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特許7414221展開式太陽電池、展開構造物、及び、宇宙機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】展開式太陽電池、展開構造物、及び、宇宙機
(51)【国際特許分類】
   B64G 1/44 20060101AFI20240109BHJP
   B64G 1/22 20060101ALI20240109BHJP
   E04B 1/34 20060101ALI20240109BHJP
   H02S 30/20 20140101ALI20240109BHJP
【FI】
B64G1/44 300
B64G1/22 100B
B64G1/22 100C
E04B1/34 Z
H02S30/20
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020048056
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021146854
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年(2019年)度、文部科学省、地球観測技術等調査研究委託事業、新宇宙産業を創出するスマート宇宙機器・システムの研究開発拠点、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】512308340
【氏名又は名称】株式会社テクノソルバ
(73)【特許権者】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】中村 和行
(72)【発明者】
【氏名】久原 隆博
(72)【発明者】
【氏名】小澤 悟
(72)【発明者】
【氏名】西 顕太郎
(72)【発明者】
【氏名】松永 三郎
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-252007(JP,A)
【文献】米国特許第09352853(US,B2)
【文献】実開昭58-005821(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64G 1/44
B64G 1/22
H02S 30/20
H01Q 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
前記支持膜により支持されている太陽電池セルと、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記支持膜は、前記径方向における外側に配置されている第1膜部と、前記径方向における内側に配置されている第2膜部と、を含み、
前記第1膜部と前記第2膜部とは、スリットを介して相互に分離しており、
前記第1膜部と前記第2膜部とによって、それぞれ別個の前記太陽電池セルが支持されており、
前記支持膜が前記折り畳み状態のときにおいて、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第1膜部の折り曲げ線の数よりも、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第2膜部の折り曲げ線の数の方が、少ない展開式太陽電池。
【請求項2】
前記第1膜部において、前記折り曲げ線上には前記太陽電池セルが配置されておらず、前記折り曲げ線を間に挟む双方の領域上にそれぞれ前記太陽電池セルが配置されており、
前記第2膜部において、前記折り曲げ線上には前記太陽電池セルが配置されておらず、前記折り曲げ線を間に挟む双方の領域上にそれぞれ前記太陽電池セルが配置されている請求項に記載の展開式太陽電池。
【請求項3】
展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
前記支持膜により支持されている太陽電池セルと、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々の、前記展開軸における他方側の縁辺によって支持されている第2支持膜と、
前記第2支持膜によって支持されている特定機能部と、
を備え、
前記第2支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている展開式太陽電池。
【請求項4】
前記特定機能部は、センサを含む請求項に記載の展開式太陽電池。
【請求項5】
展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
前記支持膜により支持されている太陽電池セルと、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々の、前記展開軸における他方側の縁辺によって支持されているリフレクタ部を備える展開式太陽電池。
【請求項6】
前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々は、薄板状に形成されている請求項1から5のいずれか一項に記載の展開式太陽電池。
【請求項7】
前記展開軸の軸方向において、前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の寸法が互いに同等である請求項1から6のいずれか一項に記載の展開式太陽電池。
【請求項8】
前記支持膜の径方向における外側の縁辺が、当該支持膜における当該縁辺に隣接する部位と比べて補強されている請求項1からのいずれか一項に記載の展開式太陽電池。
【請求項9】
前記支持膜の径方向における外側の縁辺に、補強テープが貼設されていることによって、当該縁辺が補強されている請求項に記載の展開式太陽電池。
【請求項10】
展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記支持膜は、前記径方向における外側に配置されている第1膜部と、前記径方向における内側に配置されている第2膜部と、を含み、
前記第1膜部と前記第2膜部とは、スリットを介して相互に分離しており、
前記第1膜部と前記第2膜部とによって、それぞれ別個の被支持物が支持されており、
