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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】支援装置及び支援方法
(51)【国際特許分類】
   B60C 23/04 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
B60C23/04 180A
B60C23/04 180B
B60C23/04 210
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023036756
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】目黒 貴之
【審査官】佐々木 智洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-329907(JP,A)
【文献】特開2004-058905(JP,A)
【文献】特開2005-170224(JP,A)
【文献】特表2016-530488(JP,A)
【文献】特表2018-506470(JP,A)
【文献】特開2022-168383(JP,A)
【文献】特表2022-526760(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の各車輪に設けられた複数のセンサから、前記車輪の車軸方向の加速度を取得する取得部と、
前記センサが検出した前記加速度が閾値よりも大きい場合に、前記センサが取り付けられた前記車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する出力部と、
を備え、
前記出力部は、前記複数のセンサのうちの第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記複数のセンサのうちの前記第1センサ以外の他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する、支援装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記車両の複数の車輪のうちの第1グループの前記第1車輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記第1グループの他の車輪に設けられた他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記第1グループである複数の後輪のうちの第1後輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ他の後輪に設けられた他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1後輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する、
請求項2に記載の支援装置。
【請求項4】
前記出力部は、前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記車両の前後方向において前記第1車輪よりも前側又は後側の車輪に設けられた第2センサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記車両の第1車軸の軸方向の一端側の前記第1車輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記第1車軸の軸方向の他端側の他の車輪に設けられた第2センサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記車両の第1車軸の軸方向の一端側の前記第1車輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記一端側で前記第1車輪に隣接している他の車輪に設けられた第2センサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する、
請求項1に記載の支援装置。
【請求項7】
プロセッサが実行する、
車両の各車輪に設けられた複数のセンサから、前記車輪の車軸方向の加速度を取得するステップと、
前記複数のセンサのうちの第1センサが検出した前記加速度が閾値より大きく、かつ前記複数のセンサのうちの前記第1センサ以外の他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力するステップと、
