸エステル類;セロソルブ及びブチルカルビトール等のカルビトール類;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド(DMAc)及びN-メチルピロリドン等のアミド系溶剤が挙げられる。有機溶剤は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0237】
次いで、用意された第1の支持体60Aの第1接着層64aの表面に、所定の位置に位置決めして、用途に応じた所定の個数の発光素子10(第1発光素子10a、第2発光素子10b及び第3発光素子10c)を、発光素子10の少なくとも第1電極16及び第2電極18が接触するように、すなわちフェイスダウン型に配置して搭載する。これにより図4Aに示される製造中途の構造体100を得ることができる。
【0238】
次いで、光透過部を形成する工程が行われる。
図4Aに示されるとおり、図示例では、複数の発光素子10(第1発光素子10a、第2発光素子10b及び第3発光素子10c)の複数の発光面19aを個別に覆うように複数の光透過部50が形成される。
【0239】
光透過部50を形成する工程は、既に説明した第1の支持体60Aへの発光素子10の搭載工程を実施した後に実施してもよく、又は実施する前に、予め、発光素子10の発光面19a上に光透過部50を形成しておいてもよい。
【0240】
光透過部50は、選択された材料に対応した任意好適な従来公知の任意好適な形成方法により形成することができる。光透過部50は、具体的には例えば、既に説明した光透過部50を形成するための光透過部形成用の樹脂組成物を発光素子10の発光面19aに直接的に塗布し、(加熱)乾燥して当該樹脂組成物を硬化した硬化体とすることにより、形成することができる。
【0241】
また、光透過部50は、既に説明した光透過部形成用の樹脂組成物からなる樹脂組成物層が、任意好適な従来公知の支持体上に接合された積層構造体であるいわゆる接着シートを用いて、当該樹脂組成物層を、発光素子10の発光面19aに転写し、(加熱)乾燥して当該樹脂組成物を硬化した硬化体とすることにより、形成することもできる。
【0242】
光透過部50を形成するための接着シートに用いられる支持体としては、例えば、従来公知の任意好適な基板、フィルム等を用いることができる。
【0243】
光透過部50を形成するための接着シートは、既に説明した材料、支持体を用いて、既に説明した第1の支持体60Aの製造方法と同様にして製造することができる。
【0244】
特に既に説明した第3実施形態の発光素子パッケージ1の態様とする場合には、光透過部50を形成するにあたり、複数の光透過部50それぞれが、複数の発光素子10(10a、10b及び10c)それぞれを、発光面19a及び発光面19aを画成する発光素子10の側面を覆っており、第1電極16及び第2電極18の少なくとも一部分を露出させるように形成しておくことが好ましい。
【0245】
具体的には、例えば、まず第1の支持体60Aに搭載された複数の発光素子10を、既に説明した光透過部形成用の樹脂組成物で一体的に埋め込む樹脂組成物層を形成し、当該樹脂組成物に好適な方法によって硬化した硬化体とする。
【0246】
次いで、光透過部形成用の樹脂組成物からなる樹脂組成物層を硬化した硬化体を、例えば、フォトリソグラフィ工程及び引き続いて行われるエッチング工程を含む従来公知の任意好適なパターニング工程を実施することにより、複数の光透過部50それぞれが、複数の発光素子10(10a、10b及び10c)それぞれを、発光面19a及び発光面19aを画成する発光素子10の側面を覆うように埋め込むようにパターニングする。
このようにして、図3に示される態様の複数の光透過部50を形成することができる。
【0247】
-工程(2)-
工程(2)は、複数個の発光素子及び光透過部を埋め込む前駆光学補助層を形成する工程である。
【0248】
図4Bに示されるとおり、具体的には、複数個の発光素子10が配置された第1の支持体60Aに、複数個の発光素子10を一体的に埋め込んで、第1接着層64aを覆う前駆光学補助層20Xを形成する。
【0249】
工程(2)は、具体的には、工程(2A)図示されていない支持体と、当該支持体に接合されている前駆光学補助層20X(光学補助層20)を形成するための樹脂組成物からなる樹脂組成物層とを含む前駆光学補助層形成用の接着シートを準備し、工程(2B)当該接着シートを第1接着層64aと接合するようにラミネートし、工程(2C)前駆光学補助層形成用の樹脂組成物層を硬化させることにより行うことができる。以下、工程(2A)~工程(2C)について具体的に説明する。
【0250】
工程(2A)
