(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】光導波路の製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 6/138 20060101AFI20240109BHJP
G02B 6/132 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
G02B6/138
G02B6/132
(21)【出願番号】P 2023509868
(86)(22)【出願日】2022-10-20
(86)【国際出願番号】 JP2022039043
(87)【国際公開番号】W WO2023074516
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2021176253
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100173428
【氏名又は名称】藤谷 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋武
(72)【発明者】
【氏名】兼田 幹也
【審査官】大西 孝宣
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/081375(WO,A1)
【文献】特開2018-084695(JP,A)
【文献】特開2018-141910(JP,A)
【文献】特開2019-028116(JP,A)
【文献】国際公開第2006/054569(WO,A1)
【文献】特開2003-344684(JP,A)
【文献】国際公開第2009/154206(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/093460(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0038251(US,A1)
【文献】特開2011-053483(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材に積層されているコア形成層と、を有する露光前積層体を準備する工程と、
前記コア形成層に活性放射線を照射し、前記活性放射線の非照射領域に対応するコア部および
マークならびに前記活性放射線の照射領域に対応する側面クラッド部を含むコア層、ならびに、前記コア層を支持する前記基材、を有する露光後積層体を得る工程と、
前記露光後積層体が有する前記コア層にクラッド層を積層し、ワークを得る工程と、
前記ワークから光導波路を切り出す工程と、
を有し、
前記照射領域は、前記コア形成層の外縁に沿って延在し、枠状をなす枠状部分を含み、
前記枠状部分に前記マークを前記非照射領域
として形成し、
前記露光前積層体における前記照射領域の面積は、前記コア形成層の全体の50%以上であり、
前記露光後積層体における前記枠状部分の面積は、前記照射領域のうちの70%以上であることを特徴とする光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記コア形成層は、ポリマーおよびモノマーを含み、
前記活性放射線の照射により、前記モノマーが移動して、前記照射領域と前記非照射領域との間に屈折率差を生じさせる請求項1に記載の光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記クラッド層の膜厚は、1~200μmである請求項1または2に記載の光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記ワークは、
前記コア層と、
前記コア層を介して積層された2つの前記クラッド層と、
を備え、
前記ワークを得る工程は、
前記露光後積層体が有する前記コア層に前記クラッド層を積層し、第1積層体を得る操作と、
前記第1積層体から前記基材を剥離し、残部を第2積層体とする操作と、
前記第2積層体が有する前記コア層に前記クラッド層を積層し、前記ワークを得る操作と、
を有する請求項1または2に記載の光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記ワークは、前記コア層および2つの前記クラッド層を挟むように積層されている第1カバー層および第2カバー層をさらに備える請求項4に記載の光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記ワークの膜厚は、50~300μmである請求項1または2に記載の光導波路の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コア層と、コア層を挟んで配置される第1クラッド層および第2クラッド層と、を備える光導波路の製造方法が開示されている。この製造方法は、具体的には、基材に積層形成したコア層に第1クラッド層を積層する工程と、コア層から基材を除去する工程と、コア層の基材を除去した側の面に第2クラッド層を積層する工程と、を有する。
【0003】
また、特許文献1には、塗布法によりコア形成用フィルムを形成する工程と、コア形成用フィルムに対し、選択的に紫外線を照射した後、オーブンで加熱して硬化させ、コア層を得る工程と、を経てコア層が製造されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が鋭意検討した結果、非照射領域の大きさによって、コア層の変形量(反り量)が変わることがわかってきた。コア層の反り量が大きくなると、コア層に第1クラッド層を積層する工程や、コア層から基材を除去する工程等の実施に支障が及ぶ。したがって、光導波路の製造効率を高めるためには、コア層の反り量を抑制することが求められる。
【0006】
本発明の目的は、活性放射線の照射に伴う露光後積層体における反り等の変形を抑制し、製造効率を高め得る光導波路の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)~(6)の本発明により達成される。
(1) 基材と、前記基材に積層されているコア形成層と、を有する露光前積層体を準備する工程と、
前記コア形成層に活性放射線を照射し、前記活性放射線の非照射領域に対応するコア部およびマークならびに前記活性放射線の照射領域に対応する側面クラッド部を含むコア層、ならびに、前記コア層を支持する前記基材、を有する露光後積層体を得る工程と、
前記露光後積層体が有する前記コア層にクラッド層を積層し、ワークを得る工程と、
前記ワークから光導波路を切り出す工程と、
を有し、
前記照射領域は、前記コア形成層の外縁に沿って延在し、枠状をなす枠状部分を含み、
前記枠状部分に前記マークを前記非照射領域として形成し、
前記露光前積層体における前記照射領域の面積は、前記コア形成層の全体の50%以上であり、
前記露光後積層体における前記枠状部分の面積は、前記照射領域のうちの70%以上であることを特徴とする光導波路の製造方法。
【0008】
(2) 前記コア形成層は、ポリマーおよびモノマーを含み、
前記活性放射線の照射により、前記モノマーが移動して、前記照射領域と前記非照射領域との間に屈折率差を生じさせる上記(1)に記載の光導波路の製造方法。
【0009】
(3) 前記クラッド層の膜厚は、1~200μmである上記(1)または(2)に記載の光導波路の製造方法。
【0010】
(4) 前記ワークは、
前記コア層と、
前記コア層を介して積層された2つの前記クラッド層と、
を備え、
前記ワークを得る工程は、
前記露光後積層体が有する前記コア層に前記クラッド層を積層し、第1積層体を得る操作と、
前記第1積層体から前記基材を剥離し、残部を第2積層体とする操作と、
前記第2積層体が有する前記コア層に前記クラッド層を積層し、前記ワークを得る操作と、
を有する上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【0011】
(5) 前記ワークは、前記コア層および2つの前記クラッド層を挟むように積層されている第1カバー層および第2カバー層をさらに備える上記(4)に記載の光導波路の製造方法。
【0012】