を有する、支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援装置及び支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には、車輪に設けられたセンサで車軸方向の加速度を検出し、当該加速度が警告レベルを超えると車輪の取り付け状態に異常があると判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-329907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の技術においては、例えば車両が段差等を乗り上げる際にセンサが大きな加速度を検出すると、実際には車輪が適切に取り付けられていても、取り付け状態に異常があると誤って判定してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、車輪の取り付け状態を精度良く把握できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様においては、車両の各車輪に設けられた複数のセンサから、前記車輪の車軸方向の加速度を取得する取得部と、前記センサが検出した前記加速度が閾値よりも大きい場合に、前記センサが取り付けられた前記車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する出力部と、を備え、前記出力部は、前記複数のセンサのうちの第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記複数のセンサのうちの他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する、支援装置を提供する。
【0007】
また、前記出力部は、前記車両の複数の車輪のうちの第1グループの前記第1車輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記第1グループの他の車輪に設けられた他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力することとしてもよい。
【0008】
また、前記出力部は、前記第1グループである複数の後輪のうちの第1後輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ他の後輪に設けられた他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1後輪の取り付け状態に異常がある旨を出力することとしてもよい。
【0009】
また、前記出力部は、前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記車両の前後方向において前記第1車輪よりも前側又は後側の車輪に設けられた第2センサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力することとしてもよい。
【0010】
また、前記出力部は、前記車両の第1車軸の軸方向の一端側の前記第1車輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記第1車軸の軸方向の他端側の他の車輪に設けられた第2センサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力することとしてもよい。
【0011】
また、前記出力部は、前記車両の第1車軸の軸方向の一端側の前記第1車輪に設けられた前記第1センサが検出した前記加速度が前記閾値より大きく、かつ前記一端側で前記第1車輪に隣接している他の車輪に設けられた第2センサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力することとしてもよい。
【0012】
本発明の第2の態様においては、プロセッサが実行する、車両の各車輪に設けられた複数のセンサから、前記車輪の車軸方向の加速度を取得するステップと、前記複数のセンサのうちの第1センサが検出した前記加速度が閾値より大きく、かつ前記複数のセンサのうちの他のセンサが検出した前記加速度が前記閾値以下である場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力するステップと、を有する、支援方法を提供する。
【0013】
本発明の第3の態様においては、車両の各車輪に設けられた複数のセンサから、前記車輪の車軸方向の加速度を取得する取得部と、前記センサから取得した前記加速度に関する特徴量に基づいて、当該センサが設けられた前記車輪の取り付け状態に異常があることを示す情報を出力する出力部と、を備え、前記出力部は、前記複数のセンサのうちの1のセンサから取得した前記加速度に関する特徴量が閾値より大きく、かつ、前記複数のセンサのうちの他のセンサから取得した前記加速度に関する特徴量が前記閾値以下である場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常があることを示す情報を出力し、前記1のセンサから取得した前記加速度の統計量および前記他のセンサから取得した前記加速度に関する特徴量が、前記閾値より大きい場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常があることを示す情報を出力しない、支援装置を提供する。