まず、接着シートを準備する。工程(2A)で準備する接着シート、すなわち支持体及び当該支持体に積層された前駆光学補助層形成用の樹脂組成物からなる樹脂組成物層については、既に説明した材料を用いて、既に説明した第1の支持体60Aと同様にして形成することができる。
【0251】
工程(2B)
次いで、工程(2B)として、形成された接着シートを、前駆光学補助層形成用の樹脂組成物層が発光素子10、光透過部50及びその表面50aを埋め込むように、かつ第1接着層64aと接合するようにラミネートする工程を行う。
【0252】
このラミネート工程は、例えば、接着シートの樹脂組成物層を複数の発光素子10及び第1接着層64aに一体的に接合させた状態で、従来公知の任意好適な部材を用いて加熱圧着することにより行うことができる。加熱圧着に用いられる部材の例としては、加熱された金属板(SUS鏡板等)、金属ロール(SUSロール)が挙げられる。なお、部材を接着シートに直接的に接触させて押圧するのではなく、耐熱ゴム等の弾性材をさらに介して押圧してもよい。
【0253】
ラミネート工程は、例えば真空ラミネート法により実施することができる。真空ラミネート法における加熱圧着温度等の実施条件は、支持体、樹脂組成物層、発光素子10及び第1接着層64aの耐熱性といった特性に応じて任意好適な条件とすることができる。
【0254】
ラミネート工程は、市販の真空ラミネーターによって行うことができる。市販の真空ラミネーターとしては、例えば、名機製作所社製の真空加圧式ラミネーター、ニッコー・マテリアルズ社製のバキュームアプリケーターが挙げられる。
【0255】
ラミネート工程の後に、例えば、加熱圧着部材で接着シートを再度押圧することにより、樹脂組成物層をより平滑にする平滑化処理を行ってもよい。平滑化処理の条件は、ラミネート工程の条件と同様の条件とすることができる。平滑化処理は、市販の上記真空ラミネーターを用いて行うことができ、上記ラミネート工程と連続的に行ってもよい。
【0256】
工程(2C)
次いで、前駆光学補助層形成用の樹脂組成物層を硬化する工程が行われる。
【0257】
前駆光学補助層形成用の樹脂組成物層の硬化条件は特に限定されない。硬化条件は、樹脂組成物の選択された材料によって任意好適な条件とすることができる。
【0258】
光学補助層形成用の樹脂組成物層を硬化する前に、上記硬化条件における温度よりも低い温度にて予備的に加熱処理をしてもよい。例えば、硬化のための加熱処理に先立ち、50℃以上120℃未満(好ましくは60℃以上115℃以下、より好ましくは70℃以上110℃以下)の温度にて、5分間以上(好ましくは5分間~150分間、より好ましくは15分間~120分間、さらに好ましくは15分間~100分間)予備加熱してもよい。
【0259】
硬化する工程の終了後、光学補助層形成用の支持体を、剥離して除去する。
図4Bに示されるとおり、以上の工程より、発光素子10、第1電極16及び第2電極18、並びに光透過部50及び表面50aを埋め込む前駆光学補助層20Xが形成される。
【0260】
-工程(3)-
工程(3)は、第1電極及び/又は第2電極に電気的に接続されている複数の配線を含む1層以上の配線層を含む配線構造部を形成する工程である。
【0261】
図4Cに示されるように、まず、形成された前駆光学補助層20Xの露出している主表面を覆うように、第2基材62bと、第2基材62bに接合している第2接着層64bを備える第2の支持体60Bが設けられる。
【0262】
第2の支持体60Bの構成要素及び形成方法については、第1の支持体60Aと同様であり、具体的には、第2基材62bは第1基材62aに対応しており、第2接着層64bは第1接着層64aに対応しているため、詳細な説明は省略する。なお、第1の支持体60Aと第2の支持体60Bは、同一の構成であっても、互いに異なる材料により構成されていてもよく、厚さが異なるなどの互いに異なる構成であってもよい。
以上の工程により図4Cに示される製造中途の構造体100を得ることができる。
【0263】
次に、第1の支持体60Aを剥離して除去する。具体的には、第1の支持体60Aに含まれる第1基材62a及び/又は第1接着層64aの特性に応じた従来公知の任意好適な方法により剥離及び除去すればよい。例えば、第1接着層64aが所定の温度での加熱処理により粘着性が失われるか低減する特性を有する場合には、当該加熱処理を行うことにより剥離及び除去を行うことができる。
【0264】
図4(D)に示されるように、次いで、第1の支持体60Aが除去されたことにより露出した前駆光学補助層20Xの主表面であって、第2の支持体60Bが設けられている主面と対向している前駆光学補助層20Xの主表面に、複数の第1配線部32aを含む第1配線層32を形成する。第1配線層32は、いわゆる再配線層であってよく、第1配線部32a、すなわち第1配線層32は、発光素子10の第1電極16又は第2電極18に、直接的に接続されていてもよい。