(6) 前記ワークの膜厚は、50~300μmである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の光導波路の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、活性放射線の照射に伴う露光後積層体における反り等の変形を抑制し、光導波路を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光導波路の製造方法に用いられるワークを示す平面図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すワークから切り出された光導波路の一例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための平面図である。
【
図7】
図7は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図9】
図9は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図11】
図11は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための工程図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図13】
図13は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図15】
図15は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。
【
図17】
図17は、試験片E1を製造するときの、紫外線の照射領域および非照射領域のパターンを示す模式図である。
【
図18】
図18は、試験片E2、E3を製造するときの、紫外線の照射領域および非照射領域のパターンを示す模式図である。
【
図19】
図19は、反りが発生した試験片E1について、反りの大きさを測定する方法を示す模式図である。
【
図20】
図20は、各試験片E1を製造するときの照射領域の面積比率と、各試験片E1について測定された反りの大きさと、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光導波路の製造方法について添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係る光導波路の製造方法に用いられるワークを示す平面図である。
図2は、
図1の部分拡大図である。
図3は、
図2のA-A線断面図である。
【0017】
なお、本願の各図では、互いに直交する3つの軸として、X軸、Y軸およびZ軸を設定し、矢印で示している。また、矢印の先端側を「プラス側」といい、基端側を「マイナス側」という。さらに、Z軸を表す矢印の先端側を「上」といい、基端側を「下」という。
【0018】
1.ワーク
図1に示すワーク100は、
図2に示す光導波路1の製造に用いられる部材であって、シート状をなしており、2個のユニット200を有している。各ユニット200は、2個のピース300を有している。ピース300からは、1個の光導波路1を切り出すことができる。したがって、ワーク100は、一度に4個の光導波路1を製造可能な部材である。なお、一度に製造可能な光導波路1の数は、1個以上であれば特に限定されない。また、ユニット200の数も限定されない。
【0019】
1.1.構造
図2は、ワーク100のうち、1つのピース300近傍を拡大した図である。
図2に示すように、ピース300は、13本のコア部14と、12本の第1側面クラッド部15とを有している。これらは、それぞれ長尺状をなし、X軸に沿って延在するとともに、Y軸に沿って並んでいる。なお、ピース300が有するコア部14の数は、特に限定されず、1本以上であればよい。
【0020】
各コア部14のY軸方向の少なくとも一方には、第1側面クラッド部15が隣接している。したがって、第1側面クラッド部15は、コア部14同士の間に配置されている。また、これらの周りを囲うように、枠状をなす第2側面クラッド部17が設けられている。なお、以下の説明では、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17の双方を指して、単に「側面クラッド部」ということがある。
【0021】
コア部14には、光信号が入射され、Y軸に沿って光信号が伝送される。これにより、コア部14を介して光通信が可能になる。なお、光導波路1は、照明の用途に用いられてもよい。また、複数のコア部14のうち、一部に光信号を入射させ、他部には光信号を入射させないように光導波路1を用いてもよい。これにより、他部のコア部14がダミーとして機能し、一部のコア部14の伝送効率を高めることができる。
【0022】
ワーク100は、
図3に示すように、第1カバー層18、第1クラッド層11、コア層13、第2クラッド層12および第2カバー層19がこの順で積層されている積層構造を備える。積層構造の各層は、X-Y面に沿って広がっている。ワーク100は、樹脂フィルムであり、可撓性を有する。なお、
図1および
図2は、ワーク100を上方から見た平面図であり、第2カバー層19および第2クラッド層12を介してコア層13を透視した図である。なお、第1クラッド層11および第2クラッド層12の一方は、省略されていてもよい。また、第1カバー層18および第2カバー層19のいずれか一方は、省略されていてもよい。さらに、第1クラッド層11と第1カバー層18との間、および、第2クラッド層12と第2カバー層19との間には、それぞれ任意の中間層が設けられていてもよい。
【0023】
前述したコア部14、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17は、コア層13中に設けられている。したがって、コア部14は、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17と第1クラッド層11および第2クラッド層12とで囲まれることになり、内部に光を閉じ込めることができる。
【0024】
コア層13中におけるコア部14や側面クラッド部は、構成材料の屈折率差に基づいて形成されている。例えば、コア部14および側面クラッド部の構成材料を異ならせることでコア層13中に屈折率の分布を形成することができる。また、コア層13の構成材料として、主鎖から分岐し、活性放射線の照射により、その分子構造の少なくとも一部が主鎖から離脱し得る離脱性基(離脱性ペンダントグループ)を有しているポリマーを用いる方法を利用することができる。係る方法では、離脱性基の離脱によりポリマーの屈折率が低下するため、ポリマーは、活性放射線の照射の有無によって屈折率差を形成し、コア層13中に屈折率の分布を形成することができる。コア層13中に屈折率の分布を形成する方法としては、様々な方法があるが、本実施形態では、コア層13がポリマーおよびモノマーを含み、モノマーの濃度差またはモノマー由来の構造の濃度差に基づいた屈折率の分布を有している。
【0025】
屈折率の分布とは、屈折率が高い部分と低い部分とが存在することをいう。本実施形態では、ポリマーと、モノマーまたはモノマー由来の構造とで、屈折率が異なっている。そして、本実施形態では、後者の屈折率が前者よりも低い。このため、濃度差に伴って屈折率の分布が形成される。そして、屈折率の分布に対応して、コア層13中に、コア部14、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17が形成されている。
【0026】
コア部14同士のY軸方向の幅は、互いに等しくても、互いに異なっていてもよい。また、コア部14のY軸方向の幅と第1側面クラッド部15の幅とは、互いに等しくても、互いに異なっていてもよい。
【0027】
さらに、コア部14は、途中で分岐していてもよいし、途中で他のコア部14と交差していてもよい。
【0028】
ワーク100のX軸方向の全長は、特に限定されないが、100~3000mm程度であるのが好ましく、500~2000mm程度であるのがより好ましい。ワーク100のY軸方向の全幅も、特に限定されないが、10~500mm程度であるのが好ましく、50~200mm程度であるのがより好ましい。
【0029】
コア層13のZ軸方向の膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、5~100μm程度であるのがより好ましく、10~70μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、コア層13に必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。