【0014】
また、前記出力部は、前記1のセンサから取得した所定時間に亘る前記加速度の積算値が閾値より大きく、かつ、前記他のセンサから取得した前記所定時間に亘る前記加速度の積算値が前記閾値以下である場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常があることを示す情報を出力し、前記1のセンサから取得した前記所定時間に亘る前記加速度の積算値および前記他のセンサから取得した前記所定時間に亘る前記加速度の積算値が、前記閾値より大きい場合に、前記第1センサが取り付けられた第1車輪の取り付け状態に異常があることを示す情報を出力しないこととしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、車輪の取り付け状態を精度良く把握できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一の実施形態に係る支援装置100が搭載された車両1の構成を説明するためのブロック図である。
図2】車両1の車輪を説明するための模式図である。
図3】加速度センサ22が検出する加速度の向きを説明するための模式図である。
図4】受信部123が受信した軸方向加速度の時系列データの一例を示す模式図である。
図5】車輪10のグループ分けの一例を説明するための模式図である。
図6】車輪10の取り付け状態の判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<支援装置の構成>
一の実施形態に係る支援装置の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、一の実施形態に係る支援装置100が搭載された車両1の構成を説明するためのブロック図である。支援装置100は、車両1の車輪の取り付け状態を判定する。例えば、支援装置100は、車輪が脱輪するおそれがある状態であるか否かを判定する。車輪が脱輪するおそれがある状態とは、例えば、車輪を固定するボルト及びナットの締め付けが緩んでいる状態である。車両1は、ここでは図2に示すトラックであるが、これに限定されない。
【0019】
図2は、車両1の車輪を説明するための模式図である。車両1には、車輪10a~10jが設けられている。車輪10a、10bは、前輪であり、車輪10c~10fは、第1後輪であり、車輪10g~10jは第2後輪である。車輪10a~10jのホイールは、それぞれボルト及びナットを介して車軸に固定されている。以下では、車輪10a~10jを総称して、車輪10とも呼ぶ。
【0020】
車両1の走行中に、車輪10が脱輪するケースが生じうる。車輪10のホイールのナットが緩んでいない(車輪10の取り付け状態が正常である)場合には、車輪10が車軸から脱輪するおそれはないが、ナットが緩んでいる(取り付け状態が異常である)場合には、走行中にナットが更に緩んでしまい車輪10が車軸から脱輪するおそれがある。走行時の安全性を確保するためには、車輪10が脱輪する前にナットの緩みを解消する等の整備を行うことが望ましい。
【0021】
そこで、本実施形態の支援装置100は、詳細は後述するが、車輪10に作用する軸方向加速度の大きさに基づいて、車輪10の取り付け状態が異常であるか否かを判定し、取り付け状態が異常である場合には運転者等に報知を行う。これにより、運転者等は、車輪10が脱輪する前に、車輪10が脱輪するおそれがある状態であることを把握でき、対策を講じやすくなる。なお、軸方向加速度を用いているのは、ナットが緩んでいる場合には、特異的な軸方向加速度が発生することが分かったためである。
【0022】
支援装置100は、ここでは車両1に搭載されたECU(Electronic Control Unit)である。支援装置100は、図1に示すように、記憶部110と、制御部120を有する。
【0023】
記憶部110は、例えばROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含む。記憶部110は、制御部120が実行するためのプログラムや各種データを記憶する。例えば、記憶部110は、車輪10の取り付け状態の判定処理に用いる判定閾値を記憶する。
【0024】
制御部120は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部120は、記憶部110に記憶されたプログラムを実行することにより、検出制御部122、受信部123、判定部124及び出力部125として機能する。制御部120は、1つのプロセッサで構成されていてもよいし、複数のプロセッサ又は1以上のプロセッサと電子回路との組み合わせにより構成されていてもよい。
【0025】
検出制御部122は、車両1の各車輪10に設けられた検出装置20による検出を制御する。例えば、検出制御部122は、検出装置20に各車輪10に作用する加速度を検出させる。検出装置20は、検出した加速度を支援装置100に無線通信で送信する。