前記支持膜が前記折り畳み状態のときにおいて、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第1膜部の折り曲げ線の数よりも、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第2膜部の折り曲げ線の数の方が、少ない展開構造物。
【請求項11】
展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々の、前記展開軸における他方側の縁辺によって支持されている第2支持膜と、
前記第2支持膜によって支持されている特定機能部と、
を備え、
前記第2支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている展開構造物。
【請求項12】
展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々の、前記展開軸における他方側の縁辺によって支持されているリフレクタ部を備える展開構造物。
【請求項13】
構体と、
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の展開式太陽電池、又は、請求項10から請求項12のいずれか一項に記載の展開構造物と、
を備える宇宙機。
【請求項14】
構体と、
展開構造物と、
を備える宇宙機であって、
前記展開構造物は、
展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記構体に設けられていて、画像を撮像する撮像部を更に備え、
前記第1支持体と前記第2支持体とが開いた状態において、前記第1支持体と前記第2支持体とがV字状となるとともに、前記支持膜が扇形となり、前記第1支持体と前記第2支持体との間には、前記支持膜が存在しない空白部が形成され、当該空白部が前記撮像部の視野方向に位置する宇宙機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、展開式太陽電池、展開構造物、及び、宇宙機に関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間で用いられる展開式太陽電池としては、特許文献1に記載のものがある。
特許文献1の展開式太陽電池は、展開軸を基準とした放射状の折り曲げ線に沿って折り曲げ可能な膜に太陽電池パネルが設けられた構造となっている。この展開式太陽電池の膜は、展開動作によって、折り畳み状態から展開状態に変換する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9352853号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献1の展開式太陽電池は、剛性について改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、より十分な剛性を容易に得ることが可能な構造の展開式太陽電池、展開構造物、及び、宇宙機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
前記支持膜により支持されている太陽電池セルと、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記支持膜は、前記径方向における外側に配置されている第1膜部と、前記径方向における内側に配置されている第2膜部と、を含み、
前記第1膜部と前記第2膜部とは、スリットを介して相互に分離しており、
前記第1膜部と前記第2膜部とによって、それぞれ別個の前記太陽電池セルが支持されており、
前記支持膜が前記折り畳み状態のときにおいて、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第1膜部の折り曲げ線の数よりも、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第2膜部の折り曲げ線の数の方が、少ない展開式太陽電池が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されており、
前記支持膜は、前記径方向における外側に配置されている第1膜部と、前記径方向における内側に配置されている第2膜部と、を含み、
前記第1膜部と前記第2膜部とは、スリットを介して相互に分離しており、
前記第1膜部と前記第2膜部とによって、それぞれ別個の被支持物が支持されており、
前記支持膜が前記折り畳み状態のときにおいて、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第1膜部の折り曲げ線の数よりも、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第2膜部の折り曲げ線の数の方が、少ない展開構造物が提供される。
【0008】
また、本発明によれば、構体と、
本発明の展開式太陽電池、又は、本発明の展開構造物と、
を備える宇宙機が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、より十分な剛性を容易に得ることが可能な構造の展開式太陽電池又は展開構造物を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る展開式太陽電池の斜視図であり、展開状態を示す。
図2】第1実施形態に係る展開式太陽電池の斜視図であり、展開状態と収納状態(折り畳み状態)との間の状態(中間状態)を示す。
図3】第1実施形態に係る展開式太陽電池の斜視図であり、収納状態(折り畳み状態)を示す。
図4】第1実施形態に係る展開式太陽電池の平面図であり、展開状態を示す。
図5図5(a)、図5(b)及び図5(c)は第1実施形態に係る展開式太陽電池の支持膜を構成する第1膜部材及び第2膜部材を示す図であり、このうち図5(a)は中間状態における第1膜部材及び第2膜部材の斜視図、図5(b)は中間状態における第1膜部材及び第2膜部材の側面図、図5(c)は収納状態(折り畳み状態)における第1膜部材及び第2膜部材の側面図である。
図6】第1実施形態に係る展開式太陽電池における太陽電池セルの配置例を示す平面図である。
図7】第1実施形態に係る展開式太陽電池の展開機構を説明するための斜視図である。
図8】第1実施形態に係る展開式太陽電池の展開機構を説明するための断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は第2実施形態に係る展開式太陽電池における支持膜の支持構造を説明するための図であり、このうち図9(a)は展開式太陽電池の展開状態を示す斜視図、図9(b)は支持体を径方向に視た模式図である。