【0030】
クラッド層である第1クラッド層11および第2クラッド層12のZ軸方向の膜厚は、それぞれ1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12として十分な膜厚が確保され、これらに必要とされる光学的特性および機械的強度が確保される。また、第1クラッド層11および第2クラッド層12を製造するとき、硬化収縮量が大きくなりすぎるのを抑制することができる。
【0031】
第1カバー層18は、第1クラッド層11の下面に積層されている。第2カバー層19は、第2クラッド層12の上面に積層されている。これにより、ワーク100の機械的特性や耐久性を高めることができる。
【0032】
ワーク100のZ軸方向の膜厚は、50~300μmであるのが好ましく、60~200μmであるのがより好ましく、70~150μmであるのがさらに好ましい。これにより、ワーク100の可撓性を高めつつ、ワーク100の機械的強度を十分に確保することができる。また、ワーク100に適度な厚さがあるため、ワーク100を容易に効率よく製造することができる。
【0033】
1.2.側面クラッド部が占める面積
ワーク100では、側面クラッド部(第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17)が占める面積が、コア層13の全体の20%以上になっている。後述する製造方法において説明するように、側面クラッド部は、コア部14に比べて、製造過程での体積変化が少ない。このため、コア層13の全体に対して側面クラッド部が占める面積の割合、つまり、側面クラッド部の面積比率が前記範囲内になるようにワーク100を製造することで、変形(反り)の少ないワーク100を製造することができる。これにより、ワーク100から光導波路1を製造するとき、ワーク100の変形に伴う製造効率の低下を抑制することができる。
【0034】
1.3.光導波路
図4は、
図2に示すワーク100から切り出された光導波路1の一例を示す平面図である。
図4に示す光導波路1は、9本のコア部14と、8本の第1側面クラッド部15と、2本の第2側面クラッド部17と、を有している。このような光導波路1は、例えば、他の光学部品と接続され、光配線を構築するのに用いられる。
【0035】
光導波路1の両端部の少なくとも一方には、図示しない光コネクター(フェルール)が装着されていてもよい。光コネクターを介して、光導波路1と他の光学部品とを固定するとともに、光学的に接続することができる。また、光導波路1は、コア部14を通過する光の光路を変換するミラーを有していてもよい。ミラーを介して光路を変換することにより、コア部14と、光導波路1の外部に設けられた光学部品と、を光学的に接続することができる。なお、ミラーに代えて屈曲導波路を用いてもよい。
【0036】
2.本実施形態が解決しようとする課題
次に、比較例に係る光導波路の製造方法を説明することにより、本実施形態が解決しようとする課題について説明する。
【0037】
図5は、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための平面図である。
図6は、
図5のB-B線断面図である。
図7ないし
図10は、それぞれ、比較例に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。なお、
図5ないし
図10では、説明の便宜上、本実施形態と同様の構成については、同一の符号を付している。また、
図7ないし
図10は、
図6のD部拡大図に相当する。
【0038】
図5に示すワーク100Xは、側面クラッド部の面積比率が20%未満になっていること以外、本実施形態におけるワーク100と同様である。具体的には、
図5および
図6に示すワーク100Xでは、
図2および
図3に示すワーク100と比べて、第2側面クラッド部17の面積が小さくなっている。これにより、ワーク100X全体で側面クラッド部の面積比率が20%未満という小さな値になっている。このような側面クラッド部の面積比率は、ワーク100Xの製造過程において、部材に反り等の変形が発生する原因となる。以下では、このような課題が生じる理由について説明する。
【0039】
比較例に係る光導波路の製造方法では、まず、
図7(a)に示すように、基材500とコア形成層160との積層体であるコアフィルム600(露光前積層体)を用意する。
【0040】
コア形成層160の形成方法としては、例えば、ワニス状のコア形成用樹脂組成物を基材500上に塗布した後、乾燥させる方法、基材500上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0041】
コア形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0042】
モノマーとしては、可視光、紫外線、赤外線、レーザー光、電子線、X線等の活性放射線の照射により、照射領域において反応して反応物を生成する光重合性モノマーが挙げられる。また、モノマーは、活性放射線の照射時において、コア形成層160中の膜厚と直交する面内方向に移動可能であり、その結果として得られる
図6に示すコア層13Xにおいて、活性放射線Rの照射領域301と非照射領域302との間で屈折率差を生じさせるものであってもよい。
【0043】
次に、
図7(b)に示すように、フォトマスク303を介して、コア形成層160の一部に活性放射線Rを照射する。
図7(b)には、コア形成層160が含むポリマー131およびモノマー132を図示している。モノマー132やモノマー132由来の構造は、ポリマー131よりも屈折率が低い。
【0044】
活性放射線Rを照射した後、コア形成層160を加熱する。この加熱により、照射領域301に存在する重合開始剤が活性化し、モノマー132の反応が進行する。これにより、モノマー132の濃度差が生じ、それに伴ってモノマー132の移動が生じる。その結果、
図8(d)に示すように、照射領域301におけるモノマー132の濃度が上昇するとともに、非照射領域302におけるモノマー132の濃度が低下する。これにより、照射領域301の屈折率は、モノマー132の影響を受けて低くなり、非照射領域302の屈折率は、ポリマー131の影響を受けて高くなる。その結果、
図8(e)に示すように、コア部14、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17を含むコア層13Xが得られる。そして、基材500と、その上に形成されたコア層13Xと、を有する露光後積層体650Xが得られる。
【0045】
ここで、非照射領域302に含まれるモノマー132の少なくとも一部は、前述したように、非照射領域302から照射領域301に移動する。そうすると、非照射領域302の体積は加熱によって減少(収縮)しやすくなる。また、非照射領域302に含まれるモノマー132の多くは、重合しないため、加熱によって揮発しやすい。モノマー132の揮発も、非照射領域302の収縮の原因となる。このような理由から、非照射領域302の面積比率が大きいと、コア形成層160の体積収縮が大きくなる。その結果、露光後積層体650Xには、反り等の変形が生じる。この変形は、後述する、露光後積層体650Xを用いた光導波路1Xの製造に悪影響を及ぼす。
【0046】
露光後積層体650Xを製造した後、
図8(f)に示すように、コア層13Xに対し、クラッド形成層170および第2カバー層19の積層体であるクラッドフィルム702を積層する。その後、得られた部材を加熱する。これにより、コア層13Xとクラッドフィルム702とが接合し、
図9(g)に示すように、コア層13Xを覆う第2クラッド層12が得られる。
【0047】
次に、
図9(h)に示すように、コア層13Xから基材500を剥離する。
次に、
図9(i)に示すように、コア層13Xに対し、クラッド形成層170および第1カバー層18の積層体であるクラッドフィルム701を積層する。その後、得られた部材を加熱する。これにより、コア層13Xとクラッドフィルム701とが接合し、
図10(j)に示すように、コア層13Xを覆う第1クラッド層11が得られる。以上のようにして、
図10(j)に示すワーク100Xが得られる。
【0048】
次に、
図5に示す切り取り線CLに沿って、
図10(k)に示すように、ダイシングブレードDBでワーク100Xを切断する。これにより、