【0026】
検出装置20は、各車輪10(具体的には、車輪10a~10j)のホイールに取り付けられている。検出装置20は、加速度を検出する加速度センサ22を含む。例えば、図2に示すように、車輪10aには加速度センサ22aが設けられ、車輪10jには加速度センサ22jが設けられている。図2に示す加速度センサ22a~22jを総称して、加速度センサ22とも呼ぶ。また、検出装置20は、支援装置100と無線通信を行う通信モジュールを含む。さらに、検出装置20は、無線通信の際に使用する電力を蓄えているバッテリを有してもよい。
【0027】
検出制御部122は、各車輪10に設けられた複数の加速度センサ22の各々に、車軸方向の加速度(以下、軸方向加速度と呼ぶ)を所定間隔で検出させる。例えば、検出制御部122は、所定間隔として100Hz(10ミリ秒間隔)で軸方向加速度を検出させる。検出制御部122は、車輪10の円周方向の加速度(周方向加速度とも呼ぶ)と半径方向(径方向)の加速度(径方向加速度とも呼ぶ)を加速度センサ22に検出させてもよい。
【0028】
図3は、加速度センサ22が検出する加速度の向きを説明するための模式図である。加速度センサ22は、車両1の走行中に、車輪10の軸方向加速度に加えて周方向加速度及び径方向加速度も検出する。加速度センサ22は、検出した軸方向加速度、周方向加速度及び径方向加速度を、支援装置100に送信する。
【0029】
受信部123は、各車輪10に設けられた検出装置20から検出結果を受信する。受信部123は、各車輪10に設けられた検出装置20から検出結果を取得する取得部であるといえる。例えば、受信部123は、加速度センサ22が所定間隔で検出した軸方向加速度を、無線通信で順次受信する。受信部123は、軸方向加速度に加えて周方向加速度及び径方向加速度も、加速度センサ22から受信しうる。受信部123は、受信した軸方向加速度を判定部124に出力する。
【0030】
図4は、受信部123が受信した軸方向加速度の時系列データの一例を示す模式図である。図4の横軸が時間を示し、縦軸が軸方向加速度の大きさを示す。受信部123は、図4に示すように大きさが変動する軸方向加速度を受信する。
【0031】
判定部124は、各車輪10に設けられた加速度センサ22が検出した加速度に基づいて、各車輪10の取り付け状態を判定する。判定部124は、各車輪10の取り付け状態として、車両1の走行中に車輪10が脱輪するおそれがある状態であるか否かを判定する。例えば、判定部124は、車輪10に特異的な軸方向加速度が連続して作用した場合には、車輪10のホイールのナットが緩んでいると判定し、車輪10が脱輪するおそれがある状態であると判定する。
【0032】
判定部124は、各加速度センサ22が検出した加速度の積算値に基づいて、対応する車輪10の取り付け状態に異常があるか否かを判定する。例えば、判定部124は、加速度センサ22が所定時間(所定時間は、一例として、図4の時刻t0~t1の間の時間、時刻t1~t2の間の時間)に亘って検出した軸方向加速度の積算値が閾値よりも大きい場合には、車輪10の取り付け状態に異常があると判定する。すなわち、判定部124は、車両1の走行中に車輪10が脱輪するおそれがある状態であると判定する。所定時間は、一例として1秒であるが、これに限定されず、1秒より長くてもよい
【0033】
判定部124は、軸方向加速度の積算値が閾値以下である場合には、車輪10の取り付け状態が正常であると判定する。すなわち、判定部124は、ホイールのナットが緩んでおらず、車両1の走行中に車輪10が脱輪するおそれがない状態であると判定する。軸方向加速度の積算値を用いて判定を行う場合には、外乱等によって瞬間的に軸方向加速度が大きくなっても取り付け状態が異常であると誤判定することを抑制できる。なお、上記では、判定部124が軸方向加速度の積算値を用いて判定したが、これに限定されず、判定部124は、軸方向加速度の大きさが所定の閾値よりも大きい場合に取り付け状態に異常があると判定してもよい。
【0034】
出力部125は、各車輪10の取り付け状態を出力する。例えば、出力部125は、報知装置30に、各車輪10の取り付け状態を出力して報知させる。報知装置30は、取り付け状態に関する情報を表示するディスプレイ、又は取り付け状態を音声で出力するスピーカである。
【0035】
出力部125は、判定部124により車輪10の取り付け状態に異常がある(すなわち、加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値よりも大きい)と判定されると、加速度センサ22が取り付けられた車輪10の取り付け状態に異常がある旨を出力する。例えば、出力部125は、判定部124により軸方向加速度の積算値が閾値よりも大きい場合に、車輪10の取り付け状態に異常があることを示す情報を報知装置30に報知させる。このように報知されることで、車両1の運転者は、走行を継続すると車輪10が脱輪するおそれがある状態であることを認識できる。なお、出力部125は、判定部124により取り付け状態に異常が無いと判定された場合には、取り付け状態に関する出力を行わない。