図10】第3実施形態に係る展開式太陽電池の斜視図であり、展開状態を示す。
図11】第4実施形態に係る展開式太陽電池の斜視図であり、展開状態を示す。
図12】第4実施形態に係る展開式太陽電池の斜視図であり、展開状態と収納状態(折り畳み状態)との間の状態(中間状態)を示す。
図13】第4実施形態に係る展開式太陽電池の斜視図であり、収納状態(折り畳み状態)を示す。
図14】第4実施形態に係る展開式太陽電池の平面図であり、展開状態を示す。
図15】実施形態に係る宇宙機を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。
【0012】
〔第1実施形態〕
先ず、図1から図8を用いて第1実施形態を説明する。
なお、図7は展開式太陽電池100の中央部を下面側から視た斜視図であり、図8は展開式太陽電池100の中央部を下面側から視た平断面図である。
図1から図4のいずれかに示すように、本実施形態に係る展開式太陽電池100は、展開軸11と、それぞれ展開軸11に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体20と、複数の支持体20の各々の、展開軸11における一方側の縁辺(上縁21a)によって支持されている支持膜30と、支持膜30により支持されている太陽電池セル71(図6)と、を備えている。なお、太陽電池セル71は、例えば、複数の太陽電池セル71がユニット化されたセルユニット72の形態で支持膜30上に設けられている。
複数の支持体20には、展開軸11を基準として相互に開動作可能な第1支持体20a及び第2支持体20bと、第1支持体20a及び第2支持体20bの開方向において第1支持体20aと第2支持体20bとの間に配置されている中間支持体20cと、が含まれている。
支持膜30は、第1支持体20a及び第2支持体20bの開動作に伴い隣り合う支持体20どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている。
【0013】
本実施形態によれば、支持膜30を支持する支持体20の各々は、展開軸11に対して平行な面状に形成されているため、各支持体20の十分な剛性を確保することができ、ひいては展開式太陽電池100の全体の剛性を十分に確保することができる。よって、太陽電池セル71を安定的に支持することができる。
【0014】
また、本実施形態に係る展開構造物80は、本実施形態に係る展開式太陽電池100から太陽電池セル71(セルユニット72)を除いたものである。
すなわち、本実施形態に係る展開構造物80は、展開軸11と、それぞれ展開軸11に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体20と、複数の支持体20の各々の、展開軸11における一方側の縁辺(上縁21a)によって支持されている支持膜30と、を備え、複数の支持体20には、展開軸11を基準として相互に開動作可能な第1支持体20a及び第2支持体20bと、第1支持体20a及び第2支持体20bの開方向において第1支持体20aと第2支持体20bとの間に配置されている中間支持体20cと、が含まれており、支持膜30は、第1支持体20a及び第2支持体20bの開動作に伴い隣り合う支持体20どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている。
なお、本実施形態では、展開構造物80の支持膜30が太陽電池セル71(セルユニット72)を支持している例を説明するが、本発明において、展開構造物80は、支持膜30によって太陽電池セル71(セルユニット72)を支持する態様に限らず、支持膜30によってその他のもの(例えば、センサ類)を支持するようにしてもよい。
【0015】
図1図2及び図4等においては、太陽電池セル71(セルユニット72)の図示を省略している。
本明細書においては、便宜的に、展開軸11における一方側(上縁21aが位置する側)を上といい、その反対側を下という。この便宜的な上下方向は、展開式太陽電池100又は展開構造物80を製造または使用する際における上下方向とは必ずしも一致しない。また、径方向とは、展開軸11を中心とする放射方向のことである。
【0016】
展開式太陽電池100又は展開構造物80は、例えば、宇宙空間で展開される。ただし、展開式太陽電池100又は展開構造物80を使用する場所は、宇宙空間に限らず、例えば、地上や成層圏などであってもよい。
【0017】
展開軸11は、上下に延在する直線状の棒状に形成されている。
複数の支持体20によって、支持膜30を支持する支持構造部12が構成されている。支持構造部12は、展開軸11の周囲に展開可能となっている。支持構造部12が備える支持体20の数は、特に限定されないが、本実施形態の場合、支持構造部12は、例えば、5個の支持体20を備えている。
支持体20どうしは、平面視(展開軸11の軸方向に支持構造部12を視たとき)において、概ね回転対称な配置とされている。
【0018】
図4に示すように、展開状態においては、複数の支持体20は、展開軸11の周囲に放射状に配置される。すなわち、展開状態において、支持構造部12の平面形状(各支持体20の遠位端を包絡する平面形状)は、五角形となる。
【0019】
図3に示すように、収納状態においては、複数の支持体20は、展開軸11を基準として互いにほぼ同じ方向に延伸した状態となる。換言すれば、収納状態においては、支持構造部12が備える複数の支持体20は、周方向において互いに近接するとともに、周方向において互いに重なった状態となる。
収納状態では、支持膜30において、隣り合う支持体20どうしの間に架設されている部分は、これら支持体20の間に挟まれて折り畳まれた状態となる。このため、展開式太陽電池100を宇宙空間などに打ち上げる際において、支持膜30上の太陽電池セル71を、支持体20によって、打上時環境から保護することができる。
【0020】
以下、展開式太陽電池100において、隣り合う一対の支持体20間の部分を、単位モジュール15と称する場合がある。隣り合う単位モジュール15は、それらの境界に位置する支持体20を共有している。本実施形態の場合、展開式太陽電池100は、4個の単位モジュール15を備えている。