図10(L)に示すように、光導波路1Xが切り出される。
【0049】
以上のような比較例に係る光導波路の製造方法では、前述したように、ワーク100Xにおける側面クラッド部の面積比率が20%未満になっている。側面クラッド部は、照射領域301に対応している。したがって、比較例に係る光導波路の製造方法では、照射領域301が占める面積が、コア形成層160の全体の20%未満になっている。この場合、露光後積層体650Xには、
図8(e)に示すような反り等の変形が発生する。この変形は、ワーク100Xの製造に支障を及ぼし、結果的に光導波路1Xの製造効率の低下を招く。後述する本実施形態に係る光導波路の製造方法によれば、上記のような課題を解決することができる。
【0050】
3.光導波路の製造方法
次に、実施形態に係る光導波路の製造方法について説明する。
図11は、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための工程図である。
図12ないし
図15は、それぞれ、実施形態に係る光導波路の製造方法を説明するための断面図である。なお、
図12ないし
図15は、
図3のC部拡大図に相当する。
【0051】
図11に示す光導波路の製造方法は、部材準備工程S102と、コア層形成工程S104と、クラッド層形成工程S106と、切断工程S108と、を有する。以下、各工程について順次説明する。
【0052】
3.1.部材準備工程
部材準備工程S102は、
図12(a)に示すコアフィルム600を準備する。また、部材準備工程S102では、
図13(f)に示すクラッドフィルム702、および、
図14(i)に示すクラッドフィルム701を準備する。以下、これらの部材について順次説明する。
【0053】
3.1.1.コアフィルム
コアフィルム600は、
図12(a)に示すように、基材500とコア形成層160との積層体である。コアフィルム600は、フィルム形状であり、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0054】
コア形成層160の形成方法としては、例えば、ワニス状のコア形成用樹脂組成物を基材500上に塗布した後、乾燥させる方法、基材500上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0055】
樹脂組成物を塗布する方法では、例えば、スピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーターを用いて塗布する方法、スクリーン印刷のような印刷方法等が用いられる。
【0056】
樹脂膜を積層する方法では、ワニス状のコア形成用樹脂組成物から作製したフィルム状の樹脂膜を、例えばロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法等が用いられる。
【0057】
3.1.1.1.基材
基材500には、例えば、樹脂フィルムが用いられる。基材500の構成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等が挙げられる。
【0058】
なお、基材500には、必要に応じて、コア層13と基材500との剥離を容易にする離型処理等が施されていてもよい。
【0059】
3.1.1.2.コア形成用樹脂組成物
上記のコア形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0060】
3.1.1.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0061】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0062】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0063】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含む化合物が挙げられる。
【0064】
ポリマーの含有量は、例えば、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、コア層13の機械的特性が向上する。また、コア形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、コア形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性が向上する。
【0065】
コア形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0066】
3.1.1.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0067】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0068】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0069】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0070】
モノマーとしては、可視光、紫外線、赤外線、レーザー光、電子線、X線等の活性放射線の照射により、照射領域において反応して反応物を生成する光重合性モノマーを用いてもよい。また、モノマーは、活性放射線の照射時において、コア形成層160中の膜厚と直交する面内方向に移動可能であり、その結果として得られるコア層13において、活性放射線の照射領域と非照射領域との間で屈折率差を生じさせてもよい。
【0071】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。これにより、上記の屈折率差の形成、すなわち屈折率変調をより確実に起こすことができる。
【0072】
3.1.1.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0073】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0074】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型の化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型の化合物等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0075】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、コア層13の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0076】
3.1.1.2.4.その他
コア形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0077】
3.1.1.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のコア形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0078】
コア形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0079】
3.1.2.クラッドフィルム
クラッドフィルム701は、
図14(i)に示すように、第1カバー層18とクラッド形成層170との積層体である。クラッドフィルム702は、
図13(f)に示すように、第2カバー層19とクラッド形成層170との積層体である。クラッドフィルム701、702は、フィルム形状であり、枚葉状であっても、巻き取り可能なロール状であってもよい。
【0080】
クラッド形成層170の形成方法としては、例えば、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物をカバー層上に塗布した後、乾燥させる方法、カバー層上に樹脂膜を積層する方法等が挙げられる。
【0081】
樹脂組成物を塗布する方法では、例えば、スピンコーター、ダイコーター、コンマコーター、カーテンコーター等の各種コーターを用いて塗布する方法、スクリーン印刷のような印刷方法等が用いられる。
【0082】