なお、出力125は、車輪10の取り付け状態に異常があることを示す情報を、不図示の通信部を介して、ネットワーク上に設けられたクラウドサーバーに出力する機能を有してもよい。クラウドサーバーに設けられた車両1の管理装置は、車輪10の取り付け状態に異常があることを示す情報を受信した場合、あらかじめ定められた管理者に対して、異常が発生したことを通知する。また、管理装置は、車輪10の取り付け状態に異常があることを示す情報を記憶媒体に記録するものであってもよい。これにより、管理者が車両1に関する車両情報の1つとして、当該情報をモニタリングすることが可能となる。
【0036】
本実施形態では、車両1の走行中に車輪10の取り付け状態を精度良く把握できるようにするために、取り付け状態の判定対象の車輪10に設けられた加速度センサ22が検出した軸方向加速度と、他の車輪10に設けられた加速度センサ22が検出した軸方向加速度とに基づいて、判定対象の車輪10の取り付け状態が判定される。
判定部124は、複数の加速度センサ22(図2に示す加速度センサ22a~22j)のうち一の加速度センサ22(第1センサ)から取得した軸方向加速度の積算値が閾値より大きく、かつ複数の加速度センサ22のうち他の加速度センサ22(第2センサ)から取得した軸方向加速度の積算値が閾値より大きいか否かを判定する。判定部124は、一の加速度センサ22から取得した軸方向加速度の積算値が閾値より大きく、かつ、他の加速度センサ22から取得した軸方向加速度の積算値が閾値以下であると判定した場合、当該一の加速度センサ22に対応する車輪10の取り付け状態に異常が発生していると判定する。また、判定部124は、一の加速度センサ22から取得した軸方向加速度の積算値が閾値より大きく、かつ他の加速度センサ22から取得した軸方向加速度の積算値が閾値以下でないと判定した場合、当該一の加速度センサ22に対応する車輪10の取り付け状態に異常がないと判定する。言い換えれば、判定部124は、一の加速度センサ22から取得した軸方向加速度の積算値、及び他の加速度センサ22から取得した軸方向加速度の積算値がともに閾値より大きいと判定した場合、当該一の加速度センサ22に対応する車輪10の取り付け状態は異常がないと判定する。判定部124は、各加速度センサ22から取得した軸方向加速度に対して同様の判定処理を行い、各車輪10の取り付け状態を示す情報を出力部125に出力する。出力部125は、入力された各車輪10の取り付け状態を示す情報に基づいて、取り付け状態に応じた情報を出力する。
【0037】
すなわち、出力部125は、複数の加速度センサ22のうちの一の加速度センサ22)が検出した軸方向加速度の積算値が閾値よりも大きく、かつ他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度の積算値が閾値以下である場合に、一の加速度センサ22が取り付けられた車輪10の取り付け状態に異常がある旨を出力する。一方で、出力部125は、一の加速度センサ22が検出した軸方向加速度の積算値が閾値より大きくても、他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度の積算値が閾値より大きい場合、車両1が段差等を乗り上げて軸方向加速度が大きくなったに過ぎず、車輪10の取り付け状態は正常であると判断する。これにより、車両1が走行中に段差等に乗り上げても車輪10の取り付け状態を誤って判断することを抑制できる。
なお、上述した例では、判定部124は、軸方向加速度の積算値を閾値と比較したが、軸方向加速度の検出値(瞬時値)や、一定期間における平均値などを用いてもよい。
【0038】
車両1に設けられた複数の車輪10は、車輪10の取り付け位置によってホイールのナットの緩みの度合いが異なるため、取り付け状態の変化も異なる。そこで、出力部125には、判定部124が複数の車輪10をグループ分けして取り付け状態を判定した判定結果が入力されうる。出力部125は、車両1の複数の車輪10のうちの第1グループの一の車輪10に設けられた加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値より大きく、かつ第1グループの他の車輪10に設けられた他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値以下である場合に、一の車輪10の取り付け状態に異常がある旨を出力する。一方で、出力部125は、他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度も閾値より大きい場合には、車両1が段差を乗り上げたこと等に起因して軸方向加速度が大きくなったと推定し、一の車輪10の取り付け状態が正常であると判断する。
【0039】