【0021】
第1支持体20a、第2支持体20b、及び、中間支持体20cの各々は、薄板状に形成されている。すなわち、各支持体20は、展開軸11を中心とする放射方向に長尺で展開軸11に対して平行な薄板状に形成されている。
【0022】
支持体20は、より詳細には、平板状の板状部21と、板状部21に固定されている第1支持アーム25(図3)及び第2支持アーム26(図3)と、を備えて構成されている。
板状部21は、展開軸11を中心とする放射方向に長尺で展開軸11に対して平行な薄板状に形成されている。
【0023】
第1支持アーム25及び第2支持アーム26は、展開軸11に軸支されている。
すなわち、第1支持アーム25の一端部には、挿通孔が形成されており、この挿通孔に展開軸11が挿通されることによって、第1支持アーム25は展開軸11の軸周りに回転可能に軸支されている。
同様に、第2支持アーム26の一端部には、挿通孔が形成されており、この挿通孔に展開軸11が挿通されることによって、第2支持アーム26は展開軸11の軸周りに回転可能に軸支されている。
ただし、複数の支持体20のうち、第1支持体20aの第1支持アーム25及び第2支持アーム26は、展開軸11に固定されていてもよい。
【0024】
第1支持アーム25の他端部すなわち先端部25b、及び、第2支持アーム26の他端部すなわち先端部26bは、板状部21における径方向内側の端部に固定されている。
板状部21は、例えば、径方向内側に延出している上下一対の延出部(第1延出部22、第2延出部23(図7))を有している。
第1支持アーム25の先端部25bは、板状部21の第1延出部22に固定されており、第2支持アーム26の先端部26bは、板状部21の第2延出部23に固定されている。これにより、板状部21は、上下一対の支持アーム(第1支持アーム25、第2支持アーム26)を介して展開軸11に軸支されている。すなわち、板状部21、第1支持アーム25及び第2支持アーム26を含む支持体20が、展開軸11に軸支されている。
各支持体20において、第1延出部22が配置されている高さ位置と第2延出部23が配置されている高さ位置との高低差は、第1支持アーム25が配置されている高さ位置と第2支持アーム26が配置されている高さ位置との高低差と等しくなっている。
【0025】
ここで、互いに隣り合う支持体20の第1支持アーム25どうしは、第1支持アーム25の厚み分だけ、互いに高さ位置が異なっている。
同様に、互いに隣り合う支持体20の第2支持アーム26どうしは第2支持アーム26の厚み分だけ、互いに高さ位置が異なっている。
図3に示すように、第1支持アーム25どうしは互いに重ねて配置されているとともに、第2支持アーム26どうしは互いに重ねて配置されている。
【0026】
本実施形態の場合、展開軸11の軸方向において、第1支持体20a、第2支持体20b、及び、中間支持体20cの寸法が互いに同等である。すなわち、各支持体20の上下寸法は、互いに同等となっている。
【0027】
より詳細には、例えば、各支持体20の上下寸法は互いに等しい。また、各支持体20の長手寸法(径方向における寸法)は、互いに等しい。
なお、図1に示すように、例えば、支持体20の上下寸法は、先端側(径方向外側)に向けて、徐々に大きくなっている。
より詳細には、支持体20を構成する板状部21の上縁21aは、例えば、展開軸11に対して直交する方向に延在(水平に延在)している。一方、板状部21の下縁21bは、例えば、展開軸11から遠ざかるにつれて下り傾斜している。板状部21の遠位端縁21c(展開軸11から遠い側の端縁)は、例えば、展開軸11に対して平行に延在している。また、板状部21の近位端縁21d(展開軸11に近い側の端縁)は、例えば、展開軸11に対して平行に延在している。
【0028】
図1に示すように、支持膜30は、展開軸11における一方側の第1支持体20aの縁辺と第2支持体20bの縁辺との間に架設されている。すなわち、支持膜30は、第1支持体20aの上縁21aと第2支持体20bの上縁21aとの間に架設されている。支持膜30の一部分ずつは、隣り合う支持体20の上縁21a間に架設されている。
展開式太陽電池100が収納状態から展開状態に移行すると、支持膜30は、図3に示す折り畳み状態から、図2に示す途中の状態を経て、図1及び図4に示す展開状態に変換する。例えば、展開状態において、支持膜30は、その全体が平坦且つ水平に配置される。
【0029】
なお、本実施形態の場合、第1支持体20aと第2支持体20bとが開いた状態において、平面視において、第1支持体20aと第2支持体20bとを合わせた形状がV字状となるとともに、支持膜30が略扇形となり、第1支持体20aと第2支持体20bとの間には、支持膜30が存在しない空白部34が形成される。
【0030】
図4に示すように、本実施形態の場合、支持膜30は、径方向における外側に配置されている第1膜部31と、径方向における内側に配置されている第2膜部32と、を含む。第1膜部31と第2膜部32とは、スリット43を介して相互に分離している。
後述するように、第1膜部31と第2膜部32とによって、それぞれ別個の太陽電池セル71が支持されている。
【0031】
第1膜部31は、全体が一体的な膜であってもよいし、隣り合う支持体20どうしの間の部分毎に個別に配置された複数の膜の集合体であってもよい。本実施形態の場合、第1膜部31の構造は後者である。
すなわち、本実施形態の場合、第1膜部31は、例えば、それぞれ略扇形形状の4つの第1膜部材35の集合体となっている。各第1膜部材35の周方向における両端部には、当該第1膜部材35を貼り付けるための貼付部37(図1図5(a)、図5(b)、図5(c))がそれぞれ形成されている。
第1膜部材35は、当該第1膜部材35の2つの貼付部37のうちの一方が、隣り合う支持体20のうちの一方の上縁部(上縁21aに沿う部分)に貼り付けられ、2つの貼付部37のうちの他方が、隣り合う支持体20のうちの他方の上縁部に貼り付けられることによって、隣り合う支持体20どうしの間に架設されている。
【0032】
同様に、第2膜部32は、全体が一体的な膜であってもよいし、隣り合う支持体20どうしの間の部分毎に個別に配置された複数の膜の集合体であってもよい。本実施形態の場合、第2膜部32の構造は後者である。
すなわち、本実施形態の場合、第2膜部32は、例えば、それぞれ略扇形形状の4つの第2膜部材36の集合体となっている。各第2膜部材36の周方向における両端部には、当該第2膜部材36を貼り付けるための貼付部37(図1図5(a)、図5(b)、図5(c))がそれぞれ形成されている。