樹脂膜を積層する方法では、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物から作製したフィルム状の樹脂膜を、例えばロールラミネート、真空ロールラミネート、平板ラミネート、真空平板ラミネート、常圧プレス、真空プレス等を用いて積層する方法等が用いられる。
【0083】
3.1.2.1.カバー層
第1カバー層18および第2カバー層19の膜厚は、特に限定されないが、1~200μm程度であるのが好ましく、3~100μm程度であるのがより好ましく、5~50μm程度であるのがさらに好ましい。各カバー層の膜厚が前記範囲内であれば、第1カバー層18および第2カバー層19によってコア層13等を保護する能力を確保しつつ、ワーク100が厚くなりすぎることの弊害、例えば製造される光導波路1の可撓性が低下すること等を抑制することができる。
【0084】
第1カバー層18および第2カバー層19の膜厚は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、膜厚の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。なお、膜厚が同じとは、膜厚の差が5μm以下であることをいう。
【0085】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレン、ポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなフッ素樹脂、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の各種樹脂を含む材料が挙げられる。
【0086】
第1カバー層18および第2カバー層19の主材料は、互いに異なっていてもよいが、互いに同じであるのが好ましい。これにより、主材料の違いに伴う光導波路1の反りを抑制することができる。
【0087】
第1カバー層18および第2カバー層19の弾性率は、1~12GPaであるのが好ましく、2~11GPaであるのがより好ましく、3~10GPaであるのがさらに好ましい。なお、上記弾性率は、引張り弾性率とする。
【0088】
3.1.2.2.クラッド形成用樹脂組成物
上記のクラッド形成用樹脂組成物としては、例えば、ポリマー、モノマー、重合開始剤等を含む組成物が挙げられる。
【0089】
3.1.2.2.1.ポリマー
ポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、エポキシ系樹脂やオキセタン系樹脂のような環状エーテル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリシラン、ポリシラザン、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィン系樹脂、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、PETやPBTのようなポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリサルフォン、ポリエーテル、また、ベンゾシクロブテン系樹脂やノルボルネン系樹脂等の環状オレフィン系樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて、ポリマーアロイ、ポリマーブレンド(混合物)、共重合体等として用いられる。
【0090】
これらの中でも、ポリマーには、アクリル系樹脂、フェノキシ樹脂、または、環状オレフィン系樹脂が好ましく用いられる。
【0091】
アクリル系樹脂としては、例えば、単官能アクリレート、多官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能メタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ポリエステルアクリレート、および、尿素アクリレートからなる群から選択される1種以上を含むアクリル化合物の重合体が挙げられる。また、アクリル系樹脂は、ポリエステル骨格、ポリプロピレングリコール骨格、ビスフェノール骨格、フルオレン骨格、トリシクロデカン骨格、ジシクロペンタジエン骨格等を有していてもよい。
【0092】
フェノキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールA型エポキシ化合物またはそれらの誘導体、およびビスフェノールF、ビスフェノールF型エポキシ化合物またはそれらの誘導体を共重合成分の構成単位として含む化合物が挙げられる。
【0093】
また、ポリマーは、必要に応じて熱硬化性樹脂を含んでもよい。熱硬化性樹脂としては、例えば、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、マレイミド化合物、ベンゾオキサジン化合物、オキサゾリン化合物、カルボジイミド化合物、シクロカーボネート化合物、多官能オキセタン化合物、エピスルフィド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0094】
ポリマーの含有量は、例えば、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の15質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12の機械的特性が向上する。また、クラッド形成用樹脂組成物に含まれるポリマーの含有量は、クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体の95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12の光学的特性が向上する。
【0095】
クラッド形成用樹脂組成物の固形分全体とは、組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。
【0096】
3.1.2.2.2.モノマー
モノマーとしては、分子構造中に重合可能な部位を有する化合物であればよく、特に限定されないが、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ノルボルネン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、スチレン系モノマー、光二量化モノマー等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0097】
これらの中でも、モノマーとしては、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、または、エポキシ系モノマーが好ましく用いられる。
【0098】
アクリル酸(メタクリル酸)系モノマーとしては、例えば、2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。具体的には、例えば、脂肪族(メタ)アクリレート、脂環式(メタ)アクリレート、芳香族(メタ)アクリレート、複素環式(メタ)アクリレート、またはこれらのエトキシ化体、プロポキシ化体、エトキシ化プロポキシ化体、カプロラクトン変性体等が挙げられる。また、分子内に、ビスフェノール骨格、ウレタン骨格等を有していてもよい。
【0099】
エポキシ系モノマーとしては、例えば、脂環族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物等が挙げられる。
【0100】
モノマーの含有量は、ポリマー100質量部に対し、1質量部以上70質量部以下であることが好ましく、10質量部以上60質量部以下であることがより好ましい。
【0101】
3.1.2.2.3.重合開始剤
重合開始剤は、モノマーの重合反応または架橋反応の種類に応じて適宜選択される。重合開始剤としては、例えば、アクリル酸(メタクリル酸)系モノマー、スチレン系モノマー等のラジカル重合開始剤、エポキシ系モノマー、オキセタン系モノマー、ビニルエーテル系モノマー等のカチオン重合開始剤を用いることができる。
【0102】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、アセトフェノン類等が挙げられる。具体的には、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア2959、イルガキュア184(以上、IGMジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0103】