図5は、車輪10のグループ分けの一例を説明するための模式図である。ここでは、車両1の複数の車輪10a~10jを二つのグループに分ける。具体的には、後輪である車輪10c~10jがグループG1であり、前輪である車輪10a、10bがグループG2である。出力部125には、判定部124によるグループG1又はグループG2毎の取り付け状態の判定結果が、判定部124から入力されうる。出力部125は、第1グループであるグループG1の車輪10c~10jのうちの第1後輪(例えば、車輪10j)に設けられた第1センサ(加速度センサ22j)が検出した軸方向加速度が閾値より大きく、かつ他の後輪である車輪10c~10iに設けられた他の加速度センサ22c~22iが検出した軸方向加速度が閾値以下である場合に、車輪10jの取り付け状態に異常がある旨を出力する。一方で、出力部125は、グループG1の車輪10c~10jに設けられた加速度センサ22c~22jが検出した軸方向加速度の各々が閾値より大きい場合には、車輪10jの取り付け状態が正常であると判断する。
【0040】
(変形例)
出力部125は、車両1の前後方向において隣同士の車輪に設けられた加速度センサ22の検出結果に基づいて、車輪10の取り付け状態を検出してもよい。ここでは、車輪10fと車輪10jを例に挙げて説明する。車両1が走行する際には、車輪10f、10jは同じ走行経路を走行するので、走行経路上に段差がある場合には、車輪10f、10jが段差を乗り越えやすい。このため、車輪10f又は車輪10jの取り付け状態に異常があるか否かを判定する際には、車輪10f、10jに設けられた加速度センサ22f、22jの軸方向加速度を互いに参照することで、車輪10f、10jの取り付け状態を精度良く判定できる。
【0041】
そこで、出力部125は、車輪10jの加速度センサ22jが検出した軸方向加速度が閾値より大きく、かつ車輪10jの前側の車輪10fの加速度センサ22fが検出した軸方向加速度が閾値以下である場合に、車輪10jの取り付け状態に異常がある旨を出力する。同様に、出力部125は、車輪10fの加速度センサ22fが検出した軸方向加速度が閾値より大きく、かつ車輪10fの後側の車輪10jの加速度センサ22jが検出した軸方向加速度が閾値以下である場合に、車輪10fの取り付け状態に異常がある旨を出力する。一方で、出力部125は、加速度センサ22f、22jの両方が検出した軸方向加速度が閾値より大きい場合には、車輪10f、10jの取り付け状態が正常であると判断する。
【0042】
車両1の後輪は、図5に示すようにダブルタイヤとなっており、例えば車輪10iと車輪10jは車軸方向に隣接している。このため、隣接した車輪10iと車輪10jとは、段差を一緒に乗り上げる可能性が高い。車輪10i又は車輪10jの取り付け状態に異常があるか否かを判定する際には、車輪10i、10jに設けられた加速度センサ22f、22jの軸方向加速度を互いに参照することで、車輪10i、10jの取り付け状態を精度良く判定できる。
【0043】
そこで、出力部125は、車軸方向に隣接した車輪のうち、一端側の第1車輪(一例として車輪10i)に設けられた加速度センサ22iが検出した軸方向加速度が閾値より大きく、かつ、他端側の第2車輪(車輪10j)に設けられた加速度センサ22jが検出した軸方向加速度が閾値以下である場合に、車輪10iの取り付け状態に異常がある旨を出力する。一方で、出力部125は、加速度センサ22i、22jの両方が検出した軸方向加速度が閾値より大きい場合には、車輪10i、10jの取り付け状態が正常であると判断する。これにより、ダブルタイヤである車輪10i、10jの取り付け状態を精度良く把握できる。
【0044】
なお、出力部125は、車両1の一の車軸(第1車軸に該当)の両側の車輪10に設けられた加速度センサ22が軸方向加速度の大きさに基づいて、両側の車輪10の取り付け状態を出力してもよい。ここでは、後輪である車輪10jと車輪10gを例に挙げて説明する。出力部125は、車輪10jに設けられた加速度センサ22jが検出した軸方向加速度が閾値より大きく、かつ第1車軸の軸方向の他端側の他の車輪10gに設けられた加速度センサ22gが検出した軸方向加速度が閾値以下である場合に、車輪10jの取り付け状態に異常がある旨を出力する。一方で、出力部125は、加速度センサ22g、22jの両方が検出した軸方向加速度が閾値より大きい場合には、車輪10g、10jの取り付け状態が正常であると判断する。
【0045】
<取り付け状態の判定処理の流れ>
図6は、車輪10の取り付け状態の判定処理の流れを説明するためのフローチャートである。図6に示す処理は、車両1の走行中に行われる。
【0046】
まず、検出制御部122は、各車輪10の加速度センサ22に軸方向加速度を検出させる(ステップS102)。検出制御部122は、各車輪10の加速度センサ22に軸方向加速度の検出を開始する指示を送信する。加速度センサ22は、加速度センサ22が設けられた車輪10に作用する軸方向加速度を所定間隔で検出する。
【0047】
次に、受信部123は、各車輪10の加速度センサ22が所定間隔で検出した軸方向加速度を受信する(ステップS104)。例えば、受信部123は、各車輪10の加速度センサ22が所定時間に亘って検出した軸方向加速度を、加速度センサ22から順次取得する。