第2膜部材36は、当該第2膜部材36の2つの貼付部37のうちの一方が、隣り合う支持体20のうちの一方の上縁部(上縁21aに沿う部分)に貼り付けられ、2つの貼付部37のうちの他方が、隣り合う支持体20のうちの他方の上縁部に貼り付けられることによって、隣り合う支持体20どうしの間に架設されている。
【0033】
第1膜部材35と第2膜部材36とが互いに干渉しないように、図4に示すように、第1膜部材35と第2膜部材36との間にはスリット43が形成されている。
【0034】
支持膜30が折り畳み状態のときにおいて、隣り合う支持体20どうしの間における第1膜部31の折り曲げ線41(図2参照)の数よりも、隣り合う支持体20どうしの間における第2膜部32の折り曲げ線42の数の方が、少ない。
これにより、収納状態のときに、展開式太陽電池100の径方向における外側(外周側)においては、支持膜30が小さい上下寸法となるように支持膜30を折り畳むことができるとともに、展開式太陽電池100の径方向における内側(中央部)においては、周方向における支持膜30の嵩張りを抑制することができる。
【0035】
本実施形態の場合、第1膜部31は、隣り合う支持体20どうしの間において、W字状に折り畳まれる。すなわち、図2及び図5(a)に示すように、第1膜部31において、隣り合う支持体20どうしの間に位置する部分は、折り曲げ線41として、2つの谷折り線41aと1つの山折り線41bとを有する形状に折り畳まれる。各折り曲げ線41は、平面視において、展開軸11を中心とする放射状に延在している。ここで、谷折り線とは、下方に向けて凸の折り曲げ線であり、山折り線とは、上方に向けて凸の折り曲げ線である。
また、第2膜部32は、隣り合う支持体20どうしの間において、V字状に折り畳まれる。すなわち、図2及び図5(a)に示すように、第2膜部32において、隣り合う支持体20どうしの間に位置する部分は、谷折り線である1つの折り曲げ線42を有する形状に折り畳まれる。折り曲げ線42は、平面視において、展開軸11を中心とする放射状に延在している。
【0036】
図4に示すように、各第1膜部材35は、互いに同一形状の4つの二等辺三角形を周方向に連ねたような、略扇形の形状となっている。第1膜部材35を構成する二等辺三角形のうち、隣り合う二等辺三角形どうしの境界線が、折り曲げ線41(谷折り線41a又は山折り線41b)となっている。
同様に、各第2膜部材36は、互いに同一形状の2つの二等辺三角形を周方向に連ねたような、略扇形の形状となっている。第2膜部材36を構成する二等辺三角形のうち、隣り合う二等辺三角形どうしの境界線が、折り曲げ線42となっている。
第1膜部材35の略扇形形状の中心角と、第2膜部材36の略扇形形状の中心角とは、互いに等しく、第1膜部材35の略扇形形状の中心、及び、第2膜部材36の略扇形形状の中心は、展開軸11の位置となっている。
【0037】
なお、一例として、平面視における展開式太陽電池100の中央部には、展開軸11の周囲において、隣り合う支持体20どうしの間の部分に、略扇形の開口(中央開口39)が形成されている。そして、中央開口39の外側に支持膜30(第2膜部32及び第1膜部31)が配置されている。
【0038】
例えば、支持膜30は、折り曲げ線(折り曲げ線41、折り曲げ線42)において、容易に折り曲げ可能となるように、予め癖付けされている。本実施形態の場合、第1膜部材35は、谷折り線41a及び山折り線41bにおいて、それぞれ谷折り及び山折りに容易に折れ曲がるように、予め癖付けされている。同様に、第2膜部材36は、折り曲げ線42において谷折りに容易に折れ曲がるように、予め癖付けされている。
【0039】
ただし、支持膜30において、折り曲げ線を境界とする両側の部分は、別個の膜により構成されており、柔軟なテープ等の面接合材を介して相互に連結されていることも好ましい。この場合も、支持膜30は折り曲げ線において、容易に折れ曲がり可能となる。
【0040】
支持膜30の材料は、特に限定されないが、一例として、支持膜30は、ポリイミドなどの樹脂材料により構成されている。
【0041】
ここで、支持膜30の径方向における外側の縁辺(外側縁辺33)が、当該支持膜30における当該縁辺に隣接する部位と比べて補強されていることが好ましい。
本実施形態の場合、支持膜30の裏面(下面)には、外側縁辺33に沿って、補強テープが貼り付けられている。これにより、支持膜30の外側縁辺33は、補強部38となっている。すなわち、支持膜30の径方向における外側の縁辺(外側縁辺33)に、補強テープが貼設されていることによって、当該縁辺が補強されている。
図1及び図4に示すように、補強部38は、各折り曲げ線を境として、分割されていることが好ましい。このようにすることによって、支持膜30は、各折り曲げ線において容易に折れ曲がり可能となる。
【0042】
次に、図6を用いて、展開式太陽電池100における太陽電池セル71の配置例を説明する。
図6に示すように、本実施形態の場合、太陽電池セル71は、例えば、複数の太陽電池セル71が直列に接続されてユニット化されているセルユニット72の形態で支持膜30上に設けられている。
なお、図6においては、展開式太陽電池100が備える太陽電池セル71のうち、1つの第1膜部材35の周方向における半分の部分に配置されている太陽電池セル71と、1つの第2膜部材36の周方向における半分の部分に配置されている太陽電池セル71のみを示しており、その他の太陽電池セル71については図示を省略している。図示を省略している太陽電池セル71は、図示している太陽電池セル71と同様の規則性で配置されている。
第2膜部32の第2膜部材36上においては、折り曲げ線42を境界とする片側の領域において、例えば、2つのセルユニット72が、径方向に沿って互いに並列に配置されている。
第1膜部31の第1膜部材35上においては、例えば、谷折り線41aを境界とする片側の領域において、折り曲げ線41径方向における中心側から順に、径方向に沿う2列のセルユニット72、周方向に沿う1列のセルユニット72、径方向に沿う3列のセルユニット72、径方向に沿う4列のセルユニット72、径方向に沿う更に4列のセルユニット72、及び、径方向に沿う更に5列のセルユニット72が配置されている。
