(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-05
(45)【発行日】2024-01-16
(54)【発明の名称】チェーンクランプ養生材
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E04G5/00 301H
(21)【出願番号】P 2023104477
(22)【出願日】2023-06-26
【審査請求日】2023-10-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506197934
【氏名又は名称】シーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140006
【氏名又は名称】渕上 宏二
(72)【発明者】
【氏名】小坂 尚子
(72)【発明者】
【氏名】富田 晃吏
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭59-013541(JP,U)
【文献】特開平09-004218(JP,A)
【文献】実開昭61-078948(JP,U)
【文献】国際公開第2010/041035(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 1/00-7/34
E04G 27/00
E04G 21/24-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り足場用のチェーンクランプを被覆することにより塗料や研削材の飛来から保護する養生材であって、
チェーンクランプを固定するフランジの上方に位置するクランプ上部を被覆するクランプ被覆部と、
前記フランジの下方に位置するクランプ下部およびクランプに吊り下げられたチェーンを被覆するチェーン被覆部と、
前記クランプ被覆部と前記チェーン被覆部とを繋ぐ連結部を備え、
前記クランプ被覆部は、クランプ上部に被せるように装着する袋状体に形成され、
前記チェーン被覆部は、クランプ下部およびチェーンに巻き付けるように装着する帯状体に形成される、
養生材。
【請求項2】
前記クランプ被覆部は、下方に開口部が設けられた袋状体に形成される、
請求項1に記載の養生材。
【請求項3】
前記連結部に弾性を有する素材が配され、前記連結部に引張力が加えられることにより前記クランプ被覆部と前記チェーン被覆部とが相対的に変位する、
請求項1または2に記載の養生材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、チェーンクランプを塗料や研削材の飛来から保護する養生材に関する。
【背景技術】
【0002】
高所における塗装工事やブラスト工事においては作業床となる足場が必要である。足場の設置には、地上から順に組み上げていく方法と、既設の構造物に吊り下げる方法が広く用いられている。吊り足場を用いる場合、既設の鉄骨梁のフランジに吊り足場用クランプを用いてチェーンを緊結し、垂れ下がったチェーンの下端に単管パイプを水平に吊り下げ、その上に足場を敷き詰めていく。
【0003】
塗装工事においては塗料の垂れや飛散などの発生は避けられないため、足場の上には養生シートを敷くなどの対策が講じられている。研削材や塗装カスが飛散するブラスト工事においても同様である。単管パイプ用には巻き付けて被覆するタイプの専用の養生材が市場に存在している。またこの種の養生材として古くからあるマスカーは安価で入手しやすいため、単管パイプを始め様々な部材の養生に広く用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
マスカーは簡便ではあるが、耐久性や耐候性に乏しいため、長期にわたる工事には不向きである。また塗料等が付着したマスカーは産業廃棄物として処分しなければならない。またクランプやチェーンのような形状が複雑な部材を短時間で綺麗に覆うには熟練した技術が必要とされる。不慣れな者が養生を行うと日を追うごとに破れたり剥がれたりして用をなさないばかりか、現場の景観をも著しく阻害する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前述した課題を解決するため、以下に示す手段を提供する。
【0007】
本発明の第1の態様は、吊り足場用のチェーンクランプを被覆することにより塗料や研削材の飛来から保護する養生材であって、チェーンクランプを固定するフランジの上方に位置するクランプ上部を被覆するクランプ被覆部と、前記フランジの下方に位置するクランプ下部およびクランプに吊り下げられたチェーンを被覆するチェーン被覆部と、前記クランプ被覆部と前記チェーン被覆部とを繋ぐ連結部を備え、前記クランプ被覆部は、クランプ上部に被せるように装着する袋状体に形成され、前記チェーン被覆部は、クランプ下部およびチェーンに巻き付けるように装着する帯状体に形成される。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記クランプ被覆部は、下方に開口部が設けられた袋状体に形成される。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記連結部に弾性を有する素材が配され、前記連結部に引張力が加えられることにより前記クランプ被覆部と前記チェーン被覆部とが相対的に変位する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の態様によると、吊り足場用のチェーンクランプをフランジの上下においてそれぞれの形態に適した方法で養生を施すことが可能となるため、無理なく容易に着脱することができ、また装着時にチェーンクランプ全体を効果的に被覆することができる。
【0011】
本発明の第2の態様によると、クランプ被覆部は上から被せるだけで装着することが可能となり、クランプ被覆部を被せた後にチェーン被覆部を下に引っ張りながら装着することにより、クランプ被覆部の開口部がフランジ上面に密着するため、クランプ上部を完全に被覆することができる。