【0265】
第1配線層32を形成するにあたり、露出した前駆光学補助層20Xの主表面を粗化処理する工程を実施してもよい。
【0266】
かかる粗化処理の手順、条件は特に限定されず、例えば、プリント配線板の絶縁層を形成するにあたり通常使用される従来公知の任意好適な工程、条件を採用することができる。
【0267】
具体的には、例えば、膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理、中和液による中和処理をこの順に実施して絶縁層を粗化処理することができる。
【0268】
膨潤液は特に限定されない。膨潤液の例としては、アルカリ溶液、界面活性剤溶液が挙げられ、アルカリ溶液が好適に用いられる。アルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液が好ましい。
【0269】
市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「スウェリング・ディップ・セキュリガンスP」、「スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU」が挙げられる。
【0270】
膨潤液による膨潤処理は、特に限定されない。膨潤処理は、例えば、30℃~90℃の膨潤液に前駆光学補助層20Xを1分間~20分間浸漬することにより行うことができる。
【0271】
膨潤を適度なレベルに抑える観点から、40℃~80℃の膨潤液に5分間~15分間浸漬させることが好ましい。
【0272】
酸化剤は、特に限定されない。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸溶液等の酸化剤による粗化処理は、60℃~80℃に加熱した酸化剤溶液に10分間~30分間浸漬させて行うことが好ましい。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5質量%~10質量%が好ましい。
【0273】
市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「コンセントレート・コンパクトCP」、「ドージングソリューション・セキュリガンスP」等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
【0274】
中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、例えば、アトテックジャパン(株)製の「リダクションソリューション・セキュリガンスP」が挙げられる。中和液による処理は、酸化剤による粗化処理がなされた処理面を30℃~80℃の中和液に5分間~30分間浸漬させることにより行うことができる。作業性等の点から、酸化剤による粗化処理がなされた対象物を、40℃~70℃の中和液に5分間~20分間浸漬する方法が好ましい。
【0275】
次いで、第1配線層32を粗化処理された前駆光学補助層20Xの主表面に形成すればよい。
【0276】
第1配線層32を形成する工程は、より精細な配線を形成することができるので、セミアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により配線層を形成する工程であることが、好ましい。
【0277】
ここで、セミアディティブ法(SAP)とは、まず無電解金属シード層を形成し、次いで、電解金属めっきにて配線パターンを形成した後、露出している無電解金属シード層をエッチングにより除去して配線を形成する方法である。モディファイドセミアディティブ法(MSAP)とは、極薄の金属箔を用いて金属シード層を形成して、配線パターンを形成した後、露出している金属シード層をフラッシュエッチングにより除去して配線を形成する方法である。以下、第1配線層32の形成工程について説明する。
【0278】
第1配線層32を構成する導体材料は、特に限定されない。好適な実施形態では、導体材料は、金、白金、パラジウム、銀、銅、アルミニウム、コバルト、クロム、亜鉛、ニッケル、チタン、タングステン、鉄、スズ及びインジウムからなる群から選択される1種以上の金属を含む。導体層は、単金属層であっても合金層であってもよく、合金層としては、例えば、上記の群から選択される2種以上の金属の合金(例、ニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金及び銅・チタン合金)から形成された層が挙げられる。中でも、導体材料は、第1配線層32の形成工程における汎用性、コスト、パターニングの容易性等の観点から、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金、銅・ニッケル合金、銅・チタン合金の合金層が好ましく、クロム、ニッケル、チタン、アルミニウム、亜鉛、金、パラジウム、銀若しくは銅の単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層がより好ましく、銅の単金属層がより好ましい。