なお、ここで説明したセルユニット72及び太陽電池セル71の配置は、一例であり、必要な発電能力等に応じて変更される。
【0043】
ここで、セルユニット72は、いずれの折り曲げ線も跨がないように配置されている。また、第1膜部31及び第2膜部32において、各折り曲げ線を間に挟む両側の領域、それぞれセルユニット72が配置されている。
すなわち、第1膜部31において、折り曲げ線41(谷折り線41a、山折り線41b)上には太陽電池セル71が配置されておらず、折り曲げ線41を間に挟む双方の領域上にそれぞれ太陽電池セル71が配置されている。同様に、第2膜部32において、折り曲げ線42上には太陽電池セル71が配置されておらず、折り曲げ線42を間に挟む双方の領域上にそれぞれ太陽電池セル71が配置されている。
このため、太陽電池セル71が支持膜30の折曲げの妨げとなることを抑制できるとともに、太陽電池セル71が支持膜30上の各領域にまんべんなく配置された構造を実現することができる。
【0044】
ここで、図1に示すように、支持構造部12の遠位端部には、クロスケーブル51が設けられていることが好ましい。クロスケーブル51は、例えば、互いに隣り合う支持体20の板状部21の遠位端縁21cの上端(上側角部21e)と下端(下側角部21f)とを連結している。なお、図2及び図3等においては、クロスケーブル51の図示を省略している。
【0045】
次に、図7及び図8を用いて、展開式太陽電池100の展開動作を行う展開機構の一例を説明する。
本実施形態の場合、展開式太陽電池100は、例えば、展開用板バネ52の付勢力を動力源として、展開動作を行う。展開用板バネ52は、渦巻状に巻回されている巻きバネである。展開用板バネ52の一端部は、第1固定部53に固定されており、第1固定部53は、展開軸11に固定されている。更に、第1支持体20aの第1支持アーム25及び第2支持アーム26は、例えば、展開軸11に対して固定されている。
展開用板バネ52は、初期状態では、弾性復元力を蓄えた状態となっている。そして、図示しない拘束部材によって、展開用板バネ52は、弾性復元力を蓄えた状態に保持されている。展開式太陽電池100を宇宙空間などに打ち上げた後、例えば爆破により拘束部材を破壊することによって、展開用板バネ52は弾性復元する。これにより、第1支持体20aと第2支持体20bとが展開軸11において相対的に回転して開き、支持膜30が折り畳み状態から展開状態に変換する。
なお、展開式太陽電池100の展開機構は、この例に限らず、例えば、モータを備えて構成されていてもよい。
【0046】
また、展開式太陽電池100は、展開式太陽電池100を展開状態に維持させるラッチ機構(不図示)を備えていてもよい。
また、展開式太陽電池100は、一旦展開した後で、再び展開状態から収納状態(折り畳み状態)に変形させることが可能であってもよい。また、必要により展開動作を途中で停止させ、展開式太陽電池100を折り畳み、その後、展開動作をやり直すことが可能であってもよい。
【0047】
支持体20の板状部21の材料は、特に限定されないが、板状部21は、例えば、炭素繊維強化プラスチック(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)により構成することができる。
展開式太陽電池100における板状部21及び支持膜30以外の各部の材料は、特に限定されないが、軽量で且つ十分な強度を確保できる材料であることが好ましく、一例として、炭素繊維強化プラスチックを用いてもよいし、金属材料を用いてもよい。
【0048】
ここで、展開式太陽電池100は、ブーム61に固定されている。ブーム61は、例えば、ブーム展開機構(不図示)を介して、宇宙機の構体(以下、宇宙機構体)に連結されている。
ブーム61は、例えば、一方向に長尺な棒状に形成されている。ブーム61は、展開軸11を中心とする放射方向に延在している。例えば、ブーム61の一端部は、図示しない連結部材を介して展開軸11の上端部に対して連結されている。
例えば、上述の展開機構により第1支持体20aと第2支持体20bとが相互に開いて支持膜30が展開状態となった後、更に、展開軸11が軸周りに回転するのに伴いブーム61が旋回し、図1及び図4に示す位置で展開軸11の軸回転及びブーム61の旋回が停止するように、展開構造物80は、図示しないストッパー機構を備えている。これにより、平面視において、ブーム61が第1支持体20aと第2支持体20bとの中間位置において径方向に延在するようになる。
【0049】
次に、図15を用いて本実施形態に係る宇宙機200について説明する。
本実施形態に係る宇宙機200は、構体(宇宙機構体)210と、本実施形態に係る展開式太陽電池100又は展開構造物80と、を備えて構成されている。
【0050】
ここで、宇宙機200は、構体210に設けられていて画像を撮像する撮像部220(カメラ)を備えていることが挙げられる。この場合、撮像部220(特に、図15に示す撮像部220a)の視野方向に上述の空白部34が位置していることが好ましい。すなわち、展開式太陽電池100又は展開構造物80は、撮像部220aの視野を確保した構造となっていることが好ましい。
このように、好ましい一例として、第1支持体20aと第2支持体20bとが開いた状態において、第1支持体20aと第2支持体20bとがV字状となるとともに、支持膜30が扇形となり、第1支持体20aと第2支持体20bとの間には、支持膜30が存在しない空白部34が形成され、当該空白部34が撮像部220aの視野方向に位置する。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、図9(a)及び図9(b)を用いて第2実施形態を説明する。
本実施形態に係る展開式太陽電池100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る展開式太陽電池100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る展開式太陽電池100と同様に構成されている。
【0052】
上記の第1実施形態では、第1膜部材35及び第2膜部材36の両端部の貼付部37が支持体20の板状部21に貼り付けられることによって、支持膜30(第1膜部31及び第2膜部32)が複数の支持体20によって支持されている例を説明した。また、第1膜部31及び第2膜部32が周方向において複数の部分に分割されている例を説明した(第1膜部31が複数の第1膜部材35により構成されているとともに、第2膜部32が複数の第2膜部材36により構成されている例を説明した)。