カチオン重合開始剤としては、例えば、ジアゾニウム塩のようなルイス酸発生型の化合物、ヨードニウム塩、スルホニウム塩のようなブレンステッド酸発生型の化合物等が挙げられる。具体的には、アデカオプトマーSP-170(株式会社ADEKA製)、サンエイドSI-100L(三新化学工業株式会社製)、Rhodorsil2074(ローディアジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0104】
重合開始剤の含有量は、ポリマー100質量部に対し、0.01質量部以上5質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上3質量部以下であることがより好ましい。これにより、第1クラッド層11および第2クラッド層12の光学的特性や機械的特性を低下させることなく、モノマーを速やかに反応させることができる。
【0105】
3.1.2.2.4.その他
クラッド形成用樹脂組成物は、例えば、架橋剤、増感剤(光増感剤)、触媒前駆体、助触媒、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、フィラー、無機粒子、劣化防止剤、濡れ性改良剤、帯電防止剤等をさらに含んでいてもよい。
【0106】
3.1.2.2.5.溶剤
上述した成分を溶剤中に添加し、撹拌することにより、ワニス状のクラッド形成用樹脂組成物が得られる。得られた組成物は、例えば0.2μmの孔径を持つPTFEフィルターによるろ過処理に供されてもよい。また、得られた組成物は、各種混合機による混合処理に供されてもよい。
【0107】
クラッド形成用樹脂組成物に含まれる溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、セルソルブ系、カルビトール系、アニソール、N-メチルピロリドン等の有機溶剤が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0108】
なお、第1クラッド層11を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物と、第2クラッド層12を形成するためのクラッド形成用樹脂組成物とは、互いに同じであっても、互いに異なっていてもよい。
【0109】
3.2.コア層形成工程
コア層形成工程S104では、コア形成層160からコア層13を形成する。具体的には、コア形成層160の一部に活性放射線Rを照射し、非照射領域302に対応するコア部14、ならびに、照射領域301に対応する第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17、を含むコア層13を得る。
【0110】
照射領域301および非照射領域302の設定には、例えば、
図12(b)に示すフォトマスク303を用いる方法が用いられる。フォトマスク303を介して活性放射線Rを照射することにより、フォトマスク303のマスクパターンに対応して照射領域301および非照射領域302を設定することができる。
【0111】
なお、フォトマスク303を用いる方法に代えて、直描露光機304を用いる方法を採用してもよい。
図12(c)では、活性放射線Rを直描露光機304により照射している。直描露光機304としては、例えば、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)のような反射型空間光変調素子、液晶表示素子(LCD)のような透過型空間光変調素子といった各種の空間光変調素子を利用して、照射領域を選択し得る露光機が挙げられる。このような直描露光機304を用いることにより、フォトマスク303を用いることなく、照射領域301および非照射領域302の設定が可能になる。これにより、フォトマスク303を作り変えることなく、照射領域301や非照射領域302の大きさを調整することができるので、光導波路1の製造コストの低減および効率化を図ることができる。
なお、活性放射線Rの照射は、複数回に分けて行うようにしてもよい。
【0112】
図12(b)および
図12(c)には、コア形成層160が含むポリマー131およびモノマー132を図示している。活性放射線Rを照射する前のコア形成層160では、ポリマー131中にモノマー132がほぼ均一に分布している。なお、モノマー132やモノマー132由来の構造は、ポリマー131よりも屈折率が低い。
【0113】
活性放射線Rを照射した後、コア形成層160を加熱する。この加熱により、照射領域301に存在する重合開始剤が活性化し、モノマー132の反応が進行する。これにより、モノマー132の濃度差が生じ、それに伴ってモノマー132の移動が生じる。その結果、
図13(d)に示すように、照射領域301におけるモノマー132の濃度が上昇するとともに、非照射領域302におけるモノマー132の濃度が低下する。これにより、照射領域301の屈折率は、モノマー132の影響を受けて低くなり、非照射領域302の屈折率は、ポリマー131の影響を受けて高くなる。その結果、
図13(e)に示すように、コア部14、第1側面クラッド部15および第2側面クラッド部17を含むコア層13が得られる。そして、コア層13と、それを支持する基材500と、を有する露光後積層体650が得られる。
【0114】
コア形成層160の加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられる。
【0115】
なお、この加熱に伴って、モノマー132が揮発したり、ポリマー131の分子構造が変化したりすることによって屈折率が変化してもよい。
【0116】
3.3.クラッド層形成工程
クラッド層形成工程S106では、露光後積層体650が有するコア層13に第1クラッド層11および第2クラッド層12を積層するとともに、基材500を剥離する。これにより、ワーク100を得る。
【0117】
本実施形態では、
図13(f)に示すように、クラッドフィルム702をコア層13の上面に積層する。そして、得られた積層体を加熱する。これにより、コア層13とクラッドフィルム702とが接合する。その結果、
図14(g)に示すように、コア層13を覆う第2クラッド層12が得られる。これにより、第1積層体660を得る。このときの加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられる。
【0118】
次に、
図14(h)に示すように、第1積層体660のコア層13から基材500を剥離する。これにより、第2積層体670を得る。その後、
図14(i)に示すように、クラッドフィルム701を第2積層体670のコア層13の下面に積層する。そして、得られた積層体を加熱する。これにより、コア層13とクラッドフィルム701とが接合する。その結果、
図15(j)に示すように、コア層13を覆う第1クラッド層11が得られる。このときの加熱条件としては、例えば、加熱温度:100~200℃、加熱時間:10~180分が挙げられるが、第2クラッド層12を形成するときの加熱条件よりも、高温または長時間に設定されるのが好ましい。以上のようにして、
図15(j)に示すワーク100が得られる。
【0119】
3.4.切断工程
切断工程S108では、
図15(k)に示すように、ワーク100を切断する。切断には、例えば、
図15(k)に示すダイシングブレードDBが用いられる。なお、ダイシングブレードDBによる切断に代えて、カッティングソー、レーザー、ルーター、超音波カッター、ウォータージェットによる切断や、刃型による打ち抜きを用いてもよい。
【0120】
ワーク100の切断は、
図2に示す切り取り線CLに沿って行う。これにより、
図15(L)に示すように、光導波路1が切り出される。
【0121】
以上のように、本実施形態に係る光導波路の製造方法は、部材準備工程S102と、コア層形成工程S104と、クラッド層形成工程S106と、切断工程S108と、を有する。部材準備工程S102では、基材500と、基材500に積層されているコア形成層160と、を有するコアフィルム600(露光前積層体)を準備する。コア層形成工程S104では、コア形成層160に活性放射線Rを照射し、非照射領域302に対応するコア部14および照射領域301に対応する側面クラッド部を含むコア層13、ならびに、コア層13を支持する基材500を有する露光後積層体650を得る。クラッド層形成工程S106では、露光後積層体650が有するコア層13にクラッド層である第1クラッド層11および第2クラッド層12を積層し、ワーク100を得る。切断工程S108では、ワーク100から光導波路1を切り出す。