【0279】
第1配線層32は、単層構造であっても、異なる種類の金属若しくは合金からなる単金属層又は合金層が2層以上積層された複層構造であってもよい。第1配線層32が複層構造である場合、前駆光学補助層20Xと接する層は、クロム、亜鉛若しくはチタンの単金属層、又はニッケル・クロム合金の合金層であることが好ましい。
【0280】
第1配線層32の厚さは、所望の電気的特性などを勘案して任意好適な厚さとすることができる。第1配線層32の厚さは、薄型化の観点から、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは20μm以下、15μm以下又は10μm以下である。厚さの下限は特に限定されないが、好ましくは1μm以上であり、より好ましくは2μm以上又は3μm以上である。
【0281】
第1配線層32に含まれる第1配線部32aの配線ピッチは特に限定されない。かかる配線ピッチは、設計に応じた任意好適な配線ピッチとすることができる。
【0282】
以上の工程により、第1配線層32が形成される。このようにして、第1配線層32を備えた構造体100が形成される。
【0283】
図4Dに示されるように、次いで、第1絶縁層34を形成する。具体的には、工程(3A)支持体と、当該支持体に接合されている第1絶縁層形成用の樹脂組成物からなる樹脂組成物層とを含む第1絶縁層形成用の接着シートを準備し、工程(3B)接着シートの樹脂組成物層が第1配線層32が設けられた前駆光学補助層20Xの主表面に接合するように積層し、工程(3C)樹脂組成物層を硬化させることにより第1絶縁層34を形成することができる。
【0284】
以下、上記工程(3A)~工程(3C)について説明する。なお、第1絶縁層32は、既に説明した前駆光学補助層20Xと同様にして形成することができる。よって、重複する説明については省略する場合がある。
【0285】
工程(3A)
接着シートは、既に説明した好適な材料を用いて、既に説明した前駆光学補助層20Xと同様にして準備することができる。
【0286】
工程(3B)
まず、上記接着シートを樹脂組成物層が、複数の第1配線部32aを含む第1配線層32を埋め込むように、かつ第1配線層32が設けられた前駆光学補助層20Xの主表面と接合するようにラミネートする工程を行う。
【0287】
このラミネート工程は、例えば、接着シートの樹脂組成物層を光学補助層20の第2表面20bと接合させた状態で加熱圧着することにより光学補助層20の形成工程と同様にして行うことができる。
【0288】
ラミネート工程の後に、例えば、加熱圧着部材で接着シートを再度押圧することにより、樹脂組成物層をより平滑にする平滑化処理を行ってもよい。
【0289】
工程(3C)
次に、樹脂組成物層を硬化させることにより第1絶縁層34を形成する。樹脂組成物層の硬化条件は、樹脂組成物の選択された材料によって任意好適な条件とすることができる。
【0290】
第1絶縁層34を形成するための樹脂組成物層を硬化する前に、上記硬化条件における温度よりも低い温度にて予備的に加熱処理をしてもよい。
【0291】
硬化工程の終了後、第1絶縁層34を形成するために用いた支持体を剥離して除去してもよい。かかる支持体は、この段階では除去せずに、後述するヴィアホール36の形成後に剥離して除去することもできる。以上の工程より、第1絶縁層34を含む製造中途の構造体100が形成される。
【0292】
次いで、第1絶縁層34に設けられており、第1配線層32(並びに第1電極16及び/又は第2電極18)と電気的に接続されている第2配線層38を形成する。
【0293】
図4Dに示されるように、まず、第1絶縁層32に穴あけ加工を行うことにより所定の領域に、必要に応じた個数のヴィアホール36を形成する。ヴィアホール36は、第1絶縁層34の露出面に開口しており、通常、第1配線層32に含まれる第1配線部32aのうちの少なくとも一部分を露出させる開口部である。
【0294】
穴あけ加工は、既に説明した第1絶縁層34の形成に使用した樹脂組成物の組成等に応じて、例えば、炭酸ガスレーザー、UVレーザー、エキシマレーザー等のレーザーにより穴あけ加工を行うことが好ましい。
【0295】
ヴィアホール36の厚さ方向の一方から見たときの輪郭の形状は、通常、円形(略円形)とされる。しかしながら、これに限定されない。
【0296】