これに対し、本実施形態の場合、展開式太陽電池100は、支持体20の上縁21a上に設けられている支持部材62を備えており、支持膜30は、支持部材62を介して支持体20によって支持されている。
また、図9(a)に示すように、支持部材62は、上縁21aの長手方向における複数箇所に設けられていることが好ましい。また、収納状態において、隣り合う支持体20に設けられている支持部材62どうしが干渉することを抑制するために、隣り合う支持体20に設けられている支持部材62どうしが径方向において互いにずれた位置に配置されていることが好ましい。
例えば、支持部材62は、水平に配置されており、支持部材62と板状部21とを合わせた形状がT字状となっている(図9(b))。
本実施形態の場合、支持膜30は、板状部21上に設けられた支持部材62を跨ぐ両側部分に亘って、周方向において連続的に存在するようにできる。すなわち、例えば、第1膜部材35及び第2膜部材36の各々は、板状部21上に設けられた支持部材62を跨ぐ両側部分に亘って、周方向において連続的に存在するようにできる。よって、例えば、第1膜部31が1枚の第1膜部材35により構成されていたり、第2膜部32が1枚の第2膜部材36により構成されていたりしてもよい。
【0053】
〔第3実施形態〕
次に、図10を用いて第3実施形態を説明する。
本実施形態に係る展開式太陽電池100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る展開式太陽電池100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る展開式太陽電池100と同様に構成されている。
【0054】
図10に示すように、本実施形態の場合、展開式太陽電池100は、裏面側(下面側)に設けられている第2支持膜90を更に備えている。つまり、各支持体20は、展開軸11に対して平行な面状に形成されているため、裏面側にも容易に支持膜(第2支持膜90)取り付けることができる。第2支持膜90によって、例えば、センサ等の特定機能部95が支持されている。
すなわち、本実施形態の場合、展開式太陽電池100は、第1支持体20a、第2支持体20b、及び、中間支持体20cの各々の、展開軸11における他方側の縁辺(下縁21b)によって支持されている第2支持膜90と、第2支持膜90によって支持されている特定機能部と、を備えている。
第2支持膜90は、展開軸11における他方側の第1支持体20aの縁辺(下縁21b)と第2支持体20bの縁辺(下縁21b)との間に架設されているとともに、第1支持体20a及び第2支持体20bの開動作に伴い隣り合う支持体20どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている。
また、特定機能部95は、例えば、センサを含んで構成されている。
一例として、特定機能部95は、デブリを検出するフィルム状のデブリセンサ、フィルム状の平面アンテナ、又は、ソーラーセイル(太陽帆)などであることが挙げられる。
【0055】
〔第4実施形態〕
次に、図11から図14を用いて第4実施形態を説明する。
本実施形態に係る展開式太陽電池100は、以下に説明する点で、上記の第1実施形態に係る展開式太陽電池100と相違しており、その他の点では、上記の第1実施形態に係る展開式太陽電池100と同様に構成されている。
【0056】
上記の第1実施形態では、展開状態において展開式太陽電池100が五角形状となる例を説明した。これに対し、本実施形態の場合、展開式太陽電池100は、展開状態において、六角形状となる。
また、本実施形態の場合、展開式太陽電池100は、展開状態において、空白部34を有さない形状となる。このため、展開状態において、第1支持体20aと第2支持体20bとが互いに面接触する状態となる(図11参照)。
本実施形態の場合、ブーム61は、例えば、いずれかの支持体20(例えば第2支持体20b)に設けられていてもよい。
また、上記の第1実施形態では、支持膜30が第1膜部31と第2膜部32とを含んで構成されている例を説明したが、本実施形態の場合、支持膜30を構成する膜部材30aは、径方向における内側と外側とでは分離しておらず、周方向においてのみ複数に分割されている。
本実施形態の場合、支持膜30において、隣り合う支持体20どうしの間に位置する部分は、W字状に折り畳まれる(図12参照)。このため、支持膜30の折り曲げ線44は、隣り合う支持体20どうしの間に3つずつ形成されている。各膜部材30aは、2つの谷折り線44aと1つの山折り線44bとを有する形状に折り畳まれる。各折り曲げ線44は、平面視において、展開軸11を中心とする放射状に延在している。
【0057】
一例として、図14等においては、各単位モジュール15において、外側縁辺33が直線状となっている例を示している。この場合、展開状態において支持膜30をより良好に平らにすることができるとともに、外側縁辺33が直線状となるため、外側縁辺33により大きな張力を掛けやすくなる。この場合、支持膜30において各折り曲げ線44a、44bを境界とする部分は、折り畳まれた状態で相互に完全には重ならない形状(隣り合う部分どうしが互いに異なる形状)となっている。
ただし、各折り曲げ線44a、44bを境界とする部分が互いに合同の略二等辺三角形となっていて、折り畳まれた状態で相互に完全に重なるようになっていてもよい。このようにした場合の方が、支持膜30の面積を大きくすることができる。
【0058】
以上、図面を参照して各実施形態を説明したが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0059】
例えば、上記の第3実施形態では、展開式太陽電池100が裏面側に第2支持膜90を備え、第2支持膜90によってセンサ等の特定機能部95が支持されている例を説明したが、本発明は、この例に限らず、展開式太陽電池100は、第2支持膜90の代わりにリフレクタ部(アンテナ部)を備えていてもよい。
すなわち、展開式太陽電池100は、例えば、第1支持体20a、第2支持体20b、及び、中間支持体20cの各々の、展開軸11における他方側の縁辺(下縁21b)によって支持されているリフレクタ部を備える。