【0048】
次に、判定部124は、一の加速度センサ22が検出した軸方向加速度の積算値が閾値より大きいか否かを判定する(S106)。ステップS106で一の加速度センサ22が検出した軸方向加速度の積算値が閾値よりも大きい場合には(Yes)、判定部124は、他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度の積算値が閾値よりも大きいか否かを判定する(S108)。例えば、判定部124は、加速度センサ22jが検出した軸方向加速度の積算値が閾値よりも大きい場合に、他の加速度センサ22である加速度センサ22c~22iの軸方向加速度の積算値が閾値より大きいか否かを判定する。
【0049】
ステップS108で他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度の積算値が閾値以下である場合には(Yes)、判定部124は、一の加速度センサ22である加速度センサ22jが設けられた車輪10jの取り付け状態に異常があると判定する(ステップS110)。
【0050】
車輪10jの取り付け状態に異常があると判定されると、出力部125は、車輪10jの取り付け状態に異常がある旨を報知装置30に出力する(ステップS112)。そして、報知装置30は、走行を継続すると車輪10jの脱輪の蓋然性があることを運転者に認識させるべく、取り付け状態に異常がある旨を報知する。
【0051】
ステップS106で一の加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値以下である場合(No)には、ステップS104以降の処理が繰り返される。また、ステップS108で他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値より大きい場合には(No)、出力部125は、各車輪10が正常であると判断し、ステップS104以降の処理が繰り返される。
なお、上述のフローチャートの説明では、判定部124は、各加速度センサ22から取得した軸方向加速度の積算値と閾値とを比較したが、判定方法はこれに限らない。例えば、判定部124は、各加速度センサ22から取得した軸方向加速度の値(瞬時値)と閾値とを比較してもよい。また、判定部124は、各加速度センサ22から取得した軸方向加速度の平均値など種々の統計量を用いることが可能である。言い換えると、判定部124は、各加速度センサ22から取得した軸方向加速度の瞬時値、統計量などを含む特徴量が閾値より大きいか否かを判定するものであるといえる。
【0052】
<本実施形態における効果>
上述した実施形態の支援装置100は、複数の加速度センサ22のうちの一の加速度センサ22(例えば、加速度センサ22j)が検出した軸方向加速度が閾値より大きく、かつ他の加速度センサ22(例えば、加速度センサ22c~22i)が検出した軸方向加速度が閾値以下である場合に、一の加速度センサ22が取り付けられた車輪10(例えば、車輪10j)の取り付け状態に異常がある旨を出力する。
車両1が、段差を乗り上げる場合には、一の加速度センサ22だけでなく他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度も閾値を超えやすい。これに対して、上述した制御を行うことで、一の加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値を超えても、一の加速度センサ22が設けられた車輪10の取り付け状態の異常に起因するのか、又は段差を乗り上げたことに起因するのかを、適切に判別して出力できる。この結果、運転者等は、車両1の走行中に、各車輪10の取り付け状態を精度良く把握できる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0054】
1 車両
10 車輪
22 加速度センサ
100 支援装置
123 受信部
125 出力部
【要約】
【課題】車輪の取り付け状態を精度良く把握できるようにする。
【解決手段】支援装置100は、車両の各車輪に設けられた複数の加速度センサ22から、車輪の軸方向加速度を取得する受信部123と、加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値よりも大きい場合に、加速度センサ22が取り付けられた車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する出力部125を備える。出力部125は、複数の加速度センサ22のうちの一の加速度センサが検出した軸方向加速度が閾値を超え、かつ他の加速度センサ22が検出した軸方向加速度が閾値を超えない場合に、一の加速度センサ22が取り付けられた車輪の取り付け状態に異常がある旨を出力する。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6