図4Dに示されるように、次いで、ヴィアホール36が形成された第1絶縁層34に、既に説明した第1配線層32と同様にして、第1配線層32、第1電極16及び/又は第2電極18に電気的に接続されている配線である第2配線部38であって、第1絶縁層34の表面上に延在する複数の第2配線部を含む第2配線層38を形成する。
【0297】
第2配線層38を形成するにあたり、第1配線層32の形成工程と同様に、さらに、第1絶縁層34の表面を粗化処理する工程を実施してもよい。
【0298】
第2配線層38を形成する工程は、より精細な配線を形成することができるので、第1配線層32の形成工程と同様に、例えば配線材料として銅を用いるセミアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法により配線層を形成する工程であることが好ましい。
【0299】
第2配線層38に含まれる第2配線部の配線ピッチは特に限定されない。かかる配線ピッチは、設計に応じた任意好適な配線ピッチとすることができ、第1配線層30の配線ピッチとは異なる配線ピッチとすることもできる。
【0300】
このようにして、第2配線層38が形成される。なお、この工程により、第2配線層38と、第1配線層32と、さらには発光素子10の第1電極16及び/又は第2電極18といったより下層に位置する配線構造とを直接的かつ電気的に接続するヴィアホール内配線についてもヴィアホール36内に形成することができる。
【0301】
既に説明した第1絶縁層34、ヴィアホール36及び第2配線層38を形成する工程と同様の工程をさらに1回又は2回以上繰り返して実施することにより、さらなる多層配線構造を形成することができる。以上の工程により第1配線層32、第1絶縁層34、ヴィアホール36及び第2配線層38を含む配線構造部30を形成することができる。
【0302】
-工程(4)-
工程(4)は、前駆光学補助層を厚さ方向に研削して、光透過部のうちの少なくとも発光面上の領域を露出させる光学補助層を形成する工程である。
図4Eに示されるように、まず、第2の支持体60Bを剥離して除去することにより配線構造部30が設けられた主表面と対向している前駆光学補助層20Xの主表面を露出させる。
【0303】
この工程は、具体的には、既に説明した第1の支持体60Aを剥離して除去する工程と同様にして行うことができる。具体的には、第2の支持体60Bに含まれる第2基材62b及び/又は第2接着層64bの特性に応じた従来公知の任意好適な方法により剥離及び除去すればよい。例えば、第2接着層64bが所定の温度での加熱処理により粘着性が失われるか低減する特性を有する場合には、当該加熱処理を行うことにより剥離及び除去を行うことができる。
【0304】
図4Fに示されるように、次に、第2の支持体60Bを除去したことにより露出した前駆光学補助層20Xの表面を厚さ方向に研削(研磨)して、光透過部50のうちの少なくとも発光素子10の発光面19a上の領域を露出させ、光学補助層20を形成する。
【0305】
この工程は、例えば、化学機械研磨(CMP)法、機械研磨法、化学研磨法、プラズマCVM(Plasma Chemical Vaporization Machining)法などの従来公知の任意好適な方法により前駆光学補助層20Xの材料、硬化された前駆光学補助層20Xの特性を考慮した任意好適な条件により行うことができる。
【0306】
この工程は、発光素子パッケージ1を効率的に製造し、光透過部50の表面50aからの出射光の取出し効率(発光効率)を向上させ、歩留まりを向上させる観点から、上記の方法の2以上の組合せにより行われることが好ましい。
【0307】
この工程は、例えば、まず機械研磨法により、前駆光学補助層20Xを光透過部50の表面50aの近傍まで前駆光学補助層20Xの厚さを減少させるように研削し、次いで、化学機械研磨法により、前駆光学補助層20Xの露出面を研磨して、光透過部50の表面50aを露出させるとともに、表面50a及び前駆光学補助層20Xの表面をより平坦にして一体的に仕上げる工程とすることが好ましい。工程(4)により、前駆光学補助層20Xは、光学補助層20として形成される。
【0308】
以上の工程により、本実施形態の発光素子パッケージ1を製造することができる。
【0309】
以下に本実施形態にかかる配合例として、光学補助層である黒色層形成用の樹脂組成物(配合例1)、及び光透過部(透明)形成用の樹脂組成物(配合例2)を示す。本発明はこれらの配合例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「部」及び「%」は、別途明示のない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。特に温度の指定が無い場合の温度条件及び圧力条件は、室温(25℃)及び大気圧(1atm)である。