リフレクタ部は、例えば、SAR(SAR:Synthetic Aperture Radar)、合成開口レーダー、又は通信用の送信又は受信アンテナなどとすることができる。
【0060】
また、上記の各実施形態では、支持膜30によって太陽電池セル71が支持されている例を説明したが、本発明において、展開構造物80は、必ずしも太陽電池セル71を支持していなくてもよい。例えば、展開構造物80の支持膜30は、太陽電池セル71を支持していない代わりに、平面アンテナ、センサ又はソーラーセイルなどのうちいずれか1つ以上を支持していてもよい。
【0061】
また、上記の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜に組み合わせることができる。
【0062】
本実施形態は以下の技術思想を包含する。
(1)展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
前記支持膜により支持されている太陽電池セルと、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている展開式太陽電池。
(2)前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々は、薄板状に形成されている(1)に記載の展開式太陽電池。
(3)前記展開軸の軸方向において、前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の寸法が互いに同等である(1)又は(2)に記載の展開式太陽電池。
(4)前記支持膜の径方向における外側の縁辺が、当該支持膜における当該縁辺に隣接する部位と比べて補強されている(1)から(3)のいずれか一項に記載の展開式太陽電池。
(5)前記支持膜の径方向における外側の縁辺に、補強テープが貼設されていることによって、当該縁辺が補強されている(4)に記載の展開式太陽電池。
(6)前記支持膜は、前記径方向における外側に配置されている第1膜部と、前記径方向における内側に配置されている第2膜部と、を含み、
前記第1膜部と前記第2膜部とは、スリットを介して相互に分離しており、
前記第1膜部と前記第2膜部とによって、それぞれ別個の前記太陽電池セルが支持されており、
前記支持膜が前記折り畳み状態のときにおいて、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第1膜部の折り曲げ線の数よりも、隣り合う前記支持体どうしの間における前記第2膜部の折り曲げ線の数の方が、少ない(1)から(5)のいずれか一項に記載の展開式太陽電池。
(7)前記第1膜部において、前記折り曲げ線上には前記太陽電池セルが配置されておらず、前記折り曲げ線を間に挟む双方の領域上にそれぞれ前記太陽電池セルが配置されており、
前記第2膜部において、前記折り曲げ線上には前記太陽電池セルが配置されておらず、前記折り曲げ線を間に挟む双方の領域上にそれぞれ前記太陽電池セルが配置されている(6)に記載の展開式太陽電池。
(8)前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々の、前記展開軸における他方側の縁辺によって支持されている第2支持膜と、
前記第2支持膜によって支持されている特定機能部と、
を備え、
前記第2支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている(1)から(7)のいずれか一項に記載の展開式太陽電池。
(9)前記特定機能部は、センサを含む(8)に記載の展開式太陽電池。
(10)前記第1支持体、前記第2支持体、及び、前記中間支持体の各々の、前記展開軸における他方側の縁辺によって支持されているリフレクタ部を備える(1)から(7)のいずれか一項に記載の展開式太陽電池。
(11)展開軸と、
それぞれ前記展開軸に対して平行な面状に形成されているとともに径方向に長尺に形成されている複数の支持体と、
前記複数の支持体の各々の、前記展開軸における一方側の縁辺によって支持されている支持膜と、
を備え、
前記複数の支持体には、前記展開軸を基準として相互に開動作可能な第1支持体及び第2支持体と、前記第1支持体及び前記第2支持体の開方向において前記第1支持体と前記第2支持体との間に配置されている中間支持体と、が含まれており、
前記支持膜は、前記第1支持体及び前記第2支持体の開動作に伴い隣り合う前記支持体どうしの間において折り畳み状態から展開状態に変換可能に構成されている展開構造物。
(12)構体と、
(1)から(10)のいずれか一項に記載の展開式太陽電池、又は、(11)に記載の展開構造物と、
を備える宇宙機。
(13)前記構体に設けられていて、画像を撮像する撮像部を更に備え、
前記第1支持体と前記第2支持体とが開いた状態において、前記第1支持体と前記第2支持体とがV字状となるとともに、前記支持膜が扇形となり、前記第1支持体と前記第2支持体との間には、前記支持膜が存在しない空白部が形成され、当該空白部が前記撮像部の視野方向に位置する(12)に記載の宇宙機。
【符号の説明】
【0063】
11 展開軸
12 支持構造部
15 単位モジュール
20 支持体
20a 第1支持体
20b 第2支持体
20c 中間支持体
21 板状部
21a 上縁(展開軸における一方側の縁辺)
21b 下縁(展開軸における他方側の縁辺)
21c 遠位端縁
21d 近位端縁
21e 上側角部
21f 下側角部
22 第1延出部
23 第2延出部
25 第1支持アーム
25b 先端部
26 第2支持アーム
26b 先端部
30 支持膜
30a 膜部材
31 第1膜部
32 第2膜部
33 外側縁辺
34 空白部
35 第1膜部材
36 第2膜部材
37 貼付部
38 補強部
39 中央開口
41 折り曲げ線(第1膜部の折り曲げ線)
41a 谷折り線(第1膜部の折り曲げ線)
41b 山折り線(第1膜部の折り曲げ線)
42 折り曲げ線(第2膜部の折り曲げ線)
43 スリット
44 折り曲げ線
44a 谷折り線
44b 山折り線
51 クロスケーブル
52 展開用板バネ
53 第1固定部
54 第2固定部
61 ブーム
62 支持部材
71 太陽電池セル
72 セルユニット
80 展開構造物
90 第2支持膜
95 特定機能部
100 展開式太陽電池
200 宇宙機
210 宇宙機構体(構体)
220 撮像部
図1
図2
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