【0122】
また、照射領域301は、コア形成層160の外縁に沿って延在し、枠状をなす枠状部分301Fを含む。さらに、照射領域301の面積は、コア形成層160の全体の20%以上である。以下、コア形成層160の全体の面積に対する照射領域301の面積の割合を、照射領域301の面積比率という。
【0123】
このような構成によれば、照射領域301の面積比率を20%以上確保することにより、体積減少が少ない領域を十分に確保することができるので、露光後積層体650に反り等の著しい変形が発生するのを抑制することができる。特に、照射領域301が枠状部分301Fを含むことで、露光後積層体650の全体の変形を効果的に抑えることができる。これにより、露光後積層体650からワーク100を製造するとき、ワーク100の製造効率を容易に高めることができる。その結果、高い効率で光導波路1を製造することができる。
【0124】
また、照射領域301の面積比率は、好ましくは40%以上とされ、より好ましくは50%以上とされる。一方、照射領域301の面積比率の上限値は、特に設定されないが、ワーク100から切り出される光導波路1の製造効率を考慮すれば、80%以下であるのが好ましく、75%以下であるのがより好ましい。
【0125】
さらに、枠状部分301Fは、照射領域301のうちの50%以上であるのが好ましく、70%以上であるのがより好ましい。これにより、枠状部分301Fに対応する第2側面クラッド部17の占有面積が、第1側面クラッド部15の占有面積に比べて大きくなる。第2側面クラッド部17は、前述したように露光後積層体650の全体の変形を効果的に抑えるのに寄与する。このため、枠状部分301Fの面積比率が前記範囲内であれば、特に変形が少ない露光後積層体650が得られる。
【0126】
また、コア形成層160は、ポリマー131およびモノマー132を含んでいる。コア形成層160は、活性放射線Rの照射により、モノマー132が移動して、照射領域301と非照射領域302との間に屈折率差を生じさせるように構成されているのが好ましい。
【0127】
このような構成によれば、モノマー132の移動や揮発によって、コア形成層160内でより大きな屈折率差を形成することができる。これにより、伝送効率に優れたコア部14を得ることができる。
【0128】
また、ワーク100は、コア層13と、2つのクラッド層である第1クラッド層11および第2クラッド層12と、を備える。第1クラッド層11および第2クラッド層12は、コア層13を介して積層されている。
【0129】
そして、前述したワーク100を得る工程、すなわちクラッド層形成工程S106は、露光後積層体650が有するコア層13に第2クラッド層12を積層し、第1積層体660を得る操作と、第1積層体660から基材500を剥離し、残部を第2積層体670とする操作と、第2積層体670が有するコア層13に第1クラッド層11を積層し、ワーク100を得る操作と、を有する。
【0130】
このような構成によれば、第1クラッド層11および第2クラッド層12でコア層13を挟んだ構造を有しているため、ワーク100では、コア層13と第1クラッド層11および第2クラッド層12との屈折率差が安定している。このため、このようなワーク100を用いることにより、伝送損失が小さい光導波路1を効率よく製造することができる。
【0131】
また、個別に製造したクラッドフィルム701、702を順次積層して第1クラッド層11および第2クラッド層12を製造するというプロセスを採用することができる。これにより、液状組成物を用いた製造工程を用いることなく、多層構造のワーク100、そして、光導波路1を、効率よく製造することができる。
【0132】
また、本実施形態では、ワーク100が、第1カバー層18と第2カバー層19とをさらに備えている。第1カバー層18および第2カバー層19は、コア層13ならびに第1クラッド層11および第2クラッド層12を挟むように積層されている。
【0133】
このような構成によれば、第1クラッド層11および第2クラッド層12を第1カバー層18および第2カバー層19で保護することができる。これにより、ワーク100の耐久性を高めることができる。また、第1カバー層18は、第1クラッド層11と積層され、クラッドフィルム701としてワーク100の製造に供される。さらに、第2カバー層19は、第2クラッド層12と積層され、クラッドフィルム702としてワーク100の製造に供される。このため、第1クラッド層11および第2クラッド層12をコア層13に積層するときの操作性の向上が図られる。
【0134】
4.マーク
上述した光導波路の製造方法では、活性放射線Rの照射やワーク100の切断において、ワーク100と装置との位置合わせが必要となる。
図1に示すワーク100は、この位置合わせに用いる各種マークを有している。
【0135】
図2に示すワーク100は、第2側面クラッド部17と重なる位置に設けられているマーク803を有する。
【0136】
第2側面クラッド部17は、コア部14を取り囲む枠状をなしている部分を有しており、マーク803はこのような部分に設けられている。このため、マーク803は、ワーク100から光導波路1を切り出すときの位置基準として利用することができる。なお、マーク803の利用方法は、これに限定されない。例えば、切り出される前に、ワーク100に対してミラー等の光路変換部を形成する場合、光導波路1に光学部品を組み付ける場合等にも、マーク803を位置基準として利用することができる。
【0137】
【0138】
例えば、
図2に示すワーク100のうち、ユニット200の外側には、
図16に示すように、マーク803としての+字状のマークが設けられている。また、
図2に示すユニット200の内側には、
図16に示すように、マーク803としての同心円状のマークが設けられている。さらに、
図2に示すユニット200の内側で、かつ、ピース300の幅の中心には、
図16に示すように、マーク803としての円形のマークが設けられている。
【0139】
なお、マーク803の形状は、図示した形状に限定されず、いかなる形状であってもよい。
【0140】
図16に示すマーク803は、第2側面クラッド部17よりも屈折率が高い高屈折率部804を有する。
【0141】
このような構成によれば、第2側面クラッド部17を背景としたときのマーク803の見え方、例えば光の通り方を異ならせることができる。これにより、マーク803の視認性を高めることができる。
【0142】
また、本実施形態では、この高屈折率部804の構成材料が、コア部14と同じ材料になっている。これにより、高屈折率部804をコア部14と同時に製造することが可能になる。このため、高屈折率部804を有するマーク803は、製造が容易である。
【0143】
さらに、高屈折率部804は、活性放射線Rの非照射領域302に応じて形成可能である。一方、コア部14も、活性放射線Rの非照射領域302に対応して形成される。したがって、コア部14に対するマーク803の位置精度は、非照射領域302の位置精度と同等であり、非常に高くなる。
【0144】
また、
図1に示すワーク100におけるユニット200やピース300の数や配置は、これに限定されない。
【0145】
以上、本発明の光導波路の製造方法を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。
【0146】
例えば、本発明の光導波路の製造方法は、前記実施形態に任意の目的の工程を追加してもよい。
【実施例】
【0147】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
5.露光後積層体の製造
5.1.ポリマーの合成
ヘキシルノルボルネン(HxNB、7.2g、40.1mmol)、および、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン(diPhNB、12.9g、40.1mmol)を、ドライボックス内で500mLバイアル瓶に計量した。その後、500mLバイアル瓶に脱水トルエン60gと酢酸エチル11gとを加え、シリコン製のシーラーを被せて上部を密栓した。
【0148】