【0310】
<配合例1:光学補助層である黒色層形成用の樹脂組成物>
ビフェニル型エポキシ樹脂(日本化薬社製「NC3000L」、エポキシ当量約269g/eq.)10部、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.、13,000mPa・s)10部、ビスフェノール型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製「ZX1059」、ビスフェノールA型とビスフェノールF型の1:1混合品、エポキシ当量約169g/eq.)5部をソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。このエポキシ樹脂の溶解組成物に、活性エステル化合物(DIC社製「HPC-8000-65T」、活性エステル基当量約223g/eq.、不揮発成分率65%のトルエン溶液)20部、チタンブラック黒色顔料(三菱マテリアルズ(株)製「13MC」、分散剤被覆品)の固形成分率33%のプロピレングリコー ル-1-モノメチルエーテル-2-アセタート分散液)3部、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤(DIC社製「LA-3018-50P」、活性基当量約151g/eq.、不揮発成分率(固形成分率)50%の2-メトキシプロパノール溶液)5部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)100部、硬化促進剤(4-ジメチルアミノピリジン(DMAP))0.2部、フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7553BH30」、不揮発成分率30%のMEKとシクロヘキサノンとの1:1溶液)10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物(ワニス)を調製した。配合成分、固形成分率、配合量を下記表1にも示した。
【0311】
<配合例2:光透過部形成用の樹脂組成物>
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)社製「828EL」、エポキシ当量約180g/eq.、13,000mPa・s)10部とフッ素原子含有エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YL7760」、エポキシ当量245g/eq.)10部をソルベントナフサ25部に撹拌しながら加熱溶解させた。これを室温にまで冷却し、エポキシ樹脂の溶解組成物を調製した。このエポキシ樹脂の溶解組成物に、ビスフェノールAF(セントラル硝子社製「BiS-AF」(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン)5部、シランカップリング剤(信越化学工業社製「KBM-573」)で表面処理された球形シリカ(アドマテックス社製「SO-C2」、平均粒径0.5μm、比表面積5.8m/g)50部、リン系触媒(北興化学工業社製「TBP-DA」)0.5部、ビフェニル骨格及びシクロヘキサン骨格含有フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製「YX7200B35」、重量平均分子量30,000、固形成分率35%のMEK溶液)10部を混合し、高速回転ミキサーで均一に分散して、樹脂組成物(ワニス)を調製した。配合成分、固形成分率、配合量を下記表1にも示した。
【0312】
【表1】
【0313】
本実施形態の発光素子パッケージ1の製造方法によれば、発光素子パッケージ1に含まれる発光素子10の発光効率を向上させることができ、既存の設備を用いて簡便に、安価に発光素子パッケージ1を製造することができ、さらには製造される発光素子パッケージ1の歩留まりを向上させることができる。
【符号の説明】
【0314】
1 発光素子パッケージ
10 発光素子
10a 第1発光素子
10b 第2発光素子
10c 第3発光素子
16 第1電極
18 第2電極
19a 発光面
20X 前駆光学補助層
20 光学補助層(黒色層)
20a 第1表面
20b 第2表面
30 配線構造部
32 第1配線層
32a 第1配線部
34 第1絶縁層
36 ヴィアホール
38 第2配線層
40a 第1の支持体
40b 第2の支持体
50 光透過部(透明)
50a 表面
60A 第1の支持体
60B 第2の支持体
62a 第1基材
62b 第2基材
64a 第1接着層
64b 第2接着層
100 構造体
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F