【0012】
本発明の第3の態様によると、フランジの厚みに対応してクランプ被覆部とチェーン被覆部との相対的な位置を変更することが可能となるため、フランジ厚の違いに起因する装着の難しさや、装着後に型崩れを起こすなどして隙間が開いたりする不具合を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】フランジにチェーンクランプを取り付けた状態を示す図
【
図3】養生材を用いてチェーンクランプを被覆した状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1にフランジにチェーンクランプを取り付けた状態を示し、
図2に養生材を平面に展開した状態を示し、
図3に養生材を用いてチェーンクランプを被覆した状態を示す。
【0015】
〔チェーンクランプの構造〕
図1にフランジにチェーンクランプを取り付けた状態を示す。チェーンクランプ10は、鉄骨梁のフランジ12を上下方向に挟み込むクランプ部14と、クランプ部14の下部に枢支されたU字型金具16と、U字型金具16に掛止されたチェーン18、により構成される。クランプ部14のうち締め付けネジ20が装着された上部14aはフランジ12の上方に位置し、U字型金具16が装着された下部14bはフランジ12の下方に位置する。フランジ12には厚さが異なる多種多様な種類があるため、締め付けネジによってクランプ部14のつかみ厚を調節する(概ね6mm~40mm)。
【0016】
〔養生材の構造〕
養生材20は、クランプ被覆部22と、チェーン被覆部24と、クランプ被覆部22とチェーン被覆部24を繋ぐ連結部26、により構成される。養生材20はポリプロピレン等の樹脂をシート状に加工したものであり、クランプ被覆部22およびチェーン被覆部24はポリプロピレンシートにより構成され、連結部26はポリプロピレンシートとポリプロピレンシートに内包されたゴムにより構成される。
【0017】
連結部26は、フランジ12の厚みに対応して伸び縮みすることが要求されるため、ゴムを内包する部分にある程度の弛みがあることが必要である。弛みを最大限に伸ばしたときにフランジ12の最大厚(概ね40mm程度)に対応できるように長さを調整する。ゴムは、クランプ被覆部22をフランジ12の上面に密着させ、チェーン被覆部24をフランジ12の下面に密着させることにより、養生材20がチェーンクランプ10を可能な限り隙間なく被覆することができるようにする役割を担う。そのため、フランジ12の最小厚(概ね6mm程度)に対応できるように長さを調整する。
【0018】
クランプ被覆部22、チェーン被覆部24および連結部26は熱圧着、接着もしくは縫合などの手段によって互いに接続される。なお、連結部26はクランプ被覆部22と連続するポリプロピレンシートにより構成してもよく、チェーン被覆部22と連続するポリプロピレンシートにより構成してもよい。
【0019】
クランプ被覆部22は、下方に開口部28が設けられた袋状体に形成される。開口部28を開いた状態でクランプ上部14aに上から下に被せるように装着することにより、チェーンクランプ10のうちフランジ12の上方に位置する部分を被覆する。
【0020】
チェーン被覆部24は、帯状体に形成される。クランプ下部14bおよびチェーン18に同時に巻き付けるように装着することにより、チェーンクランプ10のうちフランジ12の下方に位置する部分を被覆する。チェーン被覆部24の左右両端には面ファスナー30が取り付けられており、クランプ下部14bおよびチェーン18に巻装した後に面ファスナー30を用いてポリプロピレンシートが開かないよう固定する。
【0021】
〔養生材の使用法〕
最初にチェーンクランプ10に養生材20を装着する方法について説明し、次に、装着された養生材20をチェーンクランプ10から外す方法について説明する。
【0022】
養生材20の装着に際しては、まずクランプ被覆部22の下方に設けられている開口部28を開きながらクランプ上部14aに上から被せるように装着し、続いてチェーン被覆部24をフランジ12の厚みに応じて下方に引っ張りながらクランプ下部14bとチェーン18に巻き付けるように装着し、最後に面ファスナー30を用いて固定する。慣れた作業者であれば数秒から十数秒もあれば養生材20をチェーンクランプ10に装着することができる。
【0023】
次に養生材20をチェーンクランプ10から外す方法であるが、装着時とは逆の作業となる。まず面ファスナー30を剥がしてチェーン被覆部24をクランプ下部14bおよびチェーン18を巻装した状態から解放し、続いてクランプ被覆部22を持ち上げながらクランプ上部14aの被装から解放する。このときチェーン被覆部24がフランジ12に引っ掛かってクランプ被覆部22が持ち上がらないことがあるので、チェーン被覆部24を手前側に引いておくとクランプ被覆部22を簡単に持ち上がることができる。装着時と同様に慣れた作業者であれば数秒から十数秒もあれば養生材20をチェーンクランプ10から取り外すことができる。
【0024】
チェーンクランプ10から取り外した養生材20には塗料等が付着しているため、専用の溶剤などを用いて塗料等を拭き取ることにより、養生材20を何度でも使用することができる。
【符号の説明】
【0025】
10 チェーンクランプ
20 養生材
22 クランプ被覆部
24 チェーン被覆部
26 連結部
28 開口部
【要約】
【課題】チェーンクランプを塗料や研削材等の飛来から保護する養生材を提供する。
【解決手段】養生材20は、フランジ12の上方に位置するクランプ上部14aを被覆するクランプ被覆部22と、フランジ12の下方に位置するクランプ下部14bおよびクランプに吊り下げられたチェーン18を被覆するチェーン被覆部24と、クランプ被覆部22とチェーン被覆部24とを繋ぐ連結部26により構成され、クランプ被覆部22は、クランプ上部14aに被せるように装着する袋状体に形成され、チェーン被覆部24は、クランプ下部14bおよびチェーン18に巻き付けるように装着する帯状体に形成される。
【選択図】
図2