次に、100mLバイアル瓶中にNi触媒1.56g(3.2mmol)および脱水トルエン10mLを計量し、スターラーチップを入れて密栓し、触媒を十分に撹拌して完全に溶解させた。このNi触媒溶液1mLをシリンジで正確に計量し、上記2種のノルボルネンを溶解させたバイアル瓶中に注入して室温で1時間撹拌したところ、著しい粘度上昇が確認された。この時点で栓を抜き、テトラヒドロフラン(THF)60gを加えて撹拌を行い、反応溶液を得た。
【0149】
次に、100mLビーカーに無水酢酸9.5g、過酸化水素水18g(濃度30%)、イオン交換水30gを加えて撹拌し、過酢酸水溶液を調製した。次に、この水溶液全量を上記反応溶液に加えて12時間撹拌し、Niの還元処理を行った。
【0150】
次に、処理が完了した反応溶液を分液ロートに移し替え、下部の水層を除去した後、イソプロピルアルコールの30%水溶液を100mL加えて激しく撹拌した。静置して完全に二層分離が行われた後、水層を除去した。この水洗プロセスを合計で3回繰り返した後、油層を大過剰のアセトン中に滴下し、生成したポリマーを再沈殿させ、ろ過によりろ液と分別した。その後、沈殿物を60℃に設定した真空乾燥機中で12時間加熱乾燥を行うことにより、ポリマーを得た。
【0151】
得られたポリマー中の各構造単位のモル比は、NMR測定による同定の結果、ヘキシルノルボルネン構造単位が50mol%、ジフェニルメチルノルボルネンメトキシシラン構造単位が50mol%であった。
【0152】
5.2.コア形成用樹脂組成物の調製
上記ポリマーの10gを100mLのガラス容器に秤量した後、このガラス容器にメシチレン40g、酸化防止剤Irganox1076(BASF社製、0.01g)、シクロヘキシルオキセタンモノマー(東亜合成社製、CHOX、2g)、重合開始剤(光酸発生剤)Rhodorsil(登録商標) Photoinitiator 2074(Rhodia社製、0.0125g、酢酸エチル0.1mL中)を加えて均一に溶解させた。その後、得られた溶解液を0.2μmのPTFEフィルターによりろ過を行い、ワニス状のコア形成用樹脂組成物を調製した。
【0153】
5.3.コア形成層の作製
離型処理が施された厚さ100μm、一辺が50mmの正方形をなす基材(PETフィルム)上に、上記コア形成用樹脂組成物を、ドクターブレードにより均一に塗布した後、40℃の乾燥機に5分間投入した。溶媒を完全に除去して被膜とした。これにより、膜厚40μmのコア形成層を備えるコアフィルム(露光前積層体)を得た。
【0154】
5.4.露光処理
5.4.1.照射領域の面積比率を変えた露光処理
コアフィルムに対し、直描露光機により紫外線を照射した。紫外線の積算光量は、1300mJ/cm2とした。その後、コアフィルムをオーブンに入れ、加熱温度160℃、加熱時間60分で加熱した。これにより、非照射領域に対応するコア部を含むコア層を得た。そして、コア層と、コア層を支持する基材と、を有する露光後積層体としての試験片E1を得た。
【0155】
図17は、試験片E1を製造するときの、紫外線の照射領域および非照射領域のパターンを示す模式図である。
図17では、ドットを付している領域が照射領域であり、ドットを付していない領域が非照射領域である。なお、試験片E1の製造にあたっては、照射領域の面積比率を5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%の11段階に変えた。
図17には、代表例として、面積比率が20%である照射領域のパターンと、面積比率が95%である照射領域のパターンと、を図示している。
【0156】
5.4.2.照射領域の位置を変えた露光処理
コアフィルムに対し、直描露光機により紫外線を照射した。その後、コアフィルムをオーブンに入れ、加熱温度160℃、加熱時間60分で加熱した。これにより、非照射領域に対応するコア部を含むコア層を得た。そして、コア層と、コア層を支持する基材と、を有する露光後積層体としての試験片E2、E3を得た。
【0157】
図18は、試験片E2、E3を製造するときの、紫外線の照射領域および非照射領域のパターンを示す模式図である。
図18では、ドットを付している領域が照射領域であり、ドットを付していない領域が非照射領域である。試験片E2の製造にあたっては、紫外線の照射領域を、コアフィルムの外縁に沿う枠状部分に設定した。一方、試験片E3の製造にあたっては、紫外線の照射領域を、枠状部分の内側の部分に設定した。なお、試験片E2、E3を製造するときの照射領域の面積比率は、いずれも50%とした。
【0158】
6.試験片E1の評価
6.1.反りの大きさの測定
製造した各試験片E1について、以下の測定方法により変形(反り)の程度を測定した。
図19は、反りが発生した試験片E1について、反りの大きさを測定する方法を示す模式図である。
【0159】
反りの大きさを測定するには、
図19に示すように、各試験片E1の一辺911を、基台92に固定する。固定には、例えば粘着テープ90を用いた。一辺911を固定すると、反りの影響により、対辺912が基台92から浮き上った。そこで、対辺912と基台92との離間距離dの最大値を、各試験片E1の反りの大きさとした。
【0160】
6.2.反りの大きさの評価
6.1で測定した反りの大きさと、各試験片E1を製造するときの照射領域の面積比率と、を直交座標系にプロットした。これにより、
図20に示すグラフを得た。
図20は、各試験片E1を製造するときの照射領域の面積比率と、各試験片E1について測定された反りの大きさと、の関係を示すグラフである。
【0161】
図20に示すように、照射領域の面積比率が20%以上50%未満の範囲では、照射領域の面積比率の増加に伴って、試験片E1の反りの大きさが徐々に低下する傾向が認められた。また、照射領域の面積比率が50%以上の範囲では、試験片E1の反りが十分に小さく抑えられていた。
【0162】
一方、照射領域の面積比率が20%未満の範囲では、試験片E1の反りが著しく、試験片E1が円筒状に丸まってしまった。このため、反りの大きさを測定することができなかった。また、丸まった試験片E1は、クラッドフィルムとの積層に供することは困難であった。
【0163】
以上の評価結果から、本発明によれば、照射領域の面積比率を20%以上にすることで、露光後積層体の反りを抑制可能であることが認められた。
【0164】
7.試験片E2、E3の評価
7.1.反りの大きさの測定
6.1と同様にして、試験片E2、E3の反りの大きさを測定した。
【0165】
7.2.反りの大きさの評価
試験片E2の反りの大きさは、試験片E3より小さく抑えられていた。したがって、照射領域を外縁に沿った枠状に設定することで、露光後積層体の反りを抑制可能であることが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本発明によれば、コア形成層に活性放射線を照射して側面クラッド部が形成される照射領域の面積が、コア形成層の全体の20%以上である。側面クラッド部は、コア部に比べて、製造過程での体積変化が少ない。このため、コア形成層に活性放射線を照射して得られる露光後積層体のコア層の全体に対して側面クラッド部が占める面積の割合、つまり、側面クラッド部の面積比率が前記範囲内になるようにワークを製造することで、露光後積層体における反り等の変形を抑制し、光導波路を効率よく製造することができる。したがって、本発明は、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0167】
1 光導波路
1X 光導波路
11 第1クラッド層
12 第2クラッド層
13 コア層
13X コア層
14 コア部
15 第1側面クラッド部
17 第2側面クラッド部
18 第1カバー層
19 第2カバー層
90 粘着テープ
92 基台
100 ワーク
100C ワーク
100X ワーク
131 ポリマー
132 モノマー
160 コア形成層
170 クラッド形成層
200 ユニット
200C ユニット
300 ピース
301 照射領域
301F 枠状部分
302 非照射領域
303 フォトマスク
304 直描露光機
500 基材
600 コアフィルム
650 露光後積層体
650X 露光後積層体
660 第1積層体
670 第2積層体
701 クラッドフィルム
702 クラッドフィルム
803 マーク
804 高屈折率部
911 一辺
912 対辺
CL 切り取り線
DB ダイシングブレード
E1 試験片
E2 試験片
E3 試験片
R 活性放射線
S102 部材準備工程
S104 コア層形成工程
S106 クラッド層形成工程
S108 切断工程
d 